JP2023116341A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023116341A
JP2023116341A JP2022019085A JP2022019085A JP2023116341A JP 2023116341 A JP2023116341 A JP 2023116341A JP 2022019085 A JP2022019085 A JP 2022019085A JP 2022019085 A JP2022019085 A JP 2022019085A JP 2023116341 A JP2023116341 A JP 2023116341A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
rolling
steel sheet
cold
peripheral speed
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022019085A
Other languages
English (en)
Inventor
祐介 下山
Yusuke Shimoyama
之啓 新垣
Yukihiro Aragaki
敬 寺島
Takashi Terajima
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2022019085A priority Critical patent/JP2023116341A/ja
Publication of JP2023116341A publication Critical patent/JP2023116341A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Abstract

【課題】磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。【解決手段】冷間圧延の最終冷延における少なくとも1パス以上を、上側と下側のワークロール間の周速比が10%以上100%以下の異周速圧延で行う。【選択図】なし

Description

本発明は、変圧器や発電機の鉄心材料に用いて好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である{110}<001>方位(ゴス方位)が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する磁気特性に優れた鋼板である。
かかるゴス方位への集積を高める方法としては、例えば、特許文献1には、冷間圧延中の冷延板を低温で熱処理し、時効処理を施す方法が開示されている。
また、特許文献2には、熱延板焼鈍又は最終の冷間圧延前の中間焼鈍時の冷却速度を30℃/s以上とし、さらに最終の冷間圧延中に鋼板温度150~300℃で2分間以上のパス間時効を2回以上行う技術が開示されている。
さらに、特許文献3には、圧延中の鋼板温度を高めて温間圧延することにより、圧延時に導入された転位を直ちにCやNで固着させる動的歪時効を利用する技術が開示されている。
これら特許文献1~3に記載の技術は、冷延前、あるいは圧延中又は圧延のパス間で鋼板温度を適正な温度に保持することによって、固溶元素である炭素(C)や窒素(N)を低温で拡散させ、冷間圧延で導入された転位を固着して、それ以降の圧延での転位の移動を抑制し、剪断変形を起こさせることで、圧延集合組織を改善するものである。これらの技術の適用によって、一次再結晶板の時点でゴス方位の種結晶が数多く形成される。そして、二次再結晶時にそれらゴス方位の種結晶が粒成長することによって、二次再結晶後にゴス方位への集積を高めることができる。
また、上記歪時効の効果を更に高める技術として、特許文献4には、タンデム圧延機で行われる冷間圧延の前に0.5kg/mm以上の張力付与下において50~150℃、30秒間~30分間の熱処理を施すことで、鋼中に微細カーバイドを析出させるとともに冷間圧延の途中で時効処理を施す技術が開示されている。
なお、鋼板の結晶粒がゴス方位へ高度に集積した方向性電磁鋼板は、二次再結晶と呼ばれる技術によって、一次再結晶のゴス方位粒のみを異常粒成長させることで作られる。そして、かかる一次再結晶ゴス方位粒は冷間圧延工程において、圧延安定方位である{111}<112>マトリクス組織内に導入された剪断帯から核生成すると考えられている。すなわち、上記技術は冷間圧延中に剪断帯が導入されやすくするための技術であるといえる。
特開昭50-016610号公報 特開平08-253816号公報 特開平01-215925号公報 特開平04-120216号公報
ここで、近年、省エネルギーに対する要求は厳しさを増す一方であり、さらなる低鉄損化技術の開発が求められている。
しかしながら、通常の冷間圧延では、鋼板表面付近にのみ剪断応力が付与されるため、前述した一次再結晶ゴス方位粒の核が形成される剪断帯は鋼板表面付近に限定され、特許文献1~4に提案されたような従来技術では、核生成されるゴス方位粒の量に限界があった。
本発明は、上記従来技術が抱える問題点を解決し、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を製造することができる方向性電磁鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは、上記従来技術の問題点を解決するために、方向性電磁鋼板の一連の工程において、一次再結晶ゴス方位粒を効率的に形成させる冷間圧延の手法について鋭意検討を重ねた。
以下、この発明に至った実験について説明する。
質量%で、C:0.035%、Si:3.2%およびMn:0.05%を含有し、質量ppmで、SおよびSeをそれぞれ30ppm、Nを50ppm、sol.Alを86ppm含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成からなる鋼スラブを、1210℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。次いで、上記熱延板から採取した試験片に、1000℃×60秒の条件の熱延板焼鈍を施し、得られた熱延板焼鈍板を、1回の冷間圧延により、0.20mmの板厚の冷延板とした。このとき、ワークロールの周速比を表1に示す種々の値になるように調整し、圧延を行った。
ここで、本発明における周速比とは、ワークロール周速をV1,V2(V1>V2)としたときに、((V1-V2)/V2)×100%で示される値である。
なお、上記V1およびV2は、圧延の1パスにおける上側と下側のワークロールのいずれかの周速であって、V1>V2の関係であればよい。よって、上側のワークロール周速が下側のそれよりも速ければ、V1が上側のワークロール周速であって、V2が下側のワークロール周速であり、上側のワークロール周速が下側のそれよりも遅ければV2が上側のワークロール周速であって、V1が下側のワークロール周速である。
前記冷延板とした後、かかる冷延板に均熱温度840℃、均熱時間100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施したのち、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上焼鈍を施して鋼板の結晶を二次再結晶させる二次再結晶焼鈍を施した。かかる二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩-クロム酸塩-コロイダルシリカを質量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の条件の平坦化焼鈍を施し、製品板とした。
かかる製品板からエプスタイン試験片を採取し、JIS2550に従って、鉄損W17/50(磁束密度の振幅 1.7T,50Hzにおける質量あたりのエネルギー損失、以下、製品板鉄損という)を測定した結果について表1に示した。
Figure 2023116341000001
表1に示した結果より、冷間圧延時に、ワークロールの周速比が10%以上100%以下となる範囲で圧延したものは、製品板鉄損が0.85W/kg以下となり、良好であることが分かる。
加えて、発明者らは最終冷延における異周速圧延と通常の同周速圧延との組み合わせ方について検討を行った。以下に実験の詳細を説明する。
すなわち、前記実験で作製した板厚2.0mmの熱延板焼鈍板に冷間圧延を施し、板厚0.20mmの冷延板を作製した。その際、冷間圧延は表2に示すように、通常の同周速の圧延と、周速比50%の異周速圧延を種々に織り交ぜて冷間圧延を行った。
その後、上記冷延板に均熱温度840℃、均熱時間100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施したのち、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上焼鈍を施して二次再結晶させた。上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩-クロム酸塩-コロイダルシリカを質量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の条件の平坦化焼鈍を施し、製品板とした。
この製品板からエプスタイン試験片を採取し、JIS2550に従って、製品板鉄損である鉄損W17/50を測定した結果について表2に示した。
Figure 2023116341000002
表2より、冷間圧延の中で異周速圧延を1回以上施した条件では鉄損が0.85W/kg以下となっており、その中でも、冷間圧延の最初に、全圧下量の40%以上まで同周速圧延を行い、その後の圧延で、異周速圧延を1回以上施した材料は鉄損が0.78W/kg以下となり、さらに磁性が改善していることが分かる。
これら2つの実験で得られた知見をもとにさらに検討を行い、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
1.鋼素材を熱間圧延して熱延鋼板とし、前記熱延鋼板に1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板とし、次いで前記冷延板に脱炭焼鈍を施したのち二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記1回または2回以上の冷間圧延のうち、前記最終板厚の冷延板とする回の冷間圧延を最終冷延と定義したとき、
前記最終冷延における少なくとも1パスを、上側と下側のワークロール間の周速比が10%以上、100%以下の範囲の異周速圧延で行う、方向性電磁鋼板の製造方法。
ここで、前記周速比は、ワークロール周速をV1,V2(V1>V2)としたときに、((V1-V2)/V2)×100%で示される値である。
2.前記最終冷延において、圧下量の40%以上90%以下の範囲内に至るまでのパスは同周速圧延を行い、該同周速圧延後に、前記異周速圧延を少なくとも1パス行う、前記1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
3.前記鋼素材が、質量%で、C:0.01%以上0.10%以下、Si:2.0%以上4.5%以下、Mn:0.01%以上0.50%以下、Al:0.0100%以上0.0400%以下、SまたはSeを1種または2種の合計:0.0100%以上0.0500%以下およびN:0.0050%超0.0120%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する、前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
4.前記鋼素材が、質量%で、C:0.01%以上0.10%以下、Si:2.0%以上4.5%以下、Mn:0.01%以上0.50%以下、Al:0.0100%未満、S:0.0070%以下、Se:0.0070%以下およびN:0.0050%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する、前記1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
5.前記鋼素材が、さらに、質量%で、Sb:0.005%以上0.500%以下、Cu:0.01%以上1.50%以下、P:0.005%以上0.500%以下、Cr:0.01%以上1.50%以下、Ni:0.005%以上1.500%以下、Sn:0.01%以上0.50%以下、Nb:0.0005%以上0.0100%以下、Mo:0.01%以上0.50%以下、B:0.0010%以上0.0070%以下およびBi:0.0005%以上0.0500%以下からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する、前記3または4に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法によれば、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安定的に得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<鋼素材>
本発明の製造方法に用いる鋼素材は、スラブの他、ブルームやビレットが挙げられる。これらのうち、例えば、鋼スラブは、公知の製造方法によって製造されたものを用いることができる。
また、鋼素材の製造方法としては、例えば製鋼-連続鋳造、造塊-分塊圧延法等が挙げられる。なお、製鋼は、転炉や電気炉等から得た溶鋼を、真空脱ガス等の二次精錬を経ることで所望の成分組成とすることができる。
鋼素材の成分組成は、方向性電磁鋼板製造用の成分組成を用いることができ、方向性電磁鋼板用の成分として公知のものを用いることができる。なお、優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造する観点から、C、SiおよびMnを含有することが好ましい。C、SiおよびMnの好適含有量としては、以下が挙げられる。ここで、本発明の鋼板の成分組成に関する「%」表示は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
C:0.01~0.10%
Cは、微細カーバイドを析出させることで、一次再結晶集合組織を改善するのに寄与する元素である。0.10%超では、脱炭焼鈍により、磁気時効の起こらない0.0050%以下に低減することが困難になるおそれがある。一方、0.01%未満では、微細カーバイドの析出量が不足し、集合組織改善効果が不十分になるおそれがある。そのため、C含有量は0.01~0.10%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、下限が0.01%であって、上限が0.08%である。
Si:2.0~4.5%
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素である。Siの含有量が4.5%超では、加工性が著しく低下するため、圧延して製造することが困難になるおそれがある。一方、2.0%未満では、十分な鉄損低減効果が得難くなるおそれがある。そのため、Si含有量は2.0~4.5%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、下限が2.5%であって、上限が4.5%である。
Mn:0.01~0.50%
Mnは、熱間加工性を改善するために必要な元素である。Mn含有量が0.50%超では、一次再結晶集合組織が劣化し、ゴス方位が高度に集積した二次再結晶粒を得るのが困難になるおそれがある。一方、0.01%未満では、十分な熱延加工性を得るのが困難になるおそれがある。そのため、Mn含有量は0.01~0.50%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、下限が0.03%であって、上限が0.50%である。
鋼素材の成分組成は、上記したC、SiおよびMnに加えて、二次再結晶におけるインヒビター成分として、Al:0.0100~0.0400%およびN:0.0050%超0.0120%以下を含有することができる。
すなわち、Al含有量およびN含有量が上記の下限に満たないと、所定のインヒビター効果を得るのが困難になるおそれがある。一方、上記の上限を超えると、析出物の分散状態が不均一化し、やはり所定のインヒビター効果を得るのが困難になるおそれがある。
さらに、前記Al、Nに加えて、インヒビター成分として、SまたはSeの1種または2種を合計で0.0100%以上0.0500%以下の範囲で含有させてもよい。これらを含有させることにより、硫化物(MnS、CuS等)、セレン化物(MnSe、CuSe等)を形成させることができる。なお、かかる硫化物、セレン化物は複合して析出させてもよい。
ここで、S含有量およびSe含有量が上記の下限に満たないと、インヒビターとしての効果を十分に得ることが難しくなるおそれがある。一方、上記の上限を超えると、析出物の分散が不均一化し、やはりインヒビター効果を十分に得ることが難しくなるおそれがある。
また、成分組成として、Al含有量を0.0100%未満に抑制し、インヒビターレス系を採用することもできる。この場合、N含有量は0.0050%以下、S含有量は0.0070%以下、Se含有量は0.0070%以下とすることが好ましい。
さらにまた、磁気特性改善のために、上記成分組成に加えて、Sb:0.005~0.500%、Cu:0.01~1.50%、P:0.005~0.500%、Cr:0.01~1.50%、Ni:0.005~1.500%、Sn:0.01~0.50%、Nb:0.0005~0.0100%、Mo:0.01~0.50%、B:0.0010~0.0070%およびBi:0.0005~0.0500%からなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有させてもよい。Sb、Cu、P、Cr、Ni、Sn、Nb、Mo、BおよびBiは、磁気特性の向上に有用な元素であり、二次再結晶粒の発達を阻害せずに、磁気特性向上効果を十分に得られる点から、含有させる場合は、上記の範囲内とすることが好ましい。
なお、本発明において、上記した鋼素材の成分組成における成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
<製造工程>
本発明の製造方法は、例えば、以下が例示できる。
すなわち、前述した鋼スラブを、熱間圧延して熱延板とする。ここで、かかる鋼スラブは、加熱してから熱間圧延に供することができる。その際の加熱温度は、熱間圧延性を確保する観点から1050℃程度以上とするのが好ましい。なお、加熱温度の上限は特に限定されないが、1450℃超の温度は、鋼の融点に近く、スラブの形状を保つのが困難であるため、1450℃以下とすることが好ましい。
それ以外の熱間圧延条件は特に限定されず、公知の条件を適用することができる。
かようにして得られた熱延板に、熱延板焼鈍を施してもよい。その際の焼鈍条件は、特に限定されず公知の条件を適用することができる。
熱延板は、熱延板焼鈍を施すかまたは施さずに、冷間圧延して冷延板とする。冷間圧延の前に、酸洗等で脱スケールしてもよい。
本発明における冷間圧延工程は、1回の冷間圧延で最終板厚の冷延板としてもよく、あるいは中間焼鈍を挟んだ2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板としてもよい。冷間圧延の総圧下率は、特に限定されず、70%以上95%以下とすることができる。
本発明においては、最終冷延を後述のように制御する必要がある。なお、最終冷延の圧下率は、特に限定されず、60%以上95%以下の範囲とすることができる。最終板厚は、特に限定されず、例えば0.1mm以上1.0mm以下とすることができる。
ここで、本発明において「最終冷延」とは、前記最終板厚の冷延板とする回の冷間圧延、すなわち、前記1回または2回以上の冷間圧延のうち最後に行われる冷間圧延を指すものとする。例えば、冷間圧延を1回のみ行う1回法の場合には、当該1回の冷間圧延が最終冷延である。また、冷間圧延を2回行う2回法の場合には、2回目の冷間圧延が最終冷延である。同様に、冷間圧延を3回以上行う場合は、それぞれ最終回の最終板厚の冷延板とする冷間圧延が最終冷延である。
また、本発明の冷間圧延工程で用いる圧延機は、特に限定されず、タンデム式もしくはリバース式のどちらでも良い。
前記最終冷延では、少なくとも1パス以上(ここで1パスとはタンデム圧延機なら複数台の圧延機の内のうちの1台分の通過のことであり、リバース式ならば1回分の通過のことである)、上側と下側のワークロール間の周速比が10%以上100%以下である異周速圧延で行う必要がある。ここで、周速比は、前述したとおり、上側と下側のワークロールの周速のいずれかをV1,V2(V1>V2)としたときに、((V1-V2)/V2)×100%で示される値である。かかる値が10%未満では異周速圧延によるゴス方位粒形成効果が発揮されない一方で、100%を超えると鋼板形状不良による磁性劣化および変圧器のコアに組み込んだ時の占積率の低下が生じる。そのため、周速比の範囲は10%以上100%以下とし、好ましくは、周速比の下限は10%であって、上限は80%である。
なお、前記周速比を10%以上、100%以下とした異周速圧延で行うことにより、低鉄損材が得られる理由として、発明者らは以下のように推定している。
すなわち、異周速圧延では上側と下側のワークロールで中立点の位置が異なるために、鋼板全体に剪断応力が付与される。その結果、同周速の通常の冷間圧延の場合と異なり、鋼板全厚において一次再結晶ゴス方位粒の核形成サイトとなる剪断帯が形成されるため、一次再結晶ゴス方位粒の量が増加し、製品板の結晶方位のゴス方位への集積度が高まるためである。
異周速圧延を実施する方法は特に限定されず、例えば、上下のワークロールを別々の電動機で駆動させるツインドライブ圧延機を用いて上下ワークロールの回転数を変化させる方法や、上下のワークロール径を変化させて周速を変える方法などが挙げられる。
また、本発明のかかる異周速圧延においては、上側のワークロールの方が速い条件であっても、下側のワークロールの方が速い条件であっても、前記ワークロールの周速にかかる規定を満足すれば、同等の効果が得られる。
さらに、通常の同周速の圧延を組み合わせることで、一層優れた磁気特性改善効果を得ることが可能である。それは、まず初めに、最終冷延の圧下量の0%から40%以上90%以下に至るまでの範囲の冷間圧延は同周速圧延を行い、それ以降の冷間圧延は異周速圧延を少なくとも1パス施せばよい。
なお、最終冷延の圧下量とは、最終冷延前の鋼板の板厚をh1、最終冷延後の板厚をh2としたときのh1-h2のことである。圧延初期に同周速にて圧延することにより{111}<112>マトリクス組織を多く作り込み、次いで異周速圧延することにより効率よくゴス方位再結晶核を含んだ剪断帯を形成することができる。初めの同周速圧延による圧下量が、最終冷延の圧下量の40%未満の場合、{111}<112>マトリクス組織の作り込みが不十分となるおそれがあり、90%超の場合は、その後の異周速圧延による剪断帯形成効果が不十分となるおそれがある。そのため、最終冷延初めの同周速圧延による圧下量は、最終冷延の圧下量の40%以上90%以下であることが好ましい。また、より好ましくは、前記最終冷延の圧下量の50%以上であって、より好ましくは、前記最終冷延の圧下量の80%以下である。
なお、冷間圧延の最初に同周速圧延を行い、その後異周速圧延を施した条件で、磁性がさらに改善された原因としては、発明者らは以下のように推定している。
すなわち、一次再結晶ゴス方位粒は、圧延安定方位の一つである{111}<112>マトリクス組織内に導入された、剪断帯から核生成すると考えられている。{111}<112>マトリクス組織は、通常の同周速での圧延により発達するため、圧延初期に同周速にて圧延することにより{111}<112>マトリクス組織を多く作り込み、次いで異周速圧延することにより効率よくゴス方位再結晶核を含んだ剪断帯を形成することができるためである。
また、前記冷間圧延中に時効処理等の熱処理または温間圧延を挟んでもよい。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法においては、上記に従って最終厚に仕上げた冷延板を、脱炭焼鈍したのち、二次再結晶焼鈍を経て方向性電磁鋼板(製品板)を得ることができる。なお、二次再結晶焼鈍後に絶縁被膜を被成してもよい。
上記脱炭焼鈍の条件は、特に限定されない。一般的に、脱炭焼鈍は一次再結晶焼鈍を兼ねることが多く、本発明の製造方法においても一次再結晶焼鈍を兼ねることができる。その場合、条件は特に限定されず、公知の条件を適用することができる。例えば、湿水素雰囲気中で800℃×2分の焼鈍条件等が挙げられる。
かようにして冷延板に脱炭焼鈍を施したのち、二次再結晶のための仕上焼鈍を施す。本発明では、仕上焼鈍前に、鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布することができる。焼鈍分離剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。例えば、MgOを主成分とし、必要に応じて、TiOなどを添加したものや、SiOやAlを主成分としたものが挙げられる。
本発明では、仕上焼鈍を施したのち、鋼板表面に絶縁被膜を塗布し焼き付け、必要に応じて、平坦化焼鈍して鋼板形状を整えることが好ましい。絶縁被膜の種類は、特に限定されず、鋼板表面に引張張力を付与する絶縁被膜を形成する場合には、特開50-79442号公報、特開昭48-39338号公報、特開昭56-75579等に記載されているリン酸塩―コロイダルシリカを含有する塗布液を用いて、800℃程度で焼き付けるのが好ましい。
なお、本発明の製造方法では、本明細書に記載のない項目は、いずれも常法を用いることができる。
C:0.06%、Si:3.4%およびMn:0.06%を含有し、Nを90質量ppm、sol.Alを250質量ppmとし、S、Seをそれぞれ0.0100%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。
上記熱延板に、1回目の冷間圧延を施して板厚1.2mmとし、次いで、N75vol%+H25vol%、露点46℃の雰囲気中で1100℃×80秒の条件の中間焼鈍を施した。次に表3に示すように周速比を種々に変化させて、最終冷延を施し板厚0.20mmの冷延板とした。
その後、前記冷延板に、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施したのち、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上焼鈍を施して二次再結晶させた。上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩-クロム酸塩-コロイダルシリカを質量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の条件の平坦化焼鈍を施し、製品板とした。
Figure 2023116341000003
表3に示した結果より、インヒビター添加系の鋼スラブを用いて、冷延工程に中間焼鈍を挟んだ場合においても、最終冷間圧延時に周速比10%以上100%以下で異周速圧延したものは製品板鉄損が0.85W/kg以下となり、良好な磁気特性を得られていることがわかる。
実施例1で作製した熱延板に、1000℃×60秒の条件の熱延板焼鈍を施したのち、1回目の冷間圧延を施して1.3mmとした。次いで、N75vol%+H25vol%、露点46℃の雰囲気中で1100℃×80秒の条件の中間焼鈍を施し、次いで表4に示すように、通常の同周速の圧延と、周速比10%の異周速圧延を種々に織り交ぜて最終冷延を施し、板厚0.20mmの冷延板とした。
その後、上記冷延板に、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施したのち、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上焼鈍を施して二次再結晶させた。上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩-クロム酸塩-コロイダルシリカを質量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の条件の平坦化焼鈍を施し、製品板とした。
Figure 2023116341000004
表4に示した結果より、最終冷延中に異周速圧延を施した条件では鉄損が0.85W/kg以下となっており、その中でも、最終冷間圧延の最初に、全圧下量の40%以上まで同周速圧延を行い、その後に異周速圧延を1回以上施した条件では0.78W/kg以下となり、さらに磁性が改善していることがわかる。
C:0.04%、Si:3.4%およびMn:0.06%を含有し、質量ppmで、Nを50ppm、sol.Alを72ppm、SおよびSeをそれぞれ31ppm含有し、その他の成分として、Sb、Cu、P、Cr、Ni、Sn、Nb、Mo、BおよびBiを、表5に示す組成で含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成である鋼を、溶製して鋼スラブとし、1210℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。
上記熱延板に、1000℃×60秒の条件の熱延板焼鈍を施し、得られた熱延板焼鈍板を1回の冷間圧延で0.20mmの板厚の冷延板とした。その際、冷間圧延をすべて周速比70%の異周速圧延で行った冷延条件Aと、最初に板厚1.0mmまで同周速圧延を施し、次いで周速比70%の異周速圧延を施した冷延条件Bの2つの冷延条件で冷延板を作り分けた。
その後、上記冷延板に、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施したのち、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、次いで仕上焼鈍を施して二次再結晶させた。上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩-クロム酸塩-コロイダルシリカを質量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の条件の平坦化焼鈍を施し、製品板とした。
Figure 2023116341000005
表5に示した結果より、Sb、Cu、P、Cr、Ni、Sn、Nb、Mo、BおよびBiのいずれか1種以上を添加したスラブを使用し、冷延条件Aで冷間圧延したものは鉄損が0.80W/kg以下となっている。一方、冷延条件Bを施したものは鉄損が0.75W/kg以下となっており、さらに磁気特性が良くなっているのがわかる。

Claims (5)

  1. 鋼素材を熱間圧延して熱延鋼板とし、前記熱延鋼板に1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施して最終板厚の冷延板とし、次いで前記冷延板に脱炭焼鈍を施したのち二次再結晶焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記1回または2回以上の冷間圧延のうち、前記最終板厚の冷延板とする回の冷間圧延を最終冷延と定義したとき、
    前記最終冷延における少なくとも1パスを、上側と下側のワークロール間の周速比が10%以上、100%以下の範囲の異周速圧延で行う、方向性電磁鋼板の製造方法。
    ここで、前記周速比は、上側と下側のワークロールの周速をV1,V2(V1>V2)としたときに、((V1-V2)/V2)×100%で求められる値である。
  2. 前記最終冷延において、圧下量の40%以上90%以下の範囲内に至るまでのパスは同周速圧延を行い、該同周速圧延後に、前記異周速圧延を少なくとも1パス行う、請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記鋼素材が、質量%で、
    C:0.01%以上0.10%以下、
    Si:2.0%以上4.5%以下、
    Mn:0.01%以上0.50%以下、
    Al:0.0100%以上0.0400%以下、
    SまたはSeを1種または2種の合計:0.0100%以上0.0500%以下および
    N:0.0050%超0.0120%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する、
    請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼素材が、質量%で、
    C:0.01%以上0.10%以下、
    Si:2.0%以上4.5%以下、
    Mn:0.01%以上0.50%以下、
    Al:0.0100%未満、
    S:0.0070%以下、
    Se:0.0070%以下および
    N:0.0050%以下を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する、
    請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記鋼素材が、さらに、質量%で、
    Sb:0.005%以上0.500%以下、
    Cu:0.01%以上1.50%以下、
    P:0.005%以上0.500%以下、
    Cr:0.01%以上1.50%以下、
    Ni:0.005%以上1.500%以下、
    Sn:0.01%以上0.50%以下、
    Nb:0.0005%以上0.0100%以下、
    Mo:0.01%以上0.50%以下、
    B:0.0010%以上0.0070%以下および
    Bi:0.0005%以上0.0500%以下からなる群より選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項3または4に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2022019085A 2022-02-09 2022-02-09 方向性電磁鋼板の製造方法 Pending JP2023116341A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022019085A JP2023116341A (ja) 2022-02-09 2022-02-09 方向性電磁鋼板の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022019085A JP2023116341A (ja) 2022-02-09 2022-02-09 方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023116341A true JP2023116341A (ja) 2023-08-22

Family

ID=87579352

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022019085A Pending JP2023116341A (ja) 2022-02-09 2022-02-09 方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023116341A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6444051B2 (en) Method of manufacturing a grain-oriented electromagnetic steel sheet
JP5991484B2 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法
WO2014049770A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
US5139582A (en) Method of manufacturing an oriented silicon steel sheet having improved magnetic characeristics
JPH1143746A (ja) 極めて鉄損の低い方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP5287615B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7028215B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2023554123A (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2023116341A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7392849B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法および電磁鋼板製造用圧延設備
JP4258156B2 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7081725B1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JPH10226819A (ja) 鉄損特性に優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0797628A (ja) 磁束密度が高く、鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法
WO2023277169A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法及び方向性電磁鋼板製造用圧延設備
WO2024053628A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法および誘導加熱装置
JP7221480B6 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2024053627A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法および誘導加熱装置
WO2023277170A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法及び方向性電磁鋼板製造用圧延設備
EP4159336A1 (en) Grain-oriented electromagnetic steel sheet production method and equipment line
JPH0762437A (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH06240358A (ja) 磁束密度が高く、鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法
WO2022210504A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP2004285402A (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
CN117203355A (zh) 取向性电磁钢板的制造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20230926