JP2023116190A - 膜形成方法および物品製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】硬化性組成物の液膜厚が厚い場合にも充填速度の低下を抑えるために有利な技術を提供する。【解決手段】膜形成方法は、基材の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドの膜形成領域とを接触させる接触工程と、前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含む。前記接触工程において、前記基材と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、前記硬化性組成物に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m3・atm以上10kg/m3・atm以下であり、前記硬化性組成物の体積を前記膜形成領域の面積で除した値である平均液膜厚が70nm以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、膜形成方法および物品製造方法に関する。
半導体デバイスやMEMS等においては、微細化の要求が高まっており、微細加工技術として、光ナノインプリント技術が注目されている。光ナノインプリント技術では、表面に微細な凹凸パターンが形成されたモールド(型)を硬化性組成物が塗布された基板(ウエハ)に押しつけた状態で硬化性組成物を硬化させる。これにより、モールドの凹凸パターンを硬化性組成物の硬化膜に転写し、パターンを基板上に形成する。光ナノインプリント技術によれば、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。
ここで、光ナノインプリント技術を利用した膜形成方法の一例を説明する。まず、基板の上のパターン形成領域に液状の硬化性組成物が離散的に滴下される。パターン形成領域に滴下された硬化性組成物の液滴は、基板の上で広がる。この現象は、プレスプレッドと呼ばれうる。次に、基板の上の硬化性組成物に対して、パターンを有するモールド(型)が押し当てられる。これにより、硬化性組成物の液滴が毛細管現象により基板とモールドとの間隙の全域へ拡がる。この現象は、スプレッドと呼ばれうる。硬化性組成物はまた、モールドのパターンを構成する凹部に毛細管現象により充填される。この充填現象は、フィリングと呼ばれうる。スプレッドとフィリングが完了するまでの時間は、充填時間と呼ばれうる。硬化性組成物の充填が完了した後、硬化性組成物に対して光が照射され硬化性組成物が硬化される。その後、硬化した硬化性組成物からモールドが引き離される。これらの工程を実施することにより、モールドのパターンが基板の上の硬化性組成物に転写されて、硬化性組成物のパターンが形成される。
また、半導体デバイス製造のためのフォトリソグラフィ工程においては、基板を平坦化することも必要とされる。例えば、近年注目されているフォトリソグラフィ技術である極端紫外線露光技術(EUV)においては、微細化に伴って投影像が結像される焦点深度が浅くなるため、硬化性組成物が塗布される基板表面の凹凸は4nm以下に抑える必要がある。また、別のフォトリソグラフィ技術であるナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術においても、充填性や線幅精度向上のために、EUVと同程度の平坦性が要求される(非特許文献1)。平坦化技術として、凹凸を有する基板上に凹凸に対応させた分量の液状硬化性組成物の液滴を離散的に滴下し、平坦表面を有するモールドを押し付けた状態で硬化性組成物を硬化させ、平坦な表面を得る技術が知られている(特許文献1、2)。
上記のパターン形成技術及び平坦化技術においては、生産性向上のために高スループットが要求されるが、各工程で最も長時間を要するのはスプレッドおよびフィリングである。光ナノインプリント技術において、ヘリウムおよび空気を雰囲気ガスとして用いることで、充填速度が向上することが知られている(非特許文献2)。
特開2019-140394号公報 米国特許出願公開第2020/0286740号明細書 特表2009-503139号公報
N.Shiraishi/Int. J. Microgravity Sci.No.31 Supplement 2014 (S5-S12) Proc. SPIE 11324-11 (2020) 岡崎進『コンピュータシミュレーションの基礎』化学同人(2000) B. H. Besler, K. M. Merz Jr., and P. A. Kollman, J. Comp. Chem. 11, 431 (1990). U. C. Singh and P. A. Kollman, J. Comp. Chem. 5, 129 (1984). Wang, J., Wolf, R.M., Caldwell, J.W., Kollman, P.A., Case, D.A., J. Comp. Chem. 25, 1157(2004).
本件の発明者らは、硬化性組成物の液膜厚が厚いほど、スプレッドおよびフィリングに長時間を要するという課題を見出した。そこで、本発明は、硬化性組成物の液膜厚が厚い場合にも充填速度の低下を抑えるために有利な技術を提供することを目的とする。
本発明の1つの側面は、基材の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドの膜形成領域とを接触させる接触工程と、前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、を含む膜形成方法に係り、前記接触工程において、前記基材と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、前記硬化性組成物に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m・atm以上10kg/m・atm以下であり、前記硬化性組成物の体積を前記膜形成領域の面積で除した値である平均液膜厚が70nm以上である。
本発明によれば、硬化性組成物の液膜厚が厚い場合にも充填速度の低下を抑えるために有利な技術が提供される。
本実施形態に係る膜形成方法を示す模式断面図。 平均液膜厚の定義を示す模式断面図。 気泡消失時間の計算の際に行う近似操作の説明図。 物品製造方法を説明する図。 物品製造方法を説明する図。
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
[硬化性組成物]
本実施形態に係る硬化性組成物(A)は、少なくとも重合性化合物である成分(a)を有する組成物である。本実施形態に係る硬化性組成物はさらに、光重合開始剤である成分(b)、非重合性化合物(c)、溶剤である成分(d)を含有してもよい。
また、本明細書において硬化膜とは、基板上で硬化性組成物を重合させて硬化させた膜を意味する。なお、硬化膜の形状は特に限定されず、表面にパターン形状を有していてもよい。
<成分(a):重合性化合物>
成分(a)は重合性化合物である。ここで、本明細書において重合性化合物とは、光重合開始剤(成分(b))から発生した重合因子(ラジカル等)と反応し、連鎖反応(重合反応)によって高分子化合物からなる膜を形成する化合物である。
このような重合性化合物としては、例えば、ラジカル重合性化合物が挙げられる。成分(a)である重合性化合物は、一種類の重合性化合物のみから構成されていてもよく、複数種類の重合性化合物で構成されていてもよい。
ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル系化合物、スチレン系化合物、ビニル系化合物、アリル系化合物、フマル系化合物、マレイル系化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する化合物、すなわち、(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。したがって、本実施形態に係る硬化性組成物は、成分(a)として(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であることがより好ましく、(メタ)アクリル化合物であることが最も好ましい。なお、ここで記載する成分(a)の主成分が(メタ)アクリル化合物であるとは、成分(a)の90質量%以上が(メタ)アクリル化合物であることを示す。
ラジカル重合性化合物が、アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを含むことが好ましい。これは、単官能(メタ)アクリルモノマーと多官能(メタ)アクリルモノマーを組み合わせることで、機械的強度が強い硬化膜が得られるからである。
アクリロイル基又はメタクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ-2-メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-(2-フェニルフェニル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性p-クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2-ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4-ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、PO変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、t-オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7-アミノ-3,7-ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記単官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、アロニックス(登録商標)M101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO-1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成製)、MEDOL10、MIBDOL10、CHDOL10、MMDOL30、MEDOL30、MIBDOL30、CHDOL30、LA、IBXA、2-MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレートBO-A、EC-A、DMP-A、THF-A、HOP-A、HOA-MPE、HOA-MPL、PO-A、P-200A、NP-4EA、NP-8EA、エポキシエステルM-600A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) TC110S、R-564、R-128H(以上、日本化薬製)、NKエステルAMP-10G、AMP-20G、、A-LEN-10(以上、新中村化学工業製)、FA-511A、512A、513A(以上、日立化成製)、PHE、CEA、PHE-2、PHE-4、BR-31、BR-31M、BR-32(以上、第一工業製薬製)、VP(BASF製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、アクリロイル基又はメタクリロイル基を2つ以上有する多官能(メタ)アクリル化合物としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン、EO,PO変性2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシ)フェニル)プロパン等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記多官能(メタ)アクリル化合物の市販品としては、ユピマー(登録商標)UV SA1002、SA2007(以上、三菱化学製)、ビスコート#195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業製)、ライトアクリレート4EG-A、9EG-A、NP-A、DCP-A、BP-4EA、BP-4PA、TMP-A、PE-3A、PE-4A、DPE-6A(以上、共栄社化学製)、KAYARAD(登録商標) PET-30、TMPTA、R-604、DPHA、DPCA-20、-30、-60、-120、HX-620、D-310、D-330(以上、日本化薬製)、アロニックス(登録商標)M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成製)、リポキシ(登録商標)VR-77、VR-60、VR-90(以上、昭和高分子製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
なお、上述した化合物群において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはそれと同等のアルコール残基を有するメタクリロイル基を意味する。EOは、エチレンオキサイドを示し、EO変性化合物Aとは、化合物Aの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がエチレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。また、POは、プロピレンオキサイドを示し、PO変性化合物Bとは、化合物Bの(メタ)アクリル酸残基とアルコール残基がプロピレンオキサイド基のブロック構造を介して結合している化合物を示す。
スチレン系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
スチレン、2,4-ジメチル-α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2,6-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2,4,5-トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン及びオクチルスチレンなどのアルキルスチレン;フロロスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、o-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、p-ブロモスチレン、ジブロモスチレン及びヨードスチレンなどのハロゲン化スチレン;ニトロスチレン、アセチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレ、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、2-ビニルビフェニル、3-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ビニル-p-ターフェニル、1-ビニルアントラセン、α-メチルスチレン、o-イソプロペニルトルエン、m-イソプロペニルトルエン、p-イソプロペニルトルエン、2,3-ジメチル-α-メチルスチレン、3,5-ジメチル-α-メチルスチレン、p-イソプロピル-α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジビニルビフェニルなど、スチリル基を重合性官能基として有する化合物
ビニル系化合物の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、酢酸ビニル及びアクリロニトリル;ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンなどの共役ジエンモノマー;塩化ビニル及び臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン、有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等、(メタ)アクリロニトリルなど、ビニル基を重合性官能基として有する化合物
なお、本明細書において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの総称である。
アリル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル
フマル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ-sec-ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ-n-ブチル、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル
マレイル系化合物の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ-sec-ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ-n-ブチル、マレイン酸ジ-2-エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル
その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体(イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ-sec-ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ-n-ブチル、イタコン酸ジ-2-エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジルなど)、有機カルボン酸のN-ビニルアミド誘導体(N-メチル-N-ビニルアセトアミドなど)、マレイミド及びその誘導体(N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドなど)
成分(a)が、重合性官能基を1つ以上有する複数種類の化合物で構成される場合には、単官能化合物と多官能化合物とを含むことが好ましい。これは、単官能化合物と多官能化合物とを組み合わせることで、機械的強度が強い、ドライエッチング耐性が高い、耐熱性が高いなど、性能のバランスに優れた硬化膜が得られるからである。
重合性化合物(a)は揮発性が低いことが好ましいため、複数種類含まれていてもよい。重合性化合物(a)の常圧下における沸点は、全て250℃以上であることが好ましく、全て300℃以上であることがより好ましく、全て350℃以上であることが更に好ましい。重合性化合物(a)の沸点には概ね分子量と相関がある。このため、重合性化合物(a)は全て分子量200以上であることが好ましく、全て240以上であることがより好ましく、全て250以上であることが更に好ましい。ただし、分子量200以下であっても沸点が250℃以上であれば、本発明の重合性化合物(a)として好ましく用いることができる。
また、重合性化合物(a)の80℃における蒸気圧は0.001mmHg以下であることが好ましい。後述する溶剤(d)の揮発を加速するために加熱することが好ましいが、加熱の際に重合性化合物(a)の揮発を抑制するためである。
なお、常圧下における各種有機化合物の沸点と蒸気圧は、Hansen Solubility Parameters in Practice(HSPiP)5thEdition.5.3.04 などにより計算することができる。
250℃以上の沸点を有する重合性化合物(a)の具体例としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジシクロペンタニルアクリレート(沸点262℃、分子量206)、
ジシクロペンテニルアクリレート(沸点270℃、分子量204)、
1,3-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点310℃、分子量252)、
1,4-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(沸点339℃、分子量252)、
4-ヘキシルレゾルシノールジアクリレート(沸点379℃、分子量302)、
6-フェニルヘキサン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点381℃、分子量302)、
7-フェニルヘプタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点393℃、分子量316)、
1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点403℃、分子量340)、
8-フェニルオクタン-1,2-ジオールジアクリレート(沸点404℃、分子量330)、
1,3-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)ベンゼンジアクリレート(沸点408℃、分子量334)、
1,4-ビス((2-ヒドロキシエトキシ)メチル)シクロヘキサンジアクリレート(沸点445℃、分子量340)、
3-フェノキシベンジルアクリレート(mPhOBzA、OP2.54、沸点367.4℃、80℃蒸気圧0.0004mmHg、分子量254.3)、
Figure 2023116190000002
1-ナフチルアクリレート(NaA、OP2.27、沸点317℃、80℃蒸気圧0.0422mmHg、分子量198)、
Figure 2023116190000003
2-フェニルフェノキシエチルアクリレート(PhPhOEA、OP2.57、沸点364.2℃、80℃蒸気圧0.0006mmHg、分子量268.3)
Figure 2023116190000004
1-ナフチルメチルアクリレート(Na1MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)
Figure 2023116190000005
2-ナフチルメチルアクリレート(Na2MA、OP2.33、沸点342.1℃、80℃蒸気圧0.042mmHg、分子量212.2)
Figure 2023116190000006
4-シアノベンジルアクリレート(CNBzA、OP2.44、沸点316℃、分子量187)、
Figure 2023116190000007
下記式に示すDVBzA(OP2.50、沸点304.6℃、80℃蒸気圧0.0848mmHg、分子量214.3)
Figure 2023116190000008
下記式に示すDPhPA(OP2.38、沸点354.5℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量266.3)
Figure 2023116190000009
下記式に示すPhBzA(OP2.29、沸点350.4℃、80℃蒸気圧0.0022mmHg、分子量238.3)
Figure 2023116190000010
下記式に示すFLMA(OP2.20、沸点349.3℃、80℃蒸気圧0.0018mmHg、分子量250.3)
Figure 2023116190000011
下記式に示すATMA(OP2.13、沸点414.9℃、80℃蒸気圧0.0001mmHg、分子量262.3)
Figure 2023116190000012
下記式に示すDNaMA(OP2.00、沸点489.4℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量338.4)
Figure 2023116190000013
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(DCPDA、OP3.29、沸点342℃、80℃蒸気圧0.0024mmHg、分子量304)、
Figure 2023116190000014
m-キシリレンジアクリレート(mXDA、OP3.20、沸点336℃、80℃蒸気圧0.0043mmHg、分子量246)、
Figure 2023116190000015
1-フェニルエタン-1,2-ジイルジアクリレート(PhEDA、OP3.20、80℃蒸気圧0.0057mmHg、沸点354℃、分子量246)、
Figure 2023116190000016
2-フェニル-1,3-プロパンジオールジアクリレート(PhPDA、OP3.18、沸点340℃、80℃蒸気圧0.0017mmHg、分子量260)、
Figure 2023116190000017
下記式に示すVmXDA(OP3.00、沸点372.4℃、80℃蒸気圧0.0005mmHg、分子量272.3)
Figure 2023116190000018
下記式に示すBPh44DA(OP2.63、沸点444℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)
Figure 2023116190000019
下記式に示すBPh43DA(OP2.63、沸点439.5℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)
Figure 2023116190000020
下記式に示すDPhEDA(OP2.63、沸点410℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量322.3)
Figure 2023116190000021
下記式に示すBPMDA(OP2.68、沸点465.7℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量364.4)
Figure 2023116190000022
下記式に示すNa13MDA(OP2.71、沸点438.8℃、80℃蒸気圧<0.0001mmHg、分子量296.3)
Figure 2023116190000023
硬化性組成物(A)における成分(a)の配合割合は、成分(a)と、後述する成分(b)と、後述する成分(c)との合計、即ち、溶剤(d)を除く全成分の合計質量に対して、40重量%以上99重量%以下であることが好ましい。また、50重量%以上95重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上90重量%以下であることが更に好ましい。成分(a)の配合割合を40重量%以上にすることによって、硬化性組成物の硬化膜の機械強度が高くなる。また、成分(a)の配合割合を99重量%以下にすることによって、成分(b)や成分(c)の配合割合を高くすることができ、速い光重合速度などの特性を得ることができる。
<成分(b):光重合開始剤>
成分(b)は、光重合開始剤である。本明細書において光重合開始剤は、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる化合物である。具体的には、光重合開始剤は、光(赤外線、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の荷電粒子線等、放射線)によりラジカルを発生する重合開始剤(ラジカル発生剤)である。成分(b)は、一種類の光重合開始剤で構成されていてもよく、複数種類の光重合開始剤で構成されていてもよい。
ラジカル発生剤としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-又はp-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の置換基を有してもよい2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン等のα―アミノ芳香族ケトン誘導体;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-t-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナンタラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル誘導体;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン、プロピルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N-フェニルグリシン等のN-フェニルグリシン誘導体;アセトフェノン、3-メチルアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン等のチオキサントン誘導体;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド誘導体;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル誘導体;キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記ラジカル発生剤の市販品として、Irgacure 184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI-1700、-1750、-1850、CG24-61、Darocur 1116、1173、Lucirin(登録商標) TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF製)、ユベクリルP36(UCB製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの中でも、成分(b)は、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤であることが好ましい。なお、上記の例のうち、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド化合物である。
成分(b)の硬化性組成物(A)における配合割合は、成分(a)、成分(b)、後述する成分(c)の合計、すなわち溶剤成分(d)を除く全成分の合計質量に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下である。成分(b)の配合割合を0.1質量%以上とすることにより、組成物の硬化速度が速くなり、反応効率を良くすることができ、50質量%以下とすることにより、得られる硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
<成分(c):非重合性化合物>
本実施形態に係る硬化性組成物(A)は、前述した、成分(a)、成分(b)の他に、種々の目的に応じ、本実施形態の効果を損なわない範囲で、更に成分(c)として非重合性化合物を含有することができる。このような成分(c)としては、(メタ)アクリロイル基などの重合性官能基を有さず、かつ、所定の波長の光を感知して上記重合因子(ラジカル)を発生させる能力を有さない化合物が挙げられる。例えば、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、酸化防止剤、ポリマー成分、その他添加剤等が挙げられる。成分(c)として前記化合物を複数種類含有してもよい。
増感剤は、重合反応促進や反応転化率の向上を目的として、適宜添加される化合物である。増感剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
増感剤として、例えば、増感色素等が挙げられる。増感色素は、特定の波長の光を吸収することにより励起され、成分(b)である光重合開始剤と相互作用する化合物である。
なお、ここで記載する相互作用とは、励起状態の増感色素から成分(b)である光重合開始剤へのエネルギー移動や電子移動等である。増感色素の具体例としては、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、キサントン誘導体、クマリン誘導体、フェノチアジン誘導体、カンファキノン誘導体、アクリジン系色素、チオピリリウム塩系色素、メロシアニン系色素、キノリン系色素、スチリルキノリン系色素、ケトクマリン系色素、チオキサンテン系色素、キサンテン系色素、オキソノール系色素、シアニン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム塩系色素等が挙げられるが、これらに限定されない。
水素供与体は、成分(b)である光重合開始剤から発生した開始ラジカルや、重合生長末端のラジカルと反応し、より反応性が高いラジカルを発生する化合物である。成分(b)である光重合開始剤が光ラジカル発生剤である場合に添加することが好ましい。
このような水素供与体の具体例としては、n-ブチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン、アリルチオ尿素、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルフィネート、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレンテトラミン、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエタノールアミン、N-フェニルグリシンなどのアミン化合物、2-メルカプト-N-フェニルベンゾイミダゾール、メルカプトプロピオン酸エステル等のメルカプト化合物、等が挙げられるが、これらに限定されない。水素供与体は、一種類を単独で用いてもよいし二種類以上を混合して用いてもよい。また、水素供与体は、増感剤としての機能を有してもよい。
モールドと硬化性組成物との間の界面結合力の低減、すなわち後述する離型工程における離型力の低減を目的として、硬化性組成物に内添型離型剤を添加することができる。本明細書において内添型とは、硬化性組成物の配置工程の前に予め硬化性組成物に添加されていることを意味する。内添型離型剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤および炭化水素系界面活性剤等の界面活性剤等を使用できる。ただし、本実施形態においては後述のように、フッ素系界面活性剤には添加量に制限がある。なお、本実施形態において内添型離型剤は、重合性を有さないものとする。内添型離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基を有するアルコールのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物、パーフルオロポリエーテルのポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)付加物等が含まれる。なお、フッ素系界面活性剤は、分子構造の一部(例えば、末端基)に、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、アミノ基、チオール基等を有してもよい。例えばペンタデカエチレングリコールモノ1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルエーテル等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、メガファック(登録商標)F-444、TF-2066、TF-2067、TF-2068、略称DEO-15(以上、DIC製)、フロラードFC-430、FC-431(以上、住友スリーエム製)、サーフロン(登録商標)S-382(AGC製)、EFTOP EF-122A、122B、122C、EF-121、EF-126、EF-127、MF-100(以上、トーケムプロダクツ製)、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(以上、OMNOVA Solutions製)、ユニダイン(登録商標)DS-401、DS-403、DS-451(以上、ダイキン工業製)、フタージェント(登録商標)250、251、222F、208G(以上、ネオス製)等が挙げられる。
また、内添型離型剤は、炭化水素系界面活性剤でもよい。炭化水素系界面活性剤としては、炭素数1~50のアルキルアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイドを付加した、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物やポリアルキレンオキサイド等が含まれる。
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物としては、メチルアルコールエチレンオキサイド付加物、デシルアルコールエチレンオキサイド付加物、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物、セチルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物、ステアリルアルコールエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。なお、アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物の末端基は、単純にアルキルアルコールにポリアルキレンオキサイドを付加して製造できるヒドロキシル基に限定されない。このヒドロキシル基が他の置換基、例えば、カルボキシル基、アミノ基、ピリジル基、チオール基、シラノール基等の極性官能基やアルキル基、アルコキシ基等の疎水性官能基に置換されていてもよい。
ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジノニルエーテル、モノまたはジデシルエーテル、モノアジピン酸エステル、モノオレイン酸エステル、モノステアリン酸エステル、モノコハク酸エステル等が挙げられる。
アルキルアルコールポリアルキレンオキサイド付加物は、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、青木油脂工業製のポリオキシエチレンメチルエーテル(メチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON MP-400、MP-550、MP-1000)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンデシルエーテル(デシルアルコールエチレンオキサイド付加物)(FINESURF D-1303、D-1305、D-1307、D-1310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON EL-1505)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンセチルエーテル(セチルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON CH-305、CH-310)、青木油脂工業製のポリオキシエチレンステアリルエーテル(ステアリルアルコールエチレンオキサイド付加物)(BLAUNON SR-705、SR-707、SR-715、SR-720、SR-730、SR-750)、青木油脂工業製のランダム重合型ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンステアリルエーテル(BLAUNON SA-50/50 1000R、SA-30/70 2000R)、BASF製のポリオキシエチレンメチルエーテル(Pluriol(登録商標)A760E)、花王製のポリオキシエチレンアルキルエーテル(エマルゲンシリーズ)等が挙げられる。また、ポリアルキレンオキサイドは市販品を使用してもよく、例えばBASF製のエチレンオキシド・プロピレンオキシド共重合物(Pluronic PE6400)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は優れた離型力低減効果を示すため、内添型離型剤として有効である。フッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の硬化性組成物における配合割合は、成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計、すなわち溶剤を除く全成分の合計質量に対して、0質量%以上50質量%以下が好ましい。また、より好ましくは、0.1質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。フッ素系界面活性剤を除いた成分(c)の配合割合を50質量%以下とすることにより、得られる硬化膜をある程度の機械的強度を有する硬化膜とすることができる。
<成分(d):溶剤>
本実施形態に係る硬化性組成物は、成分(d)として溶剤を含有していてもよい。成分(d)としては、成分(a)、成分(b)、成分(c)が溶解する溶剤であれば、特に限定はされない。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80℃以上200℃以下の溶剤である。例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、含窒素系溶媒などが挙げられる。成分(d)は、1種類を単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
アルコール系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、iso-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-ペンタノール、iso-ペンタノール、2-メチルブタノール、sec-ペンタノール、tert-ペンタノール、3-メトキシブタノール、n-ヘキサノール、2-メチルペンタノール、sec-ヘキサノール、2-エチルブタノール、sec-ヘプタノール、3-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、sec-オクタノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、sec-ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec-テトラデシルアルコール、sec-ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、クレゾールなどのモノアルコール系溶媒、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール系溶媒
ケトン系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、メチル-n-ペンチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョン
エーテル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
エチルエーテル、iso-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、2-n-ブトキシエタノール、2-n-ヘキソキシエタノール、2-フェノキシエタノール、2-(2-エチルブトキシ)エタノール、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、1-n-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン
エステル系溶媒としては、例えば、以下のものが挙げられる。
ジエチルカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミルγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸n-ペンチル、酢酸sec-ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n-ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、プロピオン酸iso-アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ-n-ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル
含窒素系溶媒としては、例えば、例えば、以下のものが挙げられる。
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチルピロリドン
上述した溶媒のうち、エーテル系溶媒及びエステル系溶媒が好ましい。なお、成膜性に優れる観点から、より好ましいものとして、グリコール構造を有するエーテル系溶媒、エステル系溶媒が挙げられる。
また、更に好ましいものとして、以下のものが挙げられる。
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル
<硬化性組成物の配合時の温度>
本実施形態の硬化性組成物(A)を調製する際には、少なくとも成分(a)、成分(b)を所定の温度条件下で混合・溶解させる。具体的には、0℃以上100℃以下の範囲で行う。成分(c)、成分(d)を含有する場合も同様である。
<硬化性組成物の粘度>
本実施形態に係る硬化性組成物(A)は液体であることが好ましい。なぜならば、後述する型接触工程において、硬化性組成物(A)のスプレッド及びフィルが速やかに完了する、つまり充填時間が短いからである。
<硬化性組成物の相>
本発明における硬化性組成物(A)は液体とする。これは、後述する配置工程において、硬化性組成物(A)の液滴をインクジェット法またはスピンコート法により基板上に配置するためである。
本発明の配置工程においてインクジェット法を用いる場合の硬化性組成物(A)は、溶剤(d)を含んでいない硬化性組成物(AJ1)であっても、含んでいる硬化性組成物(AJ2)であってもよい。
硬化性組成物(AJ1)の粘度は、2mPa・s以上60mPa・s以下とし、5mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることが更に好ましい。
硬化性組成物(AJ2)の粘度は、溶剤(d)を含んだ状態で2mPa・s以上60mPa・s以下とし、5mPa・s以上30mPa・s以下であることが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下であることが更に好ましい。硬化性組成物(AJ2)から溶剤(d)が揮発した後の状態、即ち、硬化性組成物(AJ2)の溶剤(d)を除く成分の混合物の25℃での粘度は、1mPa・s以上10,000mPa・s以下とし、30mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましく、120mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましい。
硬化性組成物(AJ1)、または溶剤(d)を含んだ状態の硬化性組成物(AJ2)の粘度が2mPa・s未満であると、インクジェット法による液滴の吐出性が不安定になる。また、粘度が60mPa・sよりも大きいと、本発明において好ましい1.0~3.0pL程度の体積の液滴を形成することができない。
硬化性組成物(AJ2)の溶剤(d)を除く成分の粘度を1000mPa・s以下にすることによって、硬化性組成物(AJ2)と型とを接触させる際に、スプレッド及びフィルが速やかに完了する。従って、本発明における硬化性組成物(AJ2)を用いることで、インプリント処理を高いスループットで実施することができるとともに、充填不良によるパターン欠陥を抑制することができる。また、硬化性組成物(AJ2)の溶剤(d)を除く成分の粘度を1mPa・s以上にすることによって、溶剤(d)が揮発した後の硬化性組成物(A)の液滴の不要な流動を防止することができる。更に、硬化性組成物(AJ2)と型とを接触させる際に、型の端部から硬化性組成物(AJ2)が流出しにくくなる。
本発明の配置工程においてスピンコート法を用いる場合の硬化性組成物(AS)の粘度は、溶剤(d)を含んだ状態で1mPa・s以上100mPa・s以下とする。硬化性組成物(AS)から溶剤(d)が揮発した後の状態、即ち、硬化性組成物(AS)の溶剤(d)を除く成分の混合物の25℃での粘度は、1mPa・s以上10,000mPa・s以下とし、30mPa・s以上1000mPa・s以下であることが好ましく、30mPa・s以上500mPa・s以下であることがより好ましく、120mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましい。
硬化性組成物(AS)の溶剤(d)を除く成分の粘度を10,000mPa・s以下にすることによって、硬化性組成物(AS)と型とを接触させる際に、フィルが速やかに完了する。従って、本発明における硬化性組成物(AS)を用いることで、インプリント処理を高いスループットで実施することができるとともに、充填不良によるパターン欠陥を抑制することができる。また、硬化性組成物(AS)の溶剤(d)を除く成分の粘度を1mPa・s以上にすることによって、溶剤(d)が揮発した後の硬化性組成物(AS)の液滴の不要な流動を防止することができる。更に、硬化性組成物(AS)と型とを接触させる際に、型の端部から硬化性組成物(AS)が流出しにくくなる。
<硬化性組成物の表面張力>
本実施形態に係る硬化性組成物(A)の表面張力は、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について23℃での表面張力が、5mN/m以上70mN/m以下であることが好ましい。また、より好ましくは、7mN/m以上50mN/m以下であり、さらに好ましくは、10mN/m以上40mN/m以下である。ここで、表面張力が高いほど、例えば5mN/m以上であると、毛細管力が強く働くため、硬化性組成物(A)をモールドに接触させた際に、充填(スプレッド及びフィル)が短時間で完了する。また、表面張力を70mN/m以下とすることにより、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜が表面平滑性を有する硬化膜となる。
<硬化性組成物の接触角>
本実施形態に係る硬化性組成物(A)の接触角は、溶剤(成分(d))を除く成分の組成物について、基板表面及びモールド表面の双方に対して0°以上90°以下であることが好ましく、0°以上10°以下であることが特に好ましい。接触角が90°より大きいと、モールドパターンの内部や基板-モールドの間隙において毛細管力が負の方向(モールドと硬化性組成物間の接触界面を収縮させる方向)に働き、充填しない可能性がある。接触角が低いほど毛細管力が強く働くため、充填速度が速い。
<硬化性組成物に混入している不純物>
本実施形態に係る硬化性組成物(A)は、できる限り不純物を含まないことが好ましい。ここで記載する不純物とは、前述した成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)以外のものを意味する。したがって、本実施形態に係る硬化性組成物は、精製工程を経て得られたものであることが好ましい。このような精製工程としては、フィルタを用いた濾過等が好ましい。
フィルタを用いた濾過を行う際には、具体的には、前述した成分(a)、成分(b)および成分(c)を混合した後、例えば、孔径0.001μm以上5.0μm以下のフィルタで濾過することが好ましい。フィルタを用いた濾過を行う際には、多段階で行ったり、多数回繰り返したりすることがさらに好ましい。また、濾過した液を再度濾過してもよい。孔径の異なるフィルタを複数用いて濾過してもよい。濾過に使用するフィルタとしては、ポリエチレン樹脂製、ポリプロピレン樹脂製、フッ素樹脂製、ナイロン樹脂製等のフィルタを使用することができるが、特に限定されるものではない。このような精製工程を経ることで、硬化性組成物に混入したパーティクル等の不純物を取り除くことができる。これにより、パーティクル等の不純物によって、硬化性組成物を硬化した後に得られる硬化膜に不用意に凹凸が生じてパターンの欠陥が発生することを防止することができる。
なお、本実施形態に係る硬化性組成物を、半導体集積回路を製造するために使用する場合、製品の動作を阻害しないようにするため、硬化性組成物中に金属原子を含有する不純物(金属不純物)が混入することを極力避けることが好ましい。このような場合、硬化性組成物に含まれる金属不純物の濃度としては、10ppm以下が好ましく、100ppb以下にすることがさらに好ましい。
[基板(基材)]
硬化性組成物(A)を配置する対象である基材としての基板は、被加工基板であり、通常、シリコンウエハが用いられる。基材としての基板は、その最表層が被加工層を有してもよい。被加工層としては、例えば、SiO層などのように、少なくともシリコン原子を含む絶縁層が挙げられる。該基板は被加工層の下にさらに他の層が形成されていてもよい。また、該基板として石英基板を用いれば、石英インプリントモールドのレプリカ(モールドレプリカ)を作製することができる。ただし、該基板はシリコンウエハや石英基板に限定されるものではない。該基板は、アルミニウム、チタン-タングステン合金、アルミニウム-ケイ素合金、アルミニウム-銅-ケイ素合金、酸化ケイ素、窒化ケイ素等の半導体デバイス用基板として知られているものの中からも任意に選択することができる。なお、使用される基板あるいは被加工層の表面は、シランカップリング処理、シラザン処理、有機薄膜の成膜等の表面処理によって硬化性組成物(A)との密着性を向上されていてもよい。表面処理として成膜される前記有機薄膜の具体例としては例えば、特許文献3に記載される密着層を用いることができる。
[膜形成方法]
次に、本実施形態に係る膜形成方法について、図1の模式断面図を用いて説明する。本実施形態の膜形成方法は、パターンを有する膜を形成する方法(パターン形成方法)として実施されてもよいし、パターンを有しない膜(例えば、平坦化膜)を形成する方法(平坦化膜形成方法)として実施されてもよい。
本実施形態をパターン形成方法として実施して形成される膜は、表面に1nm以上10mm以下のサイズのパターンを有する膜であることが好ましく、10nm以上100μm以下のサイズのパターンを有する膜であることがより好ましい。なお、一般に、光を利用してナノサイズ(1nm以上100nm以下)のパターン(凹凸構造)を有する膜を作製するパターン形成技術は、光ナノインプリント法と呼ばれている。本実施形態に係る膜形成方法は、光ナノインプリント法を利用しうるが、硬化性組成物(A)は、他のエネルギー(例えば、熱、電磁波)によって硬化されてもよい。
本実施形態を平坦化膜形成方法として実施して形成される平坦化膜は、膜表面の高低差が8nm以下であることが好ましい。
膜形成方法は、例えば、基材の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、硬化性組成物とモールドの膜形成領域とを接触させる接触工程と、硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、硬化性組成物とモールドとを分離する分離工程とを含みうる。接触工程は、配置工程の後に実施され、硬化工程は、接触工程の後に実施され、分離工程は、硬化工程の後に実施される。膜形成領域は、硬化工程の開始時点において、遅くとも硬化性組成物と接する領域である。本実施形態をパターン形成方法として実施する場合、膜形成領域は、パターンを有する。本実施形態を平坦化膜形成方法として実施する場合、膜形成領域は、平坦面を有する。
<配置工程[1]>
配置工程では、図1の[1]に模式的に示されるように、基材101の上に硬化性組成物(A)102が配置されうる。
本実施形態をパターン形成方法として実施する場合、配置方法としては、インクジェット法またはスピンコート法が好ましい。インクジェット法を用いた配置工程の場合、硬化性組成物(A)102の液滴が離散的に配置される。図1はインクジェット法の場合を代表例として図示している。なお、図1に模式的に示された例では、モールド107の下面の全域が膜形成領域である。硬化性組成物(A)102の液滴は、基材101のうちモールド107のパターンを構成する凹部が密に存在する領域に対向する領域の上には密に、基材101のうち該凹部が疎に存在する領域に対向する領域の上には疎に配置されることが好ましい。これにより、後述する残膜110は、モールド107のパターンの疎密によらずに均一な厚さに制御されうる。
本実施形態を、表面に凹凸を有する基材101上の平坦化膜形成方法として実施する場合、配置方法としては、インクジェット法が好ましい。硬化性組成物(A)102の液滴は、基材101のうち凹部には密に、凸部には疎に配置されることが好ましい。これにより、基材101表面よりも高低差が小さい平坦化膜を形成することができる。
配置工程にインクジェット法を用いる場合、配置すべき硬化性組成物(A)の体積を規定するために、平均液膜厚という指標を図2のように定義する。平均液膜厚は、配置工程において配置される硬化性組成物(A)(溶剤(d)を除く)の体積をモールドの膜形成領域の面積で除した値である。硬化性組成物(A)(溶剤(d)を除く)の体積は、硬化性組成物(A)(溶剤(d)を除く)の個々の液滴の体積の総和である。この定義によれば、基板表面に凹凸がある場合にも、凹凸状態によらずに平均液膜厚を規定することができる。
本実施形態に硬化性組成物(AJ2)や(AS)のように溶剤(d)を含有する硬化性組成物を適用する場合、配置工程後、接触工程前に、溶剤(d)の揮発を加速させることを目的として、基板101及び硬化性組成物(A)を加熱するベーク工程を実施したり、基板101の周囲の雰囲気気体を換気したりしてもよい。加熱は、例えば、30℃以上200℃以下、好ましくは、80℃以上150℃以下、特に好ましくは、90℃以上110℃で行われる。加熱時間は、10秒以上3000秒以下とすることができる。ベーク工程は、ホットプレート、オーブンなどの既知の加熱器を用いて実施することができる。
<接触工程[2]>
接触工程では、図1の[3]に模式的に示されるように、硬化性組成物(A)102とモールド107の膜形成領域とが接触させられる。接触工程は、硬化性組成物(A)102とモールド107の膜形成領域とが接触していない状態から両者が接触した状態に変更する工程と、両者が接触した状態を維持する工程とを含む。これにより、本実施形態をパターン形成方法として実施する場合、モールド107の膜形成領域が表面に有する微細パターンの凹部に硬化性組成物(A)がフィリング106されて、該液体は、モールド107の微細パターンに充填(フィル)された液膜となる。
モールド107としては、次の硬化工程が光照射工程を含む場合、これを考慮して光透過性の材料で構成されたモールドが用いられうる。モールド107を構成する材料の材質としては、具体的には、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルカリ・バリウム・ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、合成石英、溶融石英などのガラス系材料、PMMA、ポリカーボネート樹脂、フッ素系ポリマー、ポリジメチルシロキサン等の光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、またはそれら2種類以上の材料が組み合わされた材質、などが好ましい。ただし、モールド107を構成する材料として光透明性樹脂が使用される場合は、硬化性組成物(A)に含まれる成分に溶解しない樹脂が選択されうる。石英は熱膨張係数が小さくパターン歪みが小さいことから、モールド107を構成する材料は、石英であることが特に好ましい。
本実施形態をパターン形成方法として実施する場合、モールド107の膜形成領域がその表面に有する微細パターンは、例えば、4nm以上200nm以下の高さを有しうる。パターンの高さが低いほど、分離工程において、モールド106を硬化性組成物の硬化膜から引き剥がす力、すなわち離型力が低くてよく、また、硬化性組成物(A)のパターンが分離工程によって引き千切られてモールド107側に残存する離型欠陥数が少なくなる。モールド106を引き剥がす際の衝撃によって硬化性組成物(A)のパターンが弾性変形し、隣接するパターン要素同士が接触し、癒着あるいは破損が発生する場合がある。しかし、パターン要素の幅に対してパターン要素の高さが2倍程度以下(アスペクト比2以下)であることが、それらの不具合を回避するために有利である。一方、パターン要素の高さが低過ぎると、基材101の加工精度が低く、加工深さが浅くなりうる。
本実施形態を平坦化膜形成方法として実施する場合、モールド107の膜形成領域の表面の凹凸の高低差は、4nm以下とすることが好ましい。モールド107の膜形成領域を硬化性組成物に接触させる接触工程の後に、硬化工程[4]および分離工程[5]が実施され、モールド107の平坦面にならった面を有する硬化膜が形成されうる。
モールド107の膜形成領域には、硬化性組成物(A)102からのモールド107の表面との剥離性を向上させるために、接触工程の実施前に表面処理を行ってもよい。表面処理の方法としては、モールド107の膜形成領域の表面に離型剤を塗布して離型剤層を形成する方法が挙げられる。ここで、モールド107の表面に塗布する離型剤としては、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、炭化水素系離型剤、ポリエチレン系離型剤、ポリプロピレン系離型剤、パラフィン系離型剤、モンタン系離型剤、カルナバ系離型剤等が挙げられる。例えば、ダイキン工業(株)製のオプツール(登録商標)DSX等の市販の塗布型離型剤も好適に用いることができる。なお、離型剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用して用いてもよい。これらの中でも、フッ素系および炭化水素系の離型剤が特に好ましい。
接触工程において、モールド107の膜形成領域を硬化性組成物(A)102に接触させる際に、硬化性組成物(A)102に加える圧力は特に限定はされない。該圧力は、例えば、0MPa以上100MPa以下とされうる。また、該圧力は、0MPa以上50MPa以下であることが好ましく、0MPa以上30MPa以下であることがより好ましく、0MPa以上20MPa以下であることがさらに好ましい。
接触工程は、例えば、基材101とモールド107との間の空間に気体(以下、ギャップ内気体)が存在し、硬化性組成物(A)102に対するギャップ内気体の溶解度係数が0.5kg/m・atm以上10kg/m・atm以下である条件で行われうる。ここで、該溶解度係数が10kg/m・atmよりも大きいと、硬化膜109のドライエッチング耐性および/または機械強度などが低くなる可能性がある。
また、硬化性組成物(A)102に対するギャップ内気体の溶解度係数をS[kg/m・atm]、硬化性組成物(A)102におけるギャップ内気体の拡散係数をD[m/s]、平均液膜厚をT[nm]としたとき、S・D・Tを1.75×10-9以上かつSを10以下とすることが好ましい。ここで、Sは、0.5以上であることが好ましい。Dは、5×10-12以上かつ1×10-8以下であることが好ましい。SとDの算出方法については後述する。
ギャップ内気体の具体例としては、例えば、二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体が挙げられる。二酸化炭素、メタン、各種フロンガス等、あるいは、これらのうち2以上の気体の混合気体は、例えば、窒素、酸素、ヘリウム、アルゴンなどの、溶解度係数が高くない気体と混合して用いることもできる。混合気体を用いる場合、該混合気体の拡散係数および溶解度係数は、各気体のモル比率にしたがった加重平均値として算出できる。接触工程は、例えば、0.0001気圧以上10気圧以下の圧力下で行われうる。上記各種気体の硬化性組成物(A)に対する拡散係数及び溶解度係数については後述する。
<硬化工程[3]>
硬化工程では、図1の[3]に示すように、硬化性組成物(A)102に硬化用エネルギーとしての光108を照射することによって硬化性組成物を硬化させることによって硬化膜を形成する。硬化工程では、例えば、硬化性組成物(A)102の層に対してモールド107を介して光が照射されうる。より詳細には、モールド107の微細パターンに充填された硬化性組成物(A)に対してモールド107を介して光が照射されうる。これにより、モールド107の微細パターンに充填された硬化性組成物(A)102が硬化して硬化膜109となる。
ここで、照射する光108は、硬化性組成物(A)102の感度波長に応じて選択されうる。具体的には、光108は、150nm以上400nm以下の波長の紫外光、X線、または、電子線等から適宜選択されうる。これらの中でも、光108は、紫外光であることが特に好ましい。これは、硬化助剤(光重合開始剤)として市販されているものは、紫外光に感度を有する化合物が多いからである。ここで、紫外光を発する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、Deep-UVランプ、炭素アーク灯、ケミカルランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、Fエキシマレーザ等が挙げられるが、超高圧水銀灯が特に好ましい。また使用する光源の数は1つでもよいし又は複数であってもよい。また、光の照射は、モールドの微細パターンに充填された硬化性組成物(A)の全域に対して行ってもよく、一部の領域にのみ限定して行ってもよい。また、光の照射は、基板の全領域に対して断続的に複数回にわたって行ってもよいし、全領域に対して連続的に行ってもよい。さらに、第一の照射過程で第1の領域に対して光を照射し、第二の照射過程で該第1の領域とは異なる第2の領域に対して光を照射してもよい。
<分離工程[4]>
分離工程では、図1の[4]に模式的に示されるように、硬化膜109とモールド107とが引き離される。例えば、硬化膜109とモールド107とを引き離し、モールド107の微細パターンを反転させた硬化膜109が自立した状態で得られる。ここで、パターンを有する硬化膜109の凹部にも硬化膜が残存する。この膜は、残膜110と呼ばれうる。
硬化膜109とモールド107とを引き離す方法としては、引き離す際に硬化膜109の一部が物理的に破損しなければよく、各種条件等も特に限定されない。例えば、基材101を固定してモールド107を基材101から遠ざかるように移動させてもよい。もしくは、モールド107を固定して基材101をモールド107から遠ざかるように移動させてもよい。あるいは、これらの両方を正反対の方向へ引っ張って剥離してもよい。
本実施形態の一形態であるパターン形成方法では、工程[1]~工程[4]からなる繰り返し単位(ショット)を、同一基材上で繰り返して複数回行うことができる。また、工程[1]を異なる領域に複数回連続して実施し、工程[2]~工程[4]からなるショットを工程[1]実施済みの領域に対して連続して行ってもよい。配置方法としてスピンコート法を用いる場合、基材全面に対して工程[1]を実施し、工程[2]~工程[4]からなるショットを同一基材上で繰り返して複数回行うことができる。前記のショットを複数回繰り返し、基材の所望の位置に複数の所望の硬化膜109を得ることができる。
本実施形態の一形態である平坦化膜形成方法では、工程[1]~工程[4]からなる繰り返し単位(ショット)を、同一基材上で繰り返して複数回行うことができる。また、工程[1]を異なる領域に複数回連続して実施し、工程[2]~工程[4]からなるショットを工程[1]実施済みの領域に対して連続して行ってもよい。配置方法としてスピンコート法を用いる場合、基材全面に対して工程[1]を実施し、工程[2]~工程[4]からなるショットを同一基材上で繰り返して複数回行うことができる。前記のショットを複数回繰り返し、基材の所望の位置に、モールド107の平坦面にならった表面を有する平坦な硬化膜109を得ることができる。
≪回路基板、電子部品及び光学機器の製造方法≫
本実施形態の一形態であるパターン形成方法に従って形成されたパターンを有する硬化膜109をマスクとして、エッチングなどの加工手法を用いて、基材101(基材101が被加工層を有する場合は被加工層)を加工することができる。また、パターンを有する硬化膜109の上にさらに被加工層を成膜した後に、エッチングなどの加工法を用いてパターン転写を行っても良い。このようにして、パターンを有する硬化膜109を用いて回路構造等の微細構造を基材101上に形成することができる。基材101上に形成された微細構造に基づき、物品を製造することができる。また、そのような物品を含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。物品とは、電気回路素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては例えば、SRAM、DRAM、MRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、フラッシュメモリ等のような揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、システムLSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子等が挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッド等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
また、パターンを有する硬化膜109を光学部材(光学部材の一部材として用いる場合を含む)として利用する光学部品を得ることもできる。このような場合、少なくとも、基材101と、この基材101の上のパターンを有する硬化膜109と、を有する光学部品とすることができる。光学部品としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池等が挙げられる。
また、本実施形態の一形態である平坦化膜形成方法に従って形成された平坦化膜の上でナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術や極端紫外線露光技術(EUV)などの既知のフォトリソグラフィ工程を実施することで、半導体デバイス等のデバイスを製造することができる。また、そのようなデバイスを含む装置、例えば、ディスプレイ、カメラ、医療装置などの電子機器を形成することもできる。デバイスの例としては、例えば、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D-RDRAM、NANDフラッシュ等が挙げられる。
以下、上記の実施形態を補足するために、より具体的な実施例を説明する。
<パターン形成における気泡消失時間の計算>
基材の上に正方配列で滴下された液状硬化性組成物(A)の液滴にモールドが接触してから、隣接する液滴同士が衝突して気泡を形成したのちに、生じた気泡が硬化性組成物(A)およびモールドへ溶解して完全に消失するまでの時間を、以下のように理論計算した。この時間が気泡消失時間である。なお、本実施例においては基材に対しては気体が溶解しないものと仮定した。
気泡消失時間は、Dynamic Spread時間とStatic Spread時間の合計である。Dynamic Spread時間とは、モールドが硬化性組成物に接触してから、隣接する液滴同士が接触してモールド、基板、液滴の三相の界面に気体(ギャップ内気体)を閉じ込めて気泡を形成するまでの時間である。Static Spread時間とは、形成された前記気泡が硬化性組成物(A)へ溶解して完全に消失するまでの時間である。
Dynamic Spread時間については、円柱状の硬化性組成物(A)の液滴に対する潤滑方程式とモールドの運動方程式を連成することにより計算した。潤滑方程式を採用した理由は、塗布される液滴の間隔は100μm程度、液滴分布の高さは数nm-数μm程度のオーダーであり、高アスペクトとなっているため、高さ方向の圧力変化が無視できるからである。また、レイノルズ数は十分小さいとみなせるので、非圧縮性流体として取り扱った。上記の連成方程式には解析解があり、Dynamic Spread時間TDSは、
Figure 2023116190000024
となる。ここで、Vは1個の液滴の体積、Rは液滴の間隔の半分、Rは硬化性組成物(A)の液滴の円柱の半径、μは硬化性組成物(A)の粘度、σは表面張力、θは硬化性組成物(A)とモールドとの接触角、θは硬化性組成物と下地層との接触角である。
次に、Static Spreadに要する時間TSSの計算方法を示す。図3に示したように、硬化性組成物(A)の液滴同士が衝突した瞬間は、白抜きで示した気泡は、同一体積となるような半径rの円柱で近似され、計算領域についても同一体積となる半径rの円柱で近似される。こうして作られた初期条件のもと、理想気体の状態方程式、気体質量の方程式、気体のモールドへの拡散方程式、気体の硬化性組成物(A)への拡散方程式、硬化性組成物(A)の質量保存を表す方程式、硬化性組成物領域の潤滑方程式、モールドの運動方程式、を連成することで気泡体積、圧力p、モールドの高さhの時間発展方程式が得られる。理想気体の方程式は、以下で与えられる。
Figure 2023116190000025
ここで、pは気体の圧力、ρは気体の密度、Rは気体定数、Tは温度である。気体質量の方程式は、以下で与えられる。
Figure 2023116190000026
ここで、Mは気体の質量である。
モールドへの気体の拡散に関する拡散方程式は、以下で与えられる。
Figure 2023116190000027
ここで、Cはモールドの気体濃度、Dはモールドへの気体の拡散係数である。境界条件は、モールドと気泡とが接触している面においてのみヘンリーの法則に従った溶解が生じるとし、硬化性組成物(A)と接触する面からは物質の交換は起きないとした。
硬化性組成物(A)への気体の拡散に関する拡散方程式は、モールドへの気体の拡散に関する拡散方程式と同じである。ただし、境界条件は、硬化性組成物(A)と気泡とが接触している面においてのみヘンリーの法則に従った溶解が生じるとし、モールドと接触する面や計算領域の円柱側面からは物質の交換は起きないとした。硬化性組成物(A)の質量保存を表す方程式は、以下で与えられる。
Figure 2023116190000028
ここで、ρは硬化性組成物(A)の密度、Vは硬化性組成物(A)の液滴の体積、Mは硬化性組成物(A2)の総質量である。硬化性組成物(A)の領域の潤滑方程式は以下で与えられる。
Figure 2023116190000029
ここで、μは前述のように硬化性組成物(A)の粘度である。モールドの運動方程式は以下で与えられる。
Figure 2023116190000030
平均液膜厚をTとして、硬化性組成物(A)の厚さhが、
Figure 2023116190000031
となることをStatic Spread計算における終了条件とした。
<硬化性組成物中のガスの拡散係数の計算>
本実施例では、硬化性組成物(A)を構成する500個の分子に対して10個の気体分子が含まれる分子集合体に対して、分子動力学計算を用いることで、硬化性組成物中のガスの拡散係数を計算した。本実施例では、GROMACS-2016.4(Copyright (c) 2001-2017, The GROMACS development team at Uppsala University, Stockholm University and the Royal Institute of Technology, Sweden.)を用いて分子動力学計算した。分子動力学計算方法については、非特許文献3に記載されている。
分子動力学計算における平衡状態のサンプリングは、周期境界条件を課した単位格子内に、対象分子を配置して、各分子に含まれる原子間に働く力を各時間に対して計算し、時間発展に対する全原子の軌跡を計算することで得た。
分子動力学計算を行うためには、力場パラメータという原子同士の相互作用を定義するためのパラメータを事前に設定する必要があるが、設定方法については後述する。分子動力学計算は、圧縮過程、緩和過程、平衡化過程、本計算、の4段階から構成され、圧縮過程は適切な分子集合体を形成するために行われ、平衡化過程では計算系を熱力学的な平衡状態に導くために行われ、本計算は平衡状態のサンプリングが行われる。圧縮過程に用いる計算条件は、シミュレーション時間40ps、温度700K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値10000atmであり、Berendsen法を用いる定温定圧シミュレーションである。平衡化過程に用いる計算条件は、シミュレーション時間5ns 、温度300K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値1atmであり、Berendsen法を用いる定温定圧シミュレーションである。本計算に用いる計算条件は、シミュレーション時間20ns、温度300K、圧縮率設定値0.000045、気圧設定値1atmであり、Berendsen法を用いた定温定圧シミュレーションである。
拡散係数は前述の本計算によって得られる分子の運動の履歴よりガス分子の平均二乗変位から
Figure 2023116190000032
のように計算した。
力場パラメータは静電的な力場パラメータと非静電的な力場パラメータの二種類から構成される。静電的な力場パラメータについては、量子化学計算の一手法であるコーン・シャム法(交換相関汎関数はB3LYP)、基底関数6-31g*)で計算された静電ポテンシャルに対してMERZ-Singh-Killmansスキームに基づく点を用いて、電荷フィッティングを行うことで得られる、各原子への割り当て電荷を用いた。本実施例では、量子化学計算については具体的には、Gaussian社製Gaussian09(Gaussian09,RevisionC.01,M.J.Frisch,G.W.Trucks,H.B.Schlegel,G.E.Scuseria,M.A.Robb,J.R.Cheeseman,G.Scalmani,V.Barone,B.Mennucci,G.A.Petersson,H.Nakatsuji,M.Caricato,X.Li,H.P.Hratchian,A.F.Izmaylov,J.Bloino,G.Zheng,J.L.Sonnenberg,M.Hada,M.Ehara,K.Toyota,R.Fukuda,J.Hasegawa,M.Ishida,T.Nakajima,Y.Honda,O.Kitao,H.Nakai,T.Vreven,J.A.Montgomery,Jr.,J.E.Peralta,F.Ogliaro,M.Bearpark,J.J.Heyd,E.Brothers,K.N.Kudin,V.N.Staroverov,T.Keith,R.Kobayashi,J.Normand,K.Raghavachari,A.Rendell,J.C.Burant,S.S.Iyengar,J.Tomasi,M.Cossi,N.Rega,J.M.Millam,M.Klene,J.E.Knox,J.B.Cross,V.Bakken,C.Adamo,J.Jaramillo,R.Gomperts,R.E.Stratmann,O.Yazyev,A.J.Austin,R.Cammi,C.Pomelli,J.W.Ochterski,R.L.Martin,K.Morokuma,V.G.Zakrzewski,G.A.Voth,P.Salvador,J.J.Dannenberg,S.Dapprich,A.D.Daniels,O.Farkas,J.B.Foresman,J.V.Ortiz,J.Cioslowski,and D.J.Fox,Gaussian,Inc.,Wallingford CT,2010.)を用いて計算した。Merz-Singh-Killmansスキームについては非特許文献4、5に記載されている。
非静電的な力場パラメータとしては有機分子一般に用いられる、general Amber force field(GAFF、ガフ、非特許文献6)を用いた。
<パターン形成方法における充填時間の実験による測定方法>
イソボルニルアクリレート(共栄社化学製、商品名:IB-XA)9.0重量部、ベンジルアクリレート(大阪有機化学工業製、商品名:V#160)38重量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート(共栄社化学製、商品名:NP-A)47重量部、Lucirin TPO(BASF製)3重量部からなる硬化性組成物(AJ1-1)を調整した。
シリコン基板上の26×33mmの範囲に一辺140μmの正方配列で硬化性組成物(AJ1-1)の3.25pLの液滴を均一に滴下し、石英製ブランクモールド(以下、モールドという)を接触させた。
拡大倍率5倍の光学顕微鏡でモールド越しに硬化性組成物(AJ1-1)の液滴の拡がり挙動、つまりモールド・基板・硬化性組成物(AJ1-1)の三相界面に閉じ込められた気泡の縮小・消失挙動を観察し、消失するまでの時間を測定し、硬化性組成物とモールドとが接触してから気泡が消失するまでの時間を気泡消失時間として計測した。
ヘリウム雰囲気(ギャップ内気体=ヘリウム)では、気泡消失時間は2.7秒であった。空気雰囲気(ギャップ内気体=空気)では、24秒を経過しても気泡は消失しなかった。二酸化炭素雰囲気(ギャップ内気体=二酸化炭素)では気泡消失時間はヘリウム雰囲気と比べて2.67倍であった。
<パターン形成方法で用いた硬化性組成物の液物性>
気泡消失時間の理論計算をするために、硬化性組成物(A)の粘度、表面張力、基板に対する接触角、モールドに対する接触角を測定した結果、表1のようになった。
Figure 2023116190000033
<気泡消失時間の理論計算例>
気泡消失時間の理論計算に必要な硬化性組成物(A)、およびモールド中のガス(ヘリウム、二酸化炭素、酸素)の拡散係数、溶解度係数をまとめると表2のようになる。
Figure 2023116190000034
表2に記載の物性値の根拠を以下で説明する。
シリコン基板に対するヘリウム、二酸化炭素の溶解度係数と拡散係数はいずれもゼロとした。これはシリコン結晶中を気体がほとんど透過しないという既知の事実に基づいている。
ヘリウムのモールド中の拡散係数および溶解度係数には既知の値を用いた。
二酸化炭素および酸素のモールド中の拡散係数および溶解度係数はいずれもゼロとした。これは、モールドを二酸化炭素および酸素がヘリウムと比較するとほとんど透過しないという既知の事実に基づいている。
硬化性組成物(A)に対するヘリウム、二酸化炭素、酸素の拡散係数については、前述の分子動力学計算によって、硬化性組成物(A)の成分の一つであるイソボルニルアクリレートを溶媒としたときのガス分子の平均二乗変位から得られる計算値を用いた。
硬化性組成物(A)に対するヘリウムの溶解度係数は、後述の表3の比較例1のように、平均液膜厚が28nmであるときの気泡消失時間の計算値が前述の実測値(2.7秒)と一致するような値を採用した。
硬化性組成物(A)に対する二酸化炭素の溶解度係数は、後述の表3の比較例2のように、平均液膜厚が28nmであるときの気泡消失時間の計算値が前述の実測値(7.2秒)と一致する値を用いた。
硬化性組成物(A)に対する酸素の溶解度係数は既知の値を用いた。
[比較例1、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5,比較例6、比較例7、比較例8、比較例9、実施例1,実施例2、実施例3]
パターン形成方法において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)をヘリウム、二酸化炭素、平均液膜厚を28nm、50nm、60nm、70nm、100nm、200nmとしたときに、表1、表2に記載の各種係数を入力して、3.25plの硬化性組成物(A)の液滴同士が接するときにできるモールド・基板・硬化性組成物(A)の三相界面に閉じ込められた0.7plの気泡が消失するまでの時間を計算した。開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。気泡消失時間の計算結果と実測値を表3に示す。
Figure 2023116190000035
比較例1、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5、比較例6の結果から、硬化性組成物(A)を使用したとき、平均液膜厚が60nm以下のとき、二酸化炭素雰囲気(ギャップ内気体=二酸化炭素)においては気泡消失時間がヘリウム雰囲気よりも長いことが理論計算により確認された。一方で、比較例7、比較例8、比較例9、実施例1、実施例2、実施例3の結果から、硬化性組成物(A)を使用したとき、平均液膜厚が70nm以上のとき、二酸化炭素雰囲気(ギャップ内気体=二酸化炭素)においては気泡消失時間がヘリウム雰囲気よりも短くなることが理論計算により確認された。
また、比較例1、比較例3、比較例5、比較例7、比較例8、比較例9の結果から、硬化性組成物(A2-1)を使用したとき、ヘリウム雰囲気においては、平均液膜厚が厚くなるほど、気泡消失時間が長くなることが理論計算により確認された。一方で、比較例2、比較例4、比較例6、実施例1、実施例2、実施例3においては、硬化性組成物(A)を使用したとき、二酸化炭素雰囲気においては、平均液膜厚が厚くなるほど、気泡消失時間が短くなることが理論計算により確認された。ヘリウム雰囲気と二酸化炭素雰囲気で平均液膜厚に対する気泡消失時間の定性的振る舞いが異なる理由は、ヘリウムと二酸化炭素の硬化性組成物(A)に対する溶解度の違いによるものであると考えられる。一般に、平均液膜厚を厚くすると、毛細管力の減少によって気泡消失時間を長くなる効果と、雰囲気ガスの溶解体積の増大によって気泡消失時間が短くなる効果とが拮抗する。拮抗する二つの効果のどちらが支配的になるかにより、平均液膜厚を厚くしたときに気泡消失時間が長くなるか短くなるかが決まる。すなわち、二酸化炭素の場合は硬化性組成物(A)に対する溶解度が大きいために、平均液膜厚を厚くすることによって雰囲気ガスの溶解体積が増大する効果が毛細管力の減少の効果を上回り、膜厚を厚くすればするほど気泡消失時間が短くなる。一方で、ヘリウムの場合は硬化性組成物(A)に対する溶解度が小さいために、平均液膜厚を厚くしたことによる毛細管力の減少の効果が雰囲気ガスの溶解体積の増大の効果を上回り、平均液膜厚を厚くすればするほど気泡消失時間が長くなる。
平均液膜厚が70nm未満の場合にはヘリウムが二酸化炭素よりも有利であるが、これはヘリウムがモールドへ拡散できるのに対して二酸化炭素がモールドへ拡散できないことが原因である。平均液膜厚が70nm以上である場合には二酸化炭素がヘリウムよりも有利であるが、これは硬化性組成物(A)への溶解体積の増大効果がモールドに対する拡散の効果を上回ったことが原因である。
平均液膜厚が100μmを超えると、基板の上に硬化性組成物(A)を配置する配置工程の実施が困難になりうるので、平均液膜厚は100μm以下であることが望ましい。ただし、平均液膜厚が100μmを超えても基板の上に硬化性組成物(A)を配置することができれば、平均液膜厚が100μmを超えてもよい。
[比較例10、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9]
パターン形成方法において、雰囲気ガス(ギャップ内気体)を酸素、あるいは酸素と二酸化炭素の混合ガスとし、平均液膜厚を70nmとした。そして、3.25plの硬化性組成物(A)の液滴同士が接するときにできるモールド・基板・硬化性組成物(A)の三相界面に閉じ込められた気泡0.7plが消失するまでの時間を計算した。拡散係数および溶解度係数の入力値としては、各気体のモル比率にしたがった加重平均値を用いた。開始時の液滴の直径を100μmと設定した。モールド厚を1mmとした。気泡消失時間の計算結果を表4に示す。
Figure 2023116190000036
比較例7、比較例10、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9の結果から、硬化性組成物(A)の平均液膜厚が70nmのとき、二酸化炭素のモル比率が10%以上である酸素と二酸化炭素の混合ガス雰囲気下では気泡消失時間がヘリウム雰囲気よりも短いことが理論計算により確認された。ここで、実施例4乃至9は、雰囲気ガスがモル比率で10%以上の二酸化炭素とモル比率で5%以上90%以下の酸素を含む例であり、このような混合ガス雰囲気下では気泡消失時間がヘリウム雰囲気よりも短い。
以下、上記の膜形成方法あるいはパターン形成方法を利用して物品を製造する物品製造方法を説明する。上記の膜形成方法あるいはパターン形成方法によって形成される硬化膜、あるいは硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。光学素子としては、マイクロレンズ、導光体、導波路、反射防止膜、回折格子、偏光素子、カラーフィルタ、発光素子、ディスプレイ、太陽電池等が挙げられる。MEMSとしては、DMD、マイクロ流路、電気機械変換素子等が挙げられる。記録素子としては、CD、DVDのような光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク、磁気ヘッド等が挙げられる。センサとしては、磁気センサ、光センサ、ジャイロセンサ等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図4(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図4(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図4(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図4(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図4(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図4(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
次に、他の物品製造方法について説明する。図5(a)に示すように、石英ガラス等の基板1yを用意し、続いて、インクジェット法等により、基板1yの表面にインプリント材3yを付与する。必要に応じて、基板1yの表面に金属や金属化合物等の別の材料の層を設けても良い。
図5(b)に示すように、インプリント用の型4yを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3yに向け、対向させる。図5(c)に示すように、インプリント材3yが付与された基板1yと型4yとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3yは型4yと基板1yとの隙間に充填される。この状態で光を型4yを透して照射すると、インプリント材3は硬化する。
図5(d)に示すように、インプリント材3yを硬化させた後、型4yと基板1yを引き離すと、基板1y上にインプリント材3yの硬化物のパターンが形成される。こうして硬化物のパターンを構成部材として有する物品が得られる。なお、図5(d)の状態で硬化物のパターンをマスクとして、基板1yをエッチング加工すれば、型4yに対して凹部と凸部が反転した物品、例えば、インプリント用の型を得ることもできる。
次に、上記の平坦面を有する膜を形成する膜形成方法を利用して物品を製造する物品製造方法を説明する。以下、物品製造方法は、上記の膜形成方法に従って基板の上に膜を形成する膜形成工程と、該膜が形成された該基板を処理する処理工程とを含み、それらの工程を経た該基板から物品を製造する。該処理工程は、例えば、該膜の上にフォトレジスト膜を形成する工程と、該フォトレジスト膜に露光装置を用いて潜像を形成する工程と、該潜像を現像しフォトレジストパターンを形成する工程とを含みうる。該処理工程は、該フォトレジストパターンを使用して基板1を処理(例えば、エッチング、イオン注入)する工程を更に含みうる。
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。

Claims (11)

  1. 基材の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、
    前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドの膜形成領域とを接触させる接触工程と、
    前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
    前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、
    を含む膜形成方法であって、
    前記接触工程において、前記基材と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
    前記硬化性組成物に対する前記気体の溶解度係数が0.5kg/m・atm以上10kg/m・atm以下であり、
    前記硬化性組成物の体積を前記膜形成領域の面積で除した値である平均液膜厚が70nm以上である、
    ことを特徴とする膜形成方法。
  2. 前記平均液膜厚が100μm以下である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の膜形成方法。
  3. 基材の上に硬化性組成物を配置する配置工程と、
    前記配置工程の後に前記硬化性組成物とモールドの膜形成領域とを接触させる接触工程と、
    前記接触工程の後に前記硬化性組成物を硬化させる硬化工程と、
    前記硬化工程の後に前記硬化性組成物と前記モールドとを分離する分離工程と、
    を含む膜形成方法であって、
    前記接触工程において、前記基材と前記モールドとの間の空間を満たす気体が存在し、
    前記気体の前記硬化性組成物に対する溶解度係数をS[kg/m・atm]、拡散係数をD[m/s]、前記硬化性組成物の体積を前記膜形成領域の面積で除した値である平均液膜厚をT[nm]としたとき、S・D・Tが1.75×10-9以上かつSが10以下である、
    ことを特徴とする膜形成方法。
  4. Sが0.5以上である、
    ことを特徴とする請求項3に記載の膜形成方法。
  5. Dが5×10-12以上かつ1×10-8以下である、
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の膜形成方法。
  6. 前記気体は、モル比率で10%以上の二酸化炭素を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
  7. 前記気体は、モル比率で10%以上の二酸化炭素とモル比率で5%以上90%以下の酸素を含む、
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の膜形成方法。
  8. 前記モールドの前記膜形成領域は、パターンを有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記パターンが転写された前記膜が形成される、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の膜形成方法。
  9. 前記モールドは、平坦面を有し、前記接触工程、前記硬化工程および前記分離工程を経て、前記平坦面にならった面を有する前記膜が形成される、
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の膜形成方法。
  10. 前記基材の最表層が、少なくともシリコン原子を含む絶縁層である、
    ことを特徴とする請求項1乃至9記載のパターン形成方法。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の膜形成方法によって基板の上に膜を形成する工程と、
    前記膜が形成された前記基板を処理して物品を得る工程と、
    を含むことを特徴とする物品製造方法。
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