JP2023112954A - ガス発生器 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定した動作が実現できるばかりでなく、その構造上の工夫によって軽量化ならびに製造コストの削減が図られたガス発生器を提供する。【解決手段】ガス発生器1は、点火器40と、ハウジングの内部の空間を軸方向にガス発生剤収容室S1とフィルタ室S2とに区画する仕切り部材50と、ガス発生剤収容室S1に収容されたガス発生剤60およびコイルバネ70とを備える。コイルバネ70は、仕切り部材50とガス発生剤60との間に介装され、ガス発生剤60を仕切り部材50から離間させつつガス発生剤収容室S1の内部において固定する。ガス発生剤収容室S1の容積をV1とし、コイルバネ70が配置されることでガス発生剤収容室S1の内部においてガス発生剤60が配置されない空間である非充填空間S1Aの容積をV2とした場合に、これらV1,V2が、0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、自動車等に装備される乗員保護装置としてのエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関し、特に、サイドエアバッグ装置等に好適に組み込まれる外形が長尺円柱状のいわゆるシリンダ型ガス発生器に関する。
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニットからの通電によって点火器を着火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。
ガス発生器には、車両等に対する設置位置や出力等の仕様に基づき、種々の構成のものが存在している。その一つに、シリンダ型ガス発生器と称されるものがある。シリンダ型ガス発生器は、その外形が長尺円柱状であり、サイドエアバッグ装置やカーテンエアバッグ装置、ニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に好適に組み込まれる。
通常、シリンダ型ガス発生器においては、ハウジングの軸方向の一端部に点火器が組付けられるとともに当該一端部側にガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室が設けられ、ハウジングの軸方向の他端部側にフィルタが配置されたフィルタ室が設けられ、当該フィルタ室を規定する部分のハウジングの周壁部にガス噴出口が設けられる。
このように構成されたシリンダ型ガス発生器においては、点火器の作動に伴ってガス発生剤が燃焼することでハウジングの内部においてガスが発生し、発生したガスがフィルタの内部を通過した後にガス噴出口を介して外部に噴出されることになる。
なお、この種のシリンダ型ガス発生器が開示された文献としては、たとえば特開2007-314102号公報(特許文献1)等がある。
特開2007-314102号公報
一般に、ガス発生器においては、作動時においてガス発生剤を安定して持続的に燃焼させることが重要である。ガス発生剤を安定して持続的に燃焼させるためには、ガス発生剤を所定の高圧環境下に置くことが必要であるため、ガス発生器においては、耐圧容器であるハウジングに設けられるガス噴出口の大きさを所望の大きさに絞ることにより、作動時においてハウジングの内部の空間の圧力が相当程度にまで高まるようにその設計がなされている。
その一方で、近年においては、ガス発生器の軽量化が強く求められている。ガス発生器の軽量化を図るためには、ハウジングの厚みを薄型化することが効果的であり、そのように構成することができれば材料費の低減にも繋がり、結果として製造コストを削減することも可能になる。しかしながら、ハウジングの厚みを単に薄くした場合には、ハウジングの耐圧性能を十分に確保することができなくなってしまうおそれがある。
そのため、ガス発生器の安定した動作を実現しつつその軽量化を図るためには、作動時におけるハウジングの内部の空間の圧力をガス発生剤が安定して持続的に燃焼することができる範囲で相当程度にまで下げることが不可欠となるが、これをガス発生器の構造上の工夫によって実現することは容易ではない。
したがって、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、安定した動作が実現できるばかりでなく、その構造上の工夫によって軽量化ならびに製造コストの削減が図られたガス発生器を提供することを目的とする。
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、仕切り部材と、点火器と、コイルバネとを備えている。上記ハウジングは、軸方向の一端部および他端部が閉塞された長尺筒状の部材からなり、ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室と、フィルタが配置されたフィルタ室とを内部に含んでいる。上記仕切り部材は、上記ハウジングの上記一端部側の位置に上記ガス発生剤収容室が形成されるとともに、上記ハウジングの上記他端部側の位置に上記フィルタ室が形成されるように、上記ハウジングの内部の空間を軸方向に仕切っている。上記点火器は、上記ガス発生剤を燃焼させるために上記ハウジングの上記一端部に組付けられている。上記コイルバネは、上記仕切り部材と上記ガス発生剤との間に介装されることで上記ガス発生剤収容室に収容されており、上記ガス発生剤を上記仕切り部材から離間させつつ上記ガス発生剤を上記ハウジングの上記一端部側に向けて付勢することで上記ガス発生剤を上記ガス発生剤収容室の内部において固定している。上記本発明に基づくガス発生器は、上記ガス発生剤収容室の体積をV1とし、上記コイルバネが配置されることで上記ガス発生剤収容室の内部において上記ガス発生剤が配置されない空間である非充填空間の体積をV2とした場合に、0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たしている。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記点火器が、点火薬が収容された点火部を有していてもよく、その場合には、上記点火部が、他の部材を介することなく上記ガス発生剤に面していることが好ましい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記コイルバネが、上記仕切り部材側に位置する円筒状部と、上記円筒状部の上記ガス発生剤側の端部に位置することで上記ガス発生剤を上記ハウジングの上記一端部側に向けて押圧する押圧部とを含んでいてもよい。
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記仕切り部材が、上記ハウジングの軸方向に直交するように配置された隔壁部と、上記隔壁部の周縁から上記ハウジングの上記一端部側に向けて立設された環状壁部とを有する有底筒状の部材にて構成されていてもよく、その場合には、上記ハウジングの上記他端部側に位置する上記コイルバネの軸方向端部が、少なくとも上記仕切り部材の内部に挿入されていることが好ましい。
本発明によれば、安定した動作が実現できるばかりでなく、その構造上の工夫によって軽量化ならびに製造コストの削減が図られたガス発生器とすることができる。
実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。 図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図である。 図1に示すシリンダ型ガス発生器の仕切り部材近傍の拡大断面図である。 検証試験の試験条件および試験結果を纏めた表である。 検証試験の試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、サイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に本発明を適用した場合を例示するものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器の概略図である。図2および図3は、それぞれ図1に示すシリンダ型ガス発生器の点火器近傍の拡大断面図および仕切り部材近傍の拡大断面図である。まず、これら図1ないし図3を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1の構成について説明する。
図1に示すように、シリンダ型ガス発生器1は、長尺円柱状の外形を有しており、軸方向に位置する一端部および他端部が閉塞された長尺円筒状のハウジングを有している。ハウジングは、ハウジング本体10と、ホルダ組立体20と、閉塞部材30とを含んでいる。
ハウジング本体10、ホルダ組立体20および閉塞部材30にて構成されたハウジングの内部には、内部構成部品としての点火器40、仕切り部材50、ガス発生剤60、コイルバネ70およびフィルタ80等が収容されている。また、ハウジングの内部には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤60およびコイルバネ70が収容されたガス発生剤収容室S1と、フィルタ80が配置されたフィルタ室S2とが位置している。
ここで、以下の説明においては、シリンダ型ガス発生器1の内部の空間のうち、上述したガス発生剤収容室S1に相当する空間と、上述したフィルタ室S2のうちの後述するフィルタ80の中空部81に相当する空間とを含めて、燃焼室と称することとする。
ハウジング本体10は、ハウジングの周壁部を構成しており、軸方向の両端に開口が形成された長尺円筒状の部材からなる。ホルダ組立体20は、ハウジング本体10の軸方向と平行な方向に沿って延びる貫通孔状の中空開口部を有する筒状の部材からなり、後述するホルダ部20Aとコネクタ部20Bとを有している。閉塞部材30は、略円盤状の部材からなる。
ハウジング本体10は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されていてもよいし、SPCEに代表される圧延鋼板をプレス加工することで円筒状に成形したプレス成形品にて構成されていてもよい。また、ハウジング本体10は、STKMに代表される電縫管にて構成されていてもよい。
特に、ハウジング本体10を圧延鋼板のプレス成形品や電縫管にて構成した場合には、ステンレス鋼や鉄鋼等の金属製の部材を用いた場合に比べて安価にかつ容易にハウジング本体10を形成することができるとともに、大幅な軽量化が可能になる。
一方、ホルダ組立体20のうちのホルダ部20Aおよび閉塞部材30は、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。
ホルダ組立体20は、ハウジング本体10の軸方向の一方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記一方の開口端にホルダ組立体20が内挿された状態で、当該ホルダ組立体20に向けてハウジング本体10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられるとともに、当該ホルダ組立体20の近傍に向けてハウジング本体10の他の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、ホルダ組立体20がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の一端部がホルダ組立体20によって構成されることになる。なお、当該かしめ固定の詳細について、後において説明することとする。
閉塞部材30は、ハウジング本体10の軸方向の他方の開口端を閉塞するようにハウジング本体10に固定されている。具体的には、ハウジング本体10の上記他方の開口端に閉塞部材30が内挿された状態で、当該閉塞部材30の近傍に向けてハウジング本体10の所定位置が径方向内側に向けて縮径させられることにより、閉塞部材30がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、ハウジングの軸方向の他端部が閉塞部材30によって構成されることになる。なお、当該かしめ固定の詳細についても、後において説明することとする。
これらかしめ固定は、ハウジング本体10を径方向内側に向けて略均等に縮径させる八方かしめと呼ばれるかしめ固定である。この八方かしめを行なうことにより、ハウジング本体10には、かしめ部12~14が設けられることになる。これにより、ハウジング本体10とホルダ組立体20および閉塞部材30とがそれぞれ直接接触することになり、これらの間に隙間が生じることが防止されている。
なお、ハウジング本体10に対するホルダ組立体20および閉塞部材30の組付構造は、上述した組付構造(詳細については後述する)に限定されるものではなく、他の組付構造を採用することとしてもよい。また、ハウジング本体10と閉塞部材30とを別体とはせずに、有底筒状の形状を有する一つの部材にてこれを構成することとしてもよい。
図1および図2に示すように、点火器40は、ホルダ組立体20によって支持されることでハウジングの軸方向の上述した一端部に組付けられている。点火器40は、ガス発生剤60を燃焼させるためのものであり、ハウジングの内部の空間に面するように設置されている。
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、スクイブとも称される。点火器40は、基部41と、点火部42と、一対の端子ピン43とを含んでいる。基部41は、点火部42および一対の端子ピン43を保持する部位であり、ホルダ組立体20に対して固定される部位でもある。基部41は、一対の端子ピン43が挿通されることでこれを保持している。
点火部42は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体(ブリッジワイヤ)とを含んでいる。一対の端子ピン43は、点火薬を着火させるために点火部42に接続されている。
より詳細には、点火部42は、カップ状に形成されたスクイブカップを含んでおり、このスクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン43の先端を連結するように上述した抵抗体が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。また、点火部42内には、必要に応じて伝火薬が装填されていてもよい。
ここで、抵抗体としては、一般にニクロム線やプラチナおよびタングステンを含む合金製の抵抗線等が用いられ、点火薬としては、一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が用いられる。また、伝火薬としては、B/KNO、B/NaNO、Sr(NO等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
衝突を検知した際には、端子ピン43を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の熱粒子は、点火薬を収納しているスクイブカップを開裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
点火器40は、その点火部42がハウジングの内部に向けて突出して位置するとともに、その一部がホルダ組立体20の上述した中空開口部の内部に配置された状態でホルダ組立体20に固定されている。これにより、点火器40は、その点火部42がガス発生剤収容室S1側に位置するとともに、その端子ピン43がガス発生剤収容室S1側とは反対側に位置している。
図2に示すように、ホルダ組立体20は、ガス発生剤収容室S1側に位置する金属製のホルダ部20Aと、ガス発生剤収容室S1側とは反対側に位置する樹脂製のコネクタ部20Bとを有している。ホルダ組立体20は、予めこれらホルダ部20Aおよびコネクタ部20Bが相互に組付けられることで一体化された部品として構成され、これがハウジング本体10の上述した一方の開口端に取付けられる。
ホルダ部20Aは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通部を有する偏平な略円盤状の部材にて構成されており、筒状の第1胴部21と、第1胴部21の外周面から外側に向けて突出する環状突部22とを含んでいる。
ホルダ部20Aは、その軸方向がハウジング本体10の軸方向と平行となるようにハウジング本体10に内挿されている。これにより、ホルダ部20Aに設けられた貫通部は、ホルダ組立体20の上述した中空開口部の一部を規定しており、また、環状突部22は、ハウジング本体10の径方向に沿って第1胴部21から突出している。なお、上述した環状突部22は、第1胴部21のガス発生剤収容室S1側の端部に設けられている。
ホルダ部20Aは、点火器40を受け入れてこれを保持するための部材であり、点火器40を受け入れるために、その軸方向のガス発生剤収容室S1側の端部に凹状形状の収容部23aを有している。この収容部23aは、ホルダ部20Aに設けられた貫通部に通じている。また、ホルダ部20Aのガス発生剤収容室S1側の端部には、収容部23aを取り囲むようにかしめ部23bが設けられている。かしめ部23bは、点火器40をホルダ部20Aにかしめ固定するための部位である。
点火器40は、その基部41がホルダ部20Aの収容部23aに収容された状態でホルダ部20Aに固定されている。具体的には、ホルダ部20Aの収容部23aに基部41が挿入されるとともに、当該基部41が収容部23aの底面に当て留めされ、この状態においてホルダ部20Aに設けられたかしめ部23bが折り曲げられることにより、点火器40がホルダ部20Aに固定されている。これにより、点火器40は、ホルダ部20Aによって保持されることになる。
ここで、ホルダ部20Aと点火器40との間には、Oリング等からなるシール部材27が介装されており、これによってホルダ部20Aと点火器40との間の隙間がシール部材27によって埋め込まれることで当該隙間が封止されている。したがって、このように構成することにより、当該部分における気密性の確保が可能になる。なお、点火器40の固定方法は、上述したかしめ部23bを用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
コネクタ部20Bは、その中央部に軸方向に沿って延びる貫通部を有する略円筒状の部材にて構成されており、筒状の第2胴部24と、第2胴部24の軸方向の一端から当該軸方向に沿って延設された筒状部25とを含んでいる。
コネクタ部20Bは、その軸方向がハウジング本体10の軸方向と平行となるようにハウジング本体10に内挿されている。これにより、コネクタ部20Bに設けられた貫通部は、ホルダ組立体20の上述した中空開口部の一部を規定しており、また、筒状部25は、第2胴部24からガス発生剤収容室S1側に向けて延びている。
ここで、上述したホルダ部20Aは、コネクタ部20Bに圧入されることで固定されている。より詳細には、ホルダ部20Aの第1胴部21がコネクタ部20Bの筒状部25に圧入されており、これにより第1胴部21と筒状部25とが圧接触することでこれらホルダ部20Aとコネクタ部20Bとが容易には離脱しないように固定されている。
コネクタ部20Bは、点火器40の端子ピン43に接続される接続コネクタを受け入れるためのものである。このコネクタ部20Bの内部には、点火器40の端子ピン43が配置されている。上述したコネクタ部20Bに設けられた貫通部は、この接続コネクタを受け入れるための部位を構成している。
より詳細には、シリンダ型ガス発生器1においては、点火器40が、外部に設けられた車両等のコントロールユニット(不図示)と電気的に接続される必要があり、この電気的な接続には、通常ハーネスが用いられる。このハーネスの先端には、雄型コネクタが取付けられており、コネクタ部20Bには、この雄型コネクタに接続可能な雌型コネクタが設けられる必要がある。コネクタ部20Bに設けられた上記貫通部は、この雌型コネクタを構成している。
なお、雌型コネクタとして機能する上記貫通部にハーネスの雄型コネクタが挿し込まれることにより、ハーネスの芯線と端子ピン43との電気的導通が実現され、これにより点火器40と車両等のコントロールユニットとの結線が行なわれることになる。
また、コネクタ部20Bは、ハウジング本体10とホルダ部20Aとの間の気密性を確保する部材としても機能する。このハウジング本体10とホルダ部20Aとの間の気密性を確保するための部位は、コネクタ部20Bのうちの主として筒状部25によって発揮される。
具体的には、筒状部25は、ハウジング本体10の開口端に内挿されるとともに、ホルダ部20Aの第1胴部21に外挿されている。これにより、ハウジング本体10の軸方向における筒状部25が位置する部分においては、ハウジング本体10の径方向内側から径方向外側にかけて、ホルダ部20Aの第1胴部21、コネクタ部20Bの筒状部25、ハウジング本体10の順で、これら部位が配置されることになる。すなわち、第1胴部21は、筒状部25によって取り囲まれており、筒状部25は、ハウジング本体10によって取り囲まれている。
そして、当該筒状部25に対応する部分(すなわち筒状部25を覆う部分)のハウジング本体10には、径方向内側に向けて縮径したかしめ部12が設けられている。このかしめ部12が設けられることにより、金属製の部材からなるハウジング本体10のかしめ部12と、金属製の部材からなるホルダ部20Aの第1胴部21とにより、樹脂製の部材からなるコネクタ部20Bの筒状部25が挟み込まれることになり、これにより当該筒状部25によってハウジング本体10と第1胴部21との間の隙間が封止されている。
ここで、ハウジング本体10にかしめ部12が設けられる際には、当該ハウジング本体10と第1胴部21とによって筒状部25が挟み込まれることにより、その荷重を受けて筒状部25に圧縮変形が生じる。これにより、筒状部25とハウジング本体10とが密着するとともに、筒状部25と第1胴部21とが密着することになる。
そのため、ハウジング本体10および第1胴部21のそれぞれに密着した状態で筒状部25がこれらハウジング本体10と第1胴部21との間に介装された状態になるため、上述した隙間の封止が実現できることになる。したがって、このように構成することにより、当該部分における気密性の確保が可能になる。
コネクタ部20Bの材質としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば6ナイロン、66ナイロン、および、これらにガラスフィラーが充填されたもの等に代表されるようなナイロン系樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等を好適に用いることができる。
なお、ホルダ部20Aにおいては、第1胴部21よりもガス発生剤収容室S1側の位置に環状突部22が設けられている。そのため、環状突部22は、ホルダ組立体20がハウジング本体10から抜け落ちることを防止するストッパとしての機能も有している。この環状突部22のストッパとしての機能は、シリンダ型ガス発生器1の製造時や非動作時に発揮されるのみならず、動作時においてガス発生剤収容室S1の内圧上昇に伴う圧力を受けた際にも発揮されるものである。
ここで、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、筒状部25の内径が第2胴部24の内径よりも大きく、かつ、コネクタ部20Bに、第2胴部24の内周面と筒状部25の内周面とを接続する環状段差面26が設けられている。これにより、当該環状段差面26が設けられたコネクタ部20Bの軸方向の一端には、ホルダ部20Aの第1胴部21が内挿されており、これに伴ってガス発生剤収容室S1とは反対側に位置する第1胴部21の軸方向端面が、環状段差面26に当接している。
このように構成することにより、ホルダ部20Aとコネクタ部20Bとの固定が、上述したように、ホルダ部20Aをコネクタ部20Bに圧入することで行なえることになり、しかもハウジング本体10の軸方向に沿ってホルダ部20Aとコネクタ部20Bとの位置決めが精度よく行なえることになる。
なお、当該構成を採用した場合には、上述した雌型コネクタが、ガス発生剤収容室S1側とは反対側に位置する第1胴部21の軸方向端面と第2胴部24の内周面とによって規定されることになる。
図1および図3に示すように、ハウジングの内部の空間の所定位置には、仕切り部材50が配置されている。仕切り部材50は、ハウジングの内部の空間を軸方向においてガス発生剤収容室S1とフィルタ室S2とに仕切るための部材である。
仕切り部材50は、有底円筒状の形状を有しており、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成されている。仕切り部材50は、ハウジング本体10の軸方向に直交するように配置された平板状の隔壁部51と、当該隔壁部51の周縁からガス発生剤収容室S1側に向けて立設された筒板状の環状壁部52とを有している。仕切り部材50は、その隔壁部51の外側の主面がフィルタ80に当接するように配置されており、環状壁部52の外周面は、ハウジング本体10の内周面に当接している。
隔壁部51のフィルタ80に当接する主面には、スコア51aが設けられている。スコア51aは、ガス発生剤60の燃焼によるガス発生剤収容室S1の内圧上昇に伴って当該隔壁部51が破断して開口部が形成されるようにするためのものであり、たとえば放射状に互いに交差するように設けられた複数の溝にて構成される。スコア51aは、フィルタ80のうちの中空部81に対向する部分に設けられている。
仕切り部材50は、ハウジング本体10に内挿された状態で当該ハウジング本体10に接合されることで固定されている。より詳細には、仕切り部材50は、ハウジング本体10の内部に圧入されるとともに、仕切り部材50の環状壁部52とハウジング本体10との接触部またはその近傍においてこれらが溶接されることで固定されている。
これにより、仕切り部材50が内挿された部分に対応するハウジング本体10および仕切り部材50には、ハウジング本体10の周方向に沿って延びる溶接部90が形成されることになる。なお、仕切り部材50とハウジング本体10との溶接には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、抵抗溶接等が好適に利用できる。
このように仕切り部材50をハウジング本体10に溶接によって固定した場合には、これら仕切り部材50とハウジング本体10との間の隙間が溶接部90によって埋め込まれることになり、これによって当該隙間が封止されることになる。したがって、このように構成することにより、当該部分における気密性の確保が可能になる。
なお、仕切り部材50のハウジング本体10への固定方法は、上述した圧入および溶接を利用した固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。また、その場合における仕切り部材50とハウジング本体10との間の気密性の確保は、Oリングやシールテープ等を適宜の位置に設けること等でこれを実現することができる。
図1ないし図3に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、ホルダ組立体20と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちガス発生剤収容室S1)には、ガス発生剤60と、コイルバネ70と、燃焼制御部材45とが配置されている。
このうち、燃焼制御部材45は、ホルダ組立体20が位置する側(すなわち、ガス発生剤収容室S1のうちのハウジングの軸方向の上述した一端部側)に配置されており、コイルバネ70は、仕切り部材50が位置する側(すなわち、ガス発生剤収容室S1のうちのハウジングの軸方向の上述した他端部側)に配置されている。また、ガス発生剤60は、これら燃焼制御部材45およびコイルバネ70の間に配置されている。
ガス発生剤60は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火されて燃焼することでガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤60としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、ガス発生剤60は、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として構成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅、塩基性炭酸銅等の塩基性金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤60の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、シリンダ型ガス発生器1が組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤60の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤60の形状の他にもガス発生剤60の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
コイルバネ70は、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、金属線材を曲げ加工することによって形成された円筒状部71および押圧部72を有している。
円筒状部71は、金属線材が螺旋状に巻き回されたバネ状の部位からなり、その一端が仕切り部材50の隔壁部51に当接するように配置されている。一方、押圧部72は、円筒状部71の他端に設けられており、たとえば金属線材が所定の間隔をもって略平行に配置されるか、あるいは、金属線材が所定の間隔をもって渦巻き状に配置されることにより、全体として略円板状の形状を有するように構成されている。この押圧部72は、ガス発生剤60に接触している。
ここで、コイルバネ70は、仕切り部材50とガス発生剤60とによって挟み込まれることにより、圧縮された状態とされている。そのため、ガス発生剤60は、コイルバネ70によってホルダ組立体20側(すなわち、ハウジングの上述した一端部側)に向けて弾性付勢されることになり、これによってガス発生剤60がガス発生剤収容室S1の内部において移動してしまうことが防止されている。そのため、このように構成することにより、成形体からなるガス発生剤60が振動等によって粉砕されてしまうことが未然に防止できることになる。
また、コイルバネ70の組付け時において、当該コイルバネ70が仕切り部材50とガス発生剤60とによって挟み込まれて圧縮することにより、ハウジングの内部に収容される各種の構成部品の寸法ばらつきが当該コイルバネ70によって吸収できることにもなる。
燃焼制御部材45は、シリンダ型ガス発生器1の作動時において、点火器40にて発生する熱粒子を効率的にガス発生剤60に導くためのものである。燃焼制御部材45は、略円筒状の形状を有しており、点火部42の周面を覆うようことで当該点火部42を取り囲むように点火部42に外挿されている。
このように、点火部42が燃焼制御部材45によって取り囲まれていることにより、点火部42の外表面を規定するスクイブカップの破裂の際に、当該スクイブカップのうちのガス発生剤60側に位置する先端部において主として開口が形成されることになり、これに伴って点火部42にて発生する熱粒子の進行方向がハウジングの軸方向に絞られることになる。
換言すれば、ハウジング本体10と点火部42との間の隙間を埋めるように燃焼制御部材45が配置されることにより、燃焼制御部材45が点火部42の径方向外側に位置することになり、点火部42にて発生する熱粒子の当該径方向外側への進行が燃焼制御部材45によって阻害されることとなり、結果として熱粒子の進行方向が上記軸方向に絞られることになる。
したがって、このように構成することにより、シリンダ型ガス発生器1の作動時において、点火器40の点火部42にて発生する熱粒子の進行方向に指向性を与えることが可能になり、当該熱粒子を効率的にガス発生剤60に導くことが可能になる。
また、図2に示すように、燃焼制御部材45の外周面には、周方向に沿って延びる環状凹部45aが設けられている。この環状凹部45aは、燃焼制御部材45をハウジング本体10に固定するための部位である。具体的には、ハウジング本体10に燃焼制御部材45が内挿された状態で、当該環状凹部45aに対応する部分のハウジング本体10が径方向内側に向けて縮径させられて当該環状凹部45aに係合することにより、燃焼制御部材45がハウジング本体10に対してかしめ固定されている。これにより、当該環状凹部45aに対応する部分のハウジング本体10には、かしめ部13が設けられている。
ここで、上述したかしめ部12および当該かしめ部13がハウジング本体10の所定位置に設けられることにより、ホルダ組立体20のハウジング本体10に対する固定も実現されることになる。すなわち、ホルダ組立体20のうちのホルダ部20Aに設けられた環状突部22を挟み込むように一対のかしめ部12,13が設けられることにより、ハウジング本体10の軸方向に沿ってホルダ部20Aが移動することが制限されることになるため、これによりホルダ組立体20がハウジング本体10に対して強固に固定されることになる。
図1に示すように、ハウジングの内部の空間のうち、閉塞部材30と仕切り部材50とによって挟まれた空間(すなわちフィルタ室S2)には、フィルタ80が配置されている。フィルタ80は、ハウジング本体10の軸方向と平行な方向に沿って延びる中空部81を有する円筒状の部材からなり、その軸方向の一方の端面が閉塞部材30に当接しており、その軸方向の他方の端面が仕切り部材50の隔壁部51に当接している。
フィルタ80は、ガス発生剤60が燃焼することによって発生したガスがこのフィルタ80中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれるスラグ(残渣)等を除去する除去手段としても機能する。上述したように円筒状の部材からなるフィルタ80を利用することにより、作動時においてフィルタ室S2を流動するガスに対する流動抵抗が低く抑えられることになり、効率的なガスの流動が実現可能となる。
フィルタ80としては、好適にはステンレス鋼や鉄鋼等からなる金属線材または金属網材の集合体にて構成されたものが利用できる。具体的には、メリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体、またはこれらをプレスにより押し固めたもの等が利用できる。
また、フィルタ80として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用できる。
フィルタ室S2を規定する部分のハウジング本体10には、ガス噴出口11が周方向および軸方向に沿って複数個設けられている。これら複数個のガス噴出口11は、フィルタ80を通過した後のガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
なお、閉塞部材30は、ハウジング本体10の所定位置に設けられたかしめ部14によってハウジング本体10に固定されている。具体的には、閉塞部材30から見てフィルタ室S2が位置する側とは反対側に位置する部分であってかつ閉塞部材30に隣接する部分のハウジング本体10には、径方向内側に向けて縮径したかしめ部14が設けられており、このかしめ部14とフィルタ80とによって閉塞部材30が挟み込まれている。これにより、そのため、ハウジング本体10の軸方向に沿って閉塞部材30が移動することが制限されることになるため、これにより当該閉塞部材30がハウジング本体10に対して強固に固定されることになる。
次に、図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1の作動時における動作について説明する。
図1を参照して、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1が搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。
点火器40が作動すると、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することによって点火部42内の圧力が上昇し、これによって点火部42のスクイブカップが開裂し、点火薬またはこれに加えて伝火薬が燃焼することで発生した熱粒子が点火部42の外部へと流出する。ガス発生剤60に達した熱粒子は、ガス発生剤60を燃焼させ、これによりガス発生剤収容室S1内において多量のガスが発生する。
これに伴い、ガス発生剤収容室S1の圧力が上昇し、当該ガス発生剤収容室S1の内圧が所定の圧力にまで達することにより、仕切り部材50のうちのスコア51aが設けられた部分に破断が生じる。これにより、フィルタ80の中空部81に対向する部分において仕切り部材50に開口部が形成されることになり、ガス発生剤収容室S1とフィルタ室S2とが当該開口部を介して連通した状態となる。
これに伴い、ガス発生剤収容室S1において発生したガスが、仕切り部材50に形成された開口部を介してフィルタ室S2へと流入する。フィルタ室S2に流れ込んだガスは、フィルタ80の中空部81を軸方向に沿って流動した後に径方向に向けて向きを変え、フィルタ80の内部を通流する。その際に、フィルタ80によって熱が奪われてガスが冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ80によって除去される。
そして、フィルタ80を通流した後のガスは、ハウジング本体10に設けられたガス噴出口11を介してハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、シリンダ型ガス発生器1に隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
ここで、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1とした場合には、安定した動作が実現できるばかりでなく、その構造上の工夫により、軽量化ならびに製造コストの削減が図られたものとなる。以下、この点について詳細に説明を行なう。
図1ないし図3に示すように、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、上述したように、コイルバネ70が、仕切り部材50とガス発生剤60との間に介装されるようにガス発生剤収容室S1に配置されている。これにより、ガス発生剤60は、仕切り部材50から離間して位置することになり、ガス発生剤収容室S1には、当該コイルバネ70が配置されることでガス発生剤60が配置されない空間である非充填空間S1Aと、ガス発生剤60が配置された空間である充填空間S1Bとが含まれることになる。
なお、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、ガス発生剤収容室S1にガス発生剤60およびコイルバネ70に加えて燃焼制御部材45が配置されているが、当該燃焼制御部材45は実質的には圧力隔壁として機能することになるため、ここでは、当該燃焼制御部材45が配置された空間は、ガス発生剤収容室S1には含めないこととする。
ここで、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、上述したガス発生剤収容室S1の体積(すなわち、上述した非充填空間S1Aの体積および充填空間S1Bの体積の和)をV1とし、非充填空間S1Aの体積をV2とした場合に、これらV1およびV2の比率である体積比V2/V1が、0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たしている。
この条件を満たすことにより、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1にあっては、その作動時において、ハウジングの内部の空間の圧力(すなわち、燃焼室の内圧)を、ガス発生剤60が安定して持続的に燃焼することができる範囲で相当程度にまで下げることが可能になる。なお、当該条件は、後述する検証試験の結果に基づいて導き出されたものである。
すなわち、上述した体積比V2/V1が、0.05≦V2/V1の条件を満たすことにより、ガス発生剤収容室S1のうちの仕切り部材50側の部分において所定の体積の空洞が設けられることになるため、シリンダ型ガス発生器1の作動時において、当該部分に未燃焼のガス発生剤60が密集することが抑制可能となる。そのため、隔壁部51が破断することで仕切り部材50に形成された開口部が未燃焼のガス発生剤60によって閉塞されてしまうことがなくなるため、当該部分におけるガスの流動抵抗を低減することが可能になる。したがって、ガス発生剤収容室S1にて発生したガスがよりスムーズにフィルタ室S2に流入することになり、燃焼室の内圧の上昇を効果的に抑制することができる。
しかしながら、上述した空洞を大きく構成し過ぎた場合には、ハウジングが大型化してしまうばかりでなく、逆に作動時における燃焼室の内圧の大幅な上昇を招いてしまうことが実験的に確認されている。これは、シリンダ型ガス発生器の作動初期段階においては、ガス発生剤の燃焼に伴って未燃焼の分解ガスが大量に発生することになるが、上述した空洞を大きく構成し過ぎた場合には、この未燃焼の分解ガスがガス発生剤収容室の内部に留まらず、隔壁部が破断することで仕切り部材に形成された開口部を介してフィルタ室に流入して当該フィルタ室に溜まり、その後、遅れてフィルタ室に流入した熱粒子によってこの未燃焼の分解ガスが着火されて爆発的に燃焼することに起因していると考えられる。
この点、上述した体積比V2/V1が、V2/V1≦0.32の条件を満たすことにより、このような内圧上昇のメカニズムが発生することが抑制可能になり、これによって燃焼室の内圧の上昇を効果的に抑制することができることになる。
したがって、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1の如く、上述した体積比V2/V1が0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たすことにより、安定した動作が実現できるばかりでなく、作動時における燃焼室の内圧の上昇を効果的に抑制することが可能になるため、ハウジングの厚みをその分だけ薄型化することが可能になる。これにより、上述した如くの構造上の工夫により、シリンダ型ガス発生器1の軽量化ならびに製造コストの削減が図れることになる。
なお、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、点火器40の点火部42が、他の部材を介することなくガス発生剤60に直接的に面するように構成されている。このように構成することにより、点火器40の作動時において早期にガス発生剤60が燃焼を開始するようになるため、点火器40の作動開始直後における着火性の向上ならびにその際に発生する火力の増強を図ることが可能になる。
したがって、当該構成を採用することにより、多くのガス発生剤が一度に燃焼を開始するようにすることができ、より早期に仕切り部材50に開口部が形成されることになる。そのため、ガス発生剤収容室S1にて発生したガスがよりスムーズにフィルタ室S2に流入することになり、燃焼室の内圧の上昇をさらに効果的に抑制することが可能になる。
また、燃焼室の内圧の上昇をさらに効果的に抑制するためには、フィルタ80の中空部81の直径をより大きくすること(たとえば当該直径を11mm以上とすること)が好ましい。このように構成することにより、作動時において仕切り部材50に形成される開口部の面積を大型化することが可能になるため、ガス発生剤収容室S1にて発生したガスがよりスムーズにフィルタ室S2に流入することになり、燃焼室の内圧の上昇をさらに効果的に抑制することが可能になる。
また、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1においては、上述したように、フィルタ室S2側に位置するコイルバネ70の軸方向端部が、仕切り部材50の内部に挿入されるように構成されている。このようにすれば、シリンダ型ガス発生器1の製造時において、当該コイルバネ70を仕切り部材50に組付けた状態で当該仕切り部材50ごとハウジング本体10に取付けることが可能になるため、その製造が容易化する効果が得られる。
なお、前述の特許文献1には、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1と同様に、ガス発生剤収容室の内部において仕切り部材とガス発生剤との間にコイルバネが介装されてなるシリンダ型ガス発生器が開示されている。しかしながら、当該特許文献1に開示のコイルバネは、未燃焼のガス発生剤がフィルタ室に流入してしまうことを防止するために設けられたものであるため、本実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1に具備されたコイルバネ70とは、その機能が全く異なるものである。現に、当該特許文献1においては、上述した体積比に対する言及がないばかりでなく、当該コイルバネを設けることによって作動時における内圧の上昇の抑制が図られることについてもその記載がない。
(検証試験)
図4は、検証試験の試験条件および試験結果を纏めた表であり、図5は、当該検証試験の試験結果を示すグラフである。以下、これら図4および図5ならびに前述の図1を参照して、本発明者が実施した検証試験について説明する。
検証試験においては、検証例1~6として、上述した体積比V2/V1を種々変更してなるシリンダ型ガス発生器を実際に製造し、これを作動させることによって動作時における燃焼室の最大内圧を測定した。
検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器は、いずれも上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1の構成に準じたものとし、これら検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器において相互に異なるように構成した点は、基本的に図1に示すコイルバネ70の軸方向長さL2のみである。ここで、ガス発生剤収容室S1の軸方向長さL1(より厳密には、ガス発生剤収容室S1のうちの燃焼制御部材45が配置された部分を除く部分の軸方向長さ)が検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器において異なっている理由は、上述したコイルバネ70の軸方向長さL2が異なっているためであり、ガス発生剤収容室S1のうちのガス発生剤60が収容された部分の軸方向長さは、基本的に同じである。
なお、検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器に用いたガス発生剤60は、いずれもGN(グアニジン硝酸塩)およびBCN(塩基性硝酸銅)を主成分としたものであり、そのモル数は、いずれも0.45molである。また、検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器に用いたハウジング本体10の内径Rは、いずれも17.4mmであり、検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器に用いたコイルバネ70の外径および内径は、それぞれ16.2mmおよび14.6mmである。
また、検証例1~6に係るシリンダ型ガス発生器の作動時における最大内圧の測定点は、フィルタ室S2に面する部分の閉塞部材30の略中央部の位置とした(図1中に示す点P参照)。
ここで、検証例1,3,4に係るシリンダ型ガス発生器については、これらをそれぞれ2サンプルずつ準備し、検証例2,5,6に係るシリンダ型ガス発生器については、これらをそれぞれ1サンプルのみ準備した。なお、2サンプルずつ準備した検証例1,3,4に係るシリンダ型ガス発生器については、図5において、それぞれの燃焼室の最大内圧の平均値をグラフにプロットしている。
図4および図5を参照して、検証試験の結果に基づけば、上述した体積比V2/V1がそれぞれ0.093,0.164,0.231,0.291である検証例2~5に係るシリンダ型ガス発生器においては、上述した体積比V2/V1がそれぞれ0.014,0.329である検証例1,6に係るシリンダ型ガス発生器に比較して、有意に燃焼室の最大内圧の低減が図られていることが確認された。具体的には、検証例1,6に係るシリンダ型ガス発生器の燃焼室の最大内圧がいずれも100MPaを超えているのに対し、検証例2~5に係るシリンダ型ガス発生器の燃焼室の最大内圧は、いずれも80MPa未満に抑制されている。なお、図4に示す表においては、燃焼室の最大内圧が100MPa未満に抑制されたものを「良」と評価し、燃焼室の最大内圧が100MPaを超えたものを「不可」と評価している。
当該結果に基づけば、上述した体積比V2/V1が0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たしていることにより、少なくとも燃焼室の最大内圧を100MPa程度以下にまで抑制できることが理解される。また、当該効果をさらに確実ならしめるべく、燃焼室の最大内圧を80MPa程度以下にまで抑制するためには、上述した体積比V2/V1が0.08≦V2/V1≦0.31の条件を満たしていることが好ましく、さらに、当該効果をさらに確実ならしめるべく、燃焼室の最大内圧を70MPa程度以下にまで抑制するためには、上述した体積比V2/V1が0.09≦V2/V1≦0.30の条件を満たしていることが好ましいことが理解される。
なお、本検証試験において製造した構成のシリンダ型ガス発生器において、上述した体積比V2/V1が0.05≦V2/V1≦0.32が実際に満たされるコイルバネ70の軸方向長さL1は、概ね5mm以上25mm以下である。
以上において説明した検証試験の結果に基づけば、上述した実施の形態に係るシリンダ型ガス発生器1とすることにより、安定した動作が実現できるばかりでなく、その構造上の工夫によって軽量化ならびに製造コストの削減が図られたガス発生器とすることができることが確認されたと言える。
(その他の形態)
上述した本発明の実施の形態においては、ハウジングの軸方向の一端部が金属製のホルダ部と樹脂製のコネクタ部とからなるホルダ組立体にて構成されてなるシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、これに代えて、ハウジングの軸方向の一端部を金属製のホルダのみによって構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態においては、点火器の作動に依らずに自動発火するオートイグニッション剤を具備しないシリンダ型ガス発生器を例示して説明を行なったが、これを具備するようにシリンダ型ガス発生器を構成することとしてもよい。当該オートイグニッション剤は、ガス発生剤よりも低い温度で自然発火するものであり、シリンダ型ガス発生器が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において万が一火災等が発生した場合に、シリンダ型ガス発生器が外部から加熱されることによって異常動作が誘発されないようにするためのものである。このオートイグニッション剤をシリンダ型ガス発生器に設ける場合には、たとえば当該オートイグニッション剤を燃焼室内の空間であってかつ仕切り部材に当接するように配置すればよい。その場合、一例としては、オードイグニッションが、コイルバネと仕切り部材とによって挟み込まれることで固定されるようにすることができる。
また、上述した本発明の実施の形態においては、本発明をサイドエアバッグ装置に組み込まれるシリンダ型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではなく、カーテンエアバッグ装置やニーエアバッグ装置、シートクッションエアバッグ装置等に組み込まれるシリンダ型ガス発生器や、シリンダ型ガス発生器と同様に長尺状の外形を有するいわゆるT字型ガス発生器にもその適用が可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 シリンダ型ガス発生器、10 ハウジング本体、11 ガス噴出口、12~14 かしめ部、20 ホルダ組立体、20A ホルダ部、20B コネクタ部、21 第1胴部、22 環状突部、23a 収容部、23b かしめ部、24 第2胴部、25 筒状部、26 環状段差面、27 シール部材、30 閉塞部材、40 点火器、41 基部、42 点火部、43 端子ピン、45 燃焼制御部材、45a 環状凹部、50 仕切り部材、51 隔壁部、51a スコア、52 環状壁部、60 ガス発生剤、70 コイルバネ、71 円筒状部、72 押圧部、80 フィルタ、81 中空部、90 溶接部、S1 ガス発生剤収容室、S1A 非充填空間、S1B 充填空間、S2 フィルタ室。

Claims (4)

  1. ガス発生剤が収容されたガス発生剤収容室およびフィルタが配置されたフィルタ室を内部に含み、軸方向の一端部および他端部が閉塞された長尺筒状のハウジングと、
    前記ハウジングの前記一端部側の位置に前記ガス発生剤収容室が形成されるとともに、前記ハウジングの前記他端部側の位置に前記フィルタ室が形成されるように、前記ハウジングの内部の空間を軸方向に仕切る仕切り部材と、
    前記ガス発生剤を燃焼させるために前記ハウジングの前記一端部に組付けられた点火器と、
    前記仕切り部材と前記ガス発生剤との間に介装されることで前記ガス発生剤収容室に収容され、前記ガス発生剤を前記仕切り部材から離間させつつ前記ガス発生剤を前記ハウジングの前記一端部側に向けて付勢することで前記ガス発生剤を前記ガス発生剤収容室の内部において固定するコイルバネとを備え、
    前記ガス発生剤収容室の体積をV1とし、前記コイルバネが配置されることで前記ガス発生剤収容室の内部において前記ガス発生剤が配置されない空間である非充填空間の体積をV2とした場合に、0.05≦V2/V1≦0.32の条件を満たしている、ガス発生器。
  2. 前記点火器が、点火薬が収容された点火部を有し、
    前記点火部が、他の部材を介することなく前記ガス発生剤に面している、請求項1に記載のガス発生器。
  3. 前記コイルバネが、前記仕切り部材側に位置する円筒状部と、前記円筒状部の前記ガス発生剤側の端部に位置することで前記ガス発生剤を前記ハウジングの前記一端部側に向けて押圧する押圧部とを含んでいる、請求項1または2に記載のガス発生器。
  4. 前記仕切り部材が、前記ハウジングの軸方向に直交するように配置された隔壁部と、前記隔壁部の周縁から前記ハウジングの前記一端部側に向けて立設された環状壁部とを有する有底筒状の部材からなり、
    前記ハウジングの前記他端部側に位置する前記コイルバネの軸方向端部が、少なくとも前記仕切り部材の内部に挿入されている、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。
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