JP2023107101A - 銅部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、新規な銅部材を提供することを目的とする。【解決手段】飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)によって、表面から1nm以内にSi化合物が検出され、以下の(1)または(2)を満たすような銅部材を提供する;(1)X線光電子分光法(XPS)による前記銅部材の前記表面のO1sスペクトルにおいて、酸化銅を含むCu化合物のピーク面積の面積百分率/SiOのピーク面積の面積百分率が1.0より大きく、15.0より小さい;(2)高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)によって前記表面に検出されたSi量が、10μg/dm2以上、150μg/dm2未満、かつ(連続電気化学還元法(SERA: Sequential Electrochemical Reduction Analysis)で測定したCu2O、CuO、及びCu2Sの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい。

Description

本発明は銅部材に関する。
多層配線基板は、絶縁層と配線層が交互に繰返された構造を有している。そのため、多層基板の製造工程において、配線表面に絶縁層との接着性が与えられる。そのために、従来、以下のような処理方法が使用されてきた。
黒化処理法は、配線表面に微細な酸化銅の針状結晶を付与し、アンカー効果によって配線と絶縁層との接着力を得る方法である。
また、配線表面に微細な金属銅の針状結晶を付与し、アンカー効果によって配線と絶縁層との接着力を得る方法もある。例えば、特許文献1では、配線表面にミクロンオーダーの粗化形状を付与し、アンカー効果によって配線と絶縁材料との接着力を得ている。特許文献2には、配線の表面にアンカー効果となる凹凸を形成せずに、層間絶縁層と配線の接着強度を向上させる方法として、銅を酸化して酸化銅を形成した後、ケイ酸アルカリ溶液で処理し、さらにシランカップリング剤を塗布するという表面処理方法が開示されている。特許文献3には、配線表面上にSi-O-Si結合を有する化合物を形成し、さらにその上にカップリング剤または密着性改良剤を含む処理膜を形成する方法が開示されている。特許文献4には、銅表面に金属層を形成し、ケイ酸アルカリ、ケイ酸エステル、ポリシラザンまたは双官能シラン化合物を少なくとも一種以上含む液で処理する工程を有する銅の表面処理方法が開示されている。
特開2000-282265号公報 特開2002-069661号公報 特開2006-080203号公報 特開2007-107080号公報
本発明は、新規な銅部材を提供する。
本発明の一実施態様は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS: Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)による表面の元素分析によって、Si化合物が検出され、X線光電子分光法(XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy)による前記表面のO1sスペクトルの波形分離において、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の値が1.0より大きく、15.0より小さく、前記Cu化合物が銅酸化物を含む、銅部材である。
本発明の他の実施態様は、TOF-SIMSによる表面の元素分析によって、Si化合物が検出され、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)による前記表面の元素分析によって検出されたSiの量が、10μg/dm以上、150μg/dm未満であって、(連続電気化学還元法(SERA: Sequential Electrochemical Reduction Analysis)で測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい、銅部材である。
いずれのSi化合物も、表面から1nm以内に検出されてもよい。
本発明のさらなる実施態様は、XPSによる表面のO1スペクトルの波形分離において、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であり、XPSによる前記表面のO1sスペクトルの波形分離において、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の値が1.0より大きく、15.0より小さく、前記Cu化合物が銅酸化物を含む、銅部材である。
本発明のさらなる実施態様は、XPSによる表面のO1sスペクトルの波形分離において、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であり、ICP-AESによる前記表面の元素分析によって前記表面に検出されたSi量が、10μg/dm以上、150μg/dm未満であって、(SERAで測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい、銅部材である。
上記いずれ銅部材においても、SERAによる前記表面の元素分析によって前記表面に検出されたCuO,CuO,CuSの膜厚の合計値が20nm以上であってもよい。前記表面において、XPSのNarrowスペクトルでN1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の合計原子数に対する、N1sの原子数の原子百分率が0.5at%以上であってもよい。前記表面において、XPSのNarrowスペクトルでN1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の合計原子数に対する、Na1sの原子数の原子百分率が0.1at%以下であってもよい。前記表面のRzが0.39μm以上であってもよい。
本発明のさらなる実施態様は、銅材料を用いて、上記いずれかの銅部材を製造するための方法であって、前記銅材料を酸化処理する第1の工程と、第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤で処理する第2の工程と、第1の工程で酸化処理された前記銅材料を水ガラスで処理する第3の工程と、を含む、方法である。第2の工程が第3の工程の前に、後に、または前後に行われてもよい。
本発明のさらなる実施態様は、銅材料を用いて、上記いずれかの銅部材を製造するための方法であって、前記銅材料を酸化処理する第1の工程と、第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤を含有する水ガラスで処理する第4の工程を含む、方法である。第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤で処理する第5の工程を含んでもよい。第4の工程が第5の工程の前に、後に、または前後に行われてもよい。
上記いずれの方法においても、前記カップリング剤が、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1以上であってもよい。
本発明のさらなる実施態様は、上記いずれかの銅部材の前記表面に樹脂基材が積層された積層体である。
本発明のさらなる実施態様は、上記積層体を含む、プリント基板である。
本発明によって、新規な銅部材を提供できる。
本発明の実施例における、TOF-SIMSによる各銅部材の分析結果を示す図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を用いて詳細に説明するが、必ずしもこれに限定するわけではない。なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==銅部材==
(1)Si化合物層
本明細書に開示される銅部材の銅表面には、Si化合物層を有する。Si化合物層は酸化ケイ素(SixOy)及び/又は水酸化ケイ素(SixOyHz)を含むか、Si化合物層は酸化ケイ素(SixOy)及び/又は水酸化ケイ素(SixOyHz)からなる。酸化ケイ素及び水酸化ケイ素としては、SiO,SiO,SiO,SiO,Si,SiO,Siが例示できる。Si化合物層には、酸化ケイ素及び水酸化ケイ素以外に、ケイ素の炭化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物、または金属元素のケイ化物を含んでいてもよい。銅部材の銅表面を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)またはX線光電子分光法(XPS: X-ray Photoelectron Spectroscopy)によって元素分析すると、酸化ケイ素(SixOy)および水酸化ケイ素(SixOyHz)(本明細書では、これらを総称してSi化合物と称する。)が検出される。XPSによって得られるSi2pに含まれるSi及びその化合物の含有率は、N1s、Na1s、Si2p、Cu2p3に含まれる元素単体およびその化合物の数の総和に対し、0.5%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、3%以上であることがさらに好ましい。XPSによる元素分析では、銅部材の銅表面のO1sスペクトルを波形分離したときに全ての分子のピーク面積に対するSiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であることが好ましい。(以下、XPSにおいて波形分離したときの、ある分子のピーク面積の面積百分率は、特に記載がない限り、全ての分子のピーク面積に対する当該分子のピーク面積の割合を表すものとする。)通常、TOF-SIMSでは、表面から1nm以内にある分子が分析対象となり、XPSでは、表面から数nm~数十nm以内(例えば、10nm以内または20nm以内)にある分子が分析対象となる。その限りで、分析条件は特に限定されず、当業者が適宜決定できる。
この銅部材は、以下の[1][2]のうちの少なくとも1つの条件を満たす。このことによって、銅部材を樹脂に接着させた場合の耐酸性および接着性が向上する。
[1]XPSによる銅部材の表面のO1sスペクトルを波形分離したときに、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の値が1.0より大きく、15.0より小さい。好ましくは、1.2以上14.2以下であり、より好ましくは2.9以上7.3以下である。本明細書で、Cu化合物はCuO、 CuO、Cu(OH)、CuCOの総称である。
[2]高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)によって検出されたSi量が、10μg/dm以上、150μg/dm以下で、且つ(連続電気化学還元法(SERA: Sequential Electrochemical Reduction Analysis)で測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい。Si量は、10μg/dm以上150μg/dm以下が好ましく、10μg/dm以上140μg/dm以下がより好ましく、42.5μg/dm以上47.6μg/dm以下がさらに好ましい。(SERAで測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値は、0.5より大きく、10より小さいことが好ましく、0.6以上7.5以下であることがより好ましく、0.7以上3.3以下であることがさらに好ましい。Cu化合物は表面の凸部に存在し、SiOはその保護層部分である。従って、この比の値が小さいことは凹凸に対し保護層が薄いことを示しており、大きい場合は保護層が厚いことを示しているが、上述の範囲にあるとき、凹凸に対し保護層が適正な厚さとなる。本明細書で、CuO、CuO、及びCuSなどの「膜厚」とは、銅部材の表面または表面近くに広がって存在する場合、表面に垂直な方向について、各々が存在する距離(すなわち、表面に垂直な軸において、各々が存在する最も表面に近い点から最も表面から遠い点までの長さ)のことをいう。複数の点で測定し、その平均を算出して「膜厚」としてもよい。従って、各々の膜は、重なって存在してもよく、その場合、Cu化合物の膜厚より、CuO、CuO、及びCuSの膜厚の和の方が数値が大きくなる。
以下の原理に拘泥するわけではないが、Si化合物に比較してCu化合物が多いと、銅部材表面におけるSi化合物の付着量が少ないためCu化合物の保護が不十分となり、優れた耐酸性が得られず、Cu化合物に比較してSi化合物が多いと、Si化合物の付着量が過剰になるためCu化合物で形成された凹凸が埋まり表面積が小さくなり、優れた接着性が得られないと考えられる。[1]のように、Cu化合物とSi化合物のバランスが適正である場合に優れた耐酸性および優れた接着性の両方が得られる。また、CuO,CuO,CuSの膜厚の合計値が小さすぎると、CuO,CuO,CuSで形成される表面の凹凸が不十分で接着性が得られず、大きすぎると表面の凹凸が長すぎてSi化合物が不十分になり耐酸性が得られなかったり、凹凸の途中で切断したりする場合があり優れた接着性が得られないと考えられる。[2]のパラメーターも、Si化合物とCu化合物のバランスの指標となり得る。
この銅部材は、SERAによって検出されたCuO,CuO,CuSの膜厚の合計値が20nm以上300nm以下であることが好ましく、35nm以上300nm以下であることが好ましく、35nm以上139nm以下であることがさらに好ましい。
銅部材の表面の凸部の高さは50nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。また、500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましい。凸部の高さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)の断面画像において、所定の間隔をおいて複数の点を取り、各点で、処理面に対して垂直方向に、各点から最も近い凸部の最も高い位置までの長さを測定し、平均値を算出することで測定できる
また、銅部材の表面における界面の展開面積比(Sdr)は4%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましい。Sdrは、例えば共焦点走査電子顕微鏡(CSEM:Confocal Scanning Electron Microscope)により測定することができる。
以下の原理に拘泥するわけではないが、上述したように、CuO,CuO,CuSの膜厚の合計値が小さすぎると、CuO,CuO,CuSで形成される表面の凹凸が不十分で接着性が得られず、大きすぎると表面の凹凸が長すぎてSi化合物が不十分になり耐酸性が得られなかったり、凹凸の途中で切断したりする場合があり接着性が得られない。なお、SEMの凹凸の高さやSdrは、膜厚の合計値と同様の傾向を示すパラメーターである。
また、CSEMにより測定された表面粗さ(Rz)が0.39μm以上であることが好ましく、0.89μm以上であることがさらに好ましい。表面粗さが小さい場合、表面の凹凸が小さく接着性が得られない。
XPSにより測定された最表面Narrowスペクトルにおいて、N1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の4成分の原子数の和に対する、Si2pの原子数の原子百分率が3.0Atm%以上45.0Atm%以下であることが好ましく、4.1Atm%以上36.3Atm%以下であることがより好ましく、4.1%以上12.3%以下であることがさらに好ましい。Si2pの原子百分率が大きい場合は表面のSi化合物の付着量が多すぎて、Si化合物により表面の凹凸が小さくなり接着性が低下する。また、Si2pの原子百分率が小さい場合は表面の凹凸がSi化合物で十分に覆えておらず耐酸性が低下する。
XPSによる銅部材の表面のO1sスペクトルを波形分離して、CuO、CuO、Cu(OH)のピーク面積の合計に対する、Cu(OH)のピーク面積の面積百分率は70Area%以下が好ましく、45Area%以下がより好ましく、40Area%以下がさらに好ましい。Cu(OH)が多いとSiと結合していない官能基が多く残存していると考えられ、その場合、接着性が劣る。
また、アルカリ金属は、銅部材を腐食したり、伝送損失を増大したりするため、含有率は小さいほうが好ましい。例えば、銅部材の表面をXPSで分析することによって得られるアルカリ金属の含有率は、N1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の原子数の原子百分率の合計値を100%とした場合に5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
(2)銅酸化物層
銅部材は、Si化合物層の内側に、銅酸化物を含む層または銅酸化物からなる層(本明細書では、総じて銅酸化物層と称する)を有してもよい。それによって、強固に絶縁材と接着することができるようになる。ここで、銅酸化物は、酸化銅(CuO)及び/又は亜酸化銅(CuO)を含むか、酸化銅(CuO)及び/又は亜酸化銅(CuO)からなる。銅酸化物層における銅酸化物の含有率は、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、又は90重量%以上が好ましい。銅酸化物層は水酸化銅(Cu(OH))を含んでもよく、その含有率は、3重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、または15重量%以上が好ましい。水酸化銅はSi化合物と脱水縮合すると考えられ、水酸化銅が少ないとSi化合物と十分に結合せず、耐酸性や接着性が低下する。なお、本明細書では、「銅部材」という用語は、銅酸化物を有する銅部材も含むものとして使用する。
銅酸化物層の厚さは平均500nm以下であることが好ましく、平均300nm以下であることがより好ましく、平均200nm以下であることがさらに好ましく、平均160nm以下であることがさらに好ましく、平均90nm以下であることがさらに好ましい。さらに銅酸化物層の厚さは平均20nm以上であることが好ましく、平均30nm以上であることがより好ましく、平均40nm以上であることがさらに好ましい。なお、銅酸化物層の厚さが500nm以下である領域の割合は特に限定されないが、50%以上が500nm以下であることが好ましく、70%以上が500nm以下であることがより好ましく、90%以上が500nm以下であることがさらに好ましく、95%以上が500nm以下であることがさらに好ましく、99%以上が500nm以下であることがさらに好ましい。なお、銅酸化物層の厚さは、例えば、10×10cmの面積中の10測定点におけるSERAにより算出することができる。
銅酸化物層の厚さが薄すぎると、表面の凹凸が不十分になったり、またSi化合物により容易に凹凸が埋まったりするため、良好な接着性が得られなくなる。また、銅酸化物層の厚さが厚すぎると表面の凸部が長すぎてSi化合物により十分に表面を覆うことが難しくなったり、凸部の途中で切断したりする場合があり、やはり良好な接着性が得られない。なお、銅部材の表面における銅酸化物層の厚さは、凸部の高さやSdrと同様の傾向を示すパラメーターである。
(3)銅部材の利用
本発明にかかる銅部材は、高い耐酸性および樹脂との高い接着性を必要とされる部材として好適に用いることができる。例えば、上記銅表面に樹脂基材が積層された積層体を含むプリント基板の銅配線や銅ピラー、リードフレームなどに好適に利用できる。
==銅部材の製造方法==
上述の銅部材の製造方法の実施形態を以下に述べる。
(1)銅材料の準備
銅部材の材料である、表面の一部または全部が銅で覆われている銅材料を準備する。銅材料は、表面に銅が存在すればよく、銅表面より内側の部分(すなわち銅材料内部)は銅以外の物質であってもよく、銅以外の金属であってもよいが、銅材料内部も銅であり銅材料全体が銅からなっていてもよい。銅材料内部が表面の銅とは異なる物質からなる場合、表面の銅の厚さは、1nm超であるのが好ましいが、10nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。表面の銅は、めっき処理することにより形成してもよい。表面の銅を銅めっきで形成する場合、めっきによる銅膜の厚さは特に限定しないが、0.1μm以上100μm以下が好ましく、0.5μm以上50μm以下がより好ましい。
表面の銅は、純度が、95質量%以上、99質量%以上、又は99.9質量%以上の純銅からなる銅が好ましく、タフピッチ銅、脱酸銅、無酸素銅で形成されていることがより好ましく、含有酸素量が0.001質量%~0.0005質量%の無酸素銅で形成されていることがさらに好ましい。
本明細書に開示される銅材料には、電解銅箔や圧延銅箔およびキャリア付き銅箔等の銅箔、銅線、銅板、銅製リードフレーム、銅粉、銅製ヒートシンク、銅ピラー、銅めっきが施された物体、などが含まれるがこれらに限定されない。なかでも、銅材料は銅箔または銅板であることが好ましい。銅箔の場合、その厚さは0.1μm以上100μm以下である。特に、0.5μm以上50μm以下が好ましい。銅板の場合、その厚さが100μm超で板状のものをいうが、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上又は10mm以上が好ましく、10cm以下、5cm以下又は2.5cm以下が好ましい。
(2)酸化処理
まず、銅材料表面を酸化処理することにより、銅材料表面に銅酸化物層を形成する。この酸化処理によって、銅材料表面が粗面化され、樹脂に対する接着性が大きくなる。
この酸化処理以前に、ソフトエッチング又はエッチングなどの粗面化処理工程を行ってもよい。また、酸化処理以前に、脱脂処理、自然酸化膜除去によって表面を均一化するための酸洗浄、または酸洗浄後に酸化工程への酸の持ち込みを防止するためのアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理の方法は特に限定されないが、好ましくは0.1~10g/L、より好ましくは1~2g/Lのアルカリ水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液で、30~50℃、0.5~2分間程度処理すればよい。
酸化処理方法は特に限定されないが、酸化剤を用いて形成してもよく、加熱処理や陽極酸化によって形成してもよい。
酸化剤は特に限定されず、例えば、亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸カリウム等の水溶液を用いることができる。酸化剤には、各種添加剤(たとえば、リン酸三ナトリウム十二水和物のようなリン酸塩)や表面活性分子を添加してもよい。表面活性分子としては、ポルフィリン、ポルフィリン大員環、拡張ポルフィリン、環縮小ポルフィリン、直鎖ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリン配列、シラン、テトラオルガノ-シラン、アミノエチル-アミノプロピルトリメトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(1-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア)((l-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]urea))、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、((3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン)、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2-メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン-トリメトキシシラン、アミン、糖などを例示できる。
酸化剤には、各種添加剤(たとえば、リン酸三ナトリウム十二水和物のようなリン酸塩)や表面活性分子を添加して銅酸化物の析出を調整してもよい。表面活性分子としては、ポルフィリン、ポルフィリン大員環、拡張ポルフィリン、環縮小ポルフィリン、直鎖ポルフィリンポリマー、ポルフィリンサンドイッチ配位錯体、ポルフィリン配列、シラン、テトラオルガノ‐シラン、アミノエチル‐アミノプロピル‐トリメトキシシラン、3‐アミノプロピル)トリメトキシシラン、1‐[3‐(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、(3‐アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3‐クロロプロピル)トリメトキシシラン、(3‐グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3‐(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、エチルトリアセトキシシラン、トリエトキシ(イソブチル)シラン、トリエトキシ(オクチル)シラン、トリス(2‐メトキシエトキシ)(ビニル)シラン、クロロトリメチルシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、クロロトリエトキシシラン、エチレン‐トリメトキシシラン、アミン、糖などを例示できる。
酸化反応条件は特に限定されないが、酸化剤の液温は40~95℃であることが好ましく、45~80℃であることがより好ましい。反応時間は0.5~30分であることが好ましく、1~10分であることがより好ましい。
銅酸化物層に対し、溶解剤を用いて、酸化された銅材料表面の凸部が調整されていてもよい。この溶解工程で用いる溶解剤は特に限定されないが、キレート剤、特に生分解性キレート剤であることが好ましく、エチレンジアミン四酢酸、ジエタノールグリシン、L-グルタミン酸二酢酸・四ナトリウム、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、3-ヒドロキシ-2、2’-イミノジコハク酸ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、アスパラギン酸ジ酢酸4ナトリウム、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸ジナトリウム、グルコン酸ナトリウムなどが例示できる。溶解剤溶液のpHは特に限定されないが、アルカリ性であることが好ましく、pH8~10.5であることがより好ましく、pH9.0~10.5であることがさらに好ましく、pH9.8~10.2であることがさらに好ましい。
この銅酸化物層の表面を還元剤により還元処理してもよく、その場合、銅酸化物を含む層の表面に亜酸化銅が形成されてもよい。この還元工程で用いる還元剤としては、ジメチルアミンボラン(DMAB)、ジボラン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン等が例示できる。
純銅の比抵抗値が1.7×10-8(Ωm)なのに対して、酸化銅は1~10(Ωm)、亜酸化銅は1×10~1×10(Ωm)であるため、銅酸化物を含む層は導電性が低く、例え、樹脂基材に転移した銅酸化物を含む層の量が多くても、本発明に係る銅部材を用いてプリント配線基板や半導体パッケージ基板の回路を形成する際、表皮効果による伝送損失が起こりにくい。
(3)水ガラス処理
銅部材の製造方法は、酸化処理した銅材料にSi化合物を形成する工程を含む。Si化合物を形成する方法は特に限定されないが、液体で処理する場合、水ガラス処理が好ましい。この処理によって、銅酸化物層に含まれるCu(OH)のOH基と水ガラスとが結合し、樹脂との結合における銅部材の耐酸性が増強される。ただし、銅酸化物に含まれるCu(OH)量が少ないと、少量の水ガラスでは銅部材表面を覆うことができない。そのため、水ガラスが多量に必要となる。また、Si化合物層が厚くなると、銅部材の表面がなだらかとなり、表面積も小さくなることで樹脂に対する接着性が低下する、しかし、水ガラスの量が不足している場合には、銅部材表面を完全に覆うことができないため十分な耐酸性が得られない。従って、酸化処理とのバランスが適正な水ガラス処理が必要とされる。
銅材料を処理するための水ガラスはアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液である。アルカリ金属ケイ酸塩は、MO・nSiO(式中、MはNa、Li、Kのいずれかである)であらわされるが、水ガラス中には、MOとSiOとが様々な割合で混在する。銅材料の処理に用いる水ガラスは特に限定されないが、nが2~4であることが好ましい。
水ガラス処理の具体的な方法は特に限定されず、水ガラスを、銅材料表面にローラーやバーコーターによって塗布してもよくスプレーによって吹き付けてもよく、あるいは、銅材料を水ガラスに浸漬してもよい。水ガラス中のMO・nSiOの濃度は特に限定されないが、0.1%~20%であってもよく、0.5%~10%であってもよく、2%~5%であってもよい。反応条件は特に限定されないが、処理温度は10℃~95℃が好ましく、20℃~85℃がより好ましい。処理時間は1秒~10分が好ましい。水ガラス処理は複数回行ってもよい。ただし、水ガラス処理が過剰になり、表面に結合する水ガラスの量が過剰になると、樹脂に対する接着性が低下するため、適切な条件の水ガラス処理が必要とされる。
銅材料を水ガラス処理した後、乾燥させる。処理後の乾燥はエアーで水分を飛ばしてもよいし、加温してもよい。加温する場合は50℃~250℃が好ましく、加温時間は10秒~60分が好ましい。
銅材料を処理するための水ガラスに、カップリング剤を溶解させてもよい(以下、この溶液を混合剤と称する)。カップリング剤の濃度は特に限定しないが、重量%で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%又は9%以上が好ましく、20%、15%又は10%以下が好ましい。
(4)カップリング剤処理
銅部材の製造方法は、酸化処理した銅材料に対しカップリング剤処理を行う工程を含んでもよい。
カップリング剤処理と水ガラス処理の両方の処理を少なくとも1回ずつ行えばカップリング剤処理と水ガラス処理の順序は特に限定されず、水ガラス処理の前だけに、後だけに、または前後にカップリング剤処理を行ってもよい。水ガラス処理にカップリング処理を追加することでより緻密に凹凸表面を覆うことができると考えられ、これにより耐酸性を向上させることができる。なお、水ガラス処理の後に行う方が樹脂との結合における耐酸性に対する増強効果は高い。カップリング剤処理を水ガラス処理の後に行うことによって、水ガラスの銅表面に対する結合が強固になるとともに、水ガラス成分中のアルカリ金属が銅部材表面から除去されてSi化合物層中のSi化合物の割合が増加するため、耐酸性向上にさらに効果的である。
なお、混合剤を用いる場合、一つの処理でカップリング剤処理と水ガラス処理を同時に行うこと(以下、混合剤処理と称する)ができる。ただし、混合剤処理の前および/または後に、1回以上のカップリング剤処理を行ってもよい。なお、各処理は、連続して複数回行ってもよい。
銅材料を処理するためのカップリング剤は、特に限定されないが、シランカップリング剤が好ましく、中でも加水分解性基が2又は3のものが好ましく、加水分解性基として、メトキシ基又はエトキシ基のものが好ましい。具体的には、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。
カップリング剤処理の具体的な方法は特に限定されず、カップリング剤の溶液を、銅部材表面にローラーやバーコーターによって塗布してもよくスプレーによって吹き付けてもよく、あるいは、銅材料をカップリング剤の溶液に浸漬してもよい。カップリング剤の溶液に用いる溶媒は、水、有機溶媒、またその混合溶媒でもよい。カップリング剤の濃度は特に限定しないが、重量%で0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%又は9%以上が好ましく、20%、15%又は10%以下が好ましい。
銅材料をシランカップリング剤の溶液で処理した後、乾燥させる。乾燥のための温度と時間は、溶媒が完全に蒸発すれば特に限定しないが、70℃で1分以上乾燥させるのが好ましく、100℃で1分以上乾燥させるのがさらに好ましく、110℃で1分以上乾燥させることがより好ましい。
(1)銅部材の製造
まず、銅材料として銅箔を用い、銅部材を製造した。製造工程における処理について、表1及び表2(酸化剤の配合)にまとめた。以下に、各処理について詳細に説明する。
Figure 2023107101000001
Figure 2023107101000002
(1-1)銅材料
実施例及び比較例の全てにおいて、銅箔はDR-WS(厚さ:18μm)(古河電工株式会社製)のシャイニー面(光沢面。反対面と比較したときに平坦である面)を用いた。
(1-2)前処理
実施例及び比較例の全ての銅箔を、液温50℃、40g/Lの水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬することで、脱脂処理を行い、銅表面の汚れを除去した。その後、銅箔を水洗した。
次に、脱脂処理を行った銅箔を、液温25℃、10重量%の硫酸水溶液に2分間浸漬することで、酸洗浄を行い。銅表面の酸化被膜を除去した。その後、銅箔を水洗した。
さらに、酸洗浄を行った銅箔を、水酸化ナトリウム1.2g/Lの水溶液(pH10.5)に40℃で1分間浸漬することで、次工程である酸化処理での酸混入を防止した。
(1-3)酸化処理
前処理後の銅箔を、銅箔のシャイニー面に対して、それぞれ表1及び2に記載の酸化剤と酸化条件を用いて、酸化処理を行い、銅箔の表面に微細な凸部を形成した。その後、実施例及び比較例の全ての銅箔について、室温で1分間、水洗した。
実施例14の銅箔は、酸化処理後、表1の還元剤DMAB(10g/Lジメチルアミンボラン(DMAB)-10g/L水酸化ナトリウム溶液)および還元条件で還元処理を行った後、室温で1分間、水洗した。
(1-4)カップリング処理I
実施例12の銅箔は、(1-3)の酸化処理後、銅箔を1vol%KBE-903(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)(信越化学工業株式会社)に浸漬し、表1に記載の条件でカップリング処理を行った。その後水洗してから、表1に記載の条件で乾燥させた。
(1-5)水ガラス処理
実施例1~14、比較例1、4~10の銅箔については、(1-3)の酸化処理または(1-4)のカップリング処理の後、銅箔を水ガラスに浸漬し、表1に記載の反応条件で水ガラス処理を行った。水ガラスとして4wt%ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO/NaO比2.06~2.31)を用いた。その後、水洗してから、表1に記載の条件で乾燥させた。
(1-6)カップリング処理II
実施例7~9、13、比較例3、8、9の銅箔については、水ガラス処理の後、銅箔を1vol%KBE-903(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)(信越化学工業株式会社)または0.01vol%KBM-802(3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン)(信越化学工業株式会社)に浸漬し、表1に記載の条件でカップリング処理を行った。その後、水洗してから、表1に記載の条件で乾燥させた。
(2)銅部材の試験I
(1)で作製した銅部材を以下のようにして試験を行った。結果は表6にまとめる。
(2-1)酸化膜厚の測定
酸化処理によって形成された酸化銅膜の厚さをSERAによって測定した。測定装置として、Surface-Scan QC-100(ECI社)を用いた。
測定は、ホウ酸水溶液(6.18g/Lホウ酸、9.55g/L四ホウ酸ナトリウム)を用いて定電流(90μA/cm)で還元反応を起こし、以下の電圧の範囲で還元時間を測定した。
CuO=-0.3V~-0.55V
CuO=-0.55V~-0.85V
CuS=-0.85V~-1.0V
得られた還元時間と上記電流密度を以下の式に代入し、膜厚に換算した。
CuOの膜厚(nm)=0.0124×電流密度(μA/cm)×還元時間(sec)×0.1
CuOの膜厚(nm)=0.00639×電流密度(μA/cm)×還元時間(sec)×0.1
CuSの膜厚(nm)=0.0147×電流密度(μA/cm)×還元時間(sec)×0.1
表6に各分子の換算結果を示す。
(2-2)凸部の高さ
銅部材の処理面に対し、走査型電子顕微鏡での30000倍の断面画像において、1.03μmごとに5点取って、各点で、処理面に対して垂直方向に、各点から最も近い凸部の最も高い位置までの長さを測定し、5点における平均値を算出することで、銅部材表面における凸部の高さを測定した。
(2-3)表面粗さ(Rz)
銅部材の処理面に対し、共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて銅箔の表面形状を測定し、JIS B 0601:2001(国際基準ISO4287-1997準拠)に定められた方法によりRzを算出した。測定条件として、スキャン幅は100μm、スキャンタイプはエリアとし、Light sourceはBlue、カットオフ値は1/5とした。オブジェクトレンズは×100、コンタクトレンズは×14、デジタルズームは×1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、Rzは3箇所の平均値とした。表6に得られたRzの平均値を示す。
(2-4)界面の展開面積比(Sdr)
銅部材の処理面に対し、共焦点走査電子顕微鏡 OPTELICS H1200(レーザーテック株式会社製)を用いて銅箔の表面形状を測定し、Sdrを算出した。測定条件として、スキャン幅は100μm、スキャンタイプはエリアとし、Light sourceはBlue、スキャンフィルタのフィルタタイプはハイパス、カットオフ波長はX方向、Y方向ともに20μmとした。オブジェクトレンズは×100、コンタクトレンズは×14、デジタルズームは×1、Zピッチは10nmの設定とし、3箇所のデータを取得し、Sdrは3箇所の平均値とした。表6に得られたSdrの平均値を示す。
(2-5)表面元素分析
銅部材の処理面に対し、XPSによって表面の元素分析を行った。
装置は、Quantera SXM(ULVAC-PHI社)を用い、表3に記載の条件でスキャンを行った。Narrow spectrumでは、C1s(x15)、N1s(x20)、O1s(x10)、Na1s(x20)、Si2p(x15)、Cu2p3(x7)(カッコ内はSweep数)について解析を行った。C1s、N1s、O1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の原子百分率の合計100%とした場合と、N1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の原子百分率の合計値を100%とした場合の原子百分率を算出した。表6に各元素の原子百分率を示す。
Figure 2023107101000003
次に、O1sピークをMultiPak(ULVAC-PHI社)を用いて表4に示す各化合物に分離した。具体的には、Curve Fit機能を用い、各パラメータを表4に記載したように設定した後、ピークフィッティングを行った。表6に各化合物のピーク面積について面積百分率を示す。また、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の比の値として、CuO、CuO、Cu(OH)、CuCOのピーク面積の面積百分率の合計値とSiOのピーク面積の面積百分率との比の値を算出し、表6に示す。
Figure 2023107101000004
(2-6)単位面積当たりのSi量
水ガラス処理によって銅部材表面に結合したSiの単位面積当たりの量を測定した。
まず、銅部材を12%硝酸で処理して表面処理層(銅酸化物層及びSi化合物層を含む)を完全に溶解させ、ICP発光分析装置5100 SVDV ICP-AES(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、溶出液中のSiの質量を測定した。そして、Si化合物層が形成された銅部材の面積で割ることによって、単位面積当たりの質量を算出した。表6にその結果を示す。
(2-7)TOF-SIMS
作製した銅部材に対し、装置型式はTRIFT V nano-TOF(アルバック・ファイ株式会社製)を用い、表5に示した条件で表面の組成物を検出した。その代表的な結果を図1に示す。
Figure 2023107101000005
そして、いずれかのSi化合物のピークがあるかどうか(ある場合は〇、無い場合は×で示す。)について、表6に結果を示す。
(2-8)耐酸性
作製した銅部材を、10%硫酸を入れたビーカーに浸漬させ、表面処理層(銅酸化物層及びSi化合物層を含む)が完全に溶解するまでの時間を計測した。なお、硫酸へ浸漬後の銅部材をSERAにて測定を行い、CuO、CuO、CuSの厚さの合計値が5nm以下であれば、完全に溶解したと判断した。得られた時間を表6に示す。
(2-9)接着性
銅部材の処理面に対して絶縁材であるエポキシ系樹脂を積層し、真空高圧プレス機を用いてプレス圧1MPa、温度200℃、120分間熱圧着し、10mm幅のテープでマスキングしてエッチングすることによって回路配線板を作製した。その後、90°剥離試験(日本工業規格(JIS)C5016)によりピール強度(kgf/cm)を測定した。測定値を表6に示す。
(2-10)結果
Figure 2023107101000006
実施例1~14の銅箔では、TOF-SIMSで表面にSi化合物が検出され、XPSによる前記銅部材の表面のO1sスペクトルにおいて、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であり、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の比の値(表では、「Cu系/SiO」と記載されている)が1.0より大きく、15.0より小さい。このような場合に、溶解時間が60秒より長く、かつピール強度が0.4より大きくなる。比較例のように、TOF-SIMSで表面にSi化合物が検出されないか、またはXPSによる前記銅部材の表面のO1sスペクトルにおいて、Cu系/SiOが1.0以下か、または15.0以上であると、溶解時間が60秒以下になるか、またはピール強度が0.4以下になる。あるいは、XPSで、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%未満であるか、またはXPSによる前記銅部材の表面のO1sスペクトルにおいて、Cu系/SiOが1.0以下か、または15.0以上になると、溶解時間が60秒以下になるか、またはピール強度が0.4以下になる。
また、実施例1~14の銅箔では、TOF-SIMSで表面にいずれかのSi化合物が検出され、ICP-AESで検出されたSi量が、10μg/dm以上、150μg/dm以下、かつ(SERAで測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値(表6ではSERA/ICPと表記)が0.5より大きく、10より小さい。このような場合でも、溶解時間が60秒より長く、かつピール強度が0.4より大きい。比較例のように、TOF-SIMSで表面にSi化合物が検出されないか、またはICP-AESで検出されたSi量が、10μg/dmより小さいか、150μg/dmより大きい、または(SERAで測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5以下であるか、または10以上であると、溶解時間が60秒以下になるか、またはピール強度が0.4以下になる。
実施例1~14はいずれも、XPSによる前記銅部材のNarrowスペクトルにおいて、(Cu2p3原子百分率)/(Si2p原子百分率)の比の値(表では「Cu narrow/Si narrow」と記載されている)が1.6より大きく、24.0より小さい場合に溶解時間が60秒より長く、かつピール強度が0.4kgf/cmより大きくなる。
また、実施例1~14はいずれもSERAによるCuO、CuO、CuSの合計値が35nm以上である。
上記の特性を有する実施例の銅箔は、耐酸性に優れ、且つ接着性に優れていた。特に、水ガラス処理とカップリング処理を行い、酸化膜厚の厚い実施例8と9の銅部材、または水ガラス処理前に還元処理を行っている実施例14の銅部材は、著しく耐酸性、接着性が優れていた。なお、比較例2、3は水ガラス処理が施されないので耐酸性が弱く、比較例4、6、8は水ガラス処理が弱いので耐酸性が弱く、比較例1、5、7、9、10は水ガラス処理が過剰なので接着性が弱い。
このように、適切な水ガラス処理と、水ガラス処理とのバランスに合った酸化処理を行うことで、良好な耐酸性と接着性を有する、上記の特性を有する銅箔が得られる。

Claims (17)

  1. 飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)による表面の元素分析によって、Si化合物が検出され、
    X線光電子分光法(XPS)による前記表面のO1sスペクトルの波形分離において、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の値が1.0より大きく、15.0より小さく、
    前記Cu化合物が銅酸化物を含む、銅部材。
  2. 飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry) による表面の元素分析によって、Si化合物が検出され、
    高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)による前記表面の元素分析によって検出されたSiの量が、10μg/dm以上、150μg/dm未満であって、
    (連続電気化学還元法(SERA: Sequential Electrochemical Reduction Analysis)で測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい、銅部材。
  3. 前記Si化合物が、前記表面から1nm以内に検出される、請求項1または2に記載の銅部材。
  4. X線光電子分光法(XPS)による表面のO1スペクトルの波形分離において、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であり、
    X線光電子分光法(XPS)による前記表面のO1sスペクトルの波形分離において、(Cu化合物のピーク面積の面積百分率)/(SiOのピーク面積の面積百分率)の値が1.0より大きく、15.0より小さく、
    前記Cu化合物が銅酸化物を含む、銅部材。
  5. X線光電子分光法(XPS)による表面のO1sスペクトルの波形分離において、SiOのピーク面積の面積百分率が2Area%以上であり、
    高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)による前記表面の元素分析によって前記表面に検出されたSi量が、10μg/dm以上、150μg/dm未満であって、
    (SERAで測定したCuO、CuO、及びCuSの膜厚の和)/(ICP-AESで測定したSiの単位面積当たりの質量)の値が0.5より大きく、10より小さい、銅部材。
  6. SERAによる前記表面の元素分析によって検出されたCuO,CuO,CuSの膜厚の和が20nm以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の銅部材。
  7. 前記表面において、XPSのNarrowスペクトルでN1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の合計原子数に対する、N1sの原子数の原子百分率が0.5at%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の銅部材。
  8. 前記表面において、XPSのNarrowスペクトルでN1s、Na1s、Si2p、Cu2p3の合計原子数に対する、Na1sの原子数の原子百分率が0.1at%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の銅部材。
  9. 前記表面のRzが0.39μm以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の銅部材。
  10. 銅材料を用いて、請求項1~9のいずれか1項に記載の銅部材を製造するための方法であって、
    前記銅材料を酸化処理する第1の工程と、
    第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤で処理する第2の工程と、
    第1の工程で酸化処理された前記銅材料を水ガラスで処理する第3の工程と、
    を含む、方法。
  11. 第2の工程が第3の工程の前に、後に、または前後に行われる、請求項10に記載の方法。
  12. 銅材料を用いて、請求項1~9のいずれか1項に記載の銅部材を製造するための方法であって、
    前記銅材料を酸化処理する第1の工程と、
    第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤を含有する水ガラスで処理する第4の工程を含む、方法。
  13. 第1の工程で酸化処理された前記銅材料をカップリング剤で処理する第5の工程を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 第4の工程が第5の工程の前に、後に、または前後に行われる、請求項13に記載の方法。
  15. 前記カップリング剤が、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1以上である、請求項9~13のいずれか1項に記載の方法。
  16. 請求項1~9のいずれか1項に記載の銅部材の前記表面に樹脂基材が積層された積層体。
  17. 請求項16に記載の積層体を含む、プリント基板。
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