JP2023097750A - アルミニウムクラッド材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、皮材脱落を防止できるクラッド材の製造方法の提供を目的とする。【解決手段】本発明は、熱間圧延ロールにより接合し、アルミニウムクラッド材を製造する方法であって、接合工程で生じる心材と皮材の圧延方向の伸び量の違いを、未知の実熱間圧延の伸びを予測する数値解析により予測し、心材は圧延方向の長さが変化しないと仮定し、心材の圧延方向の長さを基準として接合工程後の皮材の圧延方向の長さが心材の圧延方向の長さとほぼ等しくなるように皮材の長さを予め決定して接合する場合、既知の実熱間圧延の伸び量に対し、数値解析と同じ手法で得られた伸び量予測値を用いて近似できる補正係数を求めておき、アルミニウムクラッド材を製造する場合、補正係数に基づき数値解析と同じ手法で得られた皮材の伸び量予測値に基づき、接合工程に供する前の皮材の圧延方向長さを決定することを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、アルミニウムクラッド材の製造方法に関する。
熱交換器の構成材料として使用され、アルミニウムクラッド材の一例であるブレージングシートは、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる心材の片面あるいは両面に皮材を貼り合わせて構成される。心材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるスラブ鋳塊を指定の厚さ、形状に切削して得られる。また、皮材は、スラブ鋳塊を指定の厚さに熱間圧延し、適切な長さに切断して得られる。皮材として、ろう材や犠牲陽極材を例示できる。
この種のアルミニウムクラッド材を製造する場合、心材と組成の異なるアルミニウム合金皮材を心材とともにロール圧延により一体化することがなされている。
アルミニウムクラッド材を圧延により製造する場合、心材より皮材が伸びやすいと、圧延中に皮材が心材の端部から突出する。この突出部分が長い場合、突出部分が圧延装置の搬送路に脱落し、生産の妨げとなる問題がある。
この種のアルミニウムクラッド材を製造する場合、心材と組成の異なるアルミニウム合金皮材を心材とともにロール圧延により一体化することがなされている。
アルミニウムクラッド材を圧延により製造する場合、心材より皮材が伸びやすいと、圧延中に皮材が心材の端部から突出する。この突出部分が長い場合、突出部分が圧延装置の搬送路に脱落し、生産の妨げとなる問題がある。
クラッド材の熱間圧延では、その初期段階において、重ね合わせた心材と皮材の界面を接合させる接合工程を行い、その後、板厚を減少させる熱間圧延へ移行する。界面が接合するまでは、心材と皮材がお互いの変形を拘束する効果が小さいことから、強度差による伸び量の違いが生じやすい。
このため、高強度の心材より多く伸びた低強度の皮材が、心材の圧延方向端面よりも突出することで、引き続き行われる板厚を減少させる熱間圧延において、突出した皮材の脱落が生じ、生産トラブルとなるおそれがある。
このため、高強度の心材より多く伸びた低強度の皮材が、心材の圧延方向端面よりも突出することで、引き続き行われる板厚を減少させる熱間圧延において、突出した皮材の脱落が生じ、生産トラブルとなるおそれがある。
例えば、心材に比べ皮材の材料強度が低い場合、心材より皮材の材料が伸びる。このとき、接合されてない界面において材料の摺動(ズレ)を生じながら、皮材が心材から突出する。特に、圧延方向の前後端で材料が突出しやすく、突出した材料が心材のエッジ部に当たる箇所を起点に突出部が脱落することで、生産の妨げになる場合がある。
また、低強度の皮材が、心材よりも大きく伸びてしまった場合、皮材と心材の圧延方向伸び量に大きな差が生じる。皮材と心材の伸び量の差は、そのまま各層の厚さの変化量の差となる。すなわち、皮材と心材の伸びの差が大きい場合、クラッド率の変化が発生し、所望のクラッド率が得られなくなる。
前述のとおり、低強度の皮材において圧延方向の前後端が突出しやすいことから、前後端のクラッド率の変化が特に大きくなりやすい。その結果、所望のクラッド率が得られなかった前後端を切り捨てる除去作業が必要となってしまい、著しく生産性を阻害する問題がある。
また、低強度の皮材が、心材よりも大きく伸びてしまった場合、皮材と心材の圧延方向伸び量に大きな差が生じる。皮材と心材の伸び量の差は、そのまま各層の厚さの変化量の差となる。すなわち、皮材と心材の伸びの差が大きい場合、クラッド率の変化が発生し、所望のクラッド率が得られなくなる。
前述のとおり、低強度の皮材において圧延方向の前後端が突出しやすいことから、前後端のクラッド率の変化が特に大きくなりやすい。その結果、所望のクラッド率が得られなかった前後端を切り捨てる除去作業が必要となってしまい、著しく生産性を阻害する問題がある。
以下の特許文献1および特許文献2に記載の技術では、皮材と心材の界面に網状の物体や箔を設置することにより、皮材と心材のズレを抑制する方法が開示されている。
しかし、これら特許文献1、2に記載の技術では、界面に設置した網状体や箔の存在が介在物となり、クラッド材の品質不良の原因となるので、近年の高品質なクラッド材の製造には適用できない問題があった。更に、網状体やシートを別途用意するための労力とコストが懸念される。
また、心材と皮材の界面外周部に溶接を施しておくことで、界面のズレや伸びの差を抑制する方法も知られているが、溶接工程分のコストが発生する。
また、心材と皮材の界面外周部に溶接を施しておくことで、界面のズレや伸びの差を抑制する方法も知られているが、溶接工程分のコストが発生する。
本願発明は、溶接などを行わなくとも、クラッド材の製造時に心材端部から皮材が伸びて突出することを抑制し、心材端部側における皮材の脱落を防止できるアルミニウムクラッド材の製造方法の提供を目的とする。また、本願発明は、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率のアルミニウムクラッド材を効率良く製造できる技術の提供を目的とする。
(1)本発明のアルミニウムクラッド材の製造方法は、2つ以上のアルミニウムまたはアルミニウム合金材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材を接合したアルミニウムクラッド材を製造する方法であって、前記接合工程で生じる前記心材と前記皮材の圧延方向の伸び量の違いを、未知の実熱間圧延の伸びを予測する数値解析により予測し、前記心材は圧延方向の長さが変化しないと仮定し、前記心材の圧延方向の長さを基準として前記接合工程後の前記皮材の圧延方向の長さが前記心材の圧延方向の長さとほぼ等しくなるように前記皮材の長さを予め決定して接合する場合、既知の実熱間圧延の伸び量に対し、前記数値解析と同じ手法で得られた伸び量予測値を用いて近似できる補正係数を求めておき、前記アルミニウムクラッド材を製造する場合、前記補正係数に基づき前記数値解析と同じ手法で得られた前記皮材の伸び量予測値に基づき、前記接合工程に供する前の前記皮材の圧延方向長さを決定することを特徴とする。
(2)本発明に係るアルミニウムクラッド材の製造方法において、前記数値解析により求めた伸び量予測値を前記実熱間圧延により求めた実測伸び量に近似できるように補正係数αを求める場合、前記実熱間圧延による前記心材の伸び量の実績および前記皮材の伸び量の実績と、前記伸び量予測値との関係が互いに近似するように以下の式(1)で表される残差平方和が最小となる補正係数αを最適化計算により求めることが好ましい。
ただし、式(1)において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示す。
(3)本発明に係るアルミニウムクラッド材の製造方法において、前記数値解析により求めた伸び量予測値を前記実熱間圧延により求めた実測伸び量に近似できるように補正係数a、b、cを求める場合、前記実熱間圧延による前記心材の伸び量の実績および前記皮材の伸び量の実績と、前記伸び量予測値との関係が互いに近似するように以下の式(2)で表される残差平方和が最小となる補正係数a、b、cを最適化計算により求めることが好ましい。
ただし、式(2)において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示し、a、b、cは補正係数を示す。
本発明により、熱間圧延前の接合工程において圧延方向の長さが変わらない心材に対し、伸びが異なり、長さが変わる皮材を用いて熱間圧延によりクラッド材を製造した場合であっても、心材端部から皮材が伸びて突出する現象を抑制し、心材端部側における皮材の脱落を防止できるアルミニウムクラッド材の製造方法を提供できる。
また、本発明により、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率のアルミニウムクラッド材を効率良く製造できるアルミニウムクラッド材の製造方法を提供できる。
また、本発明により、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率のアルミニウムクラッド材を効率良く製造できるアルミニウムクラッド材の製造方法を提供できる。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
図1は、本発明に係る第1実施形態のクラッド材の製造方法を実施する場合に最初の圧延パスにおいて採用する素材配置の一例を示すもので、上下に離間して配置された熱間圧延ロール(ワークロール)1、2の間に心材3と皮材4、5を備えたクラッド素材6が配置されている。図1は、熱間圧延ロール1、2を側面視し、熱間圧延ロール1、2により圧延加工されるクラッド素材6の搬送方向が左右方向に延在するように側面視した状態を示している。心材3は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるスラブ鋳塊を指定の厚さ、形状に切削して得られる。また、皮材4,5は、スラブ鋳塊を指定の厚さに熱間圧延し、適切な長さに切断して得られる。ろう材や犠牲陽極材を例示できる。
図1は、本発明に係る第1実施形態のクラッド材の製造方法を実施する場合に最初の圧延パスにおいて採用する素材配置の一例を示すもので、上下に離間して配置された熱間圧延ロール(ワークロール)1、2の間に心材3と皮材4、5を備えたクラッド素材6が配置されている。図1は、熱間圧延ロール1、2を側面視し、熱間圧延ロール1、2により圧延加工されるクラッド素材6の搬送方向が左右方向に延在するように側面視した状態を示している。心材3は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるスラブ鋳塊を指定の厚さ、形状に切削して得られる。また、皮材4,5は、スラブ鋳塊を指定の厚さに熱間圧延し、適切な長さに切断して得られる。ろう材や犠牲陽極材を例示できる。
この実施形態では、心材3の高温変形抵抗(MPa)が皮材4、5の高温変形抵抗(MPa)よりも大きいと仮定し、皮材4の高温変形抵抗(MPa)が皮材5の高温変形抵抗(MPa)よりも小さいと仮定し、これらの仮定に基づく前提条件の基、熱間圧延によりクラッド材を形成する場合について説明する。
なお、図1に示す状態において心材3と皮材4、5は熱間圧延ロール1、2の前後(図1の左右方向)に配置されている図示略の搬送路に沿って搬送できるように設置されている。図1は圧延開始前の状態を示し、この圧延開始前の状態において心材3と皮材4、5は接合される前の積み重ねられた未接合状態を示している。
なお、図1に示す状態において心材3と皮材4、5は熱間圧延ロール1、2の前後(図1の左右方向)に配置されている図示略の搬送路に沿って搬送できるように設置されている。図1は圧延開始前の状態を示し、この圧延開始前の状態において心材3と皮材4、5は接合される前の積み重ねられた未接合状態を示している。
図1に示す配置(開始パターン1)は、熱間圧延ロール1、2をクラッド素材6の長さ方向中央付近(心材3の長さ方向中央付近)に配置した場合を示している。
図1に示す開始パターン1の場合、心材3の長さ方向中央から心材3の長さ方向左側端部までの距離をaと仮定し、心材3の長さ方向中央から心材3の長さ方向右側端部までの距離をbと仮定する。以下の説明において、心材3は皮材4、5より厚く、皮材4と皮材5は同じ厚さであると仮定する。心材3に対し、皮材4、5は、熱間圧延温度における高温変形抵抗がいずれも小さいと仮定し、皮材4の高温変形抵抗は皮材5の高温変形抵抗よりも小さいと仮定する。
図1に示す開始パターン1の場合、心材3の長さ方向中央から心材3の長さ方向左側端部までの距離をaと仮定し、心材3の長さ方向中央から心材3の長さ方向右側端部までの距離をbと仮定する。以下の説明において、心材3は皮材4、5より厚く、皮材4と皮材5は同じ厚さであると仮定する。心材3に対し、皮材4、5は、熱間圧延温度における高温変形抵抗がいずれも小さいと仮定し、皮材4の高温変形抵抗は皮材5の高温変形抵抗よりも小さいと仮定する。
本実施形態では、心材3の高温変形抵抗が皮材4、5の高温変形抵抗より大きいため、熱間圧延の初期段階である接合工程において、心材3の伸び量よりも皮材4、5の伸び量の方が大きくなる。また、皮材4、5より心材3の強度が高い場合、接合工程では、未接合状態で圧延するため、心材3はほとんど変形しない。このため、引き続く熱間圧延時の皮材4、5の伸びに伴う端部における脱落を防止するために、図1に示すようにクラッド素材6の段階では心材3より皮材4、5を予め所定長さだけ短くしておく。図1では、熱間圧延ロール1、2をクラッド素材6の長さ方向中央付近に配置し、図1に示す状態から熱間圧延ロール1、2の間隔を狭めつつクラッド素材6を長さ方向に沿って左方向に送りつつ熱間圧延するか、あるいは、右方向に送りつつ熱間圧延を行う。このため、図1の心材3において左側端部には長さa’で示す皮材4、5の存在しない部分と、右側端部には長さb’で示す皮材4、5の存在しない部分が設けられている。
熱間圧延ロール1、2に対し、クラッド素材6を長さ方向に沿って左方向に送り、クラッド素材6の長さ方向右側半分を熱間圧延した場合は、次にクラッド素材6を長さ方向右方向に送り、クラッド素材6の長さ方向左側半分を熱間圧延する。
熱間圧延ロール1、2に対し、クラッド素材6を長さ方向に沿って右方向に送り、クラッド素材6の長さ方向左側半分を熱間圧延した場合は、次にクラッド素材6を長さ方向左方向に送り、クラッド素材6の長さ方向右側半分を熱間圧延する。
熱間圧延ロール1、2に対し、クラッド素材6を長さ方向に沿って右方向に送り、クラッド素材6の長さ方向左側半分を熱間圧延した場合は、次にクラッド素材6を長さ方向左方向に送り、クラッド素材6の長さ方向右側半分を熱間圧延する。
以上説明した1パス目の熱間圧延によりクラッド素材6の全長にわたり接合工程を行って心材3に対し皮材4、5を密着させ、この後、必要回数パスの熱間圧延を施して図3に示すように心材7に対し皮材8、9を一体化したアルミニウムクラッド材10を得ることができる。
心材7に対し皮材8、9を一体化したアルミニウムクラッド材10において、狙いクラッド率は皮材8の厚さ(A):心材7の厚さ(B):皮材9の厚さ(C)とすると、例えば、20%、70%、10%などとすることができる。狙いクラッド率は、その他、例えば、30%、60%、10%などとすることができる。
図1に示す開始パターン1から1パス目の熱間圧延を開始する場合、a:b≒a’:b’の関係とすることが好ましい。
心材7に対し皮材8、9を一体化したアルミニウムクラッド材10において、狙いクラッド率は皮材8の厚さ(A):心材7の厚さ(B):皮材9の厚さ(C)とすると、例えば、20%、70%、10%などとすることができる。狙いクラッド率は、その他、例えば、30%、60%、10%などとすることができる。
図1に示す開始パターン1から1パス目の熱間圧延を開始する場合、a:b≒a’:b’の関係とすることが好ましい。
図1に示す開始パターンに従い熱間圧延を行う場合、数値解析を適用し、皮材4、5が長さ方向にどの程度伸びるか以下に説明するように予測を行い、予測値を算出する。
まず、最初の前提条件として、接合工程後の皮材8または皮材9の圧延方向長さと接合工程後の心材7の圧延方向長さがほぼ等しくなるように、接合工程に供する前の心材と皮材の圧延方向の長さを決定することを前提とする。
ここでほぼ等しいとは、接合工程に引き続く熱間圧延において、皮材の脱落が生じないこと、熱間圧延後の皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率が得られる範囲の差異を示す。前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異は100mm以下であることが、皮材の脱落防止および適正クラッド率を得る上で好ましい。前述の差異について、さらに好ましくは50mm以下であり、熱間圧延後の皮材の切り捨て量をさらに削減できるが、前記差異は0mmに近いほど好ましいのは明らかである。
前述の差異について100mm以下と設定したのは、実際の熱間圧延設備においてアルミニウムクラッド材を製造した場合、心材7に対し皮材8、9が伸びて心材7の端面から皮材8、9がはみ出したとして、はみ出し長さが100mm以下であれば搬送路において脱落などを生じるおそれがない長さであるからである。また、熱間圧延後、心材7よりも皮材8、9の方が短い場合も考えられるので、その場合、心材7の長さより皮材8、9の方が短いとしてその差は100mm以下とすることを前提とする。
心材7に対し皮材8、9が伸びて心材7の端面から皮材8、9がはみ出した場合と、心材7の長さより皮材8、9の方が短いとしてその差が100mm以下の場合の両方を考慮すると、ほぼ等しいとは、前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異が±100mm以内であることを意味する。
まず、最初の前提条件として、接合工程後の皮材8または皮材9の圧延方向長さと接合工程後の心材7の圧延方向長さがほぼ等しくなるように、接合工程に供する前の心材と皮材の圧延方向の長さを決定することを前提とする。
ここでほぼ等しいとは、接合工程に引き続く熱間圧延において、皮材の脱落が生じないこと、熱間圧延後の皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率が得られる範囲の差異を示す。前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異は100mm以下であることが、皮材の脱落防止および適正クラッド率を得る上で好ましい。前述の差異について、さらに好ましくは50mm以下であり、熱間圧延後の皮材の切り捨て量をさらに削減できるが、前記差異は0mmに近いほど好ましいのは明らかである。
前述の差異について100mm以下と設定したのは、実際の熱間圧延設備においてアルミニウムクラッド材を製造した場合、心材7に対し皮材8、9が伸びて心材7の端面から皮材8、9がはみ出したとして、はみ出し長さが100mm以下であれば搬送路において脱落などを生じるおそれがない長さであるからである。また、熱間圧延後、心材7よりも皮材8、9の方が短い場合も考えられるので、その場合、心材7の長さより皮材8、9の方が短いとしてその差は100mm以下とすることを前提とする。
心材7に対し皮材8、9が伸びて心材7の端面から皮材8、9がはみ出した場合と、心材7の長さより皮材8、9の方が短いとしてその差が100mm以下の場合の両方を考慮すると、ほぼ等しいとは、前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異が±100mm以内であることを意味する。
本実施形態では、数値解析により求めた皮材の伸び量予測値に対し、実際に心材と皮材を用いた実熱間圧延による皮材の伸び量を求め、数値解析により求めた伸び量予測値を実熱間圧延により求めた実測伸び量に近似できるように補正係数αを求める。
次に、アルミニウムクラッド材10を製造する場合、伸び量予測値に補正係数αを乗じて求めた皮材8、9の補正予測長さを求める。皮材8、9の補正予測長さを求めると、熱間圧延によりこれらが個々にどの程度の伸び量となるのか把握することができる。皮材8の予測長さを求め、心材7の初期長さとの差を取ると心材7に対する皮材8の予測の伸び量が判る。補正係数αの算出方法の詳細については後述する。
次に、アルミニウムクラッド材10を製造する場合、伸び量予測値に補正係数αを乗じて求めた皮材8、9の補正予測長さを求める。皮材8、9の補正予測長さを求めると、熱間圧延によりこれらが個々にどの程度の伸び量となるのか把握することができる。皮材8の予測長さを求め、心材7の初期長さとの差を取ると心材7に対する皮材8の予測の伸び量が判る。補正係数αの算出方法の詳細については後述する。
従って、図1に示すように熱間圧延する前の段階において、後の接合工程において生じる伸び量の分、心材3よりも長さの短い皮材4を用いると良い。図1の場合、a’+b’が予測の伸び量に相当する。
また、皮材4と皮材5が同じアルミニウム合金製で同じ厚さであるならば、皮材5も皮材4と同じ長さにすれば良いが、用いるアルミニウム合金が異なった場合や厚さが異なる場合は、上述と同じ手法により心材3に対する皮材5の予測長さを求めて熱間圧延前の皮材5の長さを決定することができる。
また、皮材4と皮材5が同じアルミニウム合金製で同じ厚さであるならば、皮材5も皮材4と同じ長さにすれば良いが、用いるアルミニウム合金が異なった場合や厚さが異なる場合は、上述と同じ手法により心材3に対する皮材5の予測長さを求めて熱間圧延前の皮材5の長さを決定することができる。
本実施形態においては、一例として、数値解析を用いて接合工程における伸び量予測値を算出する場合(解析熱間圧延の場合)、初期総板厚450~650mm、皮材8、9の心材7に対するクラッド率を5~30%の範囲に設定し、かつ、初期心材の長さを3000~5000mmの範囲に設定することができ、皮材8、9と心材7の初期長さは揃えておくことが好ましい。また、解析条件の一例として圧下量を20mmに設定し、実圧延と解析条件を一致させている。
数値解析の手法は特に限定されないが、種々の被圧延材に対して簡便に計算できる点から、有限要素法を用いた汎用の非線形構造解析ソフトウェアが好適である。
本実施形態では、数値解析の一例として、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェア(Livermore Software Technology Corporation(LSTC社)製 LS-DYNA、Ver R10.2.0)を用いることができる。なお、ここで用いる数値解析の手法は、スラブ法等の初等解析であっても良い。
また、構造解析用弾塑性有限要素法を用いる場合、心材3と皮材4、5は塑性変形を考慮する必要があるため、剛塑性体もしくは弾塑性体を用いることができる。なお、皮材の伸び量における弾性変形量は微小であり無視できるため、計算時間の観点からは剛塑性体を用いることがより好ましい。本実施形態あるいは後述する実施例では、弾塑性体とした。
熱間圧延ロール1、2は一切変形しない剛体と仮定し、心材3と皮材4、5の高温変形抵抗曲線として、心材3と皮材4、5の材料毎に480℃、ひずみ速度1/sにおける熱間圧縮試験により求めた高温変形抵抗曲線を適用する。
また、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェアにおける要素タイプは、3軸の応力を考慮できる、いわゆるソリッド要素であれば、特に限定されない。なお、板圧延においては長さ方向および板厚方向のひずみ量に対して板幅方向のひずみ量が無視できる程度に小さいため、板幅方向のひずみを考慮しない、いわゆる平面ひずみ要素を用いることも可能である。なお、本実施例では上述のLS-DYNAに実装されているソリッド要素の中で完全積分S/Rソリッド要素を用い、心材3と皮材4、5の板幅方向を変位拘束し、板幅方向の変形を無視した平面ひずみ状態とした。
本実施形態では、数値解析の一例として、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェア(Livermore Software Technology Corporation(LSTC社)製 LS-DYNA、Ver R10.2.0)を用いることができる。なお、ここで用いる数値解析の手法は、スラブ法等の初等解析であっても良い。
また、構造解析用弾塑性有限要素法を用いる場合、心材3と皮材4、5は塑性変形を考慮する必要があるため、剛塑性体もしくは弾塑性体を用いることができる。なお、皮材の伸び量における弾性変形量は微小であり無視できるため、計算時間の観点からは剛塑性体を用いることがより好ましい。本実施形態あるいは後述する実施例では、弾塑性体とした。
熱間圧延ロール1、2は一切変形しない剛体と仮定し、心材3と皮材4、5の高温変形抵抗曲線として、心材3と皮材4、5の材料毎に480℃、ひずみ速度1/sにおける熱間圧縮試験により求めた高温変形抵抗曲線を適用する。
また、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェアにおける要素タイプは、3軸の応力を考慮できる、いわゆるソリッド要素であれば、特に限定されない。なお、板圧延においては長さ方向および板厚方向のひずみ量に対して板幅方向のひずみ量が無視できる程度に小さいため、板幅方向のひずみを考慮しない、いわゆる平面ひずみ要素を用いることも可能である。なお、本実施例では上述のLS-DYNAに実装されているソリッド要素の中で完全積分S/Rソリッド要素を用い、心材3と皮材4、5の板幅方向を変位拘束し、板幅方向の変形を無視した平面ひずみ状態とした。
次に、熱間圧延ロール1、2が最初に心材3と皮材4、5を噛み込む初期噛み込み領域における心材3と皮材4、5は相互のずれを起こさないと仮定し、心材3と皮材4、5において初期噛み込み領域を除く他の領域は心材3と皮材4、5の接触解析をクーロン摩擦を仮定したペナルティ法にて計算するとともに、ペナルティ法に用いる摩擦係数を熱間圧延温度における摩擦挙動評価試験により求めることができる。
なお、本発明が想定している実際の圧延方法は、図1、図2に示すようにクラッド素材(スラブ)6の途中の位置から1パス目の圧延を行うこと、皮材4、5を心材3よりも短くしておいて圧延することとしている。これに対し、実施形態の皮材の伸び予測解析方法では予測解析を簡便化するため、クラッド素材6の片側から逆の片側までクラッド素材(スラブ)6の全長にわたって1パスで圧延する接合条件とし、その際に最初に噛み込む側の端を初期噛み込み領域と設定し、皮材4、5と心材3の初期長さは揃えておく、という簡略化を行って数値解析している。
なお、本発明が想定している実際の圧延方法は、図1、図2に示すようにクラッド素材(スラブ)6の途中の位置から1パス目の圧延を行うこと、皮材4、5を心材3よりも短くしておいて圧延することとしている。これに対し、実施形態の皮材の伸び予測解析方法では予測解析を簡便化するため、クラッド素材6の片側から逆の片側までクラッド素材(スラブ)6の全長にわたって1パスで圧延する接合条件とし、その際に最初に噛み込む側の端を初期噛み込み領域と設定し、皮材4、5と心材3の初期長さは揃えておく、という簡略化を行って数値解析している。
本実施例では、心材3と皮材4、5の界面の接触条件はクーロン摩擦を仮定したが、これに限定されるものではなく、せん断摩擦などの定義も使用できる。クーロン摩擦においてはクーロン摩擦係数として0.2程度の値を、せん断摩擦においてはせん断摩擦係数として0.9程度の値を用いることができる。摩擦係数の値によって、皮材の伸び量予測値は変化するが、最終的に補正係数αを用いて実際の圧延における皮材伸び量と伸び予測結果とがよく近似するように補正するため、ここでは、摩擦係数を厳密に実現象と一致させる必要はない。
本実施例では、クーロン摩擦係数を設定できる接触条件として、上述のLS-DYNAに実装されているCONTACT_AUTOMATIC_SURFACE_TO_SURFACEを選択して用いた。
本実施例では、クーロン摩擦係数を設定できる接触条件として、上述のLS-DYNAに実装されているCONTACT_AUTOMATIC_SURFACE_TO_SURFACEを選択して用いた。
次に、非線形構造解析ソフトウェアにより求めた伸び量予測値を前記熱間圧延試験により求めた実測伸び量に近似できるように補正係数αを求める。
熱間圧延試験による心材3の伸び量と皮材4、5の伸び量の実績と、伸び量予測値が互いに近似するように以下の式(1)で表される残差平方和が最小となる補正係数αを最適化計算により求めることができる。
熱間圧延試験による心材3の伸び量と皮材4、5の伸び量の実績と、伸び量予測値が互いに近似するように以下の式(1)で表される残差平方和が最小となる補正係数αを最適化計算により求めることができる。
ただし、式(1)において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示す。
なお、式(1)において、(xi×α)項は、1次の積算により補正することを意味するが、補正式の形式としては、上述の1次積算による補正に限定されるわけではない。例えば、2次の積算を行うことや、切片を利用してシフトする場合も考えられる。
例えば、上述の残差平方和の式に関し、式(1)に替えて以下の(2)式の二次多項式を利用することもできる。上述の残差平方和の式は、その他の多項式、指数式、対数式などを適宜用いても良い。
なお、式(1)において、(xi×α)項は、1次の積算により補正することを意味するが、補正式の形式としては、上述の1次積算による補正に限定されるわけではない。例えば、2次の積算を行うことや、切片を利用してシフトする場合も考えられる。
例えば、上述の残差平方和の式に関し、式(1)に替えて以下の(2)式の二次多項式を利用することもできる。上述の残差平方和の式は、その他の多項式、指数式、対数式などを適宜用いても良い。
ただし、式(2)において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示し、a、b、cは補正係数を示す。
図4は、実際の熱間圧延装置を用いてクラッド材を熱間圧延した場合の皮材の伸びの実績値を縦軸に表示し、縦軸に示した実績値を得た場合に対応するように先に説明した数値解析により計算した伸び量予測値を横軸に示したグラフを示す。図4中に斜めに描いた実線が縦軸の値と横軸の値が1:1となる(すなわち予測値と実績値が一致する)直線であり、図4の実線と乖離している値を補正することが目的となる。
図4に示す関係をグラフ化すると、実際の熱間圧延装置を用いてクラッド材を熱間圧延により製造した場合の伸びの実績値と上述の非線形構造解析ソフトウェアにより求められる伸び量予測値は乖離する。図4の例では、補正前の数値解析による伸び予測値は、実際の伸び実績値よりも大きく、補正前の予測値は実現象よりも皮材の伸び量を過大に見積もっている。そこで、両者の値が互いに近似するように上述の残差平方和が最小となる補正係数αを求める。
図4に示す関係をグラフ化すると、実際の熱間圧延装置を用いてクラッド材を熱間圧延により製造した場合の伸びの実績値と上述の非線形構造解析ソフトウェアにより求められる伸び量予測値は乖離する。図4の例では、補正前の数値解析による伸び予測値は、実際の伸び実績値よりも大きく、補正前の予測値は実現象よりも皮材の伸び量を過大に見積もっている。そこで、両者の値が互いに近似するように上述の残差平方和が最小となる補正係数αを求める。
図5を用いて、補正係数αの決定方法をより具体的に説明する。
複数のクラッド材A~G…に対して、接合圧延における皮材の伸び量実績値yを測定する。それらのクラッド材に対して、数値解析による伸び量予測を行い、伸び量予測値xを得る。ここで、伸び量予測値xは、伸び量実測値と近似するよう補正を行っていないため、図4に例示したように、皮材の伸び量を正確には予測できていないため、補正係数αを決定する必要がある。
そこで、補正係数αを仮に1として、前記予測値xに対して補正係数αを乗じた値x×αを、クラッド材A~G…に対して算出する。ここでは、αは仮に1としているため、x×αの値は伸び量予測値xと一致する。次に、伸び量実績値yと補正係数αを乗じた予測値x×αの差の二乗を、クラッド材A~G…に対して算出し、クラッド材A~G…に対して算出された{y-(x×α)}2の値の総和を算出する。
このようにして算出された残差平方和はαの値に対して増減するため、αを変量させて残差平方和を計算すれば、残差平方和が最小となるαを決定することができる。この手法によって得られた補正係数αを乗じた、補正後の皮材伸び量の予測値x×αは、実際の皮材伸び量yとよく近似する。
複数のクラッド材A~G…に対して、接合圧延における皮材の伸び量実績値yを測定する。それらのクラッド材に対して、数値解析による伸び量予測を行い、伸び量予測値xを得る。ここで、伸び量予測値xは、伸び量実測値と近似するよう補正を行っていないため、図4に例示したように、皮材の伸び量を正確には予測できていないため、補正係数αを決定する必要がある。
そこで、補正係数αを仮に1として、前記予測値xに対して補正係数αを乗じた値x×αを、クラッド材A~G…に対して算出する。ここでは、αは仮に1としているため、x×αの値は伸び量予測値xと一致する。次に、伸び量実績値yと補正係数αを乗じた予測値x×αの差の二乗を、クラッド材A~G…に対して算出し、クラッド材A~G…に対して算出された{y-(x×α)}2の値の総和を算出する。
このようにして算出された残差平方和はαの値に対して増減するため、αを変量させて残差平方和を計算すれば、残差平方和が最小となるαを決定することができる。この手法によって得られた補正係数αを乗じた、補正後の皮材伸び量の予測値x×αは、実際の皮材伸び量yとよく近似する。
上述の数値解析に基づき、心材3、皮材4、5のそれぞれの予測の伸び量(mm)を算出したならば、予測の伸び量の算出結果に従い、算出結果をキャンセルするように皮材4、5の長さを予め短く設定しておくこととする。
例えば、心材3がほとんど伸びないと仮定し、心材の長さが3500mmである場合、皮材4が350mm程度伸びると予測され、皮材5が380mm伸びると予測される場合であれば、心材の長さを3500mmに設定し、皮材4を3150mmに設定し、皮材5を3120mmに設定する。
なお、予測の伸び量の算出結果に基づき、熱間圧延後に心材7と皮材8と皮材9が全て同じ長さになるように皮材4、5の長さを予め短く設定しておくこともできるが、熱間圧延後に心材7に対し皮材8、9が多少長すぎたり短すぎたりする場合も本実施形態では許容する。接合工程に引き続く熱間圧延において、皮材の脱落が生じない範囲、また、熱間圧延後の皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率が得られる範囲として、前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異は100mm以下であることが、皮材の脱落防止および適正クラッド率を得る上で好ましい。よって、本実施形態における一応の目安として、前記接合工程後の心材7の圧延方向長さに対し、皮材8、9の圧延方向長さの差異が100mm以下であれば、良好な接合結果であると判断する。
さらに好ましくは、前記差異は50mm以下であり、熱間圧延後の皮材の切り捨て量をさらに削減できるが、前記差異は0mmに近いほど好ましいのは明らかである。
熱間圧延後に心材7よりも皮材8、9が100mmを超えて短い場合、クラッドされていない無駄な部分が多く生じるので、歩留まりが低下する。熱間圧延後に心材7よりも皮材8、9が100mmを超えて長い場合、皮材8、9の突出部分が搬送路に脱落し、生産性を妨げるおそれがある。
例えば、心材3がほとんど伸びないと仮定し、心材の長さが3500mmである場合、皮材4が350mm程度伸びると予測され、皮材5が380mm伸びると予測される場合であれば、心材の長さを3500mmに設定し、皮材4を3150mmに設定し、皮材5を3120mmに設定する。
なお、予測の伸び量の算出結果に基づき、熱間圧延後に心材7と皮材8と皮材9が全て同じ長さになるように皮材4、5の長さを予め短く設定しておくこともできるが、熱間圧延後に心材7に対し皮材8、9が多少長すぎたり短すぎたりする場合も本実施形態では許容する。接合工程に引き続く熱間圧延において、皮材の脱落が生じない範囲、また、熱間圧延後の皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率が得られる範囲として、前記接合工程後の前記皮材の圧延方向長さと前記接合工程後の前記心材の圧延方向長さの差異は100mm以下であることが、皮材の脱落防止および適正クラッド率を得る上で好ましい。よって、本実施形態における一応の目安として、前記接合工程後の心材7の圧延方向長さに対し、皮材8、9の圧延方向長さの差異が100mm以下であれば、良好な接合結果であると判断する。
さらに好ましくは、前記差異は50mm以下であり、熱間圧延後の皮材の切り捨て量をさらに削減できるが、前記差異は0mmに近いほど好ましいのは明らかである。
熱間圧延後に心材7よりも皮材8、9が100mmを超えて短い場合、クラッドされていない無駄な部分が多く生じるので、歩留まりが低下する。熱間圧延後に心材7よりも皮材8、9が100mmを超えて長い場合、皮材8、9の突出部分が搬送路に脱落し、生産性を妨げるおそれがある。
上述のように、皮材4、5の伸び量を数値解析により算出して予測し、皮材4、5が伸びた結果として、1パス目の熱間圧延後に心材3と皮材4、5の長さがほぼ揃うか、圧延後の皮材8、9が心材7より若干短くなるか若干長くなるように皮材4、5の長さを調整した上で最初の1パス目の熱間圧延を行う。この1パス目の熱間圧延により心材3に対し皮材4、5を密着させることができる。
1パス目の熱間圧延において、多少の誤差を有するとしても、前述の数値解析による予測に応じて皮材を予め短くしておくので、熱間圧延後の心材3と皮材4、5の長さの差異を従来よりも短く抑制することができる。
このため、仮に、皮材4、5が心材3の長さ方向端部から突出するとしても、その突出量を従来よりも大幅に削減できる結果、皮材端部の脱落を防止できる。また、熱間圧延後に皮材4、5が心材3より短くなるとしても、短くなる量を少なくできるので、熱間圧延後に切り捨てて無駄となる心材3の量を削減できる。
1パス目の熱間圧延において、多少の誤差を有するとしても、前述の数値解析による予測に応じて皮材を予め短くしておくので、熱間圧延後の心材3と皮材4、5の長さの差異を従来よりも短く抑制することができる。
このため、仮に、皮材4、5が心材3の長さ方向端部から突出するとしても、その突出量を従来よりも大幅に削減できる結果、皮材端部の脱落を防止できる。また、熱間圧延後に皮材4、5が心材3より短くなるとしても、短くなる量を少なくできるので、熱間圧延後に切り捨てて無駄となる心材3の量を削減できる。
1パス目の熱間圧延が終了した圧延材に対し、2パス目以降の必要回数パスの熱間圧延を施すことにより目的の厚さの図3に示す構造のクラッド材10を得ることができる。
なお、1パス目の熱間圧延により心材3に対し皮材4、5を密着させておくならば、2パス目以降の熱間圧延において皮材4、5はそれらの長さ方向においてほとんど心材との界面で摺動(ズレ)することなく熱間圧延され、目的のクラッド率のクラッド材を得ることができる。
なお、1パス目の熱間圧延により心材3に対し皮材4、5を密着させておくならば、2パス目以降の熱間圧延において皮材4、5はそれらの長さ方向においてほとんど心材との界面で摺動(ズレ)することなく熱間圧延され、目的のクラッド率のクラッド材を得ることができる。
心材3の高温変形抵抗が皮材4、5の高温変形抵抗より大きい場合、接合工程で心材3はほとんど伸びないと仮定できる。皮材4、5を比較すると、皮材4の高温変形抵抗より皮材5の高温変形抵抗の方が値が大きい場合と小さい場合がある。
皮材4、5を比較すると皮材4の高温変形抵抗より皮材5の高温変形抵抗の方が値が大きい場合、その値の大小により皮材4、5の伸び量は変化する。上述の数値解析では、皮材4の高温変形抵抗より皮材5の高温変形抵抗の方が値が大きい度合いに応じて予測伸び量の値は変化する。
皮材4、5を比較すると皮材4の高温変形抵抗より皮材5の高温変形抵抗の方が値が大きい場合、その値の大小により皮材4、5の伸び量は変化する。上述の数値解析では、皮材4の高温変形抵抗より皮材5の高温変形抵抗の方が値が大きい度合いに応じて予測伸び量の値は変化する。
なお、製造するべきクラッド材においてクラッド率は様々であるので、皮材4、5のクラッド率がそれぞれどの程度の値であるのかにより、皮材4,5の個々の伸び量は異なることとなる。
上述の数値解析では、この関係も考慮して伸び量を精度よく予測することができる。
上述の数値解析では、この関係も考慮して伸び量を精度よく予測することができる。
図1に示す開始パターン1から熱間圧延加工を開始することにより、ワークロール1、2が皮材4、5を噛み込んで熱間圧延を開始する段階で皮材4、5の噛み込み時に生じる大きなズレを回避しながら圧延ができる。
また、ワークロール1、2からクラッド素材6に加える荷重によって熱間圧延を制御する場合、正確な荷重による圧延制御ができるようになる。
このため、最終製品として図3に示すように心材7に対し皮材8、9を確実に密着させた状態のアルミニウムクラッド材10を得ることができ、接合工程に引き続く熱間圧延において、心材7の長さ方向端部からの皮材8、9の突出量を少なくし、心材7から皮材8、9が突出する場合の皮材脱落を防止しつつ目的のクラッド率としたクラッド材10の製造ができる。
また、ワークロール1、2からクラッド素材6に加える荷重によって熱間圧延を制御する場合、正確な荷重による圧延制御ができるようになる。
このため、最終製品として図3に示すように心材7に対し皮材8、9を確実に密着させた状態のアルミニウムクラッド材10を得ることができ、接合工程に引き続く熱間圧延において、心材7の長さ方向端部からの皮材8、9の突出量を少なくし、心材7から皮材8、9が突出する場合の皮材脱落を防止しつつ目的のクラッド率としたクラッド材10の製造ができる。
図2は、本発明に係る第1実施形態のクラッド材の製造方法を実施する場合に1パス目の圧延パスにおいて採用する素材配置の他の例(開始パターン2)を示すもので、上下に離間して配置されたワークロール1、2の間に心材3と皮材4、5を備えたクラッド素材6が配置されている。
この素材配置例では、心材3の高温変形抵抗(MPa)が皮材4、5の高温変形抵抗(MPa)よりも大きいと仮定し、皮材4の高温変形抵抗(MPa)が皮材5の高温変形抵抗(MPa)よりも小さいと仮定し、これらの仮定に基づく前提条件の基、圧延によりクラッド材を形成する場合などの諸条件は先の例と同じである。
この素材配置例では、心材3の高温変形抵抗(MPa)が皮材4、5の高温変形抵抗(MPa)よりも大きいと仮定し、皮材4の高温変形抵抗(MPa)が皮材5の高温変形抵抗(MPa)よりも小さいと仮定し、これらの仮定に基づく前提条件の基、圧延によりクラッド材を形成する場合などの諸条件は先の例と同じである。
図2に示す開始パターン2は、ワークロール1、2をクラッド素材6の長さ端部側(心材3の長さ方向端部側)に配置することを示している。
図2に示す場合、心材3の長さ方向左端からワークロール1、2を配置した位置までの距離をaと仮定し、心材3の長さ方向右端からワークロール1、2を配置した位置までの距離をbと仮定する。以下の説明において、心材3と皮材4、5の厚さ関係、心材3と皮材4、5の高温変形抵抗の関係も先の例と同等とする。
図2に示す場合、心材3の長さ方向左端からワークロール1、2を配置した位置までの距離をaと仮定し、心材3の長さ方向右端からワークロール1、2を配置した位置までの距離をbと仮定する。以下の説明において、心材3と皮材4、5の厚さ関係、心材3と皮材4、5の高温変形抵抗の関係も先の例と同等とする。
熱間圧延時の皮材4、5の伸びに伴う端部における脱落を防止するために、図2に示すようにクラッド素材6の段階では心材3より皮材4、5を予め短くしておく。図2では、ワークロール1、2をクラッド素材6の長さ方向左端部側に配置し、図2に示す状態からワークロール1、2の間隔を狭めつつクラッド素材6を長さ方向に沿って左方向に送りつつ熱間圧延を行う。このため、図2の心材3において左側端部には長さa’で示す皮材4、5の存在しない部分と、右側端部には長さb’で示す皮材4、5の存在しない部分が設けられる。
ワークロール1、2に対し、クラッド素材6を長さ方向に沿って左方向に送り、クラッド素材6の長さ方向右側大部分を熱間圧延した場合は、次にクラッド素材6を長さ方向右方向に送り、クラッド素材6の長さ方向左側端部側を熱間圧延する。
以上の1パス目の熱間圧延により心材3の全長にわたり熱間圧延を行って心材3に対し皮材4、5を密着させ、この後に必要回数の熱間圧延を行うことで図3に示すように心材7に対し皮材8、9を一体化した目的厚さのクラッド材10を得ることができる。
以上の1パス目の熱間圧延により心材3の全長にわたり熱間圧延を行って心材3に対し皮材4、5を密着させ、この後に必要回数の熱間圧延を行うことで図3に示すように心材7に対し皮材8、9を一体化した目的厚さのクラッド材10を得ることができる。
図2に示す開始パターン2であっても、ワークロール1、2が皮材4、5を噛み込んで熱間圧延を開始する場合に皮材4、5の噛み込み時に生じる大きなズレを回避しながら圧延ができる。このため、ワークロール1、2からクラッド素材6に荷重を加えて熱間圧延を制御する場合、ズレを回避しつつ正確な圧延制御ができるようになる。
図2に示す開始パターン2であっても、先の図1に示す開始パターン1から熱間圧延を開始した場合と同様に、皮材4、5の伸び量を少なくした熱間圧延ができ、皮材4、5の端部脱落を防止しつつ、目的のクラッド率のクラッド材10を得ることができる。
以上説明した実施形態に係るアルミニウムクラッド材の製造方法においては、初期総板厚450~650mm、前記皮材クラッド率を5~30%の範囲に設定し、かつ、初期心材の長さを3000~5000mmに設定する前提条件の基、前記非線形構造解析ソフトウェアとして、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェアを用いることができる。
また、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェアにおいて、心材と皮材は弾塑性体であり、圧延ロールは一切変形しない剛体と仮定し、心材と皮材の高温変形抵抗曲線として、心材と皮材の材料毎に480℃における熱間圧縮試験により求めた高温変形抵抗曲線を適用できる。また、要素タイプとして完全積分S/Rソリッド要素を用い、心材と皮材の板厚方向の積分点を6点以上設定し、拘束条件として幅方向を変位拘束した平面ひずみ状態と仮定することができる。ただし、心材の両面に皮材をクラッドする場合、一方の皮材のクラッド率=一方の皮材の厚さ/(一方の皮材の厚さ+心材の厚さ+他方の皮材の厚さ)とする。
なお、要素タイプは上述の完全積分S/Rソリッド要素に限らずシェル要素などを用いても良く、数値解析は前記構造解析用弾塑性有限要素法に限らず、初等解法やスラブ法を用いて予測しても良い。
また、構造解析用弾塑性有限要素法ソフトウェアにおいて、心材と皮材は弾塑性体であり、圧延ロールは一切変形しない剛体と仮定し、心材と皮材の高温変形抵抗曲線として、心材と皮材の材料毎に480℃における熱間圧縮試験により求めた高温変形抵抗曲線を適用できる。また、要素タイプとして完全積分S/Rソリッド要素を用い、心材と皮材の板厚方向の積分点を6点以上設定し、拘束条件として幅方向を変位拘束した平面ひずみ状態と仮定することができる。ただし、心材の両面に皮材をクラッドする場合、一方の皮材のクラッド率=一方の皮材の厚さ/(一方の皮材の厚さ+心材の厚さ+他方の皮材の厚さ)とする。
なお、要素タイプは上述の完全積分S/Rソリッド要素に限らずシェル要素などを用いても良く、数値解析は前記構造解析用弾塑性有限要素法に限らず、初等解法やスラブ法を用いて予測しても良い。
また、以上説明した数値解析を用いた伸び量予測値の算出においては、圧延ロールが最初に心材と皮材を噛み込む初期噛み込み領域における心材と皮材は圧延方向に相互にずれを起こさないと仮定し、心材と皮材において初期噛み込み領域を除く他の領域は心材と皮材の接触力をペナルティ法にて計算するとともに、ペナルティ法に用いる摩擦係数を熱間圧延温度における摩擦挙動評価試験により求めることが好ましい。
以下の表1に示すようにAl-Si合金からなる皮材(ろう材)Aと、Al-Zn合金からなる心材Bと、Al-Mn合金からなる皮材(犠牲材層)Cの3層構造である表1に示すNo.A~Eの各クラッド素材に対し、以下の解析を行った。
図1に示す開始パターン1から熱間圧延を開始すると仮定し、皮材A、心材B、皮材Cが、以下の表1に示す高温変形抵抗(MPa)を有し、以下の表1に示す初期長手寸法(mm)を有すると仮定した。表1に示す皮材A、心材B、皮材Cの狙いクラッド率(%)とした場合、実施形態において説明した有限要素法に基づく伸び量予測結果(mm)を以下の表1に示す。皮材Aと心材Bと皮材Cを備えたクラッド素材の総厚は600mm、ワークロールによる圧下量は20mmに設定した。
有限要素法に基づく予測は、先に実施形態において詳述したパラメータの設定に基づく有限要素法の計算手法に基づく。
有限要素法に基づく予測は、先に実施形態において詳述したパラメータの設定に基づく有限要素法の計算手法に基づく。
また、表1にAl-Zn合金からなる心材Dを適用したNo.Bの試料の計算結果、No.Aの試料に対し、初期長さの異なるNo.Cの試料の伸び量予測結果を示す。
表1にAl-Si合金からなる皮材(ろう材)Eを採用し、Al-Mn合金からなる皮材(犠牲材)Fを採用し、Al-Zn合金からなる心材Bを採用した3層構造のNo.Dの試料の伸び量予測結果を示す。
表1に皮材A、心材B、皮材Cを採用した3層構造であり、これらによる狙いクラッド率を30%:60%:10%に設定したNo.Eの試料の伸び量予測結果を示す。
表1にAl-Si合金からなる皮材(ろう材)Eを採用し、Al-Mn合金からなる皮材(犠牲材)Fを採用し、Al-Zn合金からなる心材Bを採用した3層構造のNo.Dの試料の伸び量予測結果を示す。
表1に皮材A、心材B、皮材Cを採用した3層構造であり、これらによる狙いクラッド率を30%:60%:10%に設定したNo.Eの試料の伸び量予測結果を示す。
表1に示すようにNo.Aの試料において、初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=3500mm:3500mm:3500mmの所定値として熱間圧延を実施する場合について説明する。
表1に示すようにNo.Aの試料に関し、実施形態において説明した有限要素法を適用して伸び量予測値を算出すると皮材A:心材B:皮材C=225mm:0mm:240mmと計算することができた。この計算結果から推定すると、心材Bに対し、皮材Aと皮材Cは225~240mm程度伸びが大きく、心材Bの端部から皮材Aと皮材Cが125~140mm程突出すると予想される。
表1に示すようにNo.Aの試料に関し、実施形態において説明した有限要素法を適用して伸び量予測値を算出すると皮材A:心材B:皮材C=225mm:0mm:240mmと計算することができた。この計算結果から推定すると、心材Bに対し、皮材Aと皮材Cは225~240mm程度伸びが大きく、心材Bの端部から皮材Aと皮材Cが125~140mm程突出すると予想される。
そこで、本発明では、前述の有限要素法に基づき算出した表1に示す伸び量予測結果の225mmと240mmを吸収することを目的とし、以下の表2に示すNo.Aの試料に示す如く初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=3275mm:3500mm:3260mmに設定した。また、初期クラッド率は、皮材A:心材B:皮材C=21.2%:68.0%:10.8%、全体厚を600mmに設定している。
初期クラッド率の調整方法は、予測された伸び量が生じた際に、クラッド率が狙いの±1.5%を超えないように、クラッド率を設定している。また、質量保存の法則により体積は変わらないため、伸び量からクラッド率の減少量を計算している。この時、クラッド率にばらつきは無く均等であると仮定している。
No.Aの試料に対し、1パス目の熱間圧延により、圧下量20mmの条件にて熱間圧延を施した。その結果を以下の表2に示す。
初期クラッド率の調整方法は、予測された伸び量が生じた際に、クラッド率が狙いの±1.5%を超えないように、クラッド率を設定している。また、質量保存の法則により体積は変わらないため、伸び量からクラッド率の減少量を計算している。この時、クラッド率にばらつきは無く均等であると仮定している。
No.Aの試料に対し、1パス目の熱間圧延により、圧下量20mmの条件にて熱間圧延を施した。その結果を以下の表2に示す。
表2に示すように実伸び量は、皮材A:心材B:皮材C=215mm:0mm:255mmとなった。この結果、1パス目の熱間圧延後の長さは、皮材A:心材B:皮材C=3490mm、3500mm、3515mmとなり、いずれも皮材Aが心材Bより10mm短くなり、皮材Cが心材Bより15mm長くなった。
このことは、心材Bの端部から皮材Cの端部が突出してもその突出量は15mmと少なく、皮材Aは10mm短い結果となったので、心材の端部側において皮材の脱落は生じなかった。
また、製品最終クラッド率は皮材A:心材B:皮材C=19.3%、71.6%、9.2%となり、狙いクラッド率に対し±1.5%の範囲内となり、良好なクラッド率を得ることができた。
このことは、心材Bの端部から皮材Cの端部が突出してもその突出量は15mmと少なく、皮材Aは10mm短い結果となったので、心材の端部側において皮材の脱落は生じなかった。
また、製品最終クラッド率は皮材A:心材B:皮材C=19.3%、71.6%、9.2%となり、狙いクラッド率に対し±1.5%の範囲内となり、良好なクラッド率を得ることができた。
これに対し、以下の表3の試料A’に示すように皮材A:心材B:皮材C=3400mm、3500mm、3400mmの条件で1パス目の熱間圧延を行うと、実伸び量は230、240mmとなり、突出量は130~140mmとなり、皮材落ちが発生し、クラッド率も狙いクラッド率に対し±1.5%を上回った。
なお、各表に示す製品最終クラッド率(%)とは、1パス目の熱間圧延の後に常法の熱間圧延により、熱間圧延後の最終総板厚が5~30mmの範囲となる圧延を行った後における製品のクラッド率を意味する。
なお、各表に示す製品最終クラッド率(%)とは、1パス目の熱間圧延の後に常法の熱間圧延により、熱間圧延後の最終総板厚が5~30mmの範囲となる圧延を行った後における製品のクラッド率を意味する。
表4と図6は、試料No.A~Eについて解析する場合、図5に示すように複数のサンプルからの予測値x、実績値y、予測値x×α、{実績値y-(予測値x×α)}2の値を基に、補正係数αを求めた場合の値を示す。本実施例では、試料A~Eの全てについて補正係数αを適用する。
表4に示す予測値と実績値の関係は、図6に縦軸(実績値)、横軸(予測値,予測値×α)で示すグラフに表示することができる。実績値とは、実熱間圧延装置により圧下量20mmの条件で試料を圧延した場合の値を示す。
表4と図6に示す関係から求めた補正係数αは、0.6299995となるが、約0.63と判断し、以下の表5に一例として示すように試料No.Aの解析結果355とすると0.63を乗算して伸び量予測結果225mm、試料No.Aの解析結果380とすると0.63を乗算して伸び量予測結果240mmとなる。
表4に示す予測値と実績値の関係は、図6に縦軸(実績値)、横軸(予測値,予測値×α)で示すグラフに表示することができる。実績値とは、実熱間圧延装置により圧下量20mmの条件で試料を圧延した場合の値を示す。
表4と図6に示す関係から求めた補正係数αは、0.6299995となるが、約0.63と判断し、以下の表5に一例として示すように試料No.Aの解析結果355とすると0.63を乗算して伸び量予測結果225mm、試料No.Aの解析結果380とすると0.63を乗算して伸び量予測結果240mmとなる。
次に、表1のNo.Bの試料に示すように、心材Dとして高温変形抵抗30MPaの試料を適用した場合の予測を行った。皮材A、皮材CはNo.Aの試料と同等である。
No.Bの試料に示すように初期長手寸法を皮材A:心材D:皮材C=3500mm、3500mm、3500mmとすると、皮材Aと皮材Cの伸び量予測値は表1に示す225mm、240mmとなるので、No.Aの試料の場合と同様に心材Dの端部から皮材Aと皮材Cが相当量突出すると予想される。
そこで、表2のNo.Bの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材D:皮材C=3275mm:3500mm:3260mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材D:皮材C=225mm:0mm:235mmとなった。表2のNo.Bの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
No.Bの試料に示すように初期長手寸法を皮材A:心材D:皮材C=3500mm、3500mm、3500mmとすると、皮材Aと皮材Cの伸び量予測値は表1に示す225mm、240mmとなるので、No.Aの試料の場合と同様に心材Dの端部から皮材Aと皮材Cが相当量突出すると予想される。
そこで、表2のNo.Bの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材D:皮材C=3275mm:3500mm:3260mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材D:皮材C=225mm:0mm:235mmとなった。表2のNo.Bの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
これに対し、表3のNo.B’の試料に示すように皮材A:心材D:皮材C=3400mm、3500mm、3400mmの条件で1パス目の熱間圧延を行うと、皮材Aと皮材Cの実伸び量は210mm、275mmとなり、突出量は110mm、175mmと大きくなり皮材落ちが発生し、クラッド率も狙いクラッド率に対し±1.5%を上回りバラツキを生じた。
次に、表1のNo.Cの試料に示すように、表1のNo.Aの試料と高温変形抵抗は同等であるが、初期長さ皮材A:心材B:皮材C=5000mm:5000mm:5000mmに設定した試料について実施形態において説明した有限要素法による予測を行った。
表1のNo.Cの試料に示すように皮材A、皮材Cの伸び量予測値は330mm、355mmと大きいので、No.Aの試料の場合と同様に心材Bの端部から皮材Aと皮材Cが相当量突出することとなる。
そこで、表2のNo.Cの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=4670mm:5000mm:4645mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材B:皮材C=335mm:0mm:355mmとなった。表2のNo.Cの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
表1のNo.Cの試料に示すように皮材A、皮材Cの伸び量予測値は330mm、355mmと大きいので、No.Aの試料の場合と同様に心材Bの端部から皮材Aと皮材Cが相当量突出することとなる。
そこで、表2のNo.Cの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=4670mm:5000mm:4645mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材B:皮材C=335mm:0mm:355mmとなった。表2のNo.Cの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
これに対し、表3の試料C’に示すように皮材A:心材B:皮材C=4800mm、5000mm、4800mmの条件で1パス目の熱間圧延を行うと、皮材A、皮材Cの実伸び量は385mm、430mmとなり、突出量は185mm、230mmと大きくなり、皮材落ちが発生し、クラッド率も狙いクラッド率に対し±1.5%を上回りバラツキを生じた。
次に、表1のNo.Dの試料に示すように、表1のNo.Aの試料に対し皮材Eと皮材Fを設け、高温変形抵抗の差異が大きい試料を適用し、No.Aの試料と同等初期長さ、同等狙いクラッド率の条件の基、実施形態において説明した有限要素法による伸び量予測を行った。No.Dの試料に示すように伸び量予測値は皮材Eにおいて340mmとなり、心材Bの端部から皮材Eが相当量突出することとなる。
そこで、表2の試料Dに示すように、初期長手寸法を皮材E:心材B:皮材F=3160mm:3500mm:3495mmに設定すると、実伸び量は、皮材E:心材B:皮材F=360mm:0mm:5mmとなった。No.Dの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
そこで、表2の試料Dに示すように、初期長手寸法を皮材E:心材B:皮材F=3160mm:3500mm:3495mmに設定すると、実伸び量は、皮材E:心材B:皮材F=360mm:0mm:5mmとなった。No.Dの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
これに対し、表3の試料D’に示すように表1のNo.Aの試料に対し皮材Aと皮材Cに関し高温変形抵抗の差異が大きい皮材E、皮材Fを適用し、No.Aの試料と同等初期長さ、同等狙いクラッド率の条件で1パス目の熱間圧延を行うと、皮材D’の実伸び量は410mmと大きくなり、皮材落ちが発生し、クラッド率も狙いクラッド率に対し±1.5%を上回りバラツキを生じた。
次に、表1のNo.Eの試料に示すように、表1のNo.Aの試料に対し皮材Aと皮材Cに関し狙いクラッド率を30:60:10に変更した試料を適用し、No.Aの試料と同等初期長さ、同等高温変形抵抗の基、前述の有限要素法に基づく伸び量予測を行った。
No.Eの試料に示すように伸び量予測値は皮材Aにおいて145mm、皮材Cにおいて260mmとなり、心材Bに対し、皮材Aは45mm、皮材Cは160mmの突出が予想される。
そこで、表2のNo.Eの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=3355mm:3500mm:3240mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材B:皮材C=125mm:0mm:275mmとなった。No.Eの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
No.Eの試料に示すように伸び量予測値は皮材Aにおいて145mm、皮材Cにおいて260mmとなり、心材Bに対し、皮材Aは45mm、皮材Cは160mmの突出が予想される。
そこで、表2のNo.Eの試料に示すように、初期長手寸法を皮材A:心材B:皮材C=3355mm:3500mm:3240mmに設定すると、実伸び量は、皮材A:心材B:皮材C=125mm:0mm:275mmとなった。No.Eの試料の場合、表2に示すように、皮材落ちは発生せず、製品最終クラッド率も良好となった。
これに対し、表3の試料E’に示すように表1のNo.Aの試料に対し皮材Aと皮材Cに関し狙いクラッド率を30:60:10に変更した試料を適用し、表1の試料Aと同等初期長さの条件で1パス目の熱間圧延を行うと、皮材Aの実伸び量は140mm、皮材Cの実伸び量は300mmとなり、皮材落ちが発生し、クラッド率も狙いクラッド率に対し±1.5%を上回りバラツキを生じた。
以上、表1~表4を基に説明したように、本発明に従い、材料の高温変形抵抗、クラッド率、クラッド素材の長さ等を勘案し、有限要素法などの数値解析により予測した伸び量予測結果を基に、心材とその両面の皮材の初期長さを調整する。これにより、心材両面に高温変形抵抗の異なる皮材を設けた場合、心材に対する皮材のクラッド率を変更した場合、クラッド素材の長さを変更した場合のいずれにおいても良好な伸び予測を行うことができ、皮材落ちを防止できることが明らかとなった。
また、本発明に従い、有限要素法などの数値解析を用いて心材の両面に設ける皮材の強度を調整し、心材とその両面の皮材の初期長さを調整し、皮材の両面の皮材強度差を調整し、心材に対する皮材のクラッド率を調整する何れの場合においても最終製品において良好なクラッド率を得ることができることが判った。
また、本発明に従い、有限要素法などの数値解析を用いて心材の両面に設ける皮材の強度を調整し、心材とその両面の皮材の初期長さを調整し、皮材の両面の皮材強度差を調整し、心材に対する皮材のクラッド率を調整する何れの場合においても最終製品において良好なクラッド率を得ることができることが判った。
1、2…ワークロール、3…心材、4、5…皮材、6…クラッド素材、7…心材、8、9…皮材、10…クラッド材。
Claims (3)
- 2つ以上のアルミニウムまたはアルミニウム合金材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材を接合したアルミニウムクラッド材を製造する方法であって、
前記接合工程で生じる前記心材と前記皮材の圧延方向の伸び量の違いを、未知の実熱間圧延の伸びを予測する数値解析により予測し、前記心材は圧延方向の長さが変化しないと仮定し、前記心材の圧延方向の長さを基準として前記接合工程後の前記皮材の圧延方向の長さが前記心材の圧延方向の長さとほぼ等しくなるように前記皮材の長さを予め決定して接合する場合、
既知の実熱間圧延の伸び量に対し、前記数値解析と同じ手法で得られた伸び量予測値を用いて近似できる補正係数を求めておき、
前記アルミニウムクラッド材を製造する場合、前記補正係数に基づき前記数値解析と同じ手法で得られた前記皮材の伸び量予測値に基づき、前記接合工程に供する前の前記皮材の圧延方向長さを決定することを特徴とするアルミニウムクラッド材の製造方法。
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JP2021214017A JP2023097750A (ja) | 2021-12-28 | 2021-12-28 | アルミニウムクラッド材の製造方法 |
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CN117358753A (zh) * | 2023-11-01 | 2024-01-09 | 湖南方恒新材料技术股份有限公司 | 一种钛/铝/钛侧面复合薄带及其制备方法 |
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