JP2024000781A - 異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 - Google Patents
異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2024000781A JP2024000781A JP2022099683A JP2022099683A JP2024000781A JP 2024000781 A JP2024000781 A JP 2024000781A JP 2022099683 A JP2022099683 A JP 2022099683A JP 2022099683 A JP2022099683 A JP 2022099683A JP 2024000781 A JP2024000781 A JP 2024000781A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- surface area
- area expansion
- expansion rate
- dissimilar metal
- critical surface
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 239000000463 material Substances 0.000 title claims abstract description 289
- 229910052751 metal Inorganic materials 0.000 title claims abstract description 116
- 239000002184 metal Substances 0.000 title claims abstract description 116
- 238000000034 method Methods 0.000 title claims abstract description 85
- 238000004519 manufacturing process Methods 0.000 title claims abstract description 28
- 239000007769 metal material Substances 0.000 claims abstract description 38
- 238000012360 testing method Methods 0.000 claims description 208
- 239000011162 core material Substances 0.000 claims description 131
- 238000005096 rolling process Methods 0.000 claims description 114
- 238000005098 hot rolling Methods 0.000 claims description 50
- 230000009467 reduction Effects 0.000 claims description 49
- 238000004458 analytical method Methods 0.000 claims description 36
- 238000005304 joining Methods 0.000 claims description 24
- 230000008569 process Effects 0.000 claims description 11
- 230000002441 reversible effect Effects 0.000 description 25
- 238000010586 diagram Methods 0.000 description 22
- 229910045601 alloy Inorganic materials 0.000 description 17
- 239000000956 alloy Substances 0.000 description 17
- 230000001050 lubricating effect Effects 0.000 description 15
- 238000005253 cladding Methods 0.000 description 13
- 238000010438 heat treatment Methods 0.000 description 11
- 238000005266 casting Methods 0.000 description 10
- 230000006835 compression Effects 0.000 description 10
- 238000007906 compression Methods 0.000 description 10
- 230000001186 cumulative effect Effects 0.000 description 10
- 238000000265 homogenisation Methods 0.000 description 10
- 239000012535 impurity Substances 0.000 description 10
- 238000002844 melting Methods 0.000 description 10
- 230000008018 melting Effects 0.000 description 10
- 238000005520 cutting process Methods 0.000 description 8
- 229910052782 aluminium Inorganic materials 0.000 description 7
- XAGFODPZIPBFFR-UHFFFAOYSA-N aluminium Chemical compound [Al] XAGFODPZIPBFFR-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 7
- 238000003825 pressing Methods 0.000 description 6
- 238000003466 welding Methods 0.000 description 6
- 230000008859 change Effects 0.000 description 5
- 238000012937 correction Methods 0.000 description 5
- 229910018131 Al-Mn Inorganic materials 0.000 description 4
- 229910018461 Al—Mn Inorganic materials 0.000 description 4
- 230000003993 interaction Effects 0.000 description 4
- 230000007246 mechanism Effects 0.000 description 4
- 150000002739 metals Chemical class 0.000 description 4
- 230000002829 reductive effect Effects 0.000 description 4
- 229910021364 Al-Si alloy Inorganic materials 0.000 description 3
- 229910018137 Al-Zn Inorganic materials 0.000 description 3
- 229910018573 Al—Zn Inorganic materials 0.000 description 3
- 101000746134 Homo sapiens DNA endonuclease RBBP8 Proteins 0.000 description 3
- 101000969031 Homo sapiens Nuclear protein 1 Proteins 0.000 description 3
- 102100021133 Nuclear protein 1 Human genes 0.000 description 3
- 230000000694 effects Effects 0.000 description 3
- 238000009864 tensile test Methods 0.000 description 3
- 238000005452 bending Methods 0.000 description 2
- 238000004364 calculation method Methods 0.000 description 2
- 229910052802 copper Inorganic materials 0.000 description 2
- 239000011888 foil Substances 0.000 description 2
- 238000002360 preparation method Methods 0.000 description 2
- 238000012887 quadratic function Methods 0.000 description 2
- 230000007704 transition Effects 0.000 description 2
- TZCXTZWJZNENPQ-UHFFFAOYSA-L barium sulfate Chemical compound [Ba+2].[O-]S([O-])(=O)=O TZCXTZWJZNENPQ-UHFFFAOYSA-L 0.000 description 1
- 239000004035 construction material Substances 0.000 description 1
- 238000013461 design Methods 0.000 description 1
- 238000005516 engineering process Methods 0.000 description 1
- 230000002452 interceptive effect Effects 0.000 description 1
- 238000005259 measurement Methods 0.000 description 1
- 230000036961 partial effect Effects 0.000 description 1
- 238000012545 processing Methods 0.000 description 1
- 230000000452 restraining effect Effects 0.000 description 1
- 238000010008 shearing Methods 0.000 description 1
- 238000010998 test method Methods 0.000 description 1
- 239000002023 wood Substances 0.000 description 1
Images
Landscapes
- Metal Rolling (AREA)
- Pressure Welding/Diffusion-Bonding (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
Abstract
【課題】異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法の提供。【解決手段】異種金属接合材を製造するにあたり、すべり量を予測する方法に用いられる限界表面積拡大率を推定する方法であって、2つ以上の異なる金属材の接合強度と、前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗と、を用いて前記限界表面積拡大率を推定することを特徴とする、異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法を採用する。【選択図】図7
Description
本発明は、異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法に関する。
金属材同士の接合方法の一つとして、熱間塑性加工による圧着接合法が知られている。特に熱間圧延は生産性が高く、異種金属材、特に異種アルミニウム材同士を接合してアルミニウムクラッド材を製造することが工業的に広く行われている。
アルミニウムクラッド材は熱交換器の構成材料として使用される。アルミニウムクラッド材を圧延により製造する場合、心材より皮材が伸びやすいと、圧延中に皮材が心材の端部から突出する。この突出部分が長い場合、突出部分が圧延装置の搬送路に脱落し、生産の妨げとなる問題がある。
アルミニウムクラッド材は熱交換器の構成材料として使用される。アルミニウムクラッド材を圧延により製造する場合、心材より皮材が伸びやすいと、圧延中に皮材が心材の端部から突出する。この突出部分が長い場合、突出部分が圧延装置の搬送路に脱落し、生産の妨げとなる問題がある。
アルミニウムクラッド材の熱間圧延では、その初期段階において、重ね合わせた心材と皮材との界面を接合させる接合工程を行い、その後、板厚を減少させる熱間圧延へ移行する。界面が接合するまでは、心材と皮材とがお互いの変形を拘束する効果が小さいことから、強度差による伸び量の違いが生じやすい。
そのため、高強度の心材より多く伸びた低強度の皮材が、心材の圧延方向端面よりも突出することで、引き続き行われる板厚を減少させる熱間圧延において、突出した皮材の脱落が生じ、生産トラブルとなるおそれがある。
そのため、高強度の心材より多く伸びた低強度の皮材が、心材の圧延方向端面よりも突出することで、引き続き行われる板厚を減少させる熱間圧延において、突出した皮材の脱落が生じ、生産トラブルとなるおそれがある。
例えば、心材に比べ皮材の材料強度が低い場合、心材より皮材の材料が伸びる。このとき、接合されてない界面において材料のすべりを生じながら、皮材が心材から突出する。特に、圧延方向の前後端で材料が突出しやすく、突出した材料が心材のエッジ部に当たる箇所を起点に脱落することで、生産の妨げになる場合がある。
また、低強度の皮材が、心材よりも大きく伸びてしまった場合、皮材と心材との圧延方向伸び量に大きな差が生じる。皮材と心材との伸び量の差は、そのままクラッド材各層の厚さの変形量の差となる。すなわち、皮材と心材との伸びの差が大きい場合、クラッド率の変化が発生し、所望のクラッド率が得られなくなるおそれがある。
前述のとおり、低強度の皮材において圧延方向の前後端が突出しやすいことから、前後端のクラッド率の変化が特に大きくなりやすい。その結果、所望のクラッド率が得られなかった前後端を切り捨てる除去作業が必要となってしまい、著しく生産性を阻害する問題がある。
上述した問題は、異種アルミニウム材同士を熱間圧延する場合のみならず、強度が異なる異種金属材同士を熱間圧延する場合にも生じる。
以下の特許文献1および特許文献2に記載の技術では、皮材と心材との界面に網状の物体や箔を設置することにより、皮材と心材とのすべりを抑制する方法が開示されている。
しかし、これら特許文献1、2に記載の技術では、界面に設置した網状体や箔の存在が介在物となり、異種金属接合材の品質不良の原因となるので、近年の高品質な異種金属接合材の製造には適用できない問題があった。更に、網状体やシートを別途用意するための労力とコストが懸念される。
また、心材と皮材との界面外周部に溶接を施しておくことで、界面のすべりや伸びの差を抑制する方法も知られているが、溶接工程分のコストが発生する。
また、心材と皮材との界面外周部に溶接を施しておくことで、界面のすべりや伸びの差を抑制する方法も知られているが、溶接工程分のコストが発生する。
そこで、異種金属接合材の熱間圧延において、重ね合わせた心材と皮材とが熱間圧延の進行によりどのような状態となるのかについて研究したところ、以下のような考察を得ることができる。なお、ここでは、比較的低強度の金属材を皮材と称し、比較的高強度の金属材を心材と称する。
図21は、上下のワークロール100、101の間に帯板状の心材102とその上下両面に配置した皮材103からなるクラッド素材105を挟み込み、ワークロール100、101を矢印方向に回転させて熱間圧延を開始した圧延初期状態を示し、図22は圧延終期状態を示す。
心材102と皮材103は皮材103の方が軟らかいので、皮材103の伸びが大きいと仮定し、心材102より皮材103を予め所定長さ短くした状態から熱間圧延を開始する。図21に示す状態から図22に示す圧延終期状態となるように圧延を続行すると、図21に示す状態において皮材103の長さがaであったとして、図22に示す圧延終期状態において皮材103の長さはa’となる。また、圧延初期の心材102の長さがbであったとして、圧延終期に心材102の長さはb’となる。
心材102と皮材103は皮材103の方が軟らかいので、皮材103の伸びが大きいと仮定し、心材102より皮材103を予め所定長さ短くした状態から熱間圧延を開始する。図21に示す状態から図22に示す圧延終期状態となるように圧延を続行すると、図21に示す状態において皮材103の長さがaであったとして、図22に示す圧延終期状態において皮材103の長さはa’となる。また、圧延初期の心材102の長さがbであったとして、圧延終期に心材102の長さはb’となる。
ワークロール100、101の間隔を絞りつつ、ワークロール100、101の間を繰り返し通過させて徐々に心材102と皮材103の厚みを減少させてゆく。この場合、目的の厚さのクラッド材となる頃に皮材103の長さ方向一端側と心材102の長さ方向一端側の位置が揃うように圧延できると、材料の無駄がなく、理想的な圧延ができたこととなる。
上述の熱間圧延に関し、心材102と皮材103の各々の伸び量とすべり量とは以下のように仮定できる。
図21に、熱間圧延開始初期の心材102と皮材103の位置を示す。すべり量は、上下のワークロール100、101が抜けた際の心材102と皮材103の伸び量の差分としてここでは定義する。数式で表すと下記のように示される。
図21に、熱間圧延開始初期の心材102と皮材103の位置を示す。すべり量は、上下のワークロール100、101が抜けた際の心材102と皮材103の伸び量の差分としてここでは定義する。数式で表すと下記のように示される。
すべり量=(皮材103の伸び量)-(心材102の伸び量)
=(圧延終期の皮材103の長さ-圧延初期の皮材103の長さ)-(圧延終期の心材102の長さ-圧延初期の心材102の長さ)
=(a’-a)-(b’-b)
=(圧延終期の皮材103の長さ-圧延初期の皮材103の長さ)-(圧延終期の心材102の長さ-圧延初期の心材102の長さ)
=(a’-a)-(b’-b)
ここで、異種金属接合材のずれ量の予測方法として、以下の式より、数値解析と実機との伸び量のずれについて、最小二乗法を用いることで補正係数αを算出できると考えることができる。そして、未知の圧延条件における数値解析によるずれ量を算出し、α倍することで予測値を算出するという手法を考えることができる。
以下の式において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示し、αは補正係数を示す。
以下の式において、iはサンプルナンバーを示し、xiは該当サンプルナンバーの予測値を示し、yiは該当サンプルナンバーの実績値を示し、αは補正係数を示す。
しかし、上述の数値解析におけるモデリング上の問題点として、心材-皮材界面の接触の定義を行う場合、クーロン摩擦を導入することが考えられるが、心材と皮材の金属間での接合のしやすさ等を考慮できない問題がある。
そのため、クラッド率、圧下率、材料の組み合わせ、変形抵抗が異なる場合、補正係数を各4つのパラメータの組み合わせで算出する必要があり、補正係数を求めるために必要なデータ点数は膨大な数になるおそれがある。また、この技術では1パスあたりのすべり量により補正係数を算出するため、多パスで圧延する場合、各パスにおけるすべり量を算出することは容易ではなく、上側の皮材103と下側の皮材103のすべり量を個々に算出できない課題がある。
そのため、クラッド率、圧下率、材料の組み合わせ、変形抵抗が異なる場合、補正係数を各4つのパラメータの組み合わせで算出する必要があり、補正係数を求めるために必要なデータ点数は膨大な数になるおそれがある。また、この技術では1パスあたりのすべり量により補正係数を算出するため、多パスで圧延する場合、各パスにおけるすべり量を算出することは容易ではなく、上側の皮材103と下側の皮材103のすべり量を個々に算出できない課題がある。
上側の皮材103と下側の皮材103のすべり量を個々に算出する方法として、本発明者らは、以下の4つのパラメータを用いて、数値解析により、すべり量を予測できることを知見した。
すべり量=f(X1,X2,X3,X4)
ただし、X1:皮材÷心材の変形抵抗、X2:限界表面積拡大率、X3:圧下率、X4:クラッド率とする。
すべり量=f(X1,X2,X3,X4)
ただし、X1:皮材÷心材の変形抵抗、X2:限界表面積拡大率、X3:圧下率、X4:クラッド率とする。
上記4つのパラメータのうち、限界表面積拡大率は、心材の材料と皮材の材料との組み合わせにより変化する表面積拡大率の限界値のことである。換言すると、心材と皮材との界面が摩擦挙動から接合挙動に変化するときの表面積拡大率のことである。表面積拡大率について図23を参照しつつ説明する。
図23は、心材102の両面に皮材103を設けたクラッド素材を上下の圧延ロール100、101により圧延する場合のモデル図である。
ここでは、皮材-心材界面の皮材側の表面積拡大率および表面積拡大比を利用することとする。なお、心材側と皮材側の表面積拡大率の平均と表面積拡大比の平均を利用してもよい。
ここでの圧延解析は2次元で実施するが、圧延解析を3次元で実施しても良い。圧延解析を2次元で実施する場合、図23の紙面奥行き方向のひずみを0とする平面ひずみ仮定を利用する。この仮定の場合、表面積=図23中の圧延方向長さa×紙面奥行き方向の任意長さl(エル)=Aとなる。図23の紙面奥行き方向の任意長さlは、圧延で変化しないと仮定する。
ここでは、皮材-心材界面の皮材側の表面積拡大率および表面積拡大比を利用することとする。なお、心材側と皮材側の表面積拡大率の平均と表面積拡大比の平均を利用してもよい。
ここでの圧延解析は2次元で実施するが、圧延解析を3次元で実施しても良い。圧延解析を2次元で実施する場合、図23の紙面奥行き方向のひずみを0とする平面ひずみ仮定を利用する。この仮定の場合、表面積=図23中の圧延方向長さa×紙面奥行き方向の任意長さl(エル)=Aとなる。図23の紙面奥行き方向の任意長さlは、圧延で変化しないと仮定する。
図23(A)、図23(C)、図23(E)は、後に図1を用いて説明する有限要素法で解析する要素としての1マス(図23(A)に示す矩形部分)が圧延の進行に伴って移動し、変形する状態を示す。図23(A)、図23(B)において解析要素の1マスは、圧延ロール100の直前に位置している。図23(C)、図23(D)において解析要素の1マスは、圧延ロール100下方の圧延領域内に位置している。図23(E)、図23(F)において解析要素の1マスは、圧延ロール100による圧延領域を通過した位置に移動している。
図23(B)に示す圧延前の位置において圧延方向に沿う幅A0を有する1マスは、図23(D)に示すように圧延されて変形され、図23(F)に示すように圧延方向に沿う幅A1を有する矩形状に引き延ばされる。
図23(B)に示す圧延前の位置において圧延方向に沿う幅A0を有する1マスは、図23(D)に示すように圧延されて変形され、図23(F)に示すように圧延方向に沿う幅A1を有する矩形状に引き延ばされる。
ここでは、表面積拡大率E(%)と表面積拡大比を下記に示すように定義する。
表面積拡大率(E)=(A1-A0)/A0×100
表面積拡大比(Si)=A1/A0
表面積拡大率(E)=(A1-A0)/A0×100
表面積拡大比(Si)=A1/A0
図24は、有限要素法に基づく解析を実施する場合、上述の如く皮材-心材界面の皮材側の表面積拡大率と表面積拡大比を利用すると仮定し、図24(A)に示すように心材102の上に皮材103が存在し、皮材-心材界面の皮材103側の位置に、皮材追従マークと心材追従マークを設置した状態の解析モデル図を示す。
図24(A)に示すように皮材103の左端部側に位置していた圧延ロール100が皮材103の長さ方向に沿って圧延を実施し、圧延ロ-ル100が皮材103の右端側を通過した状態の解析結果を図24(B)に示す。
図24(B)に示すように心材102と皮材103の両方が圧延により伸びるが、一般的に皮材103は心材102より変形抵抗が低く、圧延方向に沿う心材102の変形量より圧延方向に沿う皮材103の変形量が大きくなる。このため、図24(B)において皮材追従マークは心材追従マークより圧延方向に沿って遠い位置まで移動する。図24(B)に示す皮材追従マークと心材追従マークとの間隔(圧延方向の間隔)をすべり量と定義できる。
なお、計算コスト削減のため、図23(A)、図23(C)、図23(E)に描かれている上下の圧延ロール100、101のうち、上側の圧延ロール100による変形挙動のみを有限要素法でモデル化し、数値解析を実施することとする。上側の圧延ロール100による変形挙動のみを解析するため、心材102の厚さ方向中央部を境に図24(A)、図24(B)に示す線対称と記入した位置の線分に沿って分割し、この線分が示す境界に線対称の条件を付与する。上側の皮材と下側の皮材のそれぞれの変形抵抗に応じて上側の皮材の変形のし易さと、下側の皮材の変形のし易さは変化する。
この上側の圧下率と下側の圧下率を変形抵抗等に応じて近似的に算出することができ、該当する圧下条件におけるすべり量を数値解析により求めることができる。なお、上述の近似を利用することなく、上側の皮材と下側の皮材の両方を含む数値解析モデルを用いてそれぞれ解析しても差し支えない。
なお、上述の数値解析において、皮材と心材の界面に対し力学的相互作用を設定することが好ましい。後述の商用ソフト(例えば、Abaqus)では、力学的相互作用としてクーロン摩擦条件やせん断摩擦条件を設定することができる。また、ソフトに付属のユーザーサブルーチンを用いて、独自の相互作用を設定することができる。例えば、ユーザーサブルーチンを用いて、クーロン摩擦を基本条件とし、圧延によって増大する表面積拡大率が「限界表面積拡大率」に到達すると界面を接合させるとして、その相互作用条件を設定することができる。
表面積拡大率がある閾値を超えた場合、心材102と皮材103との界面が摩擦挙動から接合挙動に変化する。このときの表面積拡大率が、限界表面積拡大率である。金属の接合メカニズムとして、金属表面は汚れ膜や酸化膜に覆われているが、圧下して面圧が高まると、汚れ膜や酸化膜が破壊され、界面に露出した新生面同士が直接接触して金属間結合が生じることで接合する。限界表面積拡大率は、金属の組み合わせによる界面の接合のしやすさを示すパラメータである。
限界表面積拡大率は材料の組み合わせごとに決定されるパラメータであるため、算出する上では、実機における圧延試験が必要となる。材料の組み合わせごとに実機における圧延試験を行うことは多大な労力およびコストが懸念される。
本発明は、実機における圧延試験を行うことなく、異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率を推定することができる、限界表面積拡大率の推定方法の提供を目的とする。
また、本発明は、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる、異種金属接合材の製造方法の提供を目的とする。
また、本発明は、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる、異種金属接合材の製造方法の提供を目的とする。
(1)本発明に係る異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材とを接合した異種金属接合材を製造するにあたり、すべり量を予測する方法に用いられる限界表面積拡大率を推定する方法であって、
前記2つ以上の異なる金属材の接合強度と、前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗と、を用いて前記限界表面積拡大率を推定することを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片に対しせん断試験を行うことで前記接合強度を得て、
前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片を作製したときの圧下率と、前記接合強度との関係から傾きaおよび切片bを算出し、
前記傾きaおよび前記切片bを用いて前記限界表面積拡大率を推定してもよい。
(3)上記(2)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗をσaveとし、前記限界表面積拡大率をEAとしたとき、
前記2つ以上の異なる金属材の高温での前記変形抵抗σaveと、前記傾きaおよび前記切片bと、下記推定式1とを用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
なお、上記推定式1におけるk1Aおよびk1Bは定数である。
(4)上記(3)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
更に、下記推定式2を用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
なお、上記推定式2におけるk2A、k2Bおよびk2Cは定数である。
(5)上記(2)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
2つの異なる金属材の高温での変形抵抗をσaveとし、一方の金属材の高温での変形抵抗をσCとし、他方の金属材の高温での変形抵抗をσLとし、前記限界表面積拡大率をEAとし、|σC-σL|をσdifとしたとき、
前記2つの異なる金属材の高温での前記変形抵抗σaveと、前記変形抵抗σCおよびσLと、前記傾きaおよび前記切片bと、下記推定式3とを用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
なお、上記推定式3におけるk1B、k3Aおよびk3Bは定数である。
(6)上記(5)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
更に、下記推定式4を用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
なお、上記推定式4におけるk4A、k4Bおよびk4Cは定数である。
(7)本発明に係る異種金属接合材の製造方法は、
2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材を接合した異種金属接合材を製造する方法であって、
前記接合工程で生じる前記心材と前記皮材との間の圧延方向のすべり量を求めるに際し、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の推定方法により前記限界表面積拡大率を推定し、
得られた前記限界表面積拡大率から数値解析を利用してすべり量を予測し、
前記異種金属接合材を製造する場合、前記接合工程に供する前の前記積層物における2つ以上の金属材の長さを前記すべり量の予測値に基づき調整することを特徴とする。
2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材とを接合した異種金属接合材を製造するにあたり、すべり量を予測する方法に用いられる限界表面積拡大率を推定する方法であって、
前記2つ以上の異なる金属材の接合強度と、前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗と、を用いて前記限界表面積拡大率を推定することを特徴とする。
(2)上記(1)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片に対しせん断試験を行うことで前記接合強度を得て、
前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片を作製したときの圧下率と、前記接合強度との関係から傾きaおよび切片bを算出し、
前記傾きaおよび前記切片bを用いて前記限界表面積拡大率を推定してもよい。
(3)上記(2)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗をσaveとし、前記限界表面積拡大率をEAとしたとき、
前記2つ以上の異なる金属材の高温での前記変形抵抗σaveと、前記傾きaおよび前記切片bと、下記推定式1とを用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
(4)上記(3)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
更に、下記推定式2を用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
(5)上記(2)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
2つの異なる金属材の高温での変形抵抗をσaveとし、一方の金属材の高温での変形抵抗をσCとし、他方の金属材の高温での変形抵抗をσLとし、前記限界表面積拡大率をEAとし、|σC-σL|をσdifとしたとき、
前記2つの異なる金属材の高温での前記変形抵抗σaveと、前記変形抵抗σCおよびσLと、前記傾きaおよび前記切片bと、下記推定式3とを用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
(6)上記(5)に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法は、
更に、下記推定式4を用いて前記限界表面積拡大率EAを推定してもよい。
(7)本発明に係る異種金属接合材の製造方法は、
2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材を接合した異種金属接合材を製造する方法であって、
前記接合工程で生じる前記心材と前記皮材との間の圧延方向のすべり量を求めるに際し、上記(1)~(6)のいずれか1項に記載の推定方法により前記限界表面積拡大率を推定し、
得られた前記限界表面積拡大率から数値解析を利用してすべり量を予測し、
前記異種金属接合材を製造する場合、前記接合工程に供する前の前記積層物における2つ以上の金属材の長さを前記すべり量の予測値に基づき調整することを特徴とする。
本発明により、異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法を提供できる。これにより、心材と皮材との材料の組み合わせごとに実機における圧延試験を行うことなく、限界表面積拡大率を推定することができる。
また、本発明により、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる、異種金属接合材の製造方法を提供することができる。
また、本発明により、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる、異種金属接合材の製造方法を提供することができる。
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴を分かりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合がある。
本実施形態においては、2つ以上の異なる金属材(心材と皮材)からなる積層物に対し熱間圧延を施し、心材と皮材とを接合することで接合体を得て、この接合体に対し熱間圧延を更に施すことで、接合体の厚さを減少させて目的厚さの異種金属接合材を製造する場合について以下に説明する。ここでは、異種金属接合材を構成する金属材の強度を比較した場合に、比較的低強度の金属材を皮材と称し、比較的高強度の金属材を心材と称する。
「解析モデル」
図1は、熱間圧延により異種金属接合材を製造する方法について、有限要素法に基づく数値解析を実施するための解析モデルの概要を示す説明図である。有限要素法を実施するためのプログラムに付属しているサブルーチンを使用することで、異種金属接合材の金属の組合せによる圧着性、界面の摩擦すべりから接合に変化することを解析可能となる。有限要素法を実施するためのプログラムとして、例えば、ダッソーシステムズ株式会社製、Abaqus、バージョン6.14を用いることができる。
図1は、熱間圧延により異種金属接合材を製造する方法について、有限要素法に基づく数値解析を実施するための解析モデルの概要を示す説明図である。有限要素法を実施するためのプログラムに付属しているサブルーチンを使用することで、異種金属接合材の金属の組合せによる圧着性、界面の摩擦すべりから接合に変化することを解析可能となる。有限要素法を実施するためのプログラムとして、例えば、ダッソーシステムズ株式会社製、Abaqus、バージョン6.14を用いることができる。
図1において、水平に設置されている帯板状の心材111の上に帯板状の皮材112が設置され、心材111より皮材112は図1の左右方向の長さが若干短い状態に描かれている。図1に示す心材111と皮材112は、図1の左右方向を熱間圧延時の心材111と皮材112の搬送方向と仮定し、該搬送方向をX軸方向と仮定し、心材111と皮材112の厚さ方向を前記X軸方向に直交するY軸方向と仮定する。図1において、心材111と皮材112の左側端部は揃えて配置され、皮材112の上にワークロール113(熱間圧延ロール)が配置されている。ワークロール113の周面輪郭の内側に描いた半円弧状の矢印は、ワークロール113の回転方向を示している。図1は、心材111と皮材112の縦断面を描いた解析モデル図であり、図1ではワークロール113の横断面輪郭が円形状に描かれている。
図1に示す解析モデルはX軸対称とされるので、図1に描かれている心材111は、実際の心材の半分程度の厚さが表記されていることとなり、図1に描かれている心材111の下方側に残り半分の厚さの心材と皮材と下側のワークロールとが存在すると仮定して解析がなされる。図1に示す解析モデルでは、ワークロール113の周速を5m/minに固定して以下の解析を実施する。変量パラメータとして、圧下率、クラッド率、皮材112の変形抵抗÷心材111の変形抵抗、限界表面積拡大率の合計4パラメータを変量させる。
上述の解析モデルを用いるための4つの解析パラメータにおいて、限界表面積拡大率は、材料の組み合わせごとに決定されるパラメータである。限界表面積拡大率は、実機における圧延試験を行うことで算出することができる。しかし、本発明者らは、2つ以上の異なる金属材の接合強度から、より具体的には、実機における圧延試験の代わりに、小型試験を行うことにより得られる接合強度から、限界表面積拡大率を推定できることを知見した。本発明者らによる検討の結果、小型試験により得られる接合強度と圧下率との関係における傾きと切片とをパラメータとして、限界表面積拡大率を推定できることを知見した。推定された限界表面積拡大率を用いて数値解析を行うことにより、異種金属接合材の熱間圧延におけるすべり量を容易に推定することができる。これにより、安定的に操業できるパススケジュール設計が低コストで実現できる。また、小型試験により限界表面積拡大率を推定することができるため、実機における圧延試験を行う必要が無く、様々な強度間での異種金属接合材のすべり量の予測に好適に用いることができる。
図2(A)は、異種金属接合材を得る場合に有効な心材試験片1、皮材試験片2を重ねた状態を示す。図2(B)は圧縮接合後の異種金属接合材3のモデル構造を示す。本実施形態では、心材試験片1の強度が皮材試験片2の強度よりも高いと仮定する。
図2(A)の心材試験片1、皮材試験片2を圧縮してそれらの厚さ方向に圧縮力を付与し、図2(B)に示す第1層1Aと第2層2Aとからなる異種金属接合材3を得ることができる。この異種金属接合材3において、強度の低い皮材試験片2から生成した第2層2Aの方が変形の度合いが大きく、第1層1Aより第2層2Aの方が大きな変形量となる。また、図2(B)に符号4で示す部分が第1層1Aと第2層2Aの界面で密着した接合部である。この接合部4は、第1層1Aと第2層2Aとの幅方向両端部を除いた領域に生成されている。
図2(A)の心材試験片1、皮材試験片2を圧縮してそれらの厚さ方向に圧縮力を付与し、図2(B)に示す第1層1Aと第2層2Aとからなる異種金属接合材3を得ることができる。この異種金属接合材3において、強度の低い皮材試験片2から生成した第2層2Aの方が変形の度合いが大きく、第1層1Aより第2層2Aの方が大きな変形量となる。また、図2(B)に符号4で示す部分が第1層1Aと第2層2Aの界面で密着した接合部である。この接合部4は、第1層1Aと第2層2Aとの幅方向両端部を除いた領域に生成されている。
図3は、接合前の心材試験片1の斜視図である。心材試験片1は、例えば、平面視長方形状であり、長辺長さLL、短辺長さLS、高さ(厚さ)hを有すると仮定し、h<LS<LLの関係を有することが好ましく、皮材試験片2の形状もこれと同様の形状とすることが好ましい。
「小型試験に用いる試験片の採取方法」
小型試験に用いる試験片の採取方法の一例について、図4を用いて説明する。なお、この試験片(異種金属接合材3)の作製方法については後述する。
小型試験に用いる試験片の採取方法の一例について、図4を用いて説明する。なお、この試験片(異種金属接合材3)の作製方法については後述する。
図4(A)に示す異種金属接合材3に対し、鎖線L1、L2で示すそれぞれの位置に異種金属接合材3の厚さ方向に沿って存在する切断面S1、S2に沿って切り出し加工を実施する。これにより、図4(B)に示す中間試験片10を作製する。切断面S1、S2は、異種金属接合材3の中央部を異種金属接合材3の長さ方向両側から挟む位置にあり、鎖線L1、L2に沿うそれぞれの切断面S1、S2は、異種金属接合材3の長さ方向と直交する位置(短辺方向と平行位置)に形成される。一例として、異種金属接合材3の長辺長さLLが40mmの場合、異種金属接合材3の長さ方向一端から同長さ方向に12mm離間した位置に一方の切断面S1が策定され、異種金属接合材3の長さ方向他端から同長さ方向に12mm離間した位置に他方の切断面S2が策定される。よって、異種金属接合材3の長さ方向に沿う中間試験片10の長さは、16mmとなる。なお、実際には異種金属接合材3の切り取り幅が若干あるので、中間試験片10の長さは15~16mm程度となる。
次に、中間試験片10において、短辺方向中央部分の幅2.0~2.5mmの領域を挟むように短辺方向両側に離間した鎖線L3、L4を描き、これらの鎖線L3、L4に沿って中間試験片10の厚さ方向に存在する切断面S3、S4に沿って中間試験片10から切り出し加工を行う。これにより、図4(C)に示すロッド状の実施試験片11を得ることができる。
以上のように実施試験片11を切り出すと、図2(B)に示したように第1層1Aと第2層2Aの幅方向両端部において接合部4が未形成となる場合と同じように、異種金属接合材3の幅方向両端部(短辺方向両端部)に未接合部が存在していたとして、未接合部を除いて実施試験片11を切り出したこととなる。
以上のように実施試験片11を切り出すと、図2(B)に示したように第1層1Aと第2層2Aの幅方向両端部において接合部4が未形成となる場合と同じように、異種金属接合材3の幅方向両端部(短辺方向両端部)に未接合部が存在していたとして、未接合部を除いて実施試験片11を切り出したこととなる。
図4(A)~(C)に示す異種金属接合材3と中間試験片10に対する切り出し加工の場合、第1層1A、第2層2Aに対する負荷を小さくできるので、第1層1Aと第2層2Aとの接合面に作用する負荷を小さくできる。従って、異種金属接合材3から加工して実施試験片11を得る場合、接合界面における剥離を防止できる。
実施試験片11は、第1層1Aから切り出された棒状の第1接合片15に対し、第2層2Aから切り出された棒状の第2接合片16が接合されたもので、第1接合片15の一面と第2接合片16の一面が突き合わされた状態で接合一体化されている。第1接合片15の一面と第2接合片16の一面を合わせた面が接合面17とされている。
実施試験片11は、第1層1Aから切り出された棒状の第1接合片15に対し、第2層2Aから切り出された棒状の第2接合片16が接合されたもので、第1接合片15の一面と第2接合片16の一面が突き合わされた状態で接合一体化されている。第1接合片15の一面と第2接合片16の一面を合わせた面が接合面17とされている。
ここで、実施試験片11は、第1接合片15の一面と第2接合片16の一面が接合面17を介し接合され、第1接合片15の端面15aと第2接合片16の端面16aは図4(C)に示すように面一に揃えられている。以下、端面15aと端面16aを面一に揃えて構成した長方形状の面において、長辺側を実施試験片11の幅Wと称し、短辺側を実施試験片11の厚さtと称する。
実施試験片11を得たならば、実施試験片11に対し図5に示す試験装置を用いてせん断試験を実施する。
実施試験片11を得たならば、実施試験片11に対し図5に示す試験装置を用いてせん断試験を実施する。
「小型試験(せん断試験)」
図5に、本実施形態に係る小型試験の実施に用いる試験装置30の一例を示す。この試験装置30は、下側挟持治具31と上側挟持治具32とを有し、下側挟持治具31と上側挟持治具32は、図示略の支持機構により上下方向に接近離間自在に支持されている。この試験装置30に対し実施試験片11を図5に示すように取り付けることで後述する接合強度測定試験を実施することができる。
図5に、本実施形態に係る小型試験の実施に用いる試験装置30の一例を示す。この試験装置30は、下側挟持治具31と上側挟持治具32とを有し、下側挟持治具31と上側挟持治具32は、図示略の支持機構により上下方向に接近離間自在に支持されている。この試験装置30に対し実施試験片11を図5に示すように取り付けることで後述する接合強度測定試験を実施することができる。
下側挟持治具31と上側挟持治具32との間にこれらに挟持された状態で実施試験片11の厚さtと同じ厚さを有する支持板33を設置する。また、下側挟持治具31と上側挟持治具32との間にこれらに挟持された状態で支持板33に隣接するように実施試験片11の第1接合片15を設置する。
実施試験片11については、第1接合片15の大部分を下側挟持治具31と上側挟持治具32で挟持するが、第1接合片15における接合面17側の一部を下側挟持治具31の側面31aと上側挟持治具32の側面32aから若干外側に突出させた状態となるように挟持する。
試験装置30において、下側挟持治具31の側面31aと上側挟持治具32の側面32aの外側には下部挟持治具35と上部挟持治具36が設けられ、下部挟持治具35と上部挟持治具36は図示略の支持機構により上下方向に移動自在かつ互いに接近離間自在に設けられている。
下側挟持治具31の側面31aと上側挟持治具32の側面32aから外側に突出した第2接合片16の大部分を、下部挟持治具35と上部挟持治具36により上下から把持する。また、下部挟持治具35と上部挟持治具36の間に実施試験片11の厚さtと同等の厚さを有する支持板34を第2接合片16とともに挟持する。
下側挟持治具31の側面31aと上側挟持治具32の側面32aから外側に突出した第2接合片16の大部分を、下部挟持治具35と上部挟持治具36により上下から把持する。また、下部挟持治具35と上部挟持治具36の間に実施試験片11の厚さtと同等の厚さを有する支持板34を第2接合片16とともに挟持する。
下側挟持治具31の側面31aと下部挟持治具35の間に若干のクリアランス(隙間)が設けられる。この隙間を埋めるように、下側挟持治具31の側面31aに下側潤滑テープ37を貼り付け、下部挟持治具35の側面に下部潤滑テープ38を貼り付ける。
上側挟持治具32の側面32aと下部挟持治具35の間に若干のクリアランス(隙間)が設けられる。この隙間を埋めるように、上側挟持治具32の側面32aに上側潤滑テープ39を貼り付け、上部挟持治具36の側面に上部潤滑テープ40を貼り付ける。
試験装置30において上述のクリアランスは、例えば、0.8mm程度に設定できる。このクリアランスを埋めるために、実施試験片11の下方に下側潤滑テープ37と下部潤滑テープ38とを設けるので、これら潤滑テープの厚さを0.4mm程度とする。また、実施試験片11の上方に上側潤滑テープ39と上部潤滑テープ40を設けるので、これら潤滑テープの厚さも0.4mm程度とする。
図5に示す状態となるように実施試験片11をセットしたならば、上部挟持治具36と下部挟持治具35を下降させ、これらにより挟持した第2接合片16に対し、下向きの押圧力を作用させる。この押圧力の印加により実施試験片11のせん断試験を実施できる。第2接合片16に対する押圧力を順次増加させ、実施試験片11において第1接合片15と第2接合片16が接合面17を介し分離した時点の押圧力を接合強度と把握することができる。接合強度は、詳細に言えば、せん断力付与時の最大荷重を、上部挟持治具36と下部挟持治具35を下降させる前の初期状態における接合面17の面積で除することで求めることができる。
なお、下部挟持治具35と上部挟持治具36は図示略の油圧装置などに接続され、上下移動される。実施試験片11に対する押圧力の増加に伴い、何れかの時点で接合面17がせん断破壊されるので、せん断破壊した際の実施試験片11に対する押圧荷重を油圧装置側で把握することで上述の接合強度を求めることができる。
試験装置30においては、第1接合片15と第2接合片16に作用させる曲げモーメントを極力少なくした状態でせん断試験を実施することができる。また、下側挟持治具31と下部挟持治具35との間のクリアランスと、上側挟持治具32と上部挟持治具36との間のクリアランスを潤滑テープ37、38、39、40で塞ぎつつ上部挟持治具36と下部挟持治具35を下降させてせん断試験を実施する。このため、上述のクリアランスの影響で生じる曲げモーメントを極力少なくし、第1接合片15と第2接合片16との接合面17にせん断力のみを作用させて接合強度を測定することができる。
また、下側挟持治具31と上側挟持治具32との間に支持板33を挟み、下部挟持治具35と上部挟持治具36の間に支持板34を挟むことにより、実施試験片11を安定支持しながらせん断力を付加することができる。
また、下側挟持治具31と上側挟持治具32との間に支持板33を挟み、下部挟持治具35と上部挟持治具36の間に支持板34を挟むことにより、実施試験片11を安定支持しながらせん断力を付加することができる。
「試験片作製方法」
以下に、小型試験に使用するための試験片(異種金属接合材3)の作製方法について説明するが、上述の実施試験片11を作製することができれば特に限定されない。
以下に、小型試験に使用するための試験片(異種金属接合材3)の作製方法について説明するが、上述の実施試験片11を作製することができれば特に限定されない。
図6(A)に、小型試験に用いるための異種金属接合材3を作製するために好適に用いられる熱間圧縮装置50を示す。熱間圧縮装置50は、角型ブロック状の下型51とパンチ52を備え、下型51の上面には図2に示した心材試験片1および皮材試験片2を受けるためのチャンネル溝53が形成されている。チャンネル溝53の溝幅MWは、一例として、心材試験片1の長辺長さLLと同一に形成されている。また、チャンネル溝53の溝幅に直交する方向の長さは、前述の長辺長さLLよりも大きく形成されている。一例として、図6(A)に示す下型51では、チャンネル溝53の長さ方向一端部53aが下型51の一方の端部に到達して開放され、チャンネル溝53の長さ方向他端部53bが下型51の他方の端部に到達して開放されている。チャンネル溝53は、例えば、心材試験片1および皮材試験片2を重ねた総厚の数倍程度の深さに形成されている。
パンチ52は、下型51のチャンネル溝53に嵌合可能な凸部54を有する。凸部54の高さはチャンネル溝53の深さと同等である。下型51とパンチ52は、図示略の油圧装置などの移動機構により相対移動自在に設けられている。例えば、下型51が固定型であり、下型51に対しパンチ52が上下に移動自在に支持されている。また、下型51およびパンチ52には、図示略の加熱装置(ヒータ)が組み込まれていて、下型51とパンチ52を所望の温度(例えば400℃~600℃など)に加熱できるように構成されている。
心材試験片1および皮材試験片2を熱間圧縮装置50にセットして接合するには、下型51のチャンネル溝53に図6(A)に示す向きとした心材試験片1および皮材試験片2を収容する。心材試験片1および皮材試験片2の長辺長さLLとチャンネル溝53の溝幅とは等しいため、心材試験片1および皮材試験片2の短辺側の端部をチャンネル溝53の両隅部に隙間無く挿入し、心材試験片1および皮材試験片2をチャンネル溝53の底部中央に収容する。
この後、パンチ52を所定の速度で下降させて凸部54をチャンネル溝53内に挿入し、凸部54の下面で心材試験片1および皮材試験片2を押圧し、それらの厚さ方向に圧縮力を付加することで、心材試験片1および皮材試験片2を接合し、小型試験の実施試験片11の作製に用いられる試験片(異種金属接合材3)を得ることができる。
この後、パンチ52を所定の速度で下降させて凸部54をチャンネル溝53内に挿入し、凸部54の下面で心材試験片1および皮材試験片2を押圧し、それらの厚さ方向に圧縮力を付加することで、心材試験片1および皮材試験片2を接合し、小型試験の実施試験片11の作製に用いられる試験片(異種金属接合材3)を得ることができる。
心材試験片1および皮材試験片2を熱間圧縮により接合すると、図6(B)に示す異種金属接合材3が得られる。この異種金属接合材3の鎖線L1、L2に沿う切断面S1、S2に沿って切り出し、図6(C)に示す中間試験片10を得て、この中間試験片10の鎖線L3、L4に沿う切断面S3、S4に沿って切り出すと、図6(D)に示す実施試験片11を得ることができる。
図6(A)に示す熱間圧縮装置50は、心材試験片1および皮材試験片2の長さ方向両端をチャンネル溝53の溝壁内面で拘束し、心材試験片1および皮材試験片2の長さ方向への伸びを抑止した状態で心材試験片1、皮材試験片2に圧縮力を付加する。このため、例えば、図2(B)に例示したように、強度の低い皮材試験片2がその幅方向両側に若干膨らむように変形し、心材試験片1の変形量が少なく、皮材試験片2の変形量が多い状態の異種金属接合材3が得られる。
図6(A)に示す熱間圧縮装置50は、心材試験片1および皮材試験片2の長さ方向両端をチャンネル溝53の溝壁内面で拘束し、心材試験片1および皮材試験片2の長さ方向への伸びを抑止した状態で心材試験片1、皮材試験片2に圧縮力を付加する。このため、例えば、図2(B)に例示したように、強度の低い皮材試験片2がその幅方向両側に若干膨らむように変形し、心材試験片1の変形量が少なく、皮材試験片2の変形量が多い状態の異種金属接合材3が得られる。
また、中間試験片10から複数の実施試験片11を切り出すこともできる。この場合、鎖線L3、L4に加えてこれらに対し等間隔で描く、鎖線L5、L6を策定し、これらの鎖線L5、L6に沿って中間試験片10の厚さ方向に延在する切断面に沿って切り出すことにより、例えば、3本の実施試験片11を得ることができる。
「接合強度と圧下率との関係における傾きおよび切片」
上述した方法により実施試験片11を作製し、小型試験(せん断試験)を行うことで異種金属接合材3の接合強度を得る。表1に示す材料の心材試験片1および皮材試験片2を用いて、COM1~COM8の異種金属接合材3を作製し、この異種金属接合材3から実施試験片11を作製した。異種金属接合材3は、様々な圧下率で心材試験片1および皮材試験片2を押圧することにより作製した。なお、心材試験片1および皮材試験片2の高温での変形抵抗は、平行部の長さが15mm、平行部の断面形状が直径5mmの丸棒試験片を用いて測定した。引張試験の条件は、温度を500℃、ひずみ速度を1/secとした。その試験において記録した最大荷重を試験片の平行部の初期断面積で除することで変形抵抗を求めた。また、異種金属接合材3の高温での変形抵抗は、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値とした。また、各組み合わせにおける限界表面積拡大率は、実機における圧延試験を行うことにより求めた。ここでは、限界表面積拡大率は、図23(A)~(F)を用いて説明したように「表面積拡大率(E)=(A1-A0)/A0×100」として表面積拡大率を算出し、心材と皮材との界面が摩擦挙動から接合挙動に変化するときの表面積拡大率を限界表面積拡大率とした。
上述した方法により実施試験片11を作製し、小型試験(せん断試験)を行うことで異種金属接合材3の接合強度を得る。表1に示す材料の心材試験片1および皮材試験片2を用いて、COM1~COM8の異種金属接合材3を作製し、この異種金属接合材3から実施試験片11を作製した。異種金属接合材3は、様々な圧下率で心材試験片1および皮材試験片2を押圧することにより作製した。なお、心材試験片1および皮材試験片2の高温での変形抵抗は、平行部の長さが15mm、平行部の断面形状が直径5mmの丸棒試験片を用いて測定した。引張試験の条件は、温度を500℃、ひずみ速度を1/secとした。その試験において記録した最大荷重を試験片の平行部の初期断面積で除することで変形抵抗を求めた。また、異種金属接合材3の高温での変形抵抗は、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値とした。また、各組み合わせにおける限界表面積拡大率は、実機における圧延試験を行うことにより求めた。ここでは、限界表面積拡大率は、図23(A)~(F)を用いて説明したように「表面積拡大率(E)=(A1-A0)/A0×100」として表面積拡大率を算出し、心材と皮材との界面が摩擦挙動から接合挙動に変化するときの表面積拡大率を限界表面積拡大率とした。
得られた実施試験片11を用いて、小型試験(せん断試験)を行うことで、異種金属接合材3の接合強度を測定した。なお、異種金属接合材3の作製および実施試験片11の作製は上述の方法により行った。
なお、表1に記載の試料の詳細は以下の通りである。
AC1:Mnを1.2質量%含有し、少量のCuや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC1を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC2:Mnを1.4質量%含有し、少量のCuやMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC2を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC3:Mnを1.3質量%含有し、少量のCuや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC3を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC4:Mnを1.3質量%含有し、少量のCuやMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC4を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL1:Znを1質量%含有し、少量のMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL1を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL2:Siを12質量%含有し、少量のMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL2を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL3:Znを2質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL3を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL4:Siを7質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL4を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL5:Znを4質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL5を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL6:Siを10質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL6を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC1:Mnを1.2質量%含有し、少量のCuや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC1を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC2:Mnを1.4質量%含有し、少量のCuやMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC2を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC3:Mnを1.3質量%含有し、少量のCuや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC3を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AC4:Mnを1.3質量%含有し、少量のCuやMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Mn系合金AC4を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL1:Znを1質量%含有し、少量のMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL1を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL2:Siを12質量%含有し、少量のMgや不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL2を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL3:Znを2質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL3を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL4:Siを7質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL4を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL5:Znを4質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Zn系合金AL5を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
AL6:Siを10質量%含有し、少量の不可避不純物を含有し、残部がAlであるAl-Si系合金AL6を製造した。溶解鋳造にて鋳塊を作製し、鋳塊に均質化熱処理500℃の処理を施した合金を、本試験に用いた。
図7は、COM1における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図8は、COM2における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図9は、COM3における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図10は、COM4における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図11は、COM5における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図12は、COM6における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図13は、COM7における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図14は、COM8における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
以上により得られたグラフから、接合強度と圧下率との関係における傾きaと切片bとを求めると表2の通りとなる。
図8は、COM2における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図9は、COM3における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図10は、COM4における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図11は、COM5における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図12は、COM6における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図13は、COM7における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
図14は、COM8における圧下率と接合強度との関係を示すグラフである。
以上により得られたグラフから、接合強度と圧下率との関係における傾きaと切片bとを求めると表2の通りとなる。
以上説明した方法により小型試験を行うことで、異種金属接合材3の接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bを得ることができる。この傾きaと切片bとは、後述する限界表面積拡大率の推定方法に用いられる。
なお、異種金属接合材3の作製時の圧下率が判明しており、上述の方法により傾きaと切片bとが得られれば、「a×圧下率+b」により異種金属接合材3の接合強度を得ることができる。また、接合強度と圧下率との関係について、「a×圧下率+b」に非線形項を追加したその他の数式を用いてフィッティング精度を高めた上で、線形項の傾きaおよび切片bを得てもよい。
なお、異種金属接合材3の作製時の圧下率が判明しており、上述の方法により傾きaと切片bとが得られれば、「a×圧下率+b」により異種金属接合材3の接合強度を得ることができる。また、接合強度と圧下率との関係について、「a×圧下率+b」に非線形項を追加したその他の数式を用いてフィッティング精度を高めた上で、線形項の傾きaおよび切片bを得てもよい。
「限界表面積拡大率の推定方法」
「推定式1」
限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式1を用いる方法について説明する。
「推定式1」
限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式1を用いる方法について説明する。
ここで、推定式1中のk1A、k1B、σave、aおよびbはそれぞれ以下を示す。
k1A :異種金属接合材3の室温での変形抵抗を、異種金属接合材3の接合強度に換算するための係数。
k1B :異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、異種金属接合材3の室温での変形抵抗に換算するための係数。
σave:異種金属接合材3の高温での変形抵抗。
a :異種金属接合材3の接合強度と圧下率との関係における傾き。
b :異種金属接合材3の接合強度と圧下率との関係における切片。
k1A :異種金属接合材3の室温での変形抵抗を、異種金属接合材3の接合強度に換算するための係数。
k1B :異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、異種金属接合材3の室温での変形抵抗に換算するための係数。
σave:異種金属接合材3の高温での変形抵抗。
a :異種金属接合材3の接合強度と圧下率との関係における傾き。
b :異種金属接合材3の接合強度と圧下率との関係における切片。
各パラメータについて以下に説明する。
異種金属接合材3は十分に強固に接合されていると考える一方で、上述の試験片作製方法において接合こそ高温で行っているが、小型試験(せん断試験)は室温で行っている。その影響を次のように簡易的に考える。
異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、心材試験片1の高温での変形抵抗σCと皮材試験片2の高温での変形抵抗σLとの平均値σave(=(σC+σL)/2)で表す。
異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、室温での変形抵抗に換算する係数をk1Bとする。異種金属接合材3の高温での変形抵抗σaveにk1Bをかけた値を、異種金属接合材3の室温での変形抵抗(k1B×σave)とみなす。
得られた室温での変形抵抗にk1Aをかけた値を、異種金属接合材3の接合強度(k1A×k1B×σave)とみなす。
異種金属接合材3は十分に強固に接合されていると考える一方で、上述の試験片作製方法において接合こそ高温で行っているが、小型試験(せん断試験)は室温で行っている。その影響を次のように簡易的に考える。
異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、心材試験片1の高温での変形抵抗σCと皮材試験片2の高温での変形抵抗σLとの平均値σave(=(σC+σL)/2)で表す。
異種金属接合材3の高温での変形抵抗を、室温での変形抵抗に換算する係数をk1Bとする。異種金属接合材3の高温での変形抵抗σaveにk1Bをかけた値を、異種金属接合材3の室温での変形抵抗(k1B×σave)とみなす。
得られた室温での変形抵抗にk1Aをかけた値を、異種金属接合材3の接合強度(k1A×k1B×σave)とみなす。
この接合強度(k1A×k1B×σave)と、上述の小型試験により得られた接合強度(a×圧下率+b)とは等しいため、下記式が成り立つ。
a×圧下率+b=k1A×k1B×σave …式
a×圧下率+b=k1A×k1B×σave …式
平面ひずみ圧縮のモードで試験片作製(異種金属接合材3の製造)を行っていれば、上記式1中の圧下率は限界表面積拡大率EAに置き替えられると仮定できる。アルミニウムクラッド材の一般的な製造条件であれば平面ひずみ圧縮のモードとなる。上記式中の圧下率を限界表面積拡大率EAに置き替えることで、上記推定式1を得ることができる。
上記推定式1に、表1に示す限界表面積拡大率EA(実機における圧延試験の結果)およびσave、並びに、表2に示す傾きaおよび切片bを代入し、最小二乗法を用いることで、k1A=0.1161、k1B=1.75が得られる。これらの値を推定式1に代入することで、下記推定式1’を得ることができる。
上記推定式1’によれば、上述の小型試験により得られた接合強度と圧下率の関係における傾きaおよび切片bと、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値σaveとを用いることにより、限界表面積拡大率EAを得ることができる。
上記推定式1’を用いることで、実機での圧延試験を行うことなく、小型試験における結果と異種金属接合材3を構成する金属板の特性値とのみにより、限界表面積拡大率EAを推定することができる。
上記推定式1’を用いることで、実機での圧延試験を行うことなく、小型試験における結果と異種金属接合材3を構成する金属板の特性値とのみにより、限界表面積拡大率EAを推定することができる。
なお、上述した説明では異種金属接合材3の高温での変形抵抗σaveを心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値とみなしたが、異種金属接合材3について高温での引張試験を行うこと異種金属接合材3の高温での変形抵抗σaveを求めてもよい。
「推定式2」
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式2を用いる方法について説明する。
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式2を用いる方法について説明する。
推定式2は、推定式1の関数を2次の関数で補正したものである。上記推定式2に、上記推定式1’、表1に示す限界表面積拡大率EA(実機における圧延試験の結果)およびσave、並びに、表2に示す傾きaおよび切片bを代入し、最小二乗法を用いることで、k2A=-0.04381、k2B=1.472、k2C=-1.197が得られる。これらの値を推定式2に代入することで、下記推定式2’を得ることができる。
上記推定式2’によれば、上述の小型試験により得られた接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bと、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値σaveとを用いることで、限界表面積拡大率EAを得ることができる。
「推定式3」
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式3を用いる方法について説明する。
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式3を用いる方法について説明する。
推定式3は、推定式1に対し、第2項において、心材試験片1と皮材試験片2との間の強度差が大きいと接合し難いという影響を考慮したものである。なお、σdifは「|σC-σL|」のことである。上記推定式3に、上記推定式1’、表1に示す限界表面積拡大率EA(実機における圧延試験の結果)、σC、σLおよびσave、並びに、表2に示す傾きaおよび切片bを代入し、最小二乗法を用いることで、k3A=0.1379、k3B=-0.04091が得られる。この値を推定式3に代入することで、下記推定式3’を得ることができる。なお、k1Bは推定式1’と同じ値(k1B=1.75)を代入する。
上記推定式3’によれば、上述の小型試験により得られた接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bと、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値σaveと、心材試験片1の高温での変形抵抗σCと、皮材試験片2の高温での変形抵抗σLとを用いることで、限界表面積拡大率EAを得ることができる。
「推定式4」
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式4を用いる方法について説明する。
次に、限界表面積拡大率EAを推定するための方法として、下記推定式4を用いる方法について説明する。
上記推定式4は上記推定式3で得られる値を2次関数で補正し、より精度を高めたものである。上記推定式4に、上記推定式3’、表1に示す限界表面積拡大率EA(実機における圧延試験の結果)、σC、σLおよびσave、並びに、表2に示す傾きaおよび切片bを代入し、最小二乗法を用いることで、k4A=0.2906、k4B=-0.2890、k4C=0.6735が得られる。この値を推定式4に代入することで、下記推定式4’を得ることができる。
上記推定式4’によれば、上述の小型試験により得られた接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bと、心材試験片1の高温での変形抵抗と皮材試験片2の高温での変形抵抗との平均値σaveと、心材試験片1の高温での変形抵抗σCと、皮材試験片2の高温での変形抵抗σLとを用いることで、限界表面積拡大率EAを得ることができる。
表3に推定式1’~4’の各推定式から算出されるEAと、実機における圧延試験により得られたEAとの相関係数および平均二乗誤差を示す。
表3を見ると、推定式1’、推定式2’、推定式3’、推定式4’の順に精度良く限界表面積拡大率EAを推定できていることが分かる。
以上に説明したように、小型試験の結果と推定式1’~4’とを用いることで、限界表面積拡大率EAを推定することができる。推定式1’~4’に代入するパラメータは小型試験、および必要に応じて引張試験により求めることができるため、実機での圧延試験を行うことなく限界表面積拡大率EAを推定することができる。
なお、推定式1~4は、接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bと、高温の変形抵抗とから限界表面積拡大率を推定可能であることの一部の実例に過ぎず、この傾きaおよび切片bと高温の変形抵抗とから限界表面積拡大率を求めるものであれば、推定式1~4に限定せず、その他の形の推定式であっても良い。
また、既述のように接合強度と圧下率との関係について「a×圧下率+b」に非線形項を追加した数式を用いた場合に、限界表面積拡大率のその他の推定式のパラメータに非線形項の係数を加えても良い。
以上に説明したように、小型試験の結果と推定式1’~4’とを用いることで、限界表面積拡大率EAを推定することができる。推定式1’~4’に代入するパラメータは小型試験、および必要に応じて引張試験により求めることができるため、実機での圧延試験を行うことなく限界表面積拡大率EAを推定することができる。
なお、推定式1~4は、接合強度と圧下率との関係における傾きaおよび切片bと、高温の変形抵抗とから限界表面積拡大率を推定可能であることの一部の実例に過ぎず、この傾きaおよび切片bと高温の変形抵抗とから限界表面積拡大率を求めるものであれば、推定式1~4に限定せず、その他の形の推定式であっても良い。
また、既述のように接合強度と圧下率との関係について「a×圧下率+b」に非線形項を追加した数式を用いた場合に、限界表面積拡大率のその他の推定式のパラメータに非線形項の係数を加えても良い。
「異種金属接合材のすべり量予測」
図15は、熱間圧延の所定の1パスにおいて、リバース初期における熱間圧延開始時の心材10と皮材11からなる積層物12と、上下のワークロール13、14の位置関係を示す模式図である。図16は、同リバース終期における熱間圧延終期の心材10と皮材11と上下のワークロール13、14の位置関係を示す模式図である。ここで用いたリバースとは、図15、図16に示すようにワークロール13、14に対して積層物12が右側に移動し、相対的に積層物12が左向きに伸ばされる状態を意味する。
これらの定義は、本実施形態においてリバース式の熱間圧延装置を用いることを前提に解析を実施するためであり、上下のワークロール13、14に対し、フォワードとリバースを交互に繰り返しながら熱間圧延を実施して異種金属接合材を製造することを前提とする。本実施形態では、1パス毎にフォワードとリバースとを繰り返す、リバース式の熱間圧延装置を用いることを前提とし、以下に説明する。
図15は、熱間圧延の所定の1パスにおいて、リバース初期における熱間圧延開始時の心材10と皮材11からなる積層物12と、上下のワークロール13、14の位置関係を示す模式図である。図16は、同リバース終期における熱間圧延終期の心材10と皮材11と上下のワークロール13、14の位置関係を示す模式図である。ここで用いたリバースとは、図15、図16に示すようにワークロール13、14に対して積層物12が右側に移動し、相対的に積層物12が左向きに伸ばされる状態を意味する。
これらの定義は、本実施形態においてリバース式の熱間圧延装置を用いることを前提に解析を実施するためであり、上下のワークロール13、14に対し、フォワードとリバースを交互に繰り返しながら熱間圧延を実施して異種金属接合材を製造することを前提とする。本実施形態では、1パス毎にフォワードとリバースとを繰り返す、リバース式の熱間圧延装置を用いることを前提とし、以下に説明する。
図17は、熱間圧延の所定の1パスにおいて、フォワード初期における熱間圧延開始時の心材10と皮材11からなる積層物12と、上下のワークロール(熱間圧延ロール)13、14の位置関係を示す模式図である。図18は、同フォワード終期における熱間圧延終期の心材10と皮材11と上下のワークロール13、14の位置関係を示す模式図である。ここで用いたフォワードとは、図17、図18に示すようにワークロール13、14に対して積層物12が左側に移動し、相対的に積層物12が右向きに伸ばされる状態を意味する。
これらの定義は、本実施形態においてリバース式の熱間圧延装置を用いることを前提に解析を実施するためであり、上下のワークロール13、14に対し、フォワードとリバースを交互に繰り返しながら熱間圧延を実施して異種金属接合材を製造することを前提とする。本実施形態では、1パス毎にフォワードとリバースを繰り返す、リバース式の熱間圧延装置を用いることを前提とし、以下に説明する。
これらの定義は、本実施形態においてリバース式の熱間圧延装置を用いることを前提に解析を実施するためであり、上下のワークロール13、14に対し、フォワードとリバースを交互に繰り返しながら熱間圧延を実施して異種金属接合材を製造することを前提とする。本実施形態では、1パス毎にフォワードとリバースを繰り返す、リバース式の熱間圧延装置を用いることを前提とし、以下に説明する。
図19は、上側の皮材における熱間圧延パス数とすべり量の関係を実機試験において求めた結果を示し、図20は、下側の皮材における熱間圧延パス数とすべり量の関係を実機試験において求めた結果を示す。なお、図19と図20では、記載の簡略化のため、上側の皮材を上ライナーと記載し、下側の皮材を下ライナーと記載している。図19において、1パス目がフォワードを示し、交互にフォワードとリバースを繰り返しているパスにおいて、6パス目から、すべり量が一定値になっていることがわかる。すなわち、5-6パス目で界面の状態が摩擦から接合に移行したと考えることができる。
ここでは、5パス目までの状態を摩擦モード、6パス目以降を接合モードと定義すると限界表面積拡大率EAは、
EA=Efric(摩擦モードの表面積拡大率累積)+Econ(接合モードの表面積拡大率)となる。
以上説明した関係を以下の(A)式で表示することができる。ただし、以下の(A)式において、Si:i回目の表面積拡大比を意味する。
EA=Efric(摩擦モードの表面積拡大率累積)+Econ(接合モードの表面積拡大率)となる。
以上説明した関係を以下の(A)式で表示することができる。ただし、以下の(A)式において、Si:i回目の表面積拡大比を意味する。
6パス目に関しては、本実施形態に係る限界表面積拡大率の推定方法により限界表面積拡大率を算出することができる。
具体的なすべり量の算出方法について、上側の皮材を例として以下に説明する。
摩擦モードにおけるiパス目のフォワードの累積のすべり量をLFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のリバースの累積のすべり量をLREV,fric,iと定義する。摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのフォワードのすべり量をlFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのリバースのすべり量をlREV,fric,iと定義すると、フォワードの累積のすべり量とリバースの累積のすべり量は、以下の(1)式と(2)式で表すことができる。
摩擦モードにおけるiパス目のフォワードの累積のすべり量をLFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のリバースの累積のすべり量をLREV,fric,iと定義する。摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのフォワードのすべり量をlFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのリバースのすべり量をlREV,fric,iと定義すると、フォワードの累積のすべり量とリバースの累積のすべり量は、以下の(1)式と(2)式で表すことができる。
例えば、6パス目(リバースの時)に接合するので限界表面積拡大率EAから5パス目までの累積の表面積拡大率Efricの差分を6パス目で接合するのに必要な6パス目の表面積拡大率とし、数値解析によって(3)式で示す様にlREV,conを算出することができる。
フォワードの時に接合する場合は、数値解析によって(4)式で示す様にlFW,conを算出することができる。
以上のように計算することで、リバースとフォワードの各パスでのすべり量を算出することができる。
上述のように、本実施形態に係る限界表面積拡大率の推定方法により限界表面積拡大率EAを算出し、この限界表面積拡大率EAから数値解析を利用することで、リバース、フォワードのすべり量を算出できる。また、クラッド率、変形抵抗、圧下率を変更した場合でも、金属間の組み合わせが同じ場合は同様に、すべり量を予測することができる。
同様な予測を心材についても行い、心材と皮材が熱間圧延開始前の状態から熱間圧延終期までにどの程度伸びるのか、それぞれの総伸び量を把握しておき、総伸び量の差異を把握する。例えば、皮材が心材より最終的にどの程度余計に伸びるのかを把握し、その長さ分、皮材を短くしておき、熱間圧延を開始するならば、熱間圧延終了時に、心材と皮材の長さの差異を最小とする熱間圧延を実現しながら異種金属接合材を製造できる。
よって、異種金属接合材を製造するに際し、心材端部側における皮材の脱落を防止できる技術を提供できる。また、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる技術を提供できる。
よって、異種金属接合材を製造するに際し、心材端部側における皮材の脱落を防止できる技術を提供できる。また、心材端部から突出する皮材量を抑制することで、皮材の切り捨て量を削減し、適正なクラッド率の異種金属接合材を効率良く製造できる技術を提供できる。
なお、先の例においては、実機試験により熱間圧延を実施した場合、上側の皮材において6パス目からすべり量が一定となったため、5パス目までを摩擦モード、6パス目以降を接合モードと判断した。このため、先に説明した以下の(A)式を用いた。
ところが、上側の皮材において何パス目までが摩擦モードで何パス目から接合モードとなるかは、熱間圧延の条件や用いる心材と皮材の厚さ、種別により任意の異なるパス数となる。このため、上述の(A)式は以下に示す(B)式として一般化し、実機試験により異なるパス数で摩擦モードから接合モードに遷移した場合は、以下の(B)式に従い、計算することができる。(B)式においてnは、該当する皮材において摩擦モードから接合モードに移行した場合のパス数を示す。
実機試験により、5パス目まで摩擦モード、6パス目から接合モードの場合は上述の(A)式を用いたが、他の任意のパス数で摩擦モードから接合モードに遷移した場合は、上述の(B)式を用い、先に説明した、限界表面積拡大率(EA)を求める場合の以下の関係式に合わせて計算することができる。
EA=Efric(摩擦モードの表面積拡大率累積)+Econ(接合モードの表面積拡大率)
EA=Efric(摩擦モードの表面積拡大率累積)+Econ(接合モードの表面積拡大率)
なおまた、先の例では(1)式と(2)式において、上側の皮材を例にとって説明したが、(1)式と(2)式は、上側の皮材と下側の皮材のどちらの場合でも適用することができる。また、上述の関係を一般式とする場合は、以下に説明する各式に従うことができる。
nパス目にフォワードで接合モードに至る時の累積のすべり量をLFW,nと定義し、その前後のパスにてリバースで接合モードに至る時の累積のすべり量をLREV,n±1と定義し、摩擦モードにおけるiパス目のフォワードの累積のすべり量をLFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のリバースの累積のすべり量をLREV,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのフォワードのすべり量をlFW,fric,iと定義し、摩擦モードにおけるiパス目のそのパスでのリバースのすべり量をlREV,fric,iと定義し、接合モードに至る時のそのパスでのフォワードのすべり量をlFW,conと定義し、接合モードに至る時のそのパスでのリバースのすべり量をlREV,conと定義し、圧延の数値解析により、皮材の変形抵抗/心材の変形抵抗X1、限界表面積拡大率X2、圧下率X3、クラッド率X4を変数として解析値を得ることをf(X1、X2、X3、X4)と定義すると、接合モードに至った時の前記フォワードのすべり量が以下の(5)式の関係を満足し、接合モードに至った時の前記リバースのすべり量が以下の(6)式の関係を満足し、摩擦モードのフォワードのすべり量が以下の(7)式の関係を満足し、摩擦モードのリバースのすべり量が以下の(8)式の関係を満足し、接合モードに至る時のそのパスでのフォワードのすべり量が以下の(9)式の関係を満足し、接合モードに至る時のそのパスでのリバースのすべり量が以下の(10)式の関係を満足する。
これら(5)式~(10)式を利用することにより、各状態におけるすべり量を求めることができる。
1…心材試験片
2…皮材試験片
3…異種金属接合材
5、102、111…心材
6、103、112…皮材
1A…第1層
2A…第2層
10…中間試験片
11…実施試験片
12…積層物
13、14、100、101、113…ワークロール
S1、S2…切断面
15…第1接合片
16…第2接合片
17…接合面
30…試験装置
31…下側挟持治具
32…上側挟持治具
33…支持板
35…下部挟持治具
36…上部挟持治具
37…下側潤滑テープ
38…下部潤滑テープ
39…上側潤滑テープ
40…上部潤滑テープ
50…熱間圧縮装置
51…下型
52…パンチ
53…チャンネル溝
54…凸部
105…クラッド素材
2…皮材試験片
3…異種金属接合材
5、102、111…心材
6、103、112…皮材
1A…第1層
2A…第2層
10…中間試験片
11…実施試験片
12…積層物
13、14、100、101、113…ワークロール
S1、S2…切断面
15…第1接合片
16…第2接合片
17…接合面
30…試験装置
31…下側挟持治具
32…上側挟持治具
33…支持板
35…下部挟持治具
36…上部挟持治具
37…下側潤滑テープ
38…下部潤滑テープ
39…上側潤滑テープ
40…上部潤滑テープ
50…熱間圧縮装置
51…下型
52…パンチ
53…チャンネル溝
54…凸部
105…クラッド素材
Claims (7)
- 2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材とを接合した異種金属接合材を製造するにあたり、すべり量を予測する方法に用いられる限界表面積拡大率を推定する方法であって、
前記2つ以上の異なる金属材の接合強度と、前記2つ以上の異なる金属材の高温での変形抵抗と、を用いて前記限界表面積拡大率を推定することを特徴とする、異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法。 - 前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片に対しせん断試験を行うことで前記接合強度を得て、
前記2つ以上の異なる金属材からなる試験片を作製したときの圧下率と、前記接合強度との関係から傾きaおよび切片bを算出し、
前記傾きaおよび前記切片bを用いて前記限界表面積拡大率を推定することを特徴とする、請求項1に記載の異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法。 - 2つ以上の異なる金属材を重ね合わせた積層物を熱間圧延ロールによる接合工程において接合し、この接合により得られた接合体を引き続き前記熱間圧延ロールにより圧延して少なくとも心材と皮材を接合した異種金属接合材を製造する方法であって、
前記接合工程で生じる前記心材と前記皮材との間の圧延方向のすべり量を求めるに際し、請求項1~6のいずれか1項に記載の推定方法により前記限界表面積拡大率を推定し、
得られた前記限界表面積拡大率から数値解析を利用してすべり量を予測し、
前記異種金属接合材を製造する場合、前記接合工程に供する前の前記積層物における2つ以上の金属材の長さを前記すべり量の予測値に基づき調整することを特徴とする異種金属接合材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022099683A JP2024000781A (ja) | 2022-06-21 | 2022-06-21 | 異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022099683A JP2024000781A (ja) | 2022-06-21 | 2022-06-21 | 異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2024000781A true JP2024000781A (ja) | 2024-01-09 |
Family
ID=89451598
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022099683A Pending JP2024000781A (ja) | 2022-06-21 | 2022-06-21 | 異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2024000781A (ja) |
-
2022
- 2022-06-21 JP JP2022099683A patent/JP2024000781A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Cooper et al. | The influence of deformation conditions in solid-state aluminium welding processes on the resulting weld strength | |
Salandro et al. | Formability of Al 5xxx sheet metals using pulsed current for various heat treatments | |
US2753623A (en) | Solid phase bonding of metals | |
Krallics et al. | An examination of the accumulative roll-bonding process | |
Paralikas et al. | Investigation of the effect of roll forming pass design on main redundant deformations on profiles from AHSS | |
Iankov | Finite element simulation of profile rolling of wire | |
Bambach et al. | A finite element framework for the evolution of bond strength in joining-by-forming processes | |
Yao et al. | Finite element-based method for residual stresses and plastic strains in cold-formed steel hollow sections | |
Rezaii et al. | Experimental & theoretical investigation of roll bonding process of multilayer strips by finite element method | |
Bohdal et al. | Modelling of guillotining process of grain oriented silicon steel using FEM | |
Govindaraj et al. | Tensile bond strength of cold roll bonded aluminium sheets | |
Muransky et al. | Mitigating cutting-induced plasticity in the contour method. Part 2: Numerical analysis | |
Dixit | Modeling of metal forming: a review | |
Quach et al. | Residual stresses in press-braked stainless steel sections, I: Coiling and uncoiling of sheets | |
RU2765768C2 (ru) | Способ и устройство для непрерывной оценки механических и микроструктурных свойств металлического материала, в частности стали, в процессе холодного деформирования | |
JP2024000781A (ja) | 異種金属接合材のすべり量予測に用いられる限界表面積拡大率の推定方法および異種金属接合材の製造方法 | |
Yang et al. | Finite element simulation of equal channel angular extrusion | |
JP2024000780A (ja) | アルミニウムクラッド材のすべり量予測方法およびアルミニウムクラッド材の製造方法 | |
Edwards et al. | Simulation of tensile behavior in friction stir welded and superplastically formed-titanium 6Al-4V alloy | |
JP2023097750A (ja) | アルミニウムクラッド材の製造方法 | |
Zhao et al. | Inverse estimation of material properties for sheet metals | |
Mittelman et al. | Computational analysis of thermo-mechanical fields in hot roll bonding of aluminum validated by experiments | |
Bogatov et al. | Development of bonding mechanisms for different materials during forming | |
Edwards et al. | Thinning behavior simulations in superplastic forming of friction stir processed titanium 6Al-4V | |
Kumar et al. | Estimation of temperature-dependent yield strength and modulus of elasticity during laser bending |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 Effective date: 20221111 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20230202 |