JP2022055907A - 三層クラッド板の熱間圧延の設計方法及び三層クラッド板の製造方法 - Google Patents

三層クラッド板の熱間圧延の設計方法及び三層クラッド板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性が高く、反りを低減可能な、三層クラッド板の熱間圧延の設計方法を提供する。【解決手段】心材の一面側に第1皮材を配置するとともに心材の他面側に第2皮材を配置し、熱間圧延することにより三層クラッド板を製造する際の熱間圧延の設計方法であり、熱間圧延前の第1皮材及び第2皮材の板厚比の差をΔCLとし、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の変形抵抗をsc、s1、s2とした場合に、Δs及びSを所定の式で定義し、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材のひずみ速度感受性係数をmc、m1、m2とした場合に、Δm及びMをそれぞれ、所定の式で定義した場合に、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合、またはS≦0.65の場合において、所定の式を満たす条件となるように、心材、第1皮材及び第2皮材を選択する三層クラッド板の設計方法。【選択図】図1

Description

本発明は、三層クラッド板の熱間圧延の設計方法及び三層クラッド板の製造方法に関する。
従来、複数の金属板が接合されたクラッド金属板が知られている。このようなクラッド板の製造方法として、特許文献1には、母材、合せ材及び覆い材を重ね合わせて層状組み立て材とし、これを熱間圧延した後に、覆い材を除去する方法が記載されている。しかし、この方法では、熱間圧延後に覆い材を分離する追加の手間がある。また、熱間圧延可能な厚さには限界があるので、母材、合せ材及び覆い材の板厚に制限があり、結局のところ生産性は低い。
特許文献2には、2層クラッド材を熱間圧延して製造する際に、上下のワークロールの直径を不同ならしめ、更にワークロールと被圧延材との潤滑状態を調整することで、反りを防止している。しかし、この方法では、材料特性ごとにワークロールを変更する必要があり、生産性が低い。また、潤滑状態の制御は安定性が出づらく、結局のところ生産性が低い。
特許文献3には、炭素鋼を母材とし、ステンレス鋼を合わせ材とするクラッド鋼板の製造方法において、圧延開始後の冷却条件を制御することで、反りを防止している。しかし、この方法では、搬送テーブル上の被圧延材に対して、搬送テーブルの上方から冷却水を噴射するため、被圧延材が搬送テーブルに押し付けられて表面に疵が生じる恐れがあり、クラッド鋼板の品質が低下する。
特許文献4には、鉄合金を母材とし、銅若しくは銅合金を合わせ材とするクラッド鋼の熱間圧延方法において、圧延温度と鉄合金の変態温度とが所定の式を満足するように圧延することで、反りを防止している。しかし、この方法は、3層以上のクラッド材には適用できない。また、ひずみ速度感受性係数の観点がないため、正確には反りを低減できる考え方ではない。
特許文献5には、合わせ材を覆い鋼板によって密封して覆い鋼板組立材とし、これを鋼母材と反り防止材との間に挟み、鋼母材と反り防止材とを溶接してから熱間圧延、その後、覆い鋼板を除去することで、反りを防止している。しかし、この方法では、圧延前の準備と、圧延後の覆い鋼板の除去に手間が掛かる。
特許文献6には、クラッド鋼板の熱間圧制御装置において、上下のロールをそれぞれ、異なる系により制御して、異速圧延することにより、反りを防止している。しかし、この装置では、反りが大きくなるクラッド材の構成の場合は、制御しきれない問題がある。
特許文献7は、アルミニウム合金の三層クラッド板の製造方法において、圧延初期の圧下率を小さく指定することで、接合不良をなくし、また、反りを小さく抑えて製造不能を避けている、しかし、この方法では、圧下率を小さくすることにより生産性が低下する問題がある。
特開昭61-232075号公報 特開昭62-259607号公報 特開平5-23702号公報 特開昭59-56903号公報 特開昭62-158583号公報 実開昭60-131213号公報 特開平9-184038号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生産性が高く、反りを低減可能な、三層クラッド板の熱間圧延の設計方法及び三層クラッド板の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 金属板からなる心材の一面側に前記心材とは異なる金属板からなる第1皮材を配置するとともに、前記心材の他面側に前記心材とは異なる金属板からなる第2皮材を配置し、熱間圧延することにより三層クラッド板を製造する際の前記熱間圧延の設計方法であり、
前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材の合計厚みCLに対する前記第1皮材の厚みの比である板厚比CLと、前記合計厚みCLに対する前記第2皮材の厚みの比である板厚比CLとの差(CL-CL)をΔCLとし、
前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材のひずみ速度0.1sec-1における熱間圧延温度での変形抵抗をそれぞれs、s、sとした場合に、Δs及びSをそれぞれ、下記式(1)及び下記式(2)の通りに定義し、
前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材の熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数をそれぞれm、m、mとした場合に、Δm及びMをそれぞれ、下記式(3)及び下記式(4)の通りに定義した場合に、
S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合、またはS≦0.65の場合において、下記式(5)を満たす条件となるように、前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材を選択することを特徴とする三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
Δs=(s-s)/s …(1)
S=0.5(s+s)/s …(2)
Δm=m-m …(3)
M=0.5(m+m)/m …(4)
|kΔs+kΔm+kΔCL|≦0.3 …(5)

但し、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合は、上記式(5)においてk=1.0、k=2.6及びk=-9.9+7.7S+1.5Mとし、
S≦0.65の場合は、上記式(5)においてk=-1.0、k=-0.7及びk=1.2-3.2S-4.3Mとする。
[2] 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純アルミニウムあるいはアルミニウム基合金とする、[1]に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
[3] 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純銅あるいは銅基合金とする、[1]に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
[4] 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純アルミニウム、アルミニウム基合金、純銅、銅基合金、チタン、チタン基合金、マグネシウム、マグネシウム基合金のいずれかとする、[1]に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
[5] [1]乃至[4]の何れか一項に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法において選択された前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材を用い、前記心材の一面側及び他面側にそれぞれ、前記第1皮材及び前記第2皮材を配置し、熱間圧延することを特徴とする三層クラッド板の製造方法。
なお、本明細書では、上記式(5)の左辺の「kΔs+kΔm+kΔCL」をパラメータPと呼ぶ場合がある。
本発明によれば、生産性が高く、反りを低減可能な、三層クラッド板の熱間圧延の設計方法及び三層クラッド板の製造方法を提供できる。
図1は、心材、第1皮材及第2皮材に対して熱間圧延を行って三層クラッド板を製造する場合の、有限要素法による圧延解析モデルを示すモデル図。 図2は、表1のNo.1~5、No.6~9、No.10~15、No.16~21について、Δs値と曲率との関係を示すグラフである。 図3は、表1のNo.22~38について、Δm値と曲率との関係を示すグラフである。 図4は、表1のNo.39~56について、ΔCL値と曲率との関係を示すグラフである。 図5は、表1のNo.1~56、表4のNo.57~60及び表5のNo.61~82について、パラメータPと三層クラッド板の曲率の予測値との関係を示すグラフである。
三層クラッド板を製造するために、第1皮材を心材の一面側に配置するとともに、第2皮材を心材の他面側に配置した状態で熱間圧延した場合に、反りが発生する場合がある。例えば、第1皮材と第2皮材とが同じ厚みであり、かつ、第1皮材の変形抵抗が第2皮材の変形抵抗よりも小さいと、すなわち第1皮材が伸びやすいと、熱間圧延時に第2皮材よりも第1皮材の伸び量が大きくなり、熱間圧延後の三層クラッド板が第2皮材側に反る。
また、例えば、第1皮材の変形抵抗と第2皮材の変形抵抗とが同じであり、第2皮材の厚みが第1皮材の厚みより大きいと、第1皮材及び第2皮材に対する圧下量がほぼ同じと仮定した場合に熱間圧延時に第1皮材の伸びが大きくなり、熱間圧延後の三層クラッド板が第2皮材側に反る。
従って、従来、三層クラッド板を圧延する場合は、心材の両面に配置する第1皮材、第2皮材の厚みや変形抵抗が互いに近くなるように、形状の対称性や材質の対称性を確保した上で、熱間圧延後の三層クラッド板の反りを防止していた。
しかし、本発明者らが鋭意検討したところ、熱間圧延における皮材の伸びは、変形抵抗や厚みのみならず、熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数が影響することを見出した。すなわち、第1皮材及び第2皮材のひずみ速度感受性係数に着目し、第1皮材及び第2皮材のそれぞれのひずみ速度感受性係数の組合せを最適化するように第1皮材及び第2皮材を選択することで、心材の両面に配置する第1皮材及び第2皮材の厚みや変形抵抗の対称性を確保できない場合であっても、熱間圧延後の三層クラッド板の反りを低減できることを見出した。
更に、本発明者らが、有限要素法による解析を行った結果、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の合計厚みCLに対する第1皮材および第2皮材それぞれの板厚比CL、CLと、ΔCL(=CL-CL)と、心材、第1皮材及び第2皮材それぞれの変形抵抗s、s、sと、ひずみ速度感受性係数m、m、mとの関係式から求められるパラメータPの絶対値が0.3以下、より好ましくは0.24以下の場合に、熱間圧延後の三層クラッド板の反りを低減できることを見出した。
まず、発明者らは、有限要素法により、熱間圧延後の三層クラッド板の反り量の予測を行った。クラッド圧延のような塑性加工においては、シミュレーションが現実を良く再現することが経験的に知られているので、モデル材料で多数の条件を検討することにより、以下に説明するように、反りが小さくなる条件を見出した。
図1に、有限要素法による圧延解析モデルを示す。圧延解析モデルは、板幅不変の平面ひずみを仮定し、2次元で構築した。有限要素モデルの形状は、三層クラッド板の各層の厚さおよび圧延ロールの直径に基づき決定した。また、圧延ロールは、剛体として2次元の円で定義した。すなわち、熱間圧延前の三層クラッド板の総厚さ(熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の合計厚みCL)を600mmとし、圧延ロールの直径を上下とも850mmとした。また、有限要素モデルの圧延方向の長さは、心材、第1皮材及び第2皮材で共通とし、総厚さ(合計厚みCL)の2.3倍以上とした。また、長手方向の要素分割について、長手方向の1要素あたりの長さは心材、第1皮材及び第2皮材で共通とし、ロール半径の1/20以下の長さとした。また、ワーク(心材、第1皮材及び第2皮材)と圧延ロールとの間の摩擦係数は、クーロンモデルにより0.3とした。
また、圧延解析モデルにおける圧下率は6%とした。圧下率6%の条件で反りが小さければ、比較的大きな圧下率で圧延を続行することができ、効率よく製造できると経験上予測されるためである。圧下率2~10%であれば反りの傾向は変わらないため、本発明による三層クラッド板の熱間圧延での製造を行なう場合では、後述するように、圧延率を2~10%とすることが好ましい。
厚さ方向の要素分割について、厚さ方向の1要素あたりの長さは、心材に対しては心材厚さの1/10以下、第1皮材及び第2皮材に対しては各皮材厚さの1/4以下の長さとした。この時、長手方向/厚さ方向のアスペクト比が1/2より小さい、あるいは2より大きい場合は、そのアスペクト比が1/2以上2以下になるように、さらに要素を細かく分割した。
心材と第1皮材の界面および心材と第2皮材の界面はそれぞれ、有限要素の節点を共有することで接合した。
塑性変形の物性値として、心材、第1皮材及び第2皮材それぞれの応力σは、下記のひずみ速度依存型の式(A)を用いて入力した。式(A)において、sはひずみ速度ε=0.1における変形抵抗であり、mはひずみ速度感受性係数である。変形抵抗s及びひずみ速度感受性係数mは、ひずみ速度を変量した単軸引張試験あるいは単軸圧縮試験を行い、ひずみε=0.1における変形抵抗を基に計測した。
σ=s(ε/0.1) …(A)
弾性変形の物性値として、アルミニウムおよびアルミニウム基合金については、ヤング率は40GPaを用い、ポアソン比は0.3を用いた。アルミニウム合金のヤング率とポアソン比は、合金成分に対する依存性が小さいので、400~500℃程度の代表値と考え前記の値を用いた。なお、クラッド金属板の反りは、塑性変形特性によるところが大きいので、弾性特性はそれほど影響しないことを確認している。
同様に、銅および銅基合金については、ヤング率は50GPaを用い、ポアソン比は0.35を用いた。また、チタンについては、ヤング率は60GPaを用い、ポアソン比は0.35を用いた。
更に、三層クラッド板の反りは、圧延解析の後、圧延の定常部より肉厚中央の節点を8点以上12点以下選び、それらの座標値より最小二乗法で曲率(mm-1)を算出し、この曲率(mm-1)により評価した。
上記の条件下で有限要素法による圧延解析を行った結果を表1に示す。表1には、心材、第1皮材及び第2皮材を重ね合わせてから熱間圧延して三層クラッド板を製造する際に、心材、第1皮材及び第2皮材の特性値を変化させた場合の各条件(No.1~No.56)における、熱間圧延後のクラッド板の曲率(mm-1)の予測値を示している。心材、第1皮材及び第2皮材の特性値として変化させたのは、それぞれの変形抵抗s、s、s、ひずみ速度感受性係数m、m、m、第1皮材及び第2皮材の板厚比CL、CL及びこれらの差ΔCL(CL-CL)である。
表1中のΔs、Δm、S、パラメータPは、下記式(B)~(E)より求めた。表中のパラメータPは、下記式(C)の左辺中の「kΔs+kΔm+kΔCL」の計算値である。本発明者らは、式(C)の右辺の項(パラメータPの絶対値)が、熱間圧延後の反り量によく相関することを見出した。
表1に示す結果から、下記式(B)により求まるSが0.65超(S>0.65)であり、かつΔCLの絶対値が0.1超(|ΔCL|>0.1)であり、更にパラメータPの絶対値が0.3以下(下記式(C)を満足する)になる条件において、三層クラッド板の反りが低減されると推測された。また、パラメータPの絶対値は、0.24以下になる条件において、三層クラッド板の反りがより一層低減されると推測された。
また、表1に示す結果から、下記式(B)により求まるSが0.65以下(S≦0.65)であり、パラメータPの絶対値が0.3以下(下記式(C)を満足する)になる条件においても、三層クラッド板の反りが低減されると推測された。また、パラメータPの絶対値は、0.24以下になる条件において、三層クラッド板の反りがより一層低減されると推測された。
より詳細に説明すると、表1において、パラメータPが-0.30以上0.30以下の条件が実施例の条件であり、パラメータPが-0.30未満または0.30超の条件が比較例の条件である。実施例の条件では、曲率の予測値が-8.0×10-5(mm-1)~8.0×10-5(mm-1)の範囲とされている。一方、比較例の条件では、曲率が-8.0×10-5(mm-1)未満または8.0×10-5(mm-1)超の範囲とされている。このように、パラメータPの絶対値が0.30以下になるように、心材、第1皮材及び第2皮材の変形抵抗s、s、s、ひずみ速度感受性係数m、m、m、第1皮材及び第2皮材の板厚比CL、CL及びこれらの差ΔCL(CL-CL)を調整することで、熱間圧延後の三層クラッド板の反りを低減可能と予測できることが明らかになった。
Figure 2022055907000002
S=0.5(s+s)/s …(B)
|kΔs+kΔm+kΔCL|≦0.3 …(C)
Δs=(s-s)/s …(D)
Δm=m-m …(E)
M=0.5(m+m)/m …(F)
ここで、上記式(B)及び(D)におけるs、s、sはそれぞれ、心材、第1皮材及び第2皮材それぞれのひずみ速度0.1sec-1における熱間圧延温度での変形抵抗である。
また、上記式(C)におけるΔsは、上記式(D)により求められ、Δmは上記式(E)により求められる。また、上記式(C)におけるΔCLは、第1皮材及び第2皮材の板厚比CL、CLとの差(ΔCL=CL-CL)である。第1皮材の板厚比CLは、心材、第1皮材及び第2皮材の合計厚みCLに対する第1皮材の厚みの比である。また、第2皮材の板厚比CLは、合計厚みCLに対する第2皮材の厚みの比である。
また、上記式(C)における係数k、k及びkは、S及びΔCLに応じて定まる係数である。すなわち、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合は、k=1.0とし、k=2.6とし、k=-9.9+7.7S+1.5Mとする。また、S≦0.65の場合は、k=-1.0とし、k=-0.7とし、k=1.2-3.2S-4.3Mとする。ここで、係数kの決定式におけるMは、上記式(F)によって求められる。これらの係数k、k及びkは、経験的に求められる。
上記式(E)及び(F)におけるm、mはそれぞれ、第1皮材及び第2皮材それぞれの熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数であり、上記式(A)から求められる。また、上記式(F)におけるmは、心材の熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数であり、上記式(A)から求められる。
上記式(B)~(F)の説明及び係数k、k及びkの決定方法については、後述する。
以下、本発明の実施形態である三層クラッド板の熱間圧延の設計方法(以下、「設計方法」という場合がある)、三層クラッド板の製造方法及び三層クラッド板について説明する。
本実施形態の設計方法は、上記の知見に基づいてなされたものであり、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の板厚、板厚比CL、CL、ΔCL、変形抵抗s、s、s及びひずみ速度感受性係数m、m、mがそれぞれ、上記式(C)を満たす条件となるように、心材、第1皮材及び第2皮材を選択する。言い換えると、本実施形態の熱間圧延の設計方法は、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の板厚、板厚比CL、CL、ΔCL、変形抵抗s、s、s及びひずみ速度感受性係数m、m、mがそれぞれ、上記式(C)の左辺の項であるパラメータPの絶対値が0.3以下を満足する場合に、熱間圧延後の三層クラッド板の反り量が小さくなると予測されるので熱間圧延が可能と判断する。より好ましくは、パラメータPの絶対値は0.24以下とする。パラメータPの絶対値が0.24以下であると、熱間圧延後の三層クラッド板の反り量がより一層が小さくなると予測されるのでより好ましい。
心材、第1皮材及び第2皮材は、それぞれ、純アルミニウムあるいはアルミニウム基合金としてもよい。また、心材、第1皮材及び第2皮材をそれぞれ、純銅あるいは銅基合金としてもよい。更に、心材、第1皮材及び第2皮材をそれぞれ、純アルミニウム、アルミニウム基合金、純銅、銅基合金、チタン、チタン基合金、マグネシウム、マグネシウム基合金のいずれかとしてもよい。
次に、本実施形態の設計方法において使用する特性値について説明する。
心材、第1皮材及び第2皮材の厚みは、特に制限はないが、熱間圧延設備の制約上、熱間圧延前の心材、第1皮材及び第2皮材の合計厚みCLは、例えば、600mm以下とすることが好ましい。
心材、第1皮材及び第2皮材の厚みから、これらの合計厚みCLに対する第1皮材の厚みの比である板厚比CLを求める。同様に、合計厚みCLに対する第2皮材の厚みの比である板厚比CLを求める。更に、板厚比CLと板厚比CLの差(CL-CL)であるΔCLを求める。
また、心材、第1皮材及び第2皮材のひずみ速度0.1sec-1における熱間圧延温度での変形抵抗s、s、sをそれぞれ求める。変形抵抗s、s、sの求め方は後述する。
更に、上記式(B)からSを求め、また、上記式(D)からΔsを求める。
また、心材、第1皮材及び第2皮材の熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数m、m、mを上記式(A)よりそれぞれ求める。ひずみ速度感受性係数m、m、mの具体的な測定方法は後述する。
更に、上記式(E)からΔmを求め、また、上記式(F)からMを求める。
そして、上記式(C)の左辺中の「kΔs+kΔm+kΔCL」の計算値であるパラメータPを求める。パラメータPが-0.3~0.3の範囲である場合(上記式(C)を満たす場合)に、選択した心材、第1皮材及び第2皮材の組み合わせで熱間圧延した場合に反りが小さくなると推測して圧延可能と判断し、-0.3未満または0.3超である場合には、熱間圧延した場合に反りが大きくなると推測して圧延不可能と判断する。
また、本実施形態の設計方法では、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合、またはS≦0.65の場合を予測対象とし、S>0.65かつ|ΔCL|≦0.1の場合は本実施形態の予測対象外とする。
本実施形態の予測対象外であるS>0.65かつ|ΔCL|≦0.1の範囲は、そもそも、熱間圧延前の素材の形状の非対称性が小さいため、この範囲であれば熱間圧延が容易に行えるので、パラメータPの絶対値を限定する必要性に乏しい。よって、S>0.65かつ|ΔCL|≦0.1の範囲は、本実施形態の対象外とする。
一方、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の範囲は、第1皮材及び第2皮材の板厚比の差が過大になり、熱間圧延前の素材の形状の非対称性が大きくなり、反り量が大きくなると予想される。そこで、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の範囲では、Δs、Δm及びΔCLを含むパラメータPが-0.3~0.3の範囲になることを必要とする。パラメータPが-0.3~0.3の範囲であれば、素材の形状の非対称性が大きい場合でも、反り量を小さくすることができる。
また、S≦0.65の場合は、心材の変形が小さく、第1皮材、第2皮材の変形が集中しやすくなり、熱間圧延前の素材の非対称性が顕著化し、反り量が大きくなりやすく、圧延が難しくなる。そこで、S≦0.65の場合についても、Δs、Δm及びΔCLを含むパラメータPが-0.3~0.3の範囲になることを必要とする。パラメータPが-0.3~0.3の範囲であれば、素材の形状の非対称性が大きい場合でも、反り量を小さくすることができる。
次に、心材、第1皮材及び第2皮材のひずみ速度0.1sec-1における熱間圧延温度での変形抵抗s、s、sの測定方法について述べる。また、心材、第1皮材及び第2皮材の熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数m、m、mの測定方法についても述べる。
試験片は、心材、第1皮材、第2皮材の厚さ方向および幅方向の各中央付近から、円柱形状に切り出したものを用いる。円柱の軸方向が、圧延に供する素材の厚み方向と一致するように切り出す。試験片の寸法は、直径8mm、高さ12mmとする。
試験片を昇温速度60℃/分以上にて試験温度まで昇温し、到達後2分以上6分以下のあいだ温度保持した後に圧縮する。試験温度は、検討対象である材料に対して熱間圧延を行う際の温度を選択することができる。例えば、アルミニウムの場合は300~600℃の範囲である。圧縮直前は0.5mm空走(助走)させ、圧縮中に試験片に一定のひずみ速度でひずみを与える。このとき、ひずみは対数ひずみ(真ひずみ)とする。
圧縮前後の試験片高さの変化から、圧縮量Lsample,endを計測する。
一方、圧縮中は、荷重Fと変位Lmeasureを測定する。空走(助走)から荷重が立ち上がったところを変位のゼロ点とする。
圧縮中に測定した変位Lmeasureは、装置各部が荷重で変形する影響を含むため、圧縮が終了した瞬間の変位量Lmeasure,endと圧縮量Lsample,endは完全には一致しない。変位Lmeasureは補正が必要であることを意味する。このため、変位LmeasureをLcorrect=(Lsample,end/Lmeasure,end)×Lmeasureにて線形補正する。
補正した変位Lcorrectと試験片の元の高さHinitialからひずみε=|ln((Hinitial-Lcorrect)/Hinitial)|を求める。
試験荷重を圧縮中の断面積で除することで応力を求める。体積一定を仮定し、圧縮中の断面積はA=(Hinitial/(Hinitial-Lcorrect))×Ainitialで求める。なお、Ainitialは圧縮前の円柱試験片の断面積である。
変形抵抗σは、ひずみε=0.1の時の値を取得する。
このような評価を、ひずみ速度εが0.01sec-1、0.1sec-1、1sec-1にてそれぞれn=2以上行い、ひずみ速度0.1sec-1の時の結果の平均値をs(s、s、s)とする。
また、以上の結果をσ=s(ε/0.1)の式に最小二乗法でフィッティングすることによって、ひずみ速度感受性係数m(m、m、m)を得る。
次に、本実施形態の三層クラッド板の製造方法を説明する。
本実施形態の三層クラッド板の製造方法では、上記の設計方法において選択された心材、第1皮材及び第2皮材を用い、心材の一面側及び他面側にそれぞれ、第1皮材及び第2皮材を配置し、熱間圧延することにより、三層クラッド板を製造する。
熱間圧延前の加熱温度は、心材、第1皮材及び第2皮材がそれぞれ純アルミニウムあるいはアルミニウム基合金の場合は、例えば、300~600℃の範囲とする。また、心材、第1皮材及び第2皮材がそれぞれ純銅あるいは銅基合金の場合は、例えば、400~1000℃の範囲とする。更に、心材、第1皮材及び第2皮材がチタンまたはチタン基合金の場合は、600~1000℃の範囲とする。更に、心材、第1皮材及び第2皮材がマグネシウムまたはマグネシウム基合金の場合は、300~500℃の範囲とする。
更に、心材、第1皮材及び第2皮材の材質が異なる場合、例えば、アルミニウムと銅とを組合せる場合は、各金属の再結晶温度および融点を考慮し、熱間圧延の加熱温度が各金属の再結晶温度以上、融点未満の範囲内になるように調整することが好ましい。
熱間圧延の圧下率は2%以上であってもよく、4%以上であってもよい。圧下率が2%以上であれば、心材、第1皮材及び第2皮材の接合強度を十分な強度にすることができ、4%以上にすれば、製造効率をより高めることができる。圧下率の上限は限定する必要はない。なお、圧下率を一定の範囲内にすると、反り量の増大が抑えられる傾向にあるので、例えば、30%以下としてもよく、20%以下としてもよく、10%以下としてもよい。
熱間圧延によって製造された三層クラッド板は、上記の設計方法によって選択された心材、第1皮材及び第2皮材を素材とするものとなる。この三層クラッド金属板は、曲率が-8.00×10-5mm-1~8.00×10-5mm-1の範囲になる。
次に、本実施形態の決定方法において用いる上記式(C)の導出理由を説明する。
先に説明した有限要素法による圧延解析においては、表1のNo.1~56に示すように、所定の材料物性を仮定したモデル材料を用いて物性とクラッド率の影響を評価した。
図2に、No.1~5、No.6~9、No.10~15、No.16~21について、Δs値と曲率との関係をグラフで示す。
式(D)におけるΔs値の影響は、条件No.1~21で確認できる。表1及び図2において、条件No.1~21をS値の範囲で区分しており、No.1~9はS>0.65となる条件であり、No.10~21はS≦0.65となる条件である。また、No.1~5、No.6~9、No10~15、No16~21をそれぞれ1つのグループとしたとき、各グループ内においてそれぞれ、Δsだけを変量している。なお、s、s及びsは単位(MPa)を有する物理量であるので、sで除することで一般性をもたせている(式(D))。S値は、皮材が心材と比べ軟らかいかどうかを判別する平均的評価値である(式(B))。
図2に示すように、Δs値と反りは線形に近い相関を持っていることが分かる。No.1~9(S>0.65)では、正の相関で傾きが概ね一定である。これは、硬い方が圧延で伸びずそれに引っ張られて反ると解釈できる。また、No.10~21(S≦0.65)では、負の相関で傾きは概ね一定である。これは、皮材が軟らかいため、表面のみにひずみが集中していることが影響し、No.1~9の傾向と逆転していると考えられる。
次に、図3には、No.22~38について、Δm値と曲率との関係をグラフで示す。
図3に示すように、Δmの影響はNo.22~38で確認できる。表1及び図3において、No.22~38をS値で区分しており、No.22~30はS>0.65であり、No.31~38はS≦0.65である。また、No.22~25、No.26~30、No.31~34、No.35~38をそれぞれ1つのグループとしたとき、各グループ内においてそれぞれ、Δmだけを変量している。なお、m、m及びmは単位がない無次元数なので、mで除することは行わない。
図3に示すように、Δmと反りは線形に近い相関を示す。No.22~30(S>0.65)では、Δmと反りが正の相関であり、その傾きは概ね一定である。m、mとで大きい方がひずみによる硬化で圧延で伸びづらくなり、それに引っ張られて反ると解釈できる。No.31~38(S≦0.65)では、小さい負の傾きを持っている。これは、皮材が軟らかいため表面のみにひずみが集中していることが影響し、No.22~30の傾向と逆転していると考えられる。
次に、図4には、No.39~56について、ΔCL値と曲率との関係をグラフで示す。
図4に示すように、ΔCLの影響はNo.39~56で確認できる。表1及び図4において、No.39~56をS値で区分しており、No.39~48はS>0.65であり、No.49~56はS≦0.65である。また、No.39~43、No.44~48、No.49~52、No.53~56をそれぞれ1つのグループとしたとき、各グループ内においてそれぞれ、ΔCLだけを変量している。
図4に示すように、ΔCLと反りは、線形に近い相関関係にある。傾きは、心材及び皮材の物性によって変わることが示唆される。S値が大きい場合は、第1皮材、第2皮材のうち、板厚が大きい方の皮材はひずみが入りきらない一方で、板厚が小さい皮材に圧延のひずみが均一に入りやすい傾向となり、その結果、ひずみが入りきらない側に反りやすい。そのような現象は材料の強度によって程度が変わる。なお、ΔCLは負の範囲だけで検討しているが、対称性の観点からこれで十分であるためで、ΔCLを負に限定するものではない。
以上の傾向を基に、下記のパラメータPによって反りを表現させることを考えた。
P=kΔs+kΔm+kΔCL
上記式中のΔsの係数kおよびΔmの係数kは、図2及び図3に示す直線の傾きに対応する。ここまでの検討からkおよびkは定数でよいと考えた。一方、ΔCLの係数kは、図4に示したように物性に依存する。ΔsとΔmはすでに使用しているので、SとMで係数kを表すことを考えた。No.1~No.56の結果を基に鋭意検討した結果、係数は下記の通りとすることで、パラメータPとシミュレーションの反り(曲率)がよく相関することを見出した。
S>0.65のとき、k=1.0、k=2.6、k=-9.9+7.7S+1.5M
S≦0.65のとき、k=-1.0とし、k=-0.7とし、k=1.2-3.2S-4.3M
図5に、パラメータPと反り(曲率)との関係を示す。パラメータPが-0.3~0.3の範囲にあるときに、曲率が-8.00×10-5mm-1~8.00×10-5mm-1の範囲になることが推測可能であることが判明した。
また、パラメータPが-0.24~0.24の範囲にあるときに、曲率が-5.50×10-5mm-1~5.50×10-5mm-1の範囲になることが推測可能であることが判明した。
なお、図5の詳細については後述する。
以上説明したように、本実施形態の設計方法によれば、第1皮材及び第2皮材のひずみ速度感受性係数に着目し、第1皮材及び第2皮材のそれぞれのひずみ速度感受性係数の組合せを最適化するように第1皮材及び第2皮材を選択することで、心材の両面に配置する第1皮材及び第2皮材の厚みや変形抵抗の対称性を確保できない場合であっても、熱間圧延後の三層クラッド板の反りを低減できることを推測できる。これにより、三層クラッド金属板を構成する心材、第1皮材及び第2皮材の組合せを容易に設計することができ、三層クラッド金属板の生産性を高めることができる。
また、本実施形態の三層クラッド金属板の製造方法によれば、反り量が小さな三層クラッド金属板を製造することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
下記表2及び表3に示す材料を準備した。表2及び表3には、各材料の材種、440℃、480℃及び520℃における変形抵抗s(MPa)並びにひずみ速度感受性係数mの実測値を示す。
Figure 2022055907000003
Figure 2022055907000004
表2に示す材料について素材を熱間圧延して板厚を調整し、クラッド圧延用の心材、第1皮材、第2皮材とした。そして、心材の一面側及び他面側にそれぞれ、第1皮材及び第2皮材を配置し、この積層体を熱間圧延した。熱間圧延前の積層体の加熱温度は、480℃とした。熱間圧延時の圧延ロールのロール径は860mmとした。また、熱間圧延の圧下率は4~10%の範囲とした。このようにして、表4に示すNo.57~60の三層クラッド板を製造した。得られた三層クラッド板について、反りや製造性を評価した。結果を表4の下段に示す。
以下、表2に示す材料について材種、鋳造方法及び均質化処理温度を示す。化学成分の「%」は質量%である。また、AA1~AA3、AC1~AC5に記載した「熱間圧延」は、所定の板厚にするための分塊圧延及び熱間圧延を行ったことを意味する。
「AA1」Al-Si系ろう材AA1。溶解鋳造。均質化熱処理550℃。熱間圧延。
「AA2」Al-Si系ろう材AA2。溶解鋳造。均質化熱処理450℃。熱間圧延。
「AA3」Al-Si系ろう材AA3。溶解鋳造。均質化熱処理500℃。熱間圧延。
「AB1」Al-Mn系心材AB1。溶解鋳造。均質化熱処理500℃。
「AB2」Al-Mn系心材AB2。溶解鋳造。均質化熱処理600℃。
「AC1」Al-Zn系犠牲材AC1。溶解鋳造。均質化熱処理550℃。熱間圧延。
「AC2」Al-Zn系犠牲材AC2。溶解鋳造。均質化熱処理450℃。熱間圧延。
「AC3」Al-Zn系犠牲材AC3。溶解鋳造。均質化熱処理550℃。熱間圧延。
「AC4」Al-Zn系犠牲材AC4。溶解鋳造。均質化熱処理450℃。熱間圧延。
「AC5」Al-Zn系犠牲材AC5。溶解鋳造。均質化熱処理500℃。熱間圧延。
また、No.57~60の圧延条件は以下の通りである。
「No57の圧延」 圧延前の積層体の総板厚CL:510mm。圧着後、厚さ400mm以上においては圧下率4~10%、400mm未満では圧下率10%超で圧延。反りがほとんどなく、製造性良。
「No58の圧延」 圧延前の積層体の総板厚CL:510mm。圧着後、厚さ350mm以上においては圧下率4~10%、350mm未満では圧下率10%超で圧延。大きく上反りし、製造性悪。
「No59の圧延」 圧延前の積層体の総板厚CL:590mm。圧着後、厚さ400mm以上においては圧下率4~10%、400mm未満では圧下率10%超で圧延。わずかな上反りで製造性良好。
「No60の圧延」 圧延前の積層体の総板厚CL:510mm。圧着後、厚さ350mm以上においては圧下率4~10%、350mm未満では圧下率10%超で圧延。大きく上反りし、製造性悪。また度々パスの途中でロールを停止、戻しを行いながら圧延。
また、本発明に係る決定方法として、表2に示す材料の480℃における変形抵抗(MPa)、ひずみ速度感受性係数及び板厚から、CL、CL、Δs、Δm、ΔCL、S、パラメータPを求めた。これらを表4に合わせて示す。Δs、Δm、ΔCL、S、パラメータPは、上記式(B)~(F)によって求めた。結果を表4の上段に示す。また、表4の上段に示す曲率は、有限要素法によって求めた予測値である。
表4に示すように、本発明に係る決定方法の結果と、実際に製造された三層クラッド金属板の反り量とは、傾向がよく一致している。
すなわち、No.57は、パラメータPが-0.079であって、-0.3~0.3の範囲内であり、また、有限要素法によって求めた曲率の予測値が-1.66×10-5(/mm)であって、-8.00×10-5mm-1~8.00×10-5mm-1の範囲内である。そして、実際に製造した結果は、反りがほとんどないと評価されている。No.59も同様である。
一方、No.58は、パラメータPが0.387であって、-0.3~0.3の範囲から外れ、また、有限要素法によって求めた曲率の予測値が8.77×10-5(/mm)であって、-8.00×10-5mm-1~8.00×10-5mm-1の範囲から外れる。そして、実際に製造した結果は、大きく上反りしたと評価されている。No.60も同様である。
これらの結果から、本発明に係る決定方法の結果と、実際に製造された三層クラッド金属板の反り量とがよく一致していることが明らかである。よって、本発明に係る決定方法は、予測精度が非常に高いことが分かる。
Figure 2022055907000005
また、表5には、表2及び表3に示された材料の変形抵抗(MPa)、ひずみ速度感受性係数及び板厚から、CL、CL、Δs、Δm、ΔCL、S、パラメータPを求めた。これらを表5に示す。Δs、Δm、ΔCL、S、パラメータPは、上記式(B)~(F)によって求めた。また、表5に示す曲率は、有限要素法によって求めた曲率の予測値である。
表5に示すように、アルミニウム合金、Cu合金またはTi合金を素材とする場合であっても、熱間圧延後の三層クラッド板の反り量を精度よく予測できることが分かる。
また、図5には、表1、表4及び表5におけるパラメータPと曲率との関係を示す。図5に示す曲率は、有限要素法によって求めた曲率の予測値である。図5に示すように、心材、第1皮材及び第2皮材がそれぞれ、アルミニウム基合金、純銅、銅基合金、チタンであっても、パラメータPと曲率との間に相関関係があることが分かる。これにより、本発明の決定方法は、パラメータPによって熱間圧延後の三層クラッド板の曲率を精度よく予測できることが判明した。
Figure 2022055907000006

Claims (5)

  1. 金属板からなる心材の一面側に前記心材とは異なる金属板からなる第1皮材を配置するとともに、前記心材の他面側に前記心材とは異なる金属板からなる第2皮材を配置し、熱間圧延することにより三層クラッド板を製造する際の前記熱間圧延の設計方法であり、
    前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材の合計厚みCLに対する前記第1皮材の厚みの比である板厚比CLと、前記合計厚みCLに対する前記第2皮材の厚みの比である板厚比CLとの差(CL-CL)をΔCLとし、
    前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材のひずみ速度0.1sec-1における熱間圧延温度での変形抵抗をそれぞれs、s、sとした場合に、Δs及びSをそれぞれ、下記式(1)及び下記式(2)の通りに定義し、
    前記熱間圧延前の前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材の熱間圧延温度での変形抵抗のひずみ速度感受性係数をそれぞれm、m、mとした場合に、Δm及びMをそれぞれ、下記式(3)及び下記式(4)の通りに定義した場合に、
    S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合、またはS≦0.65の場合において、下記式(5)を満たす条件となるように、前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材を選択することを特徴とする三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
    Δs=(s-s)/s …(1)
    S=0.5(s+s)/s …(2)
    Δm=m-m …(3)
    M=0.5(m+m)/m …(4)
    |kΔs+kΔm+kΔCL|≦0.3 …(5)
    但し、S>0.65かつ|ΔCL|>0.1の場合は、上記式(5)においてk=1.0、k=2.6及びk=-9.9+7.7S+1.5Mとし、
    S≦0.65の場合は、上記式(5)においてk=-1.0、k=-0.7及びk=1.2-3.2S-4.3Mとする。
  2. 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純アルミニウムあるいはアルミニウム基合金とする、請求項1に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
  3. 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純銅あるいは銅基合金とする、請求項1に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
  4. 前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材をそれぞれ、純アルミニウム、アルミニウム基合金、純銅、銅基合金、チタン、チタン基合金、マグネシウム、マグネシウム基合金のいずれかとする、請求項1に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の三層クラッド板の熱間圧延の設計方法において選択された前記心材、前記第1皮材及び前記第2皮材を用い、前記心材の一面側及び他面側にそれぞれ、前記第1皮材及び前記第2皮材を配置し、熱間圧延することを特徴とする三層クラッド板の製造方法。
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