JP5135540B2 - 鋼管製造設備及び鋼管製造方法 - Google Patents

鋼管製造設備及び鋼管製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋼管製造設備及び鋼管製造方法に関する。
鋼管の代表的な製造方法として、UO製造法が知られている(特許文献1、2、3参照)。この方法は、まず被成形材である平板状の鋼板の両縁部を曲げ変形させるC成形(端曲げ)を行い、次いで、被成形材の中央部を曲げ変形させて被成形材を略U字状にするU成形を行い、さらに被成形材を略U字状から略O字状(略円管状)に変形させるO成形を行った後、突合せ部(両縁部同士を近接させた部分)を溶接することにより、円管状の溶接鋼管(UO鋼管)を製造するものである。溶接後の鋼管は、拡管機によって所望の形状寸法に成形される。なお、被成形材としては、スラブ(連続鋳造設備において帯状に鋳造された鋳片を切断することにより得られる鋼片)を圧延することにより製造される厚板が用いられる。
このようなUO製造法においては、被成形材のC成形を適切に行うことで、O成形後の突合せ部のピーキングを抑制することが要求される。例えばC成形における被成形材の両縁部の変形量が少なすぎると、突合せ部が外側に向かって突出した状態になってしまう。即ち、プラスピーキングが発生する。逆に、両縁部の変形量が多すぎると、突合せ部が内側に向かって窪んだ状態になってしまう。即ち、マイナスピーキングが発生する。このようなピーキングを抑制する方法としては、従来、C成形における縁部成形条件(被成形材の縁部に対して与える成形力等)を、被成形材の強度、板厚等から求める方法が提案されている(特許文献3参照)。
特公昭60−40934号公報 特開平7−32049号公報 特許3214292号公報
しかしながら、従来の鋼管製造方法にあっては、縁部成形条件を求める際に用いる被成形材の強度の設定値が、実際の強度とは異なり、縁部成形条件が不適切になる問題があった。例えば被成形材として、上述したようなスラブから製造された厚板を用いる場合では、ロットが同一の被成形材同士(即ち、同一の鋳片から得られた厚板同士)は、ほぼ同一の成分値、ほぼ同一の材質を有していると推定され、強度の設定値も同一にされていた。ところが、実際には強度のばらつきが大きいことがあり、ピーキングを十分に抑制することは難しかった。即ち、被成形材の実際の強度が設定値よりも高い場合は、被成形材の縁部に対して与える圧力が不足することとなり、被成形材の縁部の変形量が少なすぎて、プラスピーキングが発生しやすかった。逆に、被成形材の実際の強度が設定値よりも低い場合は、被成形材の縁部に対して与える圧力が過大になり、被成形材の縁部の変形量が多すぎて、マイナスピーキングが発生しやすかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、O成形後のピーキングを確実に抑制できる鋼管製造設備及び鋼管製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明によれば、鋼板を順次C成形、U成形、O成形することにより鋼管を製造する鋼管製造設備であって、前記C成形において鋼板の縁部を変形させる縁部変形機構と、前記縁部変形機構を制御する制御部とを備え、前記制御部は、各鋼板の強度情報を取得し、当該強度情報に基づいて、各鋼板に対応する縁部成形条件をそれぞれ求め、前記縁部成形条件に従って、前記縁部変形機構を制御し、前記強度情報は、鋼板の化学成分及び鋼板の圧延設備において用いられたTMCP条件に基づいて求められ、前記縁部変形機構は、前記各鋼板に対応する縁部成形条件に従って、各鋼板の縁部をそれぞれ変形させることを特徴とする、鋼管製造設備が提供される。
前記強度情報は、鋼板の化学成分及び鋼板の圧延設備において用いられたTMCP条件に基づいて求めても良い。前記強度情報は、例えば式(1)に基づいて求めても良い。
TS=aX+bX+cX
+dY+eY+fY
+gZ+hZ+iZ+j+kβ ・・・(1)
(TS:引張強度、X:加熱温度、Y:水冷開始温度、Z:水冷停止温度、β:焼入れ性、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k:係数)
前記縁部変形機構は、前記鋼板の下面側に当接する下金型と、前記鋼板の上面側に当接する上金型とを備え、前記下金型と前記上金型によって前記鋼板の縁部をプレス成形する構成としても良い。
また、前記縁部変形機構は、前記鋼板の下面側に当接する下ロールと、前記鋼板の上面側に当接する上ロールとを備え、前記下ロールと前記上ロールによって前記鋼板の縁部をロール成形する構成としても良い。
さらに、本発明によれば、鋼板を順次C成形、U成形、O成形することにより鋼管を製造する鋼管製造方法であって、各鋼板の化学成分及び各鋼板の圧延工程におけるTMCP条件に基づいて求められる強度情報を取得し、当該強度情報に基づいて、各鋼板に対応する縁部成形条件をそれぞれ求め、前記各鋼板に対応する縁部成形条件に従って、各鋼板の縁部をそれぞれ変形させることにより、各鋼板をC成形することを特徴とする、鋼管製造方法が提供される。
前記強度情報は、鋼板の化学成分及び鋼板の圧延工程におけるTMCP条件に基づいて求めても良い。前記強度情報は、例えば、式(1)に基づいて求めても良い。
TS=aX+bX+cX
+dY+eY+fY
+gZ+hZ+iZ+j+kβ ・・・(1)
(TS:引張強度、X:加熱温度、Y:水冷開始温度、Z:水冷停止温度、β:焼入れ性、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k:係数)
前記縁部成形条件は、前記鋼板の縁部に与える圧力情報、及び、前記鋼板の縁部を変形させる縁部変形機構の前記鋼板に対する位置情報を含むとしても良い。
この鋼管製造方法にあっては、鋼板をプレス成形によってC成形するようにしても良い。また、鋼板をロール成形によってC成形しても良い。
本発明によれば、各鋼板(被成形材)の強度に基づいて縁部成形条件を個別に調節することで、各鋼板の強度が互いに異なっていても、各鋼管におけるピーキングの発生を確実に防止できる。さらに、ピーキングに起因する溶接欠陥、搬送不良、拡管割れ等を防止できる。
以下、本発明にかかる実施形態を説明する。なお、本明細書及び図面においては、実質的に同一の機能構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図1は、スラブ(例えば連続鋳造設備において帯状に鋳造された鋳片を切断することにより得られる鋼片)から鋼板としての厚板を製造する圧延設備2(鋼板製造設備)と、厚板を順次C成形、U成形、O成形することにより鋼管を製造する鋼管製造設備3の概略図を示している。
図1に示すように、圧延設備2は、被成形材5(スラブ)を加熱する加熱炉10、加熱炉10によって加熱された被成形材5を粗圧延(熱間圧延)する粗圧延機11、粗圧延された被成形材5を仕上げ圧延(熱間圧延)する仕上圧延機12、仕上げ圧延された被成形材5を冷却処理する冷却部13等を備えている。冷却部13は、仕上げ圧延後の高温状態の被成形材5に対して冷却水を供給し、被成形材5の水冷処理(水焼入れ)を行う構成となっている。これにより、所定の材質(強度等)及び寸法を有する被成形材5(厚板)が製造されるようになっている。また、本実施形態における圧延設備2は、例えばTMCP(Thermomechanical Control Process)などの制御冷却技術を用いた処理を行うように構成されている。即ち、各被成形材5に対してそれぞれ個別に設定されたTMCP条件に従って、加熱炉10における加熱温度X、冷却部13における水冷開始温度Y、冷却部13における水冷停止温度Zなどを適宜調整しながら、各被成形材5の圧延を行うことができる構成になっている。
鋼管製造設備3は、被成形材5(厚板)のC成形(Cプレス)を行うC成形機21(Cプレス機)、C成形された被成形材5のU成形(Uプレス)を行うU成形機22(Uプレス機)、U成形された被成形材5のO成形(Oプレス)を行うO成形機23(Oプレス機)、O成形された被成形材5の端部同士を溶接する溶接機31、被成形材5を所定の寸法(内径、外径、肉厚)に拡管する拡管機32などを備えている。また、図示はしないが、C成形機21に搬入される前の被成形材5(厚板)に対して後述するタブ板38の取付を行うタブ板溶接機、後述する開先加工を施すエッジミラー、溶接機31による溶接後の被成形材5から後述するタブ板38を除去するタブ板除去機等を備えている。
また、圧延設備2、鋼管製造設備3に設けられている各機器(加熱炉10、粗圧延機11、仕上圧延機12、冷却部13、C成形機21、U成形機22、O成形機23、溶接機31、拡管機32等)は、主制御部36(ビジネスコンピュータ)によって制御されるようになっている。
図2は、C成形機21においてC成形される被成形材5を示している。被成形材5は、略長方形の平板状をなす鋼材(鋼板)であり、平面状の下面5aと上面5bを備えている。被成形材5の長さ方向D(板長方向)において互いに対向する両縁部、即ち、前縁部5cと後縁部5dには、タブ板38が2つずつ設けられている。タブ板38は、前縁部5c側からみて、前縁部5cの左端部と右端部、後縁部5dの左端部と右端部にそれぞれ設けられている。
被成形材5の幅方向D(板幅方向、長さ方向Dに対して直交する方向)において中央部を挟んで互いに対向する両縁部、即ち、左縁部5eと右縁部5fには、溶接を行うための開先加工が施されている。即ち、例えば図3に示すように、左縁部5eの下面5a側と右縁部5fの下面5a側に、第一の開先面41がそれぞれ設けられ、左縁部5eの上面5b側と右縁部5fの上面5b側には、第二の開先面42がそれぞれ設けられている。第一の開先面41、第二の開先面42は、それぞれ長さ方向Dに沿って設けられている。また、第一の開先面41は、外側(左縁部5eにおいては左側、右縁部5fにおいては右側)に向かうに従い下面5aから次第に上方に向かうように傾斜した傾斜面になっている。第二の開先面42は、外側に向かうに従い上面5bから次第に下方に向かうように傾斜した傾斜面になっている。
次に、C成形機21の構成について説明する。図4に示すように、C成形機21は、被成形材5を搬送する搬送機構51、左縁部5eを変形させる縁部変形機構としての左縁部変形機構52A、右縁部5bを変形させる縁部変形機構としての右縁部変形機構52Bを備えている。さらに、C成形機21に備えられている各機器(搬送機構51、左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52B等)を制御する制御部としてのC成形機制御部53(いわゆるプロセスコンピュータ)を備えている。
搬送機構51は、複数の搬送ロール51aを備えている。搬送ロール51aは、被成形材5の搬送方向D(水平方向)において複数並べて設けられており、また、各搬送ロール51aの長さ方向(中心軸方向)を搬送方向Dに対して略垂直な水平方向に向けた状態で備えられている。即ち、被成形材5を各搬送ロール51a上に載せた状態で、各搬送ロール51aをそれぞれの中心軸を中心として回転させることにより、被成形材5を略水平な姿勢で、所定の搬送方向Dに搬送する構成となっている。
左縁部変形機構52Aは、一対の金型、即ち、プレス成形の際に左縁部5eの下面5a側に当接する第一の当接体としての下金型61と、プレス成形の際に左縁部5eの上面5b側に当接する第二の当接体としての上金型62とを備えている。また、図示はしないが、下金型61と上金型62を搬送機構51上の被成形材5に対して移動させる金型移動装置を有している。さらに、金型移動装置の動作を制御する縁部変形機構制御装置65を備えている。
なお、下金型61の搬送方向Dにおける長さと、上金型62の搬送方向Dにおける長さは、左縁部5eの長さ(板長、被成形材5の長さ方向Dの寸法)に対して短く形成されている。つまり、左縁部5eに対する下金型61と上金型62の位置を長さ方向Dにおいてずらしながら、プレス成形を複数回に分けて行うことにより、左縁部5e全体を曲げ変形させる構成となっている。
図5に示すように、下金型61は、円柱面に沿って形成された凹曲面61aを備えている。凹曲面61aは、左側下方に向かって凹状に、また、被成形材5側から左側に向かうに従い次第に上方に向かうように形成されている。一方、上金型62は、下金型61の上方に設けられており、円柱面に沿って形成された凸曲面62aを備えている。凸曲面62aは、左側下方に向かって凸状に、また、被成形材5側から左側に向かうに従い次第に上方に向かうように形成されている。即ち、凹曲面61aと凸曲面62aとの間に左縁部5eを挟んで加圧することで、左縁部5eをプレス成形により曲げ加工する構成となっている。なお、図5に示す例では、平面視において凹曲面61aと凸曲面62aに重なる部分、即ち、プレス成形する前の被成形材5の左側面(左縁部5eの端面)から幅方向Dにおいて曲げ長さLの幅の部分が、凹曲面61aと凸曲面62aの間の隙間に沿って、左側に向かうに従い次第に上方に向かう形状に曲げ変形されるようになっている。
また、下金型61と上金型62は、金型移動装置(図示せず)の作動によって、上下方向(搬送機構51によって支持されている被成形材5の厚さ方向D(板厚方向、長さ方向Dと幅方向Dに対して直交する方向)において互いに近接及び離隔することができる。即ち、下金型61と上金型62を上下方向において離隔させると、搬送機構51によって支持されている被成形材5から下金型61と上金型62が離隔して、被成形材5を下金型61と上金型62に対して搬送方向Dに移動させることが可能な状態になる。また、下金型61と上金型62を上下方向において近接させると、搬送機構51によって支持されている被成形材5に対して下金型61と上金型62が当接して、下金型61と上金型62から被成形材5に対して圧力(プレス圧力、成形力)が加えられるように構成されている。
さらに、下金型61と上金型62は、金型移動装置(図示せず)の作動によって、搬送方向Dに対して直交する水平方向(幅方向D)にスライドすることができる。即ち、搬送機構51によって支持されている被成形材5に対して凹曲面61aが当接する当接位置と、凸曲面62aが当接する当接位置を、幅方向Dにおいて調節できるように構成されている。かかる構成により、曲げ長さLを所望の値に調節できるようになっている。
縁部変形機構制御装置65は、C成形機制御部53に対して電気的に接続されており、C成形機制御部53から送信された制御情報(例えば後述する縁部成形条件等の情報)に従って、金型移動装置(図示せず)を制御するようになっている。即ち、受信した縁部成形条件を実現するように、金型移動装置(図示せず)を作動させるようになっている。
右縁部変形機構52Bは、実質的に左縁部変形機構52Aと左右対称な構成を有している。右縁部変形機構52Bの詳細な説明は、上記の左縁部変形機構52Aと重複するので省略する。
C成形機制御部53は、主制御部36に対して電気的に接続されており、主制御部36から送信された制御情報に従って、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65に対してそれぞれ制御情報を送信するように構成されている。また、C成形機制御部53は、各被成形材5の情報(例えば各被成形材5の化学成分の成分値、圧延設備2における各被成形材5の圧延工程においてそれぞれ用いられたTMCP条件の情報、各被成形材5の寸法、各被成形材5の強度情報等)を取得し、さらに、各被成形材5の強度情報に基づいて、各被成形材5に対応する縁部成形条件を、一枚ごとに個別に求めることができる。
本実施形態においては、各被成形材5の化学成分、圧延設備2におけるTMCP条件、寸法などの情報は、主制御部36に記憶されるように構成されている。そして、この主制御部36に記憶されている各被成形材5の化学成分、圧延設備2におけるTMCP条件などの情報が、主制御部36からC成形機制御部53に送信されることで、C成形機制御部53に取得されるようになっている。各被成形材5の化学成分の成分値は、例えばC(炭素)の含有量R(質量%)、Si(ケイ素)の含有量RSi(質量%)、Mn(マンガン)の含有量RMn(質量%)、Ni(ニッケル)の含有量RNi(質量%)、Cu(銅)の含有量RCu(質量%)、Cr(クロム)の含有量RCr(質量%)、V(バナジウム)の含有量R(質量%)、Mo(モリブデン)の含有量RMo(質量%)等であっても良い。また、TMCP条件の情報には、例えば、加熱炉10における加熱温度X、冷却部13における水冷開始温度Y、冷却部13における水冷停止温度Zなどを含めても良い。
また、C成形機制御部53は、主制御部36から受信した各被成形材5の化学成分の成分値に基づいて、各被成形材5の焼入れ性β(予測値)を計算することができ、さらに、計算した焼入れ性βとTMCP条件に基づいて、被成形材5の一枚ごとの強度TS(引張強度の予測値)を計算することができる。つまり、各被成形材5の化学成分とTMCP条件に基づいて、強度TSを求めることができる。
強度TSは、例えば、以下の式(1)(強度予測式)と式(2)(焼入れ性予測式)に基づいて求めることができる。本実施形態においては、式(1)、(2)を利用して強度TSを計算するためのプログラムが、C成形機制御部53に記憶されており、このプログラムを実行することにより、強度TSを算出する構成となっている。
TS=aX+bX+cX
+dY+eY+fY
+gZ+hZ+iZ+j+kβ ・・・(1)
(TS:強度(引張強度)、X:加熱温度、Y:水冷開始温度、Z:水冷停止温度、β:焼入れ性、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k:係数)
β=f(R,RSi,RMn,RNi,RCu,RCr,R,RMo) ・・・(2)
(R:Cの含有量(質量%)、RSi:Siの含有量(質量%)、RMn:Mnの含有量(質量%)、RNi:Niの含有量(質量%)、RCu:Cuの含有量(質量%)、RCr:Crの含有量(質量%)、R:Vの含有量(質量%)、RMo:Moの含有量(質量%))
因みに、式(2)は、焼入れ性βが被成形材5の成分値(R,RSi,RMn,RNi,RCu,RCr,R,RMo)に依存することを意味している。
さらに、C成形機制御部53は、計算した被成形材5の強度TSと、主制御部36から送信された被成形材5の厚さ(板厚、厚さ方向Dにおける寸法)に基づいて、縁部成形条件を計算する機能を有する。C成形機制御部53において求められる縁部成形条件には、例えば、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62によって左縁部5eに対して与える圧力情報、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62によって右縁部5fに対して与える圧力情報、搬送機構51によって支持されている被成形材5に対する左縁部変形機構52Aの位置情報、搬送機構51によって支持されている被成形材5に対する右縁部変形機構52Bの位置情報等が含まれている。なお、本実施形態において、被成形材5に対する左縁部変形機構52A(右縁部変形機構52B)の位置情報とは、下金型61の幅方向Dにおける位置情報、上金型62の幅方向Dにおける位置情報、下金型61の厚さ方向Dにおける位置情報、上金型62の厚さ方向Dにおける位置情報である。
因みに、縁部成形条件の計算には、例えば公知の方法を用いることが可能である。例えば、左縁部変形機構52Aや右縁部変形機構52Bから被成形材5に対して与える圧力は、被成形材5の強度TS等から求めることができる(特許文献3参照)。また、例えばO成形後(拡管前)の被成形材5の外径、被成形材5の板厚(肉厚)等から、左縁部5e又は右縁部5fの曲げ長さLの目標範囲を求めることができ(特許文献1参照)、この曲げ長さLから、下金型61の位置情報と上金型62の位置情報を設定することが可能である。
次に、以上のように構成された鋼管製造設備3における鋼管製造方法について説明する。先ず、主制御部36には、複数の被成形材5(鋼板一枚ごと)に関する情報(各被成形材5の化学成分、圧延設備2において用いられたTMCP条件、寸法等)が予め記憶されている。なお、各被成形材5の化学成分は、例えば被成形材5(スラブ)が圧延設備2に搬入される前の製鋼設備(連続鋳造設備)における製鋼工程において、連続鋳造設備のタンデッシュに貯留されている溶鋼等からサンプリングを行い、検査することにより求めるようにしても良い。即ち、溶鋼の分析結果(成分値)を主制御部36に記憶させても良い。また、TMCP条件については、圧延設備2において圧延を行った際に、主制御部36から圧延設備2(例えば、加熱炉10を制御するプロセスコンピュータ、粗圧延機11を制御するプロセスコンピュータ、仕上圧延機12を制御するプロセスコンピュータ、冷却部13を制御するプロセスコンピュータ等)に対して送信した制御情報(例えば、加熱炉10における加熱温度Xの設定値、冷却部13における水冷開始温度Yの設定値、冷却部13における水冷停止温度Zの設定値等)を保存しておくようにしても良い。あるいは、圧延設備2から主制御部36に対してTMCP条件の実績値(例えば、加熱炉10における加熱温度Xの実績値、冷却部13における水冷開始温度Yの実績値、冷却部13における水冷停止温度Zの実績値等)を送信し、これを主制御部36に記憶させても良い。
鋼管製造設備3においては、先ず被成形材5に対してタブ板38が溶接によって取り付けられ、次に、図示しないエッジミラーを用いた切削により、開先加工(第一の開先面41、第二の開先面42の形成)が施される。その後、C成形機21によってC成形(Cプレス)される。
C成形機21において、C成形機制御部53は、最初にC成形が施される1番目の被成形材5の情報(1番目の被成形材5の化学成分、1番目の被成形材5のTMCP条件、1番目の被成形材5の寸法等)を、主制御部36から取得する。そして、上記式(1)、(2)に基づく計算を行うことにより、化学成分、TMCP条件から1番目の被成形材5の強度TS(1)を求める。
さらに、C成形機制御部53は、1番目の被成形材5の寸法、計算された強度TS(1)等に基づいて、1番目の被成形材5に対応する縁部成形条件(即ち、1番目の被成形材5の左縁部5eに対して与える圧力情報、1番目の被成形材5の右縁部5fに対して与える圧力情報、1番目の被成形材5に対する左縁部変形機構52Aの位置情報、1番目の被成形材5に対する右縁部変形機構52Bの位置情報等)を計算する。即ち、例えば水冷停止温度Zが低く、強度TS(1)が高いほど、左縁部5eや右縁部5fに対して与える圧力を高くするように、縁部成形条件を設定する。こうしてC成形機制御部53において求められた1番目の被成形材5に対応する縁部成形条件を、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65に対してそれぞれ送信する。
一方、1番目の被成形材5は、搬送機構51によって略水平な姿勢で支持され、搬送方向Dに沿って搬送される(図6参照)。搬送の際、下面5aは下方に向けられ、上面5bは上方に向けられ、前縁部5cは前側(搬送方向Dにおいて搬出側)に配置され、後縁部5dは後側(搬送方向Dにおいて搬入側)に配置される。また、前縁部5c側からみて左側に左縁部5eが配置され、右側に右縁部5fが配置される。被成形材5の長さ方向Dは搬送方向Dに向けられ、幅方向Dは搬送方向Dに対して略垂直に向けられる。
こうして搬送方向Dに沿って搬送されることにより、被成形材5は、前縁部5c側から左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bに挿入される(図6参照)。このとき、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62は、それぞれ上下に離隔させられており、被成形材5に対して接触しない位置に待機させられている。かかる状態において、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62との間に、左縁部5eの前端部が挿入され、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62との間に、右縁部5fの前端部が挿入される。
次に、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62が、それぞれ上下方向において近接させられることにより、左縁部5eの前端部、右縁部5fの前端部がそれぞれ左縁部変形機構52Aの下金型61(凹曲面61a)と上金型62(凸曲面62a)との間、右縁部変形機構52の下金型61と上金型62との間に挟まれて、プレス成形される(図5、図7参照)。即ち、左縁部5eの前端部(左縁部5eの端面から曲げ長さLの部分)は、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62によって圧力が与えられることにより、左縁部変形機構52Aの凹曲面61aと凸曲面62aに沿って曲げ変形させられる。つまり、左側に向かうに従い上方に向かうように、略円柱面に沿って(前縁部5c側からみて略円弧状に)湾曲した形状になる。また、右縁部5fの前端部(右縁部5fの端面から曲げ長さLの部分)は、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62によって圧力が与えられることにより、右縁部変形機構52Bの凹曲面61aと凸曲面62aに沿って曲げ変形させられる。つまり、右側に向かうに従い上方に向かうように、略円柱面に沿って湾曲した形状になる。こうして、左縁部5eの前端部と右縁部5fの前端部は、前縁部5c側からみて互いに左右対称な形状に湾曲させられる。
また、かかるプレス成形を行う際、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65は、C成形機制御部53から送信された縁部成形条件(1番目の被成形材5の縁部成形条件)に基づいて、左縁部変形機構52Aの金型移動装置(図示せず)を制御する。即ち、左縁部変形機構52Aの凹曲面61aと凸曲面62aは、搬送機構51によって支持されている被成形材5(1番目の被成形材5の縁部成形条件)に対して、縁部成形条件に基づいた所定の位置に当接させられる。また、縁部成形条件に基づいた所定の圧力で左縁部5eを加圧する。同様に、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65は、C成形機制御部53から送信された縁部成形条件に基づいて、右縁部変形機構52Bの金型移動装置(図示せず)を制御する。即ち、右縁部変形機構52Bの凹曲面61aと凸曲面62aは、搬送機構51によって支持されている被成形材5に対して、縁部成形条件に基づいた所定の位置に当接させられる。また、縁部成形条件に基づいた所定の圧力で右縁部5fを加圧する。こうして、左縁部変形機構52Aと右縁部変形機構52Bは、C成形機制御部53から送信された縁部成形条件に従って、左縁部5eの前端部と右縁部5fの前端部をそれぞれ変形させ、左縁部5eの前端部と右縁部5fの前端部(最初の被成形部分)は、1番目の被成形材5の強度TS等に基づいた最適な縁部成形条件で、最適な形状に成形される。
左縁部5eの前端部と右縁部5fの前端部のプレス成形が終了すると、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62は、再び上下に離隔させられ、被成形材5に対して接触しない位置に配置される。そして、搬送機構51の作動により、被成形材5が搬送方向Dに沿って搬送される(図8参照)。即ち、被成形材5に対する左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bの相対的な位置が、後方に移動させられる。そして、左縁部5eにおいてプレス成形された部分の後側に隣接する部分(未だプレス成形が施されていない部分)が、左縁部変形機構52Aにおける次の被成形部分として、左縁部変形機構52Aの下金型61と上金型62との間に配置される。また、右縁部5eにおいてプレス成形された部分の後側に隣接する部分が、右縁部変形機構52Bにおける次の被成形部分として、右縁部変形機構52Bの下金型61と上金型62との間に配置される。かかる状態で、搬送機構51が一時停止させられ、上記のプレス成形と同様にして、左縁部5eと右縁部5eがそれぞれプレス成形される(図9参照)。このときも、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65は、上述した1番目の被成形材5の縁部成形条件に従って、それぞれの金型移動装置(図示せず)を制御する。こうして、次の被成形部分も、最初の被成形部分と同様に、1番目の被成形材5の強度TS等に基づいた最適な縁部成形条件で、最適な形状に成形される。
以上のようにして、1番目の被成形材5は、1番目の被成形材5の縁部成形条件に基づいて、前縁部5c側から後縁部5d側に向かって、順次プレス成形されていく。即ち、左縁部変形機構52Aによる被成形部分、右縁部変形機構52Bによる被成形部分は、それぞれ搬送方向Dにおいて複数のエリアに分割されている。そして、総ての被成形部分がプレス成形されることにより、左縁部5e全体(左縁部5eの端面から曲げ長さLの部分全体)、右縁部5f全体(右縁部5fの端面から曲げ長さLの部分全体)が連続的に曲げ変形させられた状態、即ち、被成形材5にC成形が施された状態となる。各被成形部分は、最初の被成形部分と同様に、1番目の被成形材5の強度TS等に基づいた最適な縁部成形条件で、最適な形状に成形される。
C成形が施された1番目の被成形材5は、左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bよりも前方において、C成形機21から搬出される。こうして、1番目の被成形材5のC成形工程が終了する。
その後、C成形が施された1番目の被成形材5は、U成形機22に搬送され、U成形機22において、幅方向Dにおける中央部分が、略円柱面に沿って曲げ変形される(図10参照)。即ち、一定の略U字型の断面を有する形状に、U成形される。
U成形が施された1番目の被成形材5は、O成形機23に搬送され、O成形機23によってO成形され、略円管状に成形される。図11に示すように、下面5aは外周面5aとなり、上面5bは内周面5bとなり、左縁部5eと右縁部5fは、被成形材5の上部において互いに近接させられ、突合せ部68を形成する。ここで、1番目の被成形材5の左縁部5eと右縁部5fは、C成形機21において最適な形状に曲げ変形させられているため、突合せ部68においてピーキング(図11において一点鎖線で示すプラスピーキング、又は、二点鎖線で示すマイナスピーキング)が発生することはない。即ち、図11において実線で示すように、被成形材5を真円度の高い略円管状に(径方向に沿った断面形状が真円度の高い略円環状になるように)成形することができる。
O成形後、被成形材5は、O成形機23から溶接機31に搬送され、溶接機31において突合せ部68の溶接が行われる。O成形機23から溶接機31に被成形材5を搬送する際などは、ピーキングを抑制することで、ピーキングに起因する搬送不良を防止できる。即ち、突合せ部68が搬送機構に引っ掛かることなどを防止でき、被成形材5を安定した状態で保持し、円滑に搬送できる。
溶接機31における溶接工程では、図12に示すように、左縁部5eの第一の開先面41と右縁部5fの第一の開先面41との間に形成された溝部(突合せ部68の外周面側の開先)、及び、左縁部5eの第二の開先面42と右縁部5fの第二の開先面42との間に形成された溝部(突合せ部68の内周面側の開先)に、被成形材5の長さ方向Dに沿って、溶加材71が付加される(図12参照)。これにより、左縁部5eと右縁部5fが接合される。このとき、被成形材5にピーキングが発生していると、ピーキングに起因する溶接欠陥が発生するおそれがあるが、ピーキングを抑制することにより、そのような溶接欠陥を防止でき、溶接を確実に行うことができる。なお、溶接は、前縁部5cに設けられているタブ板38から開始され、第一の開先面41、第二の開先面42においては連続的に行われ、後縁部5dに設けられているタブ板38において終了される。溶接後は、被成形材5からタブ板38が除去される。即ち、溶接が不安定になりやすい溶接の開始部分と終了部分が、タブ板38とともに除去される。
被成形材5からタブ板38が除去された後は、拡管機32において、被成形材5の拡管が行われる。拡管の際、被成形材5にピーキングが発生していると、ピーキングに起因する拡管割れが発生するおそれがあるが、ピーキングを抑制することにより、そのような拡管割れを防止でき、拡管を確実に行うことができる。こうして、所定の寸法の鋼管を製造することができる。
なお、1番目の被成形材5がC成形機21から搬出された後は、次の未処理の被成形材5、即ち、2番目の被成形材5が、C成形機21に搬入される。そして、上記の1番目の被成形材5と同様にして、2番目の被成形材5のC成形が行われる。
2番目の被成形材5のC成形の際、C成形機制御部53は、上記の1番目の被成形材5に関する情報とは別に、2番目の被成形材5に関する情報(2番目の被成形材5の化学成分、2番目の被成形材5のTMCP条件、2番目の被成形材5の寸法等)を、主制御部36から取得する。そして、2番目の被成形材5に関する情報と上記式(1)、(2)に基づく計算により、2番目の被成形材5の強度TS(2)を求める。さらに、2番目の被成形材5の寸法、計算された2番目の被成形材5の強度TS(2)等に基づいて、2番目の被成形材5に対応する縁部成形条件を計算する。そして、2番目の被成形材5に対応する縁部成形条件を、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65に対してそれぞれ送信する。従って、プレス成形を行う際、左縁部変形機構52Aの縁部変形機構制御装置65、右縁部変形機構52Bの縁部変形機構制御装置65は、C成形機制御部53から送信された2番目の被成形材5の縁部成形条件に従って、それぞれの金型移動装置(図示せず)を制御する。
こうして、2番目の被成形材5においても、各被成形部分は、2番目の被成形材5の強度TS(2)等に基づいた最適な縁部成形条件で、最適な形状に成形される。即ち、2番目の被成形材5の化学成分、TMCP条件、寸法、焼入れ性β、強度TS等が、上述した1番目の被成形材5と異なっていても、1番目の被成形材5とは別に、2番目の被成形材5を所望の形状に成形するために必要な圧力等、縁部成形条件が新たに計算され、その縁部成形条件に従って成形される。従って、左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bから2番目の被成形材5に対して与える圧力が不足したり過剰になったりすることを防止できる。即ち、2番目の被成形材5を適度に曲げ変形させることができ、O成形後のピーキングが発生することを防止できる。
同様に、3番目以降のn番目の被成形材5をC成形する際も、C成形機制御部53は、各被成形材5の情報(n番目の被成形材5の化学成分、n番目の被成形材5のTMCP条件、n番目の被成形材5の寸法等)を、主制御部36からそれぞれ取得し、これらの情報に基づいて、n番目の被成形材5に対応する縁部成形条件をそれぞれ求め、その縁部成形条件に従って、左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bを制御する。左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bは、各被成形材5に対応する縁部成形条件に従って(n番目の被成形材5を成形する際はn番目の被成形材5に対応する縁部成形条件に従って)、各被成形材5をそれぞれ成形する。従って、各被成形材5は、それぞれの被成形材5の強度TS(n)等に基づいた最適な縁部成形条件で、最適な形状に成形される。
また、被成形材5のC成形が行われた後は、上記の1番目の被成形材5と同様にして、2番目以降の各被成形材5のU成形、O成形、溶接、拡管などが順次行われる。上述したように、2番目以降の被成形材5においても、O成形でピーキングが発生することを防止できる。また、2番目以降の被成形材5においても、ピーキングに起因する溶接欠陥、搬送不良、拡管割れを好適に防止できる。
以上説明したように、本実施形態によれば、被成形材5の一枚ごとの強度TS(TS(n),n=1,2,3,・・・)に基づいて、C成形の縁部成形条件を個別に調節することで、各被成形材5の強度TSが互いに異なっていても、各被成形材5に対応する縁部成形条件を用いて、各被成形材5をそれぞれ適切にC成形することができる。例えば、ロットが同一の被成形材5(同一の鋳片から得られた厚板同士)において、実際の強度にばらつきがあっても、各被成形材5に最適な縁部成形条件を一枚ごとに求め、それぞれ適切にC成形することができる。C成形を適切に行うことにより、各被成形材5のO成形後、ピーキングが発生することを確実に防止でき、各被成形材5の真円度を高くすることができる。さらに、各被成形材5のピーキングに起因する溶接欠陥、搬送不良、拡管割れを確実に防止でき、所望の形状寸法を有する鋼管を確実に製造できる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば下金型61や上金型62の形状は、図5に示したものには限定されない。図5においては、下金型61と上金型62の間において、被成形材5の被成形部分全体(曲げ長さLの部分全体)に凹曲面61aが接触する状態を示したが、例えば図13に示すように、被成形部分の一部(先端部)のみが接触するようにしても良い。このような縁部変形機構を用いる場合も、縁部成形条件を好適に求めることができる。即ち、下金型61と上金型62によって被成形材5に対して与える圧力、被成形材5に対する下金型61の位置、被成形材5に対する上金型62の位置等を、好適に計算することができる。
また、以上の実施形態では、被成形材5を縁部変形機構に対して搬送方向Dにずらしながら、一枚の被成形材5に対して複数回のプレス成形を行うことにより、左縁部5e全体、右縁部5f全体を曲げ変形させる構成としたが、かかる構成には限定されない。即ち、凹曲面61aと凸曲面62aの長さ(搬送方向Dにおける寸法)を、左縁部5e又は右縁部5fの長さとほぼ同じ寸法(あるいは左縁部5e又は右縁部5fよりも長い寸法)とし、左縁部5e又は右縁部5fを1度のプレス成形で、一括して曲げ変形できるように構成しても良い。
以上の実施形態では、左縁部変形機構52A、右縁部変形機構52Bは、凹曲面61aを有する下金型61と、凸曲面62aを有する上金型62とによって、被成形材5を挟むことにより、プレス成形を行う構成としたが、縁部変形機構とは、かかるものには限定されない。例えば図14に示す左縁部変形機構80A、右縁部変形機構80Bのように、一対のロール、即ち、下ロール81と上ロール82によって被成形材5をロール成形する構成としても良い。即ち、下面5a側に当接する第一の当接体、上面5b側に当接する第二の当接体は、それぞれロール状としても良い。
図14において、左縁部変形機構80Aは、下ロール81と上ロール82を備えている。下ロール81は、外側に向かうに従い次第に外径が大きくなるように、また、外周面の縦断面形状が凹曲面状になるように形成されている。上ロール82は、下ロール81の上方に設けられており、外側に向かうに従い次第に外径が小さくなるように、また、外周面の縦断面形状が凸曲面状になるように形成されている。さらに、下ロール81、上ロール82は、それぞれ略水平方向に向けられた中心軸を中心として回転可能になっている。即ち、下ロール81の外周面と上ロール82の外周面との間に被成形材5(左縁部5e又は右縁部5f)を挟み、下ロール81と上ロール82によって被成形材5に対して圧力を与えながら、下ロール81と上ロール82を互いに反対方向に回転させることにより、被成形材5を下ロール81の外周面と上ロール82の外周面に沿って曲げ変形させながら、搬送方向Dに送り出すように構成されている。右縁部変形機構52Bは、左縁部変形機構52Aに対して実質的に左右対称な構成となっている。このような縁部変形機構を用いる場合も、C成形機制御部53において、縁部成形条件を好適に求めることができる。即ち、下ロール81と上ロール82によって被成形材5に対して与える圧力、被成形材5に対する下ロール81の位置、被成形材5に対する上ロール82の位置等を、好適に計算することが可能である。
以上の実施形態では、各被成形材5の化学成分、TMCP条件、寸法などの情報は、主制御部36(上位の制御コンピュータ)に記憶される構成とし、被成形材5の焼入れ性β、強度TSなどの情報は、C成形機制御部53(主制御部36に対する下位の制御コンピュータ)において計算されることにより得られるとしたが、かかる形態には限定されない。例えば各被成形材5の焼入れ性βは、主制御部36において計算させるようにしても良い。即ち、焼入れ性βの情報は、主制御部36から送信されることにより、C成形機制御部53に取得されるようにしても良い。TMCP条件の情報は、冷却部13からC成形機制御部53に直接送信しても良い。また、強度TSを主制御部36において計算させるようにしても良い。即ち、強度TSの情報(強度情報)は、主制御部36から送信されることにより、C成形機制御部53に取得されるようにしても良い。
さらに、被成形材5の強度の計算方法は、式(1)、(2)を用いるものには限定されない。例えば、金属学的数式モデルやニューラルネットワークを用いた計算方法等によって、被成形材5の材質、即ち、強度(降伏強度、引張強度等)を求めるようにしても良い(特開2005−315703号公報参照)。このような場合も、計算された強度から縁部成形条件を求めることができる。
さらに、縁部成形条件を求めるために用いる被成形材5の強度は、計算によって求める予測値(予測強度)には限定されず、実績値(測定値、実測強度)であっても良い。即ち、強度情報は、被成形材5の強度を実測することで得るようにしても良い。例えば、冷却部13による水冷後、C成形を行う前に、被成形材5(鋼板)の一部を、試験片として採取し、この試験片に対して物理的な特性試験(引張試験機を用いて行う引張試験等)を行うことにより、強度の実績値を測定することができる。このような方法で、各被成形材5の一枚ごとの強度の実績値をそれぞれ測定し、これらの実績値を、主制御部36又はC成形機制御部53に送信するようにしても良い。
また、以上の実施形態では、強度情報の強度とは引張強度であるとしたが、かかるものには限定されず、その他の機械的強度、例えば硬度(硬さ)などであっても良い。例えば上記の試験片(C成形を行う前に採取した試験片)に対して行う特性試験として、硬さ試験機を用いた硬さ試験(例えばビッカース硬さ試験など)を行うことによって、硬度の実績値を求めるようにしても良い。
本発明者らは、C成形機21によるピーキングの低減効果について検討した。先ず、複数の被成形材5について、式(1)、(2)に基づいて求めた強度の予測値TSと、被成形材5から採取した試験片に対して引張試験を行うことにより求めた引張強度の実績値とをそれぞれ比較した。その結果、図15に示すように、実績値に対する予測値TSの誤差(精度)、即ち、実績値−予測値TSの値は、±30MPa程度であった。
また、C成形におけるプレス圧力等の縁部成形条件を同一(被成形材5の引張強度が660MPaであるときにピーキング量pが0mmとなるような条件)とした状態で、複数の被成形材5をそれぞれC成形した後、U成形、O成形を行い、各被成形材5の強度(引張強度)の実績値とO成形後のピーキング量pとの関係を調べた。図16は、その結果を示している。なお、ピーキング量pは、図17に示すように、ピーキングが無い場合における突合せ部68の外面の位置を基準として求めた。即ち、被成形材5の内部空間における中央部Pから突合せ部68の外面までの距離Lから、ピーキング量pが0mmである場合における中央部Pから突合せ部68の外面までの距離L(被成形材5の外径の半分)を差し引いた値(p=L−L)とした。
図16の結果より、ピーキング量pは、被成形材5の強度に対してほぼ比例することがわかる。即ち、被成形材5の強度とピーキング量pとの関係は、図16において点線で示したグラフ線に従うものと推測される。また、図16から、例えば被成形材5の強度の予測値TSが660MPaであった場合に、この予測値TSに基づいて、ピーキング量pが0mmとなるような縁部成形条件を設定すると、実績値に対する予測値TSの誤差が±30MPa程度であれば、ピーキング量pを±0.9mm程度に、十分に小さく抑制できることがわかる。即ち、被成形材5の実際の強度が、予測値TSよりも30MPa程度大きい場合(約690MPaである場合)は、ピーキング量pは+0.9mm程度となり、被成形材5の実際の強度が、予測値TSよりも30MPa程度小さい場合(約630MPaである場合)は、ピーキング量pは−0.9mm程度となる。換言すれば、予測値TSの誤差に起因するピーキング量pのばらつきの範囲を、約1.8mm程度に抑制できるといえる。
(比較例)
ロットが同一の被成形材(同一の鋳片から得られた厚板)について、水冷停止温度Zを変動させて、被成形材5の強度(引張強度)の実績値を測定した。その結果、水冷停止温度Zのばらつきの範囲が約67℃程度である場合、実績値のばらつきの範囲は、約120MPa程度になった。この場合、予測値TSを用いずに、従来の方法でC成形を行うと(即ち、縁部成形条件を求める際に用いる被成形材の強度の設定値を、ロットが同一の被成形材について同一にしたままで縁部成形条件を求めると)、ピーキング量pのばらつきの範囲は、図16に示したグラフ線(点線)のような比例関係から、約3.6mm程度になると考えられる。
以上の結果より、上記の実施形態のように、予測値TSに基づいて縁部成形条件を設定する方法を用いることで、従来の縁部成形条件の設定方法を用いた場合に対して、ピーキング量pのばらつきの範囲を約50%程度(1.8mm/3.6mm×100)に低減できるといえる。
本発明は、例えばUO鋼管、UOE鋼管等を製造する際に用いられる鋼管製造設備及び鋼管製造方法に適用できる。
圧延設備と鋼管製造設備の概略を示した説明図である。 被成形材(鋼板)の平面図である。 被成形材(鋼板)の断面図である。 C成形機の概略斜視図である。 左縁部変形機構、右縁部変形機構の概略縦断面図である。 C成形工程を説明する説明図である。 C成形工程を説明する説明図である。 C成形工程を説明する説明図である。 C成形工程を説明する説明図である。 U成形された被成形材の断面図である。 O成形された被成形材の断面図である。 溶接後の突合せ部を示した断面図である。 下金型を被成形部分の先端部にのみ当接させる実施形態を示した断面図である。 ローラ成形を行う構成としたC成形機を示した説明図である。 被成形材の強度の予測値TSと実績値とを比較して示したグラフである。 被成形材の強度の実績値とピーキング量pとの関係を示したグラフである。 ピーキング量pを説明する説明図である。
符号の説明
2 圧延設備
3 鋼管製造設備
5 被成形材
5e 左縁部
5f 右縁部
13 冷却部
21 C成形機
22 U成形機
23 O成形機
36 主制御部
52A 左縁部変形機構
52B 右縁部変形機構
53 C成形機制御部
61 下金型
62 上金型

Claims (9)

  1. 鋼板を順次C成形、U成形、O成形することにより鋼管を製造する鋼管製造設備であって、
    前記C成形において鋼板の縁部を変形させる縁部変形機構と、
    前記縁部変形機構を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、各鋼板の強度情報を取得し、当該強度情報に基づいて、各鋼板に対応する縁部成形条件をそれぞれ求め、前記縁部成形条件に従って、前記縁部変形機構を制御し、
    前記強度情報は、鋼板の化学成分及び鋼板の圧延設備において用いられたTMCP条件に基づいて求められ、
    前記縁部変形機構は、前記各鋼板に対応する縁部成形条件に従って、各鋼板の縁部をそれぞれ変形させることを特徴とする、鋼管製造設備。
  2. 前記強度情報は、式(1)に基づいて求められることを特徴とする、請求項1に記載の鋼管製造設備。
    TS=aX +bX +cX
    +dY +eY +fY
    +gZ +hZ +iZ+j+kβ ・・・(1)
    (TS:引張強度、X:加熱温度、Y:水冷開始温度、Z:水冷停止温度、β:焼入れ性、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k:係数)
  3. 前記縁部変形機構は、前記鋼板の下面側に当接する下金型と、前記鋼板の上面側に当接する上金型とを備え、前記下金型と前記上金型によって前記鋼板の縁部をプレス成形することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼管製造設備。
  4. 前記縁部変形機構は、前記鋼板の下面側に当接する下ロールと、前記鋼板の上面側に当接する上ロールとを備え、前記下ロールと前記上ロールによって前記鋼板の縁部をロール成形することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鋼管製造設備。
  5. 鋼板を順次C成形、U成形、O成形することにより鋼管を製造する鋼管製造方法であって、
    各鋼板の化学成分及び各鋼板の圧延工程におけるTMCP条件に基づいて求められる強度情報を取得し、
    当該強度情報に基づいて、各鋼板に対応する縁部成形条件をそれぞれ求め、
    前記各鋼板に対応する縁部成形条件に従って、各鋼板の縁部をそれぞれ変形させることにより、各鋼板をC成形することを特徴とする、鋼管製造方法。
  6. 前記強度情報は、式(1)に基づいて求められることを特徴とする、請求項5に記載の鋼管製造方法。
    TS=aX +bX +cX
    +dY +eY +fY
    +gZ +hZ +iZ+j+kβ ・・・(1)
    (TS:引張強度、X:加熱温度、Y:水冷開始温度、Z:水冷停止温度、β:焼入れ性、a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k:係数)
  7. 前記縁部成形条件は、前記鋼板の縁部に与える圧力情報、及び、前記鋼板の縁部を変形させる縁部変形機構の前記鋼板に対する位置情報を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の鋼管製造方法。
  8. 鋼板をプレス成形によってC成形することを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の鋼管製造方法。
  9. 鋼板をロール成形によってC成形することを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の鋼管製造方法。
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