JP2023096784A - 正極活物質、正極活物質スラリー、正極、リチウムイオン二次電池、及び正極活物質の製造方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2023096784000001
【課題】容量特性及び電極抵抗特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極活物質、正極活物質スラリー、正極、リチウムイオン二次電池、及び正極活物質の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、前記コアの表面を少なくとも部分的に被覆する被覆部であって、ヨウ素及びホウ素を含む被覆部と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、正極活物質、正極活物質スラリー、正極、リチウムイオン二次電池、及び正極活物質の製造方法に関する。
モバイル機器の技術開発が進むのに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度及び電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウムイオン二次電池が市販化され、広く使用されている。現在、このようなリチウムイオン二次電池の高容量化を試みる研究が精力的に進められている。
このようなリチウムイオン二次電池の高容量化にあたり、例えばホウ素材料を原料とした被膜を電極活物質の表面に形成する技術が知られている。
特許6284542号公報 特開2017-152275号公報 特開2019-175872号公報
しかしながら、このような被膜を形成すると、電極抵抗特性が十分に得られない場合がある。したがって、優れた容量特性と電極抵抗特性とを両立することが望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、容量特性及び電極抵抗特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極活物質、正極活物質スラリー、正極、リチウムイオン二次電池、及び正極活物質の製造方法を提供することである。
本発明の一態様によると、リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、コアの表面を少なくとも部分的に被覆する被覆部であって、ヨウ素及びホウ素を含む被覆部と、を含む正極活物質が提供される。
本明細書において、「リチウム遷移金属酸化物」とは、リチウム及び遷移金属を含み、遷移金属-酸素結合を有する化合物を意味し、アルミニウムなどの典型金属元素やヨウ素など酸素以外の非金属元素を含有するものも含む。「被覆する」とは、対象の表面を少なくとも部分的に覆っていることを意味し、粒子表面に化学結合している場合も、化学結合せずに粒子表面を物理的に覆う場合も含む。例えば、活物質の粒子表面のX線光電子分光分析(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)においてヨウ素及びホウ素に由来するピークが検出されれば、「ヨウ素及びホウ素を含む被覆部が形成されている」と言える。
上記態様に係る正極活物質において、被覆部は、酸化数が+5以上+7以下のヨウ素を含み得る。
上記態様に係る正極活物質において、正極活物質のX線光電子分光分析によって観測されるI3d5/2のスペクトルは、622eV以上626eV以下にピークを有し得る。
上記態様に係る正極活物質において、100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対して、ヨウ素の含有量は、0.001質量部~5質量部であり得る。
上記態様に係る正極活物質において、100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対して、ホウ素の含有量は、0.001質量部~5質量部であり得る。
本発明の別の態様によると、上記態様に係る正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用の正極活物質スラリーが提供される。
本発明の別の態様によると、上記態様に係る正極活物質を含む正極活物質層が集電体上に形成された、リチウムイオン二次電池用の正極が提供される。
上記態様に係る正極において、正極活物質層は、カーボンナノチューブを含む導電剤をさらに含み得る。
本発明の別の態様によると、上記態様に係る正極を備える、リチウムイオン二次電池が提供される。
本発明の別の態様によると、リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素、及びホウ素を含む混合物を得ることと、混合物を焼成することと、を含む正極活物質の製造方法が提供される。
上記態様に係る正極活物質の製造方法は、混合物の原料として、ヨウ素を含有するヨウ素材料を添加することを含み得る。ヨウ素材料は、単体ヨウ素(I)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨードホルム(CHI)、四ヨウ化炭素(CI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)、ヨウ素酸(HIO)、ヨウ素酸リチウム(LiIO)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、ヨウ素酸カリウム(KIO)、ヨウ素酸アンモニウム(NHIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、オルト過ヨウ素酸(HIO)、過ヨウ素酸リチウム(LiIO)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、過ヨウ素酸カリウム(KIO)、酸化ヨウ素(IV)(I)、酸化ヨウ素(V)(I)、及び酸化ヨウ素(IV,V)(I)からなる群から選択された1以上を含み得る。本明細書において、「ヨウ素材料」とは、ヨウ素を含む任意の材料を意味する。
上記態様に係る正極活物質の製造方法において、ヨウ素材料は、単体ヨウ素(I)を含み得る。
上記態様に係る正極活物質の製造方法は、混合物の原料として、ホウ素を含有するホウ素材料を添加することを含み得る。ホウ素材料は、HBO、HBO、B、CB(OH)、(CO)B、[CH(CHO]B、C1319BO、C、及び(CO)Bからなる群から選択された1以上を含み得る。本明細書において、「ホウ素材料」とは、ホウ素を含む任意の材料を意味する。
上記態様に係る正極活物質の製造方法において、ホウ素材料は、ホウ酸(HBO)を含み得る。
上記態様に係る正極活物質の製造方法は、混合物を150℃以上500℃以下の焼成温度で焼成することを含み得る。
本発明によれば、容量特性及び電極抵抗特性に優れたリチウムイオン二次電池用の正極活物質、正極活物質スラリー、正極、リチウムイオン二次電池、及び正極活物質の製造方法を提供することができる。
実施例1-1、並びに、比較例1-1、比較例2-1、及び比較例3-1の正極活物質のXPSスペクトルの一部を示す。 実施例1-1、並びに、比較例1-1、比較例2-1、及び比較例3-1の正極活物質のXPSスペクトルの一部を示す。 実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4の1回目~50回目の充放電過程における電池容量変化の推移を示す。 実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4の1回目~200回目の充放電過程における直流抵抗変化の推移を示す。 実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2の1回目~50回目の充放電過程における電池容量変化の推移を示す。 実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2の1回目~200回目の充放電過程における直流抵抗変化の推移を示す。 参考例1の正極活物質のXPSスペクトルの一部を示す。
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
リチウムイオン二次電池の高容量化に伴って生じ得る電極抵抗特性の問題について、一例としてニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物を正極材料として用いるリチウムイオン二次電池を取り上げて説明する。
リチウムイオン二次電池の正極材料として、LiNiCoMnのようなリチウムニッケルコバルトマンガン三元系正極活物質において、組成中のニッケル量を増加させることで高容量化を図ることができることが知られている。実際、リチウムイオン二次電池のさらなる高容量化は常に市場から求められており、従来使用されてきたLiCoOに代わって、作動電圧3.0V~4.2Vの範囲で単位質量当たりの容量が大きいNiリッチの正極活物質の開発が活発に推進されている。しかしながら、リチウムニッケルコバルトマンガン三元系正極活物質では、Ni量が増加するにつれて高温時のガス発生や充電状態での安定性の低下などの問題が発生し、実電池への適用における大きな課題となっている。
このような課題に対し、ガス発生の抑制や安定したサイクル挙動を実現するために、正極活物質の粒子表面に被膜を形成する手法が提案されている。しかしながら、Ni量が大きいNiリッチの正極では、こうした被膜処理による抵抗成分の増加に大きく影響されてしまい、処理によっては放電容量やレート特性が低下するのみならずサイクル特性の劣化を招く場合もある。この点、特許文献1及び2に記載されるように、ホウ素ベースの被膜を形成する技術が知られているものの、Niリッチの正極に対する有効性は限定的なものに留まる。一方、特許文献3に記載されるように、ホウ素ベースの被膜に加えて別の被膜をさらに形成することも検討されている。しかしながら、被膜を重ねることによって電極抵抗が増加する点も実用上の課題となり得る。このように、現在使用もしくは開発される活物質において、優れた容量特性及び電極抵抗特性を両立させる被膜技術はごく限られているのが現状である。
本発明者は、リチウムイオン二次電池において、リチウム遷移金属酸化物を含む正極活物質を用いる際に、リチウム遷移金属酸化物を含むコアの表面上にヨウ素及びホウ素を含む被覆部を形成することにより、優れた容量特性及び電極抵抗特性を併せ持つリチウムイオン二次電池が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
[正極活物質]
一実施形態によれば、リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、コアの表面を少なくとも部分的に被覆する被覆部であって、ヨウ素及びホウ素を含む被覆部と、を含む、正極活物質が提供される。好ましくは、正極活物質は、リチウムイオン二次電池用の正極活物質である。
正極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出することができるリチウム遷移金属酸化物、ヨウ素、及びホウ素を含むものを用いることができる。正極活物質は、コア及び被覆部から形成されるコアシェル構造を有する粒子の形態であり得る。被覆部は、コアの全体を包んでもよく、コアの外面の一部のみをカバーしてもよい。被覆部は、全体として一続きであってもよく、互いに離れた複数の島状部分を有してもよい。被覆部は、単一のコアを被覆してもよく、2以上のコアを被覆してもよい。
(コア)
正極活物質のコアは、リチウム遷移金属酸化物を含む。例えば、コアは、リチウム遷移金属酸化物の粒子である。なお、コアは、リチウム遷移金属酸化物以外の材料を含んでもよい。コアの形状は特に限定されず、球体、直方体、多角形体など任意の形状であってよく、粒子形態も限定されない。例えば、コアは、単一粒子から形成されてもよく、一次粒子が凝集した二次粒子などの凝集体から形成されてもよい。コアの大きさは、特に限定されないが、例えば0.01μm以上30μm以下、0.1μm以上10μm以下などであってよい。
正極活物質のコアは、例えば、ニッケルを含有するリチウム遷移金属酸化物を含み、好ましくは、ニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物を含み得る。ここで、「ニッケルの含有率が高い」とは、遷移金属の総量を基準として50モル%以上のニッケルを含むことを意味する。上記のとおり、50モル%以上のニッケルを含むような高ニッケルのリチウム遷移金属酸化物は、電極抵抗の増加を抑制することが望ましい。このため、本実施形態に係る正極活物質を使用して電極抵抗特性を向上させる(すなわち、抵抗の増加率を低下させる)ことにより、リチウムイオン二次電池の高容量化と電極抵抗特性の改善との両立を図ることが可能となる。例えば、コアは、遷移金属の総量を基準として60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、又は90モル%以上のニッケルを含むリチウム遷移金属酸化物を含み得る。
(リチウム遷移金属酸化物)
リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnO、LiMn、LiMnなど);リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど);リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど);リチウム-銅系酸化物(例えば、LiCuOなど);リチウム-バナジウム系酸化物(例えば、LiVなど);リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-zMn(0<z<1)、LiMn2-zNi(0<z<2)など);リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-yCo(0<y<1)など);リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-zMn(0<z<1)、LiMn2-yCo(0<y<2)など);リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)、Li(NiCoMn)O(0<x<2、0<y<2、0<z<2、x+y+z=2)など);リチウム-ニッケル-コバルト-金属(M)酸化物(例えば、Li(NiCoMn)O(MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、及びMoからなる群より選択され、0<x<1、0<y<1、0<z<1、0<w<1、x+y+z+w=1)など);Li過剰固溶体正極(例えば、pLiMnO-(1-p)Li(NiCoMn)O(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1、0<p<1);これらの化合物中の遷移金属元素が部分的に他の1種又は2種以上の金属元素で置換された化合物などが挙げられる。正極活物質層は、これらのうちいずれか1つ又は2つ以上の化合物を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
特に、電池の高容量化に有効なニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物の例として、LiNiO(0.5≦a≦1.5);Li(NiCoMn)O(0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<z<0.5、x+y+z=1);Li(NiCoMn)O(0.7≦x<1、0<y<0.3、0<z<0.3、x+y+z=1);Li(NiCoMn)O(0.8≦x<1、0<y<0.2、0<z<0.2、x+y+z=1);Li(NiCoMn)O(0.9≦x<1、0<y<0.1、0<z<0.1、x+y+z=1);LiNi1-yCo(0.5≦a≦1.5、0<y≦0.5);LiNi1-zMn(0.5≦a≦1.5、0<z≦0.5);Li(NiCoMn)O(0.5≦a≦1.5、1≦x<2、0<y<1、0<z<1、x+y+z=2);Li(NiCo)O(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<w<0.5、x+y+w=1);Li(NiCoMn)O(Mは、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInからなる群より選択される1種又は2種以上の元素であり、0.5≦a≦1.5、0.5≦x<1、0<y<0.5、0<z<0.5、0<w<0.5、x+y+z+w=1);これらの化合物中の遷移金属原子が少なくとも部分的に他の1種又は2種以上の金属元素(例えば、Al、Fe、V、Cr、Ti、Ta、Mg、Mo、Zr、Zn、Ga、及びInのうち1種又は2種以上)で置換された化合物;これらの化合物中の酸素原子が部分的に他の1種又は2種以上の非金属元素(例えば、P、F、S、及びNのうち1種又は2種以上)で置換された化合物などが挙げられる。正極活物質は、これらのうち1つ又は2つ以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。また、同じ粒子内でも、内部と表層とで置換された濃度に分布があってもよい。また、粒子の表面に被覆されたものでもよい。例えば、金属酸化物、リチウム遷移金属酸化物、ポリマーなどで被覆された表面などがあげられるが、これに限定されるものではない。
特に、電池の容量特性及び安定性の向上の面で、LiNiO、Li(Ni0.5MnCo)O(y+z=0.5)、Li(Ni0.6MnCo)O(y+z=0.4)、Li(Ni0.7MnCo)O(y+z=0.3)、Li(Ni0.8MnCo)O(y+z=0.2)、Li(Ni0.8CoMnAl)O(y+z+w=0.2)、Li(Ni0.85CoMn)O(y+z=0.15)、Li(Ni0.85CoMnAl)O(y+z+w=0.15)、Li(Ni0.9CoMn)O(y+z=0.1)、Li(Ni0.9CoMnAl)O(y+z+w=0.1)、Li(Ni0.9CoMn)O(y+z=0.1)、Li(Ni0.95CoMnAl)O(y+z+w=0.05)などが好ましい。ここで、aの値はいずれも、例えば0.5≦a≦1.5であり、好ましくは1.0≦a≦1.5であり得る。
より具体的には、LiNiO、Li(Ni0.5Mn0.3Co0。2)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O、Li(Ni0.8Co0.1Mn0.05Al0.05)O、Li(Ni0.85Co0.10Mn0.05)O、Li(Ni0.85Co0.10Mn0.03Al0.02)O、Li(Ni0.9Co0.05Mn0.05)O2、Li(Ni0.9Co0.05Al0.05)O、Li(Ni0.95Co0.03Mn0.02)O、Li(Ni0.95Co0.03Al0.02)Oなどが好ましい。
(被覆部)
正極活物質の被覆部は、コアの表面の一部又は全部を被覆する。被覆部は、ヨウ素及びホウ素を含む。被覆部は、リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素材料、及びホウ素材料を混合して焼成することにより得られる。正極活物質中の被覆部は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアから独立して存在してもよいが、少なくとも部分的にコアを形成するリチウム遷移金属酸化物の粒子表面に化学的又は物理的に結合していてもよい。被覆部は、少なくとも部分的にリチウム遷移金属酸化物の粒子と接触していることが好ましい。被覆部は、少なくとも部分的にリチウム遷移金属酸化物の構造中に含まれてもよい。なお、被覆部の材料は、化合物として独立した化学種に限定されず、イオン、原子、原子団など任意の化学種であってよい。被覆部の厚さは、特に限定されないが、完全に被覆される場合や被膜層が厚い場合にはコア表面の電気伝導性が阻害されるため、0.1nm以上10nm以下の厚さが好ましく、3nm以上5nm以下の厚さがさらに好ましい。また、電気伝導性の低下を抑制するためには、粒子間を電気的に連結するカーボンナノチューブなどを用いることも有効である。
正極活物質中の被覆部の含有量は、例えば0.001質量%以上10.0質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以上0.2質量%以下である。被覆部の含有量が0.001質量%以上であれば、電池のサイクル特性や電極抵抗特性の改善が期待される。
(ヨウ素成分)
焼成後の正極活物質中の被覆部は、正の酸化数を有するヨウ素を含む。被覆部は、例えば+1以上+7以下の酸化数を有するヨウ素を含み、好ましくは+2以上+7以下の酸化数を有するヨウ素を含み、より好ましくは+5以上+7以下の酸化数を有するヨウ素を含み、さらに好ましくは+7の酸化数を有するヨウ素を含む。正の酸化数を有するヨウ素は、強い酸化力を有するものが多い。例えば、正の酸化数を有するヨウ素化合物としては、ヨウ素酸(HIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、オルト過ヨウ素酸(HIO)などのヨウ素のオキソ酸;ヨウ素酸リチウム(LiIO)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、ヨウ素酸カリウム(KIO)、ヨウ素酸アンモニウム(NHIO)、過ヨウ素酸リチウム(LiIO)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、過ヨウ素酸カリウム(KIO)などのヨウ素のオキソ酸塩;酸化ヨウ素(IV)(I)、酸化ヨウ素(V)(I)、酸化ヨウ素(IV,V)(I)などのヨウ素酸化物が挙げられる。被覆部は、過ヨウ素酸イオン又は過ヨウ素酸水素イオンを含んでもよい。過ヨウ素酸イオンとしてはメタ過ヨウ素酸イオンIO 、オルト過ヨウ素酸イオンIO 5-などが挙げられ、過ヨウ素酸水素イオンとしてはHIO 4-、HIO 3-、HIO 2-、HIO などが挙げられる。また、被覆部に含まれるヨウ素は、リチウム遷移金属酸化物の構成元素(リチウム、遷移金属、酸素など)やヨウ素と結合していてもよい。例えば、被覆部は、リチウム遷移金属酸化物の金属イオンと結合したヨウ素酸イオンIO 又は過ヨウ素酸イオンを含んでもよい。例えば、被覆部は、リチウム遷移金属酸化物などの金属カチオンと過ヨウ素酸イオンとの結合を含み、例えば金属カチオンと過ヨウ素酸イオンIO との結合を含み得る。
正極活物質において、100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対するヨウ素の含有量は、例えば、0.001質量部~5質量部である。ヨウ素の含有量が0.001質量部以上であれば、電池の電極抵抗特性やサイクル特性の改善が期待される。ヨウ素の含有量が5質量部以下であれば、過剰な被覆による副反応が抑制されると考えられる。100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対するヨウ素の含有量は、好ましくは0.005重量部以上2質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部以上1質量部以下であり、さらに好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下である。
(ホウ素成分)
焼成後の正極活物質中の被覆部は、+3の酸化数を有するホウ素を含む。例えば、被覆部に含まれるホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸塩、ポリホウ酸、ポリホウ酸塩、酸化ホウ素などが挙げられる。被覆部に含まれるホウ素は、リチウム遷移金属酸化物の構成元素(リチウム、遷移金属、酸素など)やヨウ素と結合していてもよい。例えば、被覆部は、リチウム遷移金属酸化物の金属イオンと結合したホウ酸イオン(本明細書では、BO 3-、HBO 2-、HBO を総称して「ホウ酸イオン」という。)を含んでもよい。例えば、被覆部は、リチウム遷移金属酸化物などの金属カチオンとホウ酸イオンとの結合を含み得る。例えば、被覆部は、メタホウ酸リチウム(LiBO)を含み得る。また、特許文献1では、ホウ酸が残存リチウムと反応してホウ酸リチウムを形成すると提唱されている。
正極活物質において、100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対するホウ素の含有量は、例えば、0.001質量部~5質量部である。ホウ素の含有量が0.001質量部以上であれば、電池の容量特性やサイクル特性の改善が期待される。ホウ素の含有量が5質量部以下であれば、過剰な被覆による副反応が抑制されると考えられる。100質量部のリチウム遷移金属酸化物に対するホウ素の含有量は、好ましくは0.01重量部以上3質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上2質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上1質量部以下である。
(正極活物質のXPSスペクトル)
正極活物質のX線光電子分光分析(XPS)によって観測されるスペクトルは、ヨウ素のI3d5/2電子に由来するピークを有する。-(CH-由来のC1sピークトップのエネルギーを284.6eVとして帯電補正を行った場合、I3d5/2のスペクトルは、例えば622eV以上626eV以下にピークを有する。ピークの位置は、好ましくは623eV以上625eV以下であり、より好ましくは623.5eV以上624.5eV以下である。ここで、「ピークの位置」とはピークの極大値の位置(エネルギー)を意味する。このピークは、正の酸化数を有するヨウ素に由来するものである。このピークは、例えば+1以上+7以下の酸化数を有するヨウ素に由来し、好ましくは+3以上+7以下の酸化数を有するヨウ素に由来し、より好ましくは+5以上+7以下の酸化数を有するヨウ素に由来し、さらに好ましくは+7の酸化数を有するヨウ素に由来する。
正極活物質のX線光電子分光分析(XPS)によって観測されるスペクトルは、ホウ素のB1s電子に由来するピークを有する。・・・-(CH-由来のC1sピークトップのエネルギーを284.6eVとして帯電補正を行った場合、ホウ素のB1s電子のスペクトルは、例えば188.5eV以上195.0eV以下にピークを有する。
被覆部は、以下のようなメカニズムにより、電池の容量特性及び電極抵抗特性を改善し、サイクル劣化を抑制し得るものと推測される。ただし、以下は単に発明の理解を補助するための例示的な推測であり、何ら本発明を限定するものではない。
リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素材料、及びホウ素材料が混合されて焼成されると、詳細は不明であるが、ヨウ素材料及びホウ素材料がリチウム遷移金属酸化物上でそれぞれ又は協働して化学反応を起こし、ヨウ素及びホウ素を含む被覆部を形成すると考えられる。正極活物質中の被覆部の作用についても詳細は不明であるが、このように生成した被覆部は、上記のとおり正の酸化数を有し電子吸引力が強いヨウ素を含み得る。過去の知見によると、固体電解質にLiIを混ぜる事により、電気陰性度の高いIに電子が引っ張られ、Liイオン伝導性が向上する事が知られている。これらのことから、充電過程において、被覆部によりLi伝導性が向上し正極活物質の酸化還元反応が促進されるものと推測される。その結果、充電過程に生じる電解液の分解といった副反応が抑制されて正極側の電極抵抗の上昇が抑えられ、結果として安定した長期サイクルがもたらされると推測される。
また、生成した被覆部は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアの表面を少なくとも部分的に被覆すると考えられる。この被覆部がリチウム遷移金属酸化物と電解液との化学反応を抑制することにより、副反応生成物の形成が抑えられ得るので、充放電を繰り返すにつれて正極活物質上に副反応生成物が形成されて電池反応が阻害されたり、電池の電気抵抗が上昇したり、といった悪影響が抑制され得るものと推測される。
後述の実施例によって示すように、ホウ素由来の被膜が形成されると電極抵抗が増加する傾向が見られたが、被覆部にヨウ素が含まれることによって電極抵抗の増加が抑制される傾向も確認された。このようなヨウ素の働きによって、被覆部による電池性能の向上及び安定化の効果を実現しながら、被覆部による電極抵抗の増加を抑制することができる。なお、ホウ素を含む被膜とヨウ素を含む被膜とが個別に形成されて独立して機能しているのか、ホウ素とヨウ素との間に何らかの相互作用が働いているのかは定かではない。
特にニッケルの含有率が高いリチウム遷移金属酸化物は、電極抵抗が増加すると、その影響を大きく受ける傾向がある。一般的に、リチウムコバルト酸化物などではAlなどの絶縁体の金属酸化物被膜が有効であるが、Ni含有層状酸化物では、そのような金属酸化物によって表面抵抗が上昇し電極抵抗が増大することで、十分な電池性能が得られない場合が多い。一方、ホウ素被膜の表面抵抗に対する影響は、金属酸化物と比較すると小さく、Ni含有層状酸化物材料でも有効であることが知られている。しかしながら、高ニッケル系のリチウム遷移金属酸化物では、ホウ素による僅かな抵抗増加でも影響を受け、十分な電池性能が得られない場合がある。この点、上記のようにホウ素及びヨウ素を含む被覆部を形成することにより、電極抵抗の影響を受けやすい高ニッケルのリチウム遷移金属酸化物を使用する場合においても、容量特性と電極抵抗特性とを両立させることができる。一般に高ニッケルのリチウム遷移金属酸化物を使用した電池は容量が大きくなる傾向があるので、電池の高容量化の点でも有利である。
[正極活物質の製造方法]
一実施形態によれば、リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素、及びホウ素を含む混合物を得ることと、得られた混合物を焼成することと、を含む、正極活物質の製造方法が提供される。
(1)混合
混合プロセスでは、少なくとも1種類以上のリチウム遷移金属酸化物と、ヨウ素材料と、ホウ素材料とを混合する。例えば、混合プロセスでは、リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素材料、及びホウ素材料を、いずれも固体の状態で混合し得る。例えば、粉末状のリチウム遷移金属酸化物、ヨウ素材料、及びホウ素材料を混合することにより、粉末状の混合物が得られる。以下、得られた混合物を「焼成前混合物」という。具体的な混合方法は特に限定されず、既知の任意の方法で行うことができる。混合ステップは、大気中で行われてもよく、不活性化雰囲気下などそれ以外の雰囲気下で行われてもよい。また、リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素材料、及びホウ素材料の他に任意の材料が添加されてもよい。原料を固体の状態で混合することにより、混合プロセスを簡便に行うことができ、コスト削減にもなり、大量生産に適している。
(ヨウ素材料)
ヨウ素材料は、正極活物質にヨウ素を導入するための原料である。ヨウ素材料は、リチウム遷移金属酸化物との混合が簡便である点で、常温で固体であるものが好ましい。例えば、ヨウ素材料は、単体ヨウ素(I)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨードホルム(CHI)、四ヨウ化炭素(CI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)、ヨウ素酸(HIO)、ヨウ素リチウム(LiIO)、ヨウ素ナトリウム(NaIO)、ヨウ素酸カリウム(KIO)、ヨウ素酸アンモニウム(NHIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、オルト過ヨウ素酸(HIO)、過ヨウ素酸リチウム(LiIO)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、過ヨウ素酸カリウム(KIO)、酸化ヨウ素(IV)(I)、酸化ヨウ素(V)(I)、及び酸化ヨウ素(IV,V)(I)からなる群から選択された1以上を含む。この他、ヨウ化金属やヨウ素含有有機化合物など、電池特性に大きな悪影響を及ぼすものでない限り、任意のヨウ素材料が使用可能である。なお、ヨウ素材料中のヨウ素の価数は特に限定されない。
(ホウ素材料)
ホウ素材料は、正極活物質にホウ素を導入するための原料である。ホウ素材料は、リチウム遷移金属酸化物との混合が簡便である点で、常温で固体であるものが好ましい。例えば、ホウ素材料は、HBO、HBO、B、LiBO、CB(OH)、(CO)B、[CH(CHO]B、C1319BO、C、及び(CO)Bからなる群から選択された1以上を含む。その他、金属ホウ化物など、電池特性に大きな悪影響を及ぼすものでない限り、任意のホウ素材料が使用可能である。なお、ホウ素材料中のホウ素の価数は特に限定されない。
混合プロセスにおけるリチウム遷移金属酸化物の添加量は、焼成前混合物の総質量を100質量部とした場合、例えば85質量部以上99.98質量部以下であり、好ましくは90質量部以上99.9質量部以下であり、より好ましくは95質量部以上99.5質量部以下である。
ヨウ素材料の添加量は、例えば0.001質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.01質量部以上4質量部以下であり、より好ましくは0.05質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.1質量部以上2質量部以下である。ヨウ素材料の添加量が0.001質量部以上であれば、電池の電極抵抗特性やサイクル特性の改善が期待される。ヨウ素材料の添加量が5質量部以下であれば、過剰な副反応が抑制されると考えられる。
ホウ素材料の添加量は、例えば0.01質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.05質量部以上4質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下であり、さらに好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。ホウ素材料の添加量が0.01質量部以上であれば、電池の容量特性やサイクル特性の改善が期待される。ホウ素材料の添加量が5質量部以下であれば、過剰な副反応が抑制されると考えられる。
(2)焼成
焼成プロセスでは、混合プロセスで得られた焼成前混合物の焼成を行うことにより、正極活物質を得る。焼成は、好ましくは酸素存在下で行われ、より好ましくは大気下で行われるが、それ以外の雰囲気下で行われてもよい。例えば、焼成は、窒素雰囲気やアルゴンなどの希ガス雰囲気といった不活性雰囲気下で行われてもよい。焼成を大気下で行うと、焼成ステップを簡便に行うことができ、コスト削減にもなり、大量生産に適している。
混合物を焼成する焼成温度は、例えば150℃以上500℃以下であり、好ましくは200℃以上450℃以下であり、より好ましくは250℃以上400℃以下であり、さらに好ましくは300℃以上350℃以下である。焼成温度が150℃以上であれば、ヨウ素材料及びホウ素材料の反応が促進されると考えられる。また、焼成温度が500℃以下であれば、過剰な副反応生成物の形成が抑制されると考えられる。また、混合物を焼成する焼成温度は、好ましくはヨウ素材料及びホウ素材料の融点以上であり、より好ましくはヨウ素材料及びホウ素材料の沸点以上である。
混合物が上記の焼成温度に保たれる焼成時間は、例えば1時間以上12時間以下であり、好ましくは1時間以上9時間以下であり、より好ましくは1.5時間以上6時間以下であり、さらに好ましくは2時間以上5時間以下である。焼成時間が1時間以上であれば、必要な範囲でヨウ素材料及びホウ素材料を反応させることができると考えられる。また、焼成時間が12時間以下であれば、過度に長時間の焼成を行わないことでコストを抑えられる。
[正極活物質スラリー]
一実施形態によれば、上記の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用の正極活物質スラリーが提供される。正極活物質スラリーは、例えば、上記の正極活物質、導電剤、バインダー、及び溶媒を含む。
正極活物質層に含まれる正極活物質の含有量は、正極活物質層の総質量に対して80質量%以上99.5質量%以下であり得る。正極活物質の含有量は、好ましくは85質量%以上98.5質量%以下であり得る。正極活物質の含有量が上記範囲内であれば、優れた容量特性を実現することが可能である。これに対し、正極活物質の含有量が上記範囲未満である場合には、正極の塗布量が増え、厚みが増加し、十分な体積エネルギー密度が達成できない可能性があり、上記範囲を上回る場合には、バインダー及び導電剤が不足し、その結果、電極の導電性及び接着力が不足して電池の性能が低下する可能性がある。
(導電剤)
導電剤は、化学変化を誘発しない電気伝導性材料であれば、特に制限されない。導電剤の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維などの炭素系材料;アルミニウム、スズ、ビスマス、シリコン、アンチモン、ニッケル、銅、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、モリブデン、タングステン、銀、金、ランタン、ルテニウム、白金、イリジウムなどの金属粉末や金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
後述の実施例で示されるように、導電剤としてカーボンナノチューブを使用すると、電極のインピーダンスを大きく低下させることができる。このため、正極活物質スラリーは、カーボンナノチューブを含むことが好ましい。
導電剤の含有量は、正極活物質層の総質量を基準として0.1質量%以上30質量%以下であり得る。導電剤の含有量は、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり得る。導電剤の含量が上記の範囲を満足するとき、十分な導電性を付与することができ、正極活物質の量を減少させないため電池容量を確保できる点で有利である。
(バインダー)
バインダーは、活物質と導電剤との結合や集電体との結合などを促進する成分として添加される。バインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、これらの種々の共重合体などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
バインダーの含有量は、正極活物質層の総質量を基準として0.1質量%以上30質量%以下であり得る。バインダーの含有量は、好ましくは0.5質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下であり得る。バインダー高分子の含量が上記の範囲を満足するとき、電池の容量特性低下を防止しながら、電極内の十分な接着力を付与することができる。
(溶媒)
正極活物質スラリーにおいて使用される溶媒は、一般に正極の製造に使用されるものであれば特に制限されない。溶媒の例としては、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミン系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、アセト酸メチルなどのエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さや製造収率を考慮して、正極活物質、導電剤、及びバインダーを溶解又は分散させるとともに、正極集電体への塗布時に優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有する程度であれば十分である。
[正極活物質スラリーの製造方法]
正極活物質スラリーは、上記の正極活物質に、導電剤、バインダー、溶媒などを添加して混合することによって得られる。必要に応じて、分散剤や増粘剤など他の添加剤を添加してもよい。
[正極]
一実施形態によれば、上記の正極活物質を含む正極活物質層が集電体上に形成された、リチウムイオン二次電池用の正極が提供される。すなわち、正極は、正極集電体及び当該正極集電体の一面上又は両面上に形成された正極活物質層を含む。正極活物質層は、正極集電体の面全体に形成されてもよく、一部のみに形成されてもよい。例えば、正極は、電解液を含むリチウムイオン二次電池用の正極である。
(正極集電体)
正極に使用される正極集電体は、電気化学的に安定に使用でき、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、正極集電体として、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;又はこれらの合金であってもよく、これらの組み合わせからなる1種又は2種以上の混合物であってもよい。また、焼成炭素や、アルミニウム又はステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどであってもよい。
正極集電体は、3μm以上500μm以下の厚さを有し得る。正極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質との接着力を高めることもできる。正極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を有し得る。
(正極活物質層)
正極活物質層は、上記の正極活物質、導電剤、及びバインダーを含む。正極活物質層は、例えば1nm以上100μm以下、10nm以上10μm以下、又は100nm以上1μm以下の厚さを有し得る。正極活物質層は、正極集電体上に直接形成されてもよく、別の層を間に挟んで形成されてもよい。また、正極活物質層の上に保護膜など別の層がさらに形成されてもよい。
正極活物質層は、カーボンナノチューブを含む導電剤を含み得る。これにより、電極のインピーダンスを大きく低下させることができるので、電極抵抗特性が向上し得る。
[正極の製造方法]
正極活物質スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥及び圧延することにより、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極が製造され得る。
他の方法として、例えば、上記の正極活物質スラリーを別の支持体上にキャストした後、その支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで正極が製造されてもよい。また、その他の任意の方法を用いて正極活物質層が正極集電体上に形成されてもよい。
[リチウムイオン二次電池]
一実施形態によれば、上記の正極を備えるリチウムイオン二次電池が提供される。例えば、リチウムイオン二次電池は、上記の正極、負極、正極と負極との間に介在するセパレータ、及び非水電解質を含む。なお、非水電解質として固体電解質を用いる場合には、セパレータを省略してもよい。リチウムイオン二次電池は、正極、負極、及びセパレータから構成される電極組立体を収容する電池ケース、並びに電池ケースを密封する密封部材を選択的に含み得る。
[負極]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、負極は、負極集電体及び当該負極集電体の一面上又は両面上に形成された負極活物質層を含む。負極活物質層は、負極集電体の面全体に形成されてもよく、一部のみに形成されてもよい。
(負極集電体)
負極に使用される負極集電体は、電気化学的に安定に使用でき、かつ、導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、負極集電体として、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅又はステンレス鋼の表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの;アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。
負極集電体は、3μm以上500μm以下の厚さを有し得る。負極集電体の表面上に微細な凹凸を形成して負極活物質との接着力を高めることもできる。負極集電体は、例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態を有し得る。
(負極活物質層)
負極活物質層は、負極活物質、バインダー、及び導電剤を含む。負極活物質層は、例えば1nm以上100μm以下、10nm以上10μm以下、又は100nm以上1μm以下の厚さを有し得る。負極活物質層は、負極集電体上に直接形成されてもよく、別の層を間に挟んで形成されてもよい。また、負極活物質層の上に保護膜など別の層がさらに形成されてもよい。
負極活物質層は、例えば、負極活物質、バインダー、及び導電剤の混合物が溶媒中に溶解又は分散した負極活物質スラリーを負極集電体に塗布した後、乾燥及び圧延することにより形成され得る。上記混合物は、必要に応じて、さらに分散剤や充填材その他の任意の添加剤を含み得る。
(負極活物質)
負極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入(インターカレーション)及び脱離(デインターカレーション)が可能な化合物が使用できる。負極活物質の例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;珪素粉末、アモルファス珪素、珪素ナノファイバー、珪素ナノワイヤーなどの珪素質材料;珪素合金、珪素酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(リチウムやマグネシウムなど)がドープされた珪素酸化物などの珪素化合物;Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Sn合金、Al合金など、リチウムと合金化可能な金属質材料;SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物など、リチウムのドープ及び脱ドープが可能な金属酸化物;珪素質材料と炭素質材料との複合体やSn-C複合体などの複合物などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。なお、炭素質材料は、低結晶性炭素や高結晶性炭素などのいずれが用いられてもよい。低結晶性炭素としては、ソフトカーボン及びハードカーボンが代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状、又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛、熱分解炭素、メソフェーズピッチ系炭素繊維、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ、石油・石炭系コークスなどの高温焼成炭素が代表的である。
負極活物質は、負極活物質層の全質量を基準に80質量%以上99質量%以下で含まれ得る。
(バインダー及び導電剤)
負極活物質スラリーに使用されるバインダー及び導電剤の種類及び含有量は、正極について説明したものと同様であり得る。
(溶媒)
負極活物質スラリーにおいて使用される溶媒は、一般に負極の製造に使用されるものであれば特に制限されない。溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、イソプロピルアルコール、アセトン、水などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
[負極の製造方法]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池用の負極の製造方法は、負極活物質を、必要に応じてバインダー、導電剤などとともに溶媒に溶解又は分散させることにより負極活物質スラリーを得るステップと、正極の製造方法と同様に負極活物質スラリーを負極集電体上に塗布するなどして負極活物質層を負極集電体上に形成することにより負極を得るステップと、を含み得る。
[セパレータ]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、セパレータは、負極と正極とを分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常リチウムイオン二次電池でセパレータとして使用されるものであれば特に制限なく使用可能である。特に、電解質のイオン移動に対する抵抗が小さく、電解質の含湿能に優れたものが好ましい。例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体、エチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子から製造された多孔性高分子フィルム、又はこれらの2層以上の積層構造体がセパレータとして使用され得る。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維やポリエチレンテレフタレート繊維などから製造された不織布も使用され得る。また、耐熱性又は機械的強度確保のためにセラミック成分又は高分子物質がコーティングされたセパレータが用いられてもよい。
[非水電解質]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池において、非水電解質は、リチウムイオン二次電池の製造に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、固体電解質も使用可能である。
非水電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができ、さらに必要に応じて電解質添加剤を含むことができる。以下、液体電解質を「電解液」ともいう。
有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たせるものであれば、特に制限なく使用可能である。有機溶媒の例としては、メチルアセテート、エチルアセテート、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトンなどのエステル系溶媒;ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、フルオロベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(RはC2からC20の直鎖状、分岐状又は環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環又はエーテル結合を含んでよい)などのニトリル系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン系溶媒;スルホラン系溶媒などが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。特に、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充電/放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合して用いると、優れた電解質性能を示し得る。
リチウム塩は、リチウムイオン二次電池で使用されるリチウムイオンを提供可能な化合物であれば、特に制限なく使用可能である。リチウム塩の例としては、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiIまたはLiB(Cなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。当該リチウム塩は、例えば電解質に0.1mol/L以上2mol/L以下の濃度で含まれ得る。リチウム塩の濃度が当該範囲に含まれる場合、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動できる。
電解質添加剤は、電池寿命特性の向上、電池容量減少の抑制及び電池放電容量の向上などを目的として、必要に応じて使用可能である。電解質添加剤の例としては、ビニレンカーボネート(VC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)やジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)などのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グリム、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが挙げられ、これらのうち1種又は2種以上の混合物が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。当該電解質添加剤は、例えば、電解質の総質量に対して0.1質量%以上15質量%以下で含まれ得る。
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上記のように製造した正極と上記のように製造した負極との間にセパレータ(例えば分離膜)及び電解液を介在させることにより製造することができる。より具体的には、正極と負極との間にセパレータを配置して電極組立体を形成し、当該電極組立体を円筒形電池ケースや角形電池ケースなどの電池ケースに入れた後、電解質を注入して製造することができる。あるいは、上記電極組立体を積層した後、これを電解質に含浸させて得られた結果物を電池ケースに入れて密封して製造することもできる。
上記の電池ケースは、当分野で通常用いられるものが採択され得る。電池ケースの形状は、例えば、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)形またはコイン(coin)形などであり得る。
実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、小型デバイスの電源として用いられ得るだけでなく、多数の電池セルなどを含む中大型電池モジュールの単位電池としても用いられ得る。このような中大型デバイスの好ましい例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電力貯蔵用システムなどを挙げることができるが、これらのみに限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明についてさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下に記載されるメカニズムは、単に発明の理解を補助するための例示的な推測であり、何ら本発明を限定するものではない。
[実施例1-1]
(ヨウ素及びホウ酸の添加)
LiNi0.90Co0.07Mn0.03(以下、「リチウム遷移金属酸化物」ともいう)粉末100質量部に対し、1.0質量部の単体ヨウ素(I;富士フイルム和光純薬製)粉末と、0.3質量部のホウ酸(HBO;富士フイルム和光純薬製)とを添加して、プラスチックボトルに封入した。このプラスチックボトルを手に持って約1分間上下に振って内容物を混合し、混合物を得た。
(焼成)
得られた混合物を大気下で350℃まで昇温し、350℃で5時間保持して焼成し、室温まで降温して正極活物質を得た。
(正極活物質スラリーの製造)
次いで、96.5質量部の上記正極活物質に、導電材として1.5質量部のカーボンブラック、バインダーとして2.0質量部のポリフッ化ビニリデン(PVDF)を、溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とともに添加して混合し、正極活物質スラリーを得た。
(正極シートの製造)
次いで、厚さ20μmのアルミニウム箔に対し、得られた正極活物質スラリーを約70μmの厚さとなるように塗布し、130℃で乾燥して、正極シートを得た。
(電解液の製造)
エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びジエチルカーボネートを体積比で1:2:1となるように混合し、ここにLiPFを1mol/Lの濃度で溶解させるとともに2.0質量%のビニレンカーボネート(VC)を添加して、電解液を得た。
(コインセル電池の製造)
得られた正極シートを直径13mmの円形に打ち抜き、コインセル用の正極を得た。得られた正極、厚さ0.3mmの金属リチウムの負極、及び上記電解液を使用して、CR2016型のコインセル電池を作製した。
(モノセル電池の製造)
コインセルとは別に、上記のように得られた正極シートを角形に打ち抜いてモノセル用の正極とし、対応する大きさの黒鉛を負極とし、上記電解液を使用して、モノセル電池を作製した。
[実施例1-2]
導電材として、1.5質量部のカーボンブラックの代わりに1.5質量部のカーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物を使用した点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[実施例2]
ホウ酸の添加量を0.5質量部とした点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例1-1]
ヨウ素及びホウ酸を添加する工程及び焼成工程を省略した点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。すなわち、ヨウ素及びホウ酸を添加せず、LiNi0.90Co0.07Mn0.03をそのまま正極活物質として使用した。
[比較例1-2]
導電材として、1.5質量部のカーボンブラックの代わりに1.5質量部のカーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物を使用した点を除き、比較例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例2-1]
1.0質量部のヨウ素のみを添加し、ホウ酸を添加しなかった点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例2-2]
導電材として、1.5質量部のカーボンブラックの代わりに1.5質量部のカーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物を使用した点を除き、比較例2-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例3-1]
0.3質量部のホウ酸のみを添加し、ヨウ素を添加しなかった点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例3-2]
導電材として、1.5質量部のカーボンブラックの代わりに1.5質量部のカーボンブラックとカーボンナノチューブとの混合物を使用した点を除き、比較例3-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
[比較例4]
0.5質量部のホウ酸のみを添加し、ヨウ素を添加しなかった点を除き、実施例1-1と同様にして、コインセル電池及びモノセル電池を製造した。
以上の実施例及び比較例の製造条件を表1にまとめた。正極活物質、導電剤、及びバインダーの添加量を質量部で示しており、導電剤及びバインダーについては、96.5質量部の正極活物質に対する質量部の値を示す。
Figure 2023096784000002
[評価例1:正極活物質の蛍光X線分析による元素分析]
各実施例及び各比較例で得られた正極活物質について、蛍光X線分析(XRF)による元素分析を行った。蛍光X線装置は走査型蛍光X線分析装置ZSX Primus II (リガク製)を用いた。蛍光X線分析対象の試料は、正極活物質スラリーを調製する前の固体状態の正極活物質である。被膜処理を行っていない比較例1-1の値をベースラインとして、実施例1-1及び実施例2の値から差し引いて得られた値を、各試料のヨウ素及びホウ素の含有量として下記表2に示す。なお、一般に蛍光X線分析ではホウ素の感度が低いため、ホウ素の含有量の値は参考値である。
Figure 2023096784000003
[評価例2:正極活物質のX線光電子分光(XPS)測定]
実施例1-1及び比較例1-1で得られた正極活物質について、X線光電子分光(XPS)を用いた測定を行った。分析対象の試料は、焼成後、正極活物質スラリーを調製する前の固体状態の正極活物質である。-(CH-由来のC1sピークトップのエネルギーを284.6eVとして帯電補正を行った。
図1は、実施例1-1(実線)及び比較例1-1(点線)の正極活物質のXPSスペクトルの一部である。図1に示すように、実施例1-1の正極活物質では、622eV~626eVの範囲に、624eV近傍にピークトップを有するヨウ素の3d5/2電子由来のピークが観測されたのに対し、比較例1の正極活物質ではピークが観測されなかった。このピーク位置は、酸化数が+5のヨウ素を含むヨウ素酸ナトリウム(NaIO)やヨウ素酸リチウム(LiIO)、酸化数が+7のヨウ素を含む過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)や過ヨウ素酸リチウム(LiIO)などのピーク位置に近い。このため、正極活物質は、少なくとも部分的に正の酸化数を有するヨウ素を含むと推測される。より具体的には、正極活物質中のヨウ素は、少なくとも部分的にヨウ素酸イオン及び/又は過ヨウ素酸イオンの形態であると推測される。なお、実施例1-1では酸化数が0又は-1のヨウ素に由来する618eV~620eV付近のピークは観測されなかった。
ホウ素については、図2に示すように、実施例1-1の正極活物質では、195.0eV~188.5eVの範囲に、191.5eV近傍にピークトップを有するホウ素のB1s電子由来のピークが観測されたのに対し、比較例1の正極活物質ではピークが観測されなかった。このピーク位置は、メタホウ酸リチウム(LiBO)のピーク位置に近い。このため、正極活物質は、少なくとも部分的に3価を含むと推測される。
[評価例3-1:初期充放電特性]
各実施例及び各比較例により製造されたコインセル電池に対し、25℃又は45℃に保たれた恒温槽中で、充電上限電圧を4.25V、放電下限電圧を3Vとして、充電0.3C及び放電0.3Cの電流レートで充放電過程を繰り返した。1回目の充放電過程における充電容量及び放電容量を測定した。
次式のとおり、1回目の充放電過程における充電容量を正極活物質粉末の質量で割った値を「初期充電容量」として定義する。1回目の充放電過程における放電容量を正極活物質粉末の質量で割った値を「初期放電容量」として定義する。1回目の充放電過程における放電容量と充電容量との比を「初期効率」として定義する。測定した充電容量及び放電容量から、25℃における初期充電容量、初期放電容量、及び初期効率、並びに45℃における初期放電容量を算出した。
Figure 2023096784000004
Figure 2023096784000005
Figure 2023096784000006
[評価例3-2:直流抵抗(DCR)特性]
各実施例及び各比較例により製造されたコインセル電池について、1サイクル目の充電が完了した状態及び30サイクル目の充電が完了した状態において、直流抵抗(DCR:Direct Current Resistance)の値を測定した。具体的には、直流抵抗の値は、充電過程が完了した満充電状態の後、放電開始直後から60秒間、所定の間隔で電圧値を取得して得られた放電曲線を線形近似した直線の傾きから算出した。1回目の充電完了後の直流抵抗を「初期直流抵抗」として定義する。また、次式で定義される直流抵抗比を算出した。
Figure 2023096784000007
(カーボンナノチューブを添加しなかった場合の結果)
実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4について、評価例3-1及び評価例3-2の評価結果を表3に示す。表3には、評価結果として、25℃における初期充電容量、初期放電容量、及び初期効率、45℃における初期放電容量、並びに、初期直流抵抗及び直流抵抗比を示す。ただし、表3では、比較のために、実際の値を比較例1-1の対応する値で割った相対値を記載する。「ヨウ素」及び「ホウ酸」欄には、リチウム遷移金属酸化物100質量部に対して添加されたヨウ素及びホウ酸の質量部の値をそれぞれ記載した。
Figure 2023096784000008
表3に示すように、初期放電容量及び初期効率については、ヨウ素のみを添加した比較例2-1や、0.3質量部のホウ酸のみを添加した比較例3-1では、ヨウ素及びホウ酸を添加しなかった比較例1-1に比べて改善が見られなかった。0.5質量部のホウ酸のみを添加した比較例4では、比較例1-1に対して僅かに改善が見られた。一方、ヨウ素及びホウ酸を添加した実施例1-1及び実施例2では、初期放電容量及び初期効率が比較例4よりも大きく改善された。
表3に示すように、初期直流抵抗については、ホウ酸を添加した比較例3-1及び比較例4では初期直流抵抗が大きく増加したのに対し、ヨウ素及びホウ酸を添加した実施例1-1及び実施例2では、比較例3-1及び比較例4に比べて初期直流抵抗の増加が抑制された。特に実施例1-1においては、ヨウ素のみを添加した比較例2-1と比較しても、初期直流抵抗の増加が抑制され、実施例2においても、直流抵抗の増加が比較例2-1と同程度に抑制された。
(カーボンナノチューブを添加した場合の結果)
実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2について、評価例3-1及び評価例3-2の評価結果を表4に示す。表4には、評価結果として、25℃における初期充電容量、初期放電容量、及び初期効率、45℃における初期放電容量、並びに、初期直流抵抗及び直流抵抗比を示す。ただし、表4では、比較のために、実際の値を比較例1-2の対応する値で除した相対値を記載する。「ヨウ素」及び「ホウ酸」欄には、リチウム遷移金属酸化物100質量部に対して添加されたヨウ素及びホウ酸の質量部の値をそれぞれ記載した。
Figure 2023096784000009
表4に示すように、初期放電容量及び初期効率については、ヨウ素のみを添加した比較例2-2や、ホウ酸のみを添加した比較例3-2では、ヨウ素及びホウ酸を添加しなかった比較例1-1に比べて一定の改善が見られた。一方、ヨウ素及びホウ酸を添加した実施例1-2では、初期放電容量及び初期効率が比較例2-2及び比較例3-2よりも大きく改善された。
表4に示すように、初期直流抵抗については、ホウ酸を添加した比較例3-2では初期直流抵抗が大きく増加したのに対し、ヨウ素及びホウ酸を添加した実施例1-2では、比較例3-2に比べて初期直流抵抗の増加が抑制された。また、実施例1-2は、ヨウ素のみを添加した比較例2-1と比較しても、初期直流抵抗の増加が抑制された。
評価例3-1及び評価例3-2の結果から、ホウ酸を添加すると初期容量、初期効率、及び初期直流抵抗が増加する傾向が見られ、ヨウ素を添加するとホウ酸ほどには初期直流抵抗が増加しない傾向が見られた。一方、ヨウ素及びホウ酸の両方を添加すると、初期直流抵抗の増加を抑制しながら初期容量及び初期効率を増加させることができた。ヨウ素及びホウ酸を添加した場合の初期直流抵抗がヨウ素のみを添加した場合の初期直流抵抗より小さいことから、単にホウ酸による直流抵抗の増加がヨウ素の添加で抑制されているだけではないことが示唆された。すなわち、ヨウ素及びホウ酸の両方を添加することにより、容量特性及び抵抗特性の両面において、ヨウ素及びホウ酸のいずれかを単独で使用した場合よりも優れた特性を示す正極活物質が得られた。
[評価例4-1:容量維持率]
各実施例及び各比較例により製造されたモノセル電池に対し、25℃において、充電0.1C及び放電0.1Cの電流レートでエージングを行った。次いで、45℃に保たれた恒温槽中で、充電上限電圧を4.2V、放電下限電圧を2.5Vとして、充電0.3C及び放電0.3Cの電流レートで充放電過程を繰り返した。充放電過程の各サイクルにおける放電容量から、次式で定義されるn回目の繰り返し充放電過程における容量維持率を算出した。
Figure 2023096784000010
[評価例4-2:直線抵抗増加率]
評価例3-2と同様にして、充放電過程の各サイクルにおけるモノセル電池の直流抵抗の値を測定した。測定した直流抵抗の値から、n回目の繰り返し充放電過程における直線抵抗増加率を算出した。実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4についての直線抵抗増加率は、次式で定義される。各実施例及び各比較例の直線抵抗の変化を比較しやすくするために、比較例1-1における299サイクル目の直線抵抗増加率を基準として規格化を行った。
Figure 2023096784000011
実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2についての直線抵抗増加率は、次式で定義される。各実施例及び各比較例の直線抵抗の変化を比較しやすくするために、比較例1-2における299サイクル目の直線抵抗増加率を基準として規格化を行った。
Figure 2023096784000012
(カーボンナノチューブを添加しなかった場合の結果)
図3は、実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4について、上で定義した容量維持率の値を充放電サイクルの回数に対してプロットし、1回目~50回目の充放電過程における電池容量変化の推移を示した図である。各実施例及び各比較例について、1サイクル目の放電容量を100%とした。電池容量の劣化は、比較例3-1及び比較例4では比較的大きく、実施例1-1、実施例2、及び比較例2-1では比較的小さかった。比較例1-1及び比較例3-1では、サイクル数に対して容量維持率が大きく変動するガタつきが見られた。図3では、ガタつきの様子がわかりやすいように1サイクル目~50サイクル目を拡大して示している。
図4は、実施例1-1及び実施例2、並びに、比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1、及び比較例4について、上で定義した直線抵抗増加率の値を充放電サイクルの回数に対してプロットし、1回目~200回目の充放電過程における電池の直線抵抗の変化の推移を示した図である。いずれの実施例及び比較例においても、充放電過程を繰り返すにつれて直線抵抗の値が増加した。直線抵抗の増加率を比較すると、実施例1-1は最も小さい直線抵抗増加率を示し、実施例2は次に小さな直線抵抗増加率を示した。一方、比較例1-1は、最も大きい直線抵抗増加率を示した。
(カーボンナノチューブを添加した場合の結果)
図5は、実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2について、上で定義した容量維持率の値を充放電サイクルの回数に対してプロットし、1回目~50回目の充放電過程における電池容量変化の推移を示した図である。各実施例及び各比較例について、1サイクル目の放電容量を100%とした。電池容量の劣化は、比較例1-2及び比較例3-2では比較的大きく、実施例1-2及び比較例2-2では比較的小さかった。比較例1-2及び比較例3-2では、サイクル数に対して容量維持率が大きく変動するガタつきが見られた。
図6は、実施例1-2、並びに、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2について、上で定義した直線抵抗増加率の値を充放電サイクルの回数に対してプロットし、1回目~200回目の充放電過程における電池の直線抵抗の変化の推移を示した図である。図4と同様に、いずれの実施例及び比較例においても、充放電過程を繰り返すにつれて直線抵抗の値が増加した。直線抵抗の増加率を比較すると、実施例1-2は最も小さい直線抵抗増加率を示し、比較例1-2は最も大きい直線抵抗増加率を示した。
[評価例5:繰り返し充放電後のインピーダンス]
実施例1-1、実施例1-2、並びに、比較例1-1、比較例1-2、比較例2-1、比較例2-2、比較例3-1、及び比較例3-2により製造されたモノセル電池について、評価例4における充放電繰り返し試験における1サイクル目の充電が完了した状態及び299サイクル目の充電が完了した状態において、インピーダンスアナライザを使用して、モノセル電池のインピーダンスを測定した。得られたコールコールプロットにおいて高周波数側(1000000Hz~100Hz)に現れた負極側インピーダンス成分から、負極側のインピーダンスを算出した。また、低周波数側(100Hz~0.01Hz)に現れた正極側インピーダンス成分から、正極側のインピーダンスを算出した。結果を表5に示す。表5において、インピーダンスは、次式のように比較例1-1の1サイクル目又は299サイクル目におけるインピーダンスの値に対する相対値(相対インピーダンス)として示した。なお、「ヨウ素、ホウ素」欄には、ヨウ素のみを添加した例では「I」、ホウ素のみを添加した例では「B」、ヨウ素及びホウ素を添加した例では「I、B」、ヨウ素及びホウ素のいずれも添加しなかった例では「-」と記載した。
Figure 2023096784000013
Figure 2023096784000014
まず、導電材としてカーボンナノチューブを使用していない実施例1-1、比較例1-1、比較例2-1、及び比較例3-1について検討する。ヨウ素及びホウ素を添加していない比較例1-1と、ヨウ素のみを添加した比較例2-1とを比較すると、1回目充電後の初期インピーダンスは、ヨウ素添加によって大きく変化しないが、充放電サイクルを繰り返した後は低周波側のインピーダンスが著しく低下した。一方、ヨウ素及びホウ素を添加していない比較例1-1と、ホウ素のみを添加した比較例3-1とを比較すると、1回目充電後の初期インピーダンスは、ホウ素添加によって低周波側で大きく増加するが、充放電サイクルを繰り返した後は、高低周波側のインピーダンスが著しく低下し、低周波側のインピーダンスも比較例1-1と同等程度の値まで低下した。このように、ヨウ素を添加すると、低周波側(正極側)のインピーダンスを低下させる効果があり、ホウ素を添加すると、高周波側(負極側)のインピーダンスを低下させる効果があることが示唆された。ヨウ素及びホウ素を添加した実施例1-1では、低周波側(正極側)のインピーダンスを低下させる効果と、高周波側(負極側)のインピーダンスを低下させる効果とを両立させることができた。また、実施例1-1では、ホウ素を添加することによる初期インピーダンスの低周波側の大きな増加を抑制することができた。
次いで、導電材としてカーボンナノチューブを使用した実施例1-2、比較例1-2、比較例2-2、及び比較例3-2を比較すると、全体的にカーボンナノチューブを使用しなかった場合と同様の傾向が確認された。また、カーボンナノチューブの有無で相違する実施例1-1及び実施例1-2を比較すると、カーボンナノチューブを使用することによって、充放電サイクル前及び充放電サイクル後の両方において、高周波側及び低周波側の両方でインピーダンスの低下が確認された。
[参考例1]
図7は、オルト過ヨウ素酸HIOを被膜原料としてリチウム遷移金属酸化物と混合し、350℃で5時間焼成して得られた焼成物のI3d2/5のXPSスペクトルである。図7から、ヨウ素系被膜材料としてHIOを用いた場合も、ヨウ素系被膜材料として単体ヨウ素を用いた実施例1-1と同様のスペクトルが得られることを確認した。なお、オルト過ヨウ素酸HIOは132℃で融解し、さらに脱水が始まりメタ過ヨウ素酸HIOが生成する。また、IやIなどの酸化ヨウ素(V)は、275℃以上で酸素とヨウ素とに分解する。これらの知見から、被膜原料におけるヨウ素の価数にかかわらず(すなわち、被膜原料としてメタ過ヨウ素酸HIO、I、Iなどを用いた場合であっても)、リチウム遷移金属酸化物と混合して焼成した後のヨウ素の酸化状態は、単体ヨウ素を用いた実施例1-1と同様であると推測される。

Claims (15)

  1. リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、
    前記コアの表面を少なくとも部分的に被覆する被覆部であって、ヨウ素及びホウ素を含む被覆部と、
    を含む、正極活物質。
  2. 前記被覆部は、酸化数が+5以上+7以下のヨウ素を含む、
    請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記正極活物質のX線光電子分光分析によって観測されるI3d5/2のスペクトルが、622eV以上626eV以下にピークを有する、
    請求項1に記載の正極活物質。
  4. 100質量部の前記リチウム遷移金属酸化物に対して、前記ヨウ素の含有量は、0.001質量部~5質量部である、
    請求項1に記載の正極活物質。
  5. 100質量部の前記リチウム遷移金属酸化物に対して、前記ホウ素の含有量は、0.001質量部~5質量部である、
    請求項1に記載の正極活物質。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、リチウムイオン二次電池用の正極活物質スラリー。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極活物質層が集電体上に形成された、リチウムイオン二次電池用の正極。
  8. 前記正極活物質層は、カーボンナノチューブを含む導電剤をさらに含む、
    請求項7に記載の正極。
  9. 請求項7又は8に記載の正極を備える、リチウムイオン二次電池。
  10. 正極活物質の製造方法であって、
    リチウム遷移金属酸化物、ヨウ素、及びホウ素を含む混合物を得ることと、
    前記混合物を焼成することと、
    を含む、正極活物質の製造方法。
  11. 前記混合物の原料として、ヨウ素を含有するヨウ素材料を添加することを含み、
    前記ヨウ素材料は、単体ヨウ素(I)、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨードホルム(CHI)、四ヨウ化炭素(CI)、ヨウ化アンモニウム(NHI)、ヨウ素酸(HIO)、ヨウ素酸リチウム(LiIO)、ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、ヨウ素酸カリウム(KIO)、ヨウ素酸アンモニウム(NHIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)、オルト過ヨウ素酸(HIO)、過ヨウ素酸リチウム(LiIO)、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、過ヨウ素酸カリウム(KIO)、酸化ヨウ素(IV)(I)、酸化ヨウ素(V)(I)、及び酸化ヨウ素(IV,V)(I)からなる群から選択された1以上を含む、
    請求項10に記載の正極活物質の製造方法。
  12. 前記ヨウ素材料は、単体ヨウ素(I)を含む、
    請求項11に記載の正極活物質の製造方法。
  13. 前記混合物の原料として、ホウ素を含有するホウ素材料を添加することを含み、
    前記ホウ素材料は、HBO、HBO、B、LiBO、CB(OH)、(CO)B、[CH(CHO]B、C1319BO、C、及び(CO)Bからなる群から選択された1以上を含む。
    請求項10~12のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
  14. 前記ホウ素材料は、ホウ酸(HBO)を含む、
    請求項13に記載の正極活物質の製造方法。
  15. 前記混合物を150℃以上500℃以下の焼成温度で焼成することを含む、
    請求項10~14のいずれか一項に記載の正極活物質の製造方法。
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