JP2023094060A - 化学機械研磨用組成物および研磨方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体ウエハのCMPにおいて、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、かつ、ポリシリコン膜のディッシング量を低減することができる化学機械研磨用組成物を提供する。【解決手段】本発明に係る化学機械研磨用組成物は、(A)シリカ粒子と、(B)下記一般式(1)で表される化合物と、(C)リン酸エステルと、を含有し、前記(A)シリカ粒子のシラノール基密度が8~18個/nm2であり、pHが8以上11以下である。TIFF2023094060000010.tif30168(式(1)中、R1、R2およびR3は各々独立して炭素数がn個以下のアルキル基を表し、R4はアルキル基、アリール基またはヒドロキシ基を表す。M-は1価のアニオンを表す。nは1以上の整数を表す。)【選択図】図1
Description
本発明は、化学機械研磨用組成物およびそれを用いた研磨方法に関する。
半導体集積回路の製造技術の向上に伴い、半導体素子の高集積化、高速動作が求められている。これに伴い、半導体素子における微細回路の製造工程において要求される半導体基板表面の平坦性は益々厳しくなってきており、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)が半導体素子の製造工程に不可欠な技術となっている。
例えば、STI(Shallow Trench Isolation)プロセスのトレンチの溝を深くして堆積する材料をポリシリコンとし、深溝トレンチ内にポリシリコンを残すようにCMPを行うことにより、トレンチ型キャパシタを形成することができる。このプロセスでは、シリコン基板表面とトレンチ溝には酸化膜を形成するので、CMPの際にはシリコン酸化膜をストッパとすることができる。例えば、特許文献1、2には、このようなCMPに用いることができる化学機械研磨用組成物が開示されている。
上述のようなトレンチ型キャパシタを形成するためのCMPにおいては、ポリシリコン膜を選択的に研磨し、シリコン酸化膜をストッパとすることができる化学機械研磨用組成物を用いる必要がある。また、ポリシリコン膜の研磨速度が大きい化学機械研磨用組成物を使用すると、ポリシリコン膜が過剰に研磨されて、凹状の形状(以下、「ディッシング」ともいう)を生じることがある。このディッシング量が大きくなりすぎると欠陥となり、半導体装置の歩留まりを低下させてしまう点から好ましくない。
本発明に係る幾つかの態様は、ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体ウエハのCMPにおいて、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくし、シリコン酸化膜の研磨速度を小さくすることによって、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、かつ、ポリシリコン膜のディッシング量を低減することができる化学機械研磨用組成物、および研磨方法を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
本発明に係る化学機械研磨用組成物の一態様は、
(A)シリカ粒子と、
(B)下記一般式(1)で表される化合物と、
(C)リン酸エステルと、
を含有し、
前記(A)シリカ粒子のシラノール基密度が8~18個/nm2であり、
pHが8以上11以下である。
(式(1)中、R1、R2およびR3は各々独立して炭素数がn個以下のアルキル基を表し、R4はアルキル基、アリール基またはヒドロキシ基を表す。M-は1価のアニオンを表す。nは1以上の整数を表す。)
(A)シリカ粒子と、
(B)下記一般式(1)で表される化合物と、
(C)リン酸エステルと、
を含有し、
前記(A)シリカ粒子のシラノール基密度が8~18個/nm2であり、
pHが8以上11以下である。
前記化学機械研磨用組成物の一態様において、
前記(C)リン酸エステルが、ポリオキシエチレン基、炭素数12以上のアルキル基、およびアリール基からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。
前記(C)リン酸エステルが、ポリオキシエチレン基、炭素数12以上のアルキル基、およびアリール基からなる群より選択される少なくとも1種を有していてもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
化学機械研磨用組成物中における前記(A)成分の含有量をMA(質量%)、前記(C)成分の含有量をMC(質量%)としたときに、MA/MCの値が100~400であってもよい。
化学機械研磨用組成物中における前記(A)成分の含有量をMA(質量%)、前記(C)成分の含有量をMC(質量%)としたときに、MA/MCの値が100~400であってもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
前記MA(質量%)が0.1~10質量%であってもよい。
前記MA(質量%)が0.1~10質量%であってもよい。
前記いずれかの態様の化学機械研磨用組成物は、
ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨するために用いられるものであってもよい。
ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨するために用いられるものであってもよい。
本発明に係る研磨方法の一態様は、
前記いずれかの態様の化学機械研磨用組成物を用いて、ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨する工程を含む。
前記いずれかの態様の化学機械研磨用組成物を用いて、ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨する工程を含む。
本発明に係る化学機械研磨用組成物によれば、ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体ウエハのCMPにおいて、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくし、シリコン酸化膜の研磨速度を小さくすることで、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、かつ、ポリシリコン膜のディッシング量を低減することができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本明細書において、「X~Y」のように記載された数値範囲は、数値Xを下限値として含み、かつ、数値Yを上限値として含むものとして解釈される。
1.化学機械研磨用組成物
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(A)シリカ粒子(本明細書において、「(A)成分」ともいう)と、(B)下記一般式(1)で表される化合物(本明細書において、「(B)成分」ともいう)と、(C)リン酸エステル(本明細書において、「(C)成分」ともいう)と、を含有し、前記(A)シリカ粒子のシラノール基密度が8~18個/nm2であり、pHが8以上11以下である。
(式(1)中、R1、R2およびR3は各々独立して炭素数がn個以下のアルキル基を表し、R4はアルキル基、アリール基またはヒドロキシ基を表す。M-は1価のアニオンを表す。nは1以上の整数を表す。)
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(A)シリカ粒子(本明細書において、「(A)成分」ともいう)と、(B)下記一般式(1)で表される化合物(本明細書において、「(B)成分」ともいう)と、(C)リン酸エステル(本明細書において、「(C)成分」ともいう)と、を含有し、前記(A)シリカ粒子のシラノール基密度が8~18個/nm2であり、pHが8以上11以下である。
以下、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1.1.(A)シリカ粒子
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(A)シリカ粒子を含有する。(A)シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば特開2003-109921号公報等に記載されている方法で製造されたものを使用することができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(A)シリカ粒子を含有する。(A)シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、コロイダルシリカが好ましい。コロイダルシリカとしては、例えば特開2003-109921号公報等に記載されている方法で製造されたものを使用することができる。
(A)シリカ粒子は、その表面の少なくとも一部が官能基によって修飾されていてもよい。表面の少なくとも一部が官能基によって修飾された(A)シリカ粒子は、官能基によって表面修飾されていない(A)シリカ粒子に比べてゼータ電位の絶対値が大きくなり、シリカ粒子同士の静電反発力が増大する。その結果、化学機械研磨用組成物中におけるシリカ粒子の分散安定性が向上し、シリカ粒子がポリシリコン膜の表面に局在化し難くなるので、ポリシリコン膜のディッシング量を低減しながら、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
(A)シリカ粒子は、例えば、下記一般式(2)で表される官能基を有することができる。
-SO3 -M+ ・・・・・(2)
(M+は1価の陽イオンを表す。)
-SO3 -M+ ・・・・・(2)
(M+は1価の陽イオンを表す。)
上記一般式(2)中、M+で表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H+、Li+、Na+、K+、NH4
+が挙げられる。すなわち、上記一般式(2)で表される官能基は、「スルホ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「スルホ基の塩」とは、スルホ基(-SO3H)に含まれている水素イオンをLi+、Na+、K+、NH4
+等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(2)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、その表面に上記一般式(2)で表される官能基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子であり、その表面に上記一般式(2)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したようなシリカ粒子は含まれない。
上記一般式(2)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、以下のようにして製
造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、メルカプト基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌することにより、シリカの表面にメルカプト基含有シランカップリング剤を共有結合させる。ここで、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。次に、過酸化水素を更に適量添加して十分に放置することにより、上記一般式(2)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子を得ることができる。
造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、メルカプト基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌することにより、シリカの表面にメルカプト基含有シランカップリング剤を共有結合させる。ここで、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。次に、過酸化水素を更に適量添加して十分に放置することにより、上記一般式(2)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子を得ることができる。
(A)シリカ粒子は、例えば、下記一般式(3)で表される官能基を有することができる。
-COO-M+ ・・・・・(3)
(M+は1価の陽イオンを表す。)
-COO-M+ ・・・・・(3)
(M+は1価の陽イオンを表す。)
上記一般式(3)中、M+で表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H+、Li+、Na+、K+、NH4
+が挙げられる。すなわち、上記一般式(3)で表される官能基は、「カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「カルボキシ基の塩」とは、カルボキシ基(-COOH)に含まれている水素イオンをLi+、Na+、K+、NH4
+等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(3)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、その表面に上記一般式(3)で表される官能基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子であり、その表面に上記一般式(3)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したようなシリカ粒子は含まれない。
上記一般式(3)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、以下のようにして製造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤とを塩基性媒体中で十分に攪拌し、シリカ粒子の表面にカルボン酸無水物含有シランカップリング剤を共有結合させることにより、上記一般式(3)で表される官能基を有するシリカ粒子を得ることができる。ここで、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤としては、例えば、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
(A)シリカ粒子は、例えば、下記一般式(4)および/または下記一般式(5)で表される官能基を有することができる。
-NR4R5 ・・・・・(4)
-N+R4R5R6M- ・・・・・(5)
(上記式(4)および上記式(5)中、R4、R5およびR6は各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。M-は陰イオンを表す。)
-NR4R5 ・・・・・(4)
-N+R4R5R6M- ・・・・・(5)
(上記式(4)および上記式(5)中、R4、R5およびR6は各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。M-は陰イオンを表す。)
上記一般式(4)で表される官能基はアミノ基を表しており、上記一般式(5)で表される官能基はアミノ基の塩を表している。したがって、上記一般式(4)で表される官能基と上記一般式(5)で表される官能基を纏めて、「アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。上記一般式(4)および/または上記一般式(5)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、その表面に上記一般式(4)および/または上記一般式(5)で表される官能基が共有結合を介して固定されたシリカ粒子であり、その表面に上記一般式(4)および/または上記一般式(5)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したようなシリカ粒子は含まれない。
上記一般式(5)中、M-で表される陰イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、OH-、F-、Cl-、Br-、I-、CN-等の陰イオンの他、酸性化合物由来
の陰イオンが挙げられる。
の陰イオンが挙げられる。
上記一般式(4)および上記一般式(5)中、R4~R6は各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表すが、R4~R6のうち2つ以上が結合して環構造を形成していてもよい。
R4~R6で表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、または脂環式炭化水素基のいずれでもよい。また、脂肪族炭化水素基および芳香脂肪族炭化水素基の脂肪族は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。これらの炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状または環状の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアリール基等が挙げられる。
上記一般式(4)および/または上記一般式(5)で表される官能基を有する(A)シリカ粒子は、例えば、シリカとアミノ基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌し、シリカの表面にアミノ基含有シランカップリング剤を共有結合させることにより、上記一般式(4)および/または上記一般式(5)で表される官能基を有するシリカ粒子を製造することができる。ここで、アミノ基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3―アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本実施形態において、シリカ粒子の「シラノール基」とは、シリカ粒子の表面のケイ素原子に直接結合したヒドロキシ基をいい、立体配置または立体配位については特に限定されない。また、シラノール基の生成条件等も問わない。
本実施形態において、「シラノール基密度」とは、シリカ粒子表面における単位面積当たりのシラノール基数のことであり、シリカ粒子表面の電気的特性または化学的特性を表す指標となる。シラノール基は、化学機械研磨用組成物中ではSiOHのH+が脱離してSiO-の状態で安定して存在しているため、通常マイナスにチャージしている。これにより、シリカ粒子の電気的特性または化学的特性が発現する。シラノール基密度の単位は、個/nm2で表される。
シリカ粒子のシラノール基密度は、シアーズ法により求めることができる。シアーズ法は、G.W.Sears,Jr.,“Determination of Specific Surface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide”,Analytical Chemistry,28(12),1981(1956).を参照の上、実施することができる。測定には1wt%シリカ水溶液を使用し、0.1mol/LのNaOHを滴下速度2mL/minで滴定を行い、下記式に基づいてシラノール基密度を算出することができる。
ρ=(a×b×NA)÷(c×d)
上記式中、ρ:シラノール基密度(個/nm2)、a:滴定に用いたNaOH溶液の濃度(mol/L)、b:pH4~9のNaOH溶液の滴下量(L)、NA:アボガドロ数、c:シリカ質量(g)、d:BET比表面積(nm2/g)をそれぞれ表す。
ρ=(a×b×NA)÷(c×d)
上記式中、ρ:シラノール基密度(個/nm2)、a:滴定に用いたNaOH溶液の濃度(mol/L)、b:pH4~9のNaOH溶液の滴下量(L)、NA:アボガドロ数、c:シリカ質量(g)、d:BET比表面積(nm2/g)をそれぞれ表す。
ここで、シリカ粒子のBET比表面積は、例えば、流動式比表面積自動測定装置「micrometrics FlowSorb II 2300(島津製作所社製)」により、BET法を用いて測定した比表面積から算出される。
本実施形態に用いられる(A)シリカ粒子のシラノール基密度は、8個/nm2以上であり、好ましくは9個/nm2以上であり、より好ましくは9.5個/nm2以上であり
、特に好ましくは10個/nm2以上である。本実施形態に用いられる(A)シリカ粒子のシラノール基密度は、20個/nm2以下であり、好ましくは18個/nm2以下であり、より好ましくは16個/nm2以下であり、特に好ましくは15個/nm2以下である。シラノール基密度が前記範囲内であると、ポリシリコンとシリカ粒子表面に存在するシラノール基との化学反応が促進され、ポリシリコン膜表面が改質されると推測される。具体的反応機構は明らかではないが、研磨工程中の酸化作用により生じたポリシリコン表面に生じたSi-O部位と、シリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH)が相互作用することにより、研磨されやすい改質層が生成すると考えられる。その結果、特に機械的な研磨作用によって、ポリシリコン膜が円滑に除去されるので、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができる。
、特に好ましくは10個/nm2以上である。本実施形態に用いられる(A)シリカ粒子のシラノール基密度は、20個/nm2以下であり、好ましくは18個/nm2以下であり、より好ましくは16個/nm2以下であり、特に好ましくは15個/nm2以下である。シラノール基密度が前記範囲内であると、ポリシリコンとシリカ粒子表面に存在するシラノール基との化学反応が促進され、ポリシリコン膜表面が改質されると推測される。具体的反応機構は明らかではないが、研磨工程中の酸化作用により生じたポリシリコン表面に生じたSi-O部位と、シリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH)が相互作用することにより、研磨されやすい改質層が生成すると考えられる。その結果、特に機械的な研磨作用によって、ポリシリコン膜が円滑に除去されるので、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができる。
また、シリカ粒子のシラノール基密度が前記範囲内であると、化学機械研磨用組成物中のシリカ粒子表面の負電荷が大きくなるので、静電反発力(ゼータ電位)によってシリカ粒子が化学機械研磨用組成物中で安定に分散することが可能となり、CMPの際にスクラッチ等の欠陥の原因となるシリカ粒子同士の凝集を防止することができる。
シリカ粒子のシラノール基密度が前記範囲未満である場合、ポリシリコンとシリカ粒子表面に存在するシラノール基との化学反応が起こりにくく、ポリシリコン膜表面が改質され難いため、ポリシリコン膜の研磨速度が小さくなる傾向がある。また、化学機械研磨用組成物中のシリカ粒子表面の負電荷が小さくなるので、化学機械研磨用組成物中でのシリカ粒子の分散安定性が悪化しやすく、凝集したシリカ粒子によってスクラッチが発生するなど良好な研磨特性が得られない。
一方、シリカ粒子のシラノール基密度が前記範囲を超えると、ポリシリコンとシリカ粒子表面に存在するシラノール基との化学反応が過剰となり、ポリシリコン膜が過剰に研磨されて、ディッシングが生じやすくなる。
(A)シリカ粒子の平均粒子径は、化学機械研磨用組成物を動的光散乱法による粒子径分布測定装置で測定することによって得られる。この方法で測定された(A)シリカ粒子の平均粒子径は、15nm以上100nm以下であることが好ましく、30nm以上70nm以下であることがより好ましい。(A)シリカ粒子の平均粒子径が前記範囲内であると、実用的な研磨速度が達成されやすくなるとともに、シリコン酸化膜の研磨速度を抑制できる傾向がある。動的光散乱法による粒子径分布測定装置としては、ベックマン・コールター社製のナノ粒子アナライザー「DelsaNano S」、Malvern社製の「Zetasizer nano zs」等が挙げられる。なお、動的光散乱法を用いて測定された平均粒子径は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子の平均粒子径を表している。
(A)シリカ粒子は、化学機械研磨用組成物のpHが8以上11以下のアルカリ性で分散安定性が良好となる。(A)シリカ粒子のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は-20mV以下であることが好ましい。(A)シリカ粒子のゼータ電位が-20mV以下であると、粒子間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐことができる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置としては、大塚電子株式会社製の「ELSZ-1」、Malvern社製の「Zetasizer nano
zs」等が挙げられる。
zs」等が挙げられる。
(A)シリカ粒子の含有量MA(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上8質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以上5質量%以下である。(A)シリカ粒子の含有量が前記範囲内にあると、ポリシリコン膜の研磨速度を大き
くすることができると共に、ポリシリコン膜が過剰に研磨されてディッシングが発生することを低減できる場合がある。
くすることができると共に、ポリシリコン膜が過剰に研磨されてディッシングが発生することを低減できる場合がある。
1.2.(B)一般式(1)で表される化合物
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(B)下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
(式(1)中、R1、R2およびR3は各々独立して炭素数がn個以下のアルキル基を表し、R4はアルキル基、アリール基またはヒドロキシ基を表す。M-は1価のアニオンを表す。nは1以上の整数を表す。)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(B)下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
pHが8~11の範囲では、シリコン酸化膜の表面電位が大きな負の値となることから、(B)成分がシリコン酸化膜の表面に多量に吸着して保護膜を形成すると考えられる。その結果、シリコン酸化膜の研磨速度を小さくし、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができるため、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができると考えられる。一方、pHが8~11の範囲では、ポリシリコン膜の表面電位も負の値となるが、シリコン酸化膜よりもその負の値は小さい。したがって、(B)成分はポリシリコン膜の表面にも少量吸着することで、CMPの際にポリシリコンの加水分解が起こりにくくなるので、ディッシング量を低減できると考えられる。
(B)成分の具体例としては、例えば、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、プロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、1-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。これらの中でも、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。これらの(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(B)成分の含有量MB(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.005質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以上0.1質量%以下である。(B)成分の含有量が前記範囲内にあると、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができると共に、CMPの際にポリシリコンの加水分解が起こりにくくなるので、ディッシング量を低減できる場合がある。
1.3.(C)リン酸エステル
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(C)リン酸エステルを含有する。(C)リン酸エステルには、例えばリチウム塩、ナトリウム塩あるいはカリウム塩のような塩を形成しているものも含まれる。(C)成分を含有することにより、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されるので、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生を低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、(C)リン酸エステルを含有する。(C)リン酸エステルには、例えばリチウム塩、ナトリウム塩あるいはカリウム塩のような塩を形成しているものも含まれる。(C)成分を含有することにより、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されるので、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生を低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
一般にリン酸エステルとは、リン酸(O=P(OH)3)が持つ3個の水素の全てまた
は一部が有機基で置換された構造を有する化合物の総称のことをいうが、(C)成分は、その置換された有機基の炭素数が8以上18以下であることが好ましく、10以上16以下であることがより好ましい。置換された有機基の炭素数が前記範囲内にあるリン酸エステルによれば、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されやすくなるので、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生をより効果的に低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
は一部が有機基で置換された構造を有する化合物の総称のことをいうが、(C)成分は、その置換された有機基の炭素数が8以上18以下であることが好ましく、10以上16以下であることがより好ましい。置換された有機基の炭素数が前記範囲内にあるリン酸エステルによれば、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されやすくなるので、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生をより効果的に低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
また、(C)成分は、下記一般式(6)で表されるリン酸モノエステルおよび下記一般式(7)で表されるリン酸ジエステルから選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、(C)成分が下記一般式(6)で表されるリン酸モノエステルおよび下記一般式(7)で表されるリン酸ジエステルの双方を含む場合には、その含有比率は特に制限されない。
式(6)および式(7)中、R7およびR8はそれぞれ独立に、ヘテロ原子またはアリール基を含んでもよい炭素数8~18の有機基を表し、該有機基は炭素-炭素二重結合を有していてもよい。R7およびR8の有機基は、炭素数10~18であることが好ましく、炭素数10~16であることがより好ましい。ヘテロ原子としては、酸素、硫黄、ハロゲン等が挙げられ、ヘテロ原子が酸素または硫黄の場合は、エーテル、チオエーテルを形成していてもよい。また、式(6)および式(7)中、PとOR7および/またはPとOR8との結合の間にポリオキシエチレン基[-(CH2CH2O)n-]を介在していてもよい。
上記一般式(6)で表されるリン酸モノエステルおよび上記一般式(7)で表されるリン酸ジエステルの中でも、ポリオキシエチレン基、炭素数12以上のアルキル基、およびアリール基からなる群より選択される少なくとも1種を有するものであることが好ましい。(C)成分がこのような化学構造を有すると、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されやすくなる。これにより、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生をより効果的に低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる。
(C)成分の含有量MC(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.1質量%以下である。(C)リン酸エステルの含有量が前記範囲内にあると、ポリシリコン膜の表面に適度な保護膜が形成されやすくなるので、ディッシングやエロージョン等の欠陥の発生をより効果的に低減できると共に、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度を得ることができる場合がある。
また、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の、(C)成分の含有量MC(質量%
)に対する(A)成分の含有量MA(質量%)の比MA/MCは、好ましくは100~400であり、より好ましくは120~390であり、特に好ましくは130~380である。比MA/MCが前記範囲にあると、(A)成分による機械的研磨力と(C)成分による保護膜形成能とのバランスが良好となり、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度が得られやすい傾向がある。
)に対する(A)成分の含有量MA(質量%)の比MA/MCは、好ましくは100~400であり、より好ましくは120~390であり、特に好ましくは130~380である。比MA/MCが前記範囲にあると、(A)成分による機械的研磨力と(C)成分による保護膜形成能とのバランスが良好となり、ポリシリコン膜に対する実用的な研磨速度が得られやすい傾向がある。
1.4.液状媒体
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。液状媒体は、前述の各成分の残部として配合されていればよい。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。液状媒体は、前述の各成分の残部として配合されていればよい。
1.5.その他の成分
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、前述の各成分の他、必要に応じて、酸性化合物、界面活性剤、水溶性高分子、防蝕剤、pH調整剤、酸化剤等の添加剤を含有してもよい。以下、各添加剤について説明する。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、前述の各成分の他、必要に応じて、酸性化合物、界面活性剤、水溶性高分子、防蝕剤、pH調整剤、酸化剤等の添加剤を含有してもよい。以下、各添加剤について説明する。
1.5.1.酸性化合物
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、酸性化合物を含有してもよい。酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。酸性化合物を添加すると、(A)シリカ粒子との相互作用により、ポリシリコン膜の研磨速度を更に大きくすることができる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、酸性化合物を含有してもよい。酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。酸性化合物を添加すると、(A)シリカ粒子との相互作用により、ポリシリコン膜の研磨速度を更に大きくすることができる場合がある。
有機酸としては、例えば、乳酸、酒石酸、フマル酸、グリコール酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、キノリン酸、キナルジン酸、アミド硫酸;グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、トリプトファン、芳香族アミノ酸、および複素環型アミノ酸等のアミノ酸が挙げられる。これらの有機酸は、塩を形成していてもよい。これらの有機酸の中でも、アミノ酸が好ましい。これらの有機酸は、1種単独で用いてもよいし、任意の割合で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸が挙げられる。これらの無機酸は、塩を形成していてもよい。これらの無機酸は、1種単独で用いてもよいし、任意の割合で2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸性化合物を含有する場合、酸性化合物の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001~3質量%であり、より好ましくは0.002~2質量%であり、特に好ましくは0.003~1質量%である。
1.5.2.界面活性剤
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を添加すると、化学機械研磨用組成物に適度な粘性を付与できる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤を添加すると、化学機械研磨用組成物に適度な粘性を付与できる場合がある。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;パーフルオロアルキル化合物等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられ
る。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
る。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.001~3質量%であり、特に好ましくは0.01~1質量%である。
1.5.3.水溶性高分子
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子を添加すると、被研磨面に吸着して研磨摩擦を低減することで、被研磨面にディッシング、エロージョン、スクラッチ等の研磨欠陥が発生することを低減できる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子を添加すると、被研磨面に吸着して研磨摩擦を低減することで、被研磨面にディッシング、エロージョン、スクラッチ等の研磨欠陥が発生することを低減できる場合がある。
このような水溶性高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアリルアミン、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~1,500,000であり、より好ましくは10,000~500,000であり、特に好ましくは30,000~100,000である。水溶性高分子の重量平均分子量が前記範囲内にあると、水溶性高分子が被研磨面に吸着しやすくなり、研磨摩擦がより低減する。その結果、被研磨面にディッシング、エロージョン、スクラッチ等の研磨欠陥が発生することを低減できる場合がある。なお、本明細書中における「重量平均分子量(Mw)」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
水溶性高分子を含有する場合、水溶性高分子の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001~1質量%であり、より好ましくは0.002~0.1質量%である。なお、水溶性高分子の含有量は、水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)にも依存するが、化学機械研磨用組成物の粘度が10mPa・s未満となるように調整することが好ましい。化学機械研磨用組成物の粘度が10mPa・s未満であると、ポリシリコン膜を高速で研磨しやすく、粘度が適正であるため研磨布上に安定して化学機械研磨用組成物を供給することができる。
1.5.4.防蝕剤
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、防蝕剤を含有してもよい。防蝕剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体が挙げられる。ここで、ベンゾトリアゾール誘導体とは、ベンゾトリアゾールの有する1個または2個以上の水素原子を、例えばカルボキシ基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基等で置換したものをいう。ベンゾトリアゾール誘導体としては、4-カルボキシベンゾトリアゾールおよびその塩、7-カルボキシベンゾトリアゾールおよびその塩、ベンゾトリアゾールブチルエステル、1-ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、防蝕剤を含有してもよい。防蝕剤としては、例えば、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体が挙げられる。ここで、ベンゾトリアゾール誘導体とは、ベンゾトリアゾールの有する1個または2個以上の水素原子を、例えばカルボキシ基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシ基等で置換したものをいう。ベンゾトリアゾール誘導体としては、4-カルボキシベンゾトリアゾールおよびその塩、7-カルボキシベンゾトリアゾールおよびその塩、ベンゾトリアゾールブチルエステル、1-ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
防蝕剤を含有する場合、防蝕剤の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.001~0.1質量%である。
1.5.5.pH調整剤
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、化学機械研磨用組成物のpHを所望の値に調整するために、pH調整剤をさらに含有してもよい。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチレンジアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、化学機械研磨用組成物のpHを所望の値に調整するために、pH調整剤をさらに含有してもよい。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エチレンジアミン、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)、アンモニア等の塩基性化合物が挙げられる。
1.5.6.酸化剤
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、酸化剤を含有してもよい。酸化剤を添加すると、酸化作用によりポリシリコン表面にSi-O部位が生じ、シリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH)と相互作用することにより、研磨されやすい改質層が生成すると考えられる。その結果、特に機械的な研磨作用によって、ポリシリコン膜が円滑に除去されるので、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、酸化剤を含有してもよい。酸化剤を添加すると、酸化作用によりポリシリコン表面にSi-O部位が生じ、シリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH)と相互作用することにより、研磨されやすい改質層が生成すると考えられる。その結果、特に機械的な研磨作用によって、ポリシリコン膜が円滑に除去されるので、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができる場合がある。
酸化剤としては、例えば、過酸化水素、過酢酸、過炭酸塩、過酸化尿素、過塩素酸、過硫酸塩(例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)等が挙げられる。
酸化剤を含有する場合、酸化剤の含有量(質量%)は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.05~5質量%であり、特に好ましくは0.1~3質量%である。
1.6.pH
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、8.0以上であり、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは8.8以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、11.0以下であり、好ましくは10.8以下であり、より好ましくは10.6以下である。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、8.0以上であり、好ましくは8.5以上であり、より好ましくは8.8以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、11.0以下であり、好ましくは10.8以下であり、より好ましくは10.6以下である。
pHが前記範囲内であると、シリコン酸化膜の表面電位が大きな負の値となることから、(B)成分がシリコン酸化膜の表面に多量に吸着して保護膜を形成すると考えられる。その結果、シリコン酸化膜の研磨速度を小さくし、ポリシリコン膜の研磨速度を大きくすることができるため、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができると考えられる。一方、pHが前記範囲内では、ポリシリコン膜の表面電位も負の値となるが、シリコン酸化膜よりもその負の値は小さくなる。したがって、(B)成分がポリシリコン膜の表面にも少量吸着することで、CMPの際にポリシリコンの加水分解が起こりにくくなるので、ディッシング量を低減できると考えられる。
なお、化学機械研磨用組成物のpHは、例えば、前述の有機酸(塩)、無機酸(塩)、pH調整剤等を添加することにより調整することができ、これらの1種以上を用いることができる。
本発明において、pHは、水素イオン指数のことを指し、その値は、市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
1.7.用途
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、主として半導体装置を構成する複数の基板のうち、ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨するための研磨剤として使用することができる。例えば、STI(Shallow Trench Isolation)プロセスのトレンチの溝を深くして堆積する材料をポリシリコンとし、深溝トレンチ内にポリシリコンを残すように本実施形態に係る化学機械研磨用組成物を用いたCMPを行うことで、トレンチ型キャパシタを
形成することができる。このプロセスでは、シリコン基板表面とトレンチ溝にはシリコン酸化膜を形成するので、CMPによりポリシリコン膜を選択的に研磨してシリコン酸化膜をストッパとすることができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、主として半導体装置を構成する複数の基板のうち、ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨するための研磨剤として使用することができる。例えば、STI(Shallow Trench Isolation)プロセスのトレンチの溝を深くして堆積する材料をポリシリコンとし、深溝トレンチ内にポリシリコンを残すように本実施形態に係る化学機械研磨用組成物を用いたCMPを行うことで、トレンチ型キャパシタを
形成することができる。このプロセスでは、シリコン基板表面とトレンチ溝にはシリコン酸化膜を形成するので、CMPによりポリシリコン膜を選択的に研磨してシリコン酸化膜をストッパとすることができる。
このような用途で本実施形態に係る化学機械研磨用組成物を使用する場合、シリコン酸化膜およびポリシリコン膜をそれぞれ同一の研磨条件で研磨した際に、シリコン酸化膜の研磨速度に対するポリシリコン膜の研磨速度比[ポリシリコン膜の研磨速度/シリコン酸化膜の研磨速度]の値が、100以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、150以上であることが特に好ましいといえる。
1.8.化学機械研磨用組成物の調製方法
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解または分散させることにより調製することができる。溶解または分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解または分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解または分散させることにより調製することができる。溶解または分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解または分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
また、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
2.研磨方法
本発明の一実施形態に係る研磨方法は、前述の化学機械研磨用組成物を用いてポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨する工程を含む。該化学機械研磨用組成物によれば、ポリシリコン膜の研磨速度が大きくなり、シリコン酸化膜の研磨速度が小さくなるため、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、シリコン酸化膜をストッパとすることができる。以下、図1~図3を参照しながら、本実施形態に係る研磨方法について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る研磨方法は、前述の化学機械研磨用組成物を用いてポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨する工程を含む。該化学機械研磨用組成物によれば、ポリシリコン膜の研磨速度が大きくなり、シリコン酸化膜の研磨速度が小さくなるため、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、シリコン酸化膜をストッパとすることができる。以下、図1~図3を参照しながら、本実施形態に係る研磨方法について詳細に説明する。
2.1.被処理体
図1に、本実施形態に係る化学機械研磨方法に適用される被処理体100の一例を示す。
図1に、本実施形態に係る化学機械研磨方法に適用される被処理体100の一例を示す。
(1)まず、図1に示すように、基体10を用意する。基体10は、例えば、シリコン基板とその上に形成されたシリコン酸化膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。
(2)次に、基体10の上に、CVD法または熱酸化法を用いて絶縁膜であるシリコン酸化膜12を形成する。
(3)次に、シリコン酸化膜12にレジストパターンを形成する。それをマスクとして、シリコン酸化膜12および基体10をエッチングし、トレンチ14を形成する。トレンチ14を形成した後、レジストパターンを除去する。
(4)次に、CVD法を適用してシリコン酸化膜12の表面およびトレンチ14にポリシリコン膜16を堆積させる。
以上の工程により、被処理体100が形成される。
2.2.化学機械研磨工程
化学機械研磨工程では、図2に示すように、前述した化学機械研磨用組成物を用いてポリシリコン膜16をシリコン酸化膜12が露出するまで研磨する。前述した化学機械研磨
用組成物によれば、ポリシリコン膜16の研磨速度が大きくなり、シリコン酸化膜12の研磨速度が小さくなるため、ポリシリコン膜16を選択的に研磨することができ、シリコン酸化膜12をストッパとすることができる。また、前述した化学機械研磨用組成物は、ポリシリコン膜16の表面が適度に保護されるため、ディッシング等の欠陥が発生し難く、平坦性に優れたトレンチ型キャパシタを作製することができる。
化学機械研磨工程では、図2に示すように、前述した化学機械研磨用組成物を用いてポリシリコン膜16をシリコン酸化膜12が露出するまで研磨する。前述した化学機械研磨
用組成物によれば、ポリシリコン膜16の研磨速度が大きくなり、シリコン酸化膜12の研磨速度が小さくなるため、ポリシリコン膜16を選択的に研磨することができ、シリコン酸化膜12をストッパとすることができる。また、前述した化学機械研磨用組成物は、ポリシリコン膜16の表面が適度に保護されるため、ディッシング等の欠陥が発生し難く、平坦性に優れたトレンチ型キャパシタを作製することができる。
化学機械研磨工程後、被研磨面に残留する砥粒を除去することが好ましい。この砥粒の除去は、通常の洗浄方法によって行うことができる。例えば、ブラシスクラブ洗浄後、アンモニア:過酸化水素:水が1:1:5(質量比)程度のアルカリ性洗浄液によって洗浄を行うことにより、被研磨面に付着した砥粒の除去を行うことができる。さらに、被研磨面に吸着した不純物金属種の洗浄液として、例えば、クエン酸水溶液、フッ化水素酸とクエン酸の混合水溶液、およびフッ化水素酸とエチレンジアミン四酢酸(EDTA)の混合水溶液等が使用できる。
2.3.化学機械研磨装置
前記化学機械研磨工程では、例えば、図3に示すような化学機械研磨装置200を用いることができる。図3は、化学機械研磨装置200を模式的に示した斜視図である。スラリー供給ノズル42からスラリー(化学機械研磨用組成物)44を供給し、かつ、研磨布46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、図3には、水供給ノズル54およびドレッサー56も併せて示してある。
前記化学機械研磨工程では、例えば、図3に示すような化学機械研磨装置200を用いることができる。図3は、化学機械研磨装置200を模式的に示した斜視図である。スラリー供給ノズル42からスラリー(化学機械研磨用組成物)44を供給し、かつ、研磨布46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、図3には、水供給ノズル54およびドレッサー56も併せて示してある。
キャリアーヘッド52の研磨荷重は、10~980hPaの範囲内で選択することができ、好ましくは30~490hPaである。また、ターンテーブル48およびキャリアーヘッド52の回転数は10~400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30~150rpmである。スラリー供給ノズル42から供給されるスラリー(化学機械研磨用組成物)44の流量は、10~1,000mL/分の範囲内で選択することができ、好ましくは50~400mL/分である。
市販の化学機械研磨装置としては、例えば、株式会社荏原製作所製、型式「EPO-112」、「EPO-222」;ラップマスターSFT社製、型式「LGP-510」、「LGP-552」;アプライドマテリアル社製、型式「Mirra」、「Reflexion」;G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-762」等が挙げられる。
3.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.シリカ粒子分散体の調製
<シリカ粒子分散体A>
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-10H;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径220nm)5kgと3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、チオール化シリカゾルを得た。このチオール化シリカゾルに過酸化水素を加え、8時間加熱還流させ、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)22質量%、平均粒子径221nm、pH6.6のシリカ粒子分散体Aを得た。得られたシリカ粒子分散体Aを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、14.0個/nm
2であった。
<シリカ粒子分散体A>
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-10H;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径220nm)5kgと3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、チオール化シリカゾルを得た。このチオール化シリカゾルに過酸化水素を加え、8時間加熱還流させ、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)22質量%、平均粒子径221nm、pH6.6のシリカ粒子分散体Aを得た。得られたシリカ粒子分散体Aを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、14.0個/nm
2であった。
<シリカ粒子分散体B>
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-10H;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径220nm)を2000g入れ、60℃になるまで加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物(東京化成工業社製)6.0gを加え、60℃で加熱、4時間反応を続けた。冷却後、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにしてシリカ含有量(固形分濃度)20質量%、平均粒子径219nm、pH6.3のシリカ粒子分散体Bを得た。得られたシリカ粒子分散体Bを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、13.0個/nm2であった。
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-10H;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径220nm)を2000g入れ、60℃になるまで加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルこはく酸無水物(東京化成工業社製)6.0gを加え、60℃で加熱、4時間反応を続けた。冷却後、カルボン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにしてシリカ含有量(固形分濃度)20質量%、平均粒子径219nm、pH6.3のシリカ粒子分散体Bを得た。得られたシリカ粒子分散体Bを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、13.0個/nm2であった。
<シリカ粒子分散体C>
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-7;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径125nm)5kgと3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、チオール化シリカゾルを得た。このチオール化シリカゾルに過酸化水素を加え、8時間加熱還流させ、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)21質量%、平均粒子径124nm、pH6.5のシリカ粒子分散体Cを得た。得られたシリカ粒子分散体Cを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、8.9個/nm2であった。
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-7;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径125nm)5kgと3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、チオール化シリカゾルを得た。このチオール化シリカゾルに過酸化水素を加え、8時間加熱還流させ、スルホン酸が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)21質量%、平均粒子径124nm、pH6.5のシリカ粒子分散体Cを得た。得られたシリカ粒子分散体Cを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、8.9個/nm2であった。
<シリカ粒子分散体D>
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-7;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径125nm)5kgと3-アミノプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)22質量%、平均粒子径130nm、pH7.5のシリカ粒子分散体Dを得た。得られたシリカ粒子分散体Dを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、9.5個/nm2であった。
扶桑化学工業社製のコロイダルシリカ(品番:PL-7;シリカ含有量23質量%、pH7.3、平均粒子径125nm)5kgと3-アミノプロピルトリメトキシシラン6gを混合させ、2時間加熱還流した後、アミノ基が表面に固定化されたコロイダルシリカを得た。このようにして、シリカ含有量(固形分濃度)22質量%、平均粒子径130nm、pH7.5のシリカ粒子分散体Dを得た。得られたシリカ粒子分散体Dを0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH4~9の範囲で滴定し、その滴定値とBET比表面積の値からシラノール基密度を算出したところ、9.5個/nm2であった。
3.2.化学機械研磨用組成物の調製
表1または表2に記載されたシリカ粒子含有量となるようにシリカ粒子分散体を容量5Lのポリエチレン製の瓶に添加し、表1または表2に示す組成となるように各成分をさらに添加し、表1または表2に示すpHとなるように水酸化カリウム水溶液あるいは硝酸水溶液で調整し、全成分の合計量が100質量%となるように純水を添加して調整することにより、各実施例及び各比較例の化学機械研磨用組成物を調製した。
表1または表2に記載されたシリカ粒子含有量となるようにシリカ粒子分散体を容量5Lのポリエチレン製の瓶に添加し、表1または表2に示す組成となるように各成分をさらに添加し、表1または表2に示すpHとなるように水酸化カリウム水溶液あるいは硝酸水溶液で調整し、全成分の合計量が100質量%となるように純水を添加して調整することにより、各実施例及び各比較例の化学機械研磨用組成物を調製した。
3.3.評価方法
3.3.1.研磨速度評価
上記で得られた化学機械研磨用組成物を用いて、直径12インチのポリシリコン膜500nm付きウエハおよび直径12インチのシリコン酸化膜(p-TEOS膜)1000nm付きウエハをそれぞれ被処理体として、下記の研磨条件で60秒間の化学機械研磨試験を行った。
<研磨条件>
・研磨装置:G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-762」
・研磨パッド:ニッタ・デュポン社製、「IC1000XYP」
・化学機械研磨用組成物供給速度:200mL/分
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:91rpm
・ヘッド押し付け圧:2.0psi
・研磨速度(Å/分)=(研磨前の膜の厚さ-研磨後の膜の厚さ)/研磨時間
3.3.1.研磨速度評価
上記で得られた化学機械研磨用組成物を用いて、直径12インチのポリシリコン膜500nm付きウエハおよび直径12インチのシリコン酸化膜(p-TEOS膜)1000nm付きウエハをそれぞれ被処理体として、下記の研磨条件で60秒間の化学機械研磨試験を行った。
<研磨条件>
・研磨装置:G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-762」
・研磨パッド:ニッタ・デュポン社製、「IC1000XYP」
・化学機械研磨用組成物供給速度:200mL/分
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:91rpm
・ヘッド押し付け圧:2.0psi
・研磨速度(Å/分)=(研磨前の膜の厚さ-研磨後の膜の厚さ)/研磨時間
ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜の厚さは、非接触式光学式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール社製、型式「ASET F5x」)を用いて屈折率を測定することによって算出した。
研磨速度の評価基準は、下記の通りである。ポリシリコン膜およびシリコン酸化膜の研磨速度、ならびにそれらの評価結果を表1~表2に併せて示す。
(評価基準)
・「A」…ポリシリコン膜の研磨速度が1500Å/分以上であり、かつ、シリコン酸化膜の研磨速度が15Å/分未満である場合、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、実際の半導体研磨に供することができるため、良好と判断した。
・「B」…ポリシリコン膜の研磨速度が1500Å/分未満であるか、あるいは、シリコン酸化膜の研磨速度が15Å/分以上である場合、実際の半導体研磨に供することができないので不良と判断した。
(評価基準)
・「A」…ポリシリコン膜の研磨速度が1500Å/分以上であり、かつ、シリコン酸化膜の研磨速度が15Å/分未満である場合、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、実際の半導体研磨に供することができるため、良好と判断した。
・「B」…ポリシリコン膜の研磨速度が1500Å/分未満であるか、あるいは、シリコン酸化膜の研磨速度が15Å/分以上である場合、実際の半導体研磨に供することができないので不良と判断した。
3.3.2.平坦性評価
被処理体として、200nmのシリコン酸化膜が成膜された12インチのウエハを、深さ200nmの幅10μmのラインアンドスペースを有するパターンに加工し、400nmのポリシリコン膜を積層したテスト用基板を用いた。このテスト用基板について、シリコン酸化膜が露出するまで下記条件にて研磨を行った。研磨処理後の被研磨面を触針式プロファイリングシステム(BRUKER社製、形式「Dektak XTL」)を用いて、ポリシリコン配線幅(ライン、L)/シリコン酸化膜配線幅(スペース、S)がそれぞれ10μm/10μmのパターン部分におけるポリシリコン/シリコン酸化膜配線のポリシリコン膜のディッシング量を確認した。
<研磨条件>
・研磨装置:G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-762」
・研磨パッド:ニッタ・デュポン社製、「IC1000XYP」
・化学機械研磨用組成物供給速度:200mL/分
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:91rpm
・ヘッド押し付け圧:2.0psi
平坦性評価の評価基準は下記の通りである。ディッシング量およびその評価結果を表1~表2に併せて示す。
(評価基準)
・「A」…ディッシング量が10nm未満である場合、平坦性が非常に良好であると判断した。
・「B」…ディッシング量が10nm以上である場合、平坦性が不良であると判断した。
被処理体として、200nmのシリコン酸化膜が成膜された12インチのウエハを、深さ200nmの幅10μmのラインアンドスペースを有するパターンに加工し、400nmのポリシリコン膜を積層したテスト用基板を用いた。このテスト用基板について、シリコン酸化膜が露出するまで下記条件にて研磨を行った。研磨処理後の被研磨面を触針式プロファイリングシステム(BRUKER社製、形式「Dektak XTL」)を用いて、ポリシリコン配線幅(ライン、L)/シリコン酸化膜配線幅(スペース、S)がそれぞれ10μm/10μmのパターン部分におけるポリシリコン/シリコン酸化膜配線のポリシリコン膜のディッシング量を確認した。
<研磨条件>
・研磨装置:G&P TECHNOLOGY社製、型式「POLI-762」
・研磨パッド:ニッタ・デュポン社製、「IC1000XYP」
・化学機械研磨用組成物供給速度:200mL/分
・定盤回転数:90rpm
・ヘッド回転数:91rpm
・ヘッド押し付け圧:2.0psi
平坦性評価の評価基準は下記の通りである。ディッシング量およびその評価結果を表1~表2に併せて示す。
(評価基準)
・「A」…ディッシング量が10nm未満である場合、平坦性が非常に良好であると判断した。
・「B」…ディッシング量が10nm以上である場合、平坦性が不良であると判断した。
3.4.評価結果
表1~表2に、各実施例および各比較例の化学機械研磨用組成物の組成ならびに各評価結果を示す。
表1~表2に、各実施例および各比較例の化学機械研磨用組成物の組成ならびに各評価結果を示す。
なお、表1~表2における各成分の略称は、以下の通りである。
<(A)シリカ粒子>
・PL-10H:扶桑化学工業社製、商品名「PL-10H」
・PL-7:扶桑化学工業社製、商品名「PL-7」
・PL-3:扶桑化学工業社製、商品名「PL-3」
・PL-1:扶桑化学工業社製、商品名「PL-1」
・MP-4540M:日産化学社製、商品名「MP-4540M」
<(B)式(1)で表される化合物>
・エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:SACHEM社製、商品名「水酸化エチルトリメチルアンモニウム」
・2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Choline(47-50% in Water)」
・ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Benzyltrimethylammonium Hydroxide(10% in Water)」
<(C)リン酸エステル>
・ジPOEアルキルエーテルリン酸:日光ケミカルズ社製、商品名「NIKKOL DDP-6」
・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸:東邦化学社製、商品名「フォスファノールML-220」
・ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸:東邦化学社製、商品名「フォスファノールRB-410」
・ドデシルエーテルホスフェートNa塩:東京化成工業社製、商品名「Sodium Monododecyl Phosphate」
<その他の添加剤>
(有機酸)
・グリシン:東京化成工業社製、商品名「Glycine」
(塩基性化合物)
・テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetramethylammonium Hydroxide (10% in Water)」
・テトラエチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetraethylammonium Hydroxide (10% in Water)」
・テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetrabuthylammonium Hydroxide (40% in Water)」
(水溶性高分子)
・ポリビニルピロリドン:日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドン K30」
・ポリアクリル酸:東亜合成社製、商品名「ジュリマーAC-10L」
・ポリビニルアルコール:日本酢ビポバール社製、商品名「PXP-05」
<(A)シリカ粒子>
・PL-10H:扶桑化学工業社製、商品名「PL-10H」
・PL-7:扶桑化学工業社製、商品名「PL-7」
・PL-3:扶桑化学工業社製、商品名「PL-3」
・PL-1:扶桑化学工業社製、商品名「PL-1」
・MP-4540M:日産化学社製、商品名「MP-4540M」
<(B)式(1)で表される化合物>
・エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:SACHEM社製、商品名「水酸化エチルトリメチルアンモニウム」
・2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Choline(47-50% in Water)」
・ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Benzyltrimethylammonium Hydroxide(10% in Water)」
<(C)リン酸エステル>
・ジPOEアルキルエーテルリン酸:日光ケミカルズ社製、商品名「NIKKOL DDP-6」
・ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸:東邦化学社製、商品名「フォスファノールML-220」
・ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸:東邦化学社製、商品名「フォスファノールRB-410」
・ドデシルエーテルホスフェートNa塩:東京化成工業社製、商品名「Sodium Monododecyl Phosphate」
<その他の添加剤>
(有機酸)
・グリシン:東京化成工業社製、商品名「Glycine」
(塩基性化合物)
・テトラメチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetramethylammonium Hydroxide (10% in Water)」
・テトラエチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetraethylammonium Hydroxide (10% in Water)」
・テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:東京化成工業社製、商品名「Tetrabuthylammonium Hydroxide (40% in Water)」
(水溶性高分子)
・ポリビニルピロリドン:日本触媒社製、商品名「ポリビニルピロリドン K30」
・ポリアクリル酸:東亜合成社製、商品名「ジュリマーAC-10L」
・ポリビニルアルコール:日本酢ビポバール社製、商品名「PXP-05」
実施例1~10の化学機械研磨用組成物によれば、ポリシリコン膜の研磨速度が1500Å/分以上であり、シリコン酸化膜の研磨速度が15Å/分未満であるため、ポリシリコン膜を選択的に研磨することができ、かつ、ポリシリコン膜のディッシング量を低減でることがわかる。
これに対し、比較例1~12の化学機械研磨用組成物では、ポリシリコン膜の選択的研磨特性が劣るか、もしくはポリシリコン膜のディッシング量が大きくなるか、またはその両方の結果を招き、実施例1~10の化学機械研磨用組成物に比べて所望の特性を満たさないことがわかる。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…基体、12…シリコン酸化膜、14…トレンチ、16…ポリシリコン膜、42…スラリー供給ノズル、44…スラリー(化学機械研磨用組成物)、46…研磨用パッド、48…ターンテーブル、50…半導体基板、52…キャリアーヘッド、54…水供給ノズル、56…ドレッサー、100…被処理体、200…研磨装置
Claims (6)
- 前記(C)リン酸エステルが、ポリオキシエチレン基、炭素数12以上のアルキル基、およびアリール基からなる群より選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の化学機械研磨用組成物。
- 化学機械研磨用組成物中における前記(A)成分の含有量をMA(質量%)、前記(C)成分の含有量をMC(質量%)としたときに、MA/MCの値が100~400である、請求項1または請求項2に記載の化学機械研磨用組成物。
- 前記MA(質量%)が0.1~10質量%である、請求項3に記載の化学機械研磨用組成物。
- ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨するために用いられる、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物を用いて、ポリシリコン膜を有する被研磨面を研磨する工程を含む、研磨方法。
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