JP2023072344A - 化学機械研磨用組成物および研磨方法 - Google Patents

化学機械研磨用組成物および研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】モリブデン膜およびシリコン酸化膜を安定した研磨速度で研磨でき、かつ、モリブデン膜の腐食およびシリコン酸化膜の欠陥の発生を抑制することができる化学機械研磨用組成物を提供する。【解決手段】化学機械研磨用組成物は、砥粒と、鉄(III)化合物と、を含有し、砥粒が、下記一般式(1)で表される官能基および下記一般式(2)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。-SO3-M+・・・・・(1)-COO-M+・・・・・(2)上記式(1)および(2)中、M+は1価の陽イオンを表す。【選択図】なし

Description

本発明は、化学機械研磨用組成物およびそれを用いた研磨方法に関する。
半導体集積回路の製造技術の向上に伴い、半導体素子の高集積化、高速動作が求められている。これに伴い、半導体素子における微細回路の製造工程において要求される半導体基板表面の平坦性はより厳しくなってきており、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)が半導体素子の製造工程に不可欠な技術となっている。
CMPを経て製造される半導体基板の、配線間を上下縦方向に電気的に接合するヴィアホールには、埋め込み性に優れたタングステンが多用されている。タングステン膜を研磨するために使用される化学機械研磨用組成物としては、過酸化水素等の酸化剤、硝酸鉄等の鉄触媒、およびシリカ等の砥粒を含有する研磨用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、近年、タングステンに比べて硬度が低く加工しやすいことから、タングステンに代わりモリブデンも使用されており、モリブデン膜を研磨するために使用される化学機械研磨用組成物が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
特表2008-503875号公報 国際公開第2013/188296号公報
モリブデンが使用されたヴィアホールを形成するためのCMPにおいては、埋め込まれたモリブデン膜とその周囲にあるシリコン酸化膜とを同一工程で研磨して平坦化する必要がある。これを実現するために、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を安定した研磨速度で研磨できること、ならびにモリブデン膜の腐食およびシリコン酸化膜の欠陥の発生を抑制すること、を両立できる化学機械研磨用組成物が要求されている。
本発明に係る幾つかの態様は、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を安定した研磨速度で研磨でき、かつ、モリブデン膜の腐食およびシリコン酸化膜の欠陥の発生を抑制することができる化学機械研磨用組成物を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下のいずれかの態様として実現することができる。
本発明に係る化学機械研磨用組成物の一態様は、
砥粒(A)と、鉄(III)化合物(B)と、を含有し、
前記砥粒(A)が、下記一般式(1)で表される官能基および下記一般式(2)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
前記化学機械研磨用組成物の一態様において、
アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基、スルホ基、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(C)をさらに含有してもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)の平均二次粒子径が5nm以上100nm以下であってもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)の会合度が1.0以上2.0以下であってもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)のゼータ電位が0mV未満であってもよい。
前記化学機械研磨用組成物のいずれかの態様において、
pHが1以上6以下であってもよい。
本発明に係る研磨方法の一態様は、
前記いずれかの態様の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む。
前記研磨方法の一態様において、
前記半導体基板が、モリブデンおよびモリブデン合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備えていてもよい。
本発明に係る化学機械研磨用組成物を用いることで、モリブデン膜の腐食およびシリコン酸化膜の欠陥の発生を抑制しつつ、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨することができる。
本実施形態に係る研磨工程での使用に適した被処理体を模式的に示した断面図である。 第1研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。 第2研磨工程終了時での被処理体を模式的に示した断面図である。 化学機械研磨装置を模式的に示した斜視図である。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
本明細書において、「X~Y」のように記載された数値範囲は、数値Xを下限値として含み、かつ、数値Yを上限値として含むものとして解釈される。
1.化学機械研磨用組成物
本発明の一実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒(A)(本明細書において、「成分(A)」ともいう)と、鉄(III)化合物(B)(本明細書において、「成分(
B)」ともいう)と、を含有し、前記砥粒(A)が下記一般式(1)で表される官能基および下記一般式(2)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
以下、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
1.1.成分(A)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、砥粒(A)を含有する。成分(A)は、無機粒子または有機粒子のいずれであってもよいが、無機粒子が好ましい。無機粒子としては、シリカ、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の無機酸化物粒子が挙げられるが、これらの中でもシリカ粒子が好ましい。シリカ粒子としては、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられるが、コロイダルシリカが好ましい。
成分(A)の形状は、特に限定されず、球状であっても、繭状であっても、連鎖球状であっても、表面に複数の突起を有してもよい。表面に複数の突起を有する砥粒は、例えば特開2007-153732号公報や特開2013-121631号公報に記載された方法を適用して製造することができる。
成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において、好ましくは負のゼータ電位である0mV未満であり、より好ましくは-10mV以下であり、特に好ましくは-15mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐことができるので、化学機械研磨用組成物の貯蔵安定性が向上すると共に、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨することができる。なお、ゼータ電位測定装置としては、大塚電子株式会社製の「ELSZ-2000ZS」、Malvern社製の「Zetasizer
Ultra」、Dispersion Technology Inc.製の「DT300」等が挙げられる。
成分(A)は、その表面の少なくとも一部が下記一般式(1)で表される官能基および下記一般式(2)で表される官能基(以下、「特定官能基」ともいう)のうち少なくとも1種の官能基を有する。
-SO ・・・・・(1)
-COO ・・・・・(2)
(上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
表面の少なくとも一部が特定官能基によって修飾された砥粒は、特定官能基によって表面修飾されていない砥粒に比べてゼータ電位の絶対値が大きくなり、砥粒同士の静電反発力が増大する。その結果、化学機械研磨用組成物中における砥粒の分散性が向上するため、研磨傷やディッシングの発生を低減しながら、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨することができる。
上記一般式(1)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。すなわち、上記一般式(1)で表される官能基は、「スルホ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「スルホ基の塩」とは、スルホ基(-SOH)に含まれている水素イオンをLi、Na、K、NH 等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(1)で表される官能基を有する
成分(A)は、その表面に上記一般式(1)で表される官能基が共有結合を介して固定された砥粒であり、その表面に上記一般式(1)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したような砥粒は含まれない。
上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)は、以下のようにして製造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、メルカプト基含有シランカップリング剤を酸性媒体中で十分に攪拌することにより、シリカの表面にメルカプト基含有シランカップリング剤を共有結合させる。ここで、メルカプト基含有シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。次に、過酸化水素を更に適量添加して十分に放置することにより、上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)を得ることができる。
上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は、好ましくは0mV未満であり、より好ましくは-10mV以下であり、特に好ましくは-15mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置は、上述した装置を使用することができる。上記一般式(1)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、上述したメルカプト基含有シランカップリング剤等の添加量を適宜増減することにより調整することができる。
上記一般式(2)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。すなわち、上記一般式(2)で表される官能基は、「カルボキシ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基」と言い換えることもできる。ここで、「カルボキシ基の塩」とは、カルボキシ基(-COOH)に含まれている水素イオンをLi、Na、K、NH 等の1価の陽イオンで置換した官能基のことをいう。上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)は、その表面に上記一般式(2)で表される官能基が共有結合を介して固定された砥粒であり、その表面に上記一般式(2)で表される官能基を有する化合物が物理的あるいはイオン的に吸着したような砥粒は含まれない。
上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)は、以下のようにして製造することができる。まず、公知の方法により作成されたシリカと、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤とを塩基性媒体中で十分に攪拌し、砥粒の表面にカルボン酸無水物含有シランカップリング剤を共有結合させることにより、上記一般式(2)で表される官能基を有する砥粒を得ることができる。ここで、カルボン酸無水物含有シランカップリング剤としては、例えば、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物等が挙げられる。
上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、化学機械研磨用組成物中において負電位であり、その負電位は、好ましくは0mV未満であり、より好ましくは-10mV以下であり、特に好ましくは-15mV以下である。成分(A)のゼータ電位が前記範囲にあると、砥粒間の静電反発力によって効果的に粒子同士の凝集を防ぐと共に、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。なお、ゼータ電位測定装置は、上述した装置を使用することができる。上記一般式(2)で表される官能基を有する成分(A)のゼータ電位は、上述したカルボン酸無水物含有シランカップリング剤等の添加量を適宜増減することにより調整することができる。
化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均二次粒子径は、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは7nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均二次粒子径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは70nm以下であり、特に好ましくは60nm以下である。成分(A)の平均二次粒子径が前記範囲にあると、小粒径のため機械的な研磨性能は低下するが、表面自由エネルギーが増大することでモリブデンや酸化シリコンとの反応性が向上するため、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できると共に、粒子の沈降・分離を生ずることのない安定性に優れた化学機械研磨用組成物が得られる。なお、化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均二次粒子径は、動的光散乱法を使用して測定する粒度分布測定装置により測定された体積基準の平均粒子径である。このような粒度分布測定装置としては、例えばMalvern社製、型式「Zetasizer Ultra」が挙げられる。
化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上であり、より好ましくは7nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均一次粒子径は、好ましくは100nm以下であり、より好ましくは70nm以下であり、特に好ましくは60nm以下である。なお、化学機械研磨用組成物中における成分(A)の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡観察により成分(A)の50個の粒子径の平均値を求めることにより算出することができる。
上述のようにして測定された平均二次粒子径と平均一次粒子径より、以下の算出式を用いて成分(A)の化学機械研磨用組成物中における凝集度合いを示す指標である会合度を算出することができる。
会合度=(平均二次粒子径(nm))/(平均一次粒子径(nm))
化学機械研磨用組成物中における成分(A)の会合度は、好ましくは1.0以上であり、より好ましくは1.01以上である。化学機械研磨用組成物中における成分(A)の会合度は、好ましくは2.0以下であり、より好ましくは1.7以下であり、特に好ましくは1.6以下である。成分(A)の会合度が前記範囲にあると、化学機械研磨用組成物中において成分(A)の凝集が抑制され分散しており、粒子の表面自由エネルギーが増大することでモリブデンや酸化シリコンとの反応性が向上するため、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板をより安定した研磨速度で研磨できる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、特に好ましくは0.5質量%以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(A)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは6質量%以下である。成分(A)の含有量が前記範囲であると、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板を安定した研磨速度で研磨できると共に、化学機械研磨用組成物の保存安定性が良好となる場合がある。
1.2.成分(B)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、鉄(III)化合物(B)を含有する。成分(B)は、モリブデン膜の表面を酸化して脆弱な改質層を作り出し、モリブデン膜の研磨を促進する作用を有する。
成分(B)としては、上述した作用を有するものであれば、有機酸鉄(III)塩また
は無機酸鉄(III)塩のいずれであってもよい。成分(B)としては、鉄(III)イオンのキレート化合物であることが好ましい。
鉄(III)イオンのキレート化合物は、鉄(III)イオンとキレート剤とを反応させることで作成することができる。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物を調製する際に、成分(B)として鉄(III)イオンのキレート化合物を添加してもよいが、鉄(III)イオンとキレート剤とを別個に添加して、それらを組成物中で反応させることによって鉄(III)イオンのキレート化合物を生成させてもよい。
前記キレート剤としては、二座以上の配位子として鉄(III)イオンへ配位することのできる化合物であれば特に限定されないが、例えば、(多価)カルボン酸、(多価)アミノカルボン酸、(多価)オキシカルボン酸、(多価)ホスホン酸、およびこれらの塩等のキレート剤を使用することができる。前記キレート剤の好ましい例としては、グリシン、クエン酸、酒石酸、アセチルアセトン、ジヒドロキシエチルグリシン、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸;ピロリン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸);およびこれらの塩等が挙げられる。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸が特に好ましい。これらのキレート剤は単独で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
なお、例えば特表2008-503875号公報に記載されたタングステンを研磨するための化学機械研磨用組成物には鉄(III)化合物が使用されており、具体的には硝酸鉄(III)が使用されている。しかしながら、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物においては、硝酸鉄(III)を使用することはできない。硝酸鉄(III)を使用すると、硝酸イオンの作用によって、モリブデン膜の表面を過剰に酸化してしまい、モリブデン部位の腐食が発生しやすくなるからである。したがって、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、硝酸イオンをできる限り含有しないことが好ましい。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の硝酸イオン濃度は、200ppm以下であることが好ましく、190ppm以下であることがより好ましく、180ppm以下であることが特に好ましい。なお、本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が硝酸イオンを含有する場合であっても、0.005ppm以上であれば許容することができ、0.01ppm以上であっても実用上は許容することができる。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(B)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、特に好ましくは0.01質量%以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(B)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.5質量%以下である。成分(B)の含有量が前記範囲にあると、モリブデン膜を酸化させて研磨を促進させることができると共に、モリブデンとアニオン種との過剰な反応を防ぎ、モリブデン膜の腐食の発生を低減できる場合がある。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の鉄(III)イオンの濃度は、好ましくは1ppm以上であり、より好ましくは3ppm以上であり、特に好ましくは5ppm以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の鉄(III)イオンの濃度は、好ま
しくは1000ppm以下であり、より好ましくは900ppm以下であり、特に好ましくは800ppm以下である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の鉄(III)イオンの濃度が前記範囲にあると、モリブデン膜を酸化させて研磨を促進させることができると共に、モリブデンとアニオン種との過剰な反応を防ぎ、モリブデン膜の腐食の発生を低減できる場合がある。
1.3.成分(C)
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基、スルホ基、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(C)(本明細書において、「成分(C)」ともいう)を含有してもよい。成分(C)は、モリブデン膜の表面に吸着して保護膜を形成することにより、モリブデン部位の腐食を低減させる作用を有する。
アミノ基およびその塩としては、下記一般式(3)または下記一般式(4)で表される官能基が挙げられる。
-NR ・・・・・(3)
-N ・・・・・(4)
(上記式(3)および上記式(4)中、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Xは陰イオンを表す。)
上記一般式(3)および上記一般式(4)中、RおよびRは各々独立して、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表すが、RとRとが結合して環構造を形成していてもよい。
~Rで表される炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、芳香脂肪族炭化水素基、または脂環式炭化水素基のいずれでもよい。また、脂肪族炭化水素基および芳香脂肪族炭化水素基の脂肪族は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状でも分岐状でもよい。これらの炭化水素基としては、例えば、直鎖状、分岐状または環状の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、およびアリール基等が挙げられる。
アルキル基としては、通常炭素数が1~6の低級アルキル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、通常炭素数1~6の低級アルケニル基が好ましく、炭素数1~4の低級アルケニル基がより好ましい。このようなアルケニル基としては、例えば、ビニル基、n-プロペニル基、iso-プロペニル基、n-ブテニル基、iso-ブテニル基、sec-ブテニル基、tert-ブテニル基等が挙げられる。
アラルキル基としては、通常炭素数7~12のものが好ましい。このようなアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルヘキシル基、メチルベンジル基、メチルフェネチル基、エチルベンジル基等が挙げられる。
アリール基としては、通常炭素数6~14のものが好ましい。このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キ
シリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,5-キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
前記アリール基および前記アラルキル基の芳香環は、例えば、メチル基、エチル基等の低級アルキル基や、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基等を、置換基として有していてもよい。
カルボキシ基およびその塩としては、下記一般式(5)で表される官能基が挙げられる。
-COO ・・・・・(5)
(Mは1価の陽イオンを表す。)
上記一般式(5)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。
スルホ基およびその塩としては、下記一般式(6)で表される官能基が挙げられる。
-SO ・・・・・(6)
(Mは1価の陽イオンを表す。)
上記一般式(6)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。
成分(C)は、アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基、スルホ基、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する構造であれば特に限定されないが、下記一般式(7)または下記一般式(8)で表される構造を有することが好ましい。
-N(RCOO(R2-n ・・・・・(7)
-N(RSO (R2-n ・・・・・(8)
(上記式(7)および上記式(8)中、Rは、置換もしくは非置換の二価の炭化水素基を表す。Rは、水素原子、または置換もしくは非置換の炭化水素基を表す。Mは1価の陽イオンを表す。nは1~2の整数を表す。)
上記一般式(7)および上記一般式(8)中、Rで表される二価の炭化水素基としては、炭素数1~3のアルカンジイル基が挙げられる。上記一般式(7)および上記一般式(8)中、Rで表される炭化水素基としては、上記一般式(3)および上記一般式(4)のR~Rで例示した炭化水素基と同様の炭化水素基が挙げられる。上記一般式(7)および上記一般式(8)中、Mで表される1価の陽イオンとしては、これらに限定されないが、例えば、H、Li、Na、K、NH が挙げられる。
成分(C)が上記一般式(7)または上記一般式(8)で表される構造を有することにより、成分(C)がモリブデン膜の表面に効果的に配位されるため、モリブデン部位の腐食をより効果的に低減することができる。
成分(C)としては、例えば、N-(ホスホノメチル)イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、3,3’,3’’-ニトリロトリプロピオン酸、オクチルイミノジプロピオン酸塩、ラウリルイミノジプロピオン酸塩、ミリスチルイミノジプロピオン酸塩、ステアリルイミノジプロピオン酸塩、パルミチルイミノジプロピオン酸塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、1,3-プロパン
ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン、(S,S)-エチレンジアミンジコハク酸三水和物、イミノ二酢酸、trans-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸水和物、ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。これらの成分(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(C)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.0005質量%以上であり、より好ましくは0.0008質量%以上であり、特に好ましくは0.001質量%以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物中の成分(C)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。成分(C)の含有量が前記範囲にあると、モリブデン部位の腐食を効果的に低減できる場合がある。
1.4.その他の成分
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、前述の各成分の他、必要に応じて、液状媒体、水溶性高分子、含窒素複素環化合物、界面活性剤、有機酸およびその塩、無機酸およびその塩、塩基性化合物等を含有してもよい。
<液状媒体>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、液状媒体を含有する。液状媒体としては、水、水およびアルコールの混合媒体、水および水との相溶性を有する有機溶媒を含む混合媒体等が挙げられる。これらの中でも、水、水およびアルコールの混合媒体を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。水の原料としては純水を好ましく使用することができる。液状媒体は、前述の各成分の残部として配合されていればよい。
<水溶性高分子>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子は、被研磨面の表面に吸着して研磨摩擦を低減させ、被研磨面におけるディッシングの発生を低減できる場合がある。
水溶性高分子の具体例としては、ポリカルボン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万以上150万以下、より好ましくは4万以上120万以下である。ここで、「重量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定されたポリエチレングリコール換算の重量平均分子量のことを指す。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が水溶性高分子を含有する場合、水溶性高分子の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.002質量%以上である。水溶性高分子の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下である。
<含窒素複素環化合物>
含窒素複素環化合物は、少なくとも1個の窒素原子を有する、複素五員環および複素六員環から選択される少なくとも1種の複素環を含む有機化合物である。前記複素環の具体例としては、ピロール構造、イミダゾール構造、トリアゾール構造等の複素五員環;ピリジン構造、ピリミジン構造、ピリダジン構造、ピラジン構造等の複素六員環が挙げられる。該複素環は縮合環を形成していてもよい。具体的には、インドール構造、イソインドール構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キナゾリン構造、シンノリン構造、フタラジン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造等が挙げられる。このような構造を有する複素環化合物のうち、ピリジン構造、キノリン構造、ベンゾイミダゾール構造、ベンゾトリアゾール構造を有する複素環化合物が好ましい。
含窒素複素環化合物の具体例としては、アジリジン、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピペリジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、イミダゾール、インドール、キノリン、イソキノリン、ベンゾイソキノリン、プリン、プテリジン、トリアゾール、トリアゾリジン、ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、およびこれらの骨格を有する誘導体が挙げられる。これらの中でも、ベンゾトリアゾールおよびトリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの含窒素複素環化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<界面活性剤>
界面活性剤としては、特に制限されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を使用することができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸塩;パーフルオロアルキル化合物等の含フッ素系界面活性剤等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール、アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等の三重結合を有する非イオン性界面活性剤;ポリエチレングリコール型界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<有機酸およびその塩>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、有機酸およびその塩(前記成分(C)および前記水溶性高分子のうちカルボキシ基またはスルホ基を有するものを除く)からなる群より選択される少なくとも1種を含有してもよい。有機酸およびその塩は、成分(A)との相乗効果により、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含む半導体基板の研磨速度を向上させることができる場合がある。
有機酸およびその塩としては、カルボキシ基を有する化合物、スルホ基を有する化合物であることが好ましい。カルボキシ基を有する化合物としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、アルケニルコハク酸、乳酸、酒石酸、フマル酸、グリコール酸、フタル酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、キノリン酸、キナルジン酸、アミド硫酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸;およびこれらの塩が挙げられる。スルホ基を有する化合物としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸;ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸;テトラデセンスルホン酸等のα-オレフィンスルホン酸;およびこれらの塩が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物が有機酸(塩)を含有する場合、有機酸(塩)
の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。有機酸(塩)の含有量は、化学機械研磨用組成物の全質量を100質量%としたときに、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
<無機酸およびその塩>
無機酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、無機酸は、化学機械研磨用組成物中で別途添加した塩基と塩を形成してもよい。
<塩基性化合物>
塩基性化合物としては、有機塩基および無機塩基が挙げられる。有機塩基としては、アミンが好ましく、例えばトリエチルアミン、モノエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルアミン、メチルアミン、エチレンジアミン、ジグリコールアミン、イソプロピルアミン等が挙げられる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。これらの塩基性化合物の中でも、アンモニア、水酸化カリウムが好ましい。これらの塩基性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<過酸化水素>
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、過酸化水素を含有してもよいが、過酸化水素を含有しないことが好ましい。過酸化水素は、モリブデンを過剰に酸化してモリブデン部位の過剰な腐食(エッチング)を促進するので、良好な研磨面を得られない場合が多い。
1.5.pH
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.5以上であり、特に好ましくは2以上である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHは、好ましくは6以下であり、より好ましくは5以下であり、特に好ましくは4以下である。本実施形態に係る化学機械研磨用組成物のpHが前記範囲にあると、モリブデン膜の表面を効果的に酸化して脆弱な改質層を作り出しやすくなるので、モリブデン膜の研磨速度が向上する傾向にある。
なお、化学機械研磨用組成物のpHは、例えば、前述の成分(C)、有機酸(塩)、無機酸(塩)、塩基性化合物等を添加することにより調整することができ、これらの1種以上を用いることができる。
本発明において、pHは、水素イオン指数のことを指し、その値は、市販のpHメーター(例えば、株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーター)を用いて測定することができる。
1.6.化学機械研磨用組成物の調製方法
本実施形態に係る化学機械研磨用組成物は、水等の液状媒体に前述した各成分を溶解または分散させることにより調製することができる。溶解または分散させる方法は、特に制限されず、均一に溶解または分散できればどのような方法を適用してもよい。また、前述した各成分の混合順序や混合方法についても特に制限されない。
また、化学機械研磨用組成物は、濃縮タイプの原液として調製し、使用時に水等の液状媒体で希釈して使用することもできる。
2.研磨方法
本発明の一実施形態に係る研磨方法は、前述の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む。該化学機械研磨用組成物は、モリブデン膜の腐食の発生を抑制しつつ、モリブデン膜を含む半導体基板を安定した研磨速度で化学機械研磨を行うことができる。そのため、被処理体たる半導体基板は、モリブデンおよびモリブデン合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備えていることが好ましい。以下、図1~図4を参照しながら、本実施形態に係る研磨方法について詳細に説明する。
2.1.被処理体
図1に、本実施形態に係る化学機械研磨方法に適用される被処理体100の一例を示す。
(1)まず、図1に示すように、基体10を用意する。基体10は、例えば、シリコン基板とその上に形成されたシリコン酸化膜から構成されていてもよい。さらに、基体10には、トランジスタ等の機能デバイスが形成されていてもよい。次に、基体10の上に、CVD法または熱酸化法を用いて絶縁膜であるシリコン酸化膜12を形成させる。
(2)次に、シリコン酸化膜12をパターニングする。それをマスクとして、シリコン酸化膜12にフォトリソグラフィー法を適用してヴィアホール14を形成させる。
(3)次に、スパッタを適用してシリコン酸化膜12の表面およびヴィアホール14の内壁面にバリアメタル膜16を形成させる。モリブデンとシリコンとの電気的接触があまり良好でないため、バリアメタル膜を介在させることで良好な電気的接触を実現している。バリアメタル膜16としては、チタンおよび/または窒化チタンが挙げられる。
(4)次に、CVD法を適用してモリブデン膜18を形成させる。
以上の工程により、被処理体100が形成される。
2.2.化学機械研磨方法
2.2.1.第1研磨処理工程
第1研磨処理工程は、図2に示すように、前述した化学機械研磨用組成物を用いてバリアメタル膜16およびモリブデン膜18をシリコン酸化膜12が露出するまで研磨する工程である。前述した化学機械研磨用組成物は、モリブデン膜だけでなくバリアメタル膜に対しても優れた研磨作用を有するため、バリアメタル膜16およびモリブデン膜18を同一処理工程で研磨・除去することができる。
2.2.2.第2研磨処理工程
第2研磨処理工程は、図3に示すように、前述した化学機械研磨用組成物を用いてさらにバリアメタル膜16、モリブデン膜18およびシリコン酸化膜12を同時に研磨する工程である。前述した化学機械研磨用組成物は、モリブデン膜およびシリコン酸化膜に対する非選択的研磨性を有するため、第2研磨処理工程によって極めて平坦性に優れた仕上げ面を得ることができる。
ここで、第2研磨処理工程で使用される化学機械研磨用組成物は、第1研磨処理工程で使用される化学機械研磨用組成物に含まれる成分(B)の濃度を前述した組成範囲内で適宜変更して用いてもよい。モリブデン膜の研磨速度に対するシリコン酸化膜の研磨速度の比が1以上となるように成分(B)の濃度を調整することで、シリコン酸化膜に対してモリブデン膜の過剰研磨が十分に抑制できるため、モリブデン膜およびシリコン酸化膜を含
む半導体基板を安定した研磨速度で研磨することができる。また、化学機械研磨用組成物中における成分(A)中のゼータ電位あるいは会合度を調整することでも、モリブデン膜の研磨速度に対するシリコン酸化膜の研磨速度の比が1以上となるように調整できる。
2.2.3.化学機械研磨装置
前記第1研磨処理工程および前記第2研磨処理工程では、例えば、図4に示すような化学機械研磨装置200を用いることができる。図4は、化学機械研磨装置200を模式的に示した斜視図である。スラリー供給ノズル42からスラリー44を供給し、かつ、研磨布46が貼付されたターンテーブル48を回転させながら、半導体基板50を保持したキャリアーヘッド52を当接させることにより行う。なお、図4には、水供給ノズル54およびドレッサー56も併せて示してある。
キャリアーヘッド52の研磨荷重は、10~980hPaの範囲内で選択することができ、好ましくは30~490hPaである。また、ターンテーブル48およびキャリアーヘッド52の回転数は10~400rpmの範囲内で適宜選択することができ、好ましくは30~150rpmである。スラリー供給ノズル42から供給されるスラリー44の流量は、10~1,000mL/分の範囲内で選択することができ、好ましくは50~400mL/分である。
市販の化学機械研磨装置としては、例えば、株式会社荏原製作所製、型式「EPO-112」、「EPO-222」;ラップマスターSFT社製、型式「LGP-510」、「LGP-552」;アプライドマテリアル社製、型式「Mirra」、「Reflexion」等が挙げられる。
3.実施例
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、本実施例における「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
3.1.シリカ粒子水分散体の調製
3.1.1.水分散体Aの調製
国際公開第2008/123373号に記載の実施例3に従い、シリカ粒子を15.5質量%含む、pH7.6の水分散体Aを得た。
水分散体Aを動的光散乱法(Malvern社製、型式「Zetasizer Ultra」)にて測定した結果、水分散体Aに含まれるシリカ粒子の体積換算における平均二次粒子径は17.3nmであった。
また、水分散体Aを透過型電子顕微鏡(TEM)(株式会社日立ハイテク製、型式「H―7650」)を用いて30000倍の倍率で撮影し、観察されたシリカ粒子の像50個について、粒子像の端部と端部を結んだ直線のうち最も長い直線の距離を計測し、その値の平均値を平均一次粒子径として算出した。このようにして算出された水分散体Aに含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は15.8nmであった。
上述の方法により算出された平均一次粒子径および平均二次粒子径を用いて、以下の算出式により会合度を算出したところ、水分散体Aに含まれるシリカ粒子の会合度は1.1であった。
会合度=(平均二次粒子径)/(平均一次粒子径)
以下、各水分散体に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径、平均二次粒子径および会合度は同様の方法により測定し算出した。
3.1.2.水分散体Bの調製
水分散体A(15.5%コロイダルシリカ分散液)2520gを60℃に加熱した。そ
の後、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)15.5gを加え、さらに60℃で4時間撹拌し、平均二次粒子径17.3nmのカルボキシ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Bを得た。
3.1.3.水分散体Cの調製
水分散体A(15.5%コロイダルシリカ分散液)2520gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均二次粒子径17.3nmのスルホ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Cを得た。
3.1.4.水分散体Dの調製
PL-1(扶桑化学工業株式会社製、12%コロイダルシリカ分散液)をそのまま水分散体Dとして使用した。上記の方法で測定したところ、水分散体Dに含まれるシリカ粒子の平均二次粒子径は30.1nmであった。
3.1.5.水分散体Eの調製
PL-1(扶桑化学工業株式会社製、12%コロイダルシリカ分散液)3250gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均二次粒子径30.1nmのスルホ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Eを得た。
3.1.6.水分散体Fの調製
PL-3(扶桑化学工業株式会社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)1950gを60℃に加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)15.5gを加え、さらに60℃で4時間撹拌し、平均二次粒子径58.2nmのカルボキシ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Fを得た。
3.1.7.水分散体Gの調製
PL-3(扶桑化学工業株式会社製、19.5%コロイダルシリカ分散液)2000gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均二次粒子径58.2nmのスルホ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Gを得た。
3.1.8.水分散体Hの調製
PL-2L(扶桑化学工業株式会社製、20%コロイダルシリカ分散液)1950gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均二次粒子径22.5nmのスルホ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Hを得た。
3.1.9.水分散体Iの調製
PL-2L(扶桑化学工業株式会社製、20%コロイダルシリカ分散液)1950gを60℃に加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)15.5gを加え、さらに60℃で4時間撹拌し、平均二次粒子径22.5nmのカルボキシ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Iを得た。
3.1.10.水分散体Jの調製
PL-06L(扶桑化学工業株式会社製、6%コロイダルシリカ分散液)6510gに25%アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を添加し、pH9に調整した。その後、(3-トリエトキシシリル)メルカプト基含有シランカップリング剤(商品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)3.9gを滴下し、60℃で2時間撹拌した。その後、過酸化水素(富士フイルム和光純薬株式会社製)50gを添加し、常圧下で8時間還流し、平均二次粒子径7.4nmのスルホ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Jを得た。
3.1.11.水分散体Kの調製
PL-06L(扶桑化学工業株式会社製、6%コロイダルシリカ分散液)6510gを60℃に加熱した。その後、(3-トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物(東京化成工業株式会社製)15.5gを加え、さらに60℃で4時間撹拌し、平均二次粒子径7.4nmのカルボキシ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Kを得た。
3.1.12.水分散体Lの調製
メタノール70gと3-アミノプロピルトリエトキシシラン(東京化成工業株式会社製)11.3gの混合液を、水分散体A(15.5%コロイダルシリカ分散液)2520gへ滴下し、常圧下で2時間還流を行った。その後、容量を一定に保ちつつ純水を滴下し、塔頂温が100℃に達した時点で純水の滴下を終了し、平均二次粒子径17.3nmのアミノ基で表面修飾されたシリカ粒子を含む水分散体Lを得た。
3.2.成分(C)の調製
3.2.1.オクチルイミノジプロピオン酸塩の調製
アルキルアミンとしてオクチルアミン(東京化成工業株式会社製)2.5g(19.5mmol)、3―クロロプロピオン酸(東京化学工業株式会社製)5.7g(52.9mmol)を、水5.0mL、エタノール(関東化学株式会社製)32mLの混合溶液に加え、6時間還流撹拌した。この還流撹拌中に、水酸化カリウム(関東化学株式会社製)より調製した水酸化カリウム水溶液(5.0mol/L)7.8mLを加えpH調整を行った。その後、溶液を4℃に冷却し、沈殿物を生成した。生成した沈殿物を、エタノールにて洗浄した後、ろ過し、減圧乾燥させて固体を回収し、オクチルイミノジプロピオン酸塩を得た。
3.2.2.ラウリルイミノジプロピオン酸塩の調製
アルキルアミンとしてラウリルアミン(東京化成工業株式会社製)3.6g(19.5mmol)を用いた他は、上記「3.2.1.オクチルイミノジプロピオン酸塩の調製」と同様の操作を行い、ラウリルイミノジプロピオン酸塩を得た。
3.2.3.ミリスチルイミノジプロピオン酸塩の調製
アルキルアミンとしてミリスチルアミン(東京化成工業株式会社製)4.2g(19.5mmol)を用いた他は、上記「3.2.1.オクチルイミノジプロピオン酸塩の調製」と同様の操作を行い、ミリスチルイミノジプロピオン酸塩を得た。
3.2.4.パルミチルイミノジプロピオン酸塩の調製
アルキルアミンとしてパルミチルアミン(東京化成工業株式会社製)4.7g(19.5mmol)を用いた他は、上記「3.2.1.オクチルイミノジプロピオン酸塩の調製」と同様の操作を行い、パルミチルイミノジプロピオン酸塩を得た。
3.2.5.ステアリルイミノジプロピオン酸塩の調製
アルキルアミンとしてステアリルアミン(東京化成工業株式会社製)5.3g(19.5mmol)を用いた他は、上記「3.2.1.オクチルイミノジプロピオン酸塩の調製」と同様の操作を行い、ステアリルイミノジプロピオン酸塩を得た。
3.3.化学機械研磨用組成物の調製
表1~表3に示す組成となるように各成分を混合し、さらに表1~表3に示すpHとなるようにpH調整剤として、水酸化カリウム水溶液(関東化学株式会社製、商品名「48%水酸化カリウム水溶液」)、アンモニア水(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「アンモニア水」、マレイン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「マレイン酸」)を必要に応じて添加して調整し、全成分の合計量が100質量%となるように純水を添加して、各実施例および各比較例の化学機械研磨用組成物を調製した。このようにして得られた各化学機械研磨用組成物について、ゼータ電位測定装置(Dispersion
Technology Inc.製、型式「DT300」)を用いて砥粒のゼータ電位を測定した結果を表1~表3に併せて示す。
3.4.評価方法
3.4.1.モリブデン膜およびシリコン酸化膜の研磨速度評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を用いて、直径12インチのモリブデン膜200nm付きウエハおよび直径12インチのシリコン酸化膜(p-TEOS膜)1000nm付きウエハをそれぞれ被処理体として、下記の条件で化学機械研磨試験を行い、その後、下記の条件でブラシスクラブ洗浄を行った。
(研磨条件)
・研磨装置:アプライド・マテリアルズ社製、型式「Reflexion―LK」
・研磨パッド:富士紡績株式会社製、「多孔質ポリウレタン製パッド;H800-type1(3-1S)775」
・化学機械研磨用組成物供給速度:300mL/分
・定盤回転数:100rpm
・ヘッド回転数:90rpm
・ヘッド押し付け圧:2psi
・研磨時間:60秒
・研磨速度(nm/分)=(研磨前の膜の厚さ-研磨後の膜の厚さ)/研磨時間
(ブラシスクラブ洗浄条件)
・処理剤:純水
・上部ブラシ回転数:400rpm
・下部ブラシ回転数:400rpm
・基板回転数:50rpm
・処理剤供給速度:1200mL/分
なお、モリブデン膜の厚さは、抵抗率測定機(ケーエルエー・テンコール社製、型式「RS-100」)により直流4探針法で抵抗を測定し、このシート抵抗値とモリブデンの体積抵抗率から下記式によって算出した。
モリブデン膜の厚さ(nm)=[モリブデン膜の体積抵抗率(Ω・m)÷シート抵抗値(Ω/sq)]×10
また、シリコン酸化膜の厚さは、光学式膜厚測定装置(ケーエルエー・テンコール社製、型式「ASET F5x」)により測定した。
モリブデン膜の研磨速度の評価基準は下記の通りである。モリブデン膜の研磨速度の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
・AA:研磨速度が2.5nm/分以上30nm/分未満である場合、適切な研磨速度であるので非常に良好と判断した。
・A:研磨速度が30nm/分以上40nm/分未満である場合、研磨速度が大きく量産の際に制御に注意を要するが、実用に供することができるので良好と判断した。
・B:研磨速度が2.5nm/分未満である場合、研磨速度が小さく実用困難であるため不良と判断した。あるいは、研磨速度が40nm/分以上である場合、研磨速度が大きく量産時の制御ができず実用困難であるため不良と判断した。
また、上記で算出したモリブデン膜の研磨速度とシリコン酸化膜の研磨速度を用いて下記式に従い研磨速度比を算出した。
研磨速度比=シリコン酸化膜の研磨速度(nm/分)/モリブデン膜の研磨速度(nm/分)
(評価基準)
・AA:研磨速度比が1以上である場合、シリコン酸化膜に対してモリブデン膜の過剰研磨が十分に抑制できるため非常に良好と判断した。
・A:研磨速度比が0.5以上1未満である場合、シリコン酸化膜に対するモリブデン膜の研磨速度が大きく量産の際に制御に注意を要するが、実用に供することができるので良好と判断した。
・B:研磨速度比が0.5未満である場合、シリコン酸化膜に対してモリブデン膜が過剰に研磨されてしまい、実用困難であるため、不良と判断した。
3.4.2.モリブデン膜のエッチング速度評価
上記で調製した化学機械研磨用組成物を60℃に昇温し、30mm×10mmに裁断したモリブデン膜200nm付きウエハ片を5分間浸漬した。その後、ウエハ片を取り出して流水で水洗し、上記「3.4.1.モリブデン膜およびシリコン酸化膜の研磨速度評価」と同様の方法によりモリブデン膜の厚さを測定した。そして、浸漬前後のモリブデン膜の厚さの変化からエッチング速度を下記式により算出した。
モリブデン膜のエッチング速度(nm/分)=(エッチング前のモリブデン膜の厚さ(nm)-エッチング後のモリブデン膜の厚さ(nm))/エッチング時間(分)
モリブデン膜のエッチング速度の評価基準は下記の通りである。モリブデン膜のエッチング速度の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
・A:エッチング速度が0.1nm/分未満である場合、良好と判断した。
・B:エッチング速度が0.1nm/分以上である場合、エッチング速度が大きく実用困難であるため不良と判断した。
3.4.3.シリコン酸化膜の欠陥評価
上記「3.4.1.モリブデン膜およびシリコン酸化膜の研磨速度評価」で得られた研磨後のシリコン酸化膜付きウエハの表面を欠陥検査装置(ケーエルエー・テンコール社製、型式「Surfscan SP2」)を用いて全面の欠陥数を計測した。
欠陥数の評価基準は下記の通りである。シリコン酸化膜の欠陥数の評価結果を表1~表3に併せて示す。
(評価基準)
・A:シリコン酸化膜における欠陥数が100個未満である場合、実用に供することがで
きるので良好と判断した。
・B:シリコン酸化膜における欠陥数が100個以上である場合、実用に供することができないため不良と判断した。
3.5.評価結果
表1~表3に、各実施例および各比較例で使用した化学機械研磨用組成物の組成ならびに各評価結果を示す。
Figure 2023072344000001
Figure 2023072344000002
Figure 2023072344000003
上表1~上表3中の各成分は、それぞれ下記の商品または試薬を用いた。
<成分(A)>
・水分散体A~L:上記「3.1.シリカ粒子水分散体の調製」の項で調製した水分散体A~L
<成分(B)>
・エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム二水塩:キレスト株式会社製、商品名「キレストFN」
・クエン酸鉄三水和物:扶桑化学工業株式会社製、商品名「富士クエン酸鉄」
・アセチルアセトン鉄:キシダ化学株式会社製、商品名「アセチルアセトン鉄(III)」
・ジエチレントリアミン五酢酸鉄二アンモニウム塩:キレスト株式会社製、商品名「キレストFNZ―50」
・1,3-ジアミノプロパン四酢酸鉄アンモニウム一水塩:キレスト株式会社製、商品名
「キレストPD―FN」
<成分(C)>
・オクチルイミノジプロピオン酸塩:上記「3.2.成分(C)の調製」の項で調製したオクチルイミノジプロピオン酸塩
・ラウリルイミノジプロピオン酸塩:上記「3.2.成分(C)の調製」の項で調製したラウリルイミノジプロピオン酸塩
・ミリスチルイミノジプロピオン酸塩:上記「3.2.成分(C)の調製」の項で調製したミリスチルイミノジプロピオン酸塩
・パルミチルイミノジプロピオン酸塩:上記「3.2.成分(C)の調製」の項で調製したパルミチルイミノジプロピオン酸塩
・ステアリルイミノジプロピオン酸塩:上記「3.2.成分(C)の調製」の項で調製したステアリルイミノジプロピオン酸塩
・ドデシルアミノエチルアミノエチルグリシン:三洋化成工業株式会社製、商品名「レボン S」
・ラウラミドプロピルヒドロキシスルタイン:川研ファインケミカル株式会社、商品名「ソフタゾリンLSB―R」
・ラウリルヒドロキシスルホベタイン:花王株式会社製、商品名「アンヒトール20HD」
<その他の添加剤>
・過酸化水素:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「過酸化水素」
・オルト過ヨウ素酸:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「オルト過よう素酸」
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「ペルオキソ二硫酸アンモニウム」
・硫酸鉄(II)七水和物:富士フイルム和光純薬株式会社製、商品名「硫酸鉄(II)七水和物」
・エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩:キレスト株式会社製、商品名「キレスト2N―40」
特定官能基を有する成分(A)と成分(B)とを併用した実施例1~24の化学機械研磨用組成物によれば、モリブデン膜を酸化させて研磨を促進させることができると共に、モリブデンとアニオン種との過剰な反応を防ぎ、モリブデン膜の腐食の発生を低減できることがわかる。また、特定官能基を有する成分(A)を使用することで、化学機械研磨用組成物中における砥粒同士の反発力が高まり砥粒の凝集が抑制されるため、シリコン酸化膜の欠陥の発生を低減しながら、モリブデン膜およびシリコン酸化膜の両者を安定した研磨速度で研磨できることがわかる。
これに対し、特定官能基を有しない砥粒を含有する比較例1~2、7の化学機械研磨用組成物によれば、シリコン酸化膜の欠陥が発生しやすくなり、実用に供することが難しいことがわかる。また、成分(B)を含有しない比較例3~6の化学機械研磨用組成物によれば、モリブデン膜の研磨速度が低くなりすぎるため、実用に供することが難しいことがわかる。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
10…基体、12…シリコン酸化膜、14…配線用溝、16…バリアメタル膜、18…モリブデン膜、42…スラリー供給ノズル、44…スラリー(化学機械研磨用組成物)、46…研磨用パッド、48…ターンテーブル、50…半導体基板、52…キャリアーヘッド、54…水供給ノズル、56…ドレッサー、100…被処理体、200…研磨装置

Claims (8)

  1. 砥粒(A)と、鉄(III)化合物(B)と、を含有し、
    前記砥粒(A)が、下記一般式(1)で表される官能基および下記一般式(2)で表される官能基のうち少なくとも1種の官能基を有する、化学機械研磨用組成物。
    -SO ・・・・・(1)
    -COO ・・・・・(2)
    (上記式(1)および(2)中、Mは1価の陽イオンを表す。)
  2. アミノ基およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、カルボキシ基、スルホ基、およびそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の官能基と、を有する化合物(C)をさらに含有する、請求項1に記載の化学機械研磨用組成物。
  3. 化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)の平均二次粒子径が5nm以上100nm以下である、請求項1または請求項2に記載の化学機械研磨用組成物。
  4. 化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)の会合度が1.0以上2.0以下である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
  5. 化学機械研磨用組成物中における前記砥粒(A)のゼータ電位が0mV未満である、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
  6. pHが1以上6以下である、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の化学機械研磨用組成物を用いて半導体基板を研磨する工程を含む、研磨方法。
  8. 前記半導体基板が、モリブデンおよびモリブデン合金からなる群より選択される少なくとも1種により構成される部位を備える、請求項7に記載の研磨方法。
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