JP2023093972A - エポキシ樹脂組成物および硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性、熱伝導率、高温弾性率等の高温特性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供し、更にそれを用いた硬化物を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分として、下記一般式(1)、TIFF2023093972000012.tif25167で表される二官能エポキシ樹脂を用い、硬化剤成分として、二官能フェノール化合物および多官能フェノール樹脂を用いる、結晶性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物である。【選択図】なし
Description
本発明は、信頼性に優れた半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料、炭素繊維強化複合材料として有用なエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた重合物に関する。
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電気、電子部品や、半導体装置等の封止方法として、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂等による封止方法やガラス、金属、セラミック等を用いたハーメチックシール法が採用されていたが、近年では信頼性の向上と共に大量生産が可能で、コストメリットのあるトランスファー成形による樹脂封止が主流を占めている。
トランスファー成形による樹脂封止に用いられる樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と、硬化剤としてフェノール樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる封止材料が一般的に使用されている。
パワーデバイスなどの素子を保護する目的で使用されるエポキシ樹脂組成物は、素子が放出する多量の熱に対応するため、耐熱性、熱放散性、低熱膨張性の更なる向上が望まれている。
上記背景を受けて、例えば、特許文献1には、剛直なメソゲン基を有する液晶性のエポキシ樹脂およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、これより得られる硬化物の液晶性は確認できるものの、明確な融点を持った結晶性は有しておらず、耐熱性、高熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等の点で十分ではなかった。特許文献2には、ビスフェノール系のメソゲン構造を有するエポキシ樹脂と二官能性のフェノール性化合物を主成分とする硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物および硬化物が開示され、結晶性の硬化物を与えることが開示されているが、二官能成分どうしの反応であるため、硬化性が十分ではないことに加えて、架橋反応が殆ど起こらないことから耐熱性が不足するうえに、熱伝導率も十分ではなかった。
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、成形性に優れ、耐熱性、低吸湿性、高熱伝導性に優れた結晶性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供し、更にそれを用いた硬化物を提供することである。
本発明者らは、特定の構造を持つエポキシ樹脂に対して、硬化剤として二次元的に反応が進行する特定の二官能の硬化剤と特定の多価フェノール樹脂を組み合わせた場合において、架橋構造を有する結晶性の硬化物が得られ、耐熱性、低吸湿性、高温弾性率、熱伝導率、難燃性等の物性が特異的に向上することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の50wt%以上が二官能エポキシ樹脂であり、硬化剤の20~90wt%が二官能フェノール化合物、硬化剤の10~80wt%が多官能フェノール樹脂であり、結晶性の硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物であり、それを硬化させて得られる結晶性のエポキシ樹脂硬化物である。
上記の多官能フェノール樹脂は、下記式(3)で表される。
(但し、Zは、独立して炭素数6~20の炭化水素基を示し、R1およびR2は、水素原子または、独立して炭素数1~9の炭化水素基を示す。ここで、R1およびR2は、隣接位にあって、互いに連結した環状体を含む。また、mは0.1~15の数を示す。)
また、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする結晶性の硬化物である。
上記硬化物は、走査示差熱分析における結晶の融解に伴う吸熱ピーク(融点)が200℃から350℃の範囲にあること、または走査示差熱分析における結晶の融解に伴う吸熱量(樹脂成分換算)が10J/g以上であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性、信頼性に優れ、かつ高耐熱性、低吸水性、高熱伝導性、低熱膨張性等に優れた成形物を与え、半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料、さらには繊維強化複合材料や機械部品等の成形材料などの複合材料に好適に応用され、優れた高放熱性、高耐熱性および高寸法安定性が発揮される。このような特異的な効果が生ずる理由は、特定のエポキシ樹脂を特定の二官能フェノール性硬化剤と反応させることで高い融点を持ち、高温での高い弾性率を有する結晶性の二次元分子鎖のユニットを形成させるとともに、特定の多価フェノール樹脂を硬化剤として用いることで結晶性を維持しつつ、架橋構造を導入することで、硬化物の高い耐熱性、低吸水性、熱伝導率、低熱膨張性、難燃性等を持たせることが可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。
式(1)で、Xは、単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-φ-、-O-φ-O-を示す。硬化剤との相溶性の観点から-CH2-、-O-、-CO-、-O-φ-O-が好ましく、硬化物とした際の耐熱性の観点からは、単結合、-φ-が好ましい。
nは繰り返し数であり、0~5の数を示す。繰り返し数の異なる複数の化合物の混合物である場合は、nの平均値(Σn/Σ分子数)が0から5の範囲にある。エポキシ樹脂組成物として、無機フィラー高充填率化のためには、低粘度であることが望ましく、好ましいnの範囲(平均値)は0.1~2.0である。
本発明に用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、通常150から600の範囲であるが、無機フィラーの高充填率化および流動性向上の観点からは低粘度性のものが良く、エポキシ当量が150から500の範囲のものが好ましい。
本発明に用いるエポキシ樹脂は、常温で結晶性を有するものが好適に使用される。好ましい融点の範囲は50~250℃であり、より好ましくは、70~200℃の範囲である。これより低いとエポキシ樹脂組成物とした際にブロッキングにより取扱性が低下し、これより高いと硬化剤との相溶性、溶剤への溶解性等が低下する。
本発明に用いるエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、適用する電子部品の信頼性向上の観点より少ない方がよい。特に限定するものではないが、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、以下の方法により測定された値をいう。すなわち、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N-KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加え、0.002N-AgNO3水溶液で電位差滴定を行い得られる値である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必須成分として使用される式(1)のエポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂成分として分子中にエポキシ基を2個以上有する他のエポキシ樹脂を併用してもよい。例を挙げれば、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フルオレンビスフェノール、レゾルシン、カテコール、t‐ブチルカテコール、t‐ブチルハイドロキノン、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック等の2価のフェノール類、あるいは、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o‐クレゾールノボラック、m‐クレゾールノボラック、p‐クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ‐p‐ヒドロキシスチレン、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フルオログリシノール、ピロガロール、t‐ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4‐ベンゼントリオール、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の3価以上のフェノール類、または、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる式(1)のエポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂の50wt%以上であり、好ましくは70wt%以上、より好ましくは80wt%以上である。これより少ないと硬化物とした際の熱伝導率等の物性向上効果が小さい。
式(2)でYは、単結合、-O-、-CO-、-φ-、-O-φ-O-を示す。ここでφはフェニレン基を表す。エポキシ樹脂との相溶性の観点から-CH2-、-O-、-CO-、-O-φ-O-が好ましく、硬化物とした際の耐熱性の観点からは、単結合、-φ-が好ましい。
硬化剤として用いる二官能フェノール化合物の使用量は全硬化剤の20~90wt%であり、好ましくは40~80wt%、より好ましくは50~70wt%である。これより少ないと硬化物の結晶化度が十分ではなく、耐熱性、熱伝導率等の物性向上効果が小さい。これより多いと、多官能フェノール樹脂の使用量が低下し、成形性が悪化するとともに、難燃性、耐湿性が低下する。
式(3)で、Zは独立して炭素数6~20の炭化水素基を示す。硬化物とした際の低吸水性、難燃性、低誘電性等の観点から、Zはベンゼン骨格またはナフタレン骨格を有する芳香族構造を持つアラルキル構造のものが好ましく、-CH2-φ-CH2-、-CHMe-φ-CHMe-および-CH2-φ-φ-CH2-が特に好ましい。ここで、φはフェニレン基を示す。
式(3)で、R1およびR2は水素原子または、独立して炭素数1~9の炭化水素基を示す。成形性の観点らは、水素原子が好ましく、低吸水性、低誘電性等の観点からは、炭化水素基が望ましい。また、R1およびR2は、隣接位にあって、互いに連結した環状体を含む。耐熱性、低吸水性、低熱膨張性、難燃性等の観点から、環状体としてナフタレン骨格であることが望ましい。
mは繰り返し数であり、0.1~15の数を示す。多官能フェノール樹脂は、通常、繰り返し数の異なる複数の化合物の混合物であり、この場合、mの平均値(Σm/Σ分子数)が0.1から15の範囲にあり、好ましくは、0.5から10、さらに好ましくは、1.0から5の範囲である。これより小さいと、成形性、耐熱性、難燃性、低吸水性等の向上効果が小さく、これより大きいと粘度が高くなり、成形時の流動性、フィラー充填性等が低下する。
硬化剤として用いる式(3)の多官能フェノール化合物の使用量は、全硬化剤の10~80wt%であり、好ましくは30~80wt%、より好ましくは40~80wt%である。これより少ないと成形性が悪化するとともに、硬化物の耐熱性、耐湿性、難燃性等の物性向上効果が小さい。これより多いと、硬化物の結晶性が低下し、高温弾性率、熱伝導率、低熱膨張性等が低下する。
上記の多官能フェノール樹脂の好ましい水酸基当量は、150~350g/eq.であり、さらに好ましくは170~300g/eq.の範囲である。これより小さいと、難燃性、低吸水性等の向上効果が小さく、これより大きいと成形性が低下するとともに、硬化物の架橋密度が低くなり、耐熱性等が低下する。
上記の多官能フェノール樹脂の好ましい軟化点は、50~200℃であり、より好ましくは、70~150℃である。これより低いと、エポキシ樹脂組成物とした際にブロッキング等によるハンドリング性が低下し、これより高いと、エポキシ樹脂との相溶性や、それによる硬化性や成形性等の観点から上記上限値以下であることが好ましい。
式(1)の二官能エポキシ樹脂、式(2)の二官能フェノール化合物および式(3)の多官能フェノール樹脂の使用割合は、二官能エポキシ樹脂の重量をA、エポキシ当量をa、二官能フェノール化合物の重量をB、水酸基当量をb、多官能フェノール樹脂の重量をCとした場合、B(1+a/b)/(A+B+C)が0.30~0.90の範囲にあることが好ましい。これは、二官能エポキシ樹脂と二官能フェノール化合物の反応で形成される結晶性を発現するユニットの硬化物中での割合に対応しており、これより小さいと結晶性が低下、もしくは結晶性が発現しなくなり、高熱伝導性、高温弾性率等が低下する。これより大きいと、架橋密度が低下し、耐熱性、難燃性、低吸水性等が悪化する。B(1+a/b)/(A+B+C)は、より好ましくは0.30~0.80の範囲である。
本発明のエポキシ樹脂組成物にて用いる硬化剤として、式(2)の二官能フェノール化合物、および式(3)の多官能フェノール樹脂以外に、硬化剤として一般的に知られている他の硬化剤を併用して用いることができる。例を挙げれば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これら他の硬化剤の配合量は、配合する硬化剤の種類や得られる熱伝導性エポキシ樹脂成形体の物性を考慮して適宜設定すればよい。ただし、他の硬化剤を使用する場合であっても、その配合量は、硬化剤全量に対して、好ましくは50wt%未満、より好ましくは30wt%未満である。
本発明のエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、エポキシ基と硬化剤中の官能基が当量比で0.8~1.5の範囲であることが好ましい。硬化後も未反応のエポキシ基、または硬化剤中の官能基が残留し、電子部品用絶縁材料に関しての信頼性が低下することを防止するために、上記の範囲とすることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填材が配合されることが好ましい。この場合の無機充填材の添加量は、通常、エポキシ樹脂組成物に対して50~96wt%であるが、好ましくは60~94wt%、さらに好ましくは70~92wt%である。これより少ないと高熱伝導性、低熱膨張性、高耐熱性等の効果が十分に発揮されない。これらの効果は、無機充填材の添加量が多いほど向上するが、その体積分率に応じて向上するものではなく、特定の添加量以上となった時点から飛躍的に向上する。これらの物性は、高分子状態での高次構造が制御された効果によるものであり、この高次構造が主に無機充填材表面で達成されることから、特定量の無機充填材を必要とするものであると考えられる。一方、粘度や成形性の観点から、無機充填材の添加量を上記上限値以下とすることが好ましい。
無機充填材としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭素粉、炭素繊維粉末等の粉状物、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維状基材が好ましく挙げられ、この使用量は無機充填材の50wt%以上であることがよい。また、無機充填材は球状のものが好ましく、断面が楕円状であるものも含めて球状であれば特に限定されるものではないが、流動性改善の観点からは、極力真球状に近いものであることが特に好ましい。これにより、面心立方構造や六方稠密構造等の最密充填構造をとり易く、充分な充填量を得ることができる。球状でない場合、充填量が増えると充填材同士の摩擦が増え、上記の配合量の上限に達する前に流動性の低下や、粘度が高くなり、成形性に影響を与える懸念があるため、球状であることが好ましい。
熱伝導率向上の観点からは、無機充填材の50wt%以上、好ましくは80wt%以上を、熱伝導率が5W/m・K以上のものとすることがよい。かかる無機充填材としては、アルミナ、窒化アルミニウム、結晶シリカ等が好適である。これらの中でも、球状アルミナが優れる。その他、必要に応じて形状に関係なく無定形無機充填材、例えば溶融シリカ、結晶シリカなどを併用してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。これらは単独で用いてもよく、併用してもよい。
上記硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計100wt部に対して、0.1~10.0wt部が好ましい。0.1wt部未満ではゲル化時間が遅くなって加熱反応時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、逆に10.0wt部を超えると成形途中で反応が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記成分の他に、離型剤、カップリング剤、熱可塑性のオリゴマー類、その他の一般的にエポキシ樹脂組成物に使用可能なものを適宜配合して用いることができる。例えば、リン系難燃剤、ブロム化合物や三酸化アンチモン等の難燃剤、及びカーボンブラックや有機染料等の着色剤等を使用することができる。
離型剤としては、ワックスが使用できる。ワックスとしては、例えばステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、リン酸エステル等が使用可能である。また、カップリング剤としては、例えばエポキシシランが使用可能であり、無機充填材と樹脂成分の接着力を向上させるために用いられる。また、熱可塑性のオリゴマー類としては、C5系およびC9系の石油樹脂、スチレン樹脂、インデン樹脂、インデン・スチレン共重合樹脂、インデン・スチレン・フェノール共重合樹脂、インデン・クマロン共重合樹脂、インデン・ベンゾチオフェン共重合樹脂等が例示され、エポキシ樹脂組成物の成形時の流動性改良およびリードフレーム等の基材との密着性向上のために用いられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分として含み、必要により無機充填材等の成分を含む配合成分(カップリング剤を除く)をミキサー等によって均一に混合した後、必要によりカップリング剤を添加し、加熱ロール、ニーダー等によって混練して製造することができる。これらの成分の配合順序にはカップリング剤を除き特に制限はない。更に、混練後に溶融混練物の粉砕を行い、パウダー化することやタブレット化することも可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子材料用途、特に電子部品封止用および放熱基板用として適する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ガラス繊維等の繊維状基材と複合させて複合材とすることができる。例えば、エポキシ樹脂および硬化剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物を、通常使用される有機溶剤に溶解させたものを、シート状繊維基材に含浸し加熱乾燥して、エポキシ樹脂を部分反応させて、プリプレグとすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて硬化物(成形物)を得るためには、例えば、トランスファー成形、プレス成形、注型成形、射出成形、押出成形等の加熱成形方法が適用されるが、量産性の観点からは、トランスファー成形が好ましい。
本発明の硬化物は、結晶性を有するものであり、昇温速度10℃/分で測定した走査示差熱分析において、結晶の融解に伴う吸熱ピーク温度(融点)が、通常、150~350℃のものであるが、好ましくは170~350℃、より好ましくは200~350℃である。
ここで結晶性発現の効果を簡単に説明する。一般的に、エポキシ樹脂硬化物においては耐熱性の指標としてガラス転移点が用いられる。これは、通常のエポキシ樹脂硬化物が結晶性を持たないアモルファス状(ガラス状)の成形物でありガラス転移点を境として物性が大きく変化するためである。従って、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を高くするため、すなわちガラス転移点を高くするためには架橋密度を高くする必要があるが、逆に可撓性が低下し脆くなる欠点があった。これに対して、本発明の硬化成形物は、結晶性を発達させる点に特徴があるが、融点まで物性変化が少ないことから融点を耐熱性の指標とすることができる。高分子物質は、融点の方がガラス転移点よりも高い温度にあるため、本発明の重合物は、架橋構造を持たないか、もしくは低い架橋密度により高い可撓性を維持しつつ、高い耐熱性を確保できる。また、結晶性発現は、高い分子間力を意味しており、これにより分子の運動が抑制され、低熱膨張性の達成とともに、高い熱拡散率が発揮され熱伝導率が向上する。さらに、分子鎖の高いパッキング性により、水蒸気透過度、飽和吸水量ともに低下し、耐水性が向上する。
従って、本発明の硬化物の結晶化度は高いものほどよい。ここで結晶化の程度は走査示差熱分析での融解熱(結晶の融解に伴う吸熱量)から評価することができる。好ましい吸熱量は、充填材を除いた樹脂成分の単位重量あたり10J/g以上である。より好ましくは15J/g以上であり、特に好ましくは20J/g以上である。これより小さいと成形物としての耐熱性、低熱膨張性および熱伝導率の向上効果が小さい。なお、ここでいう吸熱量は、示差走査熱分析計により、約10mgを精秤した試料を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定して得られる吸熱量を指す。
本発明の硬化物は、上記成形方法により加熱反応させることにより得ることができるが、通常、成形温度としては80℃から350℃であるが、成形物の結晶化度を上げるためには、成形物の融点よりも低い温度で反応させることが望ましい。好ましい成形温度は130℃から280℃の範囲であり、より好ましくは160℃から250℃である。また、好ましい成形時間は30秒から1時間であり、より好ましくは1分から30分である。さらに成形後、アニーリングにより、さらに結晶化度を上げることができる。通常、アニーリング温度は130℃から250℃、時間は1時間から20時間の範囲であるが、示差熱分析における吸熱ピーク温度よりも5℃から40℃低い温度で、1時間から24時間かけてポストキュアを行うことが望ましい。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
合成例
4,4’-ジヒドロキシビフェニル、27.9g、エピクロルヒドリン550gを仕込み、減圧下(約130Torr)、65℃にて48.8%水酸化ナトリウム水溶液29.5gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続し脱水した。その後、室温に冷却し、ろ過、水洗を行い、白色の粉末状固体(エポキシ樹脂2)26gを得た。得られたエポキシ樹脂2は、一般式(1)においてXが単結合であるビフェニル系エポキシ樹脂である。GPC測定から、一般式(1)のn=0が97.8%、n=1体が2.2%であった。エポキシ当量は153g/eq.、加水分解性塩素は280ppm、走査示差熱分析により昇温速度10℃/分で得られる融点は162℃であった。加水分解性塩素については前述の方法で測定した。
合成例
4,4’-ジヒドロキシビフェニル、27.9g、エピクロルヒドリン550gを仕込み、減圧下(約130Torr)、65℃にて48.8%水酸化ナトリウム水溶液29.5gを3時間かけて滴下した。この間、生成する水はエピクロルヒドリンとの共沸により系外に除き、留出したエピクロルヒドリンは系内に戻した。滴下終了後、さらに1時間反応を継続し脱水した。その後、室温に冷却し、ろ過、水洗を行い、白色の粉末状固体(エポキシ樹脂2)26gを得た。得られたエポキシ樹脂2は、一般式(1)においてXが単結合であるビフェニル系エポキシ樹脂である。GPC測定から、一般式(1)のn=0が97.8%、n=1体が2.2%であった。エポキシ当量は153g/eq.、加水分解性塩素は280ppm、走査示差熱分析により昇温速度10℃/分で得られる融点は162℃であった。加水分解性塩素については前述の方法で測定した。
実施例1~6、比較例1~7
二官能エポキシ樹脂として、ジフェニルエーテル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、エポキシ当量163、融点84℃)、合成例で合成したエポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)、ビフェニル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:三菱化学製、YX-4000H、エポキシ当量193、融点105℃)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:日鉄ケミカル&マテリアル製、YD-8125、エポキシ当量173)を使用する。
また、硬化剤とした二官能フェノール化合物として、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(硬化剤1)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤2)を使用し、多官能フェノール樹脂として、ビフェニルアラルキル樹脂(硬化剤3:明和化成製、MEH-7851、OH当量210、軟化点74℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤4:三井化学製、ミレックスXLC-4L、OH当量182、軟化点65℃)、ナフトールアラルキル樹脂(硬化剤5:日鉄ケミカル&マテリアル製、SN-485、OH当量215、軟化点84℃)、フェノ-ルノボラック(硬化剤6:アイカ工業製、BRG-557、OH当量103、軟化点84℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用する。
二官能エポキシ樹脂として、ジフェニルエーテル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1:日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、エポキシ当量163、融点84℃)、合成例で合成したエポキシ樹脂(エポキシ樹脂2)、ビフェニル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3:三菱化学製、YX-4000H、エポキシ当量193、融点105℃)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4:日鉄ケミカル&マテリアル製、YD-8125、エポキシ当量173)を使用する。
また、硬化剤とした二官能フェノール化合物として、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(硬化剤1)、ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤2)を使用し、多官能フェノール樹脂として、ビフェニルアラルキル樹脂(硬化剤3:明和化成製、MEH-7851、OH当量210、軟化点74℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤4:三井化学製、ミレックスXLC-4L、OH当量182、軟化点65℃)、ナフトールアラルキル樹脂(硬化剤5:日鉄ケミカル&マテリアル製、SN-485、OH当量215、軟化点84℃)、フェノ-ルノボラック(硬化剤6:アイカ工業製、BRG-557、OH当量103、軟化点84℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用する。
表1、表2に示す成分を配合し、ミキサーで十分混合した後、加熱ロールで約5分間混練したものを冷却し、粉砕してそれぞれ実施例1~6、比較例1~7のエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃、3分の条件で成形後、180℃で4時間ポストキュアを行い、硬化成形物を得て、その物性を評価した。結果をまとめて表1、表2に示す。なお、表1、表2中の各成分の数字は重量部を表す。
[評価]
(1)熱膨張係数(線膨張係数)、ガラス転移温度
日立ハイテクサイエンス製TMA7100型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)高温弾性率
日立ハイテクサイエンス製DMA6100型測定装置を用いて、窒素気流下,周波数10Hzで昇温速度2 ℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、260℃での貯蔵弾性率を読み取った。
(3)熱伝導率
NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて、キセノンフラッシュ法により測定した。
(4)融点、融解熱の測定(DSC法)
日立ハイテクサイエンス製DSC7020型示差走査熱量分析装置により、約10mgを精秤した試料を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(5)熱分解温度、残炭率測定
日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300型熱重量測定装置により、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件にて、熱分解温度(10%重量減少温度)、残炭率を求めた。
(6)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
(7)成形性
成形後の試験片の表面状態を目視にて観察し、その状態から成形性を分類した。
◎;表面の平滑性良好、ヒビ割れ、未充填部なし。
〇;表面の平滑性良好、僅かに未充填部分あり。
△;表面の凹凸あり、未充填部分あり。
×;未硬化部分が残り、脆い成形物となった。
(1)熱膨張係数(線膨張係数)、ガラス転移温度
日立ハイテクサイエンス製TMA7100型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)高温弾性率
日立ハイテクサイエンス製DMA6100型測定装置を用いて、窒素気流下,周波数10Hzで昇温速度2 ℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、260℃での貯蔵弾性率を読み取った。
(3)熱伝導率
NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて、キセノンフラッシュ法により測定した。
(4)融点、融解熱の測定(DSC法)
日立ハイテクサイエンス製DSC7020型示差走査熱量分析装置により、約10mgを精秤した試料を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(5)熱分解温度、残炭率測定
日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300型熱重量測定装置により、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件にて、熱分解温度(10%重量減少温度)、残炭率を求めた。
(6)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
(7)成形性
成形後の試験片の表面状態を目視にて観察し、その状態から成形性を分類した。
◎;表面の平滑性良好、ヒビ割れ、未充填部なし。
〇;表面の平滑性良好、僅かに未充填部分あり。
△;表面の凹凸あり、未充填部分あり。
×;未硬化部分が残り、脆い成形物となった。
Claims (5)
- エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂成分の50wt%以上が下記一般式(1)、
で表される二官能エポキシ樹脂であり、硬化剤成分の20~90wt%が下記一般式(2)、
で表される二官能フェノール化合物、および硬化剤成分の10~80wt%の下記一般式(3)、
で表される多官能フェノール樹脂であり、結晶性の硬化物になることを特徴エポキシ樹脂組成物。 - 式(3)の多官能フェノール樹脂において、Zがベンゼン骨格またはナフタレン骨格を含む構造であるアラルキル型フェノール樹脂であり、水酸基当量cが150~350g/eq.である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1または2のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる結晶性の硬化物。
- 走査示差熱分析における結晶の融解に伴う吸熱ピーク温度が170~350℃である請求項3に記載の硬化物。
- 走査示差熱分析における融解熱が、樹脂成分換算で10J/g以上である請求項3または4に記載の硬化物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021209137A JP2023093972A (ja) | 2021-12-23 | 2021-12-23 | エポキシ樹脂組成物および硬化物 |
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