JP2023087978A - 導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法 - Google Patents

導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で寿命の予測が可能な導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法を提供する。【解決手段】複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体11aを有するケーブル10に屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に導体11aに付与されるひずみを評価する方法であって、ケーブル10に動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する導体11aの抵抗値を測定し、測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値の変動幅を基に、ひずみを評価する。【選択図】図5

Description

本発明は、導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法に関する。
例えば、産業用ロボットの可動部に配線されるケーブルなど、繰り返し屈曲又は/及び捻回の動作が加えられるケーブルが知られている。例えば産業用ロボットに用いられるケーブルにおいては、急な断線による生産ラインの停止等は、大きな不都合を生じさせるおそれがある。そのため、ケーブル内に配置された複数の導体の多くが断線に至る前に(すなわちケーブルが寿命に至る前に)ケーブルを交換することが望まれる。そして、ケーブルの交換時期を判断するため、ケーブルに含まれる導体の断線を精度よく評価する必要がある。
従来、ケーブルの寿命を評価するためには、ケーブルに屈曲や捻回の動作を繰り返し加える試験を行い、導体を構成する複数の素線が断線することによって導体抵抗が所定の割合以上に上昇した動作回数をケーブル寿命として設定していた。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、特許文献1がある。
特開2007-139488号公報
ケーブルの寿命を評価する従来方法に関し、屈曲や捻回に対する耐久性が大きく向上している近年のケーブルに対しては、例えば、評価時間が数か月と非常に長時間になる場合があるため、評価に時間がかかりすぎるという課題があった。そのため、より短時間でケーブルの寿命を予測することが可能な方法が求められていた。
そこで、本発明は、短時間でケーブルの寿命の予測が可能な導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体に付与されるひずみを評価する方法であって、前記ケーブルに前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定し、測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価する、導体ひずみ評価方法を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体に付与されるひずみを評価する装置であって、前記ケーブルに前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定する抵抗値測定部と、前記抵抗値測定部で測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価するひずみ評価部と、を備えた、導体ひずみ評価装置を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体ひずみ評価方法により前記抵抗値の変動幅を求め、前記抵抗値の変動幅と、前記ケーブルが寿命に至る前記ケーブルの動作回数との関係を予め求めておき、求めた前記抵抗値の変動幅と、前記関係とを基に、前記ケーブルが寿命に至る前記ケーブルの動作回数を予測する、ケーブル寿命予測方法を提供する。
本発明によれば、短時間で寿命の予測が可能な導体ひずみ評価方法及び装置、ケーブル寿命予測方法を提供できる。
本発明の一実施の形態に係る導体ひずみ評価装置を用いたケーブル寿命予測装置の模式図である。 ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。 動作部を動作させた際に測定される導体の抵抗値を説明する図である。 動作周波数の推定を説明する図である。 周期の始点の設定を説明する図である。 ひずみ相当量の求め方を説明する図である。 ひずみ相当量と、ケーブルが寿命に至る動作回数との関係を示すグラフ図である。 本発明の一実施の形態に係る導体ひずみ評価方法のフロー図である。
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
本発明者らは、ケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を繰り返し加えた際のケーブルの寿命を予測するにあたって、1回の動作で導体に付与されるひずみを考慮し、このひずみを基にケーブルが寿命に至る動作回数を予測することを考えた。すなわち、本実施の形態に係るケーブル寿命予測方法は、ケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を繰り返し加えたときに導体に付与されるひずみを基に、ケーブルが寿命に至る動作回数(ケーブル寿命という)を予測する方法である。なお、ケーブル寿命としては、例えば、ケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を繰り返し加えた際に、導体を構成する全ての素線のうち、何本かの素線が断線しているかという割合が、所定の割合以上(例えば80%以上)となった場合に、ケーブル寿命に至ったと設定する。
なお、ケーブルに加えられる屈曲の動作としては、例えば、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルをU字状に屈曲した状態とし、ケーブルの一端部を当該一端部のケーブル長手方向に沿って所定のストロークで周期的にスライド移動させるU字屈曲動作や、後述する図3に示すように、ケーブルが時計回り方向または反時計回り方向の一方に屈曲した状態とケーブルが時計回り方向または反時計回り方向の他方に屈曲した状態との間を往復するようにケーブルに一定の周期で一定の力を印加する左右屈曲動作がある。また、ケーブルに加えられる捻回の動作としては、例えば、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルの一端部を固定し、固定部分からケーブル長手方向に沿った所定の捻回長(例えば10mm以上)の位置に設けた捻回部を所定の捻回角度(例えば±180°~±360°)で、ケーブルをケーブル周方向に一定の周期で繰り返し捻回する捻回動作がある。
この方法でケーブル寿命を精度よく予測するためには、ケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に導体に付与されるひずみを精度よく測定する必要がある。しかし、従来一般に用いられているひずみゲージによるひずみの測定では、十分な精度が得られにくく手間もかかってしまう。そこで、本発明者らは、ひずみの測定対象である導体そのものの抵抗値の変化を測定することを考えた。しかし、導体にひずみを付与した際の抵抗値の変化は微小であり、ノイズに埋もれて精度よく測定することは困難であった。そこで、本発明者らは、導体にひずみを付与した際の微小な抵抗値の変化を精度よく測定すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
(導体ひずみ評価装置1、及びケーブル寿命予測装置100)
図1は、本実施の形態に係る導体ひずみ評価装置1を用いたケーブル寿命予測装置10の模式図である。また、図2は、ケーブル10の長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2に示すケーブル10は、6本の電線11と糸状の介在12とを撚り合わせたケーブルコア13の周囲に押さえ巻きテープ14をらせん状に巻きつけ、押さえ巻きテープ14の周囲を覆うようにシース15を設けて構成されている。電線11は、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体11aと、導体11aの周囲を覆うように設けられた絶縁体11bと、を有している。導体11aは、例えば、外径0.16mmの軟銅線からなる素線を26本集合撚りして構成された集合撚線からなる。なお、導体11aに使用される素線は、26本に限定されない。介在12は、例えばジュート、スフからなる糸状体である。絶縁体11bは、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体)等のフッ素樹脂からなる。図2では図示を省略しているが、ケーブル中心に、ポリエチレン製の線状体等からなる中心介在を配置してもよい。各電線11の外径は、例えば1.74mmであり、ケーブル10の外径は、例えば6.8mmである。
なお、ケーブル10に使用する電線11の本数は6本に限定されない。すなわち、電線11は、1本でもよいし、数本でもよいし、数十本以上でもよい。なお、電線11が1本の場合は、介在12、押さえ巻きテープ14、及びシース15を無くす場合が多い。この場合、ケーブル10と電線11は、同じものを示す。押さえ巻きテープ14は、例えば、不織布や紙、樹脂等からなるテープ部材からなる。シース15は、例えばPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)等からなる。なお、ケーブル10は、図示の構成に限らず、少なくとも複数の素線で構成される導体11aを含んでいれば様々な構成であってよい。
図1に示すように、導体ひずみ評価装置1は、複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体11aを有するケーブル10に屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に導体11aに付与されるひずみを評価する装置であり、動作部20と、抵抗値測定部30と、演算装置31と、を備えている。
動作部20は、ケーブル10に屈曲又は/及び捻回の動作を一定の周期で繰り返し付与する。ここでは、動作部20が、ケーブル10に左右屈曲動作を付与するものである場合を説明するが、これに限らず、ケーブル10にU字屈曲動作や捻回動作を付与するものであってもよく、また屈曲や捻回の動作を複合して付与するものであってもよい。また、既に産業用ロボット等の装置に搭載されたケーブル10を評価する場合、当該産業用ロボット等の装置を動作部20として用いることもできる。
図1の例では、動作部20は、図示しない基台上に回動可能に設けられた円板状の台座21と、台座21の中心軸を挟んで台座21上に対向して設けられた一対の円筒状のマンドレル22と、台座21上にケーブル10を固定するための固定部23と、を有している。台座21を中心軸まわりに左右に回動されると、マンドレル22間を通るように配置されたケーブル10がマンドレル22に沿って左右に屈曲される。なお、図1に示した動作部20はあくまで一例であり、適宜変更可能である。
抵抗値測定部30は、動作部20でケーブル10に屈曲等の動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する導体11aの抵抗値を測定する。抵抗値測定部30は、動作部20にセットされたケーブル10における導体11aの両端部間の抵抗値を経時的に測定する。抵抗値測定部30で測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値のデータ(=抵抗値データ50)は、演算装置31に入力され、記憶部31bに記憶される。なお、ここでは演算装置31と別体に抵抗値測定部30を設ける場合を示しているが、抵抗値測定部30が演算装置31に内蔵されていてもよい。また、産業用ロボット等の装置を動作部20として用いる場合、産業用ロボット等の装置の制御装置に、抵抗値測定部30を搭載してもよい。
ここで、動作部20でケーブル10を左右屈曲動作させた際に測定される導体11aの抵抗値について説明する。図3に示すように、ケーブル10が直線となっている状態(基本状態Cという)から台座21を時計回りに90°回転してケーブル10を90°屈曲させ(第1状態Aという)、台座21を反時計回りに90°回転してケーブル10を直線状に戻す(基本状態C)。その後、台座21を反時計回りに90°回転してケーブル10を-90°屈曲させ(第2状態Bという)、台座21を時計回りに90°回転してケーブル10を直線状に戻す(基本状態C)。このように、基本状態Cから、第1状態A、基本状態C、第2状態B、基本状態Cとなるように台座21を順次回動させることで、1回(1周期)の動作とする。1回の動作にかかる時間、すなわち動作周期は2秒(1回の動作を行うときの周波数(=動作周波数)は0.5Hz)とした。
ケーブル10では、複数の電線11が撚り合わせられているため、その撚りの状態によって、導体11aに付与されるひずみが変化する。図3の例では、ケーブル10を90°屈曲させた第1状態Aでは、導体11aが曲げの外側を通るために、基本状態Cと比較して導体11aが引き伸ばされ、抵抗値が増大する。しかし、ケーブル10を-90°屈曲させた第2状態Bでは、導体11aが曲げの内側を通るために導体11aの引き伸ばしが発生せず、導体11aの抵抗値は基本状態Cからほぼ変化がない状態となる。そのため、図3の下部に示されるように、動作の1周期の中で抵抗値の変化は非対称の波形となり、動作周波数のn倍(nは2以上の自然数)の高次周波数成分を多く含む波形となる。
演算装置31は、制御部31aと、記憶部31bと、を有している。制御部31aには、動作周波数推定部32と、周期始点設定部33と、ひずみ評価部34と、が搭載されている。これら動作周波数推定部32、周期始点設定部33、及びひずみ評価部34は、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、インターフェイス、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。演算装置31には、表示器60が接続されており、後述するひずみ相当量データ55や予測寿命データ57など、記憶部31bに記憶された各種のデータを表示器60に表示可能とされている。また、図示していないが、演算装置31にはキーボード等の入力装置が設けられており、入力装置の入力により各種設定や表示器60の表示内容の操作が行えるようになっている。なお、表示器60をタッチパネルディスプレイで構成して、表示器60が入力装置を兼ねるように構成してもよい。さらに、表示器60は、演算装置31と有線接続されていなくてもよく、無線により接続されていてもよい。この場合、表示器60は、例えばスマートフォンやタブレットのディスプレイであってもよい。
演算装置31は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。なお、これに限らず、演算装置31は、例えば、サーバ装置であってもよい。この場合、抵抗値測定部30で測定された抵抗値データ50は、ネットワークを介してサーバ装置である演算装置31に送信されることになる。演算装置31をサーバ装置で構成する場合、後述するひずみの評価結果やケーブル寿命の予測結果を、例えば産業用ロボット等の装置を使用するユーザや装置のメーカと共有できるように構成してもよい。また、制御部31aと記憶部31bとを別の装置で構成してもよい。例えば、サーバ装置の記憶部31aに記憶された抵抗値データ50を、他のサーバ装置やパーソナルコンピュータ等に搭載された制御部31aでダウンロードし、ひずみの評価やケーブル寿命の予測を行うよう構成することもできる。
動作周波数推定部32は、動作周波数が未知である場合に、抵抗値測定部30で測定した抵抗値データ50を基に、動作周波数を推定するためのものである。よって、動作周波数(あるいは動作周期)が既知もしくは台座21の位置情報、あるいは台座21の位置情報にリンクした時間等の情報から動作周波数が得られるような場合には、動作周波数推定部32は省略可能である。
動作周波数推定部32は、抵抗値測定部30で測定した抵抗値データ50、すなわち時系列的に変化する導体11aの抵抗値データの周波数解析を行い、当該周波数解析の結果を基に、動作周波数を推定する。具体的には、図4に示すように、抵抗値測定部30で測定した抵抗値データ50の周波数解析を行い、各周波数の成分毎に信号の大きさ(すなわち、抵抗値変動の振幅あるいは抵抗値変動幅)を求める。本実施の形態では、一定の周期(動作周波数)でケーブル10に負荷を加えているため、周波数解析の解析結果51において、動作周波数成分とそのn倍の高次周波数成分が、他の周波数成分と比較して大きくなる。よって、周波数解析の解析結果51から信号の大きさが比較的大きい周波数を抽出し、抽出した周波数のうち最も小さい(最低次の)周波数を、動作周波数として推定するとよい。なお、ノイズの影響が大きい0Hz近傍(例えば0.2Hz以下)の周波数成分は除外するとよい。また、信号の大きさが大きい周波数であっても、当該周波数のn倍の周波数における信号の大きさが小さく高次周波数成分が生じていない場合には、当該周波数をノイズとして除外してもよい。図4の例では、0Hz近傍の周波数成分を除外すると、破線で囲った0.5Hz及び1.0Hzの周波数成分が大きくなっており、最も小さい0.5Hzが動作周波数であることが推定できる。動作周波数推定部32が推定した動作周波数は、動作周波数データ50aとして記憶部31bに記憶される。
周期始点設定部33は、屈曲等の動作における動作周期の始点を設定するためのものである。よって、周期の始点が既知である場合(例えば、台座21の位置情報、あるいは台座21の位置情報にリンクした時間等の情報などが抵抗値データ50に紐づいて得られているような場合)には、周期始点設定部33は省略可能である。
図5に示すように、本実施の形態では、ノイズの影響を除くために、周期始点設定部33は、時系列的に変化する導体11aの抵抗値データ50から、動作周波数推定部32で推定した動作周波数(ここでは0.5Hz)の成分を抽出し、抽出した動作周波数の成分の時系列的な変化52を基に、周期の始点を設定する。例えば、周期始点設定部33は、導体11aの抵抗値が、無負荷時(基本状態C)における導体11aの抵抗値(図5に破線で示す)と等しくなる時点であって、かつ、その時点から抵抗値が増大して抵抗値が極大となる(図3の第1状態Aとなる)時点を周期の始点として設定することができる。ここで設定した始点から、動作周波数に相当する動作周期が経過する時点までが、1回の動作に相当する区間となる。なお、周期の始点を設定する具体的な方法は特に限定されず、基本状態Cを周期の始点としなくともよい。つまり、各動作周期において同じ状態であることを特定可能な時点であれば、どのような時点を周期の始点に設定してもよく、例えば、抵抗値が極大となる時点(第1状態A)や極小となる時点(第2状態)を周期の始点に設定してもよい。周期始点設定部33が設定した周期の始点は、周期始点データ50bとして記憶部31bに記憶される。
ひずみ評価部34は、抵抗値測定部30で測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値の変動幅を基に、ひずみを評価する。ただし、1回の動作に相当する区間だけでの抵抗値の変動幅を用いた場合、ノイズの影響が大きくなり、十分な評価精度が得られない場合が考えられる。そこで、本実施の形態では、ひずみ評価部34は、時系列的に変化する導体11aの抵抗値を、動作周期毎に分割すると共に、分割した各周期の抵抗値の変化を周期の始点からの経過時間毎に平均化して、平均化した1周期分の抵抗値の変化を求め、その平均化した1周期分の抵抗値の変化における抵抗値の変動幅を基に、ひずみを評価した。
より具体的には、図6に示すように、ひずみ評価部34は、まず、動作周波数推定部32が推定した動作周波数と、周期始点設定部33が設定した周期の始点とを基に、抵抗値データ50を、1回の動作に相当する区間毎に分割する(つまり、抵抗値データ50を動作周期毎に分割する)。以下、分割された抵抗値データ50を分割抵抗値データ53という。得られた各分割抵抗値データ53は、記憶部31bに記憶される。
ここで、ノイズの影響をより抑えてより精度を高めた評価を行うためには、使用する分割抵抗値データ53の数は、できるだけ多いことが望ましいといえる。そのため、抵抗値データ50を測定する際には、ある程度長い時間測定を行うことが望ましいといえる。具体的には、動作周期を300周期以上含むように、抵抗値の測定を行う期間を設定することがより望ましい。
そして、ひずみ評価部34は、複数の分割抵抗値データ53を重ね合わせて平均化し、平均化した1区間(1周期)の抵抗値データを求める。以下、この平均化した1区間(1周期)の抵抗値データを平均化抵抗値データ54という。平均化の際には、各区間における同じ時間(周期の始点からの経過時間)の抵抗値を全て足し合わせ、足し合わせた区間の数で除することで平均化を行うとよい。得られた平均化抵抗値データ54は、記憶部31bに記憶される。
そして、ひずみ評価部34は、得られた平均化抵抗値データ54における抵抗値の変動幅、すなわち平均化抵抗値データ54における抵抗値の最大値から最小値を減じた値を、ひずみ相当量として求める。このひずみ相当量は、導体11aに加えられたひずみに比例する量である。ひずみ相当量から導体11aに付与されたひずみを算出することも可能であるが、本実施の形態では、このひずみ相当量を導体11aに付与されたひずみの程度を表すパラメータとしてそのまま用いる。得られたひずみ相当量は、ひずみ相当量データ55として記憶部31bに記憶される。
ケーブル寿命予測装置100は、本実施の形態に係る導体ひずみ評価装置1と、導体ひずみ評価装置により求めたひずみ相当量(平均化抵抗値データ54における抵抗値の変動幅)を基に、ケーブル10が寿命に至るケーブル10の動作回数を予測する寿命予測部35と、を有している。寿命予測部35は、演算装置31の制御部31aに搭載されており、CPU等の演算素子、RAMやROM等のメモリ、ソフトウェア、インターフェイス、記憶装置等を適宜組み合わせて実現されている。
寿命予測部35は、ひずみ相当量(平均化抵抗値データ54における抵抗値の変動幅)と、ケーブル10が寿命に至るケーブル10の動作回数との関係を実測により予め求めておき、その関係を基に、ケーブル10が寿命に至るケーブル10の動作回数を予測する。図7は、実測したひずみ相当量とケーブル10が寿命に至る動作回数(寿命動作回数)との関係を示すグラフ図である。図7に示すように、ひずみ相当量と、ケーブル10が寿命に至る動作回数とは、ほぼ比例した関係となっている。図7のような関係を実験等により予め取得し、寿命予測用関係性データ56として記憶部31bに記憶しておく。寿命予測部35は、記憶部31bに記憶した寿命予測用関係性データ56を用いて、導体ひずみ評価装置1で求めたひずみ相当量に対応するケーブル10が寿命に至る動作回数を求める。得られたケーブル10が寿命に至る動作回数は、予測寿命データ57として記憶部31bに記憶される。
(導体ひずみ評価方法、及びケーブル寿命予測方法)
図8は、本実施の形態に係る導体ひずみ評価方法のフロー図である。図8に示すように、本実施の形態に係る導体ひずみ評価方法では、まず、ステップS10にて、測定対象となるケーブル10を動作部20に搭載し、測定対象となる導体11aの両端部に抵抗値測定部30を接続する。その後、ステップS11にて、動作部20の動作を開始すると共に、抵抗値測定部30による導体11aの抵抗値の測定を開始する。そして、動作部20の動作と抵抗値測定部30の測定を所定の期間継続する(ステップS12)。その後、ステップS13にて、動作部20の動作と抵抗値測定部30の測定を停止し、得られた抵抗値データ50を記憶部31bに保存する。ここで得られた抵抗値データ50が、本発明における「ケーブル10に動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する導体11aの抵抗値」に相当する。
その後、ステップS14にて、抵抗値データ50から動作周波数を推定する。具体的には、図4で説明したように、抵抗値データ50を周波数解析し、当該周波数解析の解析結果51を基に、信号の大きさが大きくなる周波数のうち、最も低い周波数(ただし、0Hz近傍の周波数等ノイズが大きい周波数については適宜除外する)から、動作周期に相当する動作周波数を推定する。動作周波数推定部32が推定した動作周波数は、動作周波数データ50aとして記憶部31bに記憶される。なお、動作周波数が既知もしくは台座21の位置情報、あるいは台座21の位置情報にリンクした時間等の情報から動作周波数が得られるような場合には、ステップS14は省略可能である。
その後、ステップS15にて、周期の始点を設定する。具体的には、図5で説明したように、抵抗値データ50から、動作周波数データ50aとして記憶された動作周波数の成分を抽出し、抽出した動作周波数の成分の時系列的な変化52を基に、動作周期の始点を設定する。周期始点設定部33が設定した周期の始点は、周期始点データ50bとして記憶部31bに記憶される。なお、周期の始点が既知である場合には、ステップS15は省略可能である。
その後、ステップS16にて、抵抗値データ50を分割して分割抵抗値データ53を得る。具体的には、図6で説明したように、動作周波数データ50aとして記憶された動作周波数(動作周期)と周期始点データ50bとして記憶された周期の始点とから決定される区間毎(すなわち動作周期毎)に抵抗値データ50を分割して、複数の分割抵抗値データ53を得る。得られた分割抵抗値データ53は記憶部31bに記憶される。
その後、ステップS17にて、ステップS16で得た複数の分割抵抗値データ53を重ね合わせて平均化し、平均化抵抗値データ54を得る。具体的には、図6で説明したように、複数の分割抵抗値データ53を周期の始点からの経過時間毎に平均化して、平均化した1周期分の抵抗値の変化である平均化抵抗値データ54を得る。得られた平均化抵抗値データ54は記憶部31bに記憶される。
その後、ステップS18にて、ステップS17で得た平均化抵抗値データ54における抵抗値の変動幅から、ひずみ相当量を求める。得られたひずみ相当量は、1回の動作で導体11aに付与されたひずみに比例する量であり、このひずみ相当量をもって導体11aに付与されたひずみを評価することができる。このように、本実施の形態に係る導体ひずみ評価方法では、平均化した動作1回あたりの導体11aの抵抗値の変動幅を基に、ひずみを評価している。得られたひずみ相当量は、ひずみ相当量データ55として記憶部31bに記憶される。
本実施の形態に係るケーブル寿命予測方法では、予め試験を行い、図7に示したような関係、すなわち、ひずみ相当量(抵抗値の変動幅)と、ケーブル10が寿命に至るケーブル10の動作回数との関係を求めておき、寿命予測用関係性データ56として記憶部31bに記憶しておく。そして、ケーブル10の動作条件(例えば、屈曲回数、曲げ半径、曲げ角度、捻回回数、捻回部の長さ、捻回角度、捻回速度等)、構造条件(例えば、導体の寸法、撚線導体の構成、絶縁体の寸法、電線の本数、電線の撚りピッチ等)又は材料条件(例えば、導体の材質、絶縁体の材質、押さえ巻きテープの材質、シースの材質等)が更新されたときに、該ケーブル10に対して上述した導体ひずみ評価方法によるひずみの評価を行い、ケーブル10の動作条件等の更新によるひずみ相当量(=更新後のひずみ相当量)を求める。ここで求めた更新後のひずみ相当量は、ケーブル10の動作条件等の更新によるひずみ相当量データ(=更新後のひずみ相当量データ)55として記憶部31bに記憶される。寿命予測部35は、寿命予測用関係性データ56と、更新後のひずみ相当量データ55として記憶された更新後のひずみ相当量(抵抗値の変動幅)とから、動作条件が更新されたケーブル10が寿命に至る動作回数を予測する。予測したケーブル10が寿命に至る動作回数は、予測寿命データ57として記憶部31bに記憶される。また、ケーブル10の動作条件、構造条件及び材料条件は、記憶部31bに記憶されたひずみ相当量データ55及び予測寿命データ57を求めたときの条件データとして記憶部31bに記憶される。
なお、記憶部31bに記憶された予測寿命データ57は、寿命予測用関係性データ56として利用することもできる。例えば、記憶部31bに記憶されたときから所定の期間(例えば、数日、数か月、または数年などの期間)にある予測寿命データ57は、予測寿命データ57のままとし、その所定の期間が経過した予測寿命データ57は、寿命予測用関係性データ56に移行されるように構成されていてもよい。また、記憶部31bに記憶された予測寿命データ57は、更新後のひずみ相当量データ55が記憶部31bに記憶されたときに、寿命予測用関係性データ56に移行されるように構成されていてもよい。条件データには、ひずみを評価した日時の情報を含んでいてもよい。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る導体ひずみ評価方法では、ケーブル10に動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する導体11aの抵抗値を測定し、測定した時系列的に変化する導体11aの抵抗値の変動幅を基に、ひずみを評価している。
これにより、導体11aのひずみを容易に評価することが可能となり、評価したひずみに基づいて、ケーブル10が寿命となる動作回数を短時間で評価することが可能になる。従来は導体11aに断線が発生する(導体11aの抵抗値が所定の割合以上に上昇する)まで試験を行う必要があり、例えば数か月と非常に長い試験時間が必要であったが、本実施の形態によれば、ケーブル10に付与する動作周期にもよるが、例えば数十分程度といった短時間でケーブル10の寿命を予測することが可能になる。また、ひずみによる導体11aの抵抗値の変化は微小であるが、測定した抵抗値データ50を区間毎に分割した分割抵抗値データ53を平均化したて平均化抵抗値データ54を求め、この平均化抵抗値データ54における抵抗値の変動幅をひずみ相当量として求めることで、ノイズの影響を抑制し、精度よくひずみの評価(つまり、ひずみ相当量の測定)を行うことができる。
なお、例えば、シミュレーションによりケーブル10の寿命予測を行うことも考えられるが、精度よく寿命予測を行うためには、電線11と周囲の部材との摩擦や、屈曲等による電線11の移動、さらには屈曲等による電線11の撚りの状態の変化等、様々な挙動を考慮してシミュレーションを行う必要がある。そのため、シミュレーションによりケーブル10の寿命の予測を精度よく行うことは非常に困難である。本発明によれば、実際にケーブル10を動作させた際のひずみを用いてケーブル10の寿命を予測することができるため、精度の高い寿命予測が可能である。
また、本実施の形態によれば、短時間で寿命予測が可能となるため、様々なケーブル10の動作条件、構造条件および材料条件等(以下、動作条件等)でひずみ評価及びケーブル10の寿命予測を繰り返すことで、最も導体11aに負担が少なく、ケーブル10の寿命が最も長くなる動作条件等を得ること、すなわち動作条件等の最適化が容易になる。例えば、ケーブル10を屈曲させる際の曲率半径を変更した場合のケーブル10の寿命の変化や、屈曲等を付与する可動部におけるケーブル10の余長を変更した場合の寿命の変化など、さまざまな動作条件等で簡便にケーブル10の寿命予測を行い、ケーブル10の構造やケーブル10に使用される材料条件等の最適化を行うことが容易になる。
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
[1]複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体(11a)を有するケーブル(10)に屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体(11a)に付与されるひずみを評価する方法であって、前記ケーブル(10)に前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を測定し、測定した前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価する、導体ひずみ評価方法。
[2]前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を、前記動作の周期である動作周期毎に分割すると共に、分割した各周期の抵抗値の変化を周期の始点からの経過時間毎に平均化して、平均化した1周期分の抵抗値の変化を求め、前記平均化した1周期分の抵抗値の変化における抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価する、[1]に記載の導体ひずみ評価方法。
[3]前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を周波数解析し、当該周波数解析の結果を基に、前記動作周期に相当する動作周波数を推定する、[2]に記載の導体ひずみ評価方法。
[4]前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値から、推定した前記動作周波数の成分を抽出し、抽出した前記動作周波数の成分の時系列的な変化を基に、前記周期の始点を設定する、[3]に記載の導体ひずみ評価方法。
[5]複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体(11a)を有するケーブル(10)に屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体(11a)に付与されるひずみを評価する装置であって、前記ケーブル(10)に前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値を測定する抵抗値測定部(30)と、前記抵抗値測定部(30)で測定した前記時系列的に変化する前記導体(11a)の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価するひずみ評価部(34)と、を備えた、導体ひずみ評価装置(1)。
[6][1]乃至[3]の何れか1項に記載の導体ひずみ評価方法により前記抵抗値の変動幅を求め、前記抵抗値の変動幅と、前記ケーブル(10)が寿命に至る前記ケーブル(10)の動作回数との関係を予め求めておき、求めた前記抵抗値の変動幅と、前記関係とを基に、前記ケーブル(10)が寿命に至る前記ケーブル(10)の動作回数を予測する、ケーブル寿命予測方法。
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、ケーブル10に一定の周期で動作を付与したが、動作周期は厳密に一定でなくともよく、多少のずれ(例えば、基準となる動作周期に対して10%以下のずれ)は許容される。
また、上記実施の形態では、ケーブル10内の1本の導体11aのひずみを評価する場合について説明したが、ケーブル10内の複数の導体11aの抵抗値を測定し、それら複数の導体11aのひずみを評価してもよい。
さらにまた、周波数解析により、例えば0Hz近傍の周波数など、特にノイズが大きい周波数帯域を抽出しておき、当該抽出したノイズが大きい周波数帯域を除去した抵抗値データを作成して、作成した抵抗値データを用いてひずみ相当量を導出してもよい。これにより、ノイズの影響をより抑えて、より精度よくひずみ相当量を求めることが可能になる。
1…導体ひずみ評価装置
10…ケーブル
11…電線
11a…導体
11b…絶縁体
20…動作部
30…抵抗値測定部
32…動作周波数推定部
33…周期始点設定部
34…ひずみ評価部

Claims (6)

  1. 複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体に付与されるひずみを評価する方法であって、
    前記ケーブルに前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定し、
    測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価する、
    導体ひずみ評価方法。
  2. 前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を、前記動作の周期である動作周期毎に分割すると共に、分割した各周期の抵抗値の変化を周期の始点からの経過時間毎に平均化して、平均化した1周期分の抵抗値の変化を求め、
    前記平均化した1周期分の抵抗値の変化における抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価する、
    請求項1に記載の導体ひずみ評価方法。
  3. 前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値を周波数解析し、当該周波数解析の結果を基に、前記動作周期に相当する動作周波数を推定する、
    請求項2に記載の導体ひずみ評価方法。
  4. 前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値から、推定した前記動作周波数の成分を抽出し、抽出した前記動作周波数の成分の時系列的な変化を基に、前記周期の始点を設定する、
    請求項3に記載の導体ひずみ評価方法。
  5. 複数の素線を撚り合わせた撚線導体からなる導体を有するケーブルに屈曲又は/及び捻回の動作を加えた際に前記導体に付与されるひずみを評価する装置であって、
    前記ケーブルに前記動作を周期的に加えた際に時系列的に変化する前記導体の抵抗値を測定する抵抗値測定部と、
    前記抵抗値測定部で測定した前記時系列的に変化する前記導体の抵抗値の変動幅を基に、前記ひずみを評価するひずみ評価部と、を備えた、
    導体ひずみ評価装置。
  6. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の導体ひずみ評価方法により前記抵抗値の変動幅を求め、
    前記抵抗値の変動幅と、前記ケーブルが寿命に至る前記ケーブルの動作回数との関係を予め求めておき、
    求めた前記抵抗値の変動幅と、前記関係とを基に、前記ケーブルが寿命に至る前記ケーブルの動作回数を予測する、
    ケーブル寿命予測方法。
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