JP2023085886A - タイヤ用ゴム組成物、及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】加工性に優れるとともに、タイヤに優れた耐摩耗性を発現させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供する。【解決手段】ゴム成分、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルを含有し、前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m2/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m2/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下である、ことを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びタイヤに関するものである。
タイヤのトレッドには、特に耐摩耗性が要求されており、トレッド作製に用いられる材料の適正化を図ることで、性能の改善が行われている。
例えば、特許文献1は、所定の変性剤で変性されてなる比較的高シス含量のブタジエン系重合体と、窒素吸着比表面積が100m/gを超えるカーボンブラックとを組み合わせたゴム組成物をトレッドに用いることで、優れた低転がり抵抗と耐摩耗性とを兼ね備えた空気入りタイヤが得られることを開示している。
特開2011-219612号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載のゴム組成物は、耐摩耗性を一層向上させる点で、改良の余地があり、また、粘度が高い傾向があるため、加工性の向上も望まれる。
そこで、本発明は、加工性に優れるとともに、タイヤに優れた耐摩耗性を発現させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することを課題とする。
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、
ゴム成分、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルを含有し、
前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下である、
ことを特徴とする。
かかる本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加工性に優れるとともに、タイヤに優れた耐摩耗性を発現させることが可能である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記ゴム成分は、変性ブタジエンゴムを含むことが好ましい。この場合、耐摩耗性をより向上させることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、耐摩耗性をより十分に向上させる観点から、前記ゴム成分中の前記変性ブタジエンゴムの割合が、5質量%以上であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記ゴム成分は、更に無変性ブタジエンゴムを含むことが好ましい。この場合、耐摩耗性をより一層向上させることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、耐摩耗性をより十分に向上させる観点から、前記ゴム成分中の前記無変性ブタジエンゴムの割合が、10質量%以上であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、コストの観点、及び、ゴム混練時の作業性の観点などから、前記ゴム成分中の前記変性ブタジエンゴムの割合が、30質量%以下であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、耐摩耗性をより向上させる観点、及び、低ロス性や加工性等の他の性能を良好に保持する観点から、前記カーボンブラックのCTABが、135m/g以上150m/g以下であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上70質量部以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性を効果的に向上させることができ、また、低ロス性や加工性等の他の性能を良好に保持することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。この場合、加工性をより十分に向上させることができ、また、耐摩耗性を良好に保持することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、前記グリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル成分を含み、前記グリセリン脂肪酸エステル中の前記モノエステル成分の割合が、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性及び/又は加工性をより高めることができ、また、製造上の観点からも好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、上記と同様の観点から、前記グリセリン脂肪酸エステル中の前記モノエステル成分の割合が、85質量%以上であることが好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、前記ゴム成分が、天然ゴムを含むことが好ましい。この場合、ゴム物品としての機械的強度を高めることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤトレッドに好適に用いられる。
本発明のタイヤは、上述したタイヤ用ゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする。
かかる本発明のタイヤは、耐摩耗性に優れる。
本発明によれば、加工性に優れるとともに、タイヤに優れた耐摩耗性を発現させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
(タイヤ用ゴム組成物)
本発明の一実施形態に係るタイヤ用ゴム組成物(以下、「本実施形態のゴム組成物」と称することがある。)は、少なくとも、ゴム成分、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する。また、本実施形態で用いる上記カーボンブラックは、第1の物性として、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m/g以上であり、第2の物性として、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下であり、且つ、第3の物性として、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを要する。本実施形態のゴム組成物は、上記物性を具備するカーボンブラックを含有するため、高い耐摩耗性を発現することができる。なお、上記の物性を同時に具備するカーボンブラックは、実質的には新規である。更に、本実施形態のゴム組成物は、グリセリン脂肪酸エステルを含有することで、上記カーボンブラックの含有により悪化し得る加工性を、良好に保持することができる。
本実施形態のゴム組成物は、上記の通り優れた耐摩耗性を発現させることができるため、タイヤトレッドに好適に用いられる。
<ゴム成分>
本実施形態のゴム組成物に含有されるゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらゴム成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらゴム成分は、変性されたものであってもよい。
本実施形態において、上記ゴム成分は、変性ブタジエンゴム(変性BRとも称される。)を含むことが好ましい。なお、変性ブタジエンゴムは、炭素及び水素以外の原子を有する官能基を1種以上有するブタジエンゴムである。変性ブタジエンゴムは、カーボンブラックと化学的に結合することで優れた補強性を発現するので、耐摩耗性をより向上させることができる。変性ブタジエンゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
変性ブタジエンゴムは、上記官能基を、末端に有してもよく、主鎖に有してもよい。また、変性ブタジエンゴムは、例えば、ブタジエンゴム(無変性ブタジエンゴム)を変性剤で変性させることにより、得ることができる。
炭素及び水素以外の原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、半金属原子及び金属原子等が挙げられ、上記官能基はこれらより選ばれる1種以上の原子を有することが好ましい。また、半金属原子としては、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルル等が挙げられるが、これらの中でも、ホウ素、ケイ素及びゲルマニウムから選ばれる1種以上の原子がより好ましく、ケイ素が特に好ましい。また、金属原子としては、スズ、チタン、ジルコニウム、ビスマス及びアルミニウム等が挙げられるが、これらの中でも、スズ及びチタンから選ばれる1種以上の原子がより好ましく、スズが特に好ましい。
本実施形態のゴム組成物において、ゴム成分中の変性ブタジエンゴムの割合は、耐摩耗性をより十分に向上させる観点から、5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。一方、ゴム成分中の変性ブタジエンゴムの割合の上限は、特に限定されないが、コストの観点、及び、ゴム混練時の作業性の観点などから、30質量%以下であることが好ましい。
また、上記ゴム成分は、変性ブタジエンゴムとともに、無変性ブタジエンゴム(無変性BR、又は、単にBRとも称される。)を含むことが好ましい。変性ブタジエンゴムは、上述の通り耐摩耗性の向上に寄与する一方、マイクロメートルオーダーのフィラー分散性を悪化させ得る。しかし、変性ブタジエンゴムと無変性ブタジエンゴムとを併用することにより、フィラー分散性が一層向上して、補強性及びフィラー分散性を高次元で両立でき、結果として耐摩耗性をより一層向上させることができる。無変性ブタジエンゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のゴム組成物において、ゴム成分中の無変性ブタジエンゴムの割合は、耐摩耗性をより十分に向上させる観点から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。一方、無変性ブタジエンゴムの割合の上限は、特に限定されないが、変性ブタジエンゴムによる基本的な耐摩耗性の向上効果を保持する観点から、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態のゴム組成物において、変性ブタジエンゴム及び無変性ブタジエンゴムの合計のうち変性ブタジエンゴムの割合は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性の向上効果をより十分に得ることができる。同様の観点から、変性ブタジエンゴム及び無変性ブタジエンゴムの合計のうち変性ブタジエンゴムの割合は、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、また、40質量%以下であることが好ましい。
また、本実施形態のゴム組成物は、天然ゴム(NR)を含有することが好ましい。換言すると、本実施形態で用いるゴム成分は、天然ゴムを含むことが好ましい。この場合、ゴム物品としての機械的強度を高めることができる。
本実施形態のゴム組成物において、ゴム成分中の天然ゴムの割合は、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの割合が30質量%以上であれば、十分に機械的強度を高めることできる。また、ゴム成分中の天然ゴムの割合が70質量%以下であれば、天然ゴム以外のゴム成分(例えば、変性ブタジエンゴム、無変性ブタジエンゴムなど)を併用することの効果が十分に奏されて、耐摩耗性をより向上させることができる。
また、本実施形態のゴム組成物は、上述した変性ブタジエンゴム、無変性ブタジエンゴム及び天然ゴム以外の、その他のゴム成分を含有してもよく、含有しなくてもよい。但し、本実施形態のゴム組成物において、ゴム成分中の上記その他のゴム成分の割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%である(即ち、その他のゴム成分を含有しない)ことが特に好ましい。
<カーボンブラック>
本実施形態で用いるカーボンブラックは、第1の物性として、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m/g以上であることを要する。上記カーボンブラックは、CTABが130m/g以上であるので、ゴム成分の補強性を高め、ひいては耐摩耗性の向上に寄与することができる。また、上記カーボンブラックのCTABは、耐摩耗性をより向上させる観点から、135m/g以上であることが好ましく、また、低ロス性や加工性等の他の性能を良好に保持する観点から、150m/g以下であることが好ましい。
なお、カーボンブラックのCTABは、JIS K6217-3に準拠して測定される。また、カーボンブラックのCTABの調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
上記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量(IA)が150mg/g以下であることが好ましい。カーボンブラックのIAが150mg/g以下であれば、カーボンブラック表面の所定の活性化が好適に行われて、ゴム成分として混合される変性ブタジエンゴム及び/又は無変性ブタジエンゴムとの相互作用性を良好に高めることができる。また、上記カーボンブラックのIAは、低ロス性や加工性等の他の性能を良好に保持する観点から、130mg/g以上であることが好ましい。
なお、カーボンブラックのIAは、JIS K6217-1に準拠して測定される。また、カーボンブラックのIAの調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
また、上記カーボンブラックは、第2の物性として、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下であることを要する。CTAB/IAが0.92未満であると、耐摩耗性が悪化する虞がある。また、CTAB/IAが1.06超であると、加工性が悪化し、ひいては耐摩耗性が悪化する虞がある。また、上記カーボンブラックのCTAB/IAは、耐摩耗性をより向上させる観点から、0.95以上であることが好ましく、また、1.05以下であることが好ましい。
更に、上記カーボンブラックは、第3の物性として、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下であることを要する。水素放出量が3500質量ppm未満であると、カーボンブラック表面の所定の活性化、ひいてはゴム成分の相互作用性が不十分となり、結果として耐摩耗性が悪化する虞がある。また、水素放出量が4800質量ppm超であると、水素過多に起因して、耐摩耗性が悪化する虞がある。また、上記カーボンブラックの水素放出量は、耐摩耗性をより向上させる観点から、3700質量ppm以上であることが好ましく、また、4500質量ppm以下であることが好ましく、4300質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、カーボンブラックの水素放出量は、アルゴン雰囲気中2000℃で15分間加熱したときに放出される水素ガスの量を指し、水素分析装置を用いて測定される。また、カーボンブラックの水素放出量の調整は、限定されないが、例えば、カーボンブラックを製造する際の、原料導入条件、空気導入条件、燃料導入条件、冷却水導入条件等の各種条件をコントロールすることで行うことができる。
上記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が、130cm/100g以上150cm/100g以下であることが好ましい。DBPが130cm/100g以上であれば、耐摩耗性がより向上し、また、150cm/100g以下であれば、加工性を良好に保持することができる。
上記カーボンブラックの製造方法は、所望の物性を具備させることができれば、特に限定されない。但し、カーボンブラックにおける上述したCTAB、IA、水素放出量などの物性は、それぞれを単独で調整することが極めて困難である。本実施形態で用いることができるカーボンブラックは、例えば、後述の実施例の製造条件を踏まえ、適宜調整することで製造できる。
本実施形態のゴム組成物における上記カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上70質量部以下であることが好ましい。上記カーボンブラックの含有量が40質量部以上であれば、ゴム成分との相互作用性が十分に高まり、耐摩耗性を効果的に向上させることができる。また、上記カーボンブラックの含有量が70質量部以下であれば、低ロス性や加工性等の他の性能を良好に保持することができる。同様の観点から、ゴム組成物における上記カーボンブラックの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、45質量部以上であることがより好ましく、また、60質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態のゴム組成物は、上述した物性を具備するカーボンブラック以外のその他のカーボンブラックを含有してもよく、含有しなくてもよい。その他のカーボンブラックとしては、上述した第1の物性、第2の物性及び第3の物性のうち、2つのみ満たすカーボンブラック、1つのみ満たすカーボンブラック、或いは、いずれも満たさないカーボンブラック、が挙げられる。但し、本発明特有の耐摩耗性の向上効果をより確実に得る観点から、本実施形態のゴム組成物において、全カーボンブラック中のその他のカーボンブラックの割合は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましく、0質量%である(即ち、その他のカーボンブラックを含有しない)ことが特に好ましい。
<グリセリン脂肪酸エステル>
本実施形態のゴム組成物は、グリセリン脂肪酸エステルを含有する。ここで、グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンと、1種又は2種以上の脂肪酸とのエステルであり、より具体的には、グリセリンの3つのOH基の少なくとも1つと、脂肪酸のCOOH基とがエステル結合してなる化合物である。これらグリセリン脂肪酸エステルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グリセリン脂肪酸エステルとしては、特に限定されないが、グリセリン1分子と脂肪酸1分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸モノエステル(モノエステル成分)、グリセリン1分子と脂肪酸2分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸ジエステル(ジエステル成分)、グリセリン1分子と脂肪酸3分子とがエステル化してなるグリセリン脂肪酸トリエステル(トリエステル成分)等が挙げられる。これらモノエステル成分、ジエステル成分、トリエステル成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、本実施形態において、グリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル成分(グリセリン脂肪酸モノエステル)を含み、上記グリセリン脂肪酸エステル中の当該モノエステル成分の割合が、50質量%以上100質量%以下であることが好ましい。この場合、耐摩耗性及び/又は加工性をより高めることができ、また、製造上の観点からも好ましい。同様の観点から、上記グリセリン脂肪酸エステル中の当該モノエステル成分の割合は、85質量%以上であることがより好ましい。また、上記グリセリン脂肪酸エステル中の当該モノエステル成分の割合の上限は、特に限定されないが、99質量%以下、98質量%以下とすることができる。
なお、グリセリン脂肪酸エステル中のモノエステル成分、ジエステル成分、トリエステル成分の各割合(質量%)は、国際公開第2014/098155号に記載の方法に従って測定することができ、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することができる。
グリセリン脂肪酸エステルの原料となる脂肪酸としては、ゴム組成物の加工性及び耐摩耗性の観点から、炭素数8~22であることが好ましく、炭素数12~18であることがより好ましく、炭素数14~18であることが更に好ましく、炭素数16又は18であることが一層好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましく、また、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよいが、飽和脂肪酸であることが好ましい。
グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸として、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラギン酸、アラキドン酸、ベヘン酸等が挙げられ、これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が好ましく、パルミチン酸及びステアリン酸がより好ましい。
脂肪酸の原料としては、植物油脂、動物油脂等の油脂を加水分解して得られたもの、及び、それらの油脂又は加水分解脂肪酸を硬化、反硬化して得られたものが使用できる。また、油脂原料としては、特に限定されないが、植物油脂、動物油脂が挙げられ、より具体的には、パーム油、大豆油、オリーブ油、綿実油、ヤシ油、パーム核油、牛脂、豚脂、魚油等を用いることができる。
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸をエステル化反応して得る方法、天然油脂等のグリセリン脂肪酸トリエステルを加水分解して得る方法、天然油脂等のグリセリン脂肪酸トリエステルと脂肪酸を用いてエステル交換する方法などのいずれでもよい。グリセリン脂肪酸エステルを得る方法は、特に限定されるものではないが、公知の方法を用いることができる。生産性の観点から、グリセリンと脂肪酸をエステル化反応して得る方法が好ましい。
本実施形態のゴム組成物における上記グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、上記ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。上記含有量が0.1質量部以上であれば、加工性をより十分に向上させることができ、また、10質量部以下であれば、耐摩耗性を良好に保持することができる。同様の観点から、グリセリン脂肪酸エステルの含有量は、1質量部以上であることがより好ましく、また、5質量部以下であることがより好ましい。
<その他の成分>
本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック以外の充填剤を含有してもよい。カーボンブラック以外の充填剤としては、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられる。但し、本発明特有の耐摩耗性の向上効果をより確実に得る観点から、本実施形態のゴム組成物は、カーボンブラック以外の充填剤を含有しないことが好ましい。
また、本実施形態のゴム組成物は、硫黄等の架橋剤(加硫剤)、架橋促進剤(加硫促進剤)、プロセスオイル、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等のゴム工業で通常使用される配合剤を、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜選択して含有することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
そして、前記ゴム組成物は、ゴム成分に、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルと、必要に応じて適宜選択した各種配合剤とを配合し、混練り、熱入れ、押出等をすることにより製造することができる。
本実施形態のゴム組成物の調製方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、所定のゴム成分、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルを含む各成分を、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練り機を用いて混練りすることによって得られる。また、架橋促進剤及び架橋剤以外の成分を非生成(ノンプロ)段階で混合し、その混合物に架橋促進剤及び架橋剤を生成(プロ)段階で配合及び混合してゴム組成物を調製してもよい。
本実施形態のゴム組成物は、架橋ないし加硫することができる。ゴム組成物を架橋ないし加硫する条件としては、適宜調節すればよく、例えば、温度120~200℃、加温時間1分間~900分間とすることができる。
(タイヤ)
本発明の一実施形態に係るタイヤは、本実施形態のゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする。上記タイヤは、トレッドが本実施形態のゴム組成物から作製されているため、耐摩耗性に優れる。
タイヤを製造する方法としては、本実施形態のゴム組成物をトレッドに適用すること以外、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
(カーボンブラックの準備)
カーボンブラックCB1を作製した。なお、カーボンブラックにおける物性の制御は、表1に示すように各種条件(原料導入量、空気導入量、温度、圧力、反応時間など)を変更することにより行った。また、カーボンブラックCB2として、キャボットジャパン社製、商品名「VULCAN 7HJ」(N234)を準備した。
Figure 2023085886000001
準備したCB1及びCB2について、JIS K6217-3に準拠して、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)[m/g]を測定し、また、JIS K6217-1に準拠して、ヨウ素吸着量(IA)[mg/g]を測定した。更に、作製したCB1及び、CB2について、水素分析装置(HORIBA社製、「EMGA」)を用い、アルゴン雰囲気中2000℃で15分間加熱したときに放出される水素ガスの量(水素放出量)を測定した。CTAB/IAの算出値とともに、結果をそれぞれ表2に示す。
Figure 2023085886000002
(変性ブタジエンゴム(HMI-BR)の調製)
乾燥し、窒素置換した約900mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン283g、1,3-ブタジエン50g、2,2-ジテトラヒドロフリルプロパン0.0057mmol、及びヘキサメチレンイミン(HMI-BR)0.513mmolを加え、更にn-ブチルリチウム(BuLi)0.57mmolを加えた後、撹拌装置を具えた50℃の温水浴中で4.5時間重合を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。次に、この重合反応系に、変性剤(カップリング剤)として四塩化スズ0.100mmolを速やかに加え、更に50℃で30分間撹拌して変性反応を行った。その後、重合反応系に、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して、スズ原子を有する変性ブタジエンゴム(HMI-BR)を得た。得られたHMI-BRについて、H-NMRスペクトルの積分比からブタジエン部分のビニル結合量を測定したところ、14%であり、DSC曲線の変曲点からガラス転移温度(Tg)を求めたところ、-95℃であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による分子量分布曲線の全体の面積に対する最も高分子量側のピーク面積の割合からカップリング率を求めたところ、65%であった。
(ゴム組成物の調製)
次に、表3に示す配合処方にて十分に混練して、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物を用いて、下記の手順に従って耐摩耗性の評価を行った。
<耐摩耗性(実地試験)>
調製したゴム組成物をトレッド部材に用い、適宜加硫を行って、サイズ195/85R16のトラック・バス用空気入りタイヤを作製した。得られたタイヤを小型トラックに装着し、公道を8000km走行させた後、タイヤの主溝深さの変化から、摩耗量を測定した。そして、比較例1の摩耗量の逆数を100として、各例における耐摩耗性を指数評価した。結果を表3に示す。指数値が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
<貯蔵弾性率G’>
粘弾性測定装置(商品名:RPA-2000、アルファテクノロジーズ社製)を用いて、130℃、100%歪の条件で、ゴム組成物の貯蔵弾性率(G')を測定した。そして、比較例1の貯蔵弾性率を100として、各例における貯蔵弾性率を指数評価した。結果を表3に示す。指数値が小さいほど、加工性に優れることを示す。
Figure 2023085886000003
*1 NR:TSR♯20
*2 変性BR:調製した変性ブタジエンゴム(HMI-BR)
*3 無変性BR:宇部興産株式会社製、「UBEPOL BR150L」
*4 グリセリン脂肪酸エステル:国際公開第2014/098155号の製造例1に記載の方法に従い、脂肪酸をオクタン酸から同モル量のパーム油由来硬化脂肪酸に代えて合成し、更に分子蒸留することで調整したもの(グリセリン脂肪酸エステル組成物)を用いた。なお、得られたグリセリン脂肪酸エステル中のグリセリン脂肪酸モノエステルの割合は97質量%であった。
*5 加硫促進剤CZ:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業株式会社製、「ノクセラーCZ」
表1~表3より、本発明に従う実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べて、タイヤの耐摩耗性を高めつつ、加工性が向上していることが分かる。
本発明によれば、加工性に優れるとともに、タイヤに優れた耐摩耗性を発現させることが可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐摩耗性に優れたタイヤを提供することができる。

Claims (14)

  1. ゴム成分、カーボンブラック及びグリセリン脂肪酸エステルを含有し、
    前記カーボンブラックは、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド吸着比表面積(CTAB)が130m/g以上、ヨウ素吸着量(IA)(mg/g)に対する前記CTAB(m/g)の比(CTAB/IA)が0.92以上1.06以下、且つ、水素放出量が3500質量ppm以上4800質量ppm以下である、
    ことを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分は、変性ブタジエンゴムを含む、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分中の前記変性ブタジエンゴムの割合が、5質量%以上である、請求項2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 前記ゴム成分は、更に無変性ブタジエンゴムを含む、請求項2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記ゴム成分中の前記無変性ブタジエンゴムの割合が、10質量%以上である、請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. 前記ゴム成分中の前記変性ブタジエンゴムの割合が、30質量%以下である、請求項2~5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 前記カーボンブラックのCTABが、135m/g以上150m/g以下である、請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して40質量部以上70質量部以下である、請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  9. 前記グリセリン脂肪酸エステルの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である、請求項1~8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  10. 前記グリセリン脂肪酸エステルは、モノエステル成分を含み、前記グリセリン脂肪酸エステル中の前記モノエステル成分の割合が、50質量%以上100質量%以下である、請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  11. 前記グリセリン脂肪酸エステル中の前記モノエステル成分の割合が、85質量%以上である、請求項10に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  12. 前記ゴム成分が、天然ゴムを含む、請求項1~11のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  13. タイヤトレッドに用いられる、請求項1~12のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  14. 請求項1~13のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッドに用いたことを特徴とする、タイヤ。
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