JP2023084234A - 液滴吐出装置および液滴吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の液滴を吐出する際、後続の液滴を先行する液滴に確実に合体させる。【解決手段】液体を収容する圧力室に設けられた振動子の動作によって、圧力室の容積を変動させ、圧力室に連通するノズルから液滴を吐出させる吐出部として、第1,第2吐出部を備え、この第1,第2吐出部に、それぞれ第1駆動信号と第2駆動信号とを付与する。この第1,第2駆動信号は、それぞれ、圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、膨張要素により膨張された圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、膨張維持要素により維持された圧力室の容積を収縮させ、それぞれのノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含む第1,第2先行パルスおよび第1,第2後続パルスを備え、第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している【選択図】図5
Description
本開示は、インクなどの液体を、液滴として用紙などの対象物に吐出する技術に関する。
インクジェットプリンターなど、液滴を対象物に吐出して印刷や捺染、あるいは薬液や、半導体材料の塗布などを行なう液滴吐出装置が知られている。こうした液滴吐出装置では、下記特許文献1に示すように、圧力室内の液体をアクチュエーターにより加圧して、ノズルから複数の液滴を連続的に吐出し、複数の液滴を着弾前に合体させ、対象物に着弾する液滴の大きさをコントロールすることが行なわれている。
しかしながら、インクなどの液体を吐出するノズルを複数設け、それぞれのノズルから別々に液滴を吐出する場合、それぞれの圧力室やノズルの構成にはバラツキがあり、ノズルから吐出された複数の液滴の合体を所望の状態にできないことがあり得た。これは、圧力室内の液体には、アクチュエーターの加圧による固有振動が生じるが、この固有振動が、ノズル毎あるいはノズル群毎に異なってしまうと、複数の液滴の合体の位置が設計値からずれ、あるいは設計範囲に入らない場合があり得る。合体の位置の設計値や設計範囲とは、ノズルからどの程度の範囲で合体させるか、という場合に限らず、逆に合体の場所を異ならせて合体させるといった場合も含む。
本開示の一態様は、液滴吐出装置としての態様である。この液滴吐出装置は、液体を収容する第1圧力室に設けられた第1振動子の動作によって、前記第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1吐出部と、前記液体を収容する第2圧力室に設けられた第2振動子の動作によって、前記第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2吐出部と、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を、前記第1振動子に付与する第1駆動信号付与部と、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を、前記第2振動子に付与する第2駆動信号付与部と、を備える。この液滴吐出装置では、前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している。
本開示の他の態様は、複数の液滴を対象物に向けて吐出する液滴吐出方法としての態様である。この液滴吐出方法は、液体を収容する第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1振動子に、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を付与し、前記液体を収容する第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2振動子に、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を付与し、前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している。
A.第1実施形態:
(A1)ハードウェア構成:
図1は、第1実施形態である液滴吐出装置100が組み込まれたプリンター12の概略構成図である。このプリンター12は、画像を出力するコンピューター(以下、PCと略記することがある)90に接続されており、PC90が出力する原画像ORGを印刷媒体Pに印刷する。プリンター12は、カラーインクを用いて双方向印刷を行なうシリアル式インクジェットプリンターである。図示するように、プリンター12は、紙送りモーター74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された吐出ヘッド40を駆動してインクの吐出及びドット形成を行なう機構と、これらの紙送りモーター74,キャリッジモーター70,吐出ヘッド40、PC90及び操作パネル77との信号のやり取りを司る各種回路基板とから構成されている。
(A1)ハードウェア構成:
図1は、第1実施形態である液滴吐出装置100が組み込まれたプリンター12の概略構成図である。このプリンター12は、画像を出力するコンピューター(以下、PCと略記することがある)90に接続されており、PC90が出力する原画像ORGを印刷媒体Pに印刷する。プリンター12は、カラーインクを用いて双方向印刷を行なうシリアル式インクジェットプリンターである。図示するように、プリンター12は、紙送りモーター74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された吐出ヘッド40を駆動してインクの吐出及びドット形成を行なう機構と、これらの紙送りモーター74,キャリッジモーター70,吐出ヘッド40、PC90及び操作パネル77との信号のやり取りを司る各種回路基板とから構成されている。
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と平行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモーター70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリー72等から構成されている。プラテン75の軸方向に沿ったキャリッジ80の動きによって印刷位置が変更されることを主走査と呼び、この方向を主走査方向(双方向)と呼ぶ。また、プラテン75の回転による印刷媒体Pの搬送によって吐出ヘッド40による印刷位置が変更されることを副走査と呼ぶ。
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインクC、マゼンタインクM、イエロインクY、ブラックインクK、をそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ92~95が搭載される。キャリッジ80の下部の吐出ヘッド40には、上述の各色のカラーインクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ92~95を上方から装着すると、各カートリッジから吐出ヘッド40へのインクの供給が可能となる。
図1において、液滴吐出装置100として示した部分は、プリンター12において液滴の吐出に関与する部分である。図2は、液滴吐出装置100の電気的構成を示すブロック図である。図示するように、液滴吐出装置100は、電源回路基板10、制御回路基板20、複数の駆動回路基板30-1~30-n及び複数の吐出ヘッド40-1~40-nを備える。nは、2以上の整数であり、複数を意味する。
複数の駆動回路基板30-1~30-nには、全て同じ構成を備えており区別する必要がない場合は、駆動回路基板30と称する。また、複数の吐出ヘッド40-1~40-nは、全て同じ構成であり区別する必要がない場合は、吐出ヘッド40と称する。また、本実施形態では、駆動回路基板30-i(i=1~n)と吐出ヘッド40-iとが、対応して設けられる。本実施形態では、吐出ヘッド40は、各色インクCMYKのインクカートリッジ92~95に対応して4つ設けられているから、n=4である。なお、吐出ヘッド40は、各色インク毎に設けるものに限らず、大判プリンターのように、印字範囲に亘って所定幅の吐出ヘッドを複数配列する場合などもあり得る。
電源回路基板10には、高電圧生成回路110が設けられている。電源回路基板10は、第1ケーブル65を介して、制御回路基板20と電気的に接続される。高電圧生成回路110は、液滴吐出装置100の外部から入力される電源電圧に基づいて、液滴吐出装置100で使用される例えばDC42Vの電圧信号である電圧HVHを生成し、制御回路基板20に出力する。
制御回路基板20には、制御回路210が設けられ、BtoBコネクター83を介して、駆動回路基板30と電気的に接続される。また、制御回路基板20には外部のPC90からの画像信号が、電源回路基板10を介して入力される。
制御回路210は、吐出データ生成回路211及び駆動データ生成回路212を含み、PC90からの画像データ等の各種の信号が供給されたときに、駆動回路基板30及び吐出ヘッド40を制御するための各種制御信号を生成し出力する。なお、制御回路基板20は、上述したプリンター12としてのキャリッジモーター70等の制御も行なうが、ここでは液滴の吐出に関与する部分以外の記載を省略している。
制御回路210に入力された信号の一部は、吐出データ生成回路211に入力される。吐出データ生成回路211は、入力された信号に基づいて、吐出部600からのインクの吐出を制御する複数種類の制御信号を生成する。
詳細には、吐出データ生成回路211は、n個の印刷データ信号SI1~SInと、吐出部600からインクが吐出されるタイミングを制御するためのn個のラッチ信号LAT1~LATnとを生成し、n個の駆動回路基板30-1~30-nのそれぞれに出力する。また、吐出データ生成回路211は、n個の選択制御信号CH1~CHnを生成し、n個の駆動回路基板30-1~30-nのそれぞれに出力する。選択制御信号CHのことを、チェンジ信号ともいう。さらに、吐出データ生成回路211は、クロック信号Sckをn個の駆動回路基板30-1~30-nに共通に出力する。駆動回路基板30-iには、クロック信号Sck、印刷データ信号SIi、ラッチ信号LATi及び選択制御信号CHiが入力される。以下では、印刷データ信号SI1~SInのことを、まとめて印刷データ信号SIといい、ラッチ信号LAT1~LATnのことを、まとめてラッチ信号LATといい、選択制御信号CH1~CHnのことを、まとめて選択制御信号CHという。
制御回路210に入力された信号の一部は、駆動データ生成回路212に入力される。駆動データ生成回路212は、入力された信号に基づいて、吐出部600を駆動する共通駆動波形COMの元となるデジタルデータであるn個の駆動データdA1~dAnを生成し、n個の駆動回路基板30-1~30-nのそれぞれに出力する。駆動回路基板30-iには、駆動データdAiが入力される。以下では、駆動データdA1~dAnのことを、まとめて駆動データdAという。駆動データdA1~dAnは、駆動電圧の波形をアナログ/デジタル変換したデジタルデータ、又は、直近の駆動データに対する差分を示すデジタルデータであってもよい。また、駆動データdA1~dAnは、駆動波形において傾きが一定の各区間の長さとそれぞれの傾きとの対応関係を規定するデジタルデータであってもよい。n個の駆動データdA1~dAnは、対応する吐出ヘッド40-1~40-nの特性に対応して、それぞれ異なる。発明の概要の項における第1駆動信号付与部は、駆動回路基板30-iのいずれか一つに対応し、第2駆動信号付与部は、駆動回路基板30-iの他のいずれか一つに対応する。同様に、第1駆動信号は、駆動データdA1~dAnのいずれか一つに対応し、第2駆動信号は、駆動データdA1~dAnの他のいずれか一つに対応する。第1吐出部,第2吐出部や第1振動子,第2振動子なども同様である。駆動データdA1~dAnの詳細については、後述する。
制御回路基板20には、高電圧生成回路110で生成された電圧HVHを分岐する配線パターンが設けられ、電圧HVHをn個の駆動回路基板30-1~30-nのそれぞれに出力する。すなわち、制御回路基板20は、電圧HVHを分岐し、転送するための中継基板としても機能する。
制御回路基板20に設けられている制御回路210は、電源回路基板10に設けられてもよい。具体的には、制御回路210で生成された印刷データ信号SI1~SIn、ラッチ信号LAT1~LATn、選択制御信号CH1~CHn、駆動データdA1~dAnは、電源回路基板10で生成され第1ケーブル65を介して制御回路基板20に入力される構成であってもよい。
電源回路基板10から制御回路基板20に第1ケーブル65を介して転送される各種信号は、シリアル制御信号をLVDS(Low Voltage Differential Signaling)転送方式、LVPECL(Low Voltage Positive Emitter Coupled Logic)転送方式、CML(Current Mode Logic)転送方式等に用いられる差動信号であってもよい。この場合、電源回路基板10には、制御回路基板20に転送する各種信号と当該差動信号に変換するための変換回路が設けられ、また、制御回路基板20には、入力される当該差動信号を復元するための復元回路が設けられる。
駆動回路基板30には、駆動波形生成部311、および、電圧生成回路320が設けられ、第2ケーブル86および第3ケーブル87を介して吐出ヘッド40と電気的に接続される。
駆動波形生成部311には、駆動データdA及び電圧HVHが入力される。駆動波形生成部311は、入力される駆動データdA及び電圧HVHに基づいて、吐出ヘッド40に備えられた複数の圧電素子60をそれぞれ駆動するための共通駆動波形COMを生成し、吐出ヘッド40に出力する回路を有する。
例えば、駆動データdAがそれぞれ共通駆動波形COMの波形をアナログ/デジタル変換したデジタルデータであれば、駆動波形生成部311は、駆動データdAをそれぞれデジタル/アナログ変換した後、電圧HVHに基づき増幅して共通駆動波形COMを生成する。
また、例えば、駆動データdAが共通駆動波形COMの波形において傾きが一定の各区間の長さとそれぞれの傾きとの対応関係を規定するデジタルデータであれば、駆動波形生成部311は、駆動データdAで規定される各区間の長さと傾きとの対応関係を満たすアナログ信号を生成した後、電圧HVHに基づき増幅して共通駆動波形COMを生成する。
電圧生成回路320は、電圧HVHに基づき複数の電圧値の複数の電圧信号を生成する。具体的には、電圧生成回路320は、電圧信号として、吐出ヘッド40に設けられる圧電素子60に供給される電圧VBSを生成し、吐出ヘッド40に出力する。電圧VBSは、例えば、DC6Vである。複数の電圧生成回路320は、電圧信号として、吐出ヘッド40に設けられる各種構成の電源電圧を供給する電圧VDDを生成し、吐出ヘッド40に出力する。電圧VDDは、例えば、DC3.3Vである。複数の電圧生成回路320は、電圧信号として、駆動波形生成部311が備える増幅回路に含まれる増幅器を駆動させるための電圧GVDDを生成し、駆動波形生成部311に出力する。電圧GVDDは、例えば、DC7.5Vである。なお、複数の電圧生成回路320は上述以外の複数の電圧信号を生成してもよい。
駆動回路基板30は、吐出データ生成回路211から入力された印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、選択制御信号CH及びクロック信号Sckを、吐出ヘッド40に転送する。
駆動回路基板30と吐出ヘッド40とは、第2ケーブル86及び第3ケーブル87で電気的に接続される。このうち、第2ケーブル86は、共通駆動波形COM、電圧VDD,VBSを駆動回路基板30から吐出ヘッド40に転送し、第3ケーブル87は、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、選択制御信号CH及びクロック信号Sckを転送する。なお、第2ケーブル86および第3ケーブル87は、一本のケーブルにまとめられてもよい。
吐出ヘッド40は、複数の吐出モジュール500を備える。複数の吐出モジュール500のそれぞれは、波形選択部510と、複数の吐出部600とを備える。
波形選択部510は、選択制御部520と、複数の選択回路530とを備える。波形選択部510は、例えばIC等の集積回路で構成され、電圧VDDにより動作する。選択制御部520には、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT、選択制御信号CH及びクロック信号Sckが入力される。選択制御部520は、複数の選択回路530のそれぞれに対して、共通駆動波形COMに含まれる各波形の出力を制御するための選択信号を、印刷データ信号SIに基づき生成し、ラッチ信号LAT及び選択制御信号CHで定められたタイミングに基づいて出力する。選択回路530のそれぞれには、駆動波形生成部311で生成された共通駆動波形COMが入力される。選択回路530は、選択制御部520から出力された選択信号に従い、共通駆動波形COMから駆動電圧Voutを生成し、対応する吐出部600に出力する。
複数の吐出部600のそれぞれは、圧電素子60を含み、選択回路530のそれぞれに対応して設けられている。圧電素子60の一端には、選択回路530から出力された駆動電圧Voutが印加され、他端には、電圧VBSが印加される。そして、圧電素子60は、駆動電圧Voutと電圧VBSとの電位差により変位し、当該変位に基づき吐出部600に備えられたノズル651からインクを吐出させる。本実施形態では、電圧VBSは一定の電圧であり、駆動電圧Voutは、共通駆動波形COMに対応した電圧である。駆動回路基板30から出力される共通駆動波形COMは、対応する吐出ヘッド40に含まれる吐出モジュール500に分配され、吐出ヘッド40に含まれる複数の吐出部600の各圧電素子60に印加される駆動電圧Voutは、吐出部600によらず同一である。共通駆動波形COMに対応した駆動電圧Voutの詳細については後述する。
図3は、吐出モジュール500が有する1つの吐出部600の概略構成を示す図である。吐出モジュール500は、吐出部600と、リザーバー641とを含む。リザーバー641は、インクの色毎に設けられており、インクが供給口661からリザーバー641に導入される。供給口661には、インクカートリッジ92~95のいずれか一つが接続される。
吐出部600は、図示するように、液体としてのインクを吐出するノズル651と、圧力室として機能しノズル651に連通するキャビティー631と、キャビティー631内のインクに圧力変動を与える圧力発生素子としての圧電素子60と振動板621とを含む。このうち、振動板621は、その上面に設けられた圧電素子60によって屈曲振動し、インクが充填されるキャビティー631の内部容積を拡大/縮小させるダイヤフラムとして機能する。ノズル651は、ノズルプレート632に設けられるとともに、キャビティー631に連通する開孔部である。キャビティー631は、内部にインクが充填され、圧電素子60の変位により、内部容積が変化する。ノズル651は、キャビティー631に連通し、キャビティー631の内部容積の変化に応じてキャビティー631内のインクを液滴(インク滴)として吐出する。
本実施形態における圧電素子60は、圧電体61と、圧電体61の一方側に配置された第1電極62と、圧電体61の他方側に配置された第2電極63とを備える。つまり、圧電素子60は、圧電体61を一対の電極で挟んだ構造になっている。以下では、特に説明しない限り、圧電素子60に電圧、電位、あるいは波形が印加されるとは、吐出部600の第1電極62に、電圧、電位、あるいは波形が印加されることを意味する。
圧電体61は、第1電極62および第2電極63により印加された電圧の電位差に応じて、第1電極62、第2電極63、振動板621とともに図3において中央部分が両端部分に対して上下方向に撓む。具体的には、本実施形態における圧電素子60は、駆動電圧Voutの電圧が低くなると、上方向に撓み、駆動電圧Voutの電圧が高くなると、下方向に撓む構成となっている。この構成において、圧電素子60が上方向に撓めば、キャビティー631の内部容積が拡大するので、インクがリザーバー641から引き込まれる。一方、圧電素子60が下方向に撓めば、キャビティー631の内部容積が縮小するので、縮小の程度によっては、インクがノズル651から吐出される。
図4は、圧電素子60の屈曲状態を示す図である。本実施形態では、印刷期間中のインクの吐出をしない状態では、圧電素子60の第2電極63には電圧VBSが印加され、第1電極62には、電圧VBSよりも電圧の高い中間電位Viが印加される。これにより、第1電極62と第2電極63との間に電位差が生じ、吐出部600は、図4に示すように若干、ノズル651側に屈曲した状態となる。これは、インクの吐出に先立ってキャビティー631の容積を拡大する際に、リザーバー641からキャビティー631にインクを十分に供給するためである。中間電位Viは、吐出部600の構造と吐出しようとするインクの量とに応じて、実験やシミュレーション等によって任意に定めることが可能である。
圧電素子60は、図3や図4に示した構造に限られず、圧電素子60を変形させてインクを吐出させることができる構造であればよい。圧電素子60としては、屈曲振動する素子に限られず、縦振動する素子を用いてもよい。
圧電素子60は、吐出モジュール500においてキャビティー631とノズル651とに対応して設けられ、選択回路530にも対応して設けられる。このため、吐出モジュール500には、圧電素子60、キャビティー631、ノズル651及び選択回路530のセットが、ノズル651毎に設けられる。
吐出部600の圧電素子60に印加される電圧信号は、波形選択部510により選択される。波形選択部510は、選択制御部520と、複数の選択回路530とを含む。選択制御部520には、クロック信号Sck、印刷データ信号SI、ラッチ信号LAT及び選択制御信号CHが供給される。選択制御部520では、シフトレジスター,ラッチ回路,デコーダーからなる回路が、ノズル651毎の圧電素子60に対応して設けられている。
印刷データ信号SIは、クロック信号Sckに同期した信号であり、m個の吐出部600のそれぞれに対して、インクを吐出させるか吐出させないかを指示するためのデータを含む。印刷データ信号SIは図示しないシフトレジスターに一旦保持されることで、シリアルで供給された印刷データ信号SIは、クロック信号Sckにしたがって、複数のノズル651に対応して、順次転送される。
選択回路530は、圧電素子60のそれぞれに対応して設けられている。すなわち、1つの波形選択部510が有する選択回路530の数は、ノズル651の総数mと同じである。選択回路530は、選択信号に応じて、共通駆動波形COMを駆動電圧Voutとして出力するか否かを選択する。具体的には、選択回路530は、選択信号がHレベルであれば、駆動波形生成部311と圧電素子60とを導通させることにより、共通駆動波形COMの該当部分を駆動電圧Voutとして出力する。一方、選択信号がLレベルであれば、選択回路530は、駆動波形生成部311と圧電素子60とをオフ状態とする。
(A2)共通駆動波形COM:
共通駆動波形COMにしたがって圧電素子60に印加される駆動電圧Voutの一例を、図5に示した。駆動電圧Voutは、駆動データdA1~dAnに対応して、それぞれの吐出ヘッド40毎に異なる波形として生成される。図5の上段には、吐出ヘッド40のうちの一つに含まれる各圧電素子60に出力される駆動電圧Vout1を、中段には、他の吐出ヘッド40に含まれる圧電素子60に出力される駆動電圧Vout2を、それぞれ示した。また最下段には、印刷媒体Pに向けて吐出されるインクの液滴の様子を模式的に示した。
共通駆動波形COMにしたがって圧電素子60に印加される駆動電圧Voutの一例を、図5に示した。駆動電圧Voutは、駆動データdA1~dAnに対応して、それぞれの吐出ヘッド40毎に異なる波形として生成される。図5の上段には、吐出ヘッド40のうちの一つに含まれる各圧電素子60に出力される駆動電圧Vout1を、中段には、他の吐出ヘッド40に含まれる圧電素子60に出力される駆動電圧Vout2を、それぞれ示した。また最下段には、印刷媒体Pに向けて吐出されるインクの液滴の様子を模式的に示した。
以下の説明では、駆動データdA1に対応した駆動電圧Vout1が第1駆動信号に、駆動データdA2に対応した駆動電圧Vout2が第2駆動信号に相当し、駆動データdA1を受ける吐出ヘッド40-1に含まれる圧電素子60が第1振動子に、駆動データdA2を受け取る吐出ヘッド40-2に含まれる圧電素子60が第2振動子に、それぞれ相当するものとするが、第1,第2駆動信号、第1,第2振動子などの「第1」「第2」が、複数の吐出ヘッド40-1~40-nのいずれに対応するかは任意である。
図示するように、吐出ヘッド40-1に属する圧電素子60に印加される第1駆動電圧Vout1は、第1先行パルスPp1と第1後続パルスSp1とからなる。以下の説明において、大文字の「T」は期間を、大文字の「P」はパルスを、それぞれ示し、接辞「p」は先行パルスを、接辞「s」は後続パルスを、それぞれ示す。また、接辞「1」は第1駆動電圧Vout1に関するものであり、接辞「2」は後述する第2駆動電圧Vout2に関するものであることを示している。
第1駆動電圧Vout1を構成する第1先行パルスPp1は、第1先行液滴をノズル651から吐出させるために圧電素子60に印加される電圧波形を備え、第1後続パルスSp1は、第1後続液滴を吐出させるために圧電素子60に印加される電圧波形を備える。駆動電圧Vout1が印加されると、圧電素子60は第1先行液滴と第1後続液滴の二つの液滴を、対応するノズル651から印刷媒体Pに向けて吐出する。本実施形態では、第1先行液滴の方が第1後続液滴より大きく、第1先行液滴よりも第1後続液滴の方が高速で印刷媒体Pに向かう。第1後続液滴は、第1先行液滴が印刷媒体Pに着弾する前に、第1先行液滴に追いつき、両者は合体してから印刷媒体Pに着弾する。
第1先行パルスPp1は、所定の傾きで電圧が低下していく膨張要素pa1、低下した電圧が維持される膨張維持要素pb1、所定の傾きで電圧が上昇していく圧縮要素pc1、上昇した電圧が維持される圧縮維持要素pd1、中間電位Viに戻す復帰要素pe1、中間電位Viが維持される終了要素pf1、とから構成される。第1後続パルスSp1は、同様に、所定の傾きで電圧が低下していく膨張要素sa1、低下した電圧が維持される膨張維持要素sb1、所定の傾きで電圧が上昇していく圧縮要素sc1、上昇した電圧が維持される圧縮維持要素sd1、中間電位Viに戻す復帰要素se1、中間電位Viが維持される終了要素sf1、とから構成される。
第1先行パルスPp1による圧電素子60の挙動について説明する。膨張要素pa1では、圧電素子60は上方向に撓み、上述したように、キャビティー631の体積は拡大し、ノズル651における液面の境界(メニスカス)は、内側に凹む(図5最下段、符号A)。膨張維持要素pb1では、圧電素子60は上方向に撓んだ状態に維持され、メニスカスは、キャビティー631を満たす液体(インク)の固有振動周期により振動する(図5最下段、符号B)。この膨張維持要素pb1の時間を膨張維持期間Tpb1と呼ぶ。続く圧縮要素pc1では、圧電素子60は下方向に撓み、上述したように、キャビティー631の体積は縮小し、キャビティー631に収納できなくなった液体は、ノズル651から外側に、第1先行液滴として吐出される(図5最下段、符号C)。圧縮維持要素pd1では、圧電素子60は下方向に撓んだ状態に維持され、ノズル651におけるメニスカスは、キャビティー631を満たす液体(インク)の固有振動周期により残留振動する。この圧縮維持要素pd1の時間を圧縮維持期間Tpd1と呼ぶ。その後、キャビティー631内の液体の残留振動に対して非共振タイミングで復帰要素pe1を印加し、終了要素pf1では、中間電位Viを維持することで、図4に示すように若干、ノズル651側に屈曲した状態に戻る。特に、終了要素pf1の時間を終了期間Tpf1と呼ぶ。復帰要素pe1と終了要素pf1との期間も、第1先行液滴は、印刷媒体Pに向かって移動する(図5最下段、符号D)。
第1後続パルスSp1による圧電素子60の挙動は、基本的には、第1先行パルスPp1によるものと同様である。膨張要素sa1では、圧電素子60は上方向に撓み、上述したように、キャビティー631の体積は拡大し、ノズル651における液面の境界(メニスカス)は、内側に凹む(図5最下段、符号E)。膨張維持要素sb1では、圧電素子60は上方向に撓んだ状態に維持され、メニスカスは、キャビティー631を満たす液体(インク)の固有振動周期により振動する(図5最下段、符号F)。この膨張維持要素sb1の時間を膨張維持期間Tsb1と呼ぶ。続く圧縮要素sc1では、圧電素子60は下方向に撓み、上述したように、キャビティー631の体積は縮小し、キャビティー631に収納できなくなった液体は、ノズル651から外側に、第1後続液滴として吐出される(図5最下段、符号G)。圧縮維持要素sd1では、圧電素子60は下方向に撓んだ状態に維持され、ノズル651におけるメニスカスは、キャビティー631を満たす液体(インク)の固有振動周期により残留振動する。この圧縮維持要素sd1の時間を圧縮維持期間Tsd1と呼ぶ。その後、キャビティー631内の液体の残留振動に対して非共振タイミングで復帰要素se1を印加し、終了要素sf1では、中間電位Viを維持することで、図4に示すように若干、ノズル651側に屈曲した状態に戻る。特に、終了要素sf1の時間を終了期間Tsf1と呼ぶ。復帰要素se1と終了要素sf1との期間も、吐出された液滴は、印刷媒体Pに向かって移動し、第1後続液滴は第1先行液滴に追い付いていく(図5最下段、符号H)。やがて、第1後続液滴は、第1先行液滴に合体し、その後、印刷媒体Pに着弾する(図5最下段、符号I、J)。
図5の中段に示した第2駆動電圧Vout2は、第1駆動電圧Vout1が印加される圧電素子60が属する吐出ヘッド40-1とは異なる吐出ヘッド40-2に属する圧電素子60に印加される電圧波形を備える。第2駆動電圧Vout2は、第1駆動電圧Vout1と同様、2つパルスからなる。最初のパルスを第2先行パルスPp2と呼び、続くパルスを第2後続パルスSp2と呼ぶ。第2先行パルスPp2,第2後続パルスSp2は、膨張要素、膨張維持要素、圧縮要素,圧縮維持要素、復帰要素、終了要素をこの順に備える点で、第1先行パルスPp1,第1後続パルスSp1と同一だが、幾つかの要素で両者の時間的長さが異なっている。
第1駆動電圧Vout1の第1先行パルスPp1における膨張維持要素pb1の期間、つまり膨張維持期間Tpb1は、吐出ヘッド40-1の固有振動周期Tc1に基づいて定められており、第2駆動電圧Vout2の第2先行パルスPp2における膨張維持要素pb2の期間、つまり膨張維持期間Tpb2は、吐出ヘッド40-2の固有振動周期Tc2に基づいて定められている。つまり、第1駆動電圧Vout1の第1先行パルスPp1と、第2駆動電圧Vout2の第2先行パルスPp2とは、それぞれの膨張維持期間Tpb1,Tpb2が、吐出ヘッド40-1,40-2の固有振動周期Tc1,Tc2に基づいて定められている。なお、第1先行パルスPp1,第2先行パルスPp2自体の時間的長さTP1,TP2は、予め定められた共通の長さであり、膨張維持期間Tpb1,Tpb2の違いに応じて、第1先行パルスPp1,第2先行パルスPp2自体の時間的長さTP1,TP2が同一になるよう、終了期間Tpf1,Tpf2の長さを調整している。なお、液滴を吐出した後のキャビティー631内の液体の残留振動を安定させるために、圧縮維持要素pd1の期間、つまり圧縮維持期間Tpd1と、圧縮維持要素pd2の期間、つまり圧縮維持期間Tpd2とを、固有振動周期Tc1,Tc2に応じて調整してもよい。
膨張維持期間Tpb1,Tpb2を、吐出ヘッド40-1,40-2の固有振動周期Tc1,Tc2に基づいて定める手法について説明する。図6は、膨張維持期間と液滴速度との関係を示すグラフである。図において、実線J1は、吐出ヘッド40-1のキャビティー631における液体の固有振動周期が約10.4μsecである場合の膨張維持期間Tpbと液滴の吐出速度Vmとの関係を示す。また、破線B2は、吐出ヘッド40-2のキャビティー631における液体の固有振動周期が約11.3μsecである場合の膨張維持期間Tpbと液滴の吐出速度Vmとの関係を示す。なお、膨張要素pa1と膨張要素pa2は等しく、圧縮要素pc1と圧縮要素pc2は等しいものとする。グラフから分かるように、所定の膨張維持期間Tpbにおける固有振動周期の相違による速度の差は、膨張維持期間が短い方が小さい。
第1先行パルスPp1や第2先行パルスPp2により吐出される液滴には、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2により吐出される液滴を合体させるが、この合体の位置は、印刷媒体Pに近い位置ではなく、遠い位置、つまりノズル651に近い位置であることが望ましい。例えば、ノズルプレートから0.5mmの範囲内で液滴を合体させることが望ましい。これは、ノズル651から印刷媒体Pまでのギャップにおける液滴の空間密度を低くして、印刷媒体P上にミストによる汚れや風紋などが生じるのを抑制するためである。そのためには、第1先行パルスPp1や第2先行パルスPp2により吐出される液滴の速度Vmをできるだけ低くすることが望ましい。
図6に示したグラフからは、この例では、膨張維持期間Tpbが5.0~10.0μsecの範囲Ap1を用いることが望ましく、更に5.0~7.0μsecの範囲を用いることが望ましいことが分かる。先行して吐出される液滴の速度Vmを、予め定めた値、例えば1.0m/secにしようとすれば、第1吐出ヘッド40-1の圧電素子60に印加する第1駆動電圧Vout1の第1先行パルスPp1の膨張維持期間Tpb1は、およそ約6.0μsecとすればよく、第2吐出ヘッド40-2の圧電素子60に印加する第2駆動電圧Vout2の第2先行パルスPp2の膨張維持期間Tpb2は、およそ約7.0μsecとすればよいことが分かる。なお、吐出する液滴の吐出速度Vmが、膨張維持期間Tpbにより変化するのは、吐出部600のキャビティー631内の液体(インク)が、膨張要素pa1,pa2における圧電素子60の変形により固有振動周期で振動し、この振動によるノズル651におけるメニスカスの動きが、吐出時の液滴の速度に影響を与えるからである。例えば、第2駆動電圧Vout2の第2先行パルスPp2の膨張維持期間Tpb2を、第1駆動電圧Vout1の第1先行パルスPp1の膨張維持期間Tpb1で設定した、およそ約6.0μsecとした場合、第2先行パルスPp2により吐出された液滴は、想定の2倍以上の2.5m/secとなってしまい、所望のノズル651に近い位置で第2後続パルスSp2により吐出された液滴と合体することができなくなってしまう。従って、膨張維持期間Tpbを対応する吐出ヘッド40の固有振動周期TCに基づいて設定することで、先行パルスにより吐出される液滴の速度を所望の値とすることができ、より確実にノズル651に近い位置で後続パルスにより吐出された液滴と合体させることができる。
液滴の速度が固有振動周期に依存していることから、図示するように、液滴の速度Vmは、膨張維持期間Tpbが大きくなるに従って、固有振動周期Tcで、増減を繰り返しながら減衰していく。従って、液滴の速度Vmが所定値となる膨張維持期間Tpbは、一つとは限らない。とはいえ、膨張維持期間が長くなると、第1先行パルスPp1,第2先行パルスPp2全体の期間TP1,TP2が長くなり、液滴を吐出して印刷などを行なう場合のスループットが低下する。このため、液滴吐出装置100として要求されるスループットを満たす範囲で、膨張維持期間Tpbは選択されることになる。
吐出部600のキャビティー631における液体の固有振動周期Tcは、所望の設計値にすることが望ましいが、実際には、吐出部600を製造する際の寸法誤差等により、吐出部600毎に異なる。そこで、固有振動周期Tcに合わせて、膨張維持期間Tpbを補正することで、液滴の速度Vmを同一または所定の誤差範囲に調整する。しかしながら、吐出部600毎にその固有振動周期Tcに合わせた膨張維持期間Tpbを用いた共通駆動波形COMで駆動することが好ましいが、吐出部600毎に共通駆動波形COMを生成するためには駆動回路が大型化するため現実的でない。そこで、本実施形態では、吐出ヘッド40毎に共通駆動波形COMを生成する構成を有する。この場合、例えば、吐出ヘッド40に含まれる吐出部600の固有振動周期TCに基づき、統計的手法によりその吐出ヘッド40の固有振動周期TCを決定することができる。図7は、固有振動周期Tcと液滴の速度Vmとの関係を示すグラフである。図において、実線Nmは、固有振動周期の違いによる調整を行なわない場合の両者の関係を示し、破線Amは、固有振動周期の違いによる調整を行なった場合の両者の関係を示す。ここで、破線Amは、次式(1)の近似式で、補正後の膨張維持期間Tpbを求めて、液滴の速度Vmとの関係をグラフにしたものである。
Tpb=T0+0.83×(Tc-10.4) …(1)
図から分かるように、式(1)を用いて補正した膨張維持期間Tpbを用いることで、キャビティー631の固有振動周期Tcが変動した場合の液滴の速度Vmの変動は、補正を行なわない場合と比べて抑制される。
Tpb=T0+0.83×(Tc-10.4) …(1)
図から分かるように、式(1)を用いて補正した膨張維持期間Tpbを用いることで、キャビティー631の固有振動周期Tcが変動した場合の液滴の速度Vmの変動は、補正を行なわない場合と比べて抑制される。
他方、第1駆動電圧Vout1の第1後続パルスSp1における膨張維持期間Tsb1と、第2駆動電圧Vout2の第2後続パルスSp2における膨張維持期間Tsb2とは、固有振動周期Tcの平均的な値を用いて共通の値に設定されており、第1吐出ヘッド40-1や第2吐出ヘッド40-2のキャビティー631の実際の固有振動周期Tcの違いは反映されていない。第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2では、膨張要素sa1,sa2や膨張維持要素sb1,sb2を、平均の固有振動周期Tcにおいて、吐出する液滴の大きさを小さくし、かつその吐出速度Vmを大きくして、図5の最下段に示したように、低速で吐出された先行液滴に、後続する液滴が早期に追いついて、合体する後続液滴の速度となる値に決定している。図6のグラフに示したように、膨張維持期間Tsb1,Tsb2を、膨張維持期間Tpb1,Tpb2より短い時間、例えば2.0~3.0μsecとすれば、後続する液滴の速度は、5m/secを超えるから、後続する液滴が先行する液滴に追いついて合体することは容易である。また、図6のグラフからわかるように膨張維持期間が短い場合、固有振動周期の相違による速度の差が小さいため、第1後続パルスSp1における膨張維持期間Tsb1と、第2後続パルスSp2における膨張維持期間Tsb2とを等しい値に設定しても、第1後続パルスSp1により吐出された液滴の速度と、第2後続パルスSp2により吐出された液滴の速度との差は小さく、ノズル651に近い位置で先行パルスにより吐出された液滴と合体させることができる。
以上説明した第1実施形態によれば、吐出ヘッド40-1~40-nに対して、それぞれの共通駆動波形COMが供給されるから、吐出ヘッド40毎に固有振動周期Tcが異なっていても、これに対して、適切な共通駆動波形COMを提供することができ、吐出ヘッド40における固有振動周期の違いによる先行液滴の速度Vmのバラツキを押さえ、後続する液滴との合体を確実に実現することができる。この結果、ノズル651から印刷媒体Pのギャップにおける液滴の空間密度を低減して、印刷媒体P上にミストによる汚れや風紋などが生じるのを抑制できる。従って、印刷品質を向上させることができる。しかも、共通駆動波形COMに対応して各圧電素子60に印加される第1駆動電圧Vout1,第2駆動電圧Vout2を、各吐出部の特性に合わせたものにする際、第1先行パルスPp1の膨張維持期間Tpb1と、第2先行パルスPp2の膨張維持期間Tpb2とを相違するものとし、第1後続パルスSp1の膨張維持期間Tsb1と、第2後続パルスSp2の膨張維持期間Tsb2とを一致させるから、駆動信号の設計が容易になる。また、第1先行パルスPp1の膨張維持期間Tpb1と、第2先行パルスPp2の膨張維持期間Tpb2とを相違するものとした際に、その相違を、終了要素pf1,pf2の期間により補償するので、第1駆動電圧Vout1,第2駆動電圧Vout2の波形の繰り返し期間(TP1+TS1等)が長くなったり、変動したりすることがなく、液滴の吐出のスループットを低下させることがない。
本実施形態では、吐出ヘッド40-1から40-nまでのそれぞれに対して、固有振動周期Tcに基づいて調整した共通駆動波形COMを提供する様にしたが、一部の吐出ヘッドに対してのみ、固有振動周期Tcに基づいて、膨張維持期間Tpb1を調整した第1駆動電圧Vout1に対応した共通駆動波形COMを用意するものとしてもよい。例えばイエロのインクは、明度が高く、ミストや風紋が増えても印字品質に与える影響は小さいので、イエロのインクに対応する吐出ヘッド40に供給する共通駆動波形COMは、平均の固有振動周期TCに基づいて設定し、実際の吐出ヘッド40の固有振動周期Tcに基づく調整を行なわないものとしてもよい。また、本実施形態では、一つの吐出ヘッド40には一種類の共通駆動波形COMを供給するものとしたが、吐出モジュール500毎に共通駆動波形COMを生成する構成とすることも可能である。さらに、各吐出部600の固有振動周期は厳密には異なるので、吐出部600毎に、駆動電圧Vout1の膨張維持期間Tpbを調整した共通駆動波形COMを生成するようにしてもよい。こうした個別の調整は、共通駆動波形COMの種類を増やすことで実現してもよいが、供給された共通駆動波形COMを、波形選択部510内で、吐出部600の固有振動周期Tcに合わせて補修することで、実現してもよい。
B.第2実施形態:
次に第2実施形態の液滴吐出装置100について説明する。第2実施形態の100は、第1実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。第2実施形態の液滴吐出装置100では、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した駆動電圧Voutの波形のうち、第1先行パルスPp1および第2先行パルスPp2を設定する条件は、第1実施形態と同様であるのに対して、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2を設定する条件が第1実施形態と相違する。以下、この点について説明する。
次に第2実施形態の液滴吐出装置100について説明する。第2実施形態の100は、第1実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。第2実施形態の液滴吐出装置100では、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した駆動電圧Voutの波形のうち、第1先行パルスPp1および第2先行パルスPp2を設定する条件は、第1実施形態と同様であるのに対して、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2を設定する条件が第1実施形態と相違する。以下、この点について説明する。
第2実施形態では、図5に示した第1駆動電圧Vout1および第2駆動電圧Vout2の波形のうち、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2における膨張要素sa1,sa2の時間である膨張期間Tsa1,Tsa2と、膨張維持期間Tsb1,Tsb2が、それぞれ、次式(2)に示す条件に従って、設定されている。
Tsa1,Tsa2<Tc・5/12
Tsb2,Tsb2<Tc・5/12 …(2)
式(2)は、膨張期間Tsa1,Tsa2および膨張維持期間Tsb1,Tsb2が、吐出ヘッド40の平均的な固有振動周期Tcの5/12より短い期間に、それぞれ設定されていることを示している。
Tsa1,Tsa2<Tc・5/12
Tsb2,Tsb2<Tc・5/12 …(2)
式(2)は、膨張期間Tsa1,Tsa2および膨張維持期間Tsb1,Tsb2が、吐出ヘッド40の平均的な固有振動周期Tcの5/12より短い期間に、それぞれ設定されていることを示している。
式(2)の意義について説明する。図8は、膨張期間Tsa1,Tsa2を、式(2)にしたがい、平均的な固有振動周期Tcの5/12未満である2.0μsecとした場合の膨張維持期間Tsb1,Tsb2と、液滴の吐出速度Vmとの関係を示すグラフである。図において、実線K1は、吐出部600のキャビティー631での液体の固有振動周期が10.4μsecである場合の両者の関係を、破線C2は、同じく固有振動周期が11.3μsecである場合の両者の関係を、それぞれ例示している。図から、膨張維持期間Tsb1,Tsb2と液滴の吐出速度Vmとの関係は、固有振動周期Tcにより影響を受けることが分かる。ここで、膨張維持期間Tsb1,Tsb2を図示の上限Tr1未満の時間範囲にすれば、ノズル651から吐出される二つの液滴のうち後続する液滴の吐出速度Vmは、固有振動周期Tcの差による影響をほとんど受けないことが分かる。つまり、膨張維持期間Tsbが、上限Tr1未満の範囲では実線K1と破線C2とがほぼ重なっており、上限Tr1以上になると実線K1と破線C2とのずれが大きくなる。固有振動周期Tcの異なる吐出部600を用いて実験した結果、この時間範囲As1の上限Tr1が、平均的な固有振動周期Tcの5/12であることが分かった。図8の例では、平均的な固有振動周期Tcがおよそ10.8μsecであったことから、時間範囲As1の上限Tr1は、4.5μsecであった。なお、この関係は、式(2)にしたがっていれば、膨張期間Tsa1,Tsa2が2.0μsec以外でも成り立つことが想定された。
先行する液滴の吐出速度が、十分に遅く、例えば1.0m/sec程度であれは、式(2)の範囲で吐出された後続する液滴は、先行液滴に追いつき、先行液滴が印刷媒体Pに到達する前に合体する。従って、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。更に、第1駆動電圧Vout1および第2駆動電圧Vout2の波形のうち、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2における膨張維持期間Tsb1,Tsb2が、それぞれ、次式(3)に示す条件を満たせば、後続する液滴の吐出速度Vmを十分に早くすることができる。
Tc・1/12<Tsb1,Tsb2 …(3)
更に、次に示す条件を満たせば、後続する液滴の吐出速度Vmを十分に速くでき、また固有振動周期Tcの違いによる影響を受けにくくできる。
0.185・Tc<Tsb1,Tsb2<0.42・Tc …(3a)
この範囲を、図に、範囲As2として示した。更に望ましくは、
0.26・Tc<Tsb1,Tsb2<0.33・Tc …(3b)
であった。
こうすれば、後続液滴の吐出速度Vmをおよそ最大化でき、かつ固有振動周期Tcのバラツキによる影響を受けずに、第1後続パルスSp1および第2後続パルスSp2の波形を決定できる。なお、式(3a)、(3b)にならって、膨張期間Tsa1や膨張期間Tsa2を同様の範囲に限定することも、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2の期間TS1やTS2を短くして、液滴吐出のスループットを高める上で望ましい。こうした関係は、複数の吐出ヘッド40が存在する場合、2つの吐出ヘッド40-1、40-2に限らず、他の吐出ヘッド40についても同様である。
Tc・1/12<Tsb1,Tsb2 …(3)
更に、次に示す条件を満たせば、後続する液滴の吐出速度Vmを十分に速くでき、また固有振動周期Tcの違いによる影響を受けにくくできる。
0.185・Tc<Tsb1,Tsb2<0.42・Tc …(3a)
この範囲を、図に、範囲As2として示した。更に望ましくは、
0.26・Tc<Tsb1,Tsb2<0.33・Tc …(3b)
であった。
こうすれば、後続液滴の吐出速度Vmをおよそ最大化でき、かつ固有振動周期Tcのバラツキによる影響を受けずに、第1後続パルスSp1および第2後続パルスSp2の波形を決定できる。なお、式(3a)、(3b)にならって、膨張期間Tsa1や膨張期間Tsa2を同様の範囲に限定することも、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2の期間TS1やTS2を短くして、液滴吐出のスループットを高める上で望ましい。こうした関係は、複数の吐出ヘッド40が存在する場合、2つの吐出ヘッド40-1、40-2に限らず、他の吐出ヘッド40についても同様である。
C.第3実施形態:
次に第3実施形態の液滴吐出装置100について説明する。第3実施形態の100は、第1,第2実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。また、第3実施形態の液滴吐出装置100では、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した駆動電圧Voutの波形のうち、第1先行パルスPp1および第2先行パルスPp2を設定する条件は、第1,第2実施形態と同様であるのに対して、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2を設定する条件が、第2実施形態での条件に以下の条件を付加している点で相違する。以下、この点について説明する。
次に第3実施形態の液滴吐出装置100について説明する。第3実施形態の100は、第1,第2実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。また、第3実施形態の液滴吐出装置100では、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した駆動電圧Voutの波形のうち、第1先行パルスPp1および第2先行パルスPp2を設定する条件は、第1,第2実施形態と同様であるのに対して、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2を設定する条件が、第2実施形態での条件に以下の条件を付加している点で相違する。以下、この点について説明する。
第3実施形態では、図5に示した第1駆動電圧Vout1および第2駆動電圧Vout2の波形のうち、第1後続パルスSp1,第2後続パルスSp2における膨張要素sa1,sa2の時間である膨張期間Tsa1,Tsa2と、膨張維持要素sb1,sb2の時間である膨張維持期間Tsb1,Tsb2が、それぞれ、第2実施形態で説明した式(2)や式(3)の条件に加えて、次式(4)に示す条件に従って、設定される。
Tsa1+Tsb1<Tc・6/10
Tsa2+Tsb2<Tc・6/10 …(4)
式(4)は、膨張期間Tsa1と膨張維持期間Tsb1との合計時間および膨張期間Tsa2と膨張維持期間Tsb2との合計時間が、吐出ヘッド40の平均的な固有振動周期Tcの6/10より短い時間になるよう、それぞれ設定されることを示している。
Tsa1+Tsb1<Tc・6/10
Tsa2+Tsb2<Tc・6/10 …(4)
式(4)は、膨張期間Tsa1と膨張維持期間Tsb1との合計時間および膨張期間Tsa2と膨張維持期間Tsb2との合計時間が、吐出ヘッド40の平均的な固有振動周期Tcの6/10より短い時間になるよう、それぞれ設定されることを示している。
第3実施形態では、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2における膨張期間と膨張維持期間との和を、上記式(4)のように制約することで、第2実施形態が奏する作用効果に加えて、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2全体に要する期間TS1,TS2が長くなって、液滴を吐出する差異のスループットが低下することを防止できる。スループットを高めるためには、更に、次の条件式(5)を満たすことが望ましい。
0.43・Tc<Tsa1+Tsb1<0.55Tc
0.43・Tc<Tsa2+Tsb2<0.55Tc …(5)
なお、膨張要素sa1,sa2の時間である膨張期間Tsa1,Tsa1については、次式(6a)(6b)の関係を満たすことが好ましい。
0.17・Tc<Tsa1,Tsa2<0.22・Tc …(6a)
更に望ましくは、
0.26・Tc<Tsa1,Tsa2<0.33・Tc …(6b)
0.43・Tc<Tsa1+Tsb1<0.55Tc
0.43・Tc<Tsa2+Tsb2<0.55Tc …(5)
なお、膨張要素sa1,sa2の時間である膨張期間Tsa1,Tsa1については、次式(6a)(6b)の関係を満たすことが好ましい。
0.17・Tc<Tsa1,Tsa2<0.22・Tc …(6a)
更に望ましくは、
0.26・Tc<Tsa1,Tsa2<0.33・Tc …(6b)
D.第4実施形態:
次に第4実施形態の液滴吐出装置100については説明する。第4実施形態の100は、第1~第3実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。また、第4実施形態の液滴吐出装置100では、図9に示すように、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した第1駆動電圧Vout1の波形に、第1先行パルスPp1と第1後続パルスSp1との間にz個(zは1以上の整数)の第1中間パルスMp1が、第2駆動電圧Vout2の波形に、第2先行パルスPp2と第2後続パルスSp2との間にz個の第2中間パルスMp2が、それぞれ含まれている点で、他の実施形態と異なる。
次に第4実施形態の液滴吐出装置100については説明する。第4実施形態の100は、第1~第3実施形態の液滴吐出装置100と同一のハードウェア構成を備える。また、第4実施形態の液滴吐出装置100では、図9に示すように、各吐出ヘッド40に付与する共通駆動波形COMに対応した第1駆動電圧Vout1の波形に、第1先行パルスPp1と第1後続パルスSp1との間にz個(zは1以上の整数)の第1中間パルスMp1が、第2駆動電圧Vout2の波形に、第2先行パルスPp2と第2後続パルスSp2との間にz個の第2中間パルスMp2が、それぞれ含まれている点で、他の実施形態と異なる。
図示するように、第1中間パルスMp1は、第1後続パルスSp1と同様に、所定の傾きで電圧が低下していく膨張要素ma1、低下した電圧が維持される膨張維持要素mb1、所定の傾きで電圧が上昇していく圧縮要素mc1、上昇した電圧が維持される圧縮維持要素md1、中間電位Viに戻す復帰要素mm1、中間電位Viが維持される終了要素mf1、とから構成される。第2中間パルスMp2についても同様である。
第4実施形態では、図9に示した波形の電圧を各圧電素子60に印加することで、1回の液滴の吐出期間に、全部で3つの液滴が吐出される。ここで、第1駆動電圧Vout1については、第1後続パルスSp1により吐出された液滴が、第1先行パルスPp1により吐出された液滴と第1中間パルスMp1により吐出された液滴とに合体し、印刷媒体Pに着弾する。第2駆動電圧Vout2についても同様である。このとき、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2にとっては、第1先行パルスPp1と第1中間パルスMp1、第2先行パルスPp2と第2中間パルスMp2が、先行する液滴を形成する信号波形に相当し、上述した式(1)から(4)が、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2と、これに先行するパルスとの間で成立する。こうすることで、第1後続パルスSp1や第2後続パルスSp2により吐出された液滴は、確実に第1先行パルスPp1および第1中間パルスMp1や第2先行パルスPp2および第2中間パルスMp2により吐出されて先行する液滴に追いつき、これらの液滴が印刷媒体Pに着弾する前に合体する。従って、一つの共通駆動波形COMの波形において、3つの液滴を吐出する場合でも、第1~第3実施形態と同様の作用効果を奏する。
こうした対象物に着弾する前に合体する3以上の液滴を形成する場合においては、形成する液滴の数をx(xは3以上の整数)、yを1以上x未満の整数とすると、最初に吐出される液滴から順に数えて、第1番目の液滴から第(x-y)番目までの液滴までに対応する駆動波形を先行パルスとし、第(x-y+1)番目の液滴から第x番目までの液滴までに対応する駆動波形を後続パルスとして、扱えばよい。第4実施形態に即して言えば、第1番目だけが先行パルスとなるケース(x=3、y=1)に相当する。x=3、y=2とすれば、第1番目と第2番目が先行パルスとなる。もとよりxは4以上であっても差し支えないが、xが4以上の場合は、4つ以上の液滴を合体させるものとして駆動波形を設計する場合の他、吐出される液滴の一部について、2つ、または3つずつ合体させるように、駆動信号を設計し、これに上述した各式を適用してもよい。例えば、x=4の場合、第1番目の液滴と第2番目の液滴とを合体させるものとして、各式を適用して駆動波形を設定してもよく、更に第3番目の液滴と第4番目の液滴とを合体させるものとして、各式を適用して駆動波形を設定してもよい。あるいは第2番目の液滴から第4番目の液滴までを合体させるものとして、各式を適用して駆動波形を設定してもよい。なお、こうした一般化の例に合わせるのであれば、第1~第3実施形態は、x=2、y=1の場合に相当するから、形成する液滴の数をx(xは2以上の整数)、yを1以上x未満の整数として、扱えばよい。
E.その他の実施形態:
(1)液滴吐出装置としての他の形態の一つは、液体を収容する第1圧力室に設けられた第1振動子の動作によって、前記第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1吐出部と、前記液体を収容する第2圧力室に設けられた第2振動子の動作によって、前記第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2吐出部と、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を、前記第1振動子に付与する第1駆動信号付与部と、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を、前記第2振動子に付与する第2駆動信号付与部と、を備える液滴吐出装置としての形態である。この液滴吐出装置では、前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している。
(1)液滴吐出装置としての他の形態の一つは、液体を収容する第1圧力室に設けられた第1振動子の動作によって、前記第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1吐出部と、前記液体を収容する第2圧力室に設けられた第2振動子の動作によって、前記第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2吐出部と、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を、前記第1振動子に付与する第1駆動信号付与部と、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を、前記第2振動子に付与する第2駆動信号付与部と、を備える液滴吐出装置としての形態である。この液滴吐出装置では、前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している。
この液滴吐出装置は、第1吐出部と第2吐出部に対して、異なる第1駆動信号と第2駆動信号と出力できるので、第1吐出部と第2吐出部との特性が異なっても、それぞれの吐出部に応じた駆動信号を付与でき、第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対する、後続する液滴の関係の設計の自由度を高めることができる。しかも、駆動信号を吐出部の特性に合わせたものにする際、第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、第2先行パルスの膨張維持要素の期間とを相違するものとし、第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、第2後続パルスの膨張維持要素の期間とを一致させるから、駆動信号の設計が容易になる。第1吐出部,第2吐出部の特性の違いは、第1,第2吐出部の第1,第2圧力室における液体の固有振動周期違いや、ノズル径や形状の加工誤差、振動子の動作特性の相違、信号線のマッチングの相違など、種々の要因により生じ得る。ここで、第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対する、後続する液滴の関係の設計の自由度とは、後続する液滴を先行する液滴に対して、どのような位置で合体させるかという設計の自由度のみならず、後続する液滴が先行する液滴に合体する位置を異ならせるという設計の自由度も含む。第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対して、後続する液滴の速度を速め、後続する液滴が先行する液滴に合体する位置を、第1ノズル,第2ノズルに近い側に設計すれば、第1ノズル,第2ノズルから対象物までのギャップにおける液滴の空間密度を低減でき、液滴吐出装置がプリンターであれば、風紋による画像の画質劣化などを防止できる。
第1,第2圧力室は、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。同じ形状であるとしても、製造誤差などが存在し、この第1,第2圧力室に収容された液体の吐出に関わる条件、例えば固有振動周期などは同一とならない場合がある。振動子としては、膨張とその維持、圧縮とその維持が可能であれば、どのようなアクチュエーターでもよく、ピエゾなどの圧電素子、磁歪素子、高速な電磁ソレノイドなど、種々のアクチュエーターを利用可能である。圧電素子では、通堂のモードは問わず、屈曲振動、長さ振動、拡がり振動、厚み滑り振動など、振動の態様を問わず利用可能である。
(2)こうした構成において、前記第1吐出部における前記液体の固有振動周期は第1固有振動周期であり、前記第2吐出部における前記液体の固有振動周期は、前記第1固有振動周期とは異なる第2固有振動周期であり、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間は、前記第1固有振動周期に従って定められ、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間は、前記第2固有振動周期に従って定められるものとしてよい。こうすれば、吐出部における液体の固有振動数の違いに対応できる。もとより、第1吐出部,第2吐出部の特性の違いが、第1,第2吐出部の第1,第2圧力室における液体の固有振動周期違い以外の要因により生じる場合には、その要因、例えばノズル径や形状の加工誤差、振動子の動作特性の相違、信号線のマッチングの相違などに応じて、第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、第2先行パルスの膨張維持要素の期間を、これらの相違による液滴の吐出速度の違いを抑制または拡大するように、定めればよい。
(3)こうした構成において、前記第1固有振動周期がTc1であり、前記第2固有振動周期がTc2であり、膨張維持要素の期間の基準値がaであり、補正係数がbである場合、第1先行パルスの膨張維持要素の期間を、a+(b×Tc1)として、第2先行パルスの膨張維持要素の期間を、a+(b×Tc2)として、それぞれ定められるものとしてよい。こうすれば、一つの近似式を用いて、容易に第1先行パルスと第2先行パルスの膨張維持要素の期間を定めることができる。もとより、第1吐出部,第2吐出部毎に、基準値a,補正係数bの少なくとも一方を異なる値として、期間を求める様にしてもよい。あるいは近似式の構成そのものを、それぞれ個別に設定してもよい。例えば基準値aがなく、固有振動周期に直接係数を乗算して、膨張維持要素の期間を求める様にしてもよい。
(4)こうした構成において、前記第1先行パルスの膨張要素および収縮要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張要素および収縮要素の期間とは、それぞれ一致しているものとしてよい。こうすれば、第1駆動信号,第2駆動信号の設計が容易となる。もとより、両者は異なる時間として設定してもよい。
(5)こうした構成において、前記第1後続パルスおよび第2後続パルスの膨張要素および膨張維持要素の各期間は、前記固有振動周期の平均値Tcの0.42倍未満に設定されてもよい。こうすれば、後続する液滴の速度を十分に速くできる。
(6)こうした構成において、前記第1後続パルスおよび前記第2後続パルスの膨張要素と膨張維持要素とを合わせた期間は、前記固有振動周期の平均値Tcの0.6倍未満に設定されてもよい。こうすれば、後続する液滴の速度を速くでき、しかも駆動信号における後続パルスの期間を短くでき、液滴吐出のスループットを確保できる。
(7)こうした構成において、前記第1後続パルスの膨張要素および収縮要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張要素および収縮要素の期間とは、それぞれ一致しているものとしてよい。こうすれば、後続パルスの構成を簡易に設定できる。もとより、これらの要素の期間は異なっていてもよい。
(8)こうした構成において、前記第1駆動信号は、前記第1先行パルスと前記第1後続パルスとの間にz個(zは1以上の整数)以上の第1中間パルスを含み、前記第1先行パルスにより吐出される液滴を第1番目の液滴とし、第1後続パルスにより吐出される液滴を第x番目の液滴(x=2+z)としたとき、第1番目の液滴から第(x-y)番目の液滴(yは1以上x未満の整数)を前記先行液滴、第(x-y+1)番目の液滴から第x番目までの液滴までを前記後続液滴として扱うものとしてよい。こうすれば、一つの駆動信号のサイクルに3個以上の液滴を吐出する場合でも、後続する液滴を先行する液滴に合体させることができる。
(9)こうした構成において、前記液体は、インク、所定の材料を含有する溶液などであってもよい。こうすれば、インキの液滴を吐出するプリンターや、溶液の液滴を吐出する装置を容易に構成できる。溶液としては、半導体材料を揮発性の溶媒に含有したものや、3D造形装置用の溶液など、種々の溶液に適用可能である。
(10)他の実施形態としては、複数の液滴を対象物に向けて吐出する液滴吐出方法がある。この液滴吐出方法は、液体を収容する第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1振動子に、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を付与し、前記液体を収容する第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2振動子に、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を付与し、前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している。
こうすれば、第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対する、後続する液滴の関係の設計の自由度を高めることができる。しかも、駆動信号を吐出部の特性に合わせたものにする際、第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、第2先行パルスの膨張維持要素の期間とを相違するものとし、第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、第2後続パルスの膨張維持要素の期間とを一致させるから、駆動信号の設計が容易になる。第1吐出部,第2吐出部の特性の違いは、第1,第2吐出部の第1,第2圧力室における液体の固有振動周期違いや、ノズル径や形状の加工誤差、振動子の動作特性の相違、信号線のマッチングの相違など、種々の要因により生じ得る。ここで、第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対する、後続する液滴の関係の設計の自由度とは、後続する液滴を先行する液滴に対して、どのような位置で合体させるかという設計の自由度のみならず、後続する液滴が先行する液滴に合体する位置を異ならせるという設計の自由度も含む。第1ノズル,第2ノズルから吐出されて先行する液滴に対して、後続する液滴の速度を速め、後続する液滴が先行する液滴に合体する位置を、第1ノズル,第2ノズルに近い側に設計すれば、第1ノズル,第2ノズルから対象物までのギャップにおける液滴の空間密度を低減でき、液滴吐出方法をプリンターに適用すれば、風紋による画像の画質劣化などを防止できる。
(11)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータープログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
10…電源回路基板、12…プリンター、20…制御回路基板、30…駆動回路基板、40,40-i…吐出ヘッド、60…圧電素子、61…圧電体、62…第1電極、63…第2電極、65…第1ケーブル、70…キャリッジモーター、71…駆動ベルト、73…摺動軸、74…紙送りモーター、75…プラテン、77…操作パネル、80…キャリッジ、83…BtoBコネクター、86…第2ケーブル、87…第3ケーブル、90…PC、92~95…インクカートリッジ、100…液滴吐出装置、110…高電圧生成回路、210…制御回路、211…吐出データ生成回路、212…駆動データ生成回路、311…駆動波形生成部、320…電圧生成回路、500…吐出モジュール、510…波形選択部、520…選択制御部、530…選択回路、600…吐出部、621…振動板、631…キャビティー、632…ノズルプレート、641…リザーバー、651…ノズル、661…供給口、Mp1…第1中間パルス、Mp2…第2中間パルス、P…印刷媒体、Pp1…第1先行パルス、Pp2…第2先行パルス、Sp1…第1後続パルス、Sp2…第2後続パルス、Tc…固有振動周期、Vout1…第1駆動電圧、Vout2…第2駆動電圧
Claims (10)
- 液体を収容する第1圧力室に設けられた第1振動子の動作によって、前記第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1吐出部と、
前記液体を収容する第2圧力室に設けられた第2振動子の動作によって、前記第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2吐出部と、
前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を、前記第1振動子に付与する第1駆動信号付与部と、
前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を、前記第2振動子に付与する第2駆動信号付与部と、
を備え、
前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、
前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、
前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、
前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している
液滴吐出装置。 - 前記第1吐出部における前記液体の固有振動周期は第1固有振動周期であり、前記第2吐出部における前記液体の固有振動周期は、前記第1固有振動周期とは異なる第2固有振動周期であり、
前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間は、前記第1固有振動周期に従って定められ、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間は、前記第2固有振動周期に従って定められる、
請求項1記載の液滴吐出装置。 - 前記第1固有振動周期がTc1であり、前記第2固有振動周期がTc2であり、
膨張維持要素の期間の基準値がaであり、補正係数がbである場合、
第1先行パルスの膨張維持要素の期間が、a+(b×Tc1)
第2先行パルスの膨張維持要素の期間が、a+(b×Tc2)
として定められる、請求項2に記載の液滴吐出装置。 - 前記第1先行パルスの膨張要素および収縮要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張要素および収縮要素の期間とは、それぞれ一致している、
請求項2または請求項3に記載の液滴吐出装置。 - 前記第1後続パルスおよび第2後続パルスの膨張要素および膨張維持要素の各期間は、前記固有振動周期の平均値Tcの0.42倍未満に設定される、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
- 前記第1後続パルスおよび前記第2後続パルスの膨張要素と膨張維持要素とを合わせた期間は、前記固有振動周期の平均値Tcの0.6倍未満に設定される、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
- 前記第1後続パルスの膨張要素および収縮要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張要素および収縮要素の期間とは、それぞれ一致している、請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
- 前記第1駆動信号は、前記第1先行パルスと前記第1後続パルスとの間にz個(zは0以上の整数)以上の第1中間パルスを含み、前記第1先行パルスにより吐出される液滴を第1番目の液滴とし、第1後続パルスにより吐出される液滴を第x番目の液滴(x=2+z)としたとき、第1番目の液滴から第(x-y)番目の液滴(yは1以上x未満の整数)を前記先行する液滴、第(x-y+1)番目の液滴から第x番目までの液滴までを前記後続する液滴として扱う、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
- 前記液体は、インク、所定の材料を含有する溶液の少なくとも一方である、請求項1から請求項8のいずれか一項記載の液滴吐出装置。
- 複数の液滴を対象物に向けて吐出する液滴吐出方法であって、
液体を収容する第1圧力室の容積を変動させ、前記第1圧力室に連通する第1ノズルから液滴を吐出させる第1振動子に、前記第1ノズルから第1先行液滴を吐出させる第1先行パルスと、前記第1先行液滴に後続し前記第1先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第1後続液滴を吐出させる第1後続パルスとをこの順に含む第1駆動信号を付与し、
前記液体を収容する第2圧力室の容積を変動させ、前記第2圧力室に連通する第2ノズルから液滴を吐出させる第2振動子に、前記第2ノズルから第2先行液滴を吐出させる第2先行パルスと、前記第2先行液滴に後続し前記第2先行液滴が前記対象物に着弾する前に合体される第2後続液滴を吐出させる第2後続パルスとをこの順に含む第2駆動信号を付与し、
前記第1先行パルスおよび前記第1後続パルスは、それぞれ前記第1圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第1圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第1圧力室の容積を収縮させ、前記第1ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、
前記第2先行パルスおよび前記第2後続パルスは、それぞれ前記第2圧力室の容積を膨張させる膨張要素と、前記膨張要素により膨張された前記第2圧力室の容積を維持する膨張維持要素と、前記膨張維持要素により維持された前記第2圧力室の容積を収縮させ、前記第2ノズルから液滴を吐出させる収縮要素とを含み、
前記第1先行パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2先行パルスの膨張維持要素の期間とは、相違しており、
前記第1後続パルスの膨張維持要素の期間と、前記第2後続パルスの膨張維持要素の期間とは、一致している、
液滴吐出方法。
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JP2021198287A JP2023084234A (ja) | 2021-12-07 | 2021-12-07 | 液滴吐出装置および液滴吐出方法 |
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