JP2023077091A - タイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】低燃費性と耐久性を高度に両立したタイヤを提供する。【解決手段】ベルト層の少なくとも一層が、金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールであり、補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さが、補強素子の線径の0.5~1.5倍であり、ベルト補強層3は、ベルト2を構成する最大幅ベルト層の幅をWとしたとき、ベルト補強層3が備える補強コードの打ち込み本数が、タイヤ赤道面Eから0.35Wよりも内側の範囲において疎であり、タイヤ赤道面Eから0.35Wよりも外側の範囲において密であるタイヤ10。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤに関する。
年、自動車の燃費を向上させるために、タイヤを軽量化する要求は益々高まってきている。このため、タイヤの軽量性、低燃費性等が要求されてきている。従来からタイヤに関しては、形状、構造、トレッド等のゴム特性等の改良・開発が盛んに行われており、ゴムの使用量を低減させること、タイヤの転がり抵抗を低減すること等により、軽量化、低燃費化が図られてきている。転がり抵抗については、ゴム部材が大きく関与していることから、例えば、トレッドゴム、ビードフィラーゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラーゴム等のゴム部材自体の低ロス化、ゴム部材の形状、構造等の低歪み化等が検討され、最適化されてきた。
そして、近時では、ゴム部材自体の低ロス化の進展に伴い、ゴム部材以外の部材の動的繰返し歪みに起因するロスの転がり抵抗への関与が無視できなくなってきている。ゴム部材以外の部材としては、カーカスプライ層、ベルト層、ベルト補強層等があるが、これらの中でもベルト補強層は、転動接地時の歪み変動が大きいことから、ベルト補強層の低ロス化の技術が望まれている。このような状況の中、特許文献1では、タイヤにおけるキャッププライ層(ベルト補強層)として好適に使用可能であり、剛性等の機械的特性、熱特性等に優れ、ロスのみを低減させた補強コード材が提案されている。
特開2002-103913号公報
タイヤの軽量化として、スチールコードを用いるベルト部及びベルト補強層での軽量化を考えた場合、引張強度を一定以上確保することを前提とすると、スチールベルト層のコーティングゴムのゲージを薄くするか、打ち込み本数低減による軽量化が考えられる。
ベルト層のコーティングゴムを薄くすると、スチールコードとゴムの接着性能に改善の余地が生じる上、打ち込み本数を低減すると、耐久性の面で改善の余地が生じる。
本発明は、上記事情に鑑み、低燃費性と耐久性を高度に両立したタイヤを提供することを目的とし、当該目的を解決することを課題とする。
<1> カーカスのタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ半径方向外側に、前記ベルトの全幅を覆う少なくとも1層のベルト補強層と、を備えたタイヤにおいて、
前記ベルト層の少なくとも一層が、金属フィラメントからなる補強素子と、該補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、前記金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールであり、
前記補強素子を被覆する前記架橋ゴムの未架橋時における厚さが、前記補強素子の線径の0.5~1.5倍であり、
前記ベルト補強層は、前記ベルトを構成する最大幅ベルト層の幅をWとしたとき、前記ベルト補強層が備える補強コードの打ち込み本数が、タイヤ赤道面から0.35Wよりも内側の範囲において疎であり、タイヤ赤道面から0.35Wよりも外側の範囲において密であるタイヤ。
<2> 前記被覆中の前記鉄の量が、前記銅、前記亜鉛及び前記鉄の総質量の1質量%以上10質量%未満である<1>に記載のタイヤ。
<3> 前記被覆中のリンの量が、0mg/mを超え4mg/m以下である<1>又は<2>に記載のタイヤ。
<4> 前記補強素子は、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されている<1>~<3>のいずれか1つに記載のタイヤ。
<5> 前記ベルト層の全ての層が、金属フィラメントからなる補強素子と、該補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、前記金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールである<1>~<4>のいずれか1つに記載のタイヤ。
<6> コバルト原子の含有量が1質量%以下である<1>~<5>のいずれか1つに記載のタイヤ。
<7> トレッドゲージが、6.5mm以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載のタイヤ。
<8> 前記補強素子を被覆する前記架橋ゴムの厚さが、0.6mm以下である<1>~<7>のいずれか1つに記載のタイヤ。
<9> 前記架橋ゴムを構成するゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が0.01質量%以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載のタイヤ。
本発明によれば、低燃費性と耐久性を高度に両立したタイヤを提供することができる。
本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのタイヤ幅方向における概略断面図である。 補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さを説明するための架橋ゴム-金属複合体の部分断面模式図である。 補強素子を被覆する架橋ゴムの厚さを説明するための未架橋ゴム-金属複合体の部分断面模式図である。
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
本発明のタイヤは、カーカスのタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルトと、ベルトのタイヤ半径方向外側に、ベルトの全幅を覆う少なくとも1層のベルト補強層と、を備えたタイヤである。
ベルト層の少なくとも一層は、金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとを含む。この金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールであり、補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さが、補強素子の線径の0.5~1.5倍である。
更に、ベルト補強層は、ベルトを構成する最大幅ベルト層の幅をWとしたとき、ベルト補強層が備える補強コードの打ち込み本数が、タイヤ赤道面から0.35Wよりも内側の範囲において疎であり、タイヤ赤道面から0.35Wよりも外側の範囲において密であるタイヤである。
既述のように、タイヤ軽量化のために、ベルト補強層のコードの打ち込み本数を減らしたり、ベルト層のスチールコード被覆ゴムの厚さを薄くすると、補強素子は、タイヤ走行時のタイヤの歪の影響を受けやすくなる。そのため、補強素子と被覆ゴムとの接着性を強固なものにする必要がある。
本発明のタイヤにおいては、補強素子として、表面が銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールコードを使用することにより、被覆ゴムと高い接着性を達成することが可能となる。その結果、タイヤは耐久性に優れると考えられる。更に、補強素子と被覆ゴムとの接着性が高いために、トレッドを、補強素子の架橋ゴムの未架橋時における厚さが補強素子の線径の0.5~1.5倍という程度の薄いゲージとしたり、ベルト層の補強素子の打ち込み本数及びベルト補強層の補強コードの打ち込み本数を減少することができる。その結果、タイヤを軽量化することができ、低燃費性も向上すると考えられる。
<タイヤの構造>
図1は、本発明の一好適な実施の形態に係るタイヤのタイヤ幅方向における概略断面図である。
本発明のタイヤ10は、カーカス1のタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルト2と、ベルト2のタイヤ半径方向外側に、ベルト2の全幅を覆う少なくとも1層のベルト補強層3と、を備えたタイヤである。図示例においては、一対のビードコア4間に跨るカーカス1は、1層のカーカスプライからなっており、ベルト2は、2層のベルト層2a、2bからなっており、ビードコア4のタイヤ半径方向外側には、ビードフィラー5が配置されている。
本発明においては、ベルト層2a及び2bの少なくとも一層が、金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチール(三元めっき金属)であり、補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さが、補強素子の線径の0.5~1.5倍である。上記構成のベルト層を、本発明のベルト層と称する。
図1においては、ベルト2は2層のベルト層2a及び2bを備えるが、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。
ベルト2が有するベルト層の全ての層が、金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する未架橋ゴムとを含み、かつ、金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールであることが好ましい。全てのベルト層において、補強素子が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっき金属であることで、タイヤの耐久性がより向上する。更に、全てのベルト層が本発明のベルト層であることが好ましい。
図示する例においては、ベルト補強層3は、ベルト2の全体を覆うように配置されたキャップ層3aと、キャップ層3aの両端部のみを覆うように配置された一対のレイヤー層3bからなる。キャップ層3aは一方のタイヤ半部から他方のタイヤ半部にかけてタイヤ赤道面Eと交差して連続するよう配置されているのに対し、レイヤー層3bはタイヤ赤道面Eと交差することなく、それぞれのタイヤ半部においてキャップ層3aの端部のみを覆うように配置された一対からなる。本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層3は、キャップ層3aおよびレイヤー層3bの両方を備えていてもよく、キャップ層3aのみであってもよい。さらに、キャップ層3aは2層以上であってもよく、2層以上のレイヤー層3bとの組み合わせであってもよい。なお、ベルト補強層3は、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなる。
本発明のタイヤ10は、ベルト2を構成する最大幅ベルト層の幅をWとしたとき、ベルト補強層3における補強コードの打ち込み本数が、タイヤ赤道面から0.35Wよりも内側の範囲において疎であり(疎領域)、タイヤ赤道面から0.35Wよりも外側の範囲において密である(密領域)。このように、タイヤ10のタイヤ赤道面Eの近傍におけるベルト補強層の打ち込み本数を減らすことで、低転がり抵抗化を実現することができる。また、打ち込み本数が少なくなることで、軽量化が見込まれる。このような効果を良好に得るためには、好ましくは、タイヤ赤道面Eから0.4Wよりも内側の範囲において、補強コードの打ち込み本数を疎とし、タイヤ赤道面Eから0.4Wよりも外側の範囲において、補強コードの打ち込み本数を密とする。
本発明のタイヤ10においては、ベルト補強層3の少なくとも1層が上記構成であればよく、その他の層は従来の構成であってもよい。
本発明のタイヤ10においては、疎領域における補強コードの打ち込み本数は、密領域における補強コードの打ち込み本数の25~75%であることが好ましい。この範囲を満足することで、タイヤの諸性能を悪化させることなく、軽量化および転がり抵抗の低減を十分に図ることができる。かかる効果をより良好に得るためには、ベルト補強層3の疎領域における補強コードの打ち込み本数は、密領域における打ち込み本数の40~60%であることがより好ましい。
本発明のタイヤ10が、既述の本発明のベルト層を備え、またベルト補強層3における補強コードの打ち込み本数が上記の疎-密構造であることで、本発明のタイヤ10は耐久性に優れ、更に低燃費性にも優れる。
また、本発明のベルト層が補強素子と被覆ゴムである架橋ゴムとの間で優れた接着性を有することで、トレッドゲージを薄くすることができる。その結果、更にタイヤ10を軽量化することができ、低燃費性を向上することができる。具体的には、トレッドゲージを次のようにすることが好ましい。
タイヤ赤道面を中心にタイヤ幅方向の幅が接地端間の長さの2/3のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、前記センター領域よりもタイヤ幅方向外側の前記接地端間のタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、各領域のトレッドゲージが、6.5mm以下であることが好ましく、6.0mm以下であることがより好ましい。また、下限値としては、2.5mm以上であることが好ましく、4mm以上であることがより好ましい。
図1に示す例では、カーカス1は、1層のカーカスプライからなっているが、本発明のタイヤ10においては、カーカスプライの層数はこれに限られるものではなく、2層以上であってもよい。また、カーカス1及びベルト補強層3の補強コードとして、後述する半芳香族ポリアミドのマルチフィラメントを含むコードの他、既知の有機繊維コードを用いることができる。カーカス1のコードの角度は、タイヤ周方向に対してほぼ直交する方向、例えば、70~90°とすることができる。有機繊維コードとしては、通常用いられている既知のものを用いることができる。例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレート(PET)のコードを使用することもできる。さらに、ビード部におけるカーカスプライの係止構造についても、図示するようにビードコア4の周りに巻き上げられて係止した構造に限られず、カーカスプライの端部を2層のビードコアで挟み込んだ構造でもよい(図示せず)。
さらに、本発明のタイヤ10においては、図示はしないが、最内層にはインナーライナーを配置してもよい。本発明のタイヤ10において、タイヤ内に充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を変えた空気、または、窒素等の不活性ガスを用いることができる。本発明のタイヤは乗用車用タイヤに好適である。
本発明において、補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さ(T1)とは、架橋ゴムが未架橋ゴムである状態で、補強素子を被覆した未架橋ゴム-金属複合体における未架橋ゴムの厚さ(T1)をいう。
未架橋ゴムの厚さ(T1)について、より具体的に、図2を用いて説明する。
図2は、未架橋ゴム-金属複合体20の部分断面模式図である。
未架橋ゴム-金属複合体20は、3本の補強素子22a~22c(まとめて「補強素子22」と称する)と、補強素子22を被覆する未架橋ゴムR1とを有する。未架橋ゴム-金属複合体20の一方の表面をS1、他方の表面をS2とする。
「補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さ」(未架橋ゴムの厚さ)は、図2における未架橋ゴム-金属複合体20の補強素子22を被覆する被覆層(未架橋ゴムR1)の層厚T1と同義である。層厚T1は、未架橋ゴム-金属複合体20の断面にて、交錯する2層の層間ゴム間隔を測定し、2分割することで算出する。すなわち、補強素子22の中心を結ぶ破線S3から未架橋ゴム-金属複合体20の表面S1又はS2までの最短距離であり、図2におけるT1a又はT1bである。通常、未架橋ゴム-金属複合体20の強度の偏りを可否するために、T1aとT1bは同じ長さであるが、異なる場合は、層厚T1はT1aとT1bの平均値として算出される。
層厚T1は、補強層製造時のロールからシートを切り出して、マイクロメーターで測定することができる。
また、架橋ゴムの厚さの定義について、図3を用いて説明する。
図3は、架橋ゴム-金属複合体21の部分断面模式図である。
架橋ゴム-金属複合体21は、3本の補強素子22a~22cと、補強素子22を被覆する架橋ゴムR2とを有する。架橋ゴム-金属複合体21の一方の表面をS4、他方の表面をS5とする。
「補強素子を被覆する架橋ゴムの厚さ」は、図3における架橋ゴム-金属複合体21の補強素子22を被覆する被覆層(架橋ゴムR2)の層厚T2と同義である。層厚T2は、補強素子22表面から架橋ゴム-金属複合体21の表面S4又はS5までの最短距離であり、図3におけるT2a又はT2bである。通常、架橋ゴム-金属複合体21の強度の偏りを可否するために、T2aとT2bは同じ長さであるが、異なる場合は、層厚T2は、T2aとT2bの平均値として算出される。
以下、符号を省略して説明する。
<ベルト層>
本発明のベルト層は、既述のとおり、少なくとも一層が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっき金属の金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、金属フィラメントからなる補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとからなることが好ましい。
〔補強素子〕
補強素子は、金属フィラメントからなり、金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールである。
本発明のベルト層は、金属フィラメントからなる補強素子を、架橋ゴムにより被覆して形成されている。このような構成とすることで、スチールコードと架橋ゴムとの接着性に優れる。
ベルト層における金属フィラメントは、実質的に真直の金属フィラメントであることが好ましいが、波型やジグザグ状のように2次元に型付けされた金属フィラメントを用いてもよく、螺旋状のように3次元型付けされたものを用いてもよい。ここで、真直の金属フィラメントとは、意図的に型付けをしておらず、実質的に型がついていない状態の金属フィラメントを指す。
スチールコードは、スチール製のモノフィラメント及びマルチフィラメント(撚りコード又は引き揃えられた束コード)のいずれでもよく、その形状は制限されない。スチールコードが撚りコードである場合の撚り構造についても特に制限はなく、単撚り、複撚り、層撚り、複撚りと層撚りの複合撚りなどの撚り構造が挙げられる。
さらに、本発明において、金属フィラメントの線径は、0.15mm以上0.40mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.18mm以上、さらに好ましくは0.20mm以上であって、また、好ましくは0.35mm以下である。金属フィラメントの線径を0.40mm以下とすることで、タイヤの軽量化効果が得られる一方、金属フィラメントの線径を0.15mm以上とすることで、十分なベルト強度を発揮できる。
補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さ(図2における補強素子22を被覆する未架橋ゴムR1の層厚T1)は、補強素子の線径の0.5~1.5倍である。0.5倍以上であることでタイヤの耐久性を維持し、1.5倍以下であることでタイヤを軽量化し、低燃費性に優れる。
補強素子を被覆する架橋ゴムの未架橋時における厚さ(図2における補強素子22を被覆する未架橋ゴムR1の層厚T1)は、補強素子の線径の0.6~1.2倍であることが好ましく、0.7~1.0倍であることがより好ましい。
補強素子を被覆する架橋ゴムの厚さ(図3における補強素子22を被覆する架橋ゴムR2の層厚T2)は、0.6mm以下であることが好ましく、0.1~0.4mmであることがより好ましく、0.2~0.35mmであることが、耐久性と低燃費性を両立する観点から、更に好ましい。
本発明において、金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチール(三元めっき金属)である。より具体的には、金属は、上記の1つ以上のスチールフィラメントを含むスチールコードにおいて、前記フィラメントは、スチールフィラメント基材と、前記スチールフィラメント基材を部分的または全体的に被覆する被覆(めっき層)とを含む。
スチールコードが銅、亜鉛、及び鉄の三元系のめっき層を有することで、めっき層を構成する成分が、補強素子と、補強素子を被覆する架橋ゴムとの間の接着性を高める役目を果たすことができる。その結果、架橋ゴムを構成するゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が、少ない場合(ゴム成分100質量部に対して0.01質量部以下)であっても、補強素子と、架橋ゴムとの高い接着性を実現できる。
前記被覆は、銅および亜鉛からなる黄銅を含み、前記被覆は、鉄で強化されており、前記鉄が前記黄銅中に粒子として存在し、前記粒子は、10~10000ナノメートルのサイズを有することを特徴とするスチールコードであることがより好ましい。前記粒子は、20~5000ナノメートルのサイズを有することが、更に好ましい。「鉄で強化された」とは、鉄がフィラメント状鋼基材に由来しないことを意味する。
ここで、前記の黄銅は、銅と亜鉛とからなり、少なくとも63質量%の銅を含み、残りが亜鉛であることが好ましく、65質量%以上の銅を含むことがより好ましく、67質量%以上の銅を含むことが更に好ましい。
また、前記被覆(めっき層)中の鉄の量が、黄銅と鉄の総質量と比較して質量で1%以上であり、質量で10%未満であることが好ましく、前記被覆中の鉄の量が、黄銅と鉄の総質量と比較して質量で3%以上であり、質量で9%未満であることが、より好ましい。
前記被覆は、実質的に亜鉛鉄合金を含まないことを特徴とするスチールコードが更に好ましい。
スチールコードは、ゴム組成物との接着性を好適に確保する観点から、更に、接着剤処理などの表面処理がなされていてもよい。接着剤処理を使用する場合は例えばロード社製、商品名「ケムロック」(登録商標)などの接着剤処理が好ましい。
また、本発明において、金属フィラメントの表面状態については特に制限されないが、例えば、下記の形態をとることができる。すなわち、金属フィラメントとしては、表面のN原子が2原子%以上60原子%以下であって、かつ、表面のCu/Zn比が1以上4以下であるスチールフィラメントを使用することができる。また、金属フィラメントとしては、フィラメント半径方向内方にフィラメント最表層5nmまでの酸化物として含まれるリンの量が、C量を除いた全体量の割合で、7.0原子%以下である場合が挙げられる。
上記の1つ以上のスチールフィラメントを含むスチールコードにおいて、前記フィラメントの表面に存在するリンの量、換言すると、前記被覆(めっき層)中のリンの量がPであり、前記フィラメントの表面に存在する鉄の量、換言すると、前記被覆(めっき層)中の鉄の量がFeであり、(P+Fe)の量は、以下の方法(a)~(e)に従って、リンおよび鉄を溶解する弱酸でフィラメントの表面を穏やかにエッチングすることによって決定される。
(a)約5グラムのスチールコードを秤量し、約5cmの断片に切断し、試験管に導入する。
(b)0.01モル塩酸HClを10ml加える。
(c)試料を酸溶液で15秒間振盪する。
(d)ICP-OESにより、溶液中に存在する量を測定する。
ここで、ICP-OESとは、誘導結合プラズマ-10mLストリッピング溶液のマトリックス中の(0;0;0)、(2;0.02;1)、(5;0.1;2)、(10;0.5;5) mg/Lの(Cu;Fe;Zn)の標準溶液を全て使用する光学発光分光法(ICP-OES)をいう。
(e)フィラメント鋼の表面積の単位当たりの(P+Fe)の質量をミリグラム毎平方メートル(mg/m)で表した結果を示す。その結果を(Fe+P)と呼ぶ場合がある。
フィラメントの表面に存在するリンの量、換言すると、前記被覆(めっき層)中のリンの量は0mg/mを超え4mg/m以下であることが、接着性を高める上で好ましい。即ち、0<P≦4mg/mである。
より多量のリンP量は、接着層の成長を低下させる。リンP量は、3mg/mより低くても良いし、1.5mg/mより低くても更に良い。
さらに好ましい実施形態では、フィラメントの表面に存在する鉄の量が30mg/m以上であることが好ましく、35mg/mを超える鉄が表面に存在する場合がより好ましく、40mg/mを超える鉄が表面に存在する場合が更により好ましい。
また、フィラメントの表面に存在する鉄の量と、フィラメントの表面に存在するリンの量との質量比(Fe/P)は、27より大きいことが好ましい。
前記フィラメント表面被覆質量SCWが、表面積の単位当たり前記被覆中に存在する黄銅と鉄の質量の合計であり、前記被覆質量が平方メートル当たりのグラム数で表され、前記質量比[Fe/(SCW×P)]が13より大きいことが好ましい。
前記鉄が前記黄銅中に粒子として存在するスチールフィラメントを得る方法としては、鉄粒子で強化された黄銅被覆を有する中間ワイヤを、引き続いて潤滑剤中のより小さなダイスを通してワイヤを湿式ワイヤ引抜くことによって最終直径0.28mmまで引出して、スチールフィラメントを得ればよい。
潤滑剤は、一般に有機化合物中にリンを含む高圧添加剤を含有する。
ここで、用いるダイスとして、少なくともヘッドダイは焼結ダイヤモンドダイであり、残りのダイはタングステンカーバイドダイである、Set-Dダイスを用いればよい。補強素子(スチールコード)は、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されていることが好ましい。
〔架橋ゴム〕
架橋ゴムは、補強素子を被覆する被覆ゴムであり、ゴム組成物を架橋してなる。
ゴム組成物は未架橋状態であり、ゴム組成物に含まれるゴム成分も未架橋状態である。本明細書において、ゴム組成物と未架橋ゴムは同義であり、架橋ゴムを構成するゴム組成物とは未架橋ゴムを意味する。
ゴム組成物は、ゴム成分、充填剤、架橋剤等を含有する。
(ゴム成分)
ゴム成分は、通常、ジエン系ゴムが用いられる。
ジエン系ゴムとしては、例えば、イソプレン系ゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。また、ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度において、非ジエン系ゴムを含んでいてもよい。
ゴム成分は1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
以上の中でも、架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上する観点から、ゴム成分は、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。イソプレン系ゴムは1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
以上の中でも、架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上する観点から、イソプレン系ゴムは、天然ゴム及びポリイソプレンゴムからなる群より選択される1つ以上が好ましく、天然ゴムがより好ましい。天然ゴムは、エポキシ化天然ゴム、脱蛋白天然ゴム及びその他の変性天然ゴムを用いてもよい。
天然ゴムの例としては、RSS#1、RSS#3、TSR20、SIR20等のグレードの天然ゴムを挙げることができる。
エポキシ化天然ゴムとしては、エポキシ化度10~60モル%のものが好ましく、クンプーランガスリー社製ENR25、ENR50等が例示できる。
脱蛋白天然ゴムとしては、総窒素含有率が0.3質量%以下である脱蛋白天然ゴムが好ましい。
その他の変性天然ゴムとしては、天然ゴムに、予め、4-ビニルピリジン、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート等のN,N-ジアルキルアミノエチルアクリレート、2-ヒドロキシアクリレート等を反応させた極性基を含有する変性天然ゴムが必要に応じ用いられる。
ゴム成分中のイソプレン系ゴムの含有量は、50質量%を超えることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
(充填剤)
ゴム組成物が充填剤を含有することで、架橋ゴムの機械的強度を向上することができる。
充填剤は、ゴム組成物を補強する補強性充填剤であることが好ましい。
補強性充填剤としては、例えば、カーボンブラック;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の金属炭酸塩;水酸化アルミニウム等が挙げられる。
充填剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
[カーボンブラック]
架橋ゴムの補強性を向上し、架橋ゴムと補強素子との接着性に優れるベルト層を得る観点から、充填剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
カーボンブラックの種類特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、及びSAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、及びSAFグレードのものがより好ましく、HAFグレードのものが更に好ましい。カーボンブラックは、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
フタル酸ジブチル吸収量(DBP吸収量)の低い、すなわちストラクチャーの低いカーボンブラックを用いることにより、加硫ゴムの低ロス性を向上させることができる。また、タイヤの耐久性を向上する観点から、カーボンブラックは、窒素吸着比表面積(NSA)が70m/g以上90m/g以下であり、フタル酸ジブチル吸収量(DBP吸収量)が50mL/100g以上110mL/100g以下であることが好ましい。
架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上する観点から、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、70m/g以上85m/g以下であることがより好ましく、73m/g以上83m/g以下であることが更に好ましい。
同様に、架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上するから、カーボンブラックのフタル酸ジブチル吸収量は、60mL/100g以上110mL/100g以下であることがより好ましく、70mL/100g以上110mL/100g以下であることが好ましい。
また、発熱(ロス)を抑えることにより架橋ゴムと補強素子との接着性が良くなるため、カーボンブラックのグレードは、発熱性の低い(低ロス性の)グレードであるHAFグレード(HAF、HAF-LS)が好ましい。
カーボンブラックは、上述したものから1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217-2:2001(比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法)のA法によって求められる。カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K 6217-4:2001「DBP吸収量の求め方」に記載の方法により測定され、カーボンブラック100g当りに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の体積mlで表示される。
ゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して30~60質量部であることが好ましく、特に、ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して35~60質量部のカーボンブラックを含有することが好ましい。
ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して30~60質量部の充填剤を含有することで、架橋ゴムの補強性を向上し、架橋ゴムと補強素子との接着性に優れるベルト層が得られやすい。
(シリカ)
充填剤は、シリカを含んでいてもよい。
シリカの種類は、特に制限はなく、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)比表面積は、80m/g以上250m/g以下であることが好ましく、100m/g以上200m/g以下であることがより好ましく、120m/g以上180m/g以下であることが更に好ましい。
シリカのCTAB比表面積が上記範囲であることで、架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上することができる。
シリカのCTAB比表面積は、ASTM-D3765-80の方法に準拠した方法で測定することができる。
ゴム組成物は、シリカの分散性を向上させ、また、架橋ゴムの補強性及び低発熱性を向上させるために、更に、シランカップリング剤を含んでもよい。
ゴム組成物中のシリカの含有量は、架橋ゴムの低ロス性及び架橋ゴムと補強素子との接着性をより向上する観点、また、ゴム組成物の加工性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、0質量部より多く15質量部以下であることが好ましい。ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.5質量部以上12質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。ゴム組成物中のシリカの含有量は、ゴム組成物の加工性の観点から、ゴム成分100質量部に対して5質量部未満であってもよい。
(架橋剤)
架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、酸架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。通常、硫黄系架橋剤、硫黄化合物系架橋剤等の加硫剤;及び有機過酸化物系架橋剤からなる群より選択される1つ以上が用いられる。なお、加硫剤を用いて架橋された架橋ゴムを加硫ゴムという。
有機過酸化物系架橋剤としては、ジアシルパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類、ケトンパーオキサイド類等が挙げられる。
ゴム組成物中の架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対し、0.1~10質量部であることが好ましく、1~9質量部がより好ましく、2~8質量部が更に好ましい。架橋剤の含有量を上記範囲内にすることで、架橋ゴムと補強素子との接着性に優れ、ゴム組成物の架橋時間が短縮化される。
[加硫促進剤]
架橋剤として加硫剤を用いる場合、ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、ゴム工業便覧<第四版>(平成6年1月20日社団法人、日本ゴム協会発行)の412~413頁に記載されているチアゾール系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤としては、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等が挙げられる。
チウラム系加硫促進剤は市販品を用いてもよく、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTOT」;テトラエチルチウラムジスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTET」;テトラメチルチウラムジスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTT」;テトラブチルチウラムジスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTBT」;テトラメチルチウラムモノスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTS」;ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーTRA」;テトラベンジルチウラムジスルフィドとしては例えば、川口化学工業(株)製、商品名「アクセルTBzTD」)等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
スルフェンアミド系加硫促進剤は市販品を用いてもよく、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)としては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーCZ」;N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)としては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーNS」;N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドとしては例えば、大内新興化学工業(株)製、商品名「ノクセラーMSA」あるいは川口化学工業(株)製、商品名「アクセルNS」等が挙げられる。
チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)等が挙げられる。
グアニジン系加硫促進剤としては、例えば、ジフェニルグアニジン(DPG)、1,3-ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、1-o-トリルビグアニド(OTBG)等が挙げられる。
その他に、トリメチルチオ尿素(TMU)、N,N'-ジエチルチオ尿素(DEU)、N,N'-ジフェニルチオ尿素等のチオウレア系加硫促進剤等の加硫促進剤を用いてもよい。
加硫促進剤の使用量は特に限定されるものではないが、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下の範囲が好ましく、0.5質量部以上8質量部以下の範囲がより好ましく、0.5質量部以上7質量部以下の範囲が更に好ましく、0.5質量部以上6質量部以下の範囲が特に好ましい。
(コバルト含有化合物)
ゴム組成物は、コバルト含有化合物の含有量が、ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が0.01質量%以下であることが好ましい。これは、ゴム組成物が、コバルト含有化合物を実質的に含まないことを意味する。
コバルト含有化合物は、有機酸コバルト塩、コバルト金属錯体等が挙げられる。
有機酸コバルト塩としては、例えば、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、オレイン酸コバルト、リノール酸コバルト、リノレン酸コバルト、パルミチン酸コバルト等を挙げることができる。また、コバルト金属錯体としては、例えばコバルトアセチルアセトナートが挙げられる。
ゴム組成物は、コバルト含有化合物を含まないこと、すなわち、ゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が0.00質量%であることが好ましい。
従来は、コバルト含有化合物を用いて架橋ゴムと金属との接着性の効果を得ていたが、金属フィラメントを構成する金属として、スチールコード表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆された金属を用いることで、ゴム組成物がコバルト含有化合物を含まなくても、架橋ゴムと補強素子との接着性に優れる。また、ゴム組成物がコバルト含有化合物を含まないことで、金属腐食を抑制することができ、また、環境負担を軽減することができる。
(各種成分)
ゴム組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば、架橋遅延剤(加硫遅延剤)、プロセスオイル、老化防止剤、樹脂、酸化亜鉛、ステアリン酸等を含んでいてもよい。
[老化防止剤]
老化防止剤としては、日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<第四版>」の436~443頁に記載されるものが挙げられる。具体的には、例えば、アミン系、キノリン系、キノン系、フェノール系、イミダゾール系の各化合物や、カルバミン酸金属塩等の老化防止剤が挙げられる。
アミン系老化防止剤としては、例えば、フェニレンジアミン骨格(-NH-Ph-NH-)を有するフェニレンジアミン系老化防止剤等が挙げられる。
具体的には例えば、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD又は6Cと称されることがある)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(3Cと称されることがある)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-4-メチル-2-ペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジアリール-p-フェニレンジアミン、ヒンダードジアリール-p-フェニレンジアミン、フェニルヘキシル-p-フェニレンジアミン、フェニルオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
中でも、フェニレンジアミン部分(-NH-Ph-NH-)以外には二重結合を有しないことが好ましく、具体的には、下記式(1)(R-NH-Ph-NH-R)で表されるアミン系老化防止剤が好ましい。
Figure 2023077091000002
上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である。
とRは、同一であっても異なっていてもよいが、合成上の観点から、同一であることが好ましい。
前記一価の飽和炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、3~10が更に好ましく、6及び7が特に好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が20以下であると、単位質量当たりのモル数が大きくなるため、老化防止効果が大きくなり、ゴム組成物の加硫ゴムの耐オゾン性が向上する。
上記式(1)中のR及びRは、ゴム組成物の加硫ゴムの耐オゾン性を更に向上させる観点から、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状の一価の飽和炭化水素基又は炭素数5~20の環状の一価の飽和炭化水素基であることが好ましい。
前記一価の飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよく、また、シクロアルキル基には、置換基として更にアルキル基等が結合していてもよい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、1,4-ジメチルペンチル基が好ましい。
前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
なお、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、任意の担体に担持されていてもよい。例えば、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤に担持されていてもよい。
また、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム成分とともにマスターバッチを構成してもよい。ここで、マスターバッチとする際に用いるゴム成分は、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴムでもよいし、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等であってもよい。
また、式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、有機酸との塩としてもよい。ここで、塩とする際に用いる有機酸としては、特に限定されるものではないが、ステアリン酸等が挙げられる。
また、キノリン系老化防止剤も好適に用いることができ、キノリン系老化防止剤としては、例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体(RD又は224と称されることがある)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(AWと称されることがある)等が挙げられる。
そのほか、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物を用いてもよい。
以上の老化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
老化防止剤は、以上の中でも、アミン系老化防止剤及びキノリン系老化防止剤からなる群より選択される1つ以上を含むことが好ましく、アミン系老化防止剤を少なくとも含むことがより好ましい。
老化防止剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~8.0質量部が好ましく、0.1~6.0質量部が更に好ましく、0.3~5.0質量部が特に好ましい。
[樹脂]
樹脂としては、C5系樹脂、C5/C9系樹脂、C9系樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(ゴム組成物の調製)
ゴム組成物は、上述した各種成分及び添加剤を、ロールなどの開放式混練機、バンバリーミキサーなどの密閉式混練機などの混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
<ベルト補強層>
ベルト補強層の構成要素は特に限定されないが、通常、有機繊維コードと、有機繊維コードを被覆する架橋ゴムとからなる架橋ゴム-コード複合体が用いられる。例えば、架橋ゴムと、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と非芳香族ジアミンの重縮合物または非芳香族ジカルボン酸と芳香族ジアミンを含むジアミンの重縮合物からなる半芳香族ポリアミドのマルチフィラメントを含む補強コードと、からなる架橋ゴム-コード複合体を構成要素として用いることができる。
半芳香族ポリアミドは、芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と非芳香族ジアミンとの重縮合物であることが好ましく、前記非芳香族ジアミンは、脂肪族ジアミンおよび脂環族ジアミンのうち少なくとも一方であることが好ましい。また、本発明のタイヤにおいては、タイヤから取り出した補強コードのガラス転移温度(Tg)が、80~230℃であることが好ましい。
補強コードは、ジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸を含むものであってもよく、ジアミンが芳香族ジアミンを含むものであってもよいが、特に、ジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸を含み、ジアミンが脂肪族ジアミンおよび脂環族ジアミンのうち少なくとも一方を用いた半芳香族ポリアミドのマルチフィラメントを含むコードであることが好ましい。
半芳香族ポリアミドは、分子間相互作用により、補強コードとして汎用されるナイロン66(Tg=50℃)に比べ、ガラス転移温度Tgが高く、高温時剛性が高い。また、アラミド繊維を用いた補強コードに比べ、剛性が高すぎず、タイヤ製造性に優れる。
よって、半芳香族ポリアミドを、ベルト補強層の補強コードとして用いることで、タイヤの生産性を損なうことなく、高速走行時における耐久性、操縦安定性を向上させることができる。
また、半芳香族ポリアミドを、ベルト補強層の補強コードとして用いることで、タイヤ使用域での損失正接tanδが小さく、タイヤの低転がり化に有利である。さらに、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとからなるポリアミド繊維は吸水性が高く、物性安定性が低い。これに対して、半芳香族ポリアミド繊維は吸水性も低いため、物性の安定性も確保可能である。
補強コードの総繊度は、1000~8000dtexであることが好ましい。総繊度を1000dtex以上とすることで、強力を十分に確保することができる。一方、紡糸性や後加工の観点から8000dtex以下が好ましい。より好ましくは、5000dtex以下である。
補強コードは、半芳香族ポリアミドのマルチフィラメントのみからなるコードを用いてもよいが、他の繊維を併用した、いわゆるハイブリッドコードを用いてもよい。他の繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維、ガラス繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維およびポリアリレート繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維を挙げることができる。
補強コードを被覆する架橋ゴムは、ベルト層の補強素子を被覆する架橋ゴムを用いることができる。
本発明のタイヤは、コバルト原子の含有量が1質量%以下であることが好ましい。タイヤ中のコバルト原子の含有量は、タイヤ製造に用いるゴム組成物がコバルト含有化合物を含まず、金属フィラメントを構成する金属がコバルトを含まなければ、0質量%であるといえる。タイヤ中のコバルト原子の含有量は、例えば、タイヤを構成する各部材の元素量を測定する方法で測定することができる。
<実施例1~2及び比較例1~3>
〔ゴム組成物の調製〕
表1に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物を調製する。なお、表1中の各成分の配合量は、ゴム成分100質量部に対する量(質量部)である。表1中の各成分の詳細は次のとおりである。
(1)天然ゴム:TSR10
(2)カーボンブラック:HAF級カーボンブラック、旭カーボン社製、商品名「旭#70L」(窒素吸着比表面積=81m/g)
(3)有機酸コバルト塩:OMG社製、商品名「マノボンドC」
(4)亜鉛華:ハクスイテック社製、商品名「酸化亜鉛2種」
(5)ステアリン酸:新日本理化社製、商品名「ステアリン酸50S」
(6)老化防止剤1:2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック NS-6」
(7)老化防止剤2:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック 6C」
(8)老化防止剤3:精工化学社製、商品名「ノンフレックス RD-S」
(9)架橋剤:硫黄、鶴見化学工業社製、商品名「粉末硫黄」
(10)BMI:N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、大和化成工業社製、商品名「BMI-RB」
(11)アルキルフェノール樹脂:アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、SUMITOMO BAKELITE EUROPE社製、商品名「DUREZ 19900」*(12)加硫促進剤1:スルフェンアミド系加硫促進剤、N,N-ジシクロヘキシル ベンゾチアジル-2-スルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラー DZ」
(13)加硫促進剤2:スルフェンアミド系加硫促進剤、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラー CZ-G」
〔未加硫ゴム-金属複合体の作製〕
(実施例1~2)
表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆され、鉄を4質量%程度含むスチールコードを金属として用いることができる。この三元めっきスチールコードは、Set-Dダイスを用いて得られ、より詳細には、国際公開第2020/156967号明細書の段落番号[0065]~[0070]に記載の手法で製造される。
当該三元めっきスチールコードを、上下両側から、調製したゴム組成物よりなる表1に「被覆ゴム厚み」欄に示す厚さのシートにより被覆して、ベルト層に用いる未加硫ゴム-金属複合体1(未加硫スチールコードトッピング反)を作製する。
(比較例1~3)
加硫ゴム-金属複合体の金属として、表面が、黄銅のブラスめっき(Cu:63質量%、Zn:37質量)で被覆されたスチールコードを用い、スチールコードを被覆する被覆層の厚みを表1の「被覆ゴム厚み」欄に示す厚さとする他は、実施例1と同様にして、未加硫ゴム-金属複合体101を作製する。
ここで、表1中、めっき種A及びBは次に示す内容である。
A:銅、亜鉛、及び鉄の三元めっき(鉄を4質量%程度含む)
B:黄銅のブラスめっき(Cu:63質量%、Zn:37質量)
<タイヤの製造>
(実施例1及び2)
図1に示すタイプのタイヤを、タイヤサイズ:205/55R16にて作製する。
トレッドゲージは、タイヤ赤道面を中心にタイヤ幅方向の幅が接地端間の長さの2/3のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、前記センター領域よりもタイヤ幅方向外側の前記接地端間のタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、各領域のトレッドゲージを、表1の「トレッドゲージ」欄に示す大きさとする。
カーカスは、実質的にタイヤ周方向と直交する方向に配列されてなる、一層のカーカスプライから構成されている。カーカスプライの打ち込み本数は、50本/50mmとする。ベルト層は既述の未加硫ゴム-金属複合体1を用いる。ベルト補強層は、キャップ層1層、および、レイヤー層1層を、タイヤ周方向に実質的に平行(0°~5°)になるように配置する。ベルト補強層の補強コードは、テレフタル酸と1,9―ジアミンノナンからなる半芳香族ポリアミドを含み(芳香族ジカルボン酸の比率は100mol%)であり、コード構造は1400dtex/2である。ベルト補強層の疎領域の範囲は0.35W;疎領域の打ち込み本数は30本/50mm;密領域の打ち込み本数は50本/50mmとする。
(比較例1及び2)
タイヤサイズ:205/55R16にて、タイヤを作製する。
トレッドゲージは、タイヤ赤道面を中心にタイヤ幅方向の幅が接地端間の長さの2/3のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、前記センター領域よりもタイヤ幅方向外側の前記接地端間のタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、各領域のトレッドゲージを、表1の「トレッドゲージ」欄に示す大きさとする。
カーカスは、実質的にタイヤ周方向と直交する方向に配列されてなる、一層のカーカスプライから構成されている。カーカスプライの打ち込み本数は、50本/50mmとする。ベルト層は既述の未加硫ゴム-金属複合体101を用いる。ベルト補強層は、キャップ層1層、および、レイヤー層1層を、タイヤ周方向に実質的に平行(0°~5°)になるように配置する。ベルト補強層の補強コードは、テレフタル酸と1,9―ジアミンノナンからなる半芳香族ポリアミドを含み(芳香族ジカルボン酸の比率は100mol%)であり、コード構造は1400dtex/2である。打ち込み本数は50本/50mmとし、疎-密構造とせず、均等に打ち込む。
(比較例3)
図1に示すタイプのタイヤを、タイヤサイズ:205/55R16にて作製する。
トレッドゲージは、タイヤ赤道面を中心にタイヤ幅方向の幅が接地端間の長さの2/3のタイヤ幅方向領域をセンター領域とし、前記センター領域よりもタイヤ幅方向外側の前記接地端間のタイヤ幅方向領域をショルダー領域とするとき、各領域のトレッドゲージを、表1の「トレッドゲージ」欄に示す大きさとする。
カーカスは、実質的にタイヤ周方向と直交する方向に配列されてなる、一層のカーカスプライから構成されている。カーカスプライの打ち込み本数は、50本/50mmとする。ベルト層は既述の未加硫ゴム-金属複合体101を用いる。ベルト補強層は、キャップ層1層、および、レイヤー層1層を、タイヤ周方向に実質的に平行(0°~5°)になるように配置する。ベルト補強層の補強コードは、テレフタル酸と1,9―ジアミンノナンからなる半芳香族ポリアミドを含み(芳香族ジカルボン酸の比率は100mol%)であり、コード構造は1400dtex/2である。ベルト補強層の疎領域の範囲は0.35W;疎領域の打ち込み本数は50本/50mm;密領域の打ち込み本数は30本/50mmとする。
<評価>
1.低燃費性
各タイヤをJATMAで規定する正規リムに組み、適正内圧を充填し、適正荷重を負荷して、速度80km/hのドラムテストにて、各タイヤの抵抗力を測定する。比較例1のタイヤの抵抗力を100とした場合の実施例1~2及び比較例2~3の抵抗力を低燃費性指数として算出する。算出された指数に基づき、下記評価基準によりタイヤの低燃費性を評価する。
指数が小さいほど抵抗力が低く、タイヤは低燃費性に優れるといえる。
◎:低燃費性指数が95未満
○:低燃費性指数が95以上100未満
△:低燃費性指数が100(比較例1と同等)
×:低燃費性指数が100超
2.耐久性
各タイヤに対し、空気を内圧が250kPaになるように充填した後、温度75℃、湿度95%の条件下で10日間の劣化処理を行う。劣化処理後のタイヤに対し、下記のようにして耐久ドラム試験を行い、下記の評価基準に従って評価を行う。
タイヤを25±2℃の室内で内圧3.0kg/cmに調整した後、24時間放置する。その後、空気圧の再調整を行い、JIS荷重の1.8倍荷重をタイヤに負荷して、直径約3mのドラム上で、速度60km/hにて1万km走行させる。
走行後のタイヤから、クラウンセンターを中心に幅5cm×長さ20cmの寸法で加硫ゴム-金属複合体を切り出す。加硫ゴム-金属複合体からスチールコードを引き抜く。スチールコードに付着している加硫ゴムの被覆状態を、目視観察にて観察し、比較例1の加硫ゴム付着量(付着面積)を100とした場合の実施例1~2及び比較例2~3の加硫ゴム付着量を接着性指数として算出する。算出された指数に基づき、下記評価基準によりタイヤの耐久性を評価する。
指数が大きいほど加硫ゴム付着量が多く、タイヤは耐久性に優れるといえる。
◎:接着性指数が110以上
○:接着性指数が100超110未満
△:接着性指数が100(比較例1と同等)
×:接着性指数が100未満
3.環境性
スチールコードの被覆ゴムの製造に用いたゴム組成物に、コバルト含有化合物が配合されているか否かにより環境性を評価した。
○:ゴム組成物中にコバルト含有化合物が配合されていない。
×:ゴム組成物中にコバルト含有化合物が配合されている。
Figure 2023077091000003
比較例1のタイヤは、比較例2及び3のタイヤに比べ、耐久性に優れるが、ベルト層の補強素子の被覆ゴム層厚が比較例2及び3に比べ厚く、タイヤを軽量化することができないため、比較例2及び3のタイヤに比べ、低燃費性が低下する。
比較例2及び3のタイヤは、比較例1のタイヤに比べ、トレッドゲージが小さく、ベルト補強層が疎-密構造を成しているため、低燃費性に優れるものの、耐久性に優れない。
実施例1のタイヤは、低燃費性に関しては比較例2~3のタイヤと同等であるものの、耐久性は特に優れることがわかる。
実施例2のタイヤは、比較例1~3のタイヤに比べ、低燃費性にも耐久性にも優れることがわかる。
実施例1~2のタイヤは、更に、スチールコード及び被覆ゴムがコバルトを含まないことにより、環境負荷を抑えている。
本発明のタイヤは、スチールコードとその被覆架橋ゴムとの接着性に優れ、耐久性に優れると共に、低燃費性にも優れるため、乗用車用タイヤに好適である。
1 カーカス
2 ベルト
3 ベルト補強層
4 ビードコア
5 ビードフィラー
10 タイヤ
20 未架橋ゴム-金属複合体
21 架橋ゴム-金属複合体
22 補強素子

Claims (9)

  1. カーカスのタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層からなるベルトと、該ベルトのタイヤ半径方向外側に、前記ベルトの全幅を覆う少なくとも1層のベルト補強層と、を備えたタイヤにおいて、
    前記ベルト層の少なくとも一層が、金属フィラメントからなる補強素子と、該補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、前記金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールであり、
    前記補強素子を被覆する前記架橋ゴムの未架橋時における厚さが、前記補強素子の線径の0.5~1.5倍であり、
    前記ベルト補強層は、前記ベルトを構成する最大幅ベルト層の幅をWとしたとき、前記ベルト補強層が備える補強コードの打ち込み本数が、タイヤ赤道面から0.35Wよりも内側の範囲において疎であり、タイヤ赤道面から0.35Wよりも外側の範囲において密であるタイヤ。
  2. 前記被覆中の前記鉄の量が、前記銅、前記亜鉛及び前記鉄の総質量の1質量%以上10質量%未満である請求項1に記載のタイヤ。
  3. 前記被覆中のリンの量が、0mg/mを超え4mg/m以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記補強素子は、ダイヤモンドダイスにより伸線加工されている請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記ベルト層の全ての層が、金属フィラメントからなる補強素子と、該補強素子を被覆する架橋ゴムとを含み、かつ、前記金属フィラメントを構成する金属は、表面が、銅、亜鉛、及び鉄の三元めっきで被覆されたスチールである請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. コバルト原子の含有量が1質量%以下である請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. トレッドゲージが、6.5mm以下である請求項1~6のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 前記補強素子を被覆する前記架橋ゴムの厚さが、0.6mm以下である請求項1~7のいずれか1項に記載のタイヤ。
  9. 前記架橋ゴムを構成するゴム組成物中のコバルト含有化合物の含有量が0.01質量%以下である請求項1~8のいずれか1項に記載のタイヤ。
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