JP2023075825A - 改質粉体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体の製造方法、並びに、かかる改質粉体と液状分散媒とを含む、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れた液状組成物の製造方法の提供。【解決手段】平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置にて撹拌処理して改質粉体を得る、改質粉体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体の製造方法、かかる改質粉体を含む液状組成物の製造方法、及びかかる改質粉体に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、プリント基板等の種々の産業用途に利用されている。例えばテトラフルオロエチレン系ポリマーの粉末は直接成形して成形品に加工される他、他の樹脂ワニスへ添加されて用いられる。特許文献1には、かかる粉末として、特定のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉末が提案されている。
また、液状分散媒中にテトラフルオロエチレン系ポリマーの粉末を粒子状に分散させた分散液は、前記物性を基材表面に付与するコーティング剤として用いられ、低誘電率、低誘電正接等の電気特性に優れた成形物を形成できるため、高周波帯域の周波数に対応するプリント基板の誘電体層を形成する材料として注目されている。特許文献2には、比表面積を15m/g以下かつ平均粒子径を1μm以下とした、ポリテトラフルオロエチレンの粒子の分散液が記載されている。
国際公開第2016-017801号 特開2017-088861号公報
テトラフルオロエチレン系ポリマーは、他の成分と相互作用しにくく、液中における分散安定性が概して低い。特許文献2には、平均粒子径が1μmを超えると、分散液の分散安定性が低下すると記載され、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の分散液の分散安定性は、ポリマー種や粒子形状の影響を受けやすいという課題を、本発明者らは知見している。
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定粒子径の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を、かかる粉体に特定の作用を与える条件で処理すると、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる改質粉体が得られることを知見した。また、かかる改質粉体から得られる液状組成物は、低誘電正接及び低線膨張性等に優れた緻密な成形物の形成に適することも知見した。
本発明の目的は、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体の製造方法、並びに、かかる改質粉体と液状分散媒とを含む、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れた液状組成物の製造方法の提供である。また、本発明の目的は、好適には上記した本発明の製造方法で得られる熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体である、特定性状の粉体の提供である。
本発明は、下記の態様を有する。
<1> 平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置にて撹拌処理して改質粉体を得る、改質粉体の製造方法。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が200℃以上320℃以下である、<1>の製造方法。
<3> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、<1>又は<2>の製造方法。
<4> 前記撹拌装置が、以下の1)から6)のいずれかの撹拌装置である、<1>~<3>のいずれかの製造方法。
1)自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置
2)下方にいくにつれて狭まる円錐形槽と、該円錐形槽内で自転及び公転する螺旋翼とを備える撹拌装置
3)複数の撹拌翼が遊星運動を行う撹拌装置
4)撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置
5)円錐状の内周壁面を持ち、槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している撹拌装置
6)中心軸線を回転軸として回転可能な円筒容器を有し、前記円筒容器の内部に内壁に沿って螺進する複数本のリボンスクリユー状の外羽根と、この外羽根の内側に配設されかつ外羽根とは逆方向に螺進する複数本のリボンスクリュー状の内羽根を設けた円筒型撹拌装置
<5> 前記撹拌処理が、自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置、又は撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置で行われる、<1>~<4>のいずれかの製造方法。
<6> 前記撹拌処理を、自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽内で、公転速度が自転速度の1倍超である条件で行う、<5>の製造方法。
<7> 前記自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽における自転速度若しくは公転速度の周速度、又は前記流動型撹拌装置における撹拌の周速度が、1m/s以上100m/s以下である、<5>又は<6>の製造方法。
<8> 前記撹拌処理を、前記粉体の充填量を前記撹拌装置の容量の50体積%以下で行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
<9> 前記粉体が、重合媒体中でのラジカル重合により得られた熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの造粒物を粉砕して形成された粉体である、<1>~<8>のいずれかの製造方法。
<10> 前記粉体の比表面積が8m/g以下であり、前記改質粉体の比表面積が前記粉体の90%以下である、<1>~<9>のいずれかの製造方法。
<11> 前記粉体のタップ密度が0.3g/ml以上であり、前記改質粉体のタップ密度が前記粉体の1.2倍以上である、<1>~<10>のいずれかの製造方法。
<12> 前記粉体の平均粒子径に対する、前記改質粉体の平均粒子径の比が0.95以上である、<1>~<11>のいずれかの製造方法。
<13> 平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置内にて撹拌処理して改質粉体を得、該改質粉体と液状分散媒を混合して液状組成物を得る、液状組成物の製造方法。
<14> 平均粒子径が20μm以下、比表面積が8m/g以下である熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる、タップ密度が0.3g/ml以上である粉体。
<15> <1>~<12>のいずれかの方法で得られる改質粉体である、<14>の粉体。
本発明によれば、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる、熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体の製造方法、並びに、かかる改質粉体と液状分散媒とを含む、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れた液状組成物の製造方法が提供される。かかる液状組成物は、電気特性等の物性に優れ、例えば、プリント基板の構成材料として有用である。
また、本発明によれば、好適には上記した本発明の製造方法で得られる熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの改質粉体である、特定性状の粉体が提供される。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、対象物(粒子)の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、対象物の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
対象物のD50は、対象物を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「熱溶融性樹脂」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の溶融温度よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が1g/10分以上、1000g/10分以下、となる温度が存在する溶融流動性の樹脂を意味する。
「非熱溶融性樹脂」とは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1g/10分以上、1000g/10分以下、となる温度が存在しない、非溶融流動性の樹脂を意味する。
「ポリマーの溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ポリマーのガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、特記しない限り、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で測定される液状組成物の粘度である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、回転数が30rpmの条件で測定される液状組成物の粘度ηを回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)の粒子(以下、「F粒子」とも記す。)からなる粉体(以下、「原粉体」とも記す。)を、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置にて撹拌処理して改質粉体(以下、「本改質粉体」とも記す。)を得る方法である。
本改質粉体は分散性、均一性及び取扱い性に優れ、また、本改質粉体からは分散安定性に優れる液状組成物が得られる。その理由は必ずしも明確ではないが、例えば以下の様に推定している。
Fポリマーは、その低い表面エネルギーにより液中分散性が低い。Fポリマーからなる粉末を液中分散させ、Fポリマーの粒子が分散した液状組成物を調製する際に、その分散性を向上させるために強い剪断力をかけると、Fポリマーがフィブリル化等して変性し、複雑な二次粒子を形成して凝集しやすくなる。
本法では、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置にてF粒子からなる粉体(原粉体)自体を撹拌処理する手段、換言すれば、原粉体を乾式状態で撹拌処理する手段を採る。本法で得られる粉体(本改質粉体)は、原粉体の平均粒子径を保ちつつ、原粉体と比較して比表面積が低下しタップ密度が向上している。これは、本法における撹拌処理が、自転作用及び公転作用による適度な応力でF粒子同士の均等な衝突を促して進行するためと推測される。その結果、原粉体のさらなる粉砕や異形化を抑制しつつ、その形状が均質化した、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる本改質粉体が得られたと考えられる。また、電気特性等に優れた成形物を形成できる液状組成物が、本改質粉体から得られたと考えられる。
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含む熱溶融性のポリマーである。
Fポリマーの溶融温度は、200℃以上が好ましく、240℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。Fポリマーの溶融温度は、200℃以上320℃以下が特に好ましい。この場合、撹拌処理において生じる熱による、本改質粉体の異形化が一層抑制されやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。この場合、撹拌処理において生じる熱による、本改質粉体の異形化が一層抑制されやすい。
Fポリマーの表面張力は、16mN/m以上26mN/m以下が好ましく、16mN/m以上20mN/m以下がより好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、濡れ指数試薬(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72質量%以上76質量%以下がより好ましい。フッ素含有量が高いFポリマーは、電気物性等の物性に優れる反面、表面張力が低く、分散安定性がより低下しやすいが、本改質粉体では上述の理由により、かかるFポリマーの分散安定性が向上しやすい。
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。上記ポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF又はCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましい。この場合、分子集合体レベルで微小球晶を形成しやすくなり、F粒子の濡れ性が向上して、上述した本発明の効果が高度に発現しやすい。
酸素含有極性基は、Fポリマー中の単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られる、酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。酸素含有極性基は、水酸基含有基、カルボニル基含有基及びホスホノ基含有基が好ましく、本改質粉体の分散安定性の観点から、水酸基含有基及びカルボニル基含有基がより好ましく、カルボニル基含有基がさらに好ましい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH又は-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)又はカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。この場合、F粒子と、本粒子及び液状分散媒とが相互作用しやすく、本改質粉体から調製される液状組成物の分散安定性等に優れやすい。
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含むポリマーであるのがより好ましく、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.5~9.97モル%、0.01~3モル%、含むポリマーであるのがさらに好ましい。カルボニル基含有基が存在すると、Fポリマーの親和性や密着性を一層向上させ得る観点から好ましい。
Fポリマーがカルボニル基含有基を有する場合、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10個以上5000個以下が好ましく、100個以上3000個以下がより好ましく、800個以上1500個以下がさらに好ましい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
また、カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。かかるポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
本法における原粉体は、Fポリマーから形成された粉体である。原粉体は、Fポリマーの造粒物であってもよい。造粒物は、粉末を構成する個々のFポリマーの粒子(一次粒子)を凝集させて形成された粉末であってもよく、かかる粉末を機械的に粉砕させて形成された粉末であってもよい。前者の粉末は、重合媒体中でTFE及びTFEと共重合する他の単量体をラジカル重合させて得られた、重合媒体中に一次粒子として分散したFポリマーを凝集させて得られた粉末が好ましい。換言すれば、凝集粉末は、重合媒体中に一次粒子として分散したFポリマーを凝集剤又は剪断撹拌の作用により凝集させて得た粉末であるのが好ましい。
後者の粉末の調製における機械的な粉砕は、ハンマーミル、ピンミル、ディスクミル、ロータリーミル、ジェットミル等の機械的粉砕装置を用いて行うのが好ましい。
本法において、原粉体は、平均粒子径(D50)が20μm以下のF粒子からなる粉体である。F粒子のD50は、10μm未満が好ましく、8μm以下がより好ましい。F粒子のD50は、0.5μm以上が好ましく、1μm超がより好ましい。この範囲のD50において、F粒子の流動性と分散安定性とが良好となりやすい。
原粉体は、Fポリマーのほか、無機物等の他の成分を含んでいてもよいが、Fポリマーを主成分とするのが好ましい。
無機物としては、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、メタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)が挙げられる。無機物はF粒子中に無機粒子として含まれるのが好ましく、無機粒子は、その表面の少なくとも一部が表面処理されていてもよい。
原粉体におけるFポリマーの含有量は80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
原粉体がF粒子及び無機粒子を含む場合、F粒子が、Fポリマーをコアとし、無機粒子をシェルに有するコア-シェル構造を有するか、Fポリマーをシェルとし、無機粒子をコアに有するコア-シェル構造を有していてもよい。かかるF粒子は、例えば、Fポリマーのパウダーと、無機粒子とを合着(衝突、凝集等)させて得られる。
後述する液状組成物中での本改質粉体の分散安定性の観点から、原粉体(F粒子)の比表面積は25m/g以下であることが好ましく、8m/g以下がより好ましい。
原粉体の比表面積は1m/g以上が好ましい。
また、原粉体のタップ密度は0.3g/ml以上であることが好ましい。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本法において、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置は、以下の1)から6)のいずれかの撹拌装置であるのが好ましい。
1)自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置(以下、「撹拌装置1」とも記す。)
撹拌装置1が備える撹拌槽における、自転による撹拌機構とは、撹拌対象物(原粉体)を収納した撹拌槽が回転軸の回りに回転することで撹拌対象物を撹拌する機構である。回転軸の方向は撹拌槽に対していずれの方向でもよい。一方、公転による撹拌機構とは、撹拌対象物を収納した撹拌槽の外にある定点の周りを撹拌槽が周回することで対象物を撹拌処理する機構である。公転面に対して撹拌槽は垂直、水平又は傾斜のいずれでもよい。かかる撹拌装置は、自転公転撹拌機と称される場合もある。
撹拌装置1として、例えば株式会社シンキー製「泡取り練太郎(登録商標)」シリーズが挙げられる。
2)下方にいくにつれて狭まる円錐形槽と、該円錐形槽内で自転及び公転する螺旋翼とを備える撹拌装置(以下、「撹拌装置2」とも記す。)
撹拌装置2が備える螺旋翼は、円錐形槽内で、円錐形槽の内壁に並行に傾斜して伸張し、円錐形槽の内壁に並行に傾斜している自転軸の周りを自転すると共に、円錐形槽の内壁に沿って、円錐形槽の中心軸の周りを公転する。
撹拌装置2は、螺旋翼が自転することにより、円錐形槽内の内壁面に沿って上方向に撹拌対象物の流れを生じさせる。同時に螺旋翼が公転することにより、円錐形槽内の水平方向に渦巻き状の流れを生じさせながら撹拌対象物が円錐形槽内を落下していく。このように、螺旋翼が遊星運動することにより、撹拌対象物が下方から上方に持ち上げられながら撹拌と分散が繰り返されるので、撹拌対象物が円錐形槽内全体に亘って高度に撹拌処理される。
撹拌装置2としては、例えば、株式会社西村機械製作所製「NVBミキサー」、ホソカワミクロン株式会社製「ナウタミキサ」等が挙げられる。
3)複数の撹拌翼が遊星運動を行う撹拌装置(以下、「撹拌装置3」とも記す。)
撹拌装置3が有する撹拌槽は、滞留部のない、角部にカーブを付けた形状が好ましい。遊星運動を行う複数の撹拌翼は、撹拌槽の内壁に近接する、2本の撹拌翼であるのが好ましい。撹拌翼の形状としては、フック、スパイラルフック、ビーター、スクリュービーターが挙げられる。
2本の撹拌翼が互いに異方向に回転することが好ましい。公転方向と同方向に回転する撹拌翼は、撹拌槽内壁に広範囲に撹拌対象物を押し付け、広範囲にずり作用をかけることができる。公転方向と逆方向に回転する撹拌翼は、撹拌槽内壁から撹拌対象物を掻き取る作用を持つ。
撹拌装置3としては、例えばプラネタリーミキサーが挙げられる。プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を有し、撹拌槽中の撹拌対象物を撹拌する構造を有している。そのため、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少なく、羽根の負荷を軽減して、高度に撹拌対象物を撹拌処理できる。
4)撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置(以下、「撹拌装置4」とも記す。)
撹拌装置4に投入された撹拌対象物は、撹拌槽内で、槽底に備わる撹拌羽の回転力によって撹拌槽内壁に自転作用で押し付けられ、かつ壁面から剥離されて分散し、撹拌羽の巻き上げによる槽内での公転作用を受けて旋回する、一連の動きが繰り返されて撹拌対象物が撹拌処理される。
撹拌羽の先端部分は、その断面積を大きくする観点から、球状、卵形状又は円柱形状を有していてもよい。
撹拌装置4としては、例えば株式会社セイシン企業製「NSM」シリーズ、株式会社アーステクニカ製「クリプトロンオーブ」シリーズが挙げられる。
撹拌装置4の具体例としては、撹拌対象物が高速回転する撹拌羽による自転作用を受けて撹拌されながら槽底部より側壁面に沿って上昇し、回転中心部より槽の底部に下降する公転作用を受けて、投入物が空気とともに流動化し循環をくり返す撹拌機構を有する撹拌装置であるヘンシェルミキサーが挙げられる。
5)円錐状の内周壁面を持ち、槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している撹拌装置(以下、「撹拌装置5」とも記す。)
撹拌装置5が有する撹拌槽は、典型的には逆円錐状の円錐形槽である。撹拌装置5が有する撹拌羽は、例えば2重らせん構造又は1重らせん構造をしたリボン翼であってよい。円錐形槽に供給された撹拌対象物は、撹拌羽の回転により、円錐状の内周壁面に沿って自転作用を受けつつ、下方から上方に持ち上げられる公転作用を受けながら、撹拌と分散とが繰り返されて撹拌対象物が撹拌処理される。
撹拌装置5としては、例えば、株式会社大川原製作所製「リボコーン」が挙げられる。
6)中心軸線を回転軸として回転可能な円筒容器を有し、前記円筒容器の内部に内壁に沿って螺進する複数本のリボンスクリュー状の外羽根と、この外羽根の内側に配設されかつ外羽根とは逆方向に螺進する複数本のリボンスクリュー状の内羽根を設けた円筒型撹拌装置(以下、「撹拌装置6」とも記す。)
撹拌装置6における円筒容器は、回転軸とする中心軸線が地上面に対して例えば水平に配置され、原料供給口と、撹拌終了後に排出される排出口を有する構成である。
撹拌装置6の円筒容器が排出口から見て時計回りに回転することで、投入された撹拌対象物は、リボンスクリュー状の外羽根により、円筒容器の内壁に近い側の撹拌対象物を排出口から原料供給口の方向に公転作用を受けて移動する。一方、内羽根は、円筒容器が中心軸線を回転軸として回転することにより撹拌対象物に自転作用を与え、原料供給口から排出口の撹拌対象物を移動させる。この操作が繰り返されて撹拌対象物の撹拌処理が行われる。
撹拌処理は、撹拌効率及び原粉体の改質が良好に進行する観点から、原粉体の充填量を撹拌装置の容量の50体積%以下で行うのが好ましく、30体積%以下で行うのがより好ましい。
撹拌処理は、バッチ式でも連続式でも実施できる。連続式の場合、撹拌処理物の排出口を有する撹拌槽を備えた撹拌装置を使用して、排出口から取り出された撹拌処理物を、再度投入口から供給して混合してもよく、複数の撹拌槽を使用して、前段の撹拌槽の排出口から取り出された混合物を、後段の撹拌槽の投入口から供給して混合してもよい。
本法においては、原粉体の撹拌処理を撹拌装置1又は撹拌装置4で行うのが、得られる本改質粉体の分散性、均一性及び取扱い性の観点から好ましい。
撹拌装置1を用いて原粉体の撹拌処理を行う場合、前記撹拌処理を、自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽内で、公転速度が自転速度の1倍超である条件で行うのが好ましい。前記撹拌処理は、公転速度が自転速度の10倍以下である条件で行うのが好ましい。この場合、分散性と分散安定性に優れた本改質粉体が得られやすい。
撹拌装置1における自転速度若しくは公転速度の周速度、又は撹拌装置4における撹拌の周速度が、1m/s以上100m/s以下であるのが、同様の観点から好ましい。
また、撹拌装置1において、自転速度の周速度が1m/s以上10m/s以下であり、公転速度の周速度が10m/s以上30m/s以下であるのが、上述した作用機構が顕著に発現する観点から、好ましい。
撹拌装置4における撹拌羽の回転数は、10m/s以上100m/s以下であるのが、それによる自転作用及び公転作用が向上して、上述した作用機構が顕著に発現する観点から、好ましい。
撹拌処理時間は、5分以上が好ましく、30分以上が好ましい。撹拌処理時間は120分以下が好ましく、90分以下がより好ましい。撹拌処理時間が、かかる範囲にあれば、原粉体の充分な改質と本改質粉体の生産性とがバランスしやすい。
本法では、自転作用及び公転作用を有する撹拌装置を用いて原粉末を撹拌処理することにより、原粉末のタップ密度を増加でき、かつ原粉末の平均粒子径をほぼ維持した、本改質粉体を得ることができる。
原粉体の平均粒子径(D50)に対する、本改質粉体のD50の比が0.95以上であるのが好ましい。前記比の上限は1である。具体的には、本改質粉体のD50は20μm以下であり、10μm未満が好ましい。前記D50は0.5μm以上が好ましく、1μm超がより好ましい。
本改質粉体の比表面積が原粉体の90%以下であるのが好ましい。また、本改質粉体の比表面積が原粉体の75%以上であるのが好ましい。具体的には、本改質粉体の比表面積は25m/g以下が好ましく、8m/g以下がより好ましい。本改質粉体の比表面積は1m/g以上が好ましい。本改質粉体の比表面積がこの範囲にあれば、本改質粉体から調製される液状組成物の分散安定性と、本改質粉体を含む液状組成物から調製される成形物の物性とが、一層向上しやすい。
本改質粉体のタップ密度は、原粉体のタップ密度の1.2倍以上であるのが好ましい。また、本改質粉体のタップ密度は、原粉体のタップ密度の1.5倍以下であるのが好ましい。具体的には、原粉体のタップ密度は0.3g/ml以上であり、本法で得られる本改質粉体のタップ密度が0.36g/ml以上であるのが好ましい。
なお、タップ密度は、実施例に記載した方法により求められる。
本改質粉体のタップ密度がこの範囲にあれば、本改質粉体が凝集し難くなり、分散性に一層優れる。また、移送、保管、輸送等の効率に優れ、取扱いが容易となる。
本改質粉体と液状分散媒を混合すれば、本改質粉体と液状分散媒とを含む液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)が得られる。本改質粉体は、液状分散媒中で分散しているのが好ましい。
本組成物における本改質粉体の含有量は、本組成物の全体質量に対して、10質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。本改質粉体の含有量は、本組成物の全体質量に対して95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
本改質粉体と液状分散媒との混合の方法としては、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等のブレード(撹拌翼)を一軸あるいは多軸で備える撹拌装置や、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサーによる撹拌;ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル(ガラスビーズ又は酸化ジルコニウムビーズ等の粉砕媒体を用いたビーズミル)、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル又はアジテーターミル等のメディアを使用する分散機による混合;マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等の高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機等の、メディアを使用しない分散機を用いた混合が挙げられ、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー又は自転公転撹拌機が好ましく、プラネタリーミキサーがより好ましい。
本組成物が含む液状分散媒は、大気圧下、25℃にて液体である化合物である。液状分散媒は、水であってもよく、非水系分散媒であってもよい。また、液状分散媒は非プロトン性分散媒であってもよく、プロトン性分散媒であってもよい。
液状分散媒は、水、アミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれるのが好ましい。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
本組成物における液状分散媒の含有量は、本組成物の全体質量に対して5質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。液状分散媒の含有量は90質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
本組成物は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤は、ノニオン性界面活性剤であるのが好ましい。
ノニオン性界面活性剤は、グリコールモノアルキルエーテル、アセチレン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤が好ましく、グリコールモノアルキルエーテル、シリコーン系界面活性剤がより好ましい。本組成物は、シリコーン系界面活性剤とグリコールモノアルキルエーテルとを含んでもよい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(株式会社ネオス社製 フタージェントは登録商標)、「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製 サーフロンは登録商標)、「メガファック」シリーズ(DIC株式会社製 メガファックは登録商標)、「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業株式会社製 ユニダインは登録商標)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン株式会社社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業株式会社製)、「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製。「Tergitol TMN-100X」等。)、「Lutensol T08」、「Lutensol XL70」、「Lutensol XL80」、「Lutensol XL90」、「Lutensol XP80」、「Lutensol M5」(以上、BASF社製)、「ニューコール 1308FA」、「ニューコール 1310」(以上、日本乳化剤社製)、「レオコール TDN-90-80」、「レオコール SC-90」(以上、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
本組成物が界面活性剤を含む場合、本組成物における界面活性剤の含有量は0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
本改質粉体を含有する本組成物は、本改質粉体の優れた分散安定性、均一性に起因して、界面活性剤の含有量を減らしても、低粘度でかつ分散性に優れる。
本組成物は、さらに無機粒子を含有していてもよい。無機粒子としては、窒化物粒子又は無機酸化物粒子が好ましく、窒化ホウ素粒子、ベリリア粒子(ベリリウムの酸化物の粒子)、ケイ酸塩粒子(シリカ粒子、ウォラストナイト粒子、タルク粒子)、又は金属酸化物(酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)粒子がより好ましく、窒化ホウ素粒子及びシリカ粒子がさらに好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。
無機粒子は、その表面の少なくとも一部が、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)で表面処理されているのが好ましい。
無機粒子のD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。D50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
無機粒子の形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、球状又は板状であるのが好ましい。
無機粒子の具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。
無機粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本組成物が無機粒子をさらに含む場合、その量は、本組成物全体の質量に対して1質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上40質量%以下がより好ましい。
無機粒子の好適な具体例としては、シリカ粒子(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛粒子(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ粒子(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン粒子(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン粒子(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカ粒子(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルク粒子(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイト粒子(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素粒子(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
本組成物は、さらに芳香族ポリマーを含有していてもよい。本組成物が芳香族ポリマーを含有する場合、本組成物の分散安定性等の液物性を向上すると共に、本組成物から得られる成形物に、耐屈曲性等の柔軟性を付与できる。また、芳香族ポリマーは、ポリイミドフィルムや金属箔等の基材の表面に、本組成物を付与してFポリマーを含むポリマー層を形成する際に、かかるポリマー層の樹脂フィルムに対する接着性、密着性等の特性を付与できる。
芳香族ポリマーは、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、変性されていてもよい。芳香族ポリマーは、その前駆体として本組成物に含まれていてもよい。
芳香族ポリマーの平均分子量は、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。芳香族ポリマーの平均分子量は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。この場合、芳香族ポリマーが水へ溶解しやすい。また、本組成物から得られる成形物が、耐屈曲性等の力学的特性に優れやすい。
芳香族ポリマーとしては、芳香族イミド系樹脂、芳香族スルフィド系樹脂、芳香族スルホン系樹脂、フェノール樹脂が挙げられ、芳香族イミド系樹脂が好ましい。
芳香族イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリエーテルイミド又はそれらの前駆体が挙げられる。これらは、変性されていてもよく、例えばカルボン酸基等の極性官能基を有してもよい。芳香族イミド系樹脂としては、芳香族ポリイミド又はその前駆体(ポリアミック酸又はその塩)、芳香族ポリアミドイミド又はその前駆体が好ましい。
芳香族ポリイミド前駆体としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを溶媒中で重合させたポリアミック酸や、該ポリアミック酸と、アンモニア水又は有機アミンとを反応させたポリアミック酸塩が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド又はその前駆体としては、ジイソシアネート及び/又はジアミンと、酸成分としての三塩基酸無水物(又は三塩基酸クロリド)とを反応させて得られる芳香族ポリアミドイミド又はその前駆体が挙げられる。
芳香族ポリアミドイミド又はその前駆体の具体例としては、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(いずれも昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
芳香族ポリエーテルイミドとしては、主鎖中にイミド結合とエーテル結合とを有する非晶性ポリマーが挙げられ、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンとm-フェニレンジアミンとの重縮合体が好ましい。芳香族ポリエーテルイミドの具体例としては、例えば「Ultem 1000F3SP」(SABIC社製)が挙げられる。
芳香族スルフィド系樹脂としては、ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
芳香族スルホン系樹脂としては、ポリフェニルスルホンが挙げられる。
本組成物が芳香族ポリマーを含有する場合、その含有量は、本組成物の全体質量に対して0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。芳香族ポリマーの含有量は、本組成物の全体質量に対して30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
本組成物が芳香族ポリマーを含有する場合、F粒子の含有量に対する芳香族ポリマーの含有量の比は0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましい。かかる含有量の比は0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。
本組成物を構成する液状分散媒が水である場合、pH調整の観点から、さらにpH調整剤又はpH緩衝剤を含んでもよい。この場合、pH調整剤又はpH緩衝剤により、本組成物のpHを5以上10以下に調整するのが好ましく、7以上9以下に調整するのがより好ましい。
pH調整剤としては、アミン、アンモニア、クエン酸が挙げられる。
pH緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられる。
pH調整剤又はpH緩衝剤を添加する段階は、混合前であってもよく混合中であってもい。
本組成物は、さらに脱泡処理に供してもよい。脱泡は、自転公転撹拌機を用いて行うのが好ましい。
本組成物は、さらに酸素含有極性基を有さないポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」とも記す。)の粒子(以下、「PTFE粒子」とも記す。)を含んでいてもよい。この場合、本組成物中でFポリマーが物性を保ちつつ適度にフィブリル化し、本組成物から形成される成形物中でF粒子が担持されやすくなり、耐熱性等のPTFEに基づく物性が良好に発現する。
PTFEは、TFEのホモポリマーであってもよく、極微量のPAVE、HFP、フルオロアルキルエチレン等のコモノマーとTFEとのコポリマーである、所謂、変性PTFEであってもよい。PTFEにおけるTFE単位の割合は、全単位のうち99.5モル%以上であり、99.9モル%以上が好ましい。
PTFEは、非熱溶融性であるのが好ましい。非熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1g以上1000g以下/10分となる温度が存在しないポリマーを意味する。
PTFE粒子の平均粒径は0.1μm以上1μm以下であるのが好ましい。
本組成物がPTFE粒子を含む場合、本組成物中のFポリマーとPTFE粒子の質量比は、Fポリマーの含有質量を1として、PTFE粒子の含有質量は1以上10以下が好ましい。
本組成物は、上述した成分以外に、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、防腐剤、防カビ剤、有機フィラー等をさらに含有していてもよい。
上述した作用機構により、本組成物は分散安定性に優れるため、これらを添加して容易に液物性を調整できる。
本組成物の粘度は、10mPa・s以上10000mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上1000mPa・s以下がより好ましい。
本組成物のチキソ比は、1.0以上3.0以下が好ましい。
本組成物の粘度又はチキソ比が、この範囲にあれば、本組成物は取扱性に優れ、それから緻密な成形物を形成しやすい。上述した作用機構により、本改質粉体からは、かかる本組成物を容易に調製しやすい。
本組成物を、基材の表面に配置し、加熱して液状分散媒を除去し、さらに加熱して、基材層と、基材層の表面にFポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を含む層と、を有する積層体が得られる。本組成物は、分散安定性等の液物性に優れており、上述の作用機構により、Fポリマーに基づく物性に優れた成形物を形成できる。
より具体的には、本組成物を基材の表面に付与して液状被膜を形成し、この液状被膜を加熱して分散媒を除去して乾燥被膜を形成し、さらに乾燥被膜を加熱してFポリマーを焼成すれば、F層を基材層の表面に有する積層体が得られる。
基材としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、耐熱性樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムであり、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい)、プリプレグ(繊維強化樹脂基板の前駆体)、ガラスが挙げられる。
金属基板は、低粗化銅箔であってもよく、無粗化銅箔であってもよい。金属基板が低粗化銅箔又は無粗化銅箔である場合、積層体が伝送特性に優れやすい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01μm以上0.05μm以下が好ましい。
基材の形状としては平面状、曲面状、凹凸状が挙げられ、さらに、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
本組成物を基材の表面に付与する方法としては、基材の表面に本組成物からなる安定した液状被膜(ウェット膜)が形成される方法であればよく、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法を用いれば、簡単な設備で効率よく基材の表面に液状被膜を形成できる。
塗布法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
液状被膜を乾燥する際は、液状被膜を液性成分が揮発する温度で加熱し、乾燥被膜を基材の表面に形成する。かかる乾燥における加熱の温度は、100℃以上200℃以下が好ましい。なお、液性成分を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
乾燥時に、液性成分は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定し、自立膜を維持できる程度まで揮発させればよい。
Fポリマーの焼成の際は、Fポリマーの溶融温度以上の温度で乾燥被膜を加熱するのが好ましい。かかる加熱の温度は380℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
それぞれの加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。また、加熱雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
加熱時間は、0.1分以上30分以下が好ましく、0.5分以上20分以下がより好ましい。
以上のような条件で加熱すれば、高い生産性を維持しつつ、F層を好適に形成できる。
F層の厚さは、0.1μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。F層の厚さは、500μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましい。本組成物は、分散安定性等の物性に優れるため、本組成物からは、厚いF層を容易に形成できる。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本組成物を用いれば、F層におけるFポリマーの物性を損なわずに、かかる本積層体を容易に形成できる。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ付与してもよく、基材の両面に付与してもよい。前者では、基材で構成される基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者では、基材で構成される基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。後者の積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際する取扱い性に優れる。
かかる積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。これらの積層体は、電気特性等の諸物性に優れるのでプリント基板材料等として好適であり、フレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板の製造に使用できる。
基材層の両方の表面にF層を有する本積層体は、本組成物を基材の両方の面に付与し、加熱して液性成分を除去し、さらに加熱してFポリマーを焼成させて、両方の面のF層を同時に形成して得てもよい。
基材層の両方の表面にF層を有する本積層体は、基材を本組成物に浸漬して本組成物を基材の両方の面に付与した後に焼成炉を通過させ加熱して得てもよい。具体的には、基材を本組成物に浸漬した後に、基材を本組成物から引き上げながら焼成炉を通過させ加熱して得てもよい。
かかる本積層体は、ディップコーターと焼成炉とを有する装置を用いれば好適に製造できる。焼成炉としては、竪型焼成炉が挙げられる。また、かかる装置としては、田端機械工業社製のガラスクロスコーティング装置が挙げられる。
上述のとおり、本組成物を用いれば、成分の均一分布性に優れ、電気特性に優れた積層体が得られる。本組成物は、ポリイミドフィルムの両方の表面にF層を含有する多層フィルムをロール・ツー・ロールプロセスにより製造する場合に、特に好適である。かかる多層フィルムはプリント配線基板、特にフレキシブルプリント配線基板の材料として有効に使用でき、Fポリマーの物性を良好に発現する。
また、本積層体から基材を除去することでF層からなるシートを製造することができる。除去の方法としては、剥離又はエッチングが挙げられる。
F層と基材層との積層体及びF層からなるシートは、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品、塗料、化粧品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、炭化水素・薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、自動車向けの放熱基板、無線通信デバイス(例えば、国際公開第2020/008691号や国際公開第2020/031419号に記載の無線通信デバイス)の放熱部材としても好適に使用できる。
基材層が樹脂フィルム(好適にはポリイミド系樹脂フィルム)である本積層体は、離型フィルムやキャリアフィルムとして有用である。本積層体は、F層と基材層との接着性に優れ層間剥離しにくいため、キャリアフィルムとして繰り返し使用できる。また、F層は耐熱性に優れるため、繰り返し使用しても離型性も悪化しにくい。
本積層体は、具体的には、セラミックグリーンシート形成用のキャリアフィルム、二次電池形成用のキャリアフィルム、固体高分子電解質膜形成用のキャリアフィルム、固体高分子電解質膜の触媒形成用キャリアフィルムとして有用である。
また、本改質粉体から調製される本組成物は、低誘電特性、絶縁性、耐熱性、対腐食性、耐薬品性、耐水性、耐衝撃性、熱伝導性を付与するためのコーティング材料として有用である。
本組成物は、具体的には、プリント配線板、ソルダーレジスト、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイル、車載エンジン、熱交換器、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、アンプル、医療用ワイヤー、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ、コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、電極のバインダー、電極のセパレーター、電極(正極、負極)に使用できる。
また、本改質粉体から調製される本組成物は部品を接着する接着剤としても有用である。具体的には、本組成物は、セラミックス部品の接着、金属部品の接着、半導体素子やモジュール部品の基板におけるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。
また、さらに導電性フィラーを含む上記した本組成物は、導電性が要求される用途、例えば、プリンテッド・エレクトロニクスの分野においても好適に使用できる。具体的には、プリント回路板、半導体のダイアタッチ材、センサー電極、ディスプレイ、バックプレーン、RFID(無線周波数識別)、太陽光発電、照明、使い捨て電子機器、自動車ヒータ、電磁波(EMI)シールド、メンブレンスイッチ等における通電素子の製造において使用できる。
また、本改質粉体から調製される本組成物は繊維のサイジング剤としても有用である。本組成物を繊維の表面に配置して、液状分散媒を蒸発させれば、Fポリマーが表面付着した、サイジング処理された繊維を得られる。液状分散媒を蒸発させた後、さらに加熱してFポリマーを焼成し、Fポリマーの焼成物が表面付着した、サイジング処理された繊維を得てもよい。
繊維としては、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維;アラミド繊維、ポリオレフィン繊維、変性ポリフェニレンエーテル繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、天然繊維等の有機繊維;ボロン繊維、炭素繊維、金属繊維が挙げられ、炭素繊維が好ましい。
本発明はまた、平均粒子径が20μm以下、比表面積が8m/g以下である熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる、タップ密度が0.3g/ml以上である粉体である。かかる粉体は、上記した製造方法で得られる改質粉体であるのが好ましい。本発明の粉体は均一性に優れるため、本発明の粉体と液状分散媒とを混合すれば、分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる液状組成物が得られる。
本発明の粉体における熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの定義及び範囲は、好適な範囲も含めて本法で得られる改質粉体におけるそれらと同様である。
また、本発明の粉体と液状分散媒を混合すれば、本発明の粉体と液状組成物とを含む液状組成物が得られる。かかる液状組成物における液状分散媒、及び界面活性剤、無機粒子、芳香族ポリマー等の任意添加成分の範囲や好適な含有量、並びにかかる液状組成物の用途の態様は、本改質粉体と液状分散媒とを含む本組成物におけるそれらと同様である。
以上、本改質粉体の製造方法、本改質粉体を含む液状組成物の製造方法、及び本発明の粉体について説明したが、本発明は、前述した実施形態の構成に限定されない。
例えば、本改質粉体の製造方法、本改質粉体を含む液状組成物の製造方法は、上記実施形態の構成において、他の任意の工程を追加で有してもよいし、同様の作用を生じる任意の工程と置換されていてよい。また、好適には本改質粉体である本発明の粉体は、上記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の詳細
[原粉体(F粒子)]
F粒子1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するポリマー(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.1μm、比表面積:8.1m/g、タップ密度:0.2g/ml)
F粒子2:TFE単位及びPPVE単位を、この順に97.5モル%、2.5モル%含み、酸素含有極性基を有さないポリマー(溶融温度:300℃)からなる粒子(D50:2.0μm、比表面積:8.2m/g、タップ密度:0.2g/ml)
[界面活性剤]
界面活性剤1:ノニオン性界面活性剤(ビックケミー・ジャパン株式会社社製「BYK-3450」)
2.撹拌手段
撹拌装置A:自転公転撹拌機(株式会社シンキー製「泡取り練太郎(登録商標)」)
(自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置)
撹拌装置B:セイシン企業社製「NSM-200」
(撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置)
撹拌装置C:セラミックボールを用いるボールミル
(自転及び公転による撹拌機構を有さない撹拌装置)
3.改質粉体及び液状組成物の製造例
[例1]
(1)F粒子1を、撹拌装置Aにより、公転速度2000rpm、自転速度1000rpmの条件にて5分撹拌処理して、改質粉体11を得た。
(2)得られた改質粉体11と界面活性剤1と水とを、そのまま撹拌装置Aを用いて混合し、改質粉体11(50質量部)、界面活性剤1(2.5質量部)及び水(47.5質量部)を含む液状組成物1を得た。
[例2]
F粒子1を、撹拌装置Bにより6000rpmで5分撹拌処理して、改質粉体12を得た。さらに、改質粉体12と界面活性剤1と水とを混合し、改質粉体12(50質量部)、界面活性剤1(2.5質量部)及び水(47.5質量部)を含む液状組成物2を得た。
[例3]
撹拌装置CのポットにF粒子1及びセラミックボールを入れて、ポットを回転させて混合した。さらに、ポットに界面活性剤1と水とを入れて混合し、F粒子1(50質量部)、界面活性剤1(2.5質量部)及び水(47.5質量部)を含む液状組成物3を得た。
[例4]
F粒子1を粒子2に変更する以外は例1と同様にして、改質粉体21を得て、それから液状組成物4を得た。
[例5]
F粒子1をF粒子2に変更する以外は例3と同様にして、液状組成物5を得た。
4.評価
4-1.改質粉体の評価
例1~5で得た改質粉体又はF粒子の平均粒径、比表面積及びタップ密度を測定した。結果を表1に示す。
なお、タップ密度は、セイシン企業社製「タップデンサー KYT-4000」等の測定装置を用い、補助カップを備えた容量50mlのカップに5gから15gの試料を充填して300回タッピングさせ、次いで補助カップを取り外して、測定試料の充填面の目盛を正確に読み取り、次式により算出した。
タップ密度(g/ml)=試料質量(g)/読み取り目盛(ml)
4-2.液状組成物の評価
それぞれの液状組成物(18mL)を、をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて7日静置した。その後、スクリュー管中の液状組成物を目視で観察し、下記の基準に従って、分散安定性を評価した。
[評価基準]
〇:凝集物が視認されない。
△:容器底部に凝集物の沈殿が視認される。せん断をかけて撹拌すると均一に再分散する。
×:容器底部に凝集物の沈殿が視認される。せん断をかけて撹拌しても再分散が困難である。
それぞれの評価結果を、まとめて表1に示す。
Figure 2023075825000001
本発明の方法で製造される改質粉体は分散安定性、均一性及び取扱い性に優れる。
かかる改質粉体からは、分散安定性に優れた液状組成物を製造できる。かかる液状組成物は、電気特性等の物性に優れた成形物を形成でき、フィルム、繊維強化フィルム、プリプレグ、金属積層板(樹脂付金属箔)等に容易に加工できる。得られる加工物品は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、すべり軸受け等の材料として使用できる。

Claims (15)

  1. 平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を、自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置にて撹拌処理して改質粉体を得る、改質粉体の製造方法。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの溶融温度が200℃以上320℃以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を含む、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記撹拌装置が、以下の1)から6)のいずれかの撹拌装置である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
    1)自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置
    2)下方にいくにつれて狭まる円錐形槽と、該円錐形槽内で自転及び公転する螺旋翼とを備える撹拌装置
    3)複数の撹拌翼が遊星運動を行う撹拌装置
    4)撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置
    5)円錐状の内周壁面を持ち、槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している撹拌装置
    6)中心軸線を回転軸として回転可能な円筒容器を有し、前記円筒容器の内部に内壁に沿って螺進する複数本のリボンスクリュー状の外羽根と、この外羽根の内側に配設されかつ外羽根とは逆方向に螺進する複数本のリボンスクリュー状の内羽根を設けた円筒型撹拌装置
  5. 前記撹拌処理が、自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽を備えた撹拌装置、又は撹拌槽における槽底の中心を垂直に貫く駆動軸を持った撹拌羽を有している流動型撹拌装置で行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記撹拌処理を、自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽内で、公転速度が自転速度の1倍超である条件で行う、請求項5に記載の製造方法。
  7. 前記自転及び公転による撹拌機構を備えた撹拌槽における自転速度若しくは公転速度の周速度、又は前記流動型撹拌装置における撹拌の周速度が、1m/s以上100m/s以下である、請求項5又は6に記載の製造方法。
  8. 前記撹拌処理を、前記粉体の充填量を前記撹拌装置の容量の50体積%以下で行う、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記粉体が、重合媒体中でのラジカル重合により得られた熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの造粒物を粉砕して形成された粉体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記粉体の比表面積が8m/g以下であり、前記改質粉体の比表面積が前記粉体の90%以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記粉体のタップ密度が0.3g/ml以上であり、前記改質粉体のタップ密度が前記粉体の1.2倍以上である、請求項1~10のいずれか1項に記載の製造方法。
  12. 前記粉体の平均粒子径に対する、前記改質粉体の平均粒子径の比が0.95以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 平均粒子径が20μm以下の熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる粉体を自転作用及び公転作用を備えた撹拌装置内にて撹拌処理して改質粉体を得、該改質粉体と液状分散媒を混合して液状組成物を得る、液状組成物の製造方法。
  14. 平均粒子径が20μm以下、比表面積が8m/g以下である熱溶融性テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子からなる、タップ密度が0.3g/ml以上である粉体。
  15. 請求項1~12のいずれか1項に記載の方法で得られる改質粉体である、請求項14に記載の粉体。
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