JP2022152090A - 水性分散液、水性分散液の製造方法、積層体の製造方法及び含浸織布の製造方法 - Google Patents

水性分散液、水性分散液の製造方法、積層体の製造方法及び含浸織布の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】分散安定性、ハンドリング性、ブレンド性及び長期保管性にも優れる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む水性分散液、水性分散液の製造方法、積層体の製造方法及び含浸織布の製造方法の提供。【解決手段】テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、酸価が5~200mgKOH/gである化合物と、水とを含み、pHが7超である、水性分散液。【選択図】なし

Description

本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーを含む水性分散液、水性分散液の製造方法、積層体の製造方法及び含浸織布の製造方法に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のテトラフルオロエチレン系ポリマーは、電気特性、撥水撥油性、耐薬品性、耐熱性等の物性に優れており、種々の産業用途に利用されている。上記物性を基材の表面に付与するために用いるコーティング剤として、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーを含む分散液が使用されており、近年では、高周波帯域の周波数に対応するプリント基板の絶縁層等を形成するコーティング剤としても注目されている。
テトラフルオロエチレン系ポリマーは、表面張力が概して低く、そのパウダーを含む水性分散液の分散性を向上させるために、特許文献1及び2には、それぞれ所定の界面活性剤の使用が提案されている。
国際公開2007/026822号 国際公開2015/008649号
しかし、特許文献1及び2に記載の水性分散液においても、その分散安定性は未だ充分ではない。
特に、かかる水性分散液自体を調合する際や、かかる水性分散液と他の成分(無機フィラー、樹脂ワニス等)とを混合する際に、その液物性が損なわれやすい点を、本発明者らは知見している。
具体的には、パウダーの水中分散において、泡立ち、パウダーの沈降が生じる場合があり、ハンドリング性が低い点を知見している。また、他の成分の混合において、均一混合しにくい場合があるだけでなく、得られた混合液の液物性(均一性、粘度、チキソ性等)を維持するためには、他の添加剤が更に必要となる点を知見している。この場合、その調製が煩雑であるだけでなく、かかる混合液から形成される成形物の物性(電気特性、表面平滑性等)を損なう場合もある。
本発明の目的は、分散安定性、ハンドリング性及びブレンド性に優れ、長期保管性にも優れた、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーを含む水性分散液、水性分散液の製造方法、積層体の製造方法及び含浸織布の製造方法の提供にある。かかる水性分散液からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性に優れた成形物を容易に製造できる。
本発明は、下記の態様を有する。
<1> テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、酸価が5~200mgKOH/gである界面活性剤と、水とを含み、pHが7超である、水性分散液。
<2> 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、<1>の水性分散液。
<3> 前記多塩基有機酸が、多塩基カルボン酸である、<1>又は<2>の水性分散液。
<4> 前記多塩基有機酸が、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の無水物に基づく単位を含むポリマーである、<1>~<3>のいずれかの水性分散液。
<5> 前記多塩基有機酸の誘導体が、多塩基カルボン酸のエステル又はアミドである、<1>~<4>のいずれかの水性分散液。
<6> 前記多塩基有機酸が、多塩基カルボン酸、その誘導体又はその塩であり、第4級アンモニウム塩又はアミンオキサイド塩である、<1>~<5>のいずれかの水性分散液。
<7> 前記パウダーの含有量が、20質量%以上である、<1>~<6>のいずれかの水性分散液。
<8> 前記化合物の含有量が、0.1~10質量%である、<1>~<7>のいずれかの水性分散液。
<9> さらに、異種のノニオン性界面活性剤を含む、<1>~<8>のいずれかの水性分散液。
<10> 前記異種のノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン又はグリコールモノアルキルエーテルである、<9>の水性分散液。
<11> さらに、無機フィラー又は前記テトラフルオロエチレン系ポリマーとは異なるポリマー若しくはその前駆体を含む、<1>~<10>のいずれかの水性分散液。
<12> pHが、8~12である、<1>~<11>のいずれかの水性分散液。
<13> <1>~<12>のいずれかの水性分散液を製造する方法であって、前記パウダーと、前記界面活性剤を含む水溶液とを混合する、水性分散液の製造方法。
<14> <1>~<12>のいずれかの水性分散液を基材の表面に付与し、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成して、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とを有する積層体を得る、積層体の製造方法。
<15> <1>~<12>のいずれかの水性分散液を織布に含浸させ、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む含浸織布を得る、含浸織布の製造方法。
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーを含み、分散安定性、ハンドリング性及びブレンド性に優れ、長期保管性にも優れた、pHが7超の水性分散液が得られる。本発明の水性分散液は、耐酸性の低い基材へのコーティングと、耐酸性の低い織布への含浸とに好適に使用できる。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、対象物(パウダー及びフィラー)の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、対象物の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマー、硬化物又はエラストマーを分析して測定される値である。
「水性分散液の粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が60rpmの条件下で測定される粘度である。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「水性分散液のチキソ比」とは、回転数が30rpmの条件で測定される粘度を、回転数が60rpmの条件で測定される粘度で除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「パウダーの比表面積」は、ガス吸着(定容法)BET多点法でパウダーを測定し算出される値であり、NOVA4200e(Quantachrome Instruments社製)を使用して求められる。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された上記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって上記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の水性分散液(以下、「本分散液」とも記す)は、テトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)のパウダー(以下、「Fパウダー」とも記す。)と、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、酸価が5~200mgKOH/gである界面活性剤(以下、「本界面活性剤」とも記す。)と、水とを含む。本分散液のpHは7超であり、本分散液中でFパウダーは粒子状に分散している。
本分散液は、分散安定性、ハンドリング性及びブレンド性に優れ、長期保管性にも優れている。本分散液からは、テトラフルオロエチレン系ポリマーに基づく物性に優れた成形物が得られる。
その理由は必ずしも明確ではないが、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり所定の酸価である本界面活性剤がFパウダーの水中分散を高度に促す状態にあるためと考えられる。すなわち、本分散液のpHが7超であることが、本界面活性剤の電離度をバランスさせ、本界面活性剤のFパウダーの表面への付着を促し、Fパウダーとの安定なミセルの形成を促していると考えられる。その結果、ハンドリング性及びブレンド性に優れ、長期保管性にも優れた、テトラフルオロエチレン系ポリマーの水性分散液が得られたと考えられる。
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは、熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であってもよい。
Fポリマーが熱溶融性である場合、その溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。Fポリマーの溶融温度は、260~320℃が特に好ましい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましく、16~20mN/mがより好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、濡れ指数試薬(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。
表面張力が低く、フッ素含有量が高いFポリマーは、電気物性等の物性に優れる反面、水中での分散安定性が著しく低い。しかし、本分散液では、上述の作用機構により、かかるFポリマーの分散安定性が改善しやすい。
Fポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)、TFE単位とフルオロアルキルエチレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とクロロトリフルオロエチレンに基づく単位とを含むポリマーが挙げられ、PFA又はFEPが好ましく、PFAがより好ましい。上記ポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEとしては、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF又はCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
PTFEは、非熱溶融性PTFEであってもよく、熱溶融性PTFEであってもよい。
熱溶融性PTFEとしては、数平均分子量が1万~20万である低分子量PTFEが挙げられる。なお、低分子量PTFEの数平均分子量は、下式(1)に基づいて算出される値である。
Mn = 2.1×1010×ΔHc-5.16 ・・・ (1)
式(1)中、Mnは、低分子量PTFEの数平均分子量を、ΔHcは、示差走査熱量分析法により測定される低分子量PTFEの結晶化熱量(cal/g)を、それぞれ示す。低分子量PTFEは、TFE単位以外の単位を微量含んでいてもよい。
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましい。この場合、分子集合体レベルで微小球晶を形成しやすくなり、Fパウダーの濡れ性が向上して、上述した本発明の効果が高度に発現しやすい。
酸素含有極性基は、Fポリマー中の単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られる、酸素含有極性基を有するFポリマーが挙げられる。
酸素含有極性基は、水酸基含有基、カルボニル基含有基及びホスホノ基含有基が好ましく、本分散液の分散安定性の観点から、水酸基含有基及びカルボニル基含有基がより好ましく、カルボニル基含有基がさらに好ましい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH又は-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボニル基(>C(O))を含む基であり、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)又はカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。この場合、Fパウダーと本界面活性剤が相互作用しやすく、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含むポリマーであるのがより好ましく、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.5~9.97モル%、0.01~3モル%、含むポリマーであるのがさらに好ましい。カルボニル基含有基が存在すると、Fポリマーと本界面活性剤との親和性や本分散液から形成される成形物の密着性を一層向上させる観点から好ましい。
Fポリマーがカルボニル基含有基を有する場合、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましく、800~1500個がさらに好ましい。なお、Fポリマーにおけるカルボニル基含有基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
また、カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸又は5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましい。かかるポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
本発明における、FパウダーのD50は、0.1~25μmであるのが好ましい。FパウダーのD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。FパウダーのD50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。この範囲のD50において、Fパウダーの流動性と分散安定性とが良好となりやすい。
分散安定性の観点から、Fパウダーの比表面積は、1~25m/gが好ましく、1~8m/gがより好ましく、1~3m/gがさらに好ましい。
Fパウダーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
2種のFパウダーを用いる場合、PTFEのパウダーと、溶融温度が200~320℃であるFポリマー(好適には上述したTFE単位及びPAVE単位を含む、酸素含有極性基を有するポリマー)のパウダーを含むのが好ましい。そして、前者のパウダーの含有質量が後者のパウダーの含有質量よりも多い態様がより好ましい。
この場合、前者のパウダーと後者のパウダーとの合計に占める後者のパウダーの割合は、25質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、この場合の割合は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。
かかる本分散液は、分散安定性と取扱い性と長期保管安定性に優れやすいだけでなく、PTFEに基づく物性に優れた、接着性の成形物を形成しやすい。
また、この場合、PTFEのパウダーのD50が0.1~1μmであり、溶融温度が200~320℃であるFポリマーの粒子のD50が0.1~1μmである態様、PTFEの粒子のD50が0.1~1μmであり、溶融温度が200~320℃であるFポリマーの粒子のD50が1~4μmである態様が好ましい。
Fパウダーは、Fポリマー以外の樹脂又は無機フィラーを含んでいてもよいが、Fポリマーを主成分とするのが好ましい。FパウダーにおけるFポリマーの含有量は、80質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。
Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、(熱可塑性)ポリイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、マレイミド等の耐熱性樹脂が挙げられる。
無機フィラーとしては、酸化ケイ素(シリカ)、金属酸化物(酸化ベリリウム、酸化セリウム、アルミナ、ソーダアルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)、窒化ホウ素、メタ珪酸マグネシウム(ステアタイト)が挙げられる。無機フィラーは、その表面の少なくとも一部が表面処理されていてもよい。
Fポリマー以外の樹脂又は無機フィラーを含むFパウダーは、Fポリマーをコアとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機フィラーをシェルに有するコア-シェル構造を有するか、Fポリマーをシェルとし、Fポリマー以外の樹脂又は無機フィラーをコアに有するコア-シェル構造を有していてもよい。かかるFパウダーは、例えば、Fポリマーのパウダーと、Fポリマー以外の樹脂のパウダー又は無機フィラーとを合着(衝突、凝集等)させて得られる。
本分散液におけるFパウダーの含有量は、本分散液の全体質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。Fパウダーの含有量は、本分散液の全体質量に対して80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
本界面活性剤は、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、酸価が5~200mgKOH/gの化合物である。本界面活性剤は、ポリマー状であってもよく、非ポリマー状であってもよい。
本界面活性剤は、本分散液中に溶解しているのが好ましい。
本界面活性剤の酸価は、10mgKOH/g以上が好ましい。また、本界面活性剤の酸価は、110mgKOH/g以下が好ましく、10がmgKOH/g以下がより好ましい。
本界面活性剤は、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、2つ以上の酸性基又はそのアニオン性基を有する。
酸性基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、フェノール性水酸基及びカルボン酸無水物基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシレート基、スルホネート基及びホスホネート基が好ましく、カルボキシレート基がより好ましい。
本界面活性剤は、酸性基又はそのアニオン性基を1種有してもよく、2種以上有していてもよい。
本界面活性剤は、カルボキシ基又はカルボキシレート基を2つ以上有する、多塩基カルボン酸であるのが好ましい。
アニオン性基のカウンターカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、第1~4級アンモニウムカチオンが挙げられる。本界面活性剤は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩であるのが好ましく、ナトリウム塩であるのがより好ましい。
本界面活性剤は、多塩基有機酸のエステル又はアミドであるのが好ましく、多塩基カルボン酸のエステル又はアミドであるのが好ましく、多塩基カルボン酸のエステルであるのがより好ましい。
これらの場合、本界面活性剤が分散液中で安定したネットワーク構造を形成して、Fパウダーを安定化しやすく、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
本界面活性剤は、カチオン性親水基として第4級アンモニウム構造又はアミンオキシド構造を有する、第4級アンモニウム塩又はアミンオキシド塩であってもよい。この場合、本界面活性剤は、カチオン性界面活性剤として作用してFパウダーを安定化し、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
本界面活性剤は、多塩基カルボン酸、その誘導体又はその塩であり、かつ、第4級アンモニウム塩又はアミンオキシド塩であるのが好ましい。
本界面活性剤の好ましい第1の態様として、主鎖としてエチレン性不飽和単量体を重合した炭素鎖を有するポリマー(以下、「本界面活性剤1」とも記す。)が挙げられる。
本界面活性剤1の重量平均分子量は、5000~50000が好ましく、5000~30000がより好ましい。この場合、本界面活性剤がFパウダーの表面を高度に覆いやすく、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
本界面活性剤1は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
本界面活性剤1は、芳香族環を有するエチレン性不飽和単量体に基づく単位を有するのが好ましい。
芳香族環を有するエチレン性不飽和単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン等のスチレン類、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート等の芳香環を有する(メタ)アクリレート類が挙げられ、スチレンが好ましい。
本界面活性剤1は、芳香族環を有するエチレン性不飽和単量体に基づく単位を5~40モル%有するのが好ましい。この場合、本界面活性剤1がFパウダーの表面へ付着しやすくなり分散液の分散性がより向上しやすい。
本界面活性剤1は、不飽和脂肪酸に基づく単位又は不飽和脂肪酸の無水物に基づく単位を有するのが好ましく、不飽和脂肪酸に基づく単位を有するのがより好ましい。この場合、本界面活性剤1が分散液中で安定したネットワーク構造を形成して、Fパウダーを安定化しやすく、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
不飽和脂肪酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸又はそれらのアルキルモノエステル、アルケニルモノエステル、アルキルモノアミド又はアルケニルモノアミド、及び、コハク酸β-(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸が挙げられる。
不飽和脂肪酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸が挙げられる。
本界面活性剤1は、ポリオキシエチレン構造を有するのが好ましく、ポリオキシエチレン構造を側鎖に有するのがより好ましい。ポリオキシエチレン構造は、本界面活性剤1にポリオキシエチレン構造を有するエチレン性不飽和単量体を共重合して導入してもよく、予め重合した主鎖に対してポリオキシエチレン構造を有する化合物を反応させて導入してもよい。
ポリオキシエチレン構造を有するエチレン性不飽和単量体としては、ポリエチレングリコール又はアルコキシポリエチレングリコールと、上述の不飽和脂肪酸とのエステルが挙げられ、具体的には、アルコキシポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレンオキシドマレイン酸モノエステル、アルコキシポリエチレンオキシドマレイン酸ジエステル、ポリエチレンオキシドマレイン酸モノエステル、ポリエチレンオキシドマレイン酸ジエステルが挙げられる。
ポリオキシエチレン構造におけるオキシエチレン基の重合度(オキシエチレン基の繰り返し単位数)は、8~50が好ましい。
本界面活性剤1に占めるポリオキシエチレン構造の含有量は、20~60モル%であるのが好ましい。この場合、本界面活性剤の水との親和性が向上しやすく、本界面活性剤がFパウダーの分散安定性を向上させやすい。
本界面活性剤1は、アクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマー、スチレンとアクリル酸とのコポリマー、スチレンとメタクリル酸とのコポリマー、スチレンとメタクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマー、スチレンとα-メチルスチレン-アクリル酸とのコポリマー、スチレンとα-メチルスチレンとアクリル酸とアクリル酸エステルとのコポリマー、スチレンとマレイン酸とのコポリマー、スチレンと無水マレイン酸とのコポリマー、ビニルナフタレンとアクリル酸とのコポリマー、これらのコポリマーから誘導される塩であるのが好ましく、スチレンとマレイン酸とのコポリマーのモノアルコキシポリエチレンオキシドエステル又はその塩であるのが好ましい。
本界面活性剤の好ましい第2の態様としては、式:(HOOC-)-R-(-COO-[-R-COO-]-R4-mで表される化合物、及びかかる化合物のカルボキシ基を変性した化合物(以下、まとめて「本界面活性剤2」とも記す。)が挙げられる。
式中のRは、テトラカルボン酸残基、Rは、モノアルコール残基、Rは、ラクトン残基、mは、2または3、nは、1~50の整数を表す。
変性とは、カルボキシ基と反応可能な官能基を有する化合物を、カルボキシ基と反応させることを意味する。
かかる本界面活性剤2は、例えば、モノアルコールを開始剤として、ラクトンを開環重合して片末端に水酸基を有するポリエステルを合成し、さらに、このポリエステルとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られる。
テトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸が挙げられ、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましく、芳香族環を2つ以上有するテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、プロピレングリコールジ無水トリメリット酸エステル、9,9-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二酸無水物が挙げられる。
モノアルコールは、水酸基を1つ有する化合物であればよく、脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、エチレン性不飽和二重結合を有するモノアルコールが好ましい。
モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、イソペンタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、ベンジルアルコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、アルコキシポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレートが挙げられる。
ラクトンとしては、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、δ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、アルキル置換されたε-カプロラクトンが挙げられる。ラクトンは、1種を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
カルボキシ基と反応可能な官能基を有する化合物としては、2-エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。
本界面活性剤2の具体例としては、「DISPERBYK-102」、「DISPERBYK-111」、「DISPERBYK-170」、「DISPERBYK-190」、「DISPERBYK-2096」、「DISPERBYK-P104」、「DISPERBYK-P104S」、「DISPERBYK-P105」、「DISPERBYK-220S」(以上、ビックケミー社製)、「TEGO Dispers630」(エボニックデグサジャパン社製)、「ソルスパーズ3000」、「ソルスパーズ21000」、「ソルスパーズ36600」、「ソルスパーズ41000」、「ソルスパーズ55000」(以上、ルーブリゾール社製)、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」、「アジスパーPB823」、「アジスパーPB824」、「アジスパーPB827」(以上、味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
本分散液における本界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。本界面活性剤の含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
本分散液における水の含有量は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。水の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
かかる範囲において、本分散液の分散安定性等の液物性がより向上しやすい。
本分散液は、分散媒として、水以外の水溶性分散媒を、さらに含んでいてもよい。
かかる水溶性分散媒としては、大気圧下、極性に分類される25℃にて液体の水溶性化合物が好ましく、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-メチル-2-ピロリドンが挙げられる。
本分散液は、本分散液から形成される成形物の接着性、電気特性及び低線膨張性を向上させる観点から、Fポリマーとは異なるポリマー又はその前駆体をさらに含んでいてもよい。異なるポリマーは、熱硬化性であっても熱可塑性であってもよく、変性されていてもよい。また、異なるポリマーは、本分散液中に溶解していてもよく、溶解せず分散していてもよい。
異なるポリマーとしては、アクリル樹脂、フェノール樹脂、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド、スチレンエラストマーのような芳香族エラストマー、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、Fポリマー以外のフッ素ポリマー等が挙げられる。
本分散液が異なるポリマーをさらに含む場合、その含有量は、本分散液全体の質量に対して40質量%以下が好ましい。
異なるポリマーの好適な態様としては、芳香族ポリマーが挙げられる。芳香族ポリマーは、ポリフェニレンエーテル又は芳香族エラストマー(スチレンエラストマー等)であるのが好ましい。この場合、本分散液から形成される成形物の接着性と低線膨張性とが一層向上するだけでなく、本分散液の液物性(粘度、チキソ比等)のバランスがとれるため、その取扱い性が向上しやすい。
ここで、スチレンエラストマーとしては、スチレンと共役ジエン又は(メタ)アクリル酸エステルとのコポリマー(スチレン-ブタジエンゴム、スチレン系コア・シェル型コポリマー、スチレン系ブロックコポリマー等)が挙げられ、ゴムとプラスチックの両方の性質を備え、加熱により可塑化して柔軟性を示すスチレンエラストマーが好ましい。
本分散液は、さらに無機フィラーを含んでいてもよい。この場合、本分散液から形成される成形物が、電気特性と低線膨張性とに優れやすい。また、本分散液は、無機フィラーを含んでいても、上述した作用機構により、分散安定性等の液物性に優れており、それからFポリマーに基づく物性に優れた成形物が得られやすい。そのため、無機フィラーを含む本分散液からは、Fポリマー及び無機フィラーのそれぞれの物性を高度に具備した成形物を得やすい。
無機フィラーは、窒化物フィラー又は無機酸化物フィラーが好ましく、窒化ホウ素フィラー、ベリリアフィラー(ベリリウムの酸化物のフィラー)、ケイ酸塩フィラー(シリカフィラー、ウォラストナイトフィラー、タルクフィラー)、又は金属酸化物(酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等)フィラーがより好ましく、シリカフィラーがさらに好ましい。
無機フィラーは、その表面の少なくとも一部が、シランカップリング剤(3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)で表面処理されているのが好ましい。
無機フィラーのD50は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。D50は、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。
無機フィラーの形状は、粒状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよい。無機フィラーの具体的な形状としては、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状が挙げられる。
無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本分散液が無機フィラーをさらに含む場合、その量は、本分散液全体の質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
無機フィラーの好適な具体例としては、シリカフィラー(アドマテックス社製の「アドマファイン(登録商標)」シリーズ等)、ジカプリン酸プロピレングリコール等のエステルで表面処理された酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製の「FINEX(登録商標)」シリーズ等)、球状溶融シリカ(デンカ社製の「SFP(登録商標)」シリーズ等)、多価アルコール及び無機物で被覆処理された酸化チタン(石原産業社製の「タイペーク(登録商標)」シリーズ等)、アルキルシランで表面処理されたルチル型酸化チタン(テイカ社製の「JMT(登録商標)」シリーズ等)、中空状シリカフィラー(太平洋セメント社製の「E-SPHERES」シリーズ、日鉄鉱業社製の「シリナックス」シリーズ、エマーソン・アンド・カミング社製「エココスフイヤー」シリーズ等)、タルクフィラー(日本タルク社製の「SG」シリーズ等)、ステアタイトフィラー(日本タルク社製の「BST」シリーズ等)、窒化ホウ素フィラー(昭和電工社製の「UHP」シリーズ、デンカ社製の「デンカボロンナイトライド」シリーズ(「GP」、「HGP」グレード)等)が挙げられる。
本分散液は、さらに異種のノニオン性界面活性剤を含むのが好ましい。異種のノニオン性界面活性剤は、本界面活性剤とは異なるノニオン性界面活性剤である。この場合、本分散液が長期保管性した際の分散安定性が一層向上しやすい。
本分散液が異種のノニオン性界面活性剤を含む場合、本分散液における異種のノニオン性界面活性剤の含有量は、0.1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。また、この場合、本分散液における本界面活性剤の含有量に対する異種の界面活性剤の含有量の比は、0.1~10が好ましい。
異種のノニオン性界面活性剤としては、エーテル型界面活性剤、エステルエーテル型界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が好ましく、グリコールモノアルキルエーテル、グリコールモノアリールエーテル、グリコールモノアルキルエーテルアセテート、グリコールモノアリールエーテルアセテート及びポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンがより好ましく、グリコールモノアルキルエーテル及びポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンがさらに好ましい。
グリコールモノアルキルエーテルは、ポリオキシエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。ポリオキシエチレンエチレングリコールモノアルキルエーテルに含まれる、オキシエチレン単位(-OCHCH-)の数は、1~10が好ましく、モノアルキルエーテル基は高度に分岐しているのが好ましい。
グリコールモノアルキルエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコールデシルエーテル、ポリエチレングリコールウンデシルエーテル、ポリエチレングリコールドデシルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールテトラデシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートが挙げられる。
グリコールモノアルキルエーテルの好適な具体例としては、「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製。「Tergitol TMN-100X」等。)、「Lutensol T08」、「Lutensol XL70」、「Lutensol XL80」、「Lutensol XL90」、「Lutensol XP80」、「Lutensol M5」(以上、BASF社製)、「ニューコール 1308FA」、「ニューコール 1310」(以上、日本乳化剤社製)、「レオコール TDN-90-80」、「レオコール SC-90」(以上、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。
ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンは、親水基としてポリオキシアルキレン構造を、疎水基としてポリジメチルシロキサン構造を有する、オルガノポリシロキサンであり、線状ポリマーであるのが好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンの平均分子量は、100~3000が好ましく、500~2000がより好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンは、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、側鎖にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン、又は、主鎖にジメチルシロキサンの単位を含み、主鎖末端にオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。
前者のポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンは、式:-(R)(R)SiO2/2-で表されるジオルガノシロキサン単位を含むのが好ましい。
式中のRは、アルキル基を示し、メチル基であるのが好ましい。
式中のRは、ポリオキシアルキレン基を有する基を示し、式:-X-O-(Y-Zで表される基(式中、Xはアルキレン基を、Yはポリオキシアルキレン基を、Zは水素原子、アルキル基又はアシル基を、nは2~100の整数を、それぞれ示す。)であるのが好ましい。
としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基が挙げられる。
としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が挙げられる。
におけるアルキル基又はアシル基としては、メチル基、アセチル基が挙げられる。
また、ポリオキシアルキレン変性ジメチルシロキサンに含まれるオキシアルキレン基は、1種のオキシアルキレン基のみからなっていてもよく、2種以上のオキシアルキレン基からなっていてもよい。後者の場合、異種のオキシアルキレン基は、ランダム状に連結していてもよく、ブロック状に連結してもよい。
ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンにおける、オキシアルキレン基の重合度(オキシアルキレン基の繰り返し単位数)は、2以上が好ましい。重合度は、100以下が好ましく、50以下がより好ましく、20以下がさらに好ましい。
ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンにおける、ジメチルシロキサンの重合度(ジメチルシロキサン単位の繰り返し単位数)は、2~100が好ましく、2~25がより好ましい。この場合、本分散液が分散安定性とハンドリング性と長期保管性とに優れやすい。
ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサンの具体例としては、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製)、「KF-6011」、「KF-6043」が挙げられる。
本分散液は、pHを調整するために、さらにpH調整剤を含んでもよい。pH調整剤としては、アミン、アンモニア、クエン酸が挙げられる。
本分散液は、pHを安定させるために、さらにpH緩衝剤を含んでもよい。pH緩衝剤としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、エチレンジアミン四酢酸、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、酢酸アンモニウムが挙げられる。
本分散液は、上記成分以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、シランカップリング剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、表面処理剤、難燃剤、防腐剤、防カビ剤、各種フィラー等の他の成分をさらに含んでいてもよい。
本分散液の粘度は、10mPa・s以上が好ましく、30mPa・s以上がより好ましく、50mPa・s以上がさらに好ましい。本分散液の粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましく、800mPa・s以下がさらに好ましい。この場合、本分散液が分散安定性等の液物性と塗工性に優れやすい。
本分散液のチキソ比は、1.0以上が好ましい。本分散液のチキソ比は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。この場合、本分散液は、塗工性及び均質性に優れ、より緻密な成形物(ポリマー層等)を形成しやすい。
本分散液のpHは、7超であり、8~10であるのがより好ましい。この場合、上述の作用機構により、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
本分散液の分散層率は、60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましい。本分散液は、分散安定性に優れるため、分散層率がかかる範囲の値をとりやすい。
ここで、分散層率とは、本分散液(18mL)をスクリュー管(内容積:30mL)に入れ、25℃にて14日静置した際、静置前後の、スクリュー管中の分散液全体の高さと沈降層(分散層)の高さとから、以下の式により算出される値である。なお、静置後に沈降層が確認されず、状態に変化がない場合には、分散液全体の高さに変化がないとして、分散層率は100%とする。
分散層率(%)=(沈降層の高さ)/(分散液全体の高さ)×100
本分散液は、上述した作用機構により、分散安定性、特に長期貯蔵安定性に優れている。本分散液においては、25℃で30日間保管した後のpH変動幅(絶対値)は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。
また、本分散液においては、25℃で30日間保管した後の分散液の粘度は、500mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましい。なお、上記保管後において、本分散液に沈降が認められる場合は、再分散させた後に測定した粘度を意味する。
本分散液においては、25℃で30日間保管した後のチキソ比の変動幅(絶対値)は、3以下が好ましく、1未満がより好ましい。
本分散液は、Fパウダーと、本界面活性剤と、水とを混合し、必要に応じてpHを調整して製造できる。混合方法としては、水にFパウダーと本界面活性剤とを一括添加して混合する方法;Fパウダーと、本界面活性剤を含む水溶液とを混合する方法;Fパウダーと水とを、本界面活性剤と水とをそれぞれ予め混合し、得られた2種の混合物をさらに混合する方法;等が挙げられ、Fパウダーと、本界面活性剤及を含む水溶液とを混合する方法が好ましい。この場合、Fパウダーの表面を本界面活性剤が良好に覆いやすく、本分散液が分散安定性等の液物性に優れやすい。
本分散液を調製する際の混合方法としては、バッチ式、連続式のいずれでもよい。
また、混合に使用する装置としては、プロペラブレード、タービンブレード、パドルブレード、シェル状ブレード等のブレード(撹拌翼)を一軸あるいは多軸で備える撹拌装置や、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサーによる撹拌;ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル(ガラスビーズ又は酸化ジルコニウムビーズ等の粉砕媒体を用いたビーズミル)、ディスパーマット、SCミル、スパイクミル又はアジテーターミル等のメディアを使用する分散機による混合;マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー等の高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー分散機等の、メディアを使用しない分散機を用いた混合が挙げられる。
中でも、混合に使用する装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー又はプラネタリーミキサーが好ましく、プラネタリーミキサーがより好ましい。
プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を有し、撹拌槽中の被混合物を撹拌混合して混練する構造を有している。そのため、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少なく、羽根の負荷を軽減して、高度に内容物を混合できる。
本分散液が、無機フィラー、異なるポリマー、異種のノニオン性界面活性剤、他の液状成分等の任意の添加成分をさらに含む場合は、任意の段階で混合できる。混合方法及び混合装置としては、上記と同様の混合方法及び混合装置が挙げられる。
本分散液は、プリント配線板の絶縁層、熱インターフェース材、パワーモジュール用基板、モーター等の動力装置で使用されるコイルに含浸し、乾燥して、熱伝導性耐熱被覆層を形成する用途や、車載エンジンにおける、セラミックス部品や金属部品同士を接着する用途、熱交換器や、それを構成するフィン又は管に耐腐蝕性を付与する用途、ガラス容器内外をコーティングする用途にも使用できる。特に耐衝撃性を付与する為のコーティングに好適である。ガラス容器としては、バイアル瓶、注射筒(シリンジ)、針付シリンジ及びカートリッジタイプシリンジ、アンプルが挙げられる。
また、本分散液は、リチウムイオン電池等の二次電池、リチウム電池等の一次電池、ラジカル電池、太陽電池(特に色素増感型太陽電池)、燃料電池、リチウムイオンキャパシタ、ハイブリッドキャパシタ、キャパシタ(電気二重層キャパシタ等)、各種コンデンサ(アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ等)、エレクトロクロミック素子、電気化学スイッチング素子、各種電気化学センサー等の電極を備える電気化学デバイスに使用される、電極のバインダー材料、セパレーターのコーティング材料および電極(正極、負極)のコーティング材料として使用できる。
また、さらに導電性フィラーを含む本分散液は、導電性が要求される用途、例えば、プリンテッド・エレクトロニクスの分野においても好適に使用できる。具体的には、プリント回路板、センサー電極、ディスプレイ、バックプレーン、RFID(無線周波数識別)、太陽光発電、照明、使い捨て電子機器、自動車ヒータ、電磁波(EMI)シールド、メンブレンスイッチ等における通電素子の製造において使用できる。
また、本分散液から得られる焼成物は、接着剤として、半導体素子、高密度基板やモジュール部品等において、基板上に実装されるICチップや抵抗、コンデンサ等の電子部品の接着や、回路基板と放熱板の接着、LEDチップの基板への接着に使用できる。さらに、上記焼成物は、電子部品の実装工程における回路配線と電子部品との間における導電性接合材(ハンダ接合の代替としての用途)としても使用できる。また、車載エンジンにおける、セラミックス部品や金属部品同士の接着剤にも使用できる。また、上記焼成物は、国際公開2016/017801号の段落番号[0149]に記載される用途にも使用できる。
本分散液は、分散安定性及び長期保存安定性に優れており、Fポリマーに基づく物性に優れた成形物を形成できる。また、基材に対して強固な接着性を示す成形物を形成できる。
本発明の積層体の製造方法は、本分散液を基材の表面に付与し、加熱して、Fポリマーを含むポリマー層(以下、「F層」とも記す。)を形成して、基材で構成される基材層とF層とを有する積層体を得る方法である。
本分散液を基材の表面に付与して液状被膜を形成し、この液状被膜を加熱して分散媒を除去して乾燥被膜を形成し、さらに乾燥被膜を加熱してFポリマーを焼成すれば、F層を基材で構成される基材層の表面に有する積層体を得られる。
基材としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、耐熱性樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド
、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムであり、単層フィルムであっても多層フィルムであってもよい)、プリプレグ(繊維強化樹脂基板の前駆体)、ガラスが挙げられる。
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられ、さらに、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
本分散液は、pHが7超であるため、耐酸性の低い基材へのコーティングに好適に使用できる。耐酸性の低い基材としては、酸性で加水分解する表面処理剤で表面処理された基材が挙げられる。
本分散液を基材の表面に付与する方法としては、基材の表面に本分散液からなる安定した液状被膜(ウェット膜)が形成される方法であればよく、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、塗布法が好ましい。塗布法を用いれば、簡単な設備で効率よく基材の表面に液状被膜を形成できる。
塗布法としては、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法が挙げられる。
液状被膜を乾燥する際は、液状被膜を分散媒(水)が揮発する温度で加熱し、乾燥被膜を基材の表面に形成する。かかる乾燥における加熱の温度は、100℃~200℃が好ましい。なお、分散媒を除去する工程で空気を吹き付けてもよい。
乾燥時に、分散媒は、必ずしも完全に揮発させる必要はなく、保持後の層形状が安定し、自立膜を維持できる程度まで揮発させればよい。
Fポリマーの焼成の際は、Fポリマーの溶融温度以上の温度で乾燥被膜を加熱するのが好ましい。かかる加熱の温度は380℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましい。
それぞれの加熱の方法としては、オーブンを用いる方法、通風乾燥炉を用いる方法、赤外線等の熱線を照射する方法が挙げられる。
加熱は、常圧下及び減圧下のいずれの状態で行ってもよい。
また、加熱雰囲気は、酸化性ガス雰囲気(酸素ガス等)、還元性ガス雰囲気(水素ガス等)、不活性ガス雰囲気(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)のいずれであってもよい。
加熱時間は、0.1~30分間が好ましく、0.5~20分間がより好ましい。
以上のような条件で加熱すれば、高い生産性を維持しつつ、F層を好適に形成できる。
F層の厚さは、0.1~150μmが好ましい。具体的には、基材層が金属箔である場合、F層の厚さは、1~30μmが好ましい。基材層が耐熱性樹脂フィルムである場合、F層の厚さは1~150μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
F層と基材層との剥離強度は、10N/cm以上が好ましく、15N/cm以上がより好ましい。上記剥離強度は、100N/cm以下が好ましい。本分散液を用いれば、F層におけるFポリマーの物性を損なわずに、かかる本積層体を容易に形成できる。
本分散液は、基材の一方の表面にのみ付与してもよく、基材の両面に付与してもよい。前者では、上記基材で構成される基材層と、かかる基材層の片方の表面にF層を有する積層体が得られ、後者では、上記基材で構成される基材層と、かかる基材層の両方の表面にF層を有する積層体が得られる。後者の積層体は、より反りが発生しにくいため、その加工に際するハンドリング性に優れる。
かかる積層体の具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にF層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にF層を有する多層フィルムが挙げられる。これらの積層体は、電気特性等の諸物性に優れるのでプリント基板材料等として好適であり、フレキシブルプリント基板やリジッドプリント基板の製造に使用できる。
F層と基材との積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品、塗料、化粧品等として有用である。プリント基板においては、電子部品が高密度に実装されたプリント基板の温度上昇を防ぐため、従来のガラスエポキシ板に替わる新たなプリント基板材料としても使用できる。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、炭化水素・薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレードとして有用である。
より具体的には、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装等、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材や、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品として有用である。
本発明の含浸織布の製造方法は、本分散液を織布に含浸させ、加熱して、Fポリマーを含む含浸織布(以下、「本織布」とも記す。)を得る方法である。
本分散液を、織布に含浸させ、加熱により乾燥させれば、Fポリマーが織布に含浸された本織布が得られる。本織布は、織布がF層で被覆された被覆織布とも言える。
織布は、ガラス繊維織布、カーボン繊維織布、アラミド繊維織布又は金属繊維織布が好ましく、ガラス繊維織布又はカーボン繊維織布がより好ましい。織布は、F層との密着接着性を高める観点から、シランカップリング剤で処理されていてもよい。
本分散液は、pHが7超であるため、耐酸性の低い織布への含浸に好適に使用できる。耐酸性の低い織布としては、酸性にて加水分解する表面処理剤で表面処理された織布が挙げられる。
本織布におけるFポリマーの総含有量は、30~80質量%が好ましい。
本分散液を織布に含浸させる方法は、本分散液中に織布を浸漬する方法、本分散液を織布に塗布する方法が挙げられる。
織布の乾燥に際しては、Fポリマーを焼成させてもよい。Fポリマーを焼成させる方法は、織布を300~400℃の雰囲気にある通風乾燥炉に通す方法が挙げられる。
なお、織布の乾燥とFポリマーの焼成とは、一段階で実施してもよい。
本織布は、F層と織布との密着性(接着性)が高い、表面の平滑性が高い、歪が少ない等の特性に優れている。かかる本織布と金属箔とを熱圧着させれば、剥離強度が高く、反りにくい金属張積層体が得られ、プリント基板材料として好適に使用できる。
また、本織布の製造において、本分散液を含浸させた織布を、基材の表面に付与し、加熱させ乾燥させることにより、Fポリマーと織布とを含む含浸織布層を形成して、基材と含浸織布層とが、この順に積層された積層体を製造してもよい。
その態様も、特に限定されず、槽、配管、容器等の部材の内壁面の一部又は全部に本分散液を含浸させた織布を塗布し、上記部材を回転させながら加熱すれば、部材の内壁面の一部又は全部に含浸織布層を形成できる。この製造方法は、槽、配管、容器等の部材の内壁面のライニング方法としても有用である。
本分散液は、上述した作用機構のとおり、分散安定性等の液物性に優れており、多孔質又は繊維状の材料中に、高度に含浸できる。
かかる多孔質又は繊維状の材料としては、上述した織布以外の材料、具体的には、板状、柱状又は繊維状の材料も挙げられる。
これらの材料は、硬化性樹脂、シランカップリング剤等で予め前処理されていてもよく、無機フィラー等がさらに充填されていてもよい。また、これらの材料は、撚り合わせて、糸、ケーブル、ワイヤーを形成していてもよい。撚り合わせに際しては、ポリエチレン等の他のポリマーからなる介在層を配置してもよい。
かかる材料に本分散液を含浸させて成形物を製造する態様としては、硬化性樹脂又はその硬化物が担持された繊維状の材料に本分散液を含浸させる態様が挙げられる。
繊維状の材料としては、炭素繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維等の高強度かつ低伸度の繊維が挙げられる。
硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。
かかる態様の具体例としては、熱硬化性樹脂が担持された炭素繊維を撚り合わせたケーブルに本分散液を含浸させ、さらに加熱してFポリマーを焼成させて形成される複合ケーブルが挙げられる。かかる複合ケーブルは、大型構造物用、グラウンドアンカー用、石油掘削用、クレーン用、索道用、エレベーター用、農林水産用、玉掛索用のケーブルとして有用である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[Fパウダー]
Fパウダー1:TFE単位、NAH単位及びPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖の炭素数1×10個あたり1000個有するFポリマー1(溶融温度:300℃)からなるパウダー(D50:2.1μm)
Fパウダー2:TFE単位及びPPVE単位を、この順に97.5モル%、2.5モル%含み、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有さないFポリマー2(溶融温度305℃)からなるパウダー(D50:1.8μm)
[多塩基有機酸、その誘導体又はその塩]
化合物1:スチレンとマレイン酸とのコポリマーのモノアルコキシポリエチレンオキシドエステル(酸価:10mgKOH/g;ビックケミー社製、「DISPERBYK-190」)
化合物2:多塩基カルボン酸のエステル(酸価:40mgKOH/g;ビックケミー社製、「DISPERBYK-2096」)
[ノニオン性界面活性剤]
ノニオン性界面活性剤1:主鎖にジメチルシロキサン単位を、側鎖にオキシエチレン基を有するポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン
ノニオン性界面活性剤2:ポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル
2.水性分散液の製造例
(例1)
ポットに、化合物1とノニオン性界面活性剤1とアンモニア水とを投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして組成物を得た。ポットに、組成物とFパウダー1を投入し、ジルコニアボールを投入した。その後、150rpmにて1時間、ポットを転がして、Fパウダー1(30質量部)、化合物1(4質量部)、ノニオン性界面活性剤1(4質量部)、及びアンモニア水(62質量部)を含む水性分散液1を得た。得られた水性分散液1の粘度は、50mPa・sであり、調製直後の水性分散液1のpHは、8.5であった。
(例2)
ノニオン性界面活性剤1に変えて、ノニオン性界面活性剤2を用いた以外は、例1と同様にして、Fパウダー1(30質量部)、化合物1(4質量部)、ノニオン性界面活性剤2(4質量部)、及びアンモニア水(62質量部)を含む水性分散液2を得た。得られた水性分散液2の粘度は、70mPa・sであり、調製直後の水性分散液2のpHは、8.5であった。
(例3)
化合物1に変えて、化合物2を用いた以外は、例1と同様にして、Fパウダー1(30質量部)、化合物2(4質量部)、ノニオン性界面活性剤1(4質量部)、及びアンモニア水(62質量部)を含む水性分散液3を得た。得られた水性分散液3の粘度は、60mPa・sであり、調製直後の水性分散液3のpHは、8.5であった。
(例4)
Fパウダー1に変えて、Fパウダー2を用いた以外は、例1と同様にして、Fパウダー2(30質量部)、化合物1(4質量部)、ノニオン性界面活性剤1(4質量部)、及びアンモニア水(62質量部)を含む水性分散液4を得た。得られた水性分散液4の粘度は、90mPa・sであり、調製直後の水性分散液4のpHは、8.5であった。
(例5)
アンモニア水に変えて、水を用いた以外は、例1と同様にして、Fパウダー1(30質量部)、化合物1(4質量部)、ノニオン性界面活性剤1(4質量部)、及び水(62質量部)を含む水性分散液5を得た。得られた水性分散液の粘度は、100mPa・sであり、調製直後の水性分散液5のpHは、6.2であった。
3.水性分散液の評価例
それぞれの水性分散液を容器中に25℃にて24時間保管保存後、水性分散液をマイクロフィルターで濾過した際の濾物を目視にて確認し、下記の基準に従って分散安定性を評価した。その結果、水性分散液1~5の評価は、この順に、「〇」、「〇」、「〇」、「×」、「×」であった。
[評価基準]
〇:濾物が視認されない。
×:濾物が視認されパウダーが部分凝集している。
4.ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の水分散液との混合評価例
それぞれの水性分散液と、市販のPTFEの水分散液とを混合した際の混合性を、下記の基準に従って評価した。その結果、水性分散液1~5の評価は、この順に、「〇」、「〇」、「〇」、「△」、「×」であった。
[評価基準]
〇:剪断撹拌により均一な分散液を形成した。
△:剪断撹拌により分散液を形成するが容器の壁面に凝集物の付着が認められた。
×:剪断撹拌により分散液を形成するが凝集物の沈降が認められた。
5.積層体の評価例
それぞれの水性分散液を用いて、以下の手順にて、積層体を製造した。
長尺の銅箔(厚さ:18μm)の表面に、バーコーターを用いて水性分散液を塗布して、ウェット膜を形成した。次いで、このウェット膜が形成された金属箔を、120℃にて5分間、乾燥炉に通し、加熱により乾燥させて、ドライ膜を得た。その後、窒素オーブン中で、ドライ膜を380℃にて3分間、加熱した。これにより、金属箔と、その表面に成形物としてのポリマー層(厚さ:20μm)とを有する積層体を製造した。
それぞれの積層体に対してポリマー層側から光を照射し、ポリマー層を斜め上方から目視にて確認して、以下の基準に従って表面平滑性を評価した。その結果、水性分散液1から得られた積層体、水性分散液2から得られた積層体、水性分散液3から得られた積層体、水性分散液4から得られた積層体、水性分散液5から得られた積層体の評価は、この順に、「〇」、「〇」、「〇」、「△」、「×」であった。
[評価基準]
〇:ポリマー層の表面全体が平滑である。
△:ポリマー層の表面の一部にブツ模様が確認される。
×:ポリマー層の表面全体にブツ模様が確認される。
本発明の水性分散液は、分散安定性、ハンドリング性、ブレンド性及び長期保管性にも優れ、Fポリマーに基づく物性を具備した成形物(積層体、含浸織布等)の製造に使用できる。本発明の積層体と含浸織布は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、塗料、化粧品等として有用であり、具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ダイス、便器、コンテナ被覆材として有用である。

Claims (15)

  1. テトラフルオロエチレン系ポリマーのパウダーと、多塩基有機酸、その誘導体又はその塩であり、酸価が5~200mgKOH/gである界面活性剤と、水とを含み、pHが7超である、水性分散液。
  2. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、カルボニル基含有基又は水酸基含有基を有する熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1に記載の水性分散液。
  3. 前記多塩基有機酸が、多塩基カルボン酸である、請求項1又は2に記載の水性分散液。
  4. 前記多塩基有機酸が、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸の無水物に基づく単位を含むポリマーである、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性分散液。
  5. 前記多塩基有機酸の誘導体が、多塩基カルボン酸のエステル又はアミドである、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性分散液。
  6. 前記多塩基有機酸が、多塩基カルボン酸、その誘導体又はその塩であり、第4級アンモニウム塩又はアミンオキサイド塩である、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性分散液。
  7. 前記パウダーの含有量が、20質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の水性分散液。
  8. 前記化合物の含有量が、0.1~10質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の水性分散液。
  9. さらに、異種のノニオン性界面活性剤を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の水性分散液。
  10. 前記異種のノニオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン又はグリコールモノアルキルエーテルである、請求項9に記載の水性分散液。
  11. さらに、無機フィラー又は前記テトラフルオロエチレン系ポリマーとは異なるポリマー若しくはその前駆体を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の水性分散液。
  12. pHが、8~12である、請求項1~11のいずれか1項に記載の水性分散液。
  13. 請求項1~12のいずれか1項に記載の水性分散液を製造する方法であって、前記パウダーと、前記界面活性剤を含む水溶液とを混合する、水性分散液の製造方法。
  14. 請求項1~12のいずれか1項に記載の水性分散液を基材の表面に付与し、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成して、前記基材で構成される基材層と前記ポリマー層とを有する積層体を得る、積層体の製造方法。
  15. 請求項1~12のいずれか1項に記載の水性分散液を織布に含浸させ、加熱して、前記テトラフルオロエチレン系ポリマーを含む含浸織布を得る、含浸織布の製造方法。

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