JP2023127849A - テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層付基材の製造方法 - Google Patents

テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層付基材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】テトラフルオロエチレン系ポリマー及び含有する無機粒子の物性を高度に発現し、低線膨張性、電気特性及び熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れるポリマー層付基材の製造方法を提供すること。【解決手段】基材表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層付基材の製造方法であって、前記基材表面へ、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物の塗工を複数回行い、かつ最初に塗工される前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が、2回目以降に塗工される、最初に塗工される前記液状組成物とは異なる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度よりも低い、ポリマー層付基材の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、テトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層付基材の製造方法に関する。
近年、携帯電話等の移動体通信機器における高速化、高周波化に対応するため、通信機器のプリント基板の材料には高熱伝導、低線膨張係数、低誘電率かつ低誘電正接である材料が求められ、低誘電率かつ低誘電正接であるテトラフルオロエチレン系ポリマーが注目されている。
より物性に優れた材料を得るべく、テトラフルオロエチレン系ポリマーと他の成分との組成物が検討されている。特許文献1には、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子と無機フィラーと含む誘電体層と、銅箔とを備え、誘電体層の銅箔側の表層領域におけるフッ素原子数に対する無機原子の原子数を特定比とした高周波プリント配線用基材が提案されている。
国際公開第2019/031071号
テトラフルオロエチレン系ポリマーは表面張力が低く、他の成分との親和性が低いため、他の成分が無機粒子である組成物から形成される成形物においては、各成分の物性と、基板材料との密着性とをバランスさせて発現させ難い。
本発明者らは、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を特定量含む、複数の液状組成物を、基材表面に複数回塗工して乾燥すると、基材との密着性(剥離強度)に優れる薄いポリマー層を有するポリマー層付基材を容易に製造でき、またかかるポリマー層は線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性により優れることを見出し、本発明に至った。
本発明の目的は、テトラフルオロエチレン系ポリマー、及び含有する無機粒子の物性を高度に発現し、低線膨張性、電気特性及び熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れるポリマー層付基材を形成できる製造方法、及び該ポリマー層付基材の提供である。
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 基材表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層付基材の製造方法であって、前記基材表面へ、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物の塗工を複数回行い、かつ最初に塗工される前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が、2回目以降に塗工される、最初に塗工される前記液状組成物とは異なる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度よりも低い、ポリマー層付基材の製造方法。
[2] 前記最初に塗工される前記液状組成物の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が1質量%以上20質量%未満であり、かつ、2回目以降に塗工される前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が20質量%以上50質量%以下である、[1]の製造方法。
[3] 前記最初に塗工される前記液状組成物のチキソ比が、2回目以降に塗工される前記液状組成物のチキソ比よりも低い、[1]又は[2]の製造方法。
[4] 前記最初に塗工される前記液状組成物のチキソ比が1.0以上1.5未満であり、かつ、2回目以降に塗工される前記液状組成物のチキソ比が1.5以上4.0以下である、[1]~[3]のいずれかの製造方法。
[5] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子である、[1]~[4]のいずれかの製造方法。
[6] 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、[1]~[5]のいずれかの製造方法。
[7] 前記2回目以降に塗工される前記液状組成物が、無機粒子をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
[8] 前記最初に塗工される前記液状組成物、及び、2回目以降に塗工される前記液状組成物がそれぞれ、非水系の液状組成物であり、かつその含水率が4質量%未満である、[1]~[7]のいずれかの製造方法。
[9] 前記基材表面へテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物の塗工を、前記塗工により形成される塗工層を乾燥した後に、前記乾燥後の塗工層の上面に前記液状組成物を塗工することによって複数回行い、最後に塗工して形成される塗工層を乾燥した後に焼成を行って前記ポリマー層を形成する、[1]~[8]のいずれかの製造方法。
[10] [1]~[9]のいずれかの製造方法により得られる、ポリマー層付基材。
[11] 前記ポリマー層の厚さが5μm以上50μm以下である、[10]のポリマー層付基材。
本発明によれば、テトラフルオロエチレン系ポリマー、及び含有する無機粒子の物性を高度に発現し、低線膨張性、電気特性及び熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れるポリマー層付基材を形成できる。
以下の用語は、以下の意味を有する。
「平均粒子径(D50)」は、レーザー回折・散乱法によって求められる、粒子の体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折・散乱法によって粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
粒子のD50は、粒子を水中に分散させ、レーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置(堀場製作所社製、LA-920測定器)を用いたレーザー回折・散乱法により分析して求められる。
「溶融温度」は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定したポリマーの融解ピークの最大値に対応する温度である。
「ガラス転移点(Tg)」は、動的粘弾性測定(DMA)法でポリマーを分析して測定される値である。
「粘度」は、B型粘度計を用いて、25℃で回転数が30rpmの条件下で組成物を測定して求められる。測定を3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
「チキソ比」とは、組成物の、回転数が30rpmの条件で測定される粘度ηを、回転数が60rpmの条件で測定される粘度ηで除して算出される値である。それぞれの粘度の測定は、3回繰り返し、3回分の測定値の平均値とする。
ポリマーにおける「単位」とは、モノマーの重合により形成された前記モノマーに基づく原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。以下、モノマーaに基づく単位を、単に「モノマーa単位」とも記す。
本発明の製造方法(以下、「本法」とも記す。)は、基材表面にテトラフルオロエチレン系ポリマー(以下、「Fポリマー」とも記す。)を含むポリマー層を形成する、ポリマー層付基材の製造方法であって、前記基材表面へ、Fポリマーの粒子(以下、「F粒子」とも記す。)を含む液状組成物(以下、「本組成物」とも記す。)の塗工を複数回行い、かつ最初に塗工される前記液状組成物(以下、「液状組成物1」とも記す。)中の前記F粒子の濃度が、2回目以降に塗工される、液状組成物1とは異なる、F粒子を含む液状組成物(以下、「液状組成物2」とも記す。)中の前記F粒子の濃度よりも低い、ポリマー層付基材の製造方法である。
本法によれば、Fポリマーの物性、また無機粒子を含有する場合は両者の物性を高度に具備し、低線膨張性、電気特性及び熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れるポリマー層付基材を形成しやすい。その理由は必ずしも明確ではないが、以下の様に考えられる。
F粒子を含む液状組成物から、基材表面にFポリマーを含むポリマー層を形成してポリマー層付基材を製造する場合、ポリマー層自体の物性は向上する反面、基材との剥離強度が低下しやすい傾向となる。これは、表面張力が低いFポリマー自体の基材との親和性が低いだけではなく、ポリマー層の形成におけるF粒子のパッキングが粗く、ポリマー層中のFポリマーと基材との接触面積が充分に確保されないためと推定される。そして、この傾向は、液状組成物に無機粒子が含まれる場合に顕著になる。これは、液状組成物から形成されるポリマー層の表面にも無機粒子が存在し露出するため、ポリマー層中のFポリマーと基材との接触面積がさらに減少するためと推定される。
本法では、Fポリマーを含むポリマー層の形成に際し、基材表面へF粒子を含む液状組成物の塗工を複数回行い、F粒子の濃度が低い液状組成物を基材表面にまず塗工する。かかる液状組成物から形成される層は、F粒子の緻密なパッキングが促され、均一な薄い層を形成しやすく、Fポリマーと基材との接触面積を大きくできる。そして2回目以降に、最初に塗工した液状組成物とは異なる、例えば、F粒子の濃度が高く無機粒子を含む液状組成物を塗工して複数の層を形成し、各層の形成毎にFポリマーの焼成を行うか、又は最後に塗工して形成される塗工層を乾燥した後にFポリマーの焼成を行ってポリマー層を形成する。
その結果、Fポリマーの物性、また無機粒子を含有する場合は両者の物性を高度に具備し、具体的には、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れたポリマー層付基材が得られたと考えられる。
本発明におけるFポリマーは、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」とも記す。)に基づく単位(以下、「TFE単位」とも記す。)を含むポリマーである。
Fポリマーは熱溶融性であってもよく、非熱溶融性であってもよい。ここで、熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在するポリマーを意味する。また非熱溶融性のポリマーとは、荷重49Nの条件下、溶融流れ速度が1~1000g/10分となる温度が存在しないポリマーを意味する。
熱溶融性であるFポリマーの溶融温度は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、260℃以上がさらに好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、325℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましい。前記Fポリマーの溶融温度は、180~320℃が好ましい。この場合、本組成物が加工性に優れやすく、また、本組成物から形成されるポリマー層が耐熱性に優れやすい。
Fポリマーのガラス転移点は、50℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。Fポリマーのガラス転移点は、150℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましい。
Fポリマーのフッ素含有量は、70質量%以上が好ましく、72~76質量%がより好ましい。かかるFポリマーは、特に表面張力が低く、基材との親和性が乏しいが、上述した作用機構により、本法によれば、Fポリマーの物性と密着性(剥離強度)に優れたポリマー層付基材が得られる。
なお、Fポリマーの表面張力は、16~26mN/mが好ましい。なお、Fポリマーの表面張力は、Fポリマーで作製された平板上に、JIS K 6768に規定されているぬれ張力試験用混合液(和光純薬社製)の液滴を載置して測定できる。
Fポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、TFE単位とエチレンに基づく単位とを含むポリマー(ETFE)、TFE単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー、TFE単位とエチレンに基づく単位とプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(EFEP)、TFE単位とペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)に基づく単位(PAVE単位)とを含むポリマー(PFA)、TFE単位とヘキサフルオロプロピレンに基づく単位とを含むポリマー(FEP)が好ましく、PFA及びFEPがより好ましく、PFAがさらに好ましい。これらのポリマーは、さらに他のコモノマーに基づく単位を含んでいてもよい。
PAVEは、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF及びCF=CFOCFCFCF(以下、「PPVE」とも記す。)が好ましく、PPVEがより好ましい。
Fポリマーは、酸素含有極性基を有するのが好ましく、水酸基含有基又はカルボニル基含有基を有するのがより好ましく、カルボニル基含有基を有するのがさらに好ましい。
この場合、F粒子が後述する無機粒子と相互作用しやすく、無機粒子を含有する本組成物(液状組成物2)が分散性に優れやすい。また、本組成物から、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性及び密着性(剥離強度)に優れたポリマー層を得やすい。
水酸基含有基は、アルコール性水酸基を含有する基が好ましく、-CFCHOH及び-C(CFOHがより好ましい。
カルボニル基含有基は、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、イソシアネート基、カルバメート基(-OC(O)NH)、酸無水物残基(-C(O)OC(O)-)、イミド残基(-C(O)NHC(O)-等)、ホルミル基、ハロゲノホルミル基、ウレタン基(-NHC(O)O-)、カルバモイル基(-C(O)-NH)、ウレイド基(-NH-C(O)-NH)、オキサモイル基(-NH-C(O)-C(O)-NH)及びカーボネート基(-OC(O)O-)が好ましく、酸無水物残基がより好ましい。
Fポリマーが酸素含有極性基を有する場合、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、主鎖の炭素数1×10個あたり、10~5000個が好ましく、100~3000個がより好ましい。なお、Fポリマーにおける酸素含有極性基の数は、ポリマーの組成又は国際公開第2020/145133号に記載の方法によって定量できる。
酸素含有極性基は、Fポリマー中のモノマーに基づく単位に含まれていてもよく、Fポリマーの主鎖の末端基に含まれていてもよく、前者が好ましい。後者の態様としては、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基として酸素含有極性基を有するFポリマー、Fポリマーをプラズマ処理や電離線処理して得られるFポリマーが挙げられる。
カルボニル基含有基を有するモノマーは、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(以下、「NAH」とも記す。)が好ましく、NAHがより好ましい。
Fポリマーは、TFE単位及びPAVE単位を含む、カルボニル基含有基を有するポリマーであるのが好ましく、TFE単位、PAVE単位及びカルボニル基含有基を有するモノマーに基づく単位を含み、全単位に対して、これらの単位をこの順に、90~99モル%、0.99~9.97モル%、0.01~3モル%含むポリマーであるのがさらに好ましい。かかるFポリマーの具体例としては、国際公開第2018/16644号に記載されるポリマーが挙げられる。
本発明において、F粒子のD50は、0.01μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。F粒子のD50は、10μm未満が好ましく、8μm未満がより好ましい。この場合、本組成物が分散性と加工性に優れやすい。また、本組成物から、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性及び密着性に優れたポリマー層を得やすい。
F粒子の比表面積は、1~25m/gが好ましい。
本法においては、最初に塗工される液状組成物1中のF粒子の濃度が1質量%以上20質量%未満であり、かつ、2回目以降に塗工される液状組成物2中のF粒子の濃度が20質量%以上50質量%以下であることが、得られるポリマー層付基材のポリマー層と基材との密着性(剥離強度)をバランスさせて高められる観点から好ましい。
液状組成物1中のF粒子の濃度は、5質量%以上18質量%以下であるのがより好ましく、かつ、2回目以降に塗工される液状組成物2中のF粒子の濃度が22質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。
なお、2回目以降に塗工される液状組成物2は、そのF粒子の濃度が20質量%以上50質量%以下であれば、F粒子の濃度の異なる複数の液状組成物を液状組成物2として複数回の塗工に用いてもよく、F粒子の濃度が前記範囲である1種類の液状組成物を液状組成物2として2回目以降の複数回の塗工に用いてもよい。
F粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。F粒子は、少なくとも、熱溶融性Fポリマーの粒子であるのが好ましく、溶融温度が180~320℃である、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子であるのがより好ましい。この場合、本組成物の分散性が向上しやすい。
2種のF粒子を用いる場合、F粒子は、熱溶融性Fポリマーの粒子と非熱溶融性Fポリマーの粒子の混合物であるのが好ましい。この場合、熱溶融性Fポリマーの粒子による凝集抑制作用と、非熱溶融性Fポリマーのフィブリル化による保持作用とがバランスし、本組成物の分散性が向上しやすい。また、それから得られるポリマー層において、非熱溶融性Fポリマーの電気特性が高度に発現し、特に誘電正接の低いポリマー層が得られ易い。
前者の粒子としては、溶融温度が200~320℃である熱溶融性Fポリマーの粒子が好ましく、溶融温度が200~320℃であり、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの粒子がより好ましい。前者の粒子における、酸素含有極性基を有する熱溶融性Fポリマーの好適態様は、上述の酸素含有極性基を有するFポリマーにおける好適態様と同様である。
後者の粒子としては、非熱溶融性PTFEの粒子が好ましい。
また、2種のF粒子の総質量における前者の粒子の割合は50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。また、前記割合は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。
また、前者の粒子のD50は1~4μmであり、かつ、後者の粒子のD50は0.1~1μmであるのが好ましい。
本法においては、基材表面に本組成物の塗工を複数回行ってポリマー層付基材を製造するに際し、最初に塗工される液状組成物1が含有するF粒子は熱溶融性Fポリマーの粒子であるのが好ましく、かつ、2回目以降に塗工される、液状組成物1とは異なる液状組成物2が含有するF粒子が、熱溶融性Fポリマーの粒子と非熱溶融性Fポリマーの粒子の混合物であるのが好ましい態様の一つである。
F粒子は、Fポリマー以外の樹脂や無機化合物を含んでいてもよく、FポリマーをコアとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をシェルとするコア-シェル構造を形成していてもよく、FポリマーをシェルとしFポリマー以外の樹脂又は無機化合物をコアとするコア-シェル構造を形成していてもよい。
ここで、Fポリマー以外の樹脂としては、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、ポリイミド、マレイミドが挙げられ、無機化合物としては、シリカ、窒化ホウ素が挙げられる。
本組成物は、液状分散媒を含む液状組成物である。液状分散媒としては、大気圧下、25℃にて液体である化合物であり、沸点が50~240℃である化合物が好ましい。液状分散媒は1種類を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上の液状分散媒を用いる場合、かかる2種以上の液状分散媒は、互いに相溶するのが好ましい。
液状分散媒はアミド、ケトン及びエステルからなる群から選ばれる化合物が好ましい。
アミドとしては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2-へプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンが挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンが挙げられる。
本法において、本組成物、具体的には最初に塗工される液状組成物1及び2回目以降に塗工される液状組成物2がそれぞれ、非水系の液状組成物であり、かつその含水率が4質量%未満であることが、それぞれの液状組成物の安定性を向上する観点から好ましい。かかる含水率は1質量%以下が好ましい。また、前記液状組成物の含水率は、0.001質量%以上が好ましい。
なお、本組成物の含水率は、特開2017-066327号に記載されるJIS K 0068:2001に準拠するカールフィッシャー法によって測定できる。
液状分散媒の含有量は、最初に塗工される液状組成物1においては、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。液状組成物1における液状分散媒の含有量は99質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
また、2回目以降に塗工される液状組成物2における液状分散媒の含有量は、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましい。液状組成物2における液状分散媒の含有量は、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
本法において、2回目以降に塗工される、液状組成物1とは異なる液状組成物2は、さらに無機粒子を含むのが好ましい。無機粒子をさらに含むと、本法において形成されるポリマー層に無機粒子に由来する熱伝導率、低線膨張性、電気特性等の特性を付与できるほか、液状組成物2中のF粒子の含有量や、液状組成物2のチキソ比及び粘度等を本法で規定する範囲に制御しやすくなる。
無機粒子の形状は、球状、針状(繊維状)、板状のいずれであってもよく、具体的には、球状、鱗片状、層状、葉片状、杏仁状、柱状、鶏冠状、等軸状、葉状、雲母状、ブロック状、平板状、楔状、ロゼット状、網目状、角柱状のいずれであってもよい。また、無機粒子は非中空状であっても中空状であってもよい。
無機粒子が球状である場合は、略真球状であるのが好ましい。ここで略真球状とは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子を観察した際に、長径に対する短径の比が0.7以上である粒子の占める割合が95%以上であることを意味する。
無機粒子が鱗片状である場合は、液状組成物2から形成されるポリマー層中で無機粒子が熱伝導パスを形成しやすく、ポリマー層が熱伝導率と低線膨張性に優れやすい。
無機粒子における無機化合物としては、炭素、無機窒化物又は無機酸化物が挙げられる。例えば、炭素繊維、ガラス、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ベリリア、シリカ、クリストバライト、アルミナ(酸化アルミニウム)、ウォラストナイト、マイカ、タルク、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フォルステライト(2MgO・SiO)、コージライト(2MgO・2Al・5SiO)又は酸化チタンが挙げられる。
中でも、液状組成物2の分散安定性と液状組成物2から形成されるポリマー層の熱伝導性、放熱性の観点からは、アルミナ粒子、クリストバライト粒子、窒化ホウ素粒子、窒化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子、マイカ粒子、フォルステライト粒子及びコージライト粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機粒子であるのが好ましい。窒化ホウ素粒子は、六方晶窒化ホウ素粒子が好ましい。
無機粒子のD50は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。無機粒子のD50は、50μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
無機粒子の表面は、シランカップリング剤で表面処理されていてもよい。シランカップリング剤は、部分的に反応していてもよく、ポリシロキサン骨格を形成していてもよい。
シランカップリング剤の具体的な製品としては、「KBM-573」、「KBM-403」、「KBM-903」、「KBE-903」、「KBM-1403」、「X-12-967C」、「X-12-1214A」、「X-12-984S」、「X-12-1271A」、「KBP-90」、「KBM-6803」、「X-12-1287A」、「KBM-402」、「KBE-402」、「KBE-403」、「KR-516」「KBM-303」、「KBM-4803」、「KBM-3063」、「KBM-13」(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
無機粒子の市販品として、中空状のガラス粒子[「グラスバブルズ」シリーズの「S4630」、「S3240-VS」、「S60HS」、「S32HS」、「iM16K」、「iM30K」グレード(3M社製)]、シリカ粒子[「アドマファイン」シリーズ(アドマテックス社製)、「SFP」シリーズ(デンカ社製)、「E-SPHERES」シリーズ(太平洋セメント社製)、「シリナックス」シリーズ(日鉄鉱業社製)、「エココスフイヤー」シリーズ(エマーソン・アンド・カミング社製)]、酸化亜鉛粒子[「FINEX」シリーズ(堺化学工業株式会社製)]、酸化チタン粒子[「タイペーク」シリーズ(石原産業社製)、「JMT」シリーズ(テイカ社製)]、タルク粒子[「SG」シリーズ(日本タルク社製)]、ステアタイト粒子[「BST」シリーズ(日本タルク社製)]、窒化ホウ素粒子[「UHP」シリーズ(昭和電工社製)、「デンカボロンナイトライド」シリーズの「GP」、「HGP」グレード(デンカ社製)]が挙げられる。
無機粒子は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
液状組成物2における、F粒子の含有量に対する無機粒子の含有割合は、50質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましい。上記含有割合は、200質量%以下が好ましく、150質量%以下がより好ましい。
液状組成物2においてF粒子と無機粒子とのD50の比や、含有割合がかかる範囲である場合、液状組成物2が分散性に優れ、そのチキソ比や粘度等を本法で規定する範囲に制御しやすい。また、線膨張係数、誘電率及び誘電正接が低く、熱伝導性及び密着性に優れたポリマー層を得やすい。
本法において、本組成物、具体的には最初に塗工される液状組成物1及び2回目以降に塗工される液状組成物2はそれぞれ、さらに耐熱性樹脂を含んでもよい。かかる耐熱性樹脂は、本組成物に非中空状の粒子として含まれていてもよく、液状分散媒に溶解又は分散して含まれていてもよい。耐熱性樹脂を含む場合、本組成物から形成される層中におけるF粒子のパッキングをより緻密にできる。
耐熱性樹脂としては、液晶性の芳香族ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、マレイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂が挙げられる。中でも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂及びマレイミド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の耐熱性樹脂であるのが好ましい。
また、耐熱性樹脂としては、芳香族ポリマーが好ましく、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミック酸、芳香族ポリアミドイミド及び芳香族ポリアミドイミドの前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族イミドポリマーがより好ましい。芳香族ポリマーは本組成物中で、液状分散媒に溶解したワニスとして含まれるのが好ましい。
芳香族イミドポリマーの具体例としては、「ユピア-AT」シリーズ(宇部興産社製)、「ネオプリム(登録商標)」シリーズ(三菱ガス化学社製)、「スピクセリア(登録商標)」シリーズ(ソマール社製)、「Q-PILON(登録商標)」シリーズ(ピーアイ技術研究所製)、「WINGO」シリーズ(ウィンゴーテクノロジー社製)、「トーマイド(登録商標)」シリーズ(T&K TOKA社製)、「KPI-MX」シリーズ(河村産業社製)、「HPC-1000」、「HPC-2100D」(いずれも昭和電工マテリアルズ社製)が挙げられる。
本組成物が耐熱性樹脂をさらに含む場合、その含有量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上が好ましい。上記含有量は、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、本法においては、最初に塗工される液状組成物1中の耐熱性樹脂の濃度が、2回目以降に塗工される液状組成物2中の耐熱性樹脂の濃度よりも高いことが、最初に塗工される液状組成物1から形成されるポリマー層におけるFポリマーが密にパッキングされ緻密な層を形成しやすく、基材とFポリマーとの接触面積が大きくなり密着性(剥離強度)の向上に寄与する観点から好ましい。
本組成物は、F粒子、及び無機粒子の分散安定性を向上する観点から、さらに界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としてはノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、「フタージェント」シリーズ(ネオス社製)、「サーフロン」シリーズ(AGCセイミケミカル社製)、「メガファック」シリーズ(DIC社製)、「ユニダイン」シリーズ(ダイキン工業社製)、「BYK-347」、「BYK-349」、「BYK-378」、「BYK-3450」、「BYK-3451」、「BYK-3455」、「BYK-3456」(ビックケミー・ジャパン社製)、「KF-6011」、「KF-6043」(信越化学工業社製)、「Tergitol」シリーズ(ダウケミカル社製、「Tergitol TMN-100X」等。)が挙げられる。
本組成物がノニオン性界面活性剤を含有する場合、本組成物中のノニオン性界面活性剤の含有量は、1~15質量%が好ましい。
本組成物、特に液状組成物2は、さらにシランカップリング剤を含んでいてもよい。この場合、F粒子及び無機粒子の結着力が向上し、液状組成物2から粒子の粉落ちが抑制されたポリマー層を形成しやすい。
シランカップリング剤としては、無機粒子の表面処理に用いてもよいシランカップリング剤と同様のものが挙げられ、その好適範囲も同様である。
本組成物がシランカップリング剤を含む場合、本組成物中のシランカップリング剤の含有量は、1~10質量%が好ましい。
本組成物は、さらに、チキソ性付与剤、粘度調節剤、消泡剤、脱水剤、可塑剤、耐候剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、増白剤、着色剤、導電剤、離型剤、上記したシランカップリング剤以外の表面処理剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
本法において、本組成物の粘度は、液状組成物1については、10mPa・s以上が好ましく、50mPa・s以上がより好ましく、1000mPa・s以下が好ましい。
液状組成物2については、100mPa・s以上が好ましく、500mPa・s以上がより好ましく、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましい。
本法において、本組成物のチキソ比は、1.0~4.0が好ましい。そして、最初に塗工される液状組成物1のチキソ比が、2回目以降に塗工される液状組成物2のチキソ比よりも低いことが、上記した機構を発現できる観点及び塗工性の観点から好ましい。
より具体的には、最初に塗工される液状組成物1のチキソ比が1.0以上1.5未満であり、かつ、2回目以降に塗工される液状組成物2のチキソ比が1.5以上4.0以下であることが好ましい。
本法で用いる本組成物(具体的には、最初に塗工される液状組成物1及び2回目以降に塗工される液状組成物2)は、F粒子、液状分散媒、必要に応じて耐熱性樹脂、無機粒子、界面活性剤、シランカップリング剤、添加剤等を混合することで得られる。
本組成物は、F粒子、液状分散媒、耐熱性樹脂及び無機粒子を一括で混合して得てもよいし、別々に順次混合してもよいし、これらのマスターバッチを予め作成し、それと残りの成分を混合してもよい。混合の順は特に制限はなく、また混合の方法も一括混合でも複数回に分割して混合してもよい。
本組成物を得るための混合の装置としては、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサーおよびプラネタリーミキサー等のブレードを備えた撹拌装置、ボールミル、アトライター、バスケットミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、スパイクミルおよびアジテーターミル等のメディアを備えた粉砕装置、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、超音波ホモジナイザー、デゾルバー、ディスパー、高速インペラー、薄膜旋回型高速ミキサー、自転公転撹拌機およびV型ミキサー等の他の機構を備えた分散装置が挙げられる。
液状分散媒を含む本組成物の好適な製造方法としては、F粒子と液状分散媒の一部とを予め混練して混練物を得て、さらに前記混練物を残余の液状分散媒に添加して本組成物を得る製造方法が挙げられる。混練と添加に際して使用する液状分散媒は、同種の液状分散媒であってもよく、異種の液状分散媒であってもよい。無機粒子や、耐熱性樹脂、界面活性剤、シランカップリング剤、添加剤は、混練に際して混合してもよく、添加に際して混合してもよい。
混練による得られる混練物は、ペースト状(粘度が1000~100000mPa・sであるペースト等。)であってもよく、ウェットパウダー状(キャピログラフにより測定される粘度が10000~100000Pa・sであるウェットパウダー等。)であってもよい。
なお、キャピログラフにより測定される粘度とは、キャピラリー長が10mm、キャピラリー半径が1mmのキャピラリーを用いて、炉体径を9.55mm、ロードセル容量を2tとし、温度を25℃、剪断速度剪断速度を1s-1として測定される値である。
混練における混合は、プラネタリーミキサーにて行うのが好ましい。プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を有する撹拌装置である。
添加における混合は、薄膜旋回型高速ミキサーにて行うのが好ましい。薄膜旋回型高速ミキサーは、円筒形の撹拌槽の内壁面に、F粒子と液状分散媒とを薄膜状に展開し旋回させて、遠心力を作用させながら混合する撹拌装置である。
本法では、基材表面にFポリマーを含むポリマー層(以下、「ポリマー層」とも記す。)を形成する際、F粒子を含む本組成物の塗工を複数回行う。ポリマー層は、本組成物の塗工、加熱の工程を経て形成される。
これら工程は1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返してもよい。例えば、基材の表面に本組成物を塗工し加熱してポリマー層を形成し、さらに前記ポリマー層の表面に本組成物を塗工し加熱して2層目のポリマー層を形成してもよい。また、基材の表面に本組成物を塗工し加熱して液状分散媒を除去した段階で、さらにその表面に本組成物を塗工し加熱してポリマー層を形成してもよい。
本法においては、基材表面への本組成物の塗工を、前記塗工により形成される塗工層を乾燥した後に、前記乾燥後の塗工層の上面に本組成物を塗工することによって複数回行い、最後に塗工して形成される塗工層を乾燥した後に焼成を行ってポリマー層を形成するのが、ポリマー層の均一性と強度の観点からより好ましい。
すなわち、本法の好適な態様では、基材表面へのFポリマーを含むポリマー層の形成を、基材表面へ液状組成物1を塗工し、前記塗工により形成される塗工層を乾燥して液状分散媒を除去した後に、前記乾燥後の液状組成物1から形成された塗工層の上面に液状組成物2を塗工することによって複数回行い、最後に塗工して形成される塗工層を乾燥して液状分散媒を除去した後に、液状組成物1から形成された塗工層及び液状組成物2から形成された塗工層で構成される複数の塗工層をさらに加熱してFポリマーを焼成して、Fポリマー及び無機粒子を含むポリマー層を形成する。
基材としては、金属基板(銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、それらの合金等の金属箔等)、耐熱性樹脂フィルム(ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶性ポリエステル、テトラフルオロエチレン系ポリマー等の耐熱性樹脂フィルム)、プリプレグ基板(繊維強化樹脂基板の前駆体)、セラミックス基板(炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等のセラミックス基板)、ガラス基板が挙げられる。
基材の形状としては、平面状、曲面状、凹凸状が挙げられる。また、基材の形状は、箔状、板状、膜状、繊維状のいずれであってもよい。
基材の表面の十点平均粗さは、0.01~0.05μmが好ましい。
基材の表面は、シランカップリング剤により表面処理されていてもよく、プラズマ処理されていてもよい。かかるシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等の官能基を有するシランカップリング剤が好ましい。
本組成物の塗工の方法としては、塗布法、液滴吐出法、浸漬法が挙げられ、ロールコート法、ナイフコート法、バーコート法、ダイコート法又はスプレー法が好ましい。
液状組成物1及び液状組成物2から形成された各塗工層からの液状分散媒の除去に際する加熱は、100~200℃にて、0.1~30分間で行うのが好ましい。この際の加熱において液状分散媒は、完全に除去する必要はなく、F粒子、及び無機粒子のパッキングにより形成される層が自立膜を維持できる程度まで除去すればよい。また、加熱に際しては、空気を吹き付け、風乾によって液状分散媒の除去を促してもよい。
液状組成物1及び液状組成物2から形成された各塗工層で構成される複数の塗工層をさらに加熱してFポリマーを焼成する際は、Fポリマーの焼成温度以上の温度にて行うのが好ましく、350~400℃にて、0.1~30分間行うのがより好ましい。
それぞれの加熱における加熱装置としては、オーブン、通風乾燥炉が挙げられる。装置における熱源は、接触式の熱源(熱風、熱板等)であってもよく、非接触式の熱源(赤外線等)であってもよい。
また、それぞれの加熱は、常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。
また、それぞれの加熱における雰囲気は、空気雰囲気、不活性ガス(ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、窒素ガス等)雰囲気のいずれであってもよい。
本組成物は、基材の一方の表面にのみ塗工してもよく、基材の両面に塗工してもよい。前者の場合、基材層と、かかる基材層の片方の表面にポリマー層を有するポリマー層付基材が得られ、後者の場合、基材層と、かかる基材層の両方の表面にポリマー層を有するポリマー層付基材が得られる。
ポリマー層付基材の好適な具体例としては、金属箔と、その金属箔の少なくとも一方の表面にポリマー層を有する金属張積層体、ポリイミドフィルムと、そのポリイミドフィルムの両方の表面にポリマー層を有する多層フィルムが挙げられる。
ポリマー層の厚さは5μm以上50μm以下が好ましい。ポリマー層の厚さは、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。ポリマー層の厚さは、10μm以上が好ましい。本法によれば、本組成物、具体的には最初に塗工する液状組成物1と2回目以降に塗工する液状組成物2におけるF粒子の含有量や、それぞれの液状組成物のチキソ比を本法で規定する範囲に制御することで、薄いポリマー層を形成でき、かつ基材とポリマー層との密着性(剥離強度)に優れたポリマー層付基材を製造できる。
ポリマー層と基材との剥離強度は、1.5kN/m以上が好ましく、2.0kN/m以上がより好ましい。上記剥離強度は、100kN/m以下が好ましい。
ポリマー層の誘電率は2.8以下であるのが好ましく、2.1以下であるのがより好ましい。また、誘電率は1.0超であるのが好ましい。ポリマー層の誘電正接は0.0025以下であるのが好ましく、0.0020以下であるのがより好ましい。また、誘電正接は、0.0001超であるのが好ましい。
ポリマー層の線膨張係数は、100ppm/℃以下が好ましく、80ppm/℃以下がより好ましい。ポリマー層の線膨張係数の下限は、1ppm/℃である。なお、線膨張係数は、JIS C 6471:1995に規定される測定方法に従って、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数を測定した値を意味する。
ポリマー層の面内方向における熱伝導率は、1.0W/m・K以上が好ましく、3.0W/m・K以上がより好ましい。ポリマー層の熱伝導率の上限は、100W/m・Kである。
本法により形成されるポリマー層付基材は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具、食品工業用品、放熱部品等として有用である。
具体的には、電線被覆材(航空機用電線等)、電気自動車等のモーター等に使用されるエナメル線被覆材、電気絶縁性テープ、石油掘削用絶縁テープ、石油輸送ホース、水素タンク、プリント基板用材料、分離膜(精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、イオン交換膜、透析膜、気体分離膜等)、電極バインダー(リチウム二次電池用、燃料電池用等)、コピーロール、家具、自動車ダッシュボート、家電製品等のカバー、摺動部材(荷重軸受、ヨー軸受、すべり軸、バルブ、ベアリング、ブッシュ、シール、スラストワッシャ、ウェアリング、ピストン、スライドスイッチ、歯車、カム、ベルトコンベア、食品搬送用ベルト等)、テンションロープ、ウェアパッド、ウェアストリップ、チューブランプ、試験ソケット、ウェハーガイド、遠心ポンプの摩耗部品、薬品及び水供給ポンプ、工具(シャベル、やすり、きり、のこぎり等)、ボイラー、ホッパー、パイプ、オーブン、焼き型、シュート、ラケットのガット、ダイス、便器、コンテナ被覆材、パワーデバイス用実装放熱基板、無線通信デバイスの放熱部材、トランジスタ、サイリスタ、整流器、トランス、パワーMOS FET、CPU、放熱フィン、金属放熱板、風車や風力発電設備や航空機等のブレード、パソコンやディスプレイの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、低酸素下で加熱処理する加工機や真空オーブン、プラズマ処理装置などのシール材、スパッタや各種ドライエッチング装置等の処理ユニット内の放熱部品、電磁波シールドとして有用である。
本法により形成されるポリマー層付基材は、フレキシブルプリント配線基板、リジッドプリント配線基板等の電子基板材料、保護フィルムや放熱基板、特に自動車向けの放熱基板として有用である。
以上、本発明の製造方法について説明したが、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されない。例えば、本発明の製造方法は、上述した実施形態の構成において、他の任意の工程を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の工程と置換されてもよい。
本組成物の塗工を複数回行うに際し、2回目以降に塗工される液状組成物2は1回塗工しても、2回以上塗工してもよい。またF粒子の濃度の異なる複数の液状組成物2を複数回の塗工に用いてもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
1.各成分の準備
[F粒子]
F粒子1:TFE単位、NAH単位およびPPVE単位を、この順に97.9モル%、0.1モル%、2.0モル%含み、カルボニル基含有基を主鎖炭素数1×10個あたり1000個有するテトラフルオロエチレン系ポリマー(溶融温度:300℃)の粒子(D50:2.1μm、非中空状)
[無機粒子]
無機粒子1:タルク粒子(D50:3μm、鱗片状、アスペクト比:5以上)
[液状分散媒]
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
2.液状組成物の製造例
[製造例1]
ポットに、F粒子1及びNMPを投入した後、ポット内にジルコニアボールを投入して、150rpmで1時間、ポットを転がし、F粒子1の濃度が10質量%、チキソ比が1.1である液状組成物1を得た。液状組成物1の粘度は、200mPa・s、含水率は、1%未満であった。
[製造例2]
F粒子1の投入量を変更した以外は製造例1と同様の操作を行い、F粒子1の濃度が25質量%、チキソ比が1.3である液状組成物2を得た。液状組成物2の粘度は、400mPa・s、含水率は、1%未満であった。
[製造例3]
F粒子1、無機粒子1及びNMPを自転公転撹拌機中で混練してウェットパウダー状の練粉を得、さらにNMPを添加して撹拌し、F粒子1の濃度が20質量%、PI1の濃度が0.1質量%、無機粒子1の濃度が20質量%、チキソ比が1.5である液状組成物3を得た。液状組成物4の粘度は、700mPa・s、含水率は、1%未満であった。
[製造例4]
F粒子1の投入量を変更した以外は製造例3と同様の操作を行い、F粒子1の濃度が10質量%、無機粒子1の濃度が20質量%、チキソ比が1.2である液状組成物4を得た。液状組成物4の粘度は、500mPa・s、含水率は、1%未満であった。
3.ポリマー層付基材の製造例
[例1]
長尺の銅箔の表面に、バーコーターを用いて液状組成物1を塗布し、ウェット膜を形成した。次いで、このウェット膜が形成された銅箔を、200℃にて5分間、乾燥炉に通し乾燥させて、銅箔の表面に、F粒子1を含む厚さが5μmの1層目のポリマー層(ドライ膜1)を形成した。
次に、1層目のポリマー層の表面に、バーコーターを用いて液状組成物4を塗布し、ウェット膜を形成した。このウェット膜を上記と同様にして乾燥させて、1層目のポリマー層の表面に、F粒子1及び無機粒子1を含む厚さが20μmの2層目のポリマー層(ドライ膜2)を形成した。
その後、ドライ膜1及びドライ膜2を有する銅箔を、窒素オーブン中で350℃にて3分間、加熱した。これにより、銅箔と、その表面に、F粒子1の溶融焼成物及び無機粒子1を含む、厚さが25μmのポリマー層とを有するポリマー層付基材1を製造した。
[例2]
液状組成物1の代わりに液状組成物2を用い、液状組成物3の代わりに液状組成物4を用いた以外は、例1と同様の操作を行い、ポリマー層付基材2を製造した。
4.ポリマー層付基材の剥離強度及び線膨張係数の評価
それぞれのポリマー層付基材から矩形状(長さ100mm、幅10mm)の試験片を切り出した。そして、試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を固定し、引張り速度50mm/分、長さ方向の片端から試験片に対して90°で、銅箔とポリマー層とを剥離させた。
そして、この際にかかる最大荷重を剥離強度(N/cm)として測定した結果、ポリマー層付基材1の剥離強度は2kN/m以上であり、ポリマー層付基材2の剥離強度は2kN/m未満であった。
また、それぞれのポリマー層付基材につき、ポリマー層付基材の銅箔を塩化第二鉄水溶液でエッチングにより除去して単独のポリマー層であるシートを作製した。作成したシートから180mm角の四角い試験片を切り出し、JIS C 6471:1995に規定される測定方法にしたがって、25℃以上260℃以下の範囲における、試験片の線膨張係数(ppm/℃)を測定した結果、ポリマー層付基材1の線膨張係数はポリマー層付基材2と比べて小さく、電気特性に優れていた。
上記結果から明らかなように、本法により形成したポリマー層付基材は、Fポリマー、及び含有する無機粒子の物性を高度に発現し、低線膨張性、電気特性及び熱伝導性に優れ、特に密着性(剥離強度)に優れる。

Claims (11)

  1. 基材表面にテトラフルオロエチレン系ポリマーを含むポリマー層を形成する、ポリマー層付基材の製造方法であって、前記基材表面へ、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物の塗工を複数回行い、かつ最初に塗工される前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が、2回目以降に塗工される、最初に塗工される前記液状組成物とは異なる、テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度よりも低い、ポリマー層付基材の製造方法。
  2. 前記最初に塗工される前記液状組成物の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が1質量%以上20質量%未満であり、かつ、2回目以降に塗工される前記液状組成物中の前記テトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子の濃度が20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記最初に塗工される前記液状組成物のチキソ比が、2回目以降に塗工される前記液状組成物のチキソ比よりも低い、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記最初に塗工される前記液状組成物のチキソ比が1.0以上1.5未満であり、かつ、2回目以降に塗工される前記液状組成物のチキソ比が1.5以上4.0以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、熱溶融性のテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記テトラフルオロエチレン系ポリマーが、酸素含有極性基を有するテトラフルオロエチレン系ポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記2回目以降に塗工される前記液状組成物が、無機粒子をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記最初に塗工される前記液状組成物、及び、2回目以降に塗工される前記液状組成物がそれぞれ、非水系の液状組成物であり、かつその含水率が4質量%未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記基材表面へテトラフルオロエチレン系ポリマーの粒子を含む液状組成物の塗工を、前記塗工により形成される塗工層を乾燥した後に、前記乾燥後の塗工層の上面に前記液状組成物を塗工することによって複数回行い、最後に塗工して形成される塗工層を乾燥した後に焼成を行って前記ポリマー層を形成する、請求項1~8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法により得られる、ポリマー層付基材。
  11. 前記ポリマー層の厚さが5μm以上50μm以下である、請求項10に記載のポリマー層付基材。

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