以下、図面を参照して、実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。「上」及び「下」の語は、鉛直方向の上下方向に対応する。
図1は、実施形態に係る搬送システム1を示す概略構成図である。図1に示されるように、搬送システム1は、例えば病院等の屋内に設置され、複数の部署D間におけるカート(被搬送物)10の自動搬送を実現するシステムである。搬送システム1は、複数のカート10、複数のステーション20、複数の無人搬送車30、システムコントローラ40、複数のアクセスポイント50及び複数の操作端末60を備える。
図2は、図1のカート10を示す斜視図である。図3は、図1のカート10を示す底面図である。図4は、図1のカート10の内部構造の例を示す正面図である。図2及び図4に示されるように、カート10は、物品を収容する台車である。カート10は、平面視(上方から見て)で矩形形状を呈するカートユニットである。換言すると、カート10は、物品を積載する矩形の専用カートである。以下、カート10の長手方向を単に「長手方向」といい、カート10の短手方向を単に「短手方向」という場合もある。
例えばカート10は、幅800mm、長さ900mm、高さ1400mmの直方体状の外形を呈する。カート10は、手押し台車としても使用可能である。搬送システム1で用いられるカート10の台数は特に限定されないが、例えば100台~1000台であってもよい。カート10に収容される物品としては、例えば、検体、注射薬、滅菌器材(滅菌コンテナ及び回収コンテナ等)、診療材料(ME(Medical Engineering)機器等)が挙げられる。
カート10は、筐体11、把手12、シャッター13、キャスター14、識別タグ15、及びリフレクタ16を有する。筐体11は、矩形箱状の外形を呈する。短手方向における筐体11の一方側には、開口部11hが設けられている。筐体11では、その内部に開口部11hを介してアクセス可能である。筐体11の内部には、例えば物品を入れたトレーTRの縁を引っ掛けて支持する複数のトレー受けフックが、適宜な位置に設けられている。なお、筐体11の内部には、物品を載置する載置板が適宜な位置に設けられていてもよい。
図3に示されるように、筐体11の底面には、無人搬送車30のロケートピン32a(後述)が係合する凹部11xが、複数設けられている。凹部11xは、筐体11の底面において、長手方向及び短手方向に沿った辺で構成された正方形の4つの頂点位置(90°回転対称位置)に配置されている。
図2に示されるように、把手12は、例えばユーザが握る部分である。把手12は、上下方向に延びる棒状の部材である。把手12は、筐体11の四隅において上下方向の中央部上寄りの位置に設けられている。シャッター13は、筐体11の開口部11hを閉塞可能に設けられている。シャッター13としては、例えば、細長い板状部材が蛇腹状に連なって成るスラットを上部に収納する上下シャッターが用いられている。シャッター13は、スラットを上方から下方に降ろすことで閉状態とする一方、スラットを下方から上方に持ち上げることで開状態とする。キャスター14は、筐体11の下面の四隅に設けられている。キャスター14は、上下方向に沿う軸回りに360°回転するように構成されている。キャスター14としては、例えば自在キャスターが用いられている。キャスター14は、脚部14aをそれぞれ有している。
図3に示されるように、識別タグ15は、筐体11の底面に少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、識別タグ15は、筐体11の底面において、長手方向における中心部に設けられている。識別タグ15は、筐体11の底面において、短手方向における中心に対してシャッター13側に設けられている識別タグ15aと、当該中心に対してシャッター13とは逆側に設けられている識別タグ15bとを含む。識別タグ15a,15bは、複数の凹部11xの間に設けられている。識別タグ15としては、例えばRF(Radio Frequency)タグが用いられている。
リフレクタ16は、各キャスター14の脚部14aに設けられているリフレクタ16aと、筐体11の底面に少なくとも1つ設けられているリフレクタ16bと、を有する。リフレクタ16は、例えば、光を反射する部分を有する矩形状のシートである。本実施形態では、リフレクタ16aは、4つの脚部14aそれぞれに設けられている。リフレクタ16aは、キャスター14の脚部14aの側面のうち、短手方向において他のキャスター14と対向する部分に設けられている。リフレクタ16aは、カート10の下方に無人搬送車30が潜り込む際の位置調整(後述する)に用いられる。
本実施形態では、リフレクタ16bは、筐体11の底面において、長手方向において一方の端部に3つ設けられている。リフレクタ16bは、筐体11の底面の短手方向における中心に位置している。リフレクタ16bは、カート10の下方に潜り込んだ無人搬送車30のカート10に対する位置調整(後述する)に用いられる。リフレクタ16bは、短手方向において互いに対向する複数のキャスター14の間に設けられている。
図5は、図1のステーション20を示す斜視図である。図5に示されるように、ステーション20は、カート10を配置するエリアである。ステーション20は、床Fのポジションマーカ21により区画されている。ステーション20は、平面視においてカート10に対応する矩形形状を呈する。ステーション20には、1台のカート10が配置可能である。ステーション20は、例えば1つの部署D(図1参照)において複数設置されている。搬送システム1で設置されるステーション20の数は特に限定されない。
図6は、図1の無人搬送車30を示す斜視図である。図7は、図1の無人搬送車30のカバーCを外した状態を示す斜視図である。図8は、図1の無人搬送車30の構成を示すブロック図である。図9は、図1の無人搬送車30によるカート10の搬送時を示す斜視図である。図6に示されるように、無人搬送車30は、所定の走行経路に沿って床F上を自走する搬送車である。無人搬送車30は、複数のステーション20間においてカート10を自動搬送する。所定の走行経路は、予め設定された経路であって、複数の部署D間を通るように延びる。所定の走行経路は、例えば複数のステーション20に近接するように設定される。
無人搬送車30は、駆動機構として2輪速度差方式を採用する。無人搬送車30は、前進、後退、左右折及びスピンターン(その場での旋回)が可能に構成されている。無人搬送車30は、平面視で矩形形状の外形を呈する。例えば無人搬送車30は、幅500mm、長さ700mm、高さ320mmの直方体状の外形を呈する。搬送システム1で用いられる無人搬送車30の数は特に限定されないが、例えば50台であってもよい。以下、無人搬送車30の進行方向を単に「進行方向」という場合もある。進行方向及び上下方向の両者と直交する方向を「左右方向」として説明する。
図7及び図8に示されるように、無人搬送車30は、本体部31、検知部37、搬送車コントローラ38及び通信部39を有する。本体部31は、昇降台(支持機構)32、電動シリンダ33、駆動輪34、モータ35及び従動輪36を少なくとも含む。検知部37は、レーザレンジファインダ(センサ)37aと、識別センサ37bと、を含む。
昇降台32は、カート10を載置する部材であり、昇降可能に構成されている。昇降台32は、上下方向を厚さ方向とする板状を呈する。昇降台32は、無人搬送車30の上部に設けられている。昇降台32の上面には、上方に突出するロケートピン32aが設けられている。ロケートピン32aは、昇降台32に載置されたカート10の底面の凹部11xと係合する凸部である。ロケートピン32aの上部は、上方へ先細りとなるようなテーパ状を呈する。ロケートピン32aは昇降台32の上面において、進行方向及び左右方向に沿った辺で構成された正方形の4つの頂点位置(90°回転対称位置)に配置されている。昇降台32は、上昇時にカート10を下から持ち上げ、カート10を支持する。昇降台32は、下降時にカート10を床Fに降ろす。電動シリンダ33は、昇降台32を昇降させる駆動源である。電動シリンダ33は、搬送車コントローラ38に接続されており、その動作が搬送車コントローラ38により制御される。
駆動輪34は、無人搬送車30を駆動する車輪である。駆動輪34は、進行方向における無人搬送車30の中央であって左右方向の両端部に、一対設けられている。モータ35は、駆動輪34毎に設けられている。つまり、一対のモータ35が一対の駆動輪34のそれぞれに接続され、一対のモータ35が一対の駆動輪34のそれぞれを独立して駆動する。モータ35は、搬送車コントローラ38に接続されており、その動作が搬送車コントローラ38により制御される。例えば一対のモータ35により一対の駆動輪34が互いに異なる方向に回転駆動させることで、無人搬送車30のスピンターンが可能である。
従動輪36は、駆動を行わない車輪であって、駆動輪34の駆動に応じて回転させられる車輪である。従動輪36は、二対設けられている。具体的には、駆動輪34は、進行方向における無人搬送車30の一方側であって左右方向の両端部に一対設けられていると共に、進行方向における無人搬送車30の他方側であって左右方向の両端部に一対設けられている。従動輪36は、例えば上下方向に沿う軸回りに360°回転するように構成されている。
レーザレンジファインダ37aは、無人搬送車30の周囲環境及び周囲の状況等を検出するセンサである。レーザレンジファインダ37aは、進行方向における無人搬送車30の一方側及び他方側に設けられている。一対のレーザレンジファインダ37aは、協働して無人搬送車30の周囲360°の形状データを取得する。レーザレンジファインダ37aとしては特に限定されず、無人搬送車30の周囲環境を検出できれば、種々のセンサを用いることができる。レーザレンジファインダ37aは、搬送車コントローラ38に接続されており、その検出結果を搬送車コントローラ38へ出力する。
識別センサ37bは、搬送システム1で用いられる各カート10を識別するセンサである。識別センサ37bは、昇降台32の長手方向における中心から一方側に寄せた位置に設けられている。識別センサ37bは、カート10の筐体11の底面に設けられた識別タグ15を読み込むことにより、搬送システム1で用いられる各カート10を識別する。識別センサ37bは、無人搬送車30がカート10の下方に潜り込んだ際に(後述する)、識別タグ15を読み込む。識別センサ37bは、読み込んだ結果を搬送車コントローラ38へ出力する。識別センサ37bとしては、例えばRFID(Radio Frequency Identification)リーダが用いられる。
搬送車コントローラ38は、無人搬送車30を統括的に制御する。搬送車コントローラ38は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)及びRAM(Random Access Memory)等からなるコンピュータである。搬送車コントローラ38は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。搬送車コントローラ38は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。搬送車コントローラ38は、一つの装置で構成されてもよいし、複数の装置で構成されてもよい。複数の装置で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つの搬送車コントローラ38が構築される。
搬送車コントローラ38は、システムコントローラ40から通信部39を介して受信した搬送指令に基づき、搬送元のステーション20から搬送先のステーション20へカート10を搬送させるための走行制御及び荷積み荷下ろし制御を実行する。走行制御では、誘導方式としてSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を利用している。走行制御では、作成された環境地図とレーザレンジファインダ37aで取得した周囲の形状データとを照らし合わせることで、自己位置推定を行う。走行制御では、認識している自己位置に対して自己位置推定の差分を補正値として受け取り、補正値を反映した自己位置から目標位置までの走行ルートに沿って、無人搬送車30の走行を制御する。荷積み荷下ろし制御では、昇降台32を上昇及び下降させることで、無人搬送車30への荷積み及び無人搬送車30からの荷下ろしを実施する。
搬送車コントローラ38は、検知部37の検知結果に基づいてステーション20における異常の有無を判定する異常判定部38aを有する。具体的には、異常判定部38aは、レーザレンジファインダ37a又は識別センサ37bにおける検知結果を取得し、当該検知結果に基づいてステーション20における異常の有無を判定する(詳細は後述する)。異常判定部38aは、ステーション20に異常が有ることを搬送車コントローラ38及び通信部39に送信する。
通信部39は、無人搬送車30の外部との間で無線で通信を行う機器である。通信部39は、アクセスポイント50を介してシステムコントローラ40との間で通信を行う。通信部39は、システムコントローラ40からの指令を受信する受信部39aと、異常判定部38aの判定結果をシステムコントローラ40に送信する送信部39bとを有する。通信部39は、例えば無線LANアンテナを含んでいてもよい。無人搬送車30では、電動シリンダ33、駆動輪34、モータ35、従動輪36、レーザレンジファインダ37a、搬送車コントローラ38及び通信部39は、カバーC(図6参照)に覆われて保護されている。
このような無人搬送車30は、図9に示されるように、カート10の下方(カート10と床Fとの間)に潜り込み、その状態で昇降台32を上昇させることにより、カート10を昇降台32に載置して持ち上げる。無人搬送車30は、カート10を昇降台32で下から持ち上げた状態(従動輪14を床面Fから離間させた状態)で走行し、これにより、カート10を搬送する。一方、無人搬送車30は、カート10を載置した昇降台32を下降させることにより、カート10を床Fに接地させて昇降台32からカート10を降ろす。
図1に戻り、システムコントローラ(運行管理部)40は、搬送システム1を統括的に制御する。システムコントローラ40は、CPU、ROM及びRAM等からなるコンピュータである。システムコントローラ40は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。システムコントローラ40は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。システムコントローラ40は、一つの装置で構成されてもよいし、複数の装置で構成されてもよい。複数の装置で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのシステムコントローラ40が構築される。
システムコントローラ40は、不図示の上位コントローラ又は操作端末60からの入力(搬送要求)に基づいて、無人搬送車30によりカート10を搬送させる搬送指令を生成する。システムコントローラ40は、例えばサーバルーム等に設置される。搬送指令には、無人搬送車30を走行させる走行ルートが含まれる。搬送指令の搬送パターンとしては、通常搬送、巡回搬送及び複合搬送を含む。システムコントローラ40は、異常判定部38aの判定結果を受信する。システムコントローラ40は、受信した判定結果においてステーション20に異常が有る場合、無人搬送車30に新たな指令を割り付ける(詳細は後述する)。システムコントローラ40は、受信した判定結果においてステーション20に異常が有る場合、当該判定結果を操作端末60に送信する。
通常搬送は、搬送元のステーション20でカート10を無人搬送車30に荷積みし、搬送先のステーション20でカート10を無人搬送車30から荷下ろしする搬送である。巡回搬送は、搬送元のステーション20でカート10を無人搬送車30に荷積みし、カート10を載せたまま複数のステーション20を巡回した後、搬送元のステーション20に戻る搬送である。巡回搬送では、搬送元と搬送先とは一致する。複合搬送は、第1部署における搬送元のステーション20でカート10を無人搬送車30に荷積みし、第2部署へ移動し、第2部署における搬送先のステーション20にカート10を荷下ろすと共に、第2部署における他のステーション20でカート10を無人搬送車30に荷積みし、第1部署へ戻り、第1部署における搬送先のステーション20にカート10を荷下ろす搬送である。なお、複合搬送では、第2部署において無人搬送車30に荷積みした後に、第1部署及び第2部署以外の部署における搬送先のステーション20にカート10を荷下ろしてもよい。
システムコントローラ40は、複数の無人搬送車30の中から、複数の条件を用いて最適な何れかを選択し、選択した無人搬送車30に搬送指令を割り付ける。無人搬送車30を選択するための複数条件は、例えば、無人搬送車30に他の搬送指令が割り付けられていない、無人搬送車30のバッテリー残量が所定値以上である、搬送元のステーション20からの距離が最も近い、及び、他のカート10を現在搬送中ではない、等の条件を含む。
アクセスポイント50は、システムコントローラ40と無人搬送車30との間の無線通信、及び、システムコントローラ40と操作端末60との間の無線通信を行うための中継機器である。例えばアクセスポイント50では、2.4GHz又は5GHzが利用周波数帯域とされる。アクセスポイント50は、ケーブルCBを介してシステムコントローラ40に有線接続されている。搬送システム1で設置されるアクセスポイント50の数は特に限定されない。アクセスポイント50は、天井面又は壁面に設けられる。
操作端末60は、オペレータからの入力を受け付ける端末である。操作端末60は、タッチパネルを含む。操作端末60は、ディスプレイ及びスピーカーを含む。操作端末60では、搬送対象となるカート10の入力、搬送元のステーション20の入力、及び、搬送先のステーション20の入力等がなされる。操作端末60は、各部署ごとに設置されている。操作端末60としては、タブレット端末等の可搬型端末が用いられている。また、操作端末60は、ステーション20に異常が有るという判定結果をシステムコントローラ40から受信した場合、無人搬送車30がカート10を搬送することができないこと(荷すくい不可)をディスプレイ及びスピーカーの少なくとも何れかを利用してユーザに報知する。
搬送システム1において、無人搬送車30は、搬送車コントローラ38により一対のモータ35の各駆動が制御されることで、潜り込みを実施する。潜り込みは、カート10の下方に対して無人搬送車30が当該カート10の短手方向の一方側又は他方側から進入し、カート10の下方に潜りこむ動作である。換言すると、潜り込みとは、カート10の下方に対して無人搬送車30が当該カート10の長辺側から進入して潜りこむ動作である。図10は、図1の無人搬送車30によるカート10の下方への潜り込みを説明するための概略俯瞰図である。図11は、図1の無人搬送車30によるカート10の識別を説明するための概略俯瞰図である。
無人搬送車30は、図10に示されるように、カート10の短手方向の一方又は他方からカート10の下方に潜り込む。具体的には、まず、無人搬送車30は、図10(a)に示されるように、各ステーション20のポジションマーカ21に対応する位置であるアプローチ開始位置L1まで搬送車コントローラ38の制御によって走行する。アプローチ開始位置L1において、レーザレンジファインダ37aにより、カート10の短手方向の一方又は他方に設けられた2つのリフレクタ16aの位置が検知される。搬送車コントローラ38は、検知されたリフレクタ16aの位置に基づいてカート10の位置を推定する。搬送車コントローラ38は、推定したカート10の位置からカート10の下方への潜り込みの開始位置L2を特定する。
続いて、無人搬送車30は、搬送車コントローラ38の制御により、図10(b)に示されるように開始位置L2まで走行する。無人搬送車30は、搬送車コントローラ38の制御により、図10(c)に示されるように開始位置L2からカート10の下方への潜り込みを開始する。無人搬送車30が潜り込みを実行する際、レーザレンジファインダ37aによりリフレクタ16bの位置が検知される。搬送車コントローラ38は、検知されたリフレクタ16bの位置に基づいて、カート10に対する無人搬送車30の位置を調整し、潜り込みを完了する。なお、アプローチ開始位置L1は、予め設定されてもよいし、搬送車コントローラ38によって、ポジションマーカ21により示される範囲から決定されてもよい。
また、無人搬送車30は、図11に示されるように、潜り込みを完了した際、カート10を識別する。図11(a)及び図11(b)に示されるように、無人搬送車30のカート10の下方への潜り込みが完了したとき、識別センサ37bにより識別タグ15a又は15bが読み込まれる。これにより、無人搬送車30の搬送車コントローラ38は、無人搬送車30が潜り込んだカート10が搬送システム1における複数のカート10のうちのいずれであるかを識別する。また、搬送車コントローラ38は、カート10に対する無人搬送車30の向きを判定する。図11(a)に示される例では、識別センサ37bにより識別タグ15bが読み込まれ、搬送車コントローラ38は、無人搬送車30がシャッター13と反対側を向いてカート10の下方に潜り込んだと判定する。また、図11(b)に示される例では、識別センサ37bにより識別タグ15aが読み込まれ、搬送車コントローラ38は、無人搬送車30がシャッター13側を向いてカート10の下方に潜り込んだと判定する。
本実施形態の搬送システム1では、異常判定部38aによりステーション20に異常が有ると判定された場合に、無人搬送車30に割り付けられた搬送指令が取り消されて、無人搬送車30に新たな指令が割り付けられる。具体的には、ステーション20からカート10を搬送する搬送指令がシステムコントローラ40により無人搬送車30に割り付けられているとき、当該無人搬送車30の異常判定部38aにより当該ステーション20に異常が有ると判定された場合に、搬送車コントローラ38は、無人搬送車30に割り付けられている搬送指令を取り消す。当該無人搬送車30には、新たな指令がシステムコントローラ40によって割り付けられる。
このような搬送システム1における処理(無人搬送車30の制御方法)について、図12のフローチャートを参照して以下に説明する。以下の処理は、無人搬送車30に搬送指令が割り付けられた際に開始される。
まず、搬送指令に対応するステーション20において無人搬送車30によるカート10の荷積みが完了したか否か判定される(ステップS01:荷積み判定ステップ)。当該荷積みが完了していない場合(ステップS01においてNO)、当該無人搬送車30の異常判定部38aにより当該ステーション20に異常が有るか否かが判定される(ステップS02:異常判定ステップ)。ステーション20に異常が無いと判定された場合(ステップS02においてNO)、ステップS01に戻る。ステーション20に異常が有ると判定された場合(ステップS02においてYES)、無人搬送車30において割り付けられている搬送指令が取り消され(ステップS03)、システムコントローラ40により当該無人搬送車30に新たな指令が割り付けられる(ステップS04)(新指令割り付けステップ)。上記荷積みが完了した場合(ステップS01においてYES)又は新たな指令が割り付けられた後(ステップS04の後)、処理を終了する。
なお、搬送指令に対応するステーション20に、搬送指令に対応しないカート10が配置されている場合、新たな指令は、取り消された搬送指令に対応するカート10とは異なる別のカート10を、取り消す搬送指令に対応するステーション20から搬送する他の搬送指令でもよい。また、新たな指令は、取り消された搬送指令に対応するカート10とは異なる別のカート10を搬送する他の搬送指令でもよい。他の搬送指令は、取り消された搬送指令に対応するステーション20とは異なる別のステーション20から搬送する指令である。さらに、新たな搬送指令は、予め設定された位置に無人搬送車30を移動させるための指令であってもよい。予め設定された位置とは、無人搬送車30が待機する待機位置であってもよいし、無人搬送車30が充電される充電位置(例えば自動充電ステーション)であってもよい。
次に、異常判定部38aによりステーション20における異常の有無を判定する処理(ステップS02)の例について、具体的に説明する。図13は、ステーション20において物体Aが配置されている例を示す図である。図14は、ステーション20に配置されているカート10の位置がポジションマーカ21から大きくずれている例を示す図である。図15は、ステーション20に何も配置されていない例を示す図である。
例えば、異常判定部38aは、識別センサ37bの検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20に搬送指令に対応していないカート10が配置されていると判定した場合、異常が有ると判定する。具体的には、無人搬送車30による潜り込みが完了した際に、例えば図11(a)及び図11(b)に示されるように識別センサ37bにより識別タグ15a,15bが読み込まれる。異常判定部38aは、当該読み込みの結果、搬送指令に対応するステーション20に配置されたカート10が搬送指令に対応していなかった場合に、ステーション20に異常が有ると判定する。なお、この場合、その後のステップS03が実行される前に、搬送指令に対応するカート10をステーション20に配置する要求を、操作端末60を介してユーザに報知してもよい。
また例えば、異常判定部38aは、レーザレンジファインダ37aの検知結果に基づいて、カート10以外の物体Aがステーション20に配置されていると判定した場合、ステーション20において異常が有ると判定する。具体的には、異常判定部38aは、無人搬送車30による潜り込みが開始される際に、例えばアプローチ開始位置L1(図10(a)参照)において、レーザレンジファインダ37aの検知結果からキャスター14が検知されずにカート10以外の物体Aが検知された場合、ステーション20にカート10が配置されておらず、ステーション20に物体Aが配置されていると判定し、ステーション20に異常が有ると判定する(図13参照)。なお、この場合、その後のステップS03が実行される前に、搬送指令に対応するカート10をステーション20に配置する要求を、操作端末60を介してユーザに報知してもよい。
また例えば、異常判定部38aは、レーザレンジファインダ37aの検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20と搬送指令に対応するカート10との位置が、予め定められた一定距離以上離れていると判定した場合、ステーション20において異常が有ると判定する。具体的には、異常判定部38aは、無人搬送車30による潜り込みが開始される際に、レーザレンジファインダ37aの検知結果からカート10の位置を特定し、特定したカート10の基準位置(例えば中心位置)がステーション20の長手方向において当該ステーション20の基準位置から一定距離以上離れているか否かを判定する。異常判定部38aは、カート10の基準位置がステーション20の基準位置から一定距離以上離れていると判定した場合、ステーション20に異常が有ると判定する(図14参照)。なお、この場合、その後のステップS03が実行される前に、カート10の位置を修正する要求を操作端末60を介してユーザに報知してもよい。
また例えば、異常判定部38aは、レーザレンジファインダ37aの検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20に何も配置されていないと判定した場合、異常が有ると判定する。具体的には、異常判定部38aは、無人搬送車30による潜り込みが開始される際に、アプローチ開始位置L1(図10(a)参照)において、レーザレンジファインダ37aの検知結果からステーション20に存在する物体が検知されない場合、ステーション20に何も配置されていないと判定し、ステーション20において異常が有ると判定する(図15参照)。なお、この場合、その後のステップS03が実行される前に、搬送指令に対応するカート10をステーション20に配置する要求を、操作端末60を介してユーザに報知してもよい。
以上、搬送システム1では、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合に、搬送指令に対応する無人搬送車30を待機させるのではなく、搬送指令を取り消して別の新たな指令を当該無人搬送車30に割り付けることが可能となる。すなわち、搬送指令が取り消された当該無人搬送車30には、例えば搬送システム1に他の搬送指令が存在していると、他の搬送指令が割り付けられることとなる。これにより、搬送システム1において搬送指令を効率よく割り付けることができ、搬送システム1における搬送能力の低下を抑制することが可能となる。すなわち、無人搬送車30は、実行中の搬送中をキャンセルし、次の指令を実行することで搬送システム1における搬送能力低下リスクの回避を行うことが可能となる。
搬送システム1では、無人搬送車30は、カート10を支持する支持機構を有する昇降台32と、システムコントローラ40からの指令を受信する受信部39aと、異常判定部38aの判定結果をシステムコントローラ40に送信する送信部39bと、を有する。この場合、無人搬送車30の異常判定部38aがステーション20において異常が有ると判定した場合に、当該判定結果がシステムコントローラ40に伝達され、当該無人搬送車は、システムコントローラ40から新たな指令を割り付けられる。その結果、搬送システム1における搬送能力の低下を抑制することができる。
搬送システム1では、異常判定部38aは、検知部37の検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20に搬送指令に対応していないカート10又は物体Aが配置されていると判定した場合、異常が有ると判定してもよい。この場合、例えば、搬送指令に対応していないカート10又は物体Aが搬送指令に対応するステーション20に配置されている場合に、異常判定部38aは、識別センサ37b又はレーザレンジファインダ37aによる検知結果に基づいて異常が有ると判定することができる。
搬送システム1では、検知部37は、カート10を識別する識別センサ37bを含む。この場合、上述したように、識別センサ37bを利用して、搬送指令に対応するステーション20に搬送指令に対応していない別のカート10が配置されているか否かを判定することが可能となる。さらに、当該ステーション20に搬送指令に対応していない別のカート10が配置されており、別のカート10に対応する搬送指令が存在する場合、搬送指令を取り消して別のカート10に対応する搬送指令を無人搬送車30に割り付けることが可能となる。
搬送システム1では、新たな指令は、取り消す搬送指令に対応するステーションに配置されている、取り消す搬送指令に対応していない被搬送物を、取り消す搬送指令に対応するステーションから搬送する他の搬送指令であってもよい。この場合、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合、当該無人搬送車30に他の搬送指令を割り付けることが可能となる。例えば、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合においても、無人搬送車30が、新たな指令に対応するカート10の搬送に向かうことが可能となる。
搬送システム1では、異常判定部38aは、検知部37の検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20と搬送指令に対応するカート10との位置が一定距離以上離れていると判定した場合、異常が有ると判定してもよい。これにより、搬送指令に対応するカート10の位置がステーション20から大きくずれており、例えば無人搬送車30による当該カート10の搬送が実行できない場合に、異常判定部38aは、ステーション20に異常が有ると判定することができる。
搬送システム1では、異常判定部38aは、検知部37の検知結果に基づいて、搬送指令に対応するステーション20に何も配置されていないと判定した場合、異常が有ると判定してもよい。これにより、搬送指令に対応するステーション20に何も配置さていない場合に、ステーション20に異常が有ると判定することができる。
搬送システム1では、新たな指令は、取り消す搬送指令に対応するカート10とは異なる別のカート10を、取り消す搬送指令に対応するステーション20とは異なる別のステーション20から搬送する他の搬送指令であってもよい。また、新たな指令は、上記別のカート10を、取り消す搬送指令に対応するステーション20とは異なる別のステーション20へ搬送する他の搬送指令であってもよい。この場合、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合、当該無人搬送車30に他の搬送指令を割り付けることが可能となる。例えば、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合においても、無人搬送車30が、新たな指令に対応するカート10の搬送に向かうことが可能となる。
搬送システム1では、新たな指令は、予め設定された位置に無人搬送車30を移動させるための指令であってもよい。これにより、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合に、予め設定した位置(例えば待機場所又は充電装置)まで無人搬送車30を走行させることができる。
無人搬送車30は、自身に割り付けられた搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合に、待機させられるのではなく、搬送指令を取り消して別の新たな指令を割り付けられる。すなわち、搬送指令が取り消された当該無人搬送車30には、例えば搬送システム1に他の搬送指令が存在していると、他の搬送指令が割り付けられることとなる。これにより、搬送システム1において搬送指令を効率よく割り付けることができ、搬送システム1における搬送能力の低下を抑制することが可能となる。
無人搬送車30の制御方法では、搬送指令に対応するステーション20に異常が有る場合に、搬送指令に対応する無人搬送車30を待機させられるのではなく、搬送指令を取り消して別の新たな指令が当該無人搬送車30に割り付けられる。すなわち、搬送指令が取り消された当該無人搬送車30には、例えば搬送システム1に他の搬送指令が存在していると、他の搬送指令が割り付けられることとなる。これにより、搬送システム1において搬送指令を効率よく割り付けることができ、搬送システム1における搬送能力の低下を抑制することが可能となる。
以上、実施形態について説明したが、本発明の一態様は、上記実施形態に限られず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、リフレクタ16aは、キャスター14の脚部14aに設けられており、無人搬送車30が潜り込みの開始位置L2を特定するために、リフレクタ16aがレーザレンジファインダ37aによって検知されるが、これに限定されない。カート10のキャスター14又はカート10の側面等にレーザレンジファインダ37aによって検知可能な部材が配置されていればよい。例えば、カート10の側面にリフレクタ16が配置されてもよい。また、例えば、筐体底面の自在キャスター14近傍から垂下する取付片にリフレクタ16aが貼り付けられる構成であってもよい。この場合、リフレクタ16aは当該取付片の短手方向外向きに反射面が向くように張り付けられている。あるいは、リフレクタ16aが配置されておらず、キャスター14の脚部14aがレーザレンジファインダ37aによって検知されてもよい。
上記実施形態では、異常判定部38aは、搬送車コントローラ38に含まれており、無人搬送車30において異常の有無が判定されていたが、これに限定されない。例えば、異常判定部38aは、システムコントローラ40に含まれてもよい。この場合、レーザレンジファインダ37a及び識別センサ37bからの信号は、送信部39bによってシステムコントローラ40に送信される。
上記実施形態では、搬送指令が取り消されるとき、システムコントローラ40によって新たな指令が割り付けられるが、これに限定されない。例えば、搬送指令が取り消されるとき、操作端末60によって新たな指令が割り付けられてもよい。より詳細には、ステーション20に異常が有る場合、無人搬送車30は、システムコントローラ40を介して操作端末60に荷すくい不可を知らせる。このとき、異常の有るステーション20に対して人間が確認を行って必要な処置を実行した後に、人間が操作する操作端末60によって搬送指令が無人搬送車30に再度割り付けられてもよい。
上記実施形態では、識別タグ15はRFタグであり、識別センサ37bはRFIDであったが、これに限定されない。例えば、識別タグ15は、バーコード又はQRコード(登録商標)等であってもよい。この場合、識別センサ37bは、バーコード又はQRコードである識別タグ15を読み取ることが可能なセンサであればよい。
上記実施形態において、無人搬送車30による潜り込みが完了した際に、識別センサ37bにより識別タグ15が読み込まれ、無人搬送車30が潜り込んだカート10が搬送指令に対応していない場合、異常判定部38aは、ステーション20において異常が有ると判定した。これに加えて、当該潜り込みが完了した際に、識別センサ37bにより識別タグ15が読み込まれない場合も、異常判定部38aは、ステーション20において異常が有ると判定してもよい。例えば、図13に示されるように、ステーション20に物体Aが配置されている場合を考える。この場合、無人搬送車30が物体Aの下方に潜り込んだとしても、識別センサ37bにより読み込まれる識別タグ15が存在しないため、異常判定部38aは、ステーション20において異常が有ると判定する。
上記実施形態では、被搬送物としてカート10を備えるが、被搬送物は特に限定されず、種々の物体であってもよい。上記実施形態では、複数の部署D間におけるカート10の自動搬送に搬送システム1を適用したが、本発明の一態様が適用される分野は特に限定されず、種々の分野に適用することができる。
上記実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。上記実施形態又は変形例における各構成の一部は、本発明の一態様の要旨を逸脱しない範囲で適宜に省略可能である。