JP2023071047A - 湿式多板クラッチ - Google Patents

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Masahiro Tago
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陽平 葉畑
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Abstract

【課題】オイルによる冷却を効率よく行い、摩擦材およびクラッチ板の温度上昇を適切に抑制する。【解決手段】入力部材3および出力部材4と、入力部材3と一体に回転する複数の第1クラッチ板5と、第1クラッチ板5と交互に配列され、出力部材4と一体に回転する複数の第2クラッチ板6と、出力部材4と第2クラッチ板6とを締結するハブ側スプライン8とを備え、ハウジング内に供給されるオイル12で、各クラッチ板5,6および摩擦材7を冷却する湿式多板クラッチ1において、ハブ側スプライン8に設けた欠歯部分8cによって、回転軸線AL方向の流入部16aから流出部16bにオイル12を流動させるスプライン油路16を形成するとともに、円周方向における欠歯部分8cの位置をずらして、第2クラッチ板6を回転軸線AL方向に配列する。【選択図】図5

Description

この発明は、接触面の摩擦によって動力を伝達する摩擦クラッチに関し、特に、オイルによる潤滑および冷却を行う湿式の多板クラッチに関するものである。
特許文献1には、摩擦面の局所的な温度上昇によるヒートスポットの発生を抑制することを目的にした湿式多板クラッチが記載されている。この特許文献1に記載された湿式多板クラッチは、円環状のコアプレートの両側面に摩擦材が貼り付けられた複数のフリクションプレートと、フリクションプレートの間に介在して摩擦係合に関与する複数のセパレータプレートとを備えている。フリクションプレートには、摩擦材に設けられた複数の穴と共に、それらの穴の中にコアプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。セパレータプレートには、周方向に複数のざぐり穴が形成されるとともに、それらのざぐり穴の内部にセパレータプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。
なお、特許文献2には、車両の発進クラッチに適用される湿式多板クラッチが記載されている。この特許文献2に記載された湿式多板クラッチは、回転軸線方向に摺動自在に配置された複数の摩擦板がクラッチドラム内に収容されており、摩擦板を潤滑したオイルがクラッチドラム内で滞留した後に排出されるように構成されている
また、特許文献3には、従動側の金属プレートと、摩擦材フェーシングが両面に接着された駆動側のフェーシングプレートとを備えた湿式多板クラッチが記載されている。この特許文献3に記載された湿式多板クラッチは、金属プレート側に、内径側から外径側に向かって貫通する油溝を形成し、油溝の外径端開口部と対向するドラム側スプライン溝と金属プレートとの間に、溝から排出された油が流通可能な周方向隙間を形成し、ドラム側の油排出用の開口穴を周方向隙間の軸延長上に配置するように構成されている。
特開2005-351325号公報 特開2008-133839号公報 特開2002-106597号公報
上記のように、特許文献1に記載された湿式多板クラッチでは、フリクションプレートおよびセパレータプレートに穴およびざぐり穴が設けられ、更に、それらの穴およびざぐり穴に、セパレータプレートまたはフリクションプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。そのため、フリクションプレートの穴およびセパレータプレートのざぐり穴にオイルを滞留させて、摩擦面の発熱を抑制することができ、更に、油穴を貫通させることによって放熱面積を拡大し、効率よく摩擦熱を放熱することができる、とされている。この特許文献1に記載されているような湿式多板クラッチは、フリクションプレートやセパレータプレートのような複数のクラッチ板(および摩擦材)が、回転軸線方向に交互に配列されていて、それぞれのクラッチ板がオイルによって冷却される。湿式多板クラッチの潤滑および冷却用のオイルは、通常、回転軸線方向に流動するように供給(圧送)される。したがって、供給されるオイルの(回転軸線方向における)流入側に配置されているクラッチ板は、温度が低い状態のオイルで冷却される。それに対して、供給されるオイルの(回転軸線方向における)流出側に配置されているクラッチ板は、既にクラッチ板を冷却して温度が上昇した状態のオイルによって冷却される。そのため、オイルの流出側に配置されているクラッチ板は、オイルの流入側に配置されているクラッチ板と比較して、オイルによる冷却効果が低くなり、その分、クラッチ板の温度が高くなる。このように、従来の湿式多板クラッチでは、回転軸線方向に配列される複数のクラッチ板の間で温度のばらつきが大きくなり、その結果、いずれかのクラッチ板で発生する摩擦熱の最高温度が高くなってしまう。発熱するクラッチ板の最高温度が高くなると、局所的に、焼き付きや上述したようなヒートスポットなどが発生してしまう懸念がある。
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、オイルによる潤滑および冷却を効率よく行い、摩擦熱によって発熱する摩擦材およびクラッチ板の温度上昇を抑制することが可能な湿式多板クラッチを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、同軸上に配置され、互いに相対回転する第1回転部材および第2回転部材と、前記第1回転部材と一体に回転する複数の第1クラッチ板と、回転軸線方向で複数の前記第1クラッチ板と交互に配列され、前記第2回転部材と一体に回転する複数の第2クラッチ板と、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板との間で、トルクを伝達し(すなわち、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板とを一体に回転させ)、かつ、前記回転軸線方向の滑動(すなわち、前記第2回転部材に対する前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における相対移動)を可能にするハブ側スプラインと、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、および、前記ハブ側スプラインを収容するハウジングと、を備え、前記ハウジング内に供給されるオイルで、少なくとも、前記第1クラッチ板、および、前記第2クラッチ板をそれぞれ潤滑および冷却する湿式多板クラッチにおいて、前記第2クラッチ板に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン穴と、前記第2回転部材に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン軸との間で、前記回転軸線方向に連なる空間であって、前記空間に前記オイルが流入する流入部と、前記空間から前記オイルが流出する流出部とを有し、前記流入部に流入した前記オイルを前記流出部に向けて流動させるスプライン油路と、互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面との間で、前記オイルを流動させる出口側油路と、互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面との間で、前記オイルを流動させる入口側油路と、前記第2クラッチ板の外周部分で、かつ、互いに隣接する前記出口側油路と前記入口側油路との間で、前記オイルを流動させる外周油路と、を備え、前記スプライン油路、前記出口側油路、前記入口側油路、および、前記外周油路により、前記オイルが、前記スプライン油路から、前記出口側油路、前記外周油路、前記入口側油路の順に流動して、前記スプライン油路に還流する循環油路が形成されるとともに、前記スプライン油路は、前記第2クラッチ板における前記スプライン穴の所定の内歯を欠損させた欠歯部分に形成され、少なくとも2枚の前記第2クラッチ板は、円周方向におけるそれぞれの前記欠歯部分の位置が互いに異なるように、前記回転軸線方向に配列されていることを特徴とするものである。
また、この発明における前記第1回転部材は、湿式多板クラッチの外部からトルクが伝達される入力部材であり、この発明における前記第2回転部材は、湿式多板クラッチの外部にトルクを伝達する出力部材であってもよい。
また、この発明の前記第2クラッチ板は、前記スプライン穴における前記内歯の2ピッチ置きに、あるいは、1歯飛ばしで、前記欠歯部分が形成されていてよく、少なくとも2枚の前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向に前記内歯の1ピッチ分、すなわち、1歯分ずれた状態で、前記回転軸線方向に配列されていてもよい。
また、この発明の前記回転軸線方向に前記第1クラッチ板を挟んで隣り合う全ての前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向に前記内歯の1ピッチ分、すなわち、1歯分ずれた状態で、前記回転軸線方向に配列されていてもよい。
また、この発明の前記回転軸線方向における最も前記流入部側に配列された前記第2クラッチ板、および、当該第2クラッチ板と前記回転軸線方向に前記第1クラッチ板を挟んで隣り合う前記第2クラッチ板の、少なくとも2枚の前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向における前記欠歯部分の位置が一致した状態で、前記回転軸線方向に配列されていてもよい。
また、この発明は、前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板にそれぞれ取り付けられ、隣接する前記第1クラッチ板または前記第2クラッチ板との間で摩擦力を発生し、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板との間で動力を伝達する摩擦材を備えていてよく、この発明の前記摩擦材は、前記第1クラッチ板の前記流入部側の側面、および、前記第2クラッチ板の前記流入部側の側面に、それぞれ、取り付けられていてもよい。
そして、この発明は、前記第1回転部材と前記第1クラッチ板との間で、トルクを伝達し(すなわち、前記第1回転部材と前記第1クラッチ板とを一体に回転させ)、かつ、前記回転軸線方向の滑動(すなわち、前記第1回転部材に対する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における相対移動)を可能にするドラム側スプラインを備えており、前記第2回転部材の内周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン穴が形成され、前記第1クラッチ板の外周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン軸が形成されていてもよい。なお、この前記ドラム側スプラインには、前記ハブ側スプラインにおける前記スプライン油路のような油路は形成されない。
この発明の湿式多板クラッチは、複数の第1クラッチ板と複数の第2クラッチ板とが、回転軸線方向で交互に配列されて構成される。複数の第1クラッチ板は、第1回転部材(例えば、入力部材となるクラッチドラム)の内周部分に配置される。複数の第1クラッチ板と第1回転部材とは、例えば、ドラム側スプラインによって締結される。すなわち、第1回転部材の内周部分に形成されたドラム側スプラインのスプライン穴と、第1クラッチ板の外周部分に形成されたドラム側スプラインのスプライン軸とがそれぞれ嵌合し、それら第1回転部材と複数の第1クラッチ板とがスプライン締結される。一方、複数の第2クラッチ板は、第2回転部材(例えば、出力部材となるクラッチハブ)の外周部分に配置される。複数の第2クラッチ板と第2回転部材とは、ハブ側スプラインによって締結される。すなわち、第2クラッチ板の内周部分に形成されたハブ側スプラインのスプライン穴と、第2回転部材の外周部分に形成されたハブ側スプラインのスプライン軸とがそれぞれ嵌合し、それら第2回転部材と複数の第2クラッチ板とがスプライン締結される。このハブ側スプラインには、第2クラッチ板のスプライン穴と、第2回転部材のスプライン軸との間で、回転軸線方向に連なるスプライン油路が形成される。スプライン油路の回転軸線方向における一方の端部は、オイルが流入する流入部となり、スプライン油路の回転軸線方向における他方の端部は、オイルが流出する流出部となる。
上記のようにハブ側スプラインに形成されるスプライン油路は、第2クラッチ板におけるスプライン穴の所定の内歯を欠損させて、部分的にスプラインの嵌合がないスペース、すなわち、第2クラッチ板におけるスプライン穴の欠歯部分を設けることによって形成される。この第2クラッチ板に設けた欠歯部分が、回転軸線方向に配列される複数の第2クラッチ板の間で、回転軸線方向につながることにより、上記のような流入部から流出部に向かってオイルが流動するスプライン油路が形成される。
なお、この発明の湿式多板クラッチでは、第1クラッチ板の回転軸線方向におけるオイルの流入部側の側面に、それぞれ、摩擦材が取り付けられる。第1クラッチ板と交互に配列される第2クラッチ板においても、第2クラッチ板の回転軸線方向におけるオイルの流入部側の側面に、それぞれ、摩擦材が取り付けられる。
また、この発明の湿式多板クラッチでは、互いに対向する第1クラッチ板の流入部側の側面と第2クラッチ板の流出部側の側面との間の隙間が、主に、第1クラッチ板の摩擦材(および、各クラッチ板)を冷却するオイルが流動する出口側油路となる。また、互いに対向する第1クラッチ板の流出部側の側面と第2クラッチ板の流入部側の側面との間の隙間が、主に、第2クラッチ板の摩擦材(および、各クラッチ板)を冷却するオイルが流動する入口側油路となる。そして、第2クラッチ板の外周部分とハウジングの内周面との間の隙間が、その第2クラッチ板の流出部側の側面と流入部側の側面との間で、すなわち、互いに隣接する出口側油路と入口側油路との間で、オイルが流動する外周油路となる。
そして、この発明の湿式多板クラッチでは、上記のような流入部から流出部に向けてスプライン油路を流動する(圧送される)オイルの一部が、スプライン油路から出口側油路に分流し、第1クラッチ板に取り付けられた摩擦材および各クラッチ板を冷却する。出口側油路で摩擦材および各クラッチ板を冷却したオイルは、外周油路を通って、入口側油路に流れ込む。入口側油路に流入したオイルは、第2クラッチ板に取り付けられた摩擦材および各クラッチ板を冷却して、再び、スプライン油路に還流する。すなわち、隣接する一対の第1クラッチ板および第2クラッチ板において、スプライン油路から、出口側油路、外周油路、入口側油路、および、スプライン油路の順でオイルが循環する循環油路が形成される。なお、前述したドラム側スプラインには、ハブ側スプラインにおけるスプライン油路のような油路は形成されない。そのため、ドラム側スプラインのスプライン歯を、第1クラッチ板と第2クラッチ板との間の仕切り板、あるいは、いわゆるバッフル(邪魔板)として機能させることができ、上記のような循環油路を容易に形成できる。
上記のように一組の循環油路を流動したオイルは、スプライン油路に戻った後に、次に流出部側(下流側)に位置する他の循環油路に流入し、同様に摩擦材および各クラッチ板を冷却する。このように、流入部側(上流側)の循環油路から、流出部側(下流側)の循環油路に向けて、順次、オイルが循環しながら流動し、摩擦材および各クラッチ板を冷却する。循環油路の中で摩擦材および各クラッチ板を冷却し、温度が上昇したオイルは、一旦、スプライン油路に還流した際に温度が低下し、その後、流出部側の他の循環油路に流入する。このようなオイルの循環が、それぞれの循環油路で順次行われることにより、スプライン油路を流動するオイルの温度が、流入部側から流出部側に向かうにつれて徐々に(緩やかに)上昇する。言い換えると、摩擦材および各クラッチ板を冷却する際のオイルの温度上昇が抑制される。その結果、ハウジング内の各部で、摩擦材および各クラッチ板を冷却するオイルの温度差が小さくなり、摩擦材および各クラッチ板の温度のばらつきが小さくなる。すなわち、摩擦材および各クラッチ板の温度が平準化される。そのため、摩擦材および各クラッチ板における最高温度を下げることができる。
但し、外部から供給されたオイルがスプライン油を流入部から流出部に向かって流動する際に、そのオイルの流れが速過ぎると、オイルが出口側油路の入り口を素通りしてしまい、スプライン油路から出口側油路へオイルが適切に分流しない可能性があった。そこで、この発明の湿式多板クラッチでは、上記のように複数の第2クラッチ板にそれぞれ形成される欠歯部分の位置を互いに異ならせている。具体的には、少なくとも2枚の第2クラッチ板は、円周方向におけるそれぞれの欠歯部分の位置が互いに異なるように、回転軸線方向に配列されている。そのため、スプライン油路を回転軸線方向で流出部側に向かって流動するオイルは、所定の第2クラッチ板の欠歯部分を通過すると、一旦、円周方向に流動した後に、所定の第2クラッチ板の流出部側に配列されている他の第2クラッチ板の欠歯部分に流入する。
このように、この発明の湿式多板クラッチでは、スプライン油路を形成する欠歯部分の円周方向における位置が異なっていることにより、所定の第2クラッチ板の欠歯部分の位置に対向する他の第2クラッチ板のスプラインの内歯が、回転軸線方向におけるオイルの流動、すなわち、スプライン油路におけるオイルの流動に対するいわゆるバッフル(邪魔板)として機能する。そのため、スプライン油路を流れる温度の低いオイルが、出口側油路の入り口を素通りせずに、流入部側に配列された第2クラッチ板の欠歯部分に対向する他の第2クラッチ板のスプラインの内歯周辺、すなわち、スプライン油路と出口側油路との接続部分周辺で滞留し易くなる。スプライン油路と出口側油路との接続部分周辺でオイルが滞留することにより、スプライン油路から出口側油路にオイルが流入し易くなる。その結果、上記のような循環油路が形成され易くなる。すなわち、上記のような循環油路を容易に、かつ、適切に形成することができる。
したがって、この発明の湿式多板クラッチによれば、オイルによる潤滑および冷却を効率よく行うことができ、摩擦熱によって発熱する摩擦材、第1クラッチ板、および、第2クラッチ板の温度上昇を適切に抑制することができる。すなわち、湿式多板クラッチの冷却性能を向上させることができる。そのため、焼き付きやヒートスポット等の発生を回避または抑制することができ、ひいては、湿式多板クラッチの耐久性を向上させることができる。
この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、湿式多板クラッチの全体的な構成を示す断面図である。 この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、特に、クラッチハブと第2クラッチ板とを締結するハブ側スプライン、第2クラッチ板の内縁部分に形成されるスプライン穴(内歯)、および、そのスプライン穴の内歯を欠損させた欠歯部分、ならびに、その欠歯部分をスプライン穴における内歯の2ピッチ置きに(または、1歯飛ばしで)設けた第2クラッチ板等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、特に、クラッチドラムと第1クラッチ板とを締結するドラム側スプライン、第1クラッチ板の外縁部分に形成されるスプライン軸(外歯)、および、第1クラッチ板の側面に分割して取り付けられる摩擦材等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、特に、ハブ側スプラインにおける第2クラッチ板の内縁部分に形成されるスプライン穴(内歯)、および、第2クラッチ板の側面に分割して取り付けられる摩擦材等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチにおける、第1クラッチ板、第2クラッチ板、および、摩擦材を拡大して示すとともに、各クラッチ板および摩擦材を冷却するオイルが流動する出口側油路、入口側油路、外周油路、および、スプライン油路、ならびに、それらの油路から形成される循環油路等を示す図であって、特に、ハブ側スプラインの欠歯部分の位置をずらして形成したスプライン油路を流れるオイルの状態示す図である。(a)は、各クラッチ板およびスプライン油路を側面側から見た状態を示し、(b)は、第2クラッチ板のスプライン穴(内歯)および欠歯部分を回転中心側から見た状態を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチにおけるオイルの流動(循環)の作用原理を説明するための図であって、湿式多板クラッチの各クラッチ板に関連して形成されるスプライン油路、出口側油路、外周油路、入口側油路、および、循環油路、ならびに、オイルの流れを模式的に示す図である。 この発明の湿式多板クラッチにおける第2クラッチ板の内縁部分に形成されるハブ側スプラインのスプライン穴(内歯)、および、そのスプライン穴における内歯の2ピッチ置きに(1歯飛ばしで)内歯を欠損させた欠歯部分、ならびに、3枚の第2クラッチ板が、互いに、円周方向にスプライン穴における内歯の1ピッチ分ずれた(または、1歯分回転した)位置で、回転軸線方向に交互に配列した状態を説明するための図である。 この発明の湿式多板クラッチにおけるオイルの流動状態を説明するための図であって、スプライン油路を流動するオイルが、第2クラッチ板に形成されたスプライン穴(内歯)付近で滞留した後に、第1クラッチ板と第2クラッチ板との間の出口側油路に流入する状態を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチにおけるオイルの流動状態を説明するための図であって、第2クラッチ板と第1クラッチ板との間の入口側油路を流動したオイルが、第2クラッチ板に形成されたスプライン穴の欠歯部分を通って、スプライン油路に合流(還流)する状態を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチの他の実施形態を説明するための図であって、スプライン油路の流入部側に位置する第2クラッチ板を、その第2クラッチ板に形成されたスプライン穴の欠歯部分8cの位置をそろえて配列した構成を示す図である。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明の実施形態における湿式多板クラッチは、例えば、いわゆるスターティングデバイスあるいは発進クラッチとして、エンジン(内燃機関)を駆動力源とする車両に適用される。エンジンとトランスミッションとの間で、トルクの伝達および遮断を連続的に行い、トルク伝達時のショックを軽減して、車両のスムーズな発進を実現する。あるいは、車両の減速走行時に、適切なエンジンブレーキ状態を実現する。また、駆動力源にモータを有する車両においては、減速走行時に、モータによるスムーズな回生制動を実現する。上記のような発進クラッチとしては、車両の発進時や減速走行時に、連続的でスムーズなトルク伝達を行うために、接触面の摩擦によって動力を伝達して、スリップ係合または半係合状態(いわゆる、半クラッチ)が可能な摩擦クラッチが用いられる。更に、大きなトルク伝達を可能にするために、摩擦係合させるクラッチ板を複数組設けた多板クラッチが用いられる。また、上記のようなスリップ係合の多用や大きなトルク伝達による発熱量の増大に対応するために、オイルによる潤滑および冷却を行う湿式の摩擦クラッチが用いられる。この発明の実施形態における湿式多板クラッチは、湿式多板式の摩擦クラッチであり、例えば、上記のような車両の発進クラッチとして、また、より大きなトルクの伝達が要求される使用条件の下で適用される。
図1に、この発明の実施形態における湿式多板クラッチの一例を示してある。図1に示す湿式多板クラッチ1は、主要な構成要素として、ハウジング2、クラッチドラム3、クラッチハブ4、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、出力軸10、および、作動機構11を備えている。
ハウジング2は、湿式多板クラッチ1の外殻を形成する部材であり、内側に、後述するクラッチハブ4、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、作動機構11、および、出力軸10の一部を収容している。また、ハウジング2の内部には、潤滑および冷却用のオイル12が供給される。オイル12は、少なくとも、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、摩擦材7をそれぞれ潤滑および冷却する。更に、ハウジング2の内周部分には、後述するドラム側スプライン9(具体的には、ドラム側スプライン9のスプライン穴9a)が形成されている。図1に示す例では、ハウジング2は、後述するクラッチドラム3によって構成されている。
クラッチドラム3は、この発明の実施形態における“第1回転部材”に相当する回転部材であり、湿式多板クラッチ1の回転軸線AL上に配置されている。クラッチドラム3は、主に、ケース部3a、ハブ部3b、カバー部3c、および、ボス部3dから形成されている。
ケース部3aは、円筒形状の回転部材であり、ケース部3aの回転軸線AL方向における一方(図1の右側)の端部には、内フランジ部3eが一体に形成されており、内フランジ部3eの内縁部分が、ハブ部3bの端部に連結されている。ケース部3aの回転軸線AL方向における他方(図1の左側)の端部は、開口形状に成形され、カバー部3cおよびボス部3dが取り付けられることによって閉じられている。ケース部3aの内周面には、後述するドラム側スプライン9のスプライン穴9aが形成されており、そのケース部3aの内周部分に、後述するドラム側スプライン9のスプライン軸9bが形成された複数の第1クラッチ板5、および、第1クラッチ板5に取り付けられた摩擦材7がそれぞれ配置されている。また、ケース部3aの内周部分には、回転軸線AL方向で複数の第1クラッチ板5と交互に配列された複数の第2クラッチ板6、および、第2クラッチ板6に取り付けられた摩擦材7がそれぞれ配置されている。また、ケース部3aの内周部分には、上記の第2クラッチ板6と一体に回転する後述のクラッチハブ4、第2クラッチ板6とクラッチハブ4とを締結する後述のハブ側スプライン8、および、クラッチハブ4と一体に回転する後述の出力軸10(の一部)がそれぞれ配置されている。更に、ケース部3aおよび内フランジ部3eの内周部分には、後述する作動機構11が配置されている。
ハブ部3bは、円柱形状の回転軸部材であり、クラッチドラム3の回転軸として機能する。ハブ部3bは、軸受13を介して、後述するクラッチハブ4の外周部分に支持されている。また、ハブ部3bは、軸心周辺をくり抜いた空間部分で、クラッチハブ4と一体回転する後述の出力軸10の先端を支持している。ハブ部3bとクラッチハブ4および出力軸10とは、互いに相対回転が可能であり、ハブ部3bと出力軸10との間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材が設けられており、シール性が確保されている。
カバー部3cは、円環板形状の回転部材であり、その内縁部分が、ボス部3dと一体に形成されたフランジ部3fに連結されている。そして、カバー部3cは、上記のようにボス部3dと一体に連結された状態で、ケース部3aの回転軸線AL方向における他方の端部、すなわち、ケース部3aの開口端に連結されている。したがって、カバー部3cは、ボス部3dと共に、ケース部3aの開口部分を塞いでいる。
ボス部3dは、円筒形状の回転軸部材であり、後述する出力軸10と同軸上、すなわち、回転軸線AL上で、出力軸10の外周部分に配置されている。ボス部3dと出力軸10とは、互いに相対回転が可能であり、ボス部3dと出力軸10との間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材が設けられており、シール性が確保されている。
上記のように、ケース部3a、ハブ部3b、カバー部3c、および、ボス部3dは、互いに一体に組み付けられ、かつ、各連結部分のシール性が確保された状態で、クラッチドラム3を形成している。そして、上記のように、クラッチドラム3の内周部分に、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、および、作動機構11などが、それぞれ、配置されている。すなわち、クラッチドラム3は、内部に、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、および、作動機構11を収容するとともに、シール性が確保された状態でオイル12を保持している。したがって、この図1に示す例では、クラッチドラム3は、湿式多板クラッチ1の外殻を形成するハウジング2を兼ねている。そして、クラッチドラム3は、この発明の実施形態における“第1回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の外部からトルクが伝達される“入力部材”となっている。したがって、クラッチドラム3は、例えば、図示しないエンジンやモータなどの動力源の出力軸に、一体に回転するように連結される。
クラッチハブ4は、この発明の実施形態における“第2回転部材”に相当する回転部材であり、回転軸線AL上に配置されている。また、クラッチハブ4は、上記のクラッチドラム3と相対回転が可能なように配置されている。すなわち、上記のクラッチドラム3およびクラッチハブ4は、同軸上に配置され、互いに相対回転する。クラッチハブ4は、主に、ハブ部4a、および、スプライン部4bから形成されている。
ハブ部4aは、円柱形状の回転軸部材であり、クラッチハブ4の回転軸として機能する。ハブ部4aは、後述する出力軸10の外周部分に配置されている。ハブ部4aと出力軸10とは、例えばスプライン(図示せず)によって、互いに一体に回転するように連結されている。それとともに、ハブ部4aおよび出力軸10は、前述した軸受13を介して、クラッチドラム3におけるハブ部3bの内周部分に支持されている。
スプライン部4bは、ハブ部4aの外周部分に位置する円筒形状の回転部材であり、ウェブ部4cを介して、ハブ部4aと一体に形成されている。ハブ部4a、スプライン部4b、および、ウェブ部4cは、全て一体に回転する。スプライン部4bの外周面には、後述するハブ側スプライン8のスプライン軸8bが形成されている。したがって、スプライン部4bは、後述する第2クラッチ板6の内縁部分に形成されたスプライン穴8aと共に、ハブ側スプライン8を構成している。
上記のような各部材4a,4b,4cから形成されるクラッチハブ4は、この発明の実施形態における“第2回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の外部にトルクを伝達する“出力部材”となっている。したがって、クラッチドラム3は、例えば、図示しない車両に搭載される変速機の入力軸に、一体に回転するように連結される。図1に示す例では、クラッチハブ4は、例えば、車両の駆動系統(図示せず)にトルクを伝達する、後述の出力軸10に連結されている。なお、クラッチハブ4は、リテーナ4dにより、回転軸線AL方向の移動が規制され、クラッチドラム3に対して位置決めされている。リテーナ4dとクラッチドラム3のフランジ部3fとの間には、スラスト軸受(図示せず)が設けられており、クラッチハブ4とクラッチドラム3とを相対回転可能に支持している。
第1クラッチ板5は、いわゆる“アウタープレート”、あるいは、“クラッチプレート”などと称される円環板形状の回転部材であり、回転軸線AL方向に複数配列されている。図1に示す例では、後述する受圧クラッチ板5cおよび反力クラッチ板5dを含めて、回転軸線AL方向に5枚の第1クラッチ板5が配列されている。第1クラッチ板5は、回転軸線AL方向で、後述する複数の第2クラッチ板6と交互に配列されている。第1クラッチ板5は、いずれも、“第1回転部材”、すなわち、“入力部材”であるクラッチドラム3と一体に回転する。具体的には、図2、図3、図4に示すように、第1クラッチ板5の外縁部分に、後述するドラム側スプライン9のスプライン軸9bが形成されている。その第1クラッチ板5に形成されたスプライン軸9bと、前述したクラッチドラム3の内周面に形成されたスプライン穴9aとが嵌合して、ドラム側スプライン9が構成されている。すなわち、クラッチドラム3と第1クラッチ板5とが、ドラム側スプライン9によって締結されている。したがって、第1クラッチ板5は、クラッチドラム3と一体に回転するとともに、回転軸線AL方向で、クラッチドラム3に対する相対移動(滑動)が可能になっている。そして、第1クラッチ板5の後述する流入部16a側の側面5aに、後述する摩擦材7が取り付けられている。
なお、複数の第1クラッチ板5と、後述する複数の第2クラッチ板6とは、回転軸線AL方向で交互に配列されるが、回転軸線AL方向における両端(最も外側)には、いずれも、第1クラッチ板5が配置されている。この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、回転軸線AL方向における両端に配置される第1クラッチ板5を、それぞれ、受圧クラッチ板5c、および、反力クラッチ板5dとする。
具体的には、図1に示すように、交互に配列された各クラッチ板5,6の回転軸線AL方向における片側(図1の右側)に、後述する作動機構11が配置されている。作動機構11は、各クラッチ板5,6に回転軸線AL方向の押圧力を付与する。その作動機構11に回転軸線AL方向で最も近い位置に配置される第1クラッチ板5が、受圧クラッチ板5cである。したがって、受圧クラッチ板5cは、直接、作動機構11の押圧力を受けて、回転軸線AL方向の力が作用する。一方、上記の作動機構11に回転軸線AL方向で最も離れた位置に配置される第1クラッチ板5が、反力クラッチ板5dである。反力クラッチ板5dは、回転軸線方向の滑動、すなわち、回転軸線AL方向におけるクラッチドラム3に対する相対移動が規制されている。図1に示す例では、反力クラッチ板5dは、回転軸線AL方向における外側(図1の左側)に隣接して配置された保持プレート14により、回転軸線AL方向における外側への滑動が規制されている。保持プレート14は、円環板形状の回転部材であり、例えば、スナップリング(または、Cリング、C形止め輪)15により、クラッチドラム3の内周部分に、回転軸線AL方向の移動が不可能なように固定されている。
また、図1に示す例では、回転軸線ALで、最も、後述する流入部16a側(図1の左側)の位置に配置された第1クラッチ板5が、上記の反力クラッチ板5dになっている。この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、上記のように、回転軸線ALで最も流入部16a側に配置される第1クラッチ板5(図1に示す例では、反力クラッチ板5d)には、例外的に、摩擦材7を取り付けない。図示していないが、例えば、回転軸線AL方向における流入部16aの位置が異なる場合(例えば、図1の右側に流入部16aが形成され、図1の左側に後述する流出部16bが形成される場合)は、受圧クラッチ板5cに、摩擦材7を取り付けない。
第2クラッチ板6は、いわゆる“インナーディスク”、あるいは、“クラッチディスク”などと称される円環板形状の回転部材であり、回転軸線AL方向に複数配列されている。図1に示す例では、回転軸線AL方向に4枚の第1クラッチ板5が配列されている。第2クラッチ板6は、回転軸線AL方向で、上記の複数の第1クラッチ板5と交互に配列されている。第2クラッチ板6は、いずれも、“第2回転部材”、すなわち、“出力部材”であるクラッチハブ4と一体に回転する。具体的には、図2、図3、図4に示すように、第2クラッチ板6の内縁部分に、後述するハブ側スプライン8のスプライン穴8aが形成されている。その第2クラッチ板6に形成されたスプライン穴8aと、前述したクラッチハブ4の外周面に形成されたスプライン軸8bとが嵌合して、ハブ側スプライン8が構成されている。すなわち、クラッチハブ4と第2クラッチ板6とが、ハブ側スプライン8によって締結されている。したがって、第2クラッチ板6は、クラッチハブ4と一体に回転するとともに、回転軸線AL方向で、クラッチハブ4に対する相対移動(滑動)が可能になっている。そして、第2クラッチ板6の後述する流入部16a側の側面6aに、後述する摩擦材7が取り付けられている。
摩擦材7は、いわゆる“クラッチフェーシング”、あるいは、単に“フェーシング”などと称される部材であり、適度な摩擦係数を有し、耐摩耗性、耐熱性、および、低相手攻撃性などに優れた材料によって形成されている。摩擦材7は、上記の第1クラッチ板5および第2クラッチ板6にそれぞれ取り付けられ、隣接する第2クラッチ板6または第1クラッチ板5との間で摩擦力を発生する。そして、摩擦材7は、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間で動力を伝達する。図5の(a)に示すように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、摩擦材7は、第1クラッチ板5の後述する流入部16a側(図5の左側)の側面5aに取り付けられている。同様に、摩擦材7は、第2クラッチ板6の後述する流入部16a側(図5の左側)の側面6aに取り付けられている。後述するように、流入部16aは、ハブ側スプライン8に、回転軸線AL方向に延びるように形成されるスプライン油路16の一方の端部であり、そのスプライン油路16に最初にオイル12が到達する部分である。また、図2、図3、図4に示すように、摩擦材7は、各クラッチ板5,6の円周方向で、所定の形状の複数の部材(摩擦材セグメント7a)に分割されて、各クラッチ板5,6の側面5a,6aにそれぞれ取り付けられている。各クラッチ板5,6の円周方向で隣り合う摩擦材セグメント7aの間には、所定の隙間7bが設けられている。この隙間7bを中心に、後述する出口側油路21、および、後述する入口側油路22が形成される。
ハブ側スプライン8は、図2、図3、図4に示すように、第2クラッチ板6の内縁部分に形成されたスプライン穴8a、および、クラッチハブ4の外周面に形成されたスプライン軸8bによって構成されている。ハブ側スプライン8は、クラッチハブ4と第2クラッチ板6とを一体に回転させるとともに、クラッチハブ4に対する第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における相対移動が可能なように、それらクラッチハブ4と第2クラッチ板6とを締結している。すなわち、ハブ側スプライン8は、クラッチハブ4に対する回転軸線AL方向における第2クラッチ板6の滑動を可能に、かつ、クラッチハブ4と第2クラッチ板6との間でトルクを伝達する。
更に、ハブ側スプライン8には、この発明の実施形態におけるスプライン油路16が形成されている。具体的には、クラッチハブ4に設けられたハブ側スプライン8のスプライン穴8aと、第2クラッチ板6に設けられたハブ側スプライン8のスプライン軸8bとの間で、回転軸線AL方向に連なるように形成された空間が、ハウジング2(すなわち、クラッチドラム3)の中に供給されるオイル12が流動するスプライン油路16になっている。スプライン油路16は、ハブ側スプライン8の所定の歯を欠損させた部分に形成される。具体的には、図2、図3、図4に示すように、スプライン油路16は、ハブ側スプライン8における(第2クラッチ板6の内縁部分に形成された)スプライン穴8aの内歯を、円周方向に1歯飛ばしで、すなわち、スプライン穴8aにおける内歯の2ピッチ置きに欠損させた欠歯部分8cに形成されている。この欠歯部分8cによって形成されるスプライン油路16に関して、欠歯部分8cの位置を考慮した第2クラッチ板6の配列や、スプライン油路16を流れるオイル12の状態などの詳細を後述する。
図1に示すように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、後述する出力軸10の内部に形成された供給油路17から、潤滑および冷却用のオイル12が供給される。例えば、所定のオイルポンプ(図示せず)で発生させた油圧で、オイル12が供給油路17に圧送される。供給油路17を流動したオイル12は、出力軸10の外周面から流出し、リテーナ4dに形成された油路(図示せず)を通って、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16に流れ込む。図1に示す例では、オイル12は、回転軸線AL方向に延びるスプライン油路16の左側の端部に流入する。したがって、スプライン油路16の左側の端部が、供給油路17からスプライン油路16に到達したオイル12が最初にスプライン油路16の中に流れ込む流入部16aになっている。そして、流入部16aからスプライン油路16に流入したオイル12は、スプライン油路16を流動して、スプライン油路16の右側の端部から流出する。したがって、スプライン油路16の右側の端部が、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16からオイル12が流出する流出部16bになっている。スプライン油路16の流出部16bから流出したオイル12は、後述する出力軸10の外周面から、出力軸10の内部に形成された排出油路18に流れ込み、その排出油路18を通って、湿式多板クラッチ1の外部に流出する。なお、出力軸10の内部には、上記の供給油路17および排出油路18の他に、後述する作動機構11の動作を制御するための作動油(油圧)を供給する制御油路19が形成されている。
ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3の内周面に形成されたスプライン穴9a、および、図2、図3、図4に示すような第1クラッチ板5の外縁部分に形成されたスプライン軸9bによって構成されている。ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3と第1クラッチ板5とを一体に回転させるとともに、クラッチドラム3に対する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における相対移動が可能なように、それらクラッチドラム3と第1クラッチ板5とを締結している。すなわち、ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3に対する回転軸線AL方向における第1クラッチ板5の滑動を可能に、かつ、クラッチドラム3と第1クラッチ板5との間でトルクを伝達する。
なお、ドラム側スプライン9には、前述のハブ側スプライン8におけるスプライン油路16のような油路は形成されない。後述するように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、回転軸線AL方向に交互に配列される第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間で、スプライン油路16に供給されたオイル12が循環する循環油路20が形成される。互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との組み合わせが複数組あれば、それに対応する複数組の循環油路20が、回転軸線AL方向に並んで順次形成される。その場合、上記のように、ドラム側スプライン9に油路を設けないことにより、第1クラッチ板5に形成されたスプライン軸9bの歯が、第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間の仕切り板、あるいは、オイル12の流動に対するいわゆるバッフル(邪魔板)として機能する。その結果、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6の外周部分で、第1クラッチ板5を挟むオイル12の流動が抑制される(第2クラッチ板6の外周部分では、ドラム側スプライン9の通常のクリアランス等の隙間を通じて、所定の第2クラッチ板6から下流側の第2クラッチ板6へ少量のオイル12が流動する場合もある)。したがって、ドラム側スプライン9に、多量のオイル12を流動させる油路を形成しないことにより、上記のような個々の循環油路20が形成され易くなっている。
出力軸10は、例えば、変速機の入力軸(図示せず)等にトルクを伝達する回転軸部材であり、回転軸線AL上で、クラッチハブ4におけるハブ部4aの内周部分に配置されている。出力軸10とクラッチハブ4とは、例えばスプライン(図示せず)によって、互いに一体に回転するように連結されている。出力軸10の内部には、前述した供給油路17、排出油路18、および、制御油路19がそれぞれ形成されている。なお、前述したクラッチハブ4は、出力軸10の外周部分に一体に形成されてもよい。その場合、出力軸10は、クラッチハブ4と共に、この発明の実施形態における“第2回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の“出力部材”を構成する。
そして、作動機構11は、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に、回転軸線AL方向の押圧力を加え、それら第1クラッチ板5および第2クラッチ板6をそれぞれ回転軸線AL方向に滑動させて、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6とを(摩擦材7を介して)摩擦係合させる。作動機構11は、例えば、油圧を利用した油圧アクチュエータや、電磁力を利用した電磁アクチュエータなどから構成される。図1に示す例では、作動機構11は、油圧アクチュエータによって構成されている。具体的には、作動機構11は、主に、油圧室11a、ピストン11b、および、リターンスプリング11cから構成されている。
油圧室11aは、クラッチドラム3における内フランジ部3eの内周部分、および、クラッチドラム3におけるハブ部3bの外周部分の円環形状の空間に形成されている。油圧室11aには、後述する出力軸10の制御油路19が連通されており、制御油路19から油圧室11a内に作動油(油圧)が供給されるように構成されている。この油圧室11aに、円環形状のピストン11bが配置されている。ピストン11bは、油圧室11aに対して、回転軸線AL方向の相対移動が可能なように配置されている。ピストン11bの背面側(図1の左側)に、リターンスプリング11cが配置されている。リターンスプリング11cは、スプリング保持部11dによってピストン11bの背面側に保持されており、回転軸線AL方向でピストン11bを第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)から離間させる方向(図1の右方向)の付勢力を発生する。
上記の油圧室11aとピストン11bとの間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材によってシール性が確保されている。したがって、制御油路19から作動油が供給され、ピストン11bに油圧が作用すると、ピストン11bは、リターンスプリング11cを圧縮しながら、回転軸線AL方向で第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)を押圧する方向(図1の左方向)に移動する。それにより、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に、回転軸線AL方向の押圧力が作用し、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6とが、それぞれの摩擦材7を介して摩擦係合する。すなわち、湿式多板クラッチ1が係合状態になる。一方、上記のようにピストン11bを動作させた油圧を低下させると、ピストン11bは、リターンスプリング11cの付勢力によって、回転軸線AL方向で第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)から離間する方向(図1の右方向)に移動する。それにより、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に作用していた押圧力が解消され、それに伴い、第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との摩擦係合が解除される。すなわち、湿式多板クラッチ1が解放状態になる。
なお、上記の図1に示す例では、作動機構11は、回転軸線AL方向で、各クラッチ板5,6の流出部16b側(図1の右側)に配置されているが、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、例えば、図5の(a)に示すように、回転軸線AL方向で、各クラッチ板5,6の流入部16a側(図1の左側)に、作動機構11を配置してもよい。湿式多板クラッチ1における作動機構11の配置位置は、湿式多板クラッチ1の全体的な構成に対応して、適宜設定することができる。
上記のようにして構成される湿式多板クラッチ1には、それぞれ摩擦材7を有する第1クラッチ板5および第2クラッチ板6を潤滑および冷却するために、外部からオイル12が供給される。前述したように、湿式多板クラッチ1に供給される潤滑および冷却用のオイル12は、出力軸10に形成された供給油路17を通って、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16に流れ込む。そして、オイル12は、スプライン油路16の流入部16aから流出部16bに向かって、スプライン油路16を流動する。その際に、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、スプライン油路16を流れるオイル12の一部が、スプライン油路16と第1クラッチ板5および第2クラッチ板6との間で還流する循環油路20が形成される。具体的には、そのような循環油路20は、図5の(a)に示すように、前述したスプライン油路16、ならびに、出口側油路21、入口側油路22、および、外周油路23から形成される。
出口側油路21は、互いに対向する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における流入部16a側(図5の左側)の側面5aと、第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における流出部16b側(図5の右側)の側面6bとの間の隙間に形成される。出口側油路21には、スプライン油路16を流れるオイル12の一部が分流する。すなわち、出口側油路21は、第1クラッチ板5の側面5aと、第2クラッチ板6の側面6bとの間で、オイル12を流動させる。
入口側油路22は、互いに対向する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における流出部16b側(図5の右側)の側面5bと、第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における流入部16a側(図5の左側)の側面6aとの間の隙間に形成される。入口側油路22には、出口側油路21に分流したオイル12が、外周油路23を通って流入する。すなわち、入口側油路22は、第1クラッチ板5の側面5bと、第2クラッチ板6の側面6aとの間で、オイル12を流動させる。
外周油路23は、第2クラッチ板6の外周部分と、クラッチドラム3の内周面との間の隙間の隙間に形成される。外周油路23には、出口側油路21に分流したオイル12が流入する。それとともに、外周油路23は、外周油路23に流入したオイル12を入口側油路22に流入させる。すなわち、外周油路23は、第2クラッチ板6の外周部分で、かつ、互いに隣接する出口側油路21と入口側油路22との間で、オイル12を流動させる。
図5の(a)および図6に示すように、湿式多板クラッチ1に供給されるオイル12は、スプライン油路16の流入部16aから流出部16bに向かう流れが主流となり、スプライン油路16を流動する。湿式多板クラッチ1が回転する場合、具体的には、湿式多板クラッチ1がスリップ係合または半係合状態(解放状態と係合状態との間の過渡状態)で、クラッチドラム3および第1クラッチ板5と、クラッチハブ4および第2クラッチ板6との間に差回転が生じる場合は、入力部材となっているクラッチドラム3側の第1クラッチ板5が、出力部材となっているクラッチハブ4側の第2クラッチ板6よりも高速で回転する。そのため、より高速で回転する第1クラッチ板5に接するオイル12に、より大きな遠心力が作用する。図5の(a)、図6に示す例では、第1クラッチ板5の側面5aがスプライン油路16の主流のオイル12の流動方向に対向している出口側油路21の方が、入口側油路22よりも、オイル12に作用する遠心力が大きくなる。そのため、スプライン油路16を流れるオイル12は、より大きな遠心力が作用する出口側油路21で分流し、出口側油路21を外周側(図5の(a)、図6の上側)に向かって流動する。すなわち、主流としてスプライン油路16を流れるオイル12の一部が、出口側油路21に流入し、遠心力を受けて外周油路23に流れ込む。
このように、出口側油路21では、オイル12により大きな遠心力が作用することにより、オイル12の油圧が上昇する。それに対して、入口側油路22では、出口側油路21と比較して、オイル12に作用する遠心力が小さいため、出口側油路21の油圧よりも、入口側油路22の油圧が低くなる。すなわち、出口側油路21と入口側油路22との間に油圧差が生じる。したがって、外周油路23に到達したオイル12は、上記のような出口側油路21と入口側油路22との間の油圧差により、出口側油路21から入口側油路22に向かって(すなわち、スプライン油路16の主流のオイル12の流動方向に逆行して)、外周油路23を流動する。
入口側油路22では、上記のような遠心力の作用(遠心油圧)によって、外周側(図5の(a)、図6の上側)の油圧が内周側(図5の(a)、図6の下側)の油圧よりも高くなる。すなわち、入口側油路22の外周側と内周側との間で油圧差が生じる。したがって、外周油路23から入口側油路22に流入したオイル12は、入口側油路22内の油圧差により、入口側油路22を内周側に向かって流動する。そして、入口側油路22からスプライン油路16に到達したオイル12は、再び、スプライン油路16の主流に合流する。すなわち、スプライン油路16の主流から分流して出口側油路21に流れ込んだオイル12は、出口側油路21から、外周油路23および入口側油路22を流動して、スプライン油路16に還流する。
したがって、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、上記のようなスプライン油路16、出口側油路21、入口側油路22、および、外周油路23によって、潤滑および冷却用のオイル12を、スプライン油路16から、出口側油路21、外周油路23、入口側油路22の順に流動させ、再び、スプライン油路16に還流させる循環油路20が形成される。互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との組み合わせが複数組あれば、それに対応する複数組の循環油路20が、回転軸線AL方向に並んで順次形成される。図5の(a)に示す例では、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、反力クラッチ板5dの組み合わせと、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、受圧クラッチ板5cの組み合わせとの二組の各クラッチ板5,6の組み合わせに対して、それに対応する二組の循環油路20が形成されている。なお、図6では、循環油路20を簡潔に説明するため、一組の循環油路20だけを示してある(図6では、便宜上、一枚の第2クラッチ板6のみを示してあるが、実際には、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1は、二枚以上の、すなわち、複数の第2クラッチ板6を備えている)。
上記のように、所定の循環油路20を流動したオイル12は、スプライン油路16に戻った後に、流出部16b側(下流側、図5の(a)の右側)に隣接して位置する他の循環油路20に流入し、同様に摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する。このように、オイル12は、流入部16a側(上流側、図5の(a)の左側)の循環油路20から、流出部16b側の循環油路20に向かって、順次、流動し、摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する。循環油路20の中で摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却することにより、温度が上昇したオイル12は、一旦、スプライン油路16に還流する。その場合、オイル12は、温度が低いスプライン油路16の主流に合流した際に温度が低下し、その後、流出部16b側に隣接する他の循環油路20に流入する。このようなオイル12の循環が、それぞれの循環油路20で順次行われることにより、スプライン油路16を流動するオイル12の温度が、流入部16a側から流出部16b側に向かうにつれて徐々に、あるいは、緩やかに、上昇する。言い換えると、湿式多板クラッチ1で摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する際のオイル12の温度上昇が抑制される。その結果、ハウジング2内の各部で、摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却するオイル12の温度差が小さくなり、それに伴い、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度のばらつきが小さくなる。すなわち、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が平準化される。そのため、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が上昇する際の最高温度を引き下げることができる。
但し、上記のようなスプライン油路16の流入部16aから流出部16bに向かってオイル12が流動する際に、そのオイル12の流れが速過ぎると、オイル12が出口側油路21の入り口を素通りしてしまい、スプライン油路16から出口側油路21へオイル12が適切に分流しない可能性があった。すなわち、上記のような循環油路20が適切に形成されないおそれがあった。そこで、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1は、複数の第2クラッチ板6にそれぞれ形成される欠歯部分8cの位置を互いに異ならせている。具体的には、第2クラッチ板6は、円周方向におけるそれぞれの欠歯部分8cの位置が互いに異なるように、回転軸線AL方向に配列されている。
図7に示す例では、スプライン穴8aにおける内歯の2ピッチ置きに、または、1歯飛ばしで欠歯部分8cが形成された3枚の第2クラッチ板6が、互いに、円周方向にスプライン穴8aにおける内歯の1ピッチ分ずれた状態、または、1歯分回転した位置で、回転軸線AL方向に交互に配列されている。図1で示したような回転軸線AL方向に第1クラッチ板5を挟んで隣り合う全ての第2クラッチ板6が、互いに、円周方向にスプライン穴8aにおける内歯の1ピッチ分ずれた状態で配列されていてもよい。あるいは、少なくとも2枚の、所定の枚数だけの第2クラッチ板6が、円周方向にスプライン穴8aにおける内歯の1ピッチ分ずれた状態で配列されていてもよい。
上記のように、スプライン油路16を形成する欠歯部分8cの位置を互い違いにずらすこと、すなわち、円周方向における欠歯部分8cの位置を、ハブ側スプライン8の内歯の1ピッチ分ずらして各第2クラッチ板6をそれぞれ配列することにより、図8、図9に示すように、オイル12が出口側油路21および入口側油路22をそれぞれ流動する。すなわち、オイル12が循環油路20内を循環して流動する。なお、図8、図9では、回転軸線AL方向に配列されている4枚の第1クラッチ板5を、便宜上、流入部16a側から流出部16b側に向かう順に、第1クラッチ板51、第1クラッチ板52、第1クラッチ板53、および、第1クラッチ板54として示してある。同様に、回転軸線AL方向に配列されている4枚の第2クラッチ板6を、便宜上、流入部16a側から流出部16b側に向かう順に、第2クラッチ板61(図8では図示せず)、第2クラッチ板62、第2クラッチ板63、および、第2クラッチ板64として示してある。また、第2クラッチ板61に形成されたスプライン穴8aおよび欠歯部分8cを、それぞれ、スプライン穴(内歯)81aおよび欠歯部分81cとして示し、第2クラッチ板62に形成されたスプライン穴(内歯)8aおよび欠歯部分8cを、それぞれ、スプライン穴82aおよび欠歯部分82cとして示してある。そして、第2クラッチ板62に形成されたスプライン穴(内歯)8aを、スプライン穴83aとして示してある。
具体的には、スプライン油路16を流出部16b側に向かって流動するオイル12は、図8に示すように、所定の第2クラッチ板61の欠歯部分81c(図8では図示せず)を通過すると、第2クラッチ板62のスプライン穴(内歯)82aに突き当たる。そのため、回転軸線AL方向で流出部16b側に向かうオイル12の流動が妨げられ、その結果、オイル12は、一旦、第2クラッチ板62のスプライン穴(内歯)82a付近で滞留する。その後、オイル12は、上記のように滞留しつつ、第2クラッチ板62のスプライン穴(内歯)82aから1ピッチずれて隣り合う欠歯部分82cの方へ円周方向に流動して、第2クラッチ板62の流入部16a側に配列されている第1クラッチ板51における摩擦材セグメント7a間の隙間7b、すなわち、出口側油路21に流入する。
一方、出口側油路21を流動して、外周側の外周油路23まで到達したオイル12は、図9に示すように、外周油路23を通って、第1クラッチ板51の流入部16a側に配列されている第2クラッチ板61における摩擦材セグメント7a間の隙間7b、すなわち、入口側油路22に流入する。その後、オイル12は、入口側油路22の内周側の出口部分(すなわち、入口側油路22とスプライン油路16との接続部分)に向けて流動し、スプライン油路16を流れるオイル12の主流に合流する。そのため、上記のように、スプライン油路16から、一旦、第2クラッチ板62のスプライン穴(内歯)82a付近から出口側油路21の内周側の入り口付近で滞留したオイル12は、その後、出口側油路21に分流し、外周油路23、および、入口側油路22を経て、再び、スプライン油路16に還流する。すなわち、スプライン油路16、出口側油路21、外周油路23、および、入口側油路22によって循環油路20が形成される。
このように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、スプライン油路16を形成する欠歯部分8cの円周方向における位置が異なっていることにより、所定の第2クラッチ板6の欠歯部分8cの位置に対向する他の第2クラッチ板6のスプライン穴の内歯が、回転軸線AL方向におけるオイル12の流動、すなわち、スプライン油路16におけるオイル12の流動に対するいわゆるバッフル(邪魔板)として機能する。そのため、スプライン油路16の主流を流れる温度の低いオイル12が、出口側油路21の入り口を素通りせずに、流入部16a側に配列された第2クラッチ板6の欠歯部分8cに対向する他の第2クラッチ板6のスプライン穴8aの内歯周辺、すなわち、スプライン油路16と出口側油路21との接続部分周辺で滞留し易くなる。スプライン油路16と出口側油路21との接続部分周辺でオイル12が滞留することにより、スプライン油路16から出口側油路21にオイル12が流入し易くなる。その結果、上記のような循環油路20が形成され易くなる。すなわち、上記のような循環油路20を容易に、かつ、適切に形成することができる。
また、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1は、例えば、図10に示すように、スプライン油路16の流入部16a側に位置する第2クラッチ板6を、欠歯部分8cの位置をそろえて配列してもよい。なお、この図10においても、前述の図9と同様に、回転軸線AL方向に配列されている4枚の第1クラッチ板5を、便宜上、流入部16a側から流出部16b側に向かう順に、第1クラッチ板51、第1クラッチ板52、第1クラッチ板53、および、第1クラッチ板54として示してある。同様に、回転軸線AL方向に配列されている4枚の第2クラッチ板6を、便宜上、流入部16a側から流出部16b側に向かう順に、第2クラッチ板61、第2クラッチ板62、第2クラッチ板63、および、第2クラッチ板64として示してある。また、第2クラッチ板61に形成されたスプライン穴(内歯)8aおよび欠歯部分8cを、それぞれ、スプライン穴(内歯)81aおよび欠歯部分81cとして示し、第2クラッチ板62に形成された欠歯部分8cを、欠歯部分82cとして示してある。そして、第2クラッチ板62に形成されたスプライン穴(内歯)8aを、スプライン穴83aとして示してある。
図10に示す例では、回転軸線AL方向における最も流入部16a側に配列された第2クラッチ板61、および、その第2クラッチ板61と回転軸線AL方向に第1クラッチ板51を挟んで隣り合う第2クラッチ板62の、2枚の第2クラッチ板6が、互いに、円周方向における欠歯部分81c,82cの位置が一致した状態で、回転軸線AL方向に配列されている。第2クラッチ板62、および、その第2クラッチ板62と回転軸線AL方向に第1クラッチ板52を挟んで隣り合う第2クラッチ板63、ならびに、その第2クラッチ板63と回転軸線AL方向に第1クラッチ板53を挟んで隣り合う第2クラッチ板64(すなわち、回転軸線AL方向における流出部16b側の3枚の第2クラッチ板6)は、前述の図9で示した例と同様に、欠歯部分8cの位置を互い違いにずらして配列されている。
この図10に示す例のように、スプライン油路16の流入部16a側に位置する第2クラッチ板6を、欠歯部分8cの位置をそろえて配列することにより、スプライン油路16の流入部16a側を流れる温度が低いオイル12が、流入部16a側に位置する出口側油路21を素通りし、スプライン油路16の流出部16b側に届き易くなる。そのため、スプライン油路16の流出部16b側に位置する摩擦材7および各クラッチ板5,6の冷却効率を高めて、温度を低下させることができる。上記のように欠歯部分8cの位置をそろえて配列する第2クラッチ板6の枚数や、第2クラッチ板6に形成する欠歯部分8cの数を調整することにより、スプライン油路16の流出部16b側に到達させるオイル12の量や温度を適宜調整することができる。
したがって、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、ハブ側スプライン8における欠歯部分8cの位置を調整して、第2クラッチ板6を回転軸線AL方向に配列することにより、スプライン油路16の流入部16a側を流れるオイル12の温度、および、スプライン油路16の流出部16a側を流れるオイル12の温度、ならびに、そのオイル12によって冷却される摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度を、適宜に、かつ、容易に、調整することができる。すなわち、湿式多板クラッチ1における摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度を容易に平準化することができ、その結果、それら摩擦材7および各クラッチ板5,6の最高温度を引き下げることができる。
以上のように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1によれば、湿式多板クラッチ1の作動時に、オイル12による潤滑および冷却を効率よく行うことができ、摩擦熱によって発熱する摩擦材7、第1クラッチ板5、および、第2クラッチ板6の温度上昇を適切に抑制することができる。すなわち、湿式多板クラッチ1の冷却性能を向上させることができる。そのため、焼き付きやヒートスポット等の発生を回避または抑制することができ、ひいては、湿式多板クラッチ1の耐久性を向上させることができる。
1 湿式多板クラッチ
2 ハウジング
3 クラッチドラム(第1回転部材)
3a (クラッチドラムの)ケース部
3b (クラッチドラムの)ハブ部
3c (クラッチドラムの)カバー部
3d (クラッチドラムの)ボス部
3e (クラッチドラムの)内フランジ部
3f (クラッチドラムの)フランジ部
4 クラッチハブ(第2回転部材)
4a (クラッチハブの)ハブ部
4b (クラッチハブの)スプライン部
4c (クラッチハブの)ウェブ部
4d (クラッチハブの)リテーナ
5,51,52,53,54 第1クラッチ板
5a (第1クラッチ板の)流入部側の側面
5b (第1クラッチ板の)流出部側の側面
5c (第1クラッチ板における)受圧クラッチ板
5d (第1クラッチ板における)反力クラッチ板
6,61,62,63,64 第2クラッチ板
6a (第2クラッチ板の)流入部側の側面
6b (第2クラッチ板の)流出部側の側面
7 摩擦材
7a (摩擦材の)摩擦材セグメント
7b (摩擦材の)隙間
8 ハブ側スプライン
8a,81a,82a,83a (ハブ側スプラインの)スプライン穴
8b (ハブ側スプラインの)スプライン軸
8c,81c,82c (ハブ側スプラインの)欠歯部分
8d (ハブ側スプラインの)隙間拡張部分
9 ドラム側スプライン
9a (ドラム側スプラインの)スプライン穴
9b (ドラム側スプラインの)スプライン軸
10 出力軸
11 作動機構
11a (作動機構/油圧アクチュエータの)油圧室
11b (作動機構/油圧アクチュエータの)ピストン
11c (作動機構/油圧アクチュエータの)リターンスプリング
11d (作動機構/油圧アクチュエータの)スプリング保持部
12 オイル(オイルの流れ)
13 軸受
14 保持プレート
15 スナップリング
16 スプライン油路
16a (スプライン油路の)流入部
16b (スプライン油路の)流出部
17 供給油路
18 排出油路
19 制御油路
20 循環油路
21 (循環油路を形成する)出口側油路
22 (循環油路を形成する)入口側油路
23 (循環油路を形成する)外周油路

Claims (7)

  1. 同軸上に配置され、互いに相対回転する第1回転部材および第2回転部材と、前記第1回転部材と一体に回転する複数の第1クラッチ板と、回転軸線方向で複数の前記第1クラッチ板と交互に配列され、前記第2回転部材と一体に回転する複数の第2クラッチ板と、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板との間で、トルクを伝達し、かつ、前記回転軸線方向の滑動を可能にするハブ側スプラインと、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、および、前記ハブ側スプラインを収容するハウジングと、を備え、前記ハウジング内に供給されるオイルで、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、および、前記ハブ側スプラインをそれぞれ潤滑および冷却する湿式多板クラッチにおいて、
    前記第2クラッチ板に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン穴と、前記第2回転部材に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン軸との間で、前記回転軸線方向に連なる空間であって、前記空間に前記オイルが流入する流入部と、前記空間から前記オイルが流出する流出部とを有し、前記流入部に流入した前記オイルを前記流出部に向けて流動させるスプライン油路と、
    互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面との間で、前記オイルを流動させる出口側油路と、
    互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面との間で、前記オイルを流動させる入口側油路と、
    前記第2クラッチ板の外周部分で、かつ、互いに隣接する前記出口側油路と前記入口側油路との間で、前記オイルを流動させる外周油路と、を備え、
    前記スプライン油路、前記出口側油路、前記入口側油路、および、前記外周油路により、前記オイルが、前記スプライン油路から、前記出口側油路、前記外周油路、前記入口側油路の順に流動して、前記スプライン油路に還流する循環油路が形成されるとともに、
    前記スプライン油路は、前記第2クラッチ板における前記スプライン穴の所定の内歯を欠損させた欠歯部分に形成され、
    前記第2クラッチ板は、円周方向におけるそれぞれの前記欠歯部分の位置が互いに異なるように、前記回転軸線方向に配列されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  2. 請求項1に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1回転部材は、外部からトルクが伝達される入力部材であり、
    前記第2回転部材は、外部にトルクを伝達する出力部材である
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  3. 請求項1または2に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第2クラッチ板は、前記スプライン穴における前記内歯の2ピッチ置きに前記欠歯部分が形成されており、
    少なくとも2枚の前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向に前記内歯の1ピッチ分ずれた状態で、前記回転軸線方向に配列されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  4. 請求項3に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記回転軸線方向に前記第1クラッチ板を挟んで隣り合う前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向に前記内歯の1ピッチ分ずれた状態で、前記回転軸線方向に配列されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記回転軸線方向における最も前記流入部側に配列された前記第2クラッチ板、および、前記回転軸線方向に前記第1クラッチ板を挟んで隣り合う前記第2クラッチ板の、少なくとも2枚の前記第2クラッチ板は、互いに、前記円周方向における前記欠歯部分の位置が一致した状態で、前記回転軸線方向に配列されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  6. 請求項1から5のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板にそれぞれ取り付けられ、隣接する前記第1クラッチ板または前記第2クラッチ板との間で摩擦力を発生し、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板との間で動力を伝達する摩擦材を備え、
    前記摩擦材は、前記第1クラッチ板の前記流入部側の側面、および、前記第2クラッチ板の前記流入部側の側面に、それぞれ、取り付けられている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1回転部材と前記第1クラッチ板との間で、トルクを伝達し、かつ、前記回転軸線方向の滑動を可能にするドラム側スプラインを備えており、
    前記第1回転部材の内周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン穴が形成され、
    前記第1クラッチ板の外周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン軸が形成されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
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