JP2023071040A - 湿式多板クラッチ - Google Patents

湿式多板クラッチ Download PDF

Info

Publication number
JP2023071040A
JP2023071040A JP2021183615A JP2021183615A JP2023071040A JP 2023071040 A JP2023071040 A JP 2023071040A JP 2021183615 A JP2021183615 A JP 2021183615A JP 2021183615 A JP2021183615 A JP 2021183615A JP 2023071040 A JP2023071040 A JP 2023071040A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
clutch
spline
plate
oil passage
oil
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2021183615A
Other languages
English (en)
Inventor
允寛 田子
Masahiro Tago
有 永里
Yu Nagasato
学 立野
Manabu Tateno
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2021183615A priority Critical patent/JP2023071040A/ja
Publication of JP2023071040A publication Critical patent/JP2023071040A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Mechanical Operated Clutches (AREA)
  • Hydraulic Clutches, Magnetic Clutches, Fluid Clutches, And Fluid Joints (AREA)

Abstract

【課題】オイルによる冷却を効率よく行い、摩擦材およびクラッチ板の温度上昇を適切に抑制する。【解決手段】入力部材3および出力部材4と、入力部材3と一体に回転する複数の第1クラッチ板5と、第1クラッチ板5と交互に配列され、出力部材4と一体に回転する複数の第2クラッチ板6と、出力部材4と第2クラッチ板6とを締結するハブ側スプライン8とを備え、ハウジング内に供給されるオイル12で、各クラッチ板5,6および摩擦材7を冷却する湿式多板クラッチ1において、ハブ側スプライン8に形成され、オイル12を流入部16aから流出部16bに流動させるスプライン油路16を備え、摩擦材7を、第1クラッチ板5の流入部16a側の側面5a、および、第2クラッチ板6の流入部16a側の側面6aに、それぞれ、取り付ける。【選択図】図3

Description

この発明は、接触面の摩擦によって動力を伝達する摩擦クラッチに関し、特に、オイルによる潤滑および冷却を行う湿式の多板クラッチに関するものである。
特許文献1には、摩擦面の局所的な温度上昇によるヒートスポットの発生を抑制することを目的にした湿式多板クラッチが記載されている。この特許文献1に記載された湿式多板クラッチは、円環状のコアプレートの両側面に摩擦材が貼り付けられた複数のフリクションプレートと、フリクションプレートの間に介在して摩擦係合に関与する複数のセパレータプレートとを備えている。フリクションプレートには、摩擦材に設けられた複数の穴と共に、それらの穴の中にコアプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。セパレータプレートには、周方向に複数のざぐり穴が形成されるとともに、それらのざぐり穴の内部にセパレータプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。
なお、特許文献2には、表面に湿式摩擦材を設けた摩擦板(クラッチ板)と、中空構造の摩擦相手板とを交互に配列した湿式多板クラッチが記載されている。この特許文献2に記載された湿式多板クラッチは、摩擦相手板の中空部に、スズやリチウム等の比較的に融点が低い金属を封入し、その封入した金属の融解潜熱を利用して、摩擦相手板の温度上昇を抑制するように構成されている。
特開2005-351325号公報 特開平5-26270号公報
上記のように、特許文献1に記載された湿式多板クラッチでは、フリクションプレートおよびセパレータプレートに、穴およびざぐり穴が設けられ、更に、それらの穴およびざぐり穴に、セパレータプレートまたはフリクションプレートを貫通する複数の油穴が形成されている。そのため、フリクションプレートの穴およびセパレータプレートのざぐり穴にオイルを滞留させて、摩擦面の発熱を抑制することができ、更に、油穴を貫通させることによって放熱面積を拡大し、効率よく摩擦熱を放熱することができる、とされている。この特許文献1に記載されているような湿式多板クラッチは、フリクションプレートやセパレータプレートのような複数のクラッチ板(および摩擦材)が、回転軸線方向に交互に配列されていて、それぞれのクラッチ板がオイルによって冷却される。湿式多板クラッチの潤滑および冷却用のオイルは、通常、回転軸線方向に流動するように供給(圧送)される。したがって、供給されるオイルの(回転軸線方向における)流入側に配置されているクラッチ板は、温度が低い状態のオイルで冷却される。それに対して、供給されるオイルの(回転軸線方向における)流出側に配置されているクラッチ板は、既にクラッチ板を冷却して温度が上昇した状態のオイルによって冷却される。そのため、オイルの流出側に配置されているクラッチ板は、オイルの流入側に配置されているクラッチ板と比較して、オイルによる冷却効果が低くなり、その分、クラッチ板の温度が高くなる。このように、従来の湿式多板クラッチでは、回転軸線方向に配列される複数のクラッチ板の間で温度のばらつきが大きくなり、その結果、いずれかのクラッチ板で発生する摩擦熱の最高温度が高くなってしまう。発熱するクラッチ板の最高温度が高くなると、局所的に、焼き付きや上述したようなヒートスポットなどが発生してしまう懸念がある。
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、オイルによる潤滑および冷却を効率よく行い、摩擦熱によって発熱する摩擦材およびクラッチ板の温度上昇を抑制することが可能な湿式多板クラッチを提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、同軸上に配置され、互いに相対回転する第1回転部材および第2回転部材と、前記第1回転部材と一体に回転する複数の第1クラッチ板と、回転軸線方向で複数の前記第1クラッチ板と交互に配列され、前記第2回転部材と一体に回転する複数の第2クラッチ板と、前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板にそれぞれ取り付けられ、隣接する前記第1クラッチ板または前記第2クラッチ板との間で摩擦力を発生し、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板との間で動力を伝達する摩擦材と、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板との間で、トルクを伝達し(すなわち、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板とを一体に回転させ)、かつ、前記回転軸線方向の滑動(すなわち、前記第2回転部材に対する前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における相対移動)を可能にするハブ側スプラインと、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、前記摩擦材、および、前記ハブ側スプラインを収容するハウジングと、を備え、前記ハウジング内に供給されるオイルで、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、前記摩擦材、および、前記ハブ側スプラインをそれぞれ潤滑および冷却する湿式多板クラッチにおいて、前記第2クラッチ板に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン穴と、前記第2回転部材に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン軸との間で、前記回転軸線方向に延びる空間であって、前記空間に前記オイルが流入する流入部と、前記空間から前記オイルが流出する流出部とを有し、前記流入部に流入した前記オイルを前記流出部に向けて流動させるスプライン油路と、互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面との間で、前記オイルを流動させる出口側油路と、互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面との間で、前記オイルを流動させる入口側油路と、前記第2クラッチ板の外周部分で、かつ、互いに隣接する前記出口側油路と前記入口側油路との間で、前記オイルを流動させる外周油路と、を備え、前記摩擦材は、前記第1クラッチ板の前記流入部側の側面、および、前記第2クラッチ板の前記流入部側の側面に、それぞれ、取り付けられており、前記スプライン油路、前記出口側油路、前記入口側油路、および、前記外周油路により、前記オイルが、前記スプライン油路から、前記出口側油路、前記外周油路、前記入口側油路の順に流動して、前記スプライン油路に還流する循環油路が形成されることを特徴とするものである。
また、この発明における前記第1回転部材は、湿式多板クラッチの外部からトルクが伝達される入力部材であり、この発明における前記第2回転部材は、湿式多板クラッチの外部にトルクを伝達する出力部材であってもよい。
また、この発明は、前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板に前記回転軸線方向の押圧力を加えて前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板を前記回転軸線方向に滑動させ、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板とを摩擦係合させる作動機構を備えており、この発明における前記第1クラッチ板は、前記回転軸線方向における前記作動機構に最も近い位置に配置され、直接、前記押圧力が作用する(あるいは、前記押圧力を受ける)受圧クラッチ板と、前記回転軸線方向における前記作動機構から最も離れた位置に配置され、前記回転軸線方向の滑動が規制された(すなわち、前記押圧力の反力が作用する)反力クラッチ板と、を有していてもよい。なお、前記受圧クラッチ板および前記反力クラッチ板は、いずれも、前記第1回転部材と一体に回転するとともに、前記摩擦材を介して、隣接する前記第2クラッチ板と摩擦係合する。したがって、前記受圧クラッチ板および前記反力クラッチ板は、いずれも、前記第1クラッチ板として機能する。
また、前記回転軸線方向における最も前記流入部側の位置に配置された、前記受圧クラッチ板または前記反力クラッチ板は、前記流入部側の側面に前記摩擦材を取り付けていない構成であってもよい。なお、前記摩擦材を取り付けていない前記受圧クラッチ板または前記反力クラッチ板は、いずれも、隣接する前記第2クラッチ板の前記摩擦材を介して、その隣接する前記第2クラッチ板と摩擦係合する。したがって、前記摩擦材を取り付けていない受圧クラッチ板または前記反力クラッチ板であっても、前記第1クラッチ板として機能する。
また、この発明における前記スプライン油路は、前記ハブ側スプラインの所定の歯を欠損させた欠歯部分に形成されていてもよい。
また、この発明における前記スプライン油路は、前記ハブ側スプラインのスプライン穴とスプライン軸との間の所定箇所のクリアランスを拡大した隙間拡張部分に形成されていてもよい。
そして、この発明は、前記第1回転部材と前記第1クラッチ板との間で、トルクを伝達し(すなわち、前記第1回転部材と前記第1クラッチ板とを一体に回転させ)、かつ、前記回転軸線方向の滑動(すなわち、前記第1回転部材に対する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における相対移動)を可能にするドラム側スプラインを備えており、前記第2回転部材の内周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン穴が形成され、前記第1クラッチ板の外周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン軸が形成されていてもよい。なお、この前記ドラム側スプラインには、前記ハブ側スプラインにおける前記スプライン油路のような油路は形成されない。
この発明の湿式多板クラッチは、複数の第1クラッチ板と複数の第2クラッチ板とが、回転軸線方向で交互に配列されて構成される。複数の第1クラッチ板は、第1回転部材(例えば、入力部材となるクラッチドラム)の内周部分に配置される。複数の第1クラッチ板と第1回転部材とは、例えば、ドラム側スプラインによって締結される。すなわち、第1回転部材の内周部分に形成されたドラム側スプラインのスプライン穴と、第1クラッチ板の外周部分に形成されたドラム側スプラインのスプライン軸とがそれぞれ嵌合し、それら第1回転部材と複数の第1クラッチ板とがスプライン締結される。一方、複数の第2クラッチ板は、第2回転部材(例えば、出力部材となるクラッチハブ)の外周部分に配置される。複数の第2クラッチ板と第2回転部材とは、ハブ側スプラインによって締結される。すなわち、第2クラッチ板の内周部分に形成されたハブ側スプラインのスプライン穴と、第2回転部材の外周部分に形成されたハブ側スプラインのスプライン軸とがそれぞれ嵌合し、それら第2回転部材と複数の第2クラッチ板とがスプライン締結される。このハブ側スプラインには、第2クラッチ板のスプライン穴と、第2回転部材のスプライン軸との間で、回転軸線方向に延びるスプライン油路が形成される。スプライン油路の回転軸線方向における一方の端部は、オイルが流入する流入部となり、スプライン油路の回転軸線方向における他方の端部は、オイルが流出する流出部となる。
例えば、ハブ側スプラインの所定の歯を欠損させて、部分的にスプラインの嵌合がないスペース、すなわち、ハブ側スプラインの欠歯部分を設けることにより、上記のようなスプライン油路を容易に形成できる。あるいは、ハブ側スプラインのスプライン穴とスプライン軸との間の所定箇所のクリアランスを拡大して、部分的に隙間が大きいスペース、すなわち、ハブ側スプラインの隙間拡張部分を設けることにより、上記のようなスプライン油路を容易に形成できる。
更に、この発明の湿式多板クラッチでは、第1クラッチ板の回転軸線方向におけるオイルの流入部側の側面に、それぞれ、摩擦材が取り付けられる。第1クラッチ板と交互に配列される第2クラッチ板においても、第2クラッチ板の回転軸線方向におけるオイルの流入部側の側面に、それぞれ、摩擦材が取り付けられる。このような構成により、この発明の湿式多板クラッチでは、互いに対向する第1クラッチ板の流入部側の側面と第2クラッチ板の流出部側の側面との間の隙間が、主に、第1クラッチ板の摩擦材(および、各クラッチ板)を冷却するオイルが流動する出口側油路となる。また、互いに対向する第1クラッチ板の流出部側の側面と第2クラッチ板の流入部側の側面との間の隙間が、主に、第2クラッチ板の摩擦材(および、各クラッチ板)を冷却するオイルが流動する入口側油路となる。そして、第2クラッチ板の外周部分とハウジングの内周面との間の隙間が、その第2クラッチ板の流出部側の側面と流入部側の側面との間で、すなわち、互いに隣接する出口側油路と入口側油路との間で、オイルが流動する外周油路となる。
そして、この発明の湿式多板クラッチでは、上記のような流入部から流出部に向けてスプライン油路を流動する(圧送される)オイルの一部が、スプライン油路から出口側油路に分流し、第1クラッチ板に取り付けられた摩擦材および各クラッチ板を冷却する。出口側油路で摩擦材および各クラッチ板を冷却したオイルは、外周油路を通って、入口側油路に流れ込む。入口側油路に流入したオイルは、第2クラッチ板に取り付けられた摩擦材および各クラッチ板を冷却して、再び、スプライン油路に還流する。すなわち、隣接する一対の第1クラッチ板および第2クラッチ板において、スプライン油路から、出口側油路、外周油路、入口側油路、および、スプライン油路の順でオイルが循環する循環油路が形成される。なお、前述したドラム側スプラインには、ハブ側スプラインにおけるスプライン油路のような油路は形成されない。そのため、ドラム側スプラインのスプライン歯を、第1クラッチ板と第2クラッチ板との間の仕切り板、あるいは、いわゆるバッフル(邪魔板)として機能させることができ、上記のような循環油路を容易に形成できる。
上記のように一組の循環油路を流動したオイルは、スプライン油路に戻った後に、次に流出部側(下流側)に位置する他の循環油路に流入し、同様に摩擦材および各クラッチ板を冷却する。このように、流入部側(上流側)の循環油路から、流出部側(下流側)の循環油路に向けて、順次、オイルが循環しながら流動し、摩擦材および各クラッチ板を冷却する。循環油路の中で摩擦材および各クラッチ板を冷却し、温度が上昇したオイルは、一旦、スプライン油路に還流した際に温度が低下し、その後、流出部側の他の循環油路に流入する。このようなオイルの循環が、それぞれの循環油路で順次行われることにより、スプライン油路を流動するオイルの温度が、流入部側から流出部側に向かうにつれて徐々に(緩やかに)上昇する。言い換えると、摩擦材および各クラッチ板を冷却する際のオイルの温度上昇が抑制される。その結果、ハウジング内の各部で、摩擦材および各クラッチ板を冷却するオイルの温度差が小さくなり、摩擦材および各クラッチ板の温度のばらつきが小さくなる。すなわち、摩擦材および各クラッチ板の温度が平準化される。そのため、摩擦材および各クラッチ板における最高温度を引き下げることができる。
したがって、この発明の湿式多板クラッチによれば、オイルによる潤滑および冷却を効率よく行うことができ、摩擦熱によって発熱する摩擦材、第1クラッチ板、および、第2クラッチ板の温度上昇を適切に抑制することができる。そのため、焼き付きやヒートスポット等の発生を回避または抑制することができ、湿式多板クラッチの耐久性を向上させることができる。
この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、湿式多板クラッチの全体的な構成を示す断面図である。 この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、特に、第2クラッチ板の側面に分割して取り付けられる摩擦材、クラッチハブと第2クラッチ板とを締結するハブ側スプライン、および、そのハブ側スプラインの欠歯部分に形成されるスプライン油路、ならびに、第1クラッチ板の外縁部分に形成されるドラム側スプラインのスプライン軸(外歯)等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチの詳細な構成を説明するための図であって、第1クラッチ板、第2クラッチ板、および、摩擦材の断面を拡大して示すとともに、各クラッチ板および摩擦材を冷却するオイルが流動する出口側油路、入口側油路、外周油路、および、スプライン油路、ならびに、それらの油路から形成される循環油路等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチの構成を説明するための図であって、特に、第2クラッチ板の側面に分割して取り付けられる摩擦材、クラッチハブと第2クラッチ板とを締結するハブ側スプライン、および、そのハブ側スプラインの隙間拡張部分に形成されるスプライン油路、ならびに、第1クラッチ板の外縁部分に形成されるドラム側スプラインのスプライン軸(外歯)等を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチを適用した場合の作用および効果を説明するための図であって、湿式多板クラッチの中で流動するオイルの温度を計測したデータを示すグラフである。 図5に示すオイルの温度を計測した位置を説明するための図であり、比較例として、比較例として、この発明の湿式多板クラッチと反対の方向(各クラッチ板の流出部側の側面)に摩擦材を取り付けた構成を示す図である。 この発明の湿式多板クラッチを対象にして、図5に示すオイルの温度を計測した位置を説明するための図である。
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
この発明の実施形態における湿式多板クラッチは、例えば、いわゆるスターティングデバイスあるいは発進クラッチとして、エンジン(内燃機関)を駆動力源とする車両に適用される。エンジンとトランスミッションとの間で、トルクの伝達および遮断を連続的に行い、トルク伝達時のショックを軽減して、車両のスムーズな発進を実現する。あるいは、車両の減速走行時に、適切なエンジンブレーキ状態を実現する。また、駆動力源にモータを有する車両においては、減速走行時に、モータによるスムーズな回生制動を実現する。上記のような発進クラッチとしては、車両の発進時や減速走行時に、連続的でスムーズなトルク伝達を行うために、接触面の摩擦によって動力を伝達して、スリップ係合または半係合状態(いわゆる、半クラッチ)が可能な摩擦クラッチが用いられる。更に、大きなトルク伝達を可能にするために、摩擦係合させるクラッチ板を複数組設けた多板クラッチが用いられる。また、上記のようなスリップ係合の多用や大きなトルク伝達による発熱量の増大に対応するために、オイルによる潤滑および冷却を行う湿式の摩擦クラッチが用いられる。この発明の実施形態における湿式多板クラッチは、湿式多板式の摩擦クラッチであり、例えば、上記のような車両の発進クラッチとして、また、より大きなトルクの伝達が要求される使用条件の下で適用される。
図1に、この発明の実施形態における湿式多板クラッチの一例を示してある。図1に示す湿式多板クラッチ1は、主要な構成要素として、ハウジング2、クラッチドラム3、クラッチハブ4、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、出力軸10、および、作動機構11を備えている。
ハウジング2は、湿式多板クラッチ1の外殻を形成する部材であり、内側に、後述するクラッチハブ4、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、作動機構11、および、出力軸10の一部を収容している。また、ハウジング2の内部には、潤滑および冷却用のオイル12が供給される。オイル12は、少なくとも、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、摩擦材7をそれぞれ潤滑および冷却する。更に、ハウジング2の内周部分には、後述するドラム側スプライン9(具体的には、ドラム側スプライン9のスプライン穴9a)が形成されている。図1に示す例では、ハウジング2は、後述するクラッチドラム3によって構成されている。
クラッチドラム3は、この発明の実施形態における“第1回転部材”に相当する回転部材であり、湿式多板クラッチ1の回転軸線AL上に配置されている。クラッチドラム3は、主に、ケース部3a、ハブ部3b、カバー部3c、および、ボス部3dから形成されている。
ケース部3aは、円筒形状の回転部材であり、ケース部3aの回転軸線AL方向における一方(図1の右側)の端部には、内フランジ部3eが一体に形成されており、内フランジ部3eの内縁部分が、ハブ部3bの端部に連結されている。ケース部3aの回転軸線AL方向における他方(図1の左側)の端部は、開口形状に成形され、カバー部3cおよびボス部3dが取り付けられることによって閉じられている。ケース部3aの内周面には、後述するドラム側スプライン9のスプライン穴9aが形成されており、そのケース部3aの内周部分に、後述するドラム側スプライン9のスプライン軸9bが形成された複数の第1クラッチ板5、および、第1クラッチ板5に取り付けられた摩擦材7がそれぞれ配置されている。また、ケース部3aの内周部分には、回転軸線AL方向で複数の第1クラッチ板5と交互に配列された複数の第2クラッチ板6、および、第2クラッチ板6に取り付けられた摩擦材7がそれぞれ配置されている。また、ケース部3aの内周部分には、上記の第2クラッチ板6と一体に回転する後述のクラッチハブ4、第2クラッチ板6とクラッチハブ4とを締結する後述のハブ側スプライン8、および、クラッチハブ4と一体に回転する後述の出力軸10(の一部)がそれぞれ配置されている。更に、ケース部3aおよび内フランジ部3eの内周部分には、後述する作動機構11が配置されている。
ハブ部3bは、円柱形状の回転軸部材であり、クラッチドラム3の回転軸として機能する。ハブ部3bは、軸受13を介して、後述するクラッチハブ4の外周部分に支持されている。また、ハブ部3bは、軸心周辺をくり抜いた空間部分で、クラッチハブ4と一体回転する後述の出力軸10の先端を支持している。ハブ部3bとクラッチハブ4および出力軸10とは、互いに相対回転が可能であり、ハブ部3bと出力軸10との間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材が設けられており、シール性が確保されている。
カバー部3cは、円環板形状の回転部材であり、その内縁部分が、ボス部3dと一体に形成されたフランジ部3fに連結されている。そして、カバー部3cは、上記のようにボス部3dと一体に連結された状態で、ケース部3aの回転軸線AL方向における他方の端部、すなわち、ケース部3aの開口端に連結されている。したがって、カバー部3cは、ボス部3dと共に、ケース部3aの開口部分を塞いでいる。
ボス部3dは、円筒形状の回転軸部材であり、後述する出力軸10と同軸上、すなわち、回転軸線AL上で、出力軸10の外周部分に配置されている。ボス部3dと出力軸10とは、互いに相対回転が可能であり、ボス部3dと出力軸10との間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材が設けられており、シール性が確保されている。
上記のように、ケース部3a、ハブ部3b、カバー部3c、および、ボス部3dは、互いに一体に組み付けられ、かつ、各連結部分のシール性が確保された状態で、クラッチドラム3を形成している。そして、上記のように、クラッチドラム3の内周部分に、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、および、作動機構11などが、それぞれ、配置されている。すなわち、クラッチドラム3は、内部に、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、摩擦材7、ハブ側スプライン8、ドラム側スプライン9、および、作動機構11を収容するとともに、シール性が確保された状態でオイル12を保持している。したがって、この図1に示す例では、クラッチドラム3は、湿式多板クラッチ1の外殻を形成するハウジング2を兼ねている。そして、クラッチドラム3は、この発明の実施形態における“第1回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の外部からトルクが伝達される“入力部材”となっている。したがって、クラッチドラム3は、例えば、図示しないエンジンやモータなどの動力源の出力軸に、一体に回転するように連結される。
クラッチハブ4は、この発明の実施形態における“第2回転部材”に相当する回転部材であり、回転軸線AL上に配置されている。また、クラッチハブ4は、上記のクラッチドラム3と相対回転が可能なように配置されている。すなわち、上記のクラッチドラム3およびクラッチハブ4は、同軸上に配置され、互いに相対回転する。クラッチハブ4は、主に、ハブ部4a、および、スプライン部4bから形成されている。
ハブ部4aは、円柱形状の回転軸部材であり、クラッチハブ4の回転軸として機能する。ハブ部4aは、後述する出力軸10の外周部分に配置されている。ハブ部4aと出力軸10とは、例えばスプライン(図示せず)によって、互いに一体に回転するように連結されている。それとともに、ハブ部4aおよび出力軸10は、前述した軸受13を介して、クラッチドラム3におけるハブ部3bの内周部分に支持されている。
スプライン部4bは、ハブ部4aの外周部分に位置する円筒形状の回転部材であり、ウェブ部4cを介して、ハブ部4aと一体に形成されている。ハブ部4a、スプライン部4b、および、ウェブ部4cは、全て一体に回転する。スプライン部4bの外周面には、後述するハブ側スプライン8のスプライン軸8bが形成されている。したがって、スプライン部4bは、後述する第2クラッチ板6の内縁部分に形成されたスプライン穴8aと共に、ハブ側スプライン8を構成している。
上記のような各部材4a,4b,4cから形成されるクラッチハブ4は、この発明の実施形態における“第2回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の外部にトルクを伝達する“出力部材”となっている。したがって、クラッチドラム3は、例えば、図示しない車両に搭載される変速機の入力軸に、一体に回転するように連結される。図1に示す例では、クラッチハブ4は、例えば、車両の駆動系統(図示せず)にトルクを伝達する、後述の出力軸10に連結されている。なお、クラッチハブ4は、リテーナ4dにより、回転軸線AL方向の移動が規制され、クラッチドラム3に対して位置決めされている。リテーナ4dとクラッチドラム3のフランジ部3fとの間には、スラスト軸受(図示せず)が設けられており、クラッチハブ4とクラッチドラム3とを相対回転可能に支持している。
第1クラッチ板5は、いわゆる“アウタープレート”、あるいは、“クラッチプレート”などと称される円環板形状の回転部材であり、回転軸線AL方向に複数配列されている。図1に示す例では、後述する受圧クラッチ板5cおよび反力クラッチ板5dを含めて、回転軸線AL方向に5枚の第1クラッチ板5が配列されている。第1クラッチ板5は、回転軸線AL方向で、後述する複数の第2クラッチ板6と交互に配列されている。第1クラッチ板5は、いずれも、“第1回転部材”、すなわち、“入力部材”であるクラッチドラム3と一体に回転する。具体的には、図2に示すように、第1クラッチ板5の外縁部分に、後述するドラム側スプライン9のスプライン軸9bが形成されている。その第1クラッチ板5に形成されたスプライン軸9bと、前述したクラッチドラム3の内周面に形成されたスプライン穴9aとが嵌合して、ドラム側スプライン9が構成されている。すなわち、クラッチドラム3と第1クラッチ板5とが、ドラム側スプライン9によって締結されている。したがって、第1クラッチ板5は、クラッチドラム3と一体に回転するとともに、回転軸線AL方向で、クラッチドラム3に対する相対移動(滑動)が可能になっている。そして、第1クラッチ板5の後述する流入部16a側の側面5aに、後述する摩擦材7が取り付けられている。
なお、複数の第1クラッチ板5と、後述する複数の第2クラッチ板6とは、回転軸線AL方向で交互に配列されるが、回転軸線AL方向における両端(最も外側)には、いずれも、第1クラッチ板5が配置されている。この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、回転軸線AL方向における両端に配置される第1クラッチ板5を、それぞれ、受圧クラッチ板5c、および、反力クラッチ板5dとする。
具体的には、図1に示すように、交互に配列された各クラッチ板5,6の回転軸線AL方向における片側(図1の右側)に、後述する作動機構11が配置されている。作動機構11は、各クラッチ板5,6に回転軸線AL方向の押圧力を付与する。その作動機構11に回転軸線AL方向で最も近い位置に配置される第1クラッチ板5が、受圧クラッチ板5cである。したがって、受圧クラッチ板5cは、直接、作動機構11の押圧力を受けて、回転軸線AL方向の力が作用する。一方、上記の作動機構11に回転軸線AL方向で最も離れた位置に配置される第1クラッチ板5が、反力クラッチ板5dである。反力クラッチ板5dは、回転軸線方向の滑動、すなわち、回転軸線AL方向におけるクラッチドラム3に対する相対移動が規制されている。図1に示す例では、反力クラッチ板5dは、回転軸線AL方向における外側(図1の左側)に隣接して配置された保持プレート14により、回転軸線AL方向における外側への滑動が規制されている。保持プレート14は、円環板形状の回転部材であり、例えば、スナップリング(または、Cリング、C形止め輪)15により、クラッチドラム3の内周部分に、回転軸線AL方向の移動が不可能なように固定されている。
また、図1に示す例では、回転軸線ALで、最も、後述する流入部16a側(図1の左側)の位置に配置された第1クラッチ板5が、上記の反力クラッチ板5dになっている。この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、上記のように、回転軸線ALで最も流入部16a側に配置される第1クラッチ板5(図1に示す例では、反力クラッチ板5d)には、例外的に、摩擦材7を取り付けない。図示していないが、例えば、回転軸線AL方向における流入部16aの位置が異なる場合(例えば、図1の右側に流入部16aが形成され、図1の左側に後述する流出部16bが形成される場合)は、受圧クラッチ板5cに、摩擦材7を取り付けない。
第2クラッチ板6は、いわゆる“インナーディスク”、あるいは、“クラッチディスク”などと称される円環板形状の回転部材であり、回転軸線AL方向に複数配列されている。図1に示す例では、回転軸線AL方向に4枚の第1クラッチ板5が配列されている。第2クラッチ板6は、回転軸線AL方向で、上記の複数の第1クラッチ板5と交互に配列されている。第2クラッチ板6は、いずれも、“第2回転部材”、すなわち、“出力部材”であるクラッチハブ4と一体に回転する。具体的には、図2に示すように、第2クラッチ板6の内縁部分に、後述するハブ側スプライン8のスプライン穴8aが形成されている。その第2クラッチ板6に形成されたスプライン穴8aと、前述したクラッチハブ4の外周面に形成されたスプライン軸8bとが嵌合して、ハブ側スプライン8が構成されている。すなわち、クラッチハブ4と第2クラッチ板6とが、ハブ側スプライン8によって締結されている。したがって、第2クラッチ板6は、クラッチハブ4と一体に回転するとともに、回転軸線AL方向で、クラッチハブ4に対する相対移動(滑動)が可能になっている。そして、第2クラッチ板6の後述する流入部16a側の側面6aに、後述する摩擦材7が取り付けられている。
摩擦材7は、いわゆる“クラッチフェーシング”、あるいは、単に“フェーシング”などと称される部材であり、適度な摩擦係数を有し、耐摩耗性、耐熱性、および、低相手攻撃性などに優れた材料によって形成されている。摩擦材7は、上記の第1クラッチ板5および第2クラッチ板6にそれぞれ取り付けられ、隣接する第2クラッチ板6または第1クラッチ板5との間で摩擦力を発生する。そして、摩擦材7は、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間で動力を伝達する。図3に示すように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、摩擦材7は、第1クラッチ板5の後述する流入部16a側(図3の左側)の側面5aに取り付けられている。同様に、摩擦材7は、第2クラッチ板6の後述する流入部16a側(図3の左側)の側面6aに取り付けられている。後述するように、流入部16aは、ハブ側スプライン8に、回転軸線AL方向に延びるように形成されるスプライン油路16の一方の端部であり、そのスプライン油路16に最初にオイル12が到達する部分である。また、図2に示すように、摩擦材7は、各クラッチ板5,6の円周方向で、所定の形状の複数の部材(摩擦材セグメント7a)に分割されて、各クラッチ板5,6の側面5a,6aにそれぞれ取り付けられている。各クラッチ板5,6の円周方向で隣り合う摩擦材セグメント7aの間には、所定の隙間7bが設けられている。この隙間7bを中心に、後述する出口側油路21、および、後述する入口側油路22が形成される。
ハブ側スプライン8は、図2に示すように、第2クラッチ板6の内縁部分に形成されたスプライン穴8a、および、クラッチハブ4の外周面に形成されたスプライン軸8bによって構成されている。ハブ側スプライン8は、クラッチハブ4と第2クラッチ板6とを一体に回転させるとともに、クラッチハブ4に対する第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における相対移動が可能なように、それらクラッチハブ4と第2クラッチ板6とを締結している。すなわち、ハブ側スプライン8は、クラッチハブ4に対する回転軸線AL方向における第2クラッチ板6の滑動を可能に、かつ、クラッチハブ4と第2クラッチ板6との間でトルクを伝達する。
更に、ハブ側スプライン8には、この発明の実施形態におけるスプライン油路16が形成されている。具体的には、クラッチハブ4に設けられたハブ側スプライン8のスプライン穴8aと、第2クラッチ板6に設けられたハブ側スプライン8のスプライン軸8bとの間で、回転軸線AL方向に延びるように形成された空間が、ハウジング2(すなわち、クラッチドラム3)の中に供給されるオイル12が流動するスプライン油路16になっている。スプライン油路16は、ハブ側スプライン8の所定の歯を欠損させた部分や、ハブ側スプライン8のスプライン穴8aとスプライン軸8bとの間の所定箇所のクリアランスを拡大した部分に形成される。
例えば、図2に示す例では、スプライン油路16は、ハブ側スプライン8における(第2クラッチ板6の内縁部分に形成された)スプライン穴8aの内歯を、円周方向で1歯飛ばしで欠損させた欠歯部分8cに形成されている。あるいは、図4に示す例では、スプライン油路16は、ハブ側スプライン8における(第2クラッチ板6の内縁部分に形成された)スプライン穴8aの歯底と、(クラッチハブ4の外周部分に形成された)スプライン軸8bの歯先との間のクリアランスを、通常の所定のクリアランスよりも拡大した隙間拡張部分8dに形成されている。
図1に示すように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、後述する出力軸10の内部に形成された供給油路17から、潤滑および冷却用のオイル12が供給される。例えば、所定のオイルポンプ(図示せず)で発生させた油圧で、オイル12が供給油路17に圧送される。供給油路17を流動したオイル12は、出力軸10の外周面から流出し、リテーナ4dに形成された油路(図示せず)を通って、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16に流れ込む。図1に示す例では、オイル12は、回転軸線AL方向に延びるスプライン油路16の左側の端部に流入する。したがって、スプライン油路16の左側の端部が、供給油路17からスプライン油路16に到達したオイル12が最初にスプライン油路16の中に流れ込む流入部16aになっている。そして、流入部16aからスプライン油路16に流入したオイル12は、スプライン油路16を流動して、スプライン油路16の右側の端部から流出する。したがって、スプライン油路16の右側の端部が、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16からオイル12が流出する流出部16bになっている。スプライン油路16の流出部16bから流出したオイル12は、後述する出力軸10の外周面から、出力軸10の内部に形成された排出油路18に流れ込み、その排出油路18を通って、湿式多板クラッチ1の外部に流出する。なお、出力軸10の内部には、上記の供給油路17および排出油路18の他に、後述する作動機構11の動作を制御するための作動油(油圧)を供給する制御油路19が形成されている。
ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3の内周面に形成されたスプライン穴9a、および、図2に示すような第1クラッチ板5の外縁部分に形成されたスプライン軸9bによって構成されている。ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3と第1クラッチ板5とを一体に回転させるとともに、クラッチドラム3に対する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における相対移動が可能なように、それらクラッチドラム3と第1クラッチ板5とを締結している。すなわち、ドラム側スプライン9は、クラッチドラム3に対する回転軸線AL方向における第1クラッチ板5の滑動を可能に、かつ、クラッチドラム3と第1クラッチ板5との間でトルクを伝達する。
なお、ドラム側スプライン9には、前述のハブ側スプライン8におけるスプライン油路16のような油路は形成されない。後述するように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、回転軸線AL方向に交互に配列される第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間で、スプライン油路16に供給されたオイル12が循環する循環油路20が形成される。互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との組み合わせが複数組あれば、それに対応する複数組の循環油路20が、回転軸線AL方向に並んで順次形成される。その場合、上記のように、ドラム側スプライン9に油路を設けないことにより、第1クラッチ板5に形成されたスプライン軸9bの外歯が、第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との間の仕切り板、あるいは、オイル12の流動に対するいわゆるバッフル(邪魔板)として機能する。その結果、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6の外周部分で、第1クラッチ板5を挟むオイル12の流動が抑制される(第2クラッチ板6の外周部分では、ドラム側スプライン9の通常のクリアランス等の隙間を通じて、所定の第2クラッチ板6から下流側の第2クラッチ板6へ少量のオイル12が流動する場合もある)。したがって、ドラム側スプライン9に、多量のオイル12を流動させる油路を形成しないことにより、上記のような個々の循環油路20が形成され易くなっている。
出力軸10は、例えば、変速機の入力軸(図示せず)等にトルクを伝達する回転軸部材であり、回転軸線AL上で、クラッチハブ4におけるハブ部4aの内周部分に配置されている。出力軸10とクラッチハブ4とは、例えばスプライン(図示せず)によって、互いに一体に回転するように連結されている。出力軸10の内部には、前述した供給油路17、排出油路18、および、制御油路19がそれぞれ形成されている。なお、前述したクラッチハブ4は、出力軸10の外周部分に一体に形成されてもよい。その場合、出力軸10は、クラッチハブ4と共に、この発明の実施形態における“第2回転部材”であって、湿式多板クラッチ1の“出力部材”を構成する。
そして、作動機構11は、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に、回転軸線AL方向の押圧力を加え、それら第1クラッチ板5および第2クラッチ板6をそれぞれ回転軸線AL方向に滑動させて、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6とを(摩擦材7を介して)摩擦係合させる。作動機構11は、例えば、油圧を利用した油圧アクチュエータや、電磁力を利用した電磁アクチュエータなどから構成される。図1に示す例では、作動機構11は、油圧アクチュエータによって構成されている。具体的には、作動機構11は、主に、油圧室11a、ピストン11b、および、リターンスプリング11cから構成されている。
油圧室11aは、クラッチドラム3における内フランジ部3eの内周部分、および、クラッチドラム3におけるハブ部3bの外周部分の円環形状の空間に形成されている。油圧室11aには、後述する出力軸10の制御油路19が連通されており、制御油路19から油圧室11a内に作動油(油圧)が供給されるように構成されている。この油圧室11aに、円環形状のピストン11bが配置されている。ピストン11bは、油圧室11aに対して、回転軸線AL方向の相対移動が可能なように配置されている。ピストン11bの背面側(図1の左側)に、リターンスプリング11cが配置されている。リターンスプリング11cは、スプリング保持部11dによってピストン11bの背面側に保持されており、回転軸線AL方向でピストン11bを第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)から離間させる方向(図1の右方向)の付勢力を発生する。
上記の油圧室11aとピストン11bとの間は、(特に符号を付けて図示しない)所定のシール材によってシール性が確保されている。したがって、制御油路19から作動油が供給され、ピストン11bに油圧が作用すると、ピストン11bは、リターンスプリング11cを圧縮しながら、回転軸線AL方向で第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)を押圧する方向(図1の左方向)に移動する。それにより、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に、回転軸線AL方向の押圧力が作用し、互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6とが、それぞれの摩擦材7を介して摩擦係合する。すなわち、湿式多板クラッチ1が係合状態になる。一方、上記のようにピストン11bを動作させた油圧を低下させると、ピストン11bは、リターンスプリング11cの付勢力によって、回転軸線AL方向で第1クラッチ板5(受圧クラッチ板5c)から離間する方向(図1の右方向)に移動する。それにより、第1クラッチ板5および第2クラッチ板6に作用していた押圧力が解消され、それに伴い、第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との摩擦係合が解除される。すなわち、湿式多板クラッチ1が解放状態になる。
このようにして構成される湿式多板クラッチ1には、それぞれ摩擦材7を有する第1クラッチ板5および第2クラッチ板6を潤滑および冷却するために、外部からオイル12が供給される。前述したように、湿式多板クラッチ1に供給される潤滑および冷却用のオイル12は、出力軸10に形成された供給油路17を通って、ハブ側スプライン8に形成されたスプライン油路16に流れ込む。そして、オイル12は、スプライン油路16の流入部16aから流出部16bに向かって、スプライン油路16を流動する。その際に、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、スプライン油路16を流れるオイル12の一部が、スプライン油路16と第1クラッチ板5および第2クラッチ板6との間で還流する循環油路20が形成される。具体的には、そのような循環油路20は、図3に示すように、前述したスプライン油路16、ならびに、出口側油路21、入口側油路22、および、外周油路23から形成される。
出口側油路21は、互いに対向する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における流入部16a側(図3の左側)の側面5aと、第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における流出部16b側(図3の右側)の側面6bとの間の隙間に形成される。出口側油路21には、スプライン油路16を流れるオイル12の一部が分流する。すなわち、出口側油路21は、第1クラッチ板5の側面5aと、第2クラッチ板6の側面6bとの間で、オイル12を流動させる。
入口側油路22は、互いに対向する第1クラッチ板5の回転軸線AL方向における流出部16b側(図3の右側)の側面5bと、第2クラッチ板6の回転軸線AL方向における流入部16a側(図3の左側)の側面6aとの間の隙間に形成される。入口側油路22には、出口側油路21に分流したオイル12が、外周油路23を通って流入する。すなわち、入口側油路22は、第1クラッチ板5の側面5bと、第2クラッチ板6の側面6aとの間で、オイル12を流動させる。
外周油路23は、第2クラッチ板6の外周部分と、クラッチドラム3の内周面との間の隙間の隙間に形成される。外周油路23には、出口側油路21に分流したオイル12が流入する。それとともに、外周油路23は、外周油路23に流入したオイル12を入口側油路22に流入させる。すなわち、外周油路23は、第2クラッチ板6の外周部分で、かつ、互いに隣接する出口側油路21と入口側油路22との間で、オイル12を流動させる。
図3に示すように、湿式多板クラッチ1に供給されるオイル12は、スプライン油路16の流入部16aから流出部16bに向かう流れが主流となり、スプライン油路16を流動する。湿式多板クラッチ1が回転する場合、具体的には、湿式多板クラッチ1がスリップ係合または半係合状態(解放状態と係合状態との間の過渡状態)で、クラッチドラム3および第1クラッチ板5と、クラッチハブ4および第2クラッチ板6との間に差回転が生じる場合は、入力部材となっているクラッチドラム3側の第1クラッチ板5が、出力部材となっているクラッチハブ4側の第2クラッチ板6よりも高速で回転する。そのため、より高速で回転する第1クラッチ板5に接するオイル12に、より大きな遠心力が作用する。図3に示す例では、第1クラッチ板5の側面5aがスプライン油路16の主流のオイル12の流動方向に対向している出口側油路21の方が、入口側油路22よりも、オイル12に作用する遠心力が大きくなる。そのため、スプライン油路16を流れるオイル12は、より大きな遠心力が作用する出口側油路21で分流し、出口側油路21を外周側(図3の上側)に向かって流動する。すなわち、主流としてスプライン油路16を流れるオイル12の一部が、出口側油路21に流入し、遠心力を受けて外周油路23に流れ込む。
このように、出口側油路21では、オイル12により大きな遠心力が作用することにより、オイル12の油圧が上昇する。それに対して、入口側油路22では、出口側油路21と比較して、オイル12に作用する遠心力が小さいため、出口側油路21の油圧よりも、入口側油路22の油圧が低くなる。すなわち、出口側油路21と入口側油路22との間で油圧差が生じる。したがって、外周油路23に到達したオイル12は、上記のような出口側油路21と入口側油路22との間の油圧差により、出口側油路21から入口側油路22に向かって(すなわち、スプライン油路16の主流のオイル12の流動方向に逆行して)、外周油路23を流動する。
入口側油路22では、上記のような遠心力の作用(遠心油圧)によって、外周側(図3の上側)の油圧が内周側(図3の下側)の油圧よりも高くなる。すなわち、入口側油路22の外周側と内周側との間で油圧差が生じる。したがって、外周油路23から入口側油路22に流入したオイル12は、入口側油路22内の油圧差により、入口側油路22を内周側に向かって流動する。そして、入口側油路22からスプライン油路16に到達したオイル12は、再び、スプライン油路16の主流に合流する。すなわち、スプライン油路16の主流から分流して出口側油路21に流れ込んだオイル12は、出口側油路21から、外周油路23および入口側油路22を流動して、スプライン油路16に還流する。
したがって、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、上記のようなスプライン油路16、出口側油路21、入口側油路22、および、外周油路23によって、潤滑および冷却用のオイル12を、スプライン油路16から、出口側油路21、外周油路23、入口側油路22の順に流動させ、再び、スプライン油路16に還流させる循環油路20が形成される。互いに隣接する第1クラッチ板5と第2クラッチ板6との組み合わせが複数組あれば、それに対応する複数組の循環油路20が、回転軸線AL方向に並んで順次形成される。図3に示す例では、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、反力クラッチ板5dの組み合わせと、第1クラッチ板5、第2クラッチ板6、および、受圧クラッチ板5cの組み合わせとの二組の各クラッチ板5,6の組み合わせに対して、それに対応する二組の循環油路20が形成されている。
上記のように、所定の循環油路20を流動したオイル12は、スプライン油路16に戻った後に、流出部16b側(下流側、図3の右側)に隣接して位置する他の循環油路20に流入し、同様に摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する。このように、オイル12は、流入部16a側(上流側、図3の左側)の循環油路20から、流出部16b側の循環油路20に向かって、順次、流動し、摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する。循環油路20の中で摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却することにより、温度が上昇したオイル12は、一旦、スプライン油路16に還流する。その場合、オイル12は、温度が低いスプライン油路16の主流に合流した際に温度が低下し、その後、流出部16b側に隣接する他の循環油路20に流入する。このようなオイル12の循環が、それぞれの循環油路20で順次行われることにより、スプライン油路16を流動するオイル12の温度が、流入部16a側から流出部16b側に向かうにつれて徐々に、あるいは、緩やかに、上昇する。言い換えると、湿式多板クラッチ1で摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却する際のオイル12の温度上昇が抑制される。その結果、ハウジング2内の各部で、摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却するオイル12の温度差が小さくなり、それに伴い、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度のばらつきが小さくなる。すなわち、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が平準化される。そのため、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が上昇する際の最高温度を引き下げることができる。
上記のように構成された湿式多板クラッチ1の中で流動するオイル12の温度を計測したデータを、図5に示してある。また、比較例として、図6に示すような各クラッチ板5,6の流出部16b側の側面5b,6bに摩擦材7を取り付けた構成を対象にして、同様に、オイル12の温度を計測したデータを示してある。図5に“■”(入口方向貼り)で示すプロットが、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1を対象にした計測データであり、図5に“●”(出口方向貼り)で示すプロットが、上記のような比較例の構成を対象にした計測データである。なお、図5の横軸における「A」、「B」、「C」、「D」は、オイル12の温度を計測した油路の位置を示している。図6(比較例)、および、図7(この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1の例)に示すように、スプライン油路16の流入部16a(または、オイル12の入口)に近い側から、「A」、「B」、「C」、「D」の順になっている。すなわち、「D」が、スプライン油路16の流出部16b(または、オイル12の出口)に最も近い位置になっている。また、図5の左上部分における点線のプロットは、各クラッチ板5,6の数を増やした構成を想定した場合の推定値を示している。
図6に示すように、各クラッチ板5,6の流出部16b側の側面5b,6bに摩擦材7を取り付けた場合(比較例の構成)は、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1のような循環油路20は形成されない。したがって、入口側(図6の左側)から供給されたオイル12は、入口側から出口側(図6の右側)に向かって、順次、連続して(循環することなく)流動する。そのため、比較例の構成では、図5の“●”のプロットで示すように、摩擦材7および各クラッチ板5,6を冷却するオイル12は、入口側から出口側に向かって流動するにつれて、温度が大きく上昇している。したがって、図6に示すような比較例の構成では、入口側から出口側に向かうほど、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が大きく上昇することが分かる。
それに対して、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、上述したように、オイル12が、スプライン油路16を流入部16a側(図7の左側)から流出部16b側(図7の右側)に向かって流動する際に、スプライン油路16から各クラッチ板5,6の外周部に分流するオイル12が循環する循環油路20が形成される。そのため、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、図5の“■”のプロットで示すように、流入部16a側の油路を通るオイル12と、流出部16b側の油路を通るオイル12との間で、オイル12の温度上昇が抑制されている。したがって、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、摩擦材7および各クラッチ板5,6の間の温度差が少なくなる、すなわち、摩擦材7および各クラッチ板5,6の温度が平準化されることが分かる。
また、図5の点線のプロットで示すように、各クラッチ板5,6の数を増やすと、比較例の構成では、より出口側を流動するオイル12の温度が、更に高くなると推測できる。それに対して、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、流入部16a側と流出部16b側との間におけるオイル12の温度上昇が抑制されるので、各クラッチ板5,6の数が多い場合であっても、流出部16b側を流動するオイル12の温度は、若干高くなる程度と推測できる。したがって、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1では、湿式多板クラッチ1の作動時にオイル12の温度が上昇しても、それに伴って温度が上昇する摩擦材7および各クラッチ板5,6の最高温度を低く抑えられることが分かる。
以上のように、この発明の実施形態における湿式多板クラッチ1によれば、湿式多板クラッチ1の作動時に、オイル12による潤滑および冷却を効率よく行うことができ、摩擦熱によって発熱する摩擦材7、第1クラッチ板5、および、第2クラッチ板6の温度上昇を適切に抑制することができる。そのため、焼き付きやヒートスポット等の発生を回避または抑制することができ、湿式多板クラッチ1の耐久性を向上させることができる。
1 湿式多板クラッチ
2 ハウジング
3 クラッチドラム(第1回転部材)
3a (クラッチドラムの)ケース部
3b (クラッチドラムの)ハブ部
3c (クラッチドラムの)カバー部
3d (クラッチドラムの)ボス部
3e (クラッチドラムの)内フランジ部
3f (クラッチドラムの)フランジ部
4 クラッチハブ(第2回転部材)
4a (クラッチハブの)ハブ部
4b (クラッチハブの)スプライン部
4c (クラッチハブの)ウェブ部
4d (クラッチハブの)リテーナ
5 第1クラッチ板
5a (第1クラッチ板の)流入部側の側面
5b (第1クラッチ板の)流出部側の側面
5c (第1クラッチ板における)受圧クラッチ板
5d (第1クラッチ板における)反力クラッチ板
6 第2クラッチ板
6a (第2クラッチ板の)流入部側の側面
6b (第2クラッチ板の)流出部側の側面
7 摩擦材
7a (摩擦材の)摩擦材セグメント
7b (摩擦材の)隙間
8 ハブ側スプライン
8a (ハブ側スプラインの)スプライン穴
8b (ハブ側スプラインの)スプライン軸
8c (ハブ側スプラインの)欠歯部分
8d (ハブ側スプラインの)隙間拡張部分
9 ドラム側スプライン
9a (ドラム側スプラインの)スプライン穴
9b (ドラム側スプラインの)スプライン軸
10 出力軸
11 作動機構
11a (作動機構、油圧アクチュエータの)油圧室
11b (作動機構、油圧アクチュエータの)ピストン
11c (作動機構、油圧アクチュエータの)リターンスプリング
11d (作動機構、油圧アクチュエータの)スプリング保持部
12 オイル
13 軸受
14 保持プレート
15 スナップリング
16 スプライン油路
16a (スプライン油路の)流入部
16b (スプライン油路の)流出部
17 供給油路
18 排出油路
19 制御油路
20 循環油路
21 (循環油路を形成する)出口側油路
22 (循環油路を形成する)入口側油路
23 (循環油路を形成する)外周油路

Claims (7)

  1. 同軸上に配置され、互いに相対回転する第1回転部材および第2回転部材と、前記第1回転部材と一体に回転する複数の第1クラッチ板と、回転軸線方向で複数の前記第1クラッチ板と交互に配列され、前記第2回転部材と一体に回転する複数の第2クラッチ板と、前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板にそれぞれ取り付けられ、隣接する前記第1クラッチ板または前記第2クラッチ板との間で摩擦力を発生し、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板との間で動力を伝達する摩擦材と、前記第2回転部材と前記第2クラッチ板との間で、トルクを伝達し、かつ、前記回転軸線方向の滑動を可能にするハブ側スプラインと、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、前記摩擦材、および、前記ハブ側スプラインを収容するハウジングと、を備え、前記ハウジング内に供給されるオイルで、少なくとも、前記第1クラッチ板、前記第2クラッチ板、前記摩擦材、および、前記ハブ側スプラインをそれぞれ潤滑および冷却する湿式多板クラッチにおいて、
    前記第2クラッチ板に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン穴と、前記第2回転部材に形成された前記ハブ側スプラインのスプライン軸との間で、前記回転軸線方向に延びる空間であって、前記空間に前記オイルが流入する流入部と、前記空間から前記オイルが流出する流出部とを有し、前記流入部に流入した前記オイルを前記流出部に向けて流動させるスプライン油路と、
    互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面との間で、前記オイルを流動させる出口側油路と、
    互いに対向する前記第1クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流出部側の側面と前記第2クラッチ板の前記回転軸線方向における前記流入部側の側面との間で、前記オイルを流動させる入口側油路と、
    前記第2クラッチ板の外周部分で、かつ、互いに隣接する前記出口側油路と前記入口側油路との間で、前記オイルを流動させる外周油路と、を備え、
    前記摩擦材は、前記第1クラッチ板の前記流入部側の側面、および、前記第2クラッチ板の前記流入部側の側面に、それぞれ、取り付けられており、
    前記スプライン油路、前記出口側油路、前記入口側油路、および、前記外周油路により、前記オイルが、前記スプライン油路から、前記出口側油路、前記外周油路、前記入口側油路の順に流動して、前記スプライン油路に還流する循環油路が形成される
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  2. 請求項1に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1回転部材は、外部からトルクが伝達される入力部材であり、
    前記第2回転部材は、外部にトルクを伝達する出力部材である
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  3. 請求項1または2に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板に前記回転軸線方向の押圧力を加えて前記第1クラッチ板および前記第2クラッチ板を前記回転軸線方向に滑動させ、互いに隣接する前記第1クラッチ板と前記第2クラッチ板とを摩擦係合させる作動機構を備えており、
    前記第1クラッチ板は、前記回転軸線方向における前記作動機構に最も近い位置に配置され、直接、前記押圧力が作用する受圧クラッチ板と、前記回転軸線方向における前記作動機構から最も離れた位置に配置され、前記回転軸線方向の滑動が規制された反力クラッチ板と、を有している
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  4. 請求項3に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記回転軸線方向における最も前記流入部側の位置に配置された、前記受圧クラッチ板または前記反力クラッチ板は、前記流入部側の側面に前記摩擦材を取り付けていない
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記スプライン油路は、前記ハブ側スプラインの所定の歯を欠損させた欠歯部分に形成されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  6. 請求項1から4のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記スプライン油路は、前記ハブ側スプラインのスプライン穴とスプライン軸との間の所定箇所のクリアランスを拡大した隙間拡張部分に形成されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の湿式多板クラッチにおいて、
    前記第1回転部材と前記第1クラッチ板との間で、トルクを伝達し、かつ、前記回転軸線方向の滑動を可能にするドラム側スプラインを備えており、
    前記第1回転部材の内周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン穴が形成され、
    前記第1クラッチ板の外周部分に、前記ドラム側スプラインのスプライン軸が形成されている
    ことを特徴とする湿式多板クラッチ。
JP2021183615A 2021-11-10 2021-11-10 湿式多板クラッチ Pending JP2023071040A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021183615A JP2023071040A (ja) 2021-11-10 2021-11-10 湿式多板クラッチ

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021183615A JP2023071040A (ja) 2021-11-10 2021-11-10 湿式多板クラッチ

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023071040A true JP2023071040A (ja) 2023-05-22

Family

ID=86395309

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021183615A Pending JP2023071040A (ja) 2021-11-10 2021-11-10 湿式多板クラッチ

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023071040A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8863923B2 (en) Fluid transmission device
US6840363B2 (en) Multi-disk friction device selective lubrication on demand
JP5025249B2 (ja) 発進クラッチ
KR101401841B1 (ko) 구동력 전달 장치
US9249838B2 (en) Transmission clutch with improved cooling
JP3303670B2 (ja) 湿式クラッチの潤滑構造
EP2613064B1 (en) Driving force transmission device
US10138949B2 (en) Friction engagement element
JPH0126905Y2 (ja)
US5577581A (en) Coupling assembly
JPH09317848A (ja) ロックアップ装置付きトルクコンバータ
ITBO20080562A1 (it) Frizione multidisco in bagno d'olio
US10944310B2 (en) Rotating electric machine
JP2008309317A (ja) 発進装置
JP3908899B2 (ja) 摩擦係合要素の潤滑装置
JP2007333074A (ja) 流体伝動装置と出力部材との接続構造ならびにこれに用いる出力部材
JP2023071040A (ja) 湿式多板クラッチ
JP2007016892A (ja) 変速機のクラッチ構造
JP2023071047A (ja) 湿式多板クラッチ
JP2009052726A (ja) 発進クラッチ装置
JP2004197777A (ja) 湿式多板クラッチ
JP5044208B2 (ja) 発進クラッチ
JP5620963B2 (ja) 発進クラッチ
JP2021143681A (ja) 摩擦係合装置
JP2021042790A (ja) 湿式多板クラッチ