JP2023069294A - フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物 - Google Patents

フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物 Download PDF

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Takeyuki Abe
正晃 松原
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Abstract

【課題】高屈折率と低アッベ数であることを兼ね備えた、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物の提供。【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物。(式中、Z1a及びZ1bは炭素数6~14の芳香族炭化水素環を示し、R1、R2a、R2b、R3a、R3bはアルキル基等、R4a、R4bは炭素数2~6のアルキレン基を示す。m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。n1及びn2はそれぞれ独立して1~5の整数を示す。)TIFF2023069294000006.tif51128【選択図】なし

Description

本発明は、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物及びその製造方法に関する。
9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物は、高い屈折率を示す等光学特性に優れることが知られ、そのため、カメラ、フィルム一体型カメラ、ビデオカメラ等の各種カメラの光学系に使用される光学レンズの材料となる、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の光学樹脂の原料として好適に使用されている(例えば、特許文献1)。
また、カメラの光学系では、一般に、複数枚の凹レンズと凸レンズを組み合わせる事で収差補正を行っている。即ち、凸レンズで出来た色収差に対し、凸レンズと反対の符号の色収差を有する凹レンズを組み合わせることにより、合成的に色収差を打ち消している。この時、凹レンズには高分散(すなわち、低アッベ数)である事が要求される一方、屈折率とアッベ数は比例関係にあり、高い屈折率と低アッベ数であることを兼ね備えることは困難とされている(例えば特許文献2)。
特開2017-137344号公報 国際公開2018/016516号パンフレット
本発明は、高い屈折率と低アッベ数であることを兼ね備えた、フルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物の提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表される特定の構造を有するフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物によれば、該課題が解決可能であることを見出した。具体的には、本発明は以下の発明を含む。
[1]
下記一般式(1):
Figure 2023069294000001
(式中、Z1a及びZ1bはそれぞれ独立して炭素数6~14の単環式又は多環式芳香族炭化水素環を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R2a及びR2bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基を示し、R3a及びR3bはそれぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R4a及びR4bはそれぞれ独立して炭素数2~6のアルキレン基を示す。m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。n1及びn2はそれぞれ独立して1~5の整数を示す。)
で表される化合物。
[2]
下記一般式(2):
Figure 2023069294000002
(式中、Z1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上述の通りである。)
で表される化合物と、アルキレンカーボネートとを反応させる、〔1〕に記載の上記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、高い屈折率と低アッベ数であるとことを兼ね備えている。具体的には、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等の9,9-ビスアリールフルオレン構造を有するフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物は高い屈折率を示すことが知られているが、本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、後述する実施例の項に示す通り、一般的なフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物と同程度の高い屈折率を示しつつ、より低いアッベ数を示す。したがって、凹レンズのような高分散(低アッベ数)が求められる部材を構成する樹脂の原料として好適である。
また、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等のフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物には非晶質体が存在することが知られており、該非晶質体は、嵩密度の改善および低融点化が可能であるとの樹脂原料として好ましい特徴を有するものの、その製造のためには、一旦、晶析により得られた結晶体を、融点以上の高温にして溶融させ、その後冷却するとの、煩雑かつエネルギー的に不利なプロセスを経る必要があることが知られている(例えば、特許文献1)。一方、本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、後述する実施例の項にて記載する通り、例えば、該化合物を含む反応混合物を、必要に応じ定法により精製した後、一般的なフルオレン骨格を有するジヒドロキシ化合物であれば結晶体が得られる方法である、溶媒等の揮発成分を濃縮除去するとの簡便な方法により特異的に非晶質体が製造可能であることから、この点からも樹脂原料として好適であるといえる。
図1は、実施例1で得られた1,1-ビス[(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンのH-NMRチャートである。 図2は、実施例1で得られた1,1-ビス[(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの13C-NMRチャートである。 図3は、実施例1で得られた1,1-ビス[(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの質量分析チャートである。 図4は、実施例1で得られた1,1-ビス[(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの粉末X線回折パターンを示す図である。 図5は、実施例1で得られた1,1-ビス[(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの示差走査熱量測定(DSC)曲線を示す図である。
本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
<上記一般式(1)で表される化合物>
上記一般式(1)において、環Z1a及びZ1bにおける炭素数6~14の単環又は多環式芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等が挙げられる。これら環Z1a及びZ1bの中でも、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましい。また、環Z1aとZ1bは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。また、環Z1a及びZ1bがナフタレン環の場合、フルオレニル基及び置換基Rが結合している炭素原子との結合位置は、ナフタレン環の1位または2位のいずれであってもよいが、2位が好ましい。
上記一般式(1)において、置換基Rにおける炭素数1~18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられ、炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これら置換基Rの中でも、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が更に好ましい。
上記一般式(1)において、置換基R2a及びR2bにおける炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられる。これら置換基R2a及びR2bの中でも、水素原子または炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基またはエチル基が更に好ましい。また、置換基R2a及びR2bは、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
上記一般式(1)において、置換基R3a及びR3bにおける炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が挙げられ、炭素数6~12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロへキシル基等が挙げられ、炭素数6~12の芳香族基としては、例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1~4のアルキル)置換フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これら置換基R3a及びR3bの中でも、炭素数1~4のアルキル基又はフェニル基が好ましい。また、置換基R3a及びR3bは、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
上記一般式(1)において、置換基R4a及びR4bにおける炭素数2~6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、プロピレン基、2,2-ジメチルエチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、2,3-ブタンジイル基、等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。これら置換基R4a及びR4bの中でも、炭素数2または3のアルキレン基が好ましく、エチレン基又はトリメチレン基がより好ましい。また、置換基R4a及びR4bは、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
上記一般式(1)において環Z1a、Z1bがベンゼン環である場合、基[-(OR4an1OH]、[-(OR4bn2OH]の置換位置は、フルオレニル基及び置換基Rが結合している炭素原子との結合位置(ベンゼン環の1位)に対し、4位(パラ位)であることが好ましい。また、上記一般式(1)において環Z1a、Z1bがナフタレン環である場合、基[-(OR4an1OH]、[-(OR4bn2OH]の置換位置は、ナフタレン環の4位、5位又は6位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
上記一般式(1)において、m1及びm2は、それぞれ独立して0~4の整数、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1を表す。m1及びm2は同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。m1が2以上である場合、複数ある置換基R3aは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。また、m2が2以上である場合、複数ある置換基R3bは同一であっても異なってもよいが、原料の入手性の観点から、同一であることが好ましい。
上記一般式(1)において、n1及びn2は、それぞれ独立して1~5の整数、好ましくは1又は2を表す。n1及びn2は同一であっても異なってもよいが、製造容易性の観点から、同一であることが好ましい。n1が2以上である場合、複数ある置換基R4aは同一であっても異なってもよいが、製造容易性の観点から、同一であることが好ましい。n2が2以上である場合、複数ある置換基R4bは同一であっても異なってもよいが、製造容易性の観点から、同一であることが好ましい。
本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、後述する実施例の項に記載の方法で測定したアッベ数が、通常20以下、好ましくは18以下である。また、屈折率が、例えば1.60以上、好ましくは1.62以上である。なお、通常アルキレン基の導入(上記一般式(2)で表される化合物から上記一般式(1)で表される化合物への変換)は、屈折率を低下させ、アッベ数を増加させる傾向にあるところ、本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、上記一般式(2)で表される化合物に比し、屈折率は低下するものの、同等もしくはより低いアッベ数を有する。
また、本発明の上記一般式(1)で表される化合物は、樹脂原料として好適であることから非晶質体であることが好ましい。非晶質体であるか否かは、例えば、後述する測定条件で粉末X線回折測定や示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより確認することができる。具体的には、粉末X線回折パターンにおいて明確なピークを有さない(ハローパターンを示す)ことや、DSC曲線において結晶の融解に起因する明確な融解吸熱ピークを有さないことにより、非晶質体であることを確認することができる。
非晶質体である場合、そのガラス転移温度は通常50~70℃である。
<上記一般式(1)で表される化合物の製造方法>
上記一般式(1)で表される化合物は、例えば、塩基存在下、上記一般式(2)で表される化合物と、アルキレンカーボネートとを反応させることによって得られる。なお、上記一般式(2)におけるZ1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上記した通りであり、それぞれの好ましい態様についても上記した通りである。
上記一般式(2)において環Z1a、Z1bが、例えば、ベンゼン環である場合、ヒドロキシ基の置換位置は、フルオレニル基及び置換基Rが結合している炭素原子との結合位置(ベンゼン環の1位)に対し、4位(パラ位)であることが好ましい。また、上記一般式(2)において環Z1a、Z1bが、例えば、ナフタレン環である場合、ヒドロキシ基の置換位置は、ナフタレン環の4位、5位又は6位であることが好ましく、6位であることがより好ましい。
アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン等が挙げられる。アルキレンカーボネートの使用量は、上記一般式(1)におけるn1及びn2に応じて適宜調整可能であり、例えば、n1=n2=1である上記一般式(1)で表される化合物を主生成物として製造する場合、その使用量は、通常、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し2~5モル、好ましくは2~3モルである。
塩基としては、例えば、炭酸塩類、炭酸水素塩類、水酸化物類、有機塩基類などが挙げられる。炭酸塩類としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム等が挙げられる。炭酸水素塩類としては、例えば、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム等が挙げられる。水酸化物類としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。有機塩基類としては、例えば、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、トリフェニルホスフィン、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これら塩基の中でも、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム又はトリフェニルホスフィンが好適に使用される。これら塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
塩基の使用量は、上記一般式(2)で表される化合物1モルに対し、通常0.01~1.0モル、好ましくは0.03~0.5モルである。
上記一般式(2)で表される化合物とアルキレンカーボネートとを反応させる際、必要に応じ、溶媒存在下で反応を実施してもよい。かかる溶媒としては、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、脂肪族ニトリル類、アミド類、スルホキシド類等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロウンデカノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。ハロゲン化芳香族炭化水素としては、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等が挙げられる。脂肪族炭化水素としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられる。ハロゲン化脂肪族炭化水素類としては、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ-iso-プロピルエーテル、メチル-tert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。脂肪族ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒の中でも入手性及び反応性の観点から、沸点が100℃以上の、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類又はエーテル類が好適に用いられる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これら溶媒を使用する際の使用量は、上記一般式(2)で表される化合物1重量部に対し、通常0.1~10重量部、好ましくは1~4重量部である。
上記一般式(2)で表されるビスアリールアルコール類とアルキレンカーボネートとの反応は、通常30~150℃、好ましくは100~130℃で実施される。
前記した反応終了後、得られた反応液に対し、必要に応じて中和、水洗等を行った後、濃縮、晶析、濾過等により上記一般式(1)で表される化合物を取り出すことができる。なお、効率的に非晶質体を得る観点からは、濃縮により溶媒等の揮発成分を除去することにより、上記一般式(1)で表される化合物を取り出すことが好ましい。
以下、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、実施例等における各種測定は下記の方法にて実施した。また、実施例等に記載した「純度」は下記条件で測定したHPLCの面積百分率値である。
[1]HPLC測定
装置 :島津製作所製 「LC-20A」
カラム:(株)Waters製 「XBridge Shield RP18」
(3.5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:A液0.1vоl.%トリフルオロ酢酸水溶液、B液アセトニトリル。B液濃度に付、下記の通り濃度を変化させ分析を行った。
B液濃度:30%→(25分)→100%(15分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:UV 254nm
[2]粉末X線回折測定
粉末X線回折装置(「X’Part3 Pоwder」、スペクトリス(株)製)を用いて、出力1.8kW、線源(Cu管球)、測定角5~70°の条件で測定した。
[3]示差走査熱量測定(DSC)
以下実施例及び参考例に記載した化合物の結晶5mgをアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社:DSC7020)を用い、酸化アルミニウムを対照として下記操作条件で測定した。
(操作条件)
昇温速度:10℃/min
測定範囲:-10℃-250℃
雰囲気 :開放、窒素40ml/min
[4]NMR測定
H-NMR及び13C-NMRは、内部標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒としてCDClを用いて、JEOL-ESC400分光計によって測定した。
[5]LC-MS測定
LC-MSは次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q-Tof」
カラム:化学物質評価研究機構製「L-Cоlumn2 ODS」
(2μm、2.1mmφ×100mm)
カラム温度:40℃
検出波長:UV 230-500nm
移動相:A液=30vоl.%メタノール10mM酢酸アンモニウム水、B液=メタノール
移動相流量:0.3ml/min
移動相グラジエント:B液濃度:50%(2.8分)→(10分)→100%(2.5分)
検出法:Q-Tof
イオン化法:APCI(+)法
Ion Source:電圧(+)2.0kV、温度120℃
Sampling Cone :電圧 10V、ガスフロー50L/h
Desolvation Gas:温度400℃、ガスフロー1200L/h
[6]屈折率、アッベ数
各化合物をN-メチル-2-ピロリドンに溶解して5重量%、10重量%及び15重量%溶液を調製し、各溶液について、アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR-2M」)を用いて、20℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数(波長:486nm、589nm、656nm)を測定した。次に、得られた3点の測定値から近似直線を導き、これを100重量%に外挿したときの値を各化合物の屈折率及びアッベ数とした。
<合成例1>
攪拌器、冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、2-アセチル-9H-フルオレン102g、フェノール424g、硫酸48g、3-メルカプトプロピオン酸5.2gを仕込んだ後、内圧2kPa、内温55℃で12時間反応させて、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンを含む反応混合物を得た。
得られた反応混合物にイオン交換水102gを仕込み、24%水酸化ナトリウム水溶液を添加し中和させ、内温を25℃まで冷却することにより結晶を析出させた。析出した結晶をろ別し、トルエン及び水を用いて洗浄することで1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの粗結晶を得た。
得られた粗結晶をメタノールを用いて再結晶することにより、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの結晶98g(収率:53%、純度:99.6%)を得た。
上記測定条件により屈折率及びアッベ数を測定した結果を表1に示す。
また、上記測定条件によりDSC測定を行ったところ、207℃に融解吸熱最大温度を有することを確認した。
<実施例1>
攪拌器、冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、合成例1で得られた1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタン60g、エチレンカーボネート32g、炭酸カリウム3.3g及びトルエン240gを仕込んだ後、内温110℃で12時間反応させて、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンを含む反応混合物を得た。
得られた反応混合物にイオン交換水68gを加えて希釈した後、内温80℃で撹拌しながら24%水酸化ナトリウム水溶液47gを添加し、同温度で5時間撹拌した。その後、静置して有機層と水層を分離し、水層を除去した。次いで、得られた有機層を洗浄水が中性となるまで水洗した後、内圧2kPa、内温90℃で有機層を濃縮し、トルエン等の揮発成分を除去し、室温まで冷却したところ、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンの粗製ガラス状固体62g(HPLC純度:96%)が得られた。
得られた粗製ガラス状固体を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により精製し、減圧下に展開溶媒を除去することで、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-1-(9H-フルオレン-2-イル)エタンのガラス状固体(HPLC純度:98%)を得た。
上記測定条件により屈折率及びアッベ数を測定した結果を表1に示す。
また、上記測定条件によりH-NMR、13C-NMR及びLC-MS測定を行った。得られたチャートをそれぞれ図1~3に示すと共に、測定結果を下記する。
更に、上記測定条件により粉末X線回折及びDSC測定を行った。得られた粉末X線回折パターンを図4に、DSC曲線を図5にそれぞれ示す。図4に示す通り、粉末X線回折パターンにおいてハローパターンが観測され、また、図5に示す通り、DSC曲線において明確な吸熱ピークは観測されなかったことから、得られたガラス状固体が非晶質体であることが確認された。また、DSC曲線において63℃にガラス転移温度と考えられる熱量変化が確認された。
H-NMR(CDCl)>
δ(ppm):2.03(2H、t)、2.19(3H、s)、3.82(2H、s)、3.96(4H、m)、4.08(4H、dd)、6.82-6.84(4H、m)、7.03-7.05(4H、m)、7.25-7.27(3H、m)、7.34(1H、t)、7.51(1H、d)、7.66(1H、d)、7.73(1H、d)。
13C-NMR(CDCl)>
δ(ppm):30.99、37.09、51.48、61.52、69.24、113.87、119.18、119.84、125.06、125.24、126.55、126.78、127.51、129.86、139.59、141.53、142.23、143.04、143.52、148.49、156.76。
<マススペクトル値>
(M+NH:484.25
<比較例1>
市販品の9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(HPLC純度:97%)を用い、上記測定条件により屈折率及びアッベ数を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2023069294000003

Claims (2)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 2023069294000004
    (式中、Z1a及びZ1bはそれぞれ独立して炭素数6~14の単環式又は多環式芳香族炭化水素環を示し、Rは炭素数1~18のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R2a及びR2bはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のシクロアルキル基を示し、R3a及びR3bはそれぞれ独立して炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~12のシクロアルキル基または炭素数6~12の芳香族基を示し、R4a及びR4bはそれぞれ独立して炭素数2~6のアルキレン基を示す。m1及びm2はそれぞれ独立して0~4の整数を示す。n1及びn2はそれぞれ独立して1~5の整数を示す。)
    で表される化合物。
  2. 下記一般式(2):
    Figure 2023069294000005
    (式中、Z1a、Z1b、R、R2a、R2b、R3a、R3b、m1及びm2は上述の通りである。)
    で表される化合物と、アルキレンカーボネートとを反応させる、請求項1に記載の上記一般式(1)で表される化合物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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