JP2023067600A - 多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンドグリコシダーゼ - Google Patents
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Abstract
【課題】多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンドグリコシダーゼ)の提供。【解決手段】バクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼであって特定のアミノ酸配列を有するもの。【選択図】なし
Description
本発明は、多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンドグリコシダーゼ)に関する。
エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンドグリコシダーゼ)は、糖タンパク質の糖鎖の切断や転移に利用されている。
エンドグリコシダーゼとして、Endo A、Endo F、Endo H、Endo M等が挙げられる。これらの酵素は、特定の構造を有する糖鎖にのみ作用するか、あるいは特定の構造を有する糖鎖に対する作用が強かった。また、複合型糖鎖に対する反応性はそれほど大きくなかった。
高等動物の糖タンパク質のN-結合型糖鎖には、N-アセチルグルコサミン転移酵素であるGnT-VやGnT-IVなどの作用により、3本鎖や4本鎖のように多分岐した糖鎖も多く見られる。これまで報告されたENGaseのほとんどが、3分岐や4分岐した糖鎖に作用することができない。しかし昨年、野口研究所のグループによりグラム陰性細菌であるTannerella属のENGaseが多分岐の糖鎖を切断できることが報告された(非特許文献1を参照)。
Takashima S et al. Glycobiology, 30(11): 923-934 (2020)
本発明は、多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(エンドグリコシダーゼ)の提供を目的とする。
本発明者は、Tannerella属細菌のENGaseと相同性の高い酵素(遺伝子)をBacteroides nordiiゲノム中に見出した。さらに類似した酵素を腸内細菌であるBarnesiella intestinihominisのゲノム中にも見出した。これらの酵素について基質特異性を測定した結果、これらの酵素が多分岐の糖鎖を加水分解し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[2] 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[3] 以下の(c)又は(d)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(c) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[4] 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[5] 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[6] 以下の(g)又は(h)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(g) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNA
(h) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[7] [2]又は[3]のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、[1]のバクテロイデス・ノルジー由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
[8] [5]又は[6]のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、[4]のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
[9] [1]のエンドグリコシダーゼを糖タンパク質と接触させ、糖鎖を切断し、遊離糖鎖を得ることを含む、遊離糖鎖を作製する方法。
[10] [4]のエンドグリコシダーゼを、タンパク質及びオキサゾリン化糖鎖と接触させ、糖鎖をタンパク質に転移させることを含む、糖タンパク質の作製方法。
[1] 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[2] 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[3] 以下の(c)又は(d)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(c) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[4] 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[5] 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。
[6] 以下の(g)又は(h)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(g) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNA
(h) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[7] [2]又は[3]のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、[1]のバクテロイデス・ノルジー由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
[8] [5]又は[6]のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、[4]のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
[9] [1]のエンドグリコシダーゼを糖タンパク質と接触させ、糖鎖を切断し、遊離糖鎖を得ることを含む、遊離糖鎖を作製する方法。
[10] [4]のエンドグリコシダーゼを、タンパク質及びオキサゾリン化糖鎖と接触させ、糖鎖をタンパク質に転移させることを含む、糖タンパク質の作製方法。
本発明の酵素を用いることにより、多分岐の糖鎖を遊離することができる。多分岐の糖鎖を有する糖タンパク質についての均一な糖鎖を有する糖タンパク質を作製することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンドグリコシダーゼ
本発明の酵素は、糖タンパク質のN-結合型糖鎖の還元末端側に存在するN,N’-ジアセチルキトビオースの2つのGlcNAcの間(GlcNAc-GlcNAc)を加水分解し、糖鎖をエンド型に遊離する酵素エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであり、さらに、多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼである。
1.多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンドグリコシダーゼ
本発明の酵素は、糖タンパク質のN-結合型糖鎖の還元末端側に存在するN,N’-ジアセチルキトビオースの2つのGlcNAcの間(GlcNAc-GlcNAc)を加水分解し、糖鎖をエンド型に遊離する酵素エンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼであり、さらに、多分岐の糖鎖を加水分解し得るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼである。
本発明の酵素が作用する糖鎖において、α1,6-結合で還元末端の(根本の)GlcNAc(N-アセチルグルコサミン)にフコース(コアフコース)が結合していてもいなくてもよい。
本発明において、多分岐糖鎖とは、2分岐以上の複合型糖鎖をいい、2分岐、3分岐、4分岐の糖鎖が対象となる。本発明において、多分岐糖鎖は、3本鎖以上の複合型糖鎖又はバイセクティング(bisecting)GlcNAcを有する2本鎖以上の複合型糖鎖をいう。図8A~図8Cに多分岐糖鎖の例を示す図8Aは3分岐糖鎖、図8Bは4分岐糖鎖、図8CはバイセクティングGlcNAcを有する2分岐糖鎖である。分岐糖鎖を、ジアセチルキトビオース(GlcNAc-GlcNAc)にマンノース(Man)のオリゴマーが結合した構造を有する高マンノース型糖鎖、ジアセチルキトビオースにMan並びにGlcNAc、ガラクトース(Gal)、シアル酸(Neu5Ac)の少なくとも1つが結合した複合型糖鎖還元末端のGlcNAc残基にα1,6結合でフコースが付加している糖鎖を糖鎖の分枝の数により、「Fucosyl-biantennary」(2本鎖)、「Fucosyl-triantennary」(3本鎖)、「Fucosyl-tetraantennary」(4本鎖)のように表す。N-結合型糖鎖は、タンパク質のアミノ酸配列のAsn-任意のアミノ酸-Ser/Thrで表される糖鎖結合配列のアスパラギン残基に結合する。
本発明の酵素は、2分岐以上の糖鎖に作用して加水分解し得るが、特に3分岐又は4分岐の糖鎖に作用して加水分解する。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、特にフコースが根元に結合した2本鎖(2分岐)複合型糖鎖に強く作用し、切断する。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは高マンノース型糖鎖には作用しない。ここで、高マンノース型糖鎖は、Man残基からなる糖鎖であり、高マンノース型糖鎖としては、3個から9個のマンノースが結合したMan3型~Man9型糖鎖が挙げられる。例えば、6個のマンノースが結合した糖鎖は、Man6GlcNAc2Asnで表される。
本発明の酵素として、Endo-BN及びEndo-BIが挙げられる。
本発明のEndo-BNは、バクテロイデス属細菌である、Bacteroides nordii(バクテロイデス・ノルジー)から単離することができる。Endo-BNの塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。
本発明のEndo-BIは、バクテロイデス属細菌である、Barnesiella intestinihominis(バルネシエラ・インテスティニホミニス)から単離することができる。Barnesiella intestinihominis(バルネシエラ・インテスティニホミニス)由来のEndo-BIは、Endo-BI1、Endo-BI2及びEndo-BI3の3種類存在する。Endo-BI1の塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。Endo-BI1の塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。さらに、Endo-BI3の塩基配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、多分岐の糖鎖を加水分解する限り、上記アミノ酸配列において少なくとも1個、好ましくは1若しくは数個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
例えば、配列番号2、4、6及び8のいずれかで表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2、4、6及び8のいずれかで表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2、4、6及び8のいずれかで表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1若しくは2個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。
このような配列番号2、4、6及び8のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2、4、6及び8のいずれかのアミノ酸配列と、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有しているものが挙げられる。
このような配列番号2、4、6及び8のいずれかのアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質は配列番号2、4、6及び8のいずれかのアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同一である。
また、配列番号1、3、5及び7に表される塩基配列からなるDNAと相補的な配列からなるDNAと下記のストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAであって、多分岐の糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNAに含まれる。すなわち、DNAを固定したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSCとは150mM NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することにより同定することができる条件をいう。あるいは、サザンブロッティング法によりニトロセルロース膜上にDNAを転写、固定後、ハイブリダイゼーション緩衝液〔50% フォルムアミド、4×SSC、50mM HEPES(pH7.0)、10×デンハルツ(Denhardt' s)溶液、100μg/mlサケ精子DNA〕中で42℃で一晩反応させることによりハイブリッドを形成することができるDNAである。
また、配列番号1、3、5及び7に表される塩基配列からなるDNAとBLAST(Basic Local Alignment Search Tool at the National Center for Biological Information(米国国立生物学情報センターの基本ローカルアラインメント検索ツール))等(例えば、デフォルトすなわち初期設定のパラメータ)を用いて計算したときに、少なくとも85%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有しているDNAであって、多分岐の糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNAも本発明のエンドグリコシダーゼをコードするDNAに包含される。
さらに、上記DNAに対するRNA、又は該RNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるRNAであって2本鎖複合型糖鎖に特異的に作用し、該2本鎖複合型糖鎖を切断し遊離させ、かつ糖鎖を転移させる活性を有するタンパク質をコードするRNAも本発明に含まれる。
2.本発明の酵素の産生
本発明の多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、Bacteroides nordii又はBarnesiella intestinihominisを培養し、製造することができ、これらの微生物の培養液等の培養物からアミノ酸配列を指標に単離することができる。また、本発明の多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、該酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。
本発明の多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、Bacteroides nordii又はBarnesiella intestinihominisを培養し、製造することができ、これらの微生物の培養液等の培養物からアミノ酸配列を指標に単離することができる。また、本発明の多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、該酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。
同様に、本発明の多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、該酵素をコードするDNAを宿主微生物に導入し、該微生物を培養することにより組換え酵素として製造することができる。例えば、適当なベクターに本発明のDNAを連結(挿入)することにより発現ベクターを作製し、該発現ベクターを宿主微生物に導入し宿主微生物を形質転換すればよい。
本発明のDNAを挿入するためのベクターは、大腸菌等の細菌、酵母又は動物細胞等の宿主細胞中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。発現ベクターの構築に用いられるベクターDNAは、広く普及した入手の容易なものが用いられる。例えば、pETベクター、pQEベクター、pColdベクター、pUC19ベクター等が挙げられる。
本発明の発現ベクターの構築方法は、特に限定されるものではなく常法により行うことができる。
本発明の発現ベクターで形質転換された宿主細胞は、本発明のDNAを発現し得るものであれば特に制限されないが、例えば、細菌としては大腸菌、枯草菌等が、酵母としてはサッカロマイセス・セレビィシエ等が、動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サルCOS細胞、マウス線維芽細胞等が挙げられる。
本発明は、上記DNAを含む宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを産生させ、該酵素を回収することを含む多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼの製造方法を包含する。
さらに、本発明は、上記DNAを含む宿主細胞をDNAの発現可能な条件下で培養して、多分岐の糖鎖を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを産生させ、該酵素を回収することを含む酵素の製造方法を包含する。
宿主細胞により産生された酵素は、例えばゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、クロマトフォカシング、等電点電気泳動法、ゲル電気泳動法等の公知の精製法を単独又は組み合わせて精製することができる。
3.本発明の酵素の利用
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、多分岐の糖鎖を加水分解する。
本発明の酵素を用いることにより、多分岐複合糖鎖を遊離することができる。多分岐複合糖鎖を有する糖タンパク質についての均一な糖鎖を有する糖タンパク質を作製することができる。
本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼは、多分岐の糖鎖を加水分解する。
本発明の酵素を用いることにより、多分岐複合糖鎖を遊離することができる。多分岐複合糖鎖を有する糖タンパク質についての均一な糖鎖を有する糖タンパク質を作製することができる。
本発明は、本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、多分岐の糖鎖を加水分解する方法、及び本発明のエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼを糖タンパク質と接触させることにより、多分岐の糖鎖を加水分解するが切断された糖タンパク質を作製する方法を包含する。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1] Bacteroides nordii由来のENGaseの大腸菌による発現及び基質特異性の解析
グラム陰性菌であるTannerella属細菌が産生するENGaseが多分岐の糖鎖を切断することが報告された(Takashima S et al. Glycobiology, 30(11): 923-934 (2020))。
グラム陰性菌であるTannerella属細菌が産生するENGaseが多分岐の糖鎖を切断することが報告された(Takashima S et al. Glycobiology, 30(11): 923-934 (2020))。
本発明者は、Tannerella属細菌が産生するENGaseと配列相同性の観点から関連のある酵素遺伝子をBacteroides nordiiゲノム中に見出した。
B. nordiiゲノム中に存在したENGase (Endo-BN)は、Tannerellaの3つのENGaseと同じGH85ファミリーに属しているが、それほど相同性は高くない。そこで本酵素が新たな基質特異性を有している可能性があると考え、本酵素の基質特異性について解析を行った。
該Bacteroides nordii由来の遺伝子の塩基配列を配列番号1に、アミノ酸配列を配列番号2に示す。酵素を発現するために、配列番号9に示す塩基配列を用いた。配列番号9に示す塩基配列は、元の配列からN末のシグナルペプチド配列とC末のT9SS type A sorting domainを削除し、制限酵素サイトを付加し、大腸菌コドン最適化した配列である。発現させた酵素のアミノ酸配列を配列番号10に示す。配列番号10に示す配列は、C末端にHisタグが付加されている。
上記のEndo-BN遺伝子をpETベクターに連結し、以下の方法で大腸菌により発現させた。
大腸菌発現ベクターは、NCBI Reference Sequence: WP_007484749.1の配列から、N末端側のシグナルペプチド配列とC末端側のT9SS typeA sorting domainを削除し、制限酵素サイトを付加し、大腸菌コドン最適化した配列において、全合成し、pET-21bのXhoI-NdeIの間にライゲーションをおこなった。
この大腸菌発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)にヒートショック法において、形質転換をおこなった。反応温度は、予めコンピテントセルを5分間氷上で冷やした後、42℃のウォーターバスで30秒静置。その後、2分間氷上で冷やした後、SOC培地において、37℃ 250rpmで1時間培養した後、LBプレートに植菌し、37℃で培養をおこなった。一晩、培養した後、プレートに生えたコロニーを採取し、形質転換された大腸菌を得た。
得られた大腸菌を3Lのフラスコに1LのLB培地を加え、OD600が約0.05になるように播種し、37℃ 180rpmで3時間培養後、IPTGを添加し、20℃ 150rpmで20時間培養をおこなった。得られた培養液を7,000rpmで7分間遠心して集菌し、上清を捨てて、破砕バッファー5ml加えて懸濁した。超音波破砕(output=5,Duty=70, 10回× 4セット)により破砕した溶液を15,000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。タンパク質溶液をHis-Trapカラムを用いて精製した。SDS-PAGEで確認した結果を図1に示す。100kDaと130kDaの間にバンドが見られ、理論分子量105.88KDaのEndo-BNと判断した。
[実施例2] Endo-BNの基質特異性の評価
発現させた酵素の基質特異性について各種PA化糖鎖に作用させて、その速度を測定した。
発現させた酵素の基質特異性について各種PA化糖鎖に作用させて、その速度を測定した。
酵素活性の測定は図2に示すピリジルアミノ化(PA化)糖鎖を基質として用いてHPLCにより定量を行った。
大腸菌で発現・精製したEndo-BNを2 pmolのPA化シアロバイアンテナリー糖鎖を基質として100 mMの酢酸バッファー(pH 4.0)にて30℃10分間反応を行った。反応液はHPLC(GLサイエンス社製)にて5C18カラム(Wakosil 5C-18, 4.6 x 250 mm)にて0.15% 1-ブタノールを含む50 mM酢酸アンモニウムバッファー(pH4.0)にて溶出した。流速は1.5 ml/minで行った。
反応により得られたPA-GlcNAcを蛍光検出器にてPAを320 nm excitation 400 nm emissionでモニターした。
図2に結果を示す。図2には、PA化糖鎖名、構造、及びNo.17のPA-fucosyl sialobiantennaryを100%とした時の相対活性を示す。
解析の結果、最も速やかに分解できたのはフコシル2本鎖複合型糖鎖(No. 17:シアル酸の結合はα2,6-結合)であった。本酵素はM3-M9などの高マンノース型糖鎖は全く分解しなかった。また、No. 15のような3本鎖の複合型糖鎖も比較的速やかに分解することがわかった。
[実施例3] α-1酸性タンパク質の脱糖鎖の検討
一般的に3分岐や4分岐糖鎖が含まれると言われている糖タンパク質であるα-1産生グリコプロテインについて、Endo-BNを用いて脱糖鎖の検討を行った。
一般的に3分岐や4分岐糖鎖が含まれると言われている糖タンパク質であるα-1産生グリコプロテインについて、Endo-BNを用いて脱糖鎖の検討を行った。
表1に脱糖鎖反応の反応条件を示す。
0分、5分、10分、1時間、3時間、24時間、144時間後の経時変化をSDS-PAGEによって評価を行った。また、144時間後の反応液にさらに等量のEndo-BNを追加し、37℃24時間反応させすべての糖鎖が切断されたか確認を行った。
結果を図3に示す。図3に示すように、Endo-BNを反応させることによって、反応前のバンドから糖鎖が切断されバンドがシフトする事がわかった。このようにα-1酸性タンパク質のすべての糖鎖を加水分解することができることがわかった。
[実施例4] Barnesiella intestinihominis由来のENGaseの大腸菌による発現
最近、Trastoyらにより、最も典型的なBacteroides属腸内細菌である、Bacteroides thetaiotaomicronのゲノム中にGH18ファミリーに属するENGaseが存在すること、またEndoBT-3987と名付けたENGaseが高マンノース型糖鎖を主に分解することが報告された(Nat Commun 11:899, 2020)。そこでEndo-BNのアミノ酸配列をもとにBLAST検索を行ったところ、Barnesiella intestinihominis のゲノム中にGH85ファミリーに属するENGase 遺伝子が存在することを見出した。
最近、Trastoyらにより、最も典型的なBacteroides属腸内細菌である、Bacteroides thetaiotaomicronのゲノム中にGH18ファミリーに属するENGaseが存在すること、またEndoBT-3987と名付けたENGaseが高マンノース型糖鎖を主に分解することが報告された(Nat Commun 11:899, 2020)。そこでEndo-BNのアミノ酸配列をもとにBLAST検索を行ったところ、Barnesiella intestinihominis のゲノム中にGH85ファミリーに属するENGase 遺伝子が存在することを見出した。
B. intestinihominisは腸内細菌であるため、実際に本菌のENGaseは腸の表層に露出しているヒトのN-結合型糖鎖を遊離して資化することが考えられた。そこで本菌ゲノム中に存在するGH85タイプのENGaseの特異性について解析を行うことにした。
まず全ゲノム塩基配列が報告されているB. intestinihominisの遺伝子の解析を行った。PubMedからB. intestinihominis YIT11860 株の全遺伝子中のグリコシダーゼの検索を行うことにした。全2,686遺伝子がコードするタンパク質のFASTAデータをdbCANmeta serverにてGHファミリーの検索と同定を行った。結果、B. intestinihominis YIT11860株の全遺伝子中には、93個のグリコシダーゼが存在することがわかった。
そこで本菌のGH85ファミリーの属する3つのタンパク質を大腸菌で発現させることを試みた。
全ゲノム配列が決定されたB. intestinihominis YIT11860株そのものの株を入手することが困難であったので、理研が保有しているB. intestinihominis株JCM15079株を入手して、培養後、DNAを調製してPCRにより遺伝子の増幅を試みた。YIT11860株の塩基配列をもとに3つの遺伝子のN-末端とC-末端付近の塩基配列からPCR反応用のプライマーを合成した。その結果、3つの遺伝子がすべて予想される分子量と同じサイズで増幅された。
得られたDNA断片を大腸菌のプラスミドベクターに挿入して、各遺伝子の塩基配列の決定を行った。その結果、報告されているB. intestinihominis YIT11860株のDNA配列といくつかの塩基は異なっていたが、完全に同じアミノ酸配列であることがわかった。
3つの酵素をEndo-BI1、Endo-BI2及びEndo-BI3と名付けた。
Endo-BI1の塩基配列を配列番号3に、アミノ酸配列を配列番号4に示す。Endo-BI1の塩基配列を配列番号5に、アミノ酸配列を配列番号6に示す。さらに、Endo-BI3の塩基配列を配列番号7に、アミノ酸配列を配列番号8に示す。
このうち、Endo-BI2を大腸菌により発現させた。
大腸菌発現ベクターは、NCBI Reference Sequence: WP_007484749.1の配列から、N末端側のシグナルペプチド配列を削除し、pCold1に挿入した。
この大腸菌発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)にヒートショック法において、形質転換を行った。反応温度は、予めコンピテントセルを5分間氷上で冷やした後、42℃のウォーターバスで30秒静置した。その後、2分間氷上で冷やした後、SOC培地において、37℃ 250rpmで1時間培養した後、LBプレートに植菌し、37℃で培養をおこなった。一晩、培養した後、プレートに生えたコロニーを採取し、形質転換された大腸菌を得た。
得られた大腸菌を3Lのフラスコに1LのLB培地を加え、OD600が約0.05になるように播種し、37℃ 180rpmで3時間培養後、IPTGを添加し、20℃ 150rpmで20時間培養をおこなった。得られた培養液を7,000rpmで7分間遠心して集菌し、上清を捨てて、破砕バッファー5ml加えて懸濁した。超音波破砕(output=5,Duty=70, 10回× 4セット)により破砕した溶液を15,000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。タンパク質溶液をHis-Trapカラムを用いて精製した。His-Trapで精製後、さらに純度度を上げるために、ゲルろ過をおこないEndo-BI2の画分を回収した。得られた画分をSDS-PAGEにおいて評価をおこなった。結果を図4に示す。図4中、左のレーンは分子量マーカーであり、右のレーンがEndo-BI2各分である。理論分子量137496.84に対して、130KDaの上にバンドが現れた。これをEndo-BI2であると判断した。
さらに、Endo-BI2について、実施例2と同様の方法で特異性の評価を行った。結果を図5に示す。図5には、PA化糖鎖名、構造、及びNo.2のPA-asialobiantennaryを100%とした時の相対活性を示す。
解析の結果、最も速やかに分解できたのはアシアロ2本鎖複合型糖鎖(No. 2)であった。また、No.4のような3本鎖の複合型糖鎖やNo.5のような4本鎖の複合型糖鎖も比較的速やかに分解することがわかった。
[実施例5] Endo-BNによるFmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギンの脱糖鎖の検討
Fmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギン4μl(25 mM)を200mM酢酸緩衝液(pH 4.5)32μl、および蒸留水5μlに溶解し、Endo-BNを4μl加え、37℃で24時間静置した。得られた反応液を、以下の条件で逆相HPLCにかけた。
[HPLCの条件]
(1)分析機器:UV 214nm(Agilent社製)
(2)カラム:Imtankt CD-C18 (Φ2×150 mm)
(3)移動相
A液:0.1(v/v)% TFA水溶液
B液:0.1(v/v)% TFAアセトニトリル溶液
A液とB液の混合液を用い、Bの比率(Vol%)を、0-20分で0%-40%に変化させた。
(4)流速0.4 ml/min
(5)カラム温度:40℃
Fmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギン4μl(25 mM)を200mM酢酸緩衝液(pH 4.5)32μl、および蒸留水5μlに溶解し、Endo-BNを4μl加え、37℃で24時間静置した。得られた反応液を、以下の条件で逆相HPLCにかけた。
[HPLCの条件]
(1)分析機器:UV 214nm(Agilent社製)
(2)カラム:Imtankt CD-C18 (Φ2×150 mm)
(3)移動相
A液:0.1(v/v)% TFA水溶液
B液:0.1(v/v)% TFAアセトニトリル溶液
A液とB液の混合液を用い、Bの比率(Vol%)を、0-20分で0%-40%に変化させた。
(4)流速0.4 ml/min
(5)カラム温度:40℃
結果を図6に示す。図6に示すように、Endo-BNを反応させることによって、反応前のバンドから糖鎖が切断されバンドがシフトする事がわかった。このようにFmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギンの糖鎖を加水分解することができることがわかった。
[実施例6] Endo-BI2によるFmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギンの脱糖鎖の検討
Fmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギン2μl(100 mM)を100 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)8μl、および蒸留水5μlに溶解し、Endo-BI2を5μl加え、37℃で20時間静置した。得られた反応液を、以下の条件で逆相HPLCにかけた。
[HPLCの条件]
(1)分析機器:蒸発型光散乱検出器(Agilent社製)
(2)カラム:GLサイエンス社製 Inertsil ODS-3(Φ2.1×250 mm)
(3)移動相
A液:0.1(v/v)% TFA水溶液
B液:0.1(v/v)% TFAアセトニトリル溶液
A液とB液の混合液を用い、Bの比率(Vol%)を、0-40分で0%-80%に変化させた。
(4)流速0.2 ml/min
(5)カラム温度:40℃
Fmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギン2μl(100 mM)を100 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)8μl、および蒸留水5μlに溶解し、Endo-BI2を5μl加え、37℃で20時間静置した。得られた反応液を、以下の条件で逆相HPLCにかけた。
[HPLCの条件]
(1)分析機器:蒸発型光散乱検出器(Agilent社製)
(2)カラム:GLサイエンス社製 Inertsil ODS-3(Φ2.1×250 mm)
(3)移動相
A液:0.1(v/v)% TFA水溶液
B液:0.1(v/v)% TFAアセトニトリル溶液
A液とB液の混合液を用い、Bの比率(Vol%)を、0-40分で0%-80%に変化させた。
(4)流速0.2 ml/min
(5)カラム温度:40℃
結果を図7に示す。図7に示すように、Endo-BI2を反応させることによって、反応前のバンドから糖鎖が切断されバンドがシフトする事がわかった。このようにFmocシアリル4分岐糖鎖アスパラギンの糖鎖を加水分解することができることがわかった。
本発明の酵素を用いて、均一な糖鎖を有する抗体医薬等の治療用リコンビナント糖タンパク質を作製することができる。
Claims (10)
- 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。 - 以下の(a)又は(b)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(a) 配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるエンドグリコシダーゼ;
(b) 配列番号2で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。 - 以下の(c)又は(d)のバクテロイデス・ノルジー(Bacteroides nordii)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(c) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号1で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。 - 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。 - 以下の(e)又は(f)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(e) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列からなる酵素;
(f) 配列番号4、6又は8で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼ。 - 以下の(g)又は(h)のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼをコードするDNA:
(g) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNA
(h) 配列番号3、5又は7で表される塩基配列からなるDNAと95%以上の配列同一性を有し、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するタンパク質をコードするDNA。 - 請求項2又は3に記載のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、請求項1記載のバクテロイデス・ノルジー由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
- 請求項5又は6に記載のDNAを含む発現ベクターを大腸菌に導入し、大腸菌を培養することを含む、請求項4記載のバルネシエラ・インテスティニホミニス(Barnesiella intestinihominis)由来であり、多分岐糖鎖を加水分解する活性を有するエンドグリコシダーゼを作製する方法。
- 請求項1記載のエンドグリコシダーゼを糖タンパク質と接触させ、糖鎖を切断し、遊離糖鎖を得ることを含む、遊離糖鎖を作製する方法。
- 請求項4記載のエンドグリコシダーゼを、タンパク質及びオキサゾリン化糖鎖と接触させ、糖鎖をタンパク質に転移させることを含む、糖タンパク質の作製方法。
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