JP2023066998A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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佳久 山下
Yoshihisa Yamashita
義之 金子
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Abstract

【課題】 耐擦過性に優れる画像を記録することができる、保存安定性及び吐出安定性が良好なインクジェット用の水性インクなどの提供。【解決手段】 酸化チタンの表面の少なくとも一部がアルミナによって被覆されており、そのゼータ電位が0mV超である酸化チタン粒子、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む樹脂分散剤、及び芳香環を有するモノマーに由来するユニットを含むポリエステル樹脂で形成される樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、広告や展示物用の記録媒体として、紙や樹脂フィルムなどを用いて画像を出力する際に、インクジェット記録装置が広く利用されるようになってきた。例えば、透明な記録媒体においても鮮明なカラー画像を表現するために、ブラックや基本色のインク(以下、これらをまとめてカラーインクと記載することがある)に加えて、白インクが併用される。具体的には、透明な記録媒体の画像を記録する領域を含む箇所に前もって白インクを付与して下地処理を行い、その上からカラーインクを付与する、又はその逆順で各インクを付与する(いわゆるバックプリント)記録方法が用いられている。
低コストであるとともに、白さや隠ぺい性など白インクとして必要とされる特性に優れるため、白インクの色材としては酸化チタンが広く用いられている。一方で、酸化チタンを水性インク中で安定に分散させるためには、分散剤が必要である。しかし、金属酸化物である酸化チタンは、他の色のインクで用いられる色材と比べて比重が大きいため、分散剤を用いても沈降しやすい。そのため、酸化チタンを用いた白インクを長期保存しておくと、酸化チタン粒子の凝集が起こり、インクの保存安定性が乏しいという問題がある。また、紙や樹脂フィルムなどの記録媒体を用いて作成した広告や展示物は、壁に掲示する際、スクレイパーなどの工具で画像が強く擦られたり、掲示した際に触られたりするなど、写真や文章の記録といった一般的な用途よりも高い耐擦過性が求められる。
これまでに、インクの成分によって、酸化チタンの保存安定性及び耐擦過性を両立するための手法が検討されてきた。酸化チタン、及びポリエステル樹脂粒子を含有するインクが提案されている(特許文献1参照)。また、酸化チタン、樹脂、及び界面活性剤を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。
特開2013-177526号公報 特開2019-183063号公報
本発明者らは、特許文献1及び特許文献2で提案された水性インクの各種特性について検討した。その結果、広告や展示物の印刷において高い耐擦過性を求められる現状においては、耐擦過性が不十分であり、向上の余地があることがわかった。さらに、インクジェット用の水性インクとして要求される保存安定性及び吐出安定性についても改善が必要であった。
したがって、本発明の目的は、耐擦過性に優れる画像を記録することができる、保存安定性及び吐出安定性が良好なインクジェット用の水性インク、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって解決される。すなわち、本発明にかかる水性インクは、酸化チタン粒子、前記酸化チタン粒子を分散させるための樹脂分散剤、及び樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記酸化チタン粒子が、その表面の少なくとも一部がアルミナによって被覆された酸化チタンであるとともに、そのゼータ電位が、0mV超であり、前記樹脂が、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む水溶性樹脂であり、前記樹脂粒子が、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを含むポリエステル樹脂で形成される樹脂粒子であることを特徴とする。
本発明によれば、耐擦過性に優れる画像を記録することができる、保存安定性及び吐出安定性が良好な、酸化チタンを含有するインクジェット用のインク、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法で使用可能なインクジェット記録装置の一実施形態を示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録方法で使用可能なインクジェット記録装置の加熱部の一実施形態を示す模式図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。酸化チタンや酸化チタン粒子のことを、単に「顔料」と記載することがある。樹脂の「ユニット」とは、樹脂を構成する最小の繰り返し単位をいい、1の単量体の(共)重合により形成される構造を意味する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。
表面処理を施していない酸化チタンは、水性インク中の水性媒体を構成する水分子と反応して、その表面にヒドロキシ基(以下、「表面ヒドロキシ基」と記載することがある)を生ずる。インクジェット用の水性インクにおいては、インクの保存安定性を向上するために、アルミナやシリカなどの無機酸化物で表面処理が施された酸化チタン(酸化チタン粒子)を利用する。酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基は、表面処理に用いた無機化合物に対応した無機酸化物に固有の性質を持ち、無機化合物の種類によって酸としての強さの指標である等電点がそれぞれ異なる。したがって、酸化チタンはそれそのものも無機酸化物ではあるが、酸化チタン粒子の表面は、表面処理に用いた無機化合物に対応した無機酸化物の性質を示し、酸化チタン粒子の表面電荷は、水性媒体のpH、表面処理剤の種類、表面処理剤の使用量に強く依存する。
本発明者らは、特許文献1及び特許文献2のように樹脂分散剤によって酸化チタン粒子を分散させる場合に、耐擦過性、保存安定性、及び吐出安定性を低下させる要因について検討した。インクジェット用の水性インクの一般的な液性であるアルカリ性の条件において、樹脂分散剤は、酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基の正電荷、及び樹脂分散剤中のアニオン性基の負電荷の静電的な相互作用により、酸化チタン粒子に吸着していると考えられる。しかし、酸化チタン粒子と樹脂分散剤の静電的な相互作用による吸着は、吸着と脱離との平衡状態にあるため、一部の樹脂は酸化チタン粒子から脱離する。そのため、酸化チタン粒子と樹脂分散剤の静電的な相互作用が十分でない場合は、樹脂分散剤が脱離しやすく、酸化チタンの分散状態が不安定になる。その結果、保存安定性が低下する。また、酸化チタン粒子への樹脂分散剤の吸着が弱いと、吐出の際にインクに加わる衝撃で樹脂分散剤が酸化チタン粒子から脱離しやすくなり、連続吐出の際に、吐出が不安定になりやすく、吐出安定性が低下することがわかった。さらに、記録物の耐擦過性向上のために、特許文献1及び特許文献2のようにアクリル樹脂粒子やポリエステル樹脂粒子を添加する手法が従来知られている。但し、インクジェット記録方法により記録される出力物の用途が広告や展示物まで広がりつつあり、これまで以上に耐擦過性を向上する必要がある。
そこで、本発明者らは、酸化チタン粒子を含有するインクの保存安定性を向上するために、酸化チタン粒子と樹脂分散剤の静電的な吸着を強くする検討を行った。まず、酸化チタン粒子の多くの表面ヒドロキシ基が正電荷を帯びている状態にすることを検討した。その結果、ゼータ電位が特定の範囲内であるとともに、その表面の少なくとも一部が、アルミナによって表面処理を施された酸化チタン粒子を用いることで、酸化チタン粒子及び樹脂分散剤の吸着を強くすることができるという知見を得た。
次に、本発明者らは、酸化チタン粒子を分散させるために必要な樹脂分散剤の条件について検討を行った。カーボンブラックや有機顔料を分散するために一般的に用いられる樹脂分散剤は、アニオン性基を有するユニット、及び、アニオン性基を有しないユニットで構成され、前者が親水性部分、後者が疎水性部分として機能する。カーボンブラックや有機顔料を分散するための汎用の樹脂の多くは、疎水性部分として、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを持つ。また、カーボンブラックや有機顔料は本質的に疎水性であり、ベンゼン環などの芳香環をその分子構造に有するものが多い。樹脂分散剤の芳香環と、カーボンブラックや有機顔料の芳香環と、でπ-π相互作用によって強く吸着する。そして、樹脂分散剤のアニオン性基の静電反発力によって、カーボンブラックや有機顔料をインク中において分散させることができる。
カーボンブラックや有機顔料を分散するための上記したような樹脂分散剤を、無機顔料である酸化チタン粒子の分散剤として利用する場合を考える。アニオン性基を有するユニットは静電的な相互作用による吸着部位として酸化チタン粒子に作用する。また、酸化チタン粒子はその表面ヒドロキシ基により親水性を持つため、樹脂分散剤の疎水性部分である芳香環を有するモノマーに由来するユニットは酸化チタン粒子の表面への吸着に寄与しにくい。このため、芳香環を有するモノマーに由来するユニットは、樹脂の分子鎖内でπ-π相互作用によって強く吸着し合い、樹脂を収縮した状態にさせる。その結果、アニオン性基を有するユニットによる酸化チタン粒子の表面への樹脂の吸着を阻害してしまい、酸化チタン粒子の安定した分散状態を維持することができない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が低下する場合があるという知見を得た。
一方で、画像の耐擦過性を向上させるためには、酸化チタン粒子、樹脂分散剤、及び樹脂粒子が一体となった強固な膜を形成する必要がある。高い耐擦過性を得るために最適な樹脂粒子を検討する中で、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを含むポリエステル樹脂で形成される樹脂粒子(以下、ポリエステル樹脂粒子とも記載する)に着目した。つまり、それぞれに特定の構造を有する、樹脂分散剤及びポリエステル樹脂粒子を組み合わせることで、インクの保存安定性及び吐出安定性と、画像の耐擦過性を両立させることができるという知見を得た。
すなわち、本発明のインクは以下の特徴を有する。まず、その表面の少なくとも一部がアルミナで被覆された酸化チタンである酸化チタン粒子を用いる。そして、樹脂分散剤として、特定の構造を有する水溶性樹脂を用いる。さらに、特定の樹脂粒子を用いる。上記の構成によって、耐擦過性、保存安定性、及び吐出安定性が向上するメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
酸化チタン粒子は、その表面の少なくとも一部がアルミナで被覆されている。インクジェット用の水性インクの一般的な液性であるアルカリ性の条件においては、酸化チタン粒子の表面のアルミナは表面ヒドロキシ基を形成する。さらに、アルミナの25℃(常温)における水中での等電点は約9.0であり、アルミナ由来の表面ヒドロキシ基は正電荷を帯びやすい。そのため、カルボン酸基に由来する負電荷を帯びている樹脂分散剤は、アルミナ由来の表面ヒドロキシ基を介して酸化チタン粒子に静電的な相互作用によって吸着することができる。さらに、酸化チタン粒子の吸着に寄与しない樹脂のアニオン性基は、負電荷を帯びているため、酸化チタン粒子間で静電的な反発力を生じさせ、分散安定性にも優れる。
酸化チタン粒子のゼータ電位は、0mV超である。このゼータ電位は、pHを8.0に調整した水中に酸化チタン粒子を分散させた試料について測定したゼータ電位である。樹脂分散剤が酸化チタンに十分吸着するためには、インクジェット用の水性インクの一般的な液性であるpH8.0付近において、表面ヒドロキシ基が正電荷を多く持つ必要がある。そのため、前記ゼータ電位を上記の範囲内とすることで、樹脂分散剤が酸化チタン粒子に吸着でき、酸化チタン粒子の分散安定性が向上する。その結果、保存安定性及び吐出安定性に優れたインクとなり、長期間の安定した吐出が可能になる。前記ゼータ電位が0mV以下であると、酸化チタン粒子の表面ヒドロキシ基の多くが負電荷を帯びてしまい、樹脂分散剤が吸着することができない。その結果、酸化チタン粒子の分散状態が安定に保たれず、保存安定性及び吐出安定性が得られない。
樹脂分散剤は、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む水溶性樹脂である。樹脂分散剤の芳香環は、上記の理由から、特定のポリエステル樹脂粒子が共存しないと、保存安定性及び吐出安定性を低下させる要因となる。しかし、芳香環を有するポリエステル樹脂粒子をインク中で共存させることで、樹脂分散剤の芳香環と樹脂粒子の芳香環が互いに吸着することができる。そのため、樹脂分散剤の分子鎖内で芳香環を有するユニットがπ-π相互作用によって強く吸着し合い、樹脂分散剤が収縮することを抑制できる。さらに、インクが吐出され、液体成分が蒸発したり、記録媒体に浸透したりすることで減少し、樹脂分散剤とポリエステル樹脂粒子の距離が近くなると、樹脂分散剤とポリエステル樹脂粒子の芳香族同士がπ-π相互作用によって強く吸着しあう。その結果、酸化チタン粒子、樹脂分散剤、及びポリエステル樹脂粒子が一体となって凝集し、強固な膜が形成されるため、高い耐擦過性を得ることができる。
<水性インク>
本発明のインクは、アルミナによって被覆された酸化チタン粒子、樹脂分散剤、及びポリエステル樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクである。このインクは、酸化チタンが白色顔料であるため、白インクであることが好ましい。以下、本発明のインクを構成する成分、インクの物性などについて詳細に説明する。
(色材)
インクは色材(顔料)として、アルミナによって酸化チタンに表面処理が施された酸化チタン粒子を含有する。インク中の酸化チタン粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。
酸化チタンは、白色顔料であり、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3つの結晶形が存在する。なかでも、ルチル型の酸化チタンが好ましい。酸化チタンの工業的製造方法としては、硫酸法及び塩素法が挙げられ、本発明で用いる酸化チタンはいずれの製造方法によるものであってもよい。
酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径(以下、平均粒子径とも表す。)は、200nm以上500nm以下であることが好ましく、200nm以上400nm以下であることがさらに好ましい。酸化チタンの体積基準の累積50%粒子径(D50)は、粒子径積算曲線において、測定された粒子の総体積を基準として、小粒子径側から積算して50%となる粒子の直径である。酸化チタンのD50は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、の条件で測定することができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計を使用することができる。勿論、測定条件などは上記に限られない。
酸化チタン粒子のゼータ電位は0mV超である。なかでも、5mV以上であることが好ましく、25mV以下であることが好ましい。ゼータ電位とは、酸化チタン粒子の表面の帯電状態を示す指標であり、電気泳動光散乱法を利用したゼータ電位計で測定することができる。酸化チタン粒子のゼータ電位を0mV超とすることで、酸化チタン粒子の表面のマイナスの電荷量よりもプラスの電荷量が大きくなり、酸化チタンとアニオン性基を有する樹脂の吸着力が向上する。酸価チタン粒子のゼータ電位は、pHを8.0に調整した水中に酸化チタン粒子を分散させた試料について、25℃で測定したゼータ電位である。pHの調整には、アルカリ金属水酸化物やアンモニアなどのpH調整剤を用いることができる。アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化リチウムなどが挙げられる。なかでも、水酸化カリウムが好ましい。
酸化チタンは、アルミナで表面処理が施されているものを用いる。表面処理により光触媒活性能の抑制や分散性の向上が期待される。本明細書において、「アルミナ」は、酸化アルミニウムのようなアルミニウムの酸化物の総称である。表面処理を施していない酸化チタンのゼータ電位は-25mV程度であり、アルミナの被覆量を増やすとゼータ電位が大きくなる傾向にある。また、酸化チタン粒子は、シリカや酸化ジルコニウムなどのその他の無機酸化物によって、表面処理が施されていてもよい。本明細書において、「シリカ」は、二酸化ケイ素、又は二酸化ケイ素によって構成される物質の総称である。酸化チタンを被覆するアルミナ及びシリカの大部分は、酸化アルミニウム及び二酸化ケイ素の形態で存在している。シリカで表面処理が施されている場合、シリカの等電点はアルミナと異なり酸性側にあるため、シリカ由来の表面ヒドロキシ基は負電荷を帯びる、すなわちゼータ電位は小さくなる。そのため、アルミナなどの各種の無機酸化物の被覆量を調整することで、酸化チタン粒子のゼータ電位が0mV超の範囲内に調整することができる。酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなどの無機酸化物で表面処理を施す際も、同様である。また、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、ポリオールなどの有機物で酸化チタン粒子が被覆されていてもよい。
酸化チタン粒子に占める、アルミナの割合(質量%)は、酸化チタン粒子全質量を基準として、2.0質量%以上であることが好ましく、6.0質量%以下であることが好ましい。前記割合が2.0質量%未満であると、前記アルミナの割合が少なくなりすぎて、インク中で樹脂分散剤が酸化チタン粒子に十分に吸着できず、酸化チタン粒子の安定な分散状態が維持できない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。
酸化チタンの表面処理方法としては、湿式処理、乾式処理などが挙げられる。例えば、酸化チタンを液媒体に分散させた後、アルミン酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムなどの表面処理剤と反応させて表面処理を行うことができ、これら表面処理剤の比率を適宜変更することによって上述のように所望の特性に調整することもできる。
本発明の効果が損なわれない限り、インクは、酸化チタン以外の、その他の顔料を含有してもよい。この場合、白インク以外の色のインクとすることもできる。インク中のその他の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(樹脂分散剤)
インクは、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む水溶性樹脂を含有する。この水溶性樹脂は、酸化チタン粒子を分散させるための樹脂分散剤である。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と等量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で液媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
樹脂分散剤は、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む。重合により芳香環を有するモノマーに由来するユニットとなるモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。重合によりカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットとなるモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸が挙げられ、これらは、無水物や塩であってもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。
樹脂分散剤に占める、芳香環を有するモノマーに由来するユニットの割合(質量%)は、樹脂分散剤全質量を基準として、20.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましい。前記割合が20.0質量%未満であると、樹脂分散剤中の芳香環が少なすぎて、ポリエステル樹脂粒子とのπ-π相互作用を形成できる芳香環が少なく、強固な膜が形成できない場合がある。その結果、耐擦過性が十分に得られない場合がある。前記割合が70.0質量%超であると、樹脂分散剤中の芳香環が多くなりすぎて、ポリエステル樹脂粒子の存在があっても、樹脂分散剤の分子鎖内でのπ-π相互作用によって、樹脂分散剤が収縮してしまう。その結果、酸化チタン粒子との相互作用を示す部位が少なくなり、酸化チタン粒子の安定した分散状態を維持することができず、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。
樹脂分散剤の酸価は、170mgKOH/g以上320mgKOH/g以下であることが好ましく、170mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。酸価が170mgKOH/g未満であると、樹脂分散剤のアニオン性基による負電荷量が少なく、酸化チタン粒子への吸着が十分にできず、酸化チタン粒子間での静電的な反発力が弱くなる。その結果、酸化チタン粒子の安定な分散状態を維持することができず、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。酸価が320mgKOH/g超であると、樹脂分散剤の親水性が高すぎて、酸化チタン粒子に樹脂分散剤が吸着しにくくなり、樹脂の安定な分散状態を維持することができない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。樹脂の酸価は、電位差を利用したコロイド滴定により測定できる。
樹脂分散剤の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、5,000以上20,000以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により得られるポリスチレン換算の値である。
インク中の樹脂分散剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。水性インク中の樹脂分散剤の含有量(質量%)は、酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上0.20倍以下であることが好ましい。前記含有量が0.02倍未満であると、樹脂分散剤が酸化チタン粒子へ十分に吸着できず、酸化チタン粒子間での静電的な反発力が得られないため、酸化チタン粒子の安定な分散状態が維持できない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。前記含有量が0.20倍超であると、インク中の樹脂の量が多すぎるため、酸化チタン粒子と関与しない遊離した樹脂分散剤が存在してしまう。その結果、樹脂分散剤同士の相互作用によって、樹脂分散剤が凝集してしまい、酸化チタン粒子の安定した分散状態が維持できない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。
樹脂分散剤で分散した酸化チタン粒子の分散安定性が向上しやすいため、樹脂分散剤の負電荷の導入量は、酸化チタン粒子の正電荷の導入量に対する比率で、5倍以上350倍以下であることが好ましい。なかでも、10倍以上250倍以下であることがさらに好ましい。酸化チタン粒子の正電荷の導入量は、酢酸n-ジブチルエーテル溶液に酸化チタン粒子を分散し、酢酸の吸着量から算出することができる。
例えば、後述する実施例で使用した酸化チタン粒子である、アルミナで表面処理された酸化チタン粒子(商品名「JR-600A」、テイカ製)を上記手法で測定すると、正電荷の導入量は25μmol/gであった。つまり、「JR-600A」を用いた場合、樹脂分散剤のカルボン酸基の負電荷の導入量は、125μmol/g以上8750μmol/g以下であることが好ましい。樹脂分散剤のカルボン酸基の負電荷の導入量は、樹脂分散剤の酸価から算出できる。後述する実施例で使用した樹脂分散剤1は、酸価が260mgKOH/gであるので、カルボン酸基の負電荷の導入量は、4643μmol/gとなる。樹脂分散剤の負電荷の導入量を所定の値とするためには、樹脂分散剤の酸価、樹脂分散剤の添加量、アニオン性基の中和量を適宜調整すればよい。樹脂分散剤のカルボン酸基の負電荷の導入量が上記の範囲外であると、酸化チタン粒子の安定な分散状態を維持することができず、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。
(樹脂粒子)
インクは、芳香族基を含有するモノマーに由来するユニットを含むポリエステル樹脂で形成される樹脂粒子を含有する。インク中の樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。また、インク中の、樹脂粒子の含有量(質量%)は、酸化チタンの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.3倍以上1.5倍以下であることが好ましい。
本発明において、ある樹脂が樹脂粒子であることは、その樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に、上記の動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成するものであることとする。中和した樹脂を用いて粒子径を測定するのは、十分に中和されて粒子をより形成しにくい状態となっても、粒子が形成されていることを確認するためである。このような条件であっても粒子の形状を持つ樹脂は、水性インク中でも粒子の状態で存在する。
樹脂粒子の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上2,000,000以下であることが好ましい。樹脂粒子の平均粒子径は、10nm以上1,000nm以下であることが好ましく、100nm以上500nm以下であることがさらに好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、-20℃以上120℃以下であることが好ましく、40℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、樹脂粒子がガラス状態から粘性状態へと変化しはじめる温度であり、樹脂粒子の軟化しやすさを示す指標となる物性値である。樹脂粒子は、ガラス転移温度が高いほど、常温(25℃)付近では硬い状態で存在する傾向にある。樹脂粒子は、硬いほど外力によって変形しにくくなる。このため、ガラス転移温度が高い樹脂粒子を用いることで、記録媒体上に形成される樹脂層の強度が向上し、記録される画像の耐擦過性をさらに高めることができる。樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)などの熱分析装置を用いて測定することができる。
樹脂粒子は、水溶性樹脂と比較するとアニオン性基が少ない傾向にある。したがって、精度よく樹脂粒子の特性を把握するため、「酸価(mgKOH/g)」に代えて、「酸基の導入量(μmol/g)」を利用することが好ましい。樹脂粒子の酸基の導入量は、250μmol/g以下であることが好ましく、120μmol/g以上250μmol/g以下であることがさらに好ましい。
インク中の前記樹脂粒子の含有量(質量%)は、酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.6倍以上2.0倍以下であることが好ましい。前記質量比率が0.6倍未満であると、ポリエステル樹脂粒子が少なすぎて、強固な膜を形成できず、耐擦過性が十分に得られない場合がある。前記質量比率が2.0倍超であると、ポリエステル樹脂粒子の芳香族基と樹脂分散剤の芳香族基がπ-π相互作用により強固に結合しやすくなり、酸化チタン粒子の安定した分散状態を維持することができない。その結果、保存安定性及び吐出安定性が十分に得られない場合がある。
また、本発明の効果が損なわれなければ、樹脂分散剤、及び樹脂粒子以外の、その他の樹脂をインクに添加してもよい。インク中のその他の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
その他の樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定にする、すなわち顔料の樹脂補助として、(ii)記録される画像の各種特性を向上させる、などの用途でインクに含有させることができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、その他の樹脂は、液媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、液媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。
〔樹脂粒子を形成する樹脂〕
樹脂粒子を形成する樹脂は、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを有するポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂は、通常、多価アルコールに由来するユニット、及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。したがって、多価アルコール及び多価カルボン酸の少なくとも1種として、芳香環を有するモノマーを用いてポリエステル樹脂を合成すれば、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを有するポリエステル樹脂を得ることができる。前記ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)及び多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)の合計は、90.0%であることが好ましい。この合計は、95.0質量%以上であることがさらに好ましく、100.0質量%であってもよい。
重合によりポリエステル樹脂を構成する、多価アルコールに由来するユニットとなるモノマーとしては、2乃至4価の多価アルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、芳香環を有しない多価アルコール類、芳香環を有する多価アルコール類、糖アルコール類などが挙げられる。多価アルコールとしては、具体的には、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどの2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール類;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール類などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、オリゴマー(分子量1,000以下であるような低分子の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量の調整が容易であることから、2価又は3価の多価アルコール類を用いることが好ましい。また、構造の観点では、脂肪族基を有する多価アルコール類、芳香族基を有する多価アルコール類を用いることが好ましい。脂肪族基を有する多価アルコール類としては、直鎖又は分岐鎖で炭素数1乃至6の脂肪族基を有する多価アルコール類がさらに好ましい。
重合によりポリエステル樹脂を構成する、多価カルボン酸に由来するユニットとなるモノマーとしては、2乃至4価の多価カルボン酸類が挙げられる。多価カルボン酸の構造としては、脂肪族基を有する多価カルボン酸類、芳香族基を有する多価カルボン酸類、含窒素多価カルボン酸類などが挙げられる。多価カルボン酸としては、具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの2価カルボン酸類;トリメリット酸などの3価カルボン酸類;ピロメリット酸などの4価カルボン酸類などが挙げられる。また、多価カルボン酸としては、オリゴマー(分子量1,000以下であるような低分子の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
ポリエステル樹脂の重量平均分子量や酸価の調整が容易であることから、2価又は3価の多価カルボン酸類を用いることが好ましい。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂は、芳香族基を有するモノマーに由来するユニットを含む。芳香族基を有するモノマーとしては、芳香族基を有する多価アルコール、芳香族基を有する多価カルボン酸を挙げることができる。ポリエステル樹脂に占める、芳香族基を有するモノマーに由来するユニットの割合(質量%)は、ポリエステル樹脂全質量を基準として、25.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂中の、芳香族基を有しないモノマーに由来するユニットの割合(質量%)は、ポリエステル樹脂全質量を基準として、40.0質量%以上75.0質量%以下であることが好ましい。
〔樹脂粒子の組成分析〕
樹脂粒子を構成する樹脂がポリエステル樹脂であることは、以下の方法で判断することができる。まず、樹脂粒子を、溶解可能な有機溶媒に溶解させる。その際、使用する樹脂粒子は、分散液の状態でも、乾燥により膜化した状態でもよい。得られた試薬を核磁気共鳴(NMR)分光法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)により分析する。これにより、樹脂粒子を構成するユニット(モノマー)の種類や割合を知ることができる。さらに、樹脂粒子を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することにより、解重合で生じたモノマーを直接検出することもできる。また、樹脂粒子を有機溶媒に溶解させる際、不溶成分が生じる場合、不溶成分を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することにより、解重合で生じたモノマーを直接検出することもできる。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.00質量%以上95.00質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、水溶性(好ましくは、25℃において水に任意の割合で溶解するもの)であれば特に制限はない。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上40.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が3.0質量%未満であると、インクジェット記録装置内でインクが固着してしまい、インクの耐固着性が十分に得られない場合がある。水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が50.0質量%超であると、インクの供給不良が起きる場合がある。
(その他の添加剤)
インクには、上記の添加剤以外に、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させることができる。なかでも、インクは界面活性剤を含有することが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。なかでも、インクの各種物性の調整に用いるため、酸化チタン粒子との親和性が低く、少量で効果をもたらすノニオン性界面活性剤が好ましい。
(インクの物性)
インクは、インクジェット方式に適用するインクであるので、その物性を適切に制御することが好ましい。25℃におけるインクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤の種類や含有量を適宜決定することで、調整できる。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、7.0以上9.0以下であることが好ましく、7.5以上9.0以下であることがさらに好ましく、7.5以上8.5以下であることが特に好ましい。インクのpHはガラス電極などを搭載した一般的なpHメータで測定することができる。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。熱エネルギーを利用する吐出方式では、本発明が解決しようとする技術課題のひとつである吐出安定性が低下しやすい傾向にある。上記で説明した本発明のインクを用いれば、熱エネルギーを利用する吐出方式であっても良好な吐出安定性を得ることができる。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。例えば、白インクによる画像を記録する場合は一般的なインクジェット記録方法にそのまま適用することができる。また、カラーインクの下地処理として白インクを用いる場合は、白インクを付与した領域の少なくとも一部に重なるように、カラーインク(ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどのインク)を付与して画像を記録すればよい。
インクジェット記録装置について、一例を挙げて具体的に説明する。図2は、本発明の一実施形態のインクジェット記録装置(以下、単に記録装置と記載することがある。)の一例を表す斜視図である。この記録装置1は、本発明の一実施形態のインクジェット記録方法に好適に用いることができる。記録装置1は、いわゆるシリアル走査型の記録装置であり、記録媒体Pの搬送方向Yに対して直交する走査方向Xに記録ヘッド(不図示)を走査して画像を記録する装置である。
図2を用いて記録装置1の構成及び記録時の動作の概略を説明する。まず不図示の搬送モータによりギヤを介して駆動される搬送ローラによって記録媒体Pを保持しているスプール6より記録媒体Pが図中Y方向(搬送方向)に搬送される。一方、所定の搬送位置において不図示のキャリッジモータによりキャリッジユニット2を図中X方向(走査方向)に延在するガイドシャフト8に沿って往復移動させる。そして、この移動の過程で、エンコーダ7によって得られる位置信号に基づいたタイミングでキャリッジユニット2に装着可能な記録ヘッド(不図示)の吐出口から吐出動作を行わせ、吐出口の配列範囲に対応した一定のバンド(幅)の画像を記録する。
記録装置1は、記録動作完了後の記録媒体Pに付与されたインクを加熱させ、記録媒体Pに加熱処理を行う加熱手段としてのヒータ25を備える(図3参照)。記録装置1では、記録媒体Pの搬送方向Yにおいて、キャリッジユニット2が走査方向Xに往復走査する位置より下流側の位置に、図示しないフレームに支えられたヒータ25が配置されている。ヒータ25はヒータカバー26に覆われており、ヒータカバー26はヒータ25の熱を記録媒体Pに効率よく照射する機能と、ヒータ25の保護の機能を担っている。ヒータ25は具体的には、シーズヒータやハロゲンヒータなどが挙げられる。記録ヘッド(不図示)から吐出されたインクは、記録媒体Pの記録面に付与された後に、ヒータ25からの熱と加熱された記録媒体Pからの熱により乾燥され、定着される。その後、記録媒体Pは巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体6を形作る。
インクが付与された記録媒体を加熱すること(加熱工程)で、記録媒体への画像の定着を促進することができる。加熱工程により、記録媒体に付与されたインク中の液体成分の蒸発を促進するとともに、ポリエステル樹脂粒子を素早く膜化させることができ、画像の耐擦過性をさらに向上することができる。加熱工程を実施しないと、ポリエステル樹脂粒子の膜化に時間を要したり、膜化が均一に進行しにくかったりして、耐擦過性が十分に得られない場合がある。
加熱手段は、記録ヘッド(不図示)よりも鉛直方向上側に設けられ、インクが付与された記録媒体を上方(表面)から加熱する構成であってもよい。また、加熱手段は、プラテン4の鉛直方向下側に設けられ、インクが付与された記録媒体を下方(裏面)から加熱する構成であってもよい。また、加熱とともに、送風などの定着を促進する手段を併用することもできる。
記録媒体Pとしては、浸透性を有するような、紙を基材とした記録媒体(吸収媒体)であってもよいし、非吸収媒体であってもよい。吸収媒体としては、普通紙などのコート層を有しない記録媒体、光沢紙、アート紙、マット紙などのコート層を有する記録媒体が挙げられる。なかでも、非吸収媒体を用いることが好ましい。非吸収媒体としては、例えば、アート紙、コート紙、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、PETフィルム、ターポリン、ポリエステル製布などを用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。また、樹脂分散剤及び酸化チタン粒子の分散液を、それぞれ、「樹脂」及び「顔料分散液」と記載する。
<ゼータ電位測定>
酸化チタン粒子のゼータ電位は、以下の手法で測定した。具体的には、顔料分散液を顔料の含有量が0.01質量%となるように、イオン交換水で希釈した。そして、ゼータ電位・粒径測定システム(商品名「ELS-Z2」、大塚電子製)を用いて、酸化チタン粒子のゼータ電位を測定した。測定範囲はpH3~11で、0.1mol/L塩酸水溶液及び0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH調整を行いながら測定した。本実施例では、顔料分散液を用いて酸化チタン粒子のゼータ電位を測定したが、インクから常法によって分取した酸化チタン粒子を用いても、上記の方法と同様にゼータ電位を測定することができる。
<酸化チタン粒子の準備>
あらかじめ表面処理が施された市販の酸化チタン粒子、及び、未処理の酸化チタンを表面処理して調製した酸化チタン粒子を用いた。酸化チタン粒子の体積基準の累積50%粒子径(D50)は、顔料の粒子径は、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「Nanotrac WaveII-EX150」、マイクロトラック・ベル製)を使用して測定した。酸化チタン粒子の特性を表1に示す。表1中、TITANIX:JR-600A、JR-301、JR-805、JR-405、JRは、テイカ製のルチル型酸化チタンの商品名である。また、タイペーク CR-90は、石原産業製のルチル型酸化チタンの商品名である。
(アルミナの被覆量の測定)
酸化チタン粒子に占める、アルミナの割合、すなわち、アルミナの被覆量は以下のようにして測定した。準備した酸化チタン粒子を硝酸に添加した液体を試料として、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光装置によるアルミニウム元素の定量分析を行った。この際、表面に被覆している原子がすべて酸化物になっていると仮定し、得られたアルミニウムの値をその酸化物、つまりアルミナに換算して質量比率を算出した。
(酸化チタン粒子6~8、10)
酸化チタンの表面処理を湿式法により行い、酸化チタン粒子6~8、10を製造した。湿式法による表面処理は、未処理の酸化チタンに、表面処理剤(アルミン酸ナトリウムやケイ酸ナトリウムなど)を接触させるもので、表面処理剤の使用量や比率を適宜調整することで、任意の比率に表面処理を施した。
具体的には、表面処理が施されていない、ルチル型の酸化チタン(商品名「TITANIX JR」、テイカ製)300部、及び、純水700部をホモジナイザーで混合した。そして、撹拌しながら90℃に昇温し、水酸化カリウム(pH調整剤)を添加して、pHを10.5に調整した。次に、ケイ酸ナトリウムを添加して、希硫酸(pH調整剤)を約1時間かけて添加することで、pHを5.0に調整した。約1時間反応を継続させた。その後、90℃で、アルミン酸ナトリウムを少量ずつ添加した。この際、pHを維持するために、希硫酸を併用してpHを6.0以上8.0以下に維持した。アルミン酸ナトリウムの添加後、約1時間反応を継続し、分散液を得た。前記分散液を25℃まで冷却した後、遠心分離機による沈降と、イオン交換水への再分散を繰り返すことで精製し、120℃で乾燥させることで、アルミナ及び/又はシリカで表面処理が施された各酸化チタン粒子を得た。
(酸化チタン粒子1~5、9)
市販の酸化チタン粒子(アルミナやシリカにより予め表面処理が施されているものを含む)を酸化チタン粒子1~5、9として用いた。表1に各酸化チタン粒子の特性を合わせて示す。
Figure 2023066998000001
<樹脂の分析>
(重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値として測定した。具体的には、温度25℃で24時間かけて、樹脂を溶媒(テトラヒドロフラン)に溶解した。得られた溶液を、メンブレンフィルターでろ過して、サンプル溶液を得た。サンプル溶液は、溶媒に可溶な成分の濃度が約0.3%となるように調整した。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で樹脂の重量平均分子量を測定した。
・装置:分子量測定装置(商品名「Waters2695 Separations Module」、Waters製)を用いることができる。
・カラム:「KF-806M」(商品名、昭和電工製)を直列に接続したもの(4連)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・試薬注入量:0.100mL
・オーブン温度:40℃
・検出器:RI検出器(商品名「2414detector」、Waters製)
重量平均分子量の算出に当たっては、標準ポリスチレン樹脂を用いて作成した分子量校正曲線を使用した。使用した樹脂は、TSKスタンダード ポリスチレン:F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、及びA-500である(以上、商品名、東ソー製)。
(酸価)
樹脂の酸価は、JIS K-0070に基づき、滴定法により測定した。0.5~2.0gの樹脂を精秤し、これを測定対象の試料とした。50.0mLのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン及びエタノール(体積比=2:1)の混合液25.0mLを加え、試料を溶解させた。滴定液として0.1mol/Lの水酸化カリウムのエタノール溶液を用い、電位差滴定により滴定し、滴定液の使用量をS(mL)とした。また、試料を含まないブランクについても同様に滴定し、水酸化カリウムのエタノール溶液の使用量をB(mL)とした。測定装置としては、自動滴定装置(商品名「COM-2500」、平沼産業製)を用いた。得られたS及びBから、次式により酸価を計算した。fは水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(力価)であり、M(g)は試料の精秤値である。
酸価[mgKOH/g]=(S-B)×f×5.61/M
<樹脂の合成>
表2に記載の各モノマーを用いて、常法により各樹脂を合成した。重合の際の加熱の温度及び時間を調整することで、重量平均分子量を調整した。各樹脂10.0部を、その酸価と等モルの水酸化カリウムで中和するとともに、適量のイオン交換水を加え、樹脂の含有量が25.0%である各樹脂を含む液体を調製した。上記の手法で測定した樹脂の重量平均分子量及び酸価を表2にまとめて示す。
また、表2中のモノマーの略記号は、AA:アクリル酸、MAA:メタクリル酸、nBA:n-ブチルアクリレート、モノマー1:メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、BEMA:ベへニルメタクリレート、St:スチレン、BzMA:ベンジルメタクリレートを表す。
Figure 2023066998000002
<樹脂粒子の合成>
(樹脂粒子のガラス転移温度)
樹脂粒子を含む液体(樹脂粒子の水分散液)を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析して昇温曲線を作成した。作成した昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を「樹脂粒子のガラス転移温度」とした。
[温度プログラム]:
(1)200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
(樹脂粒子1、2)
オートクレーブに設置した撹拌装置を有する反応容器に、表3に記載の各成分を入れ、220℃まで昇温させて、表3に記載の条件でエステル化反応を行った。その後、240℃に昇温し、オートクレーブ内の圧力を90分かけて13Paまで減圧した。240℃、13Paの減圧状態を5時間維持してエステル化(脱水縮合)反応を継続した後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。樹脂粒子1の合成の際には、反応容器内の温度を220℃まで下げ、触媒(テトラ-n-ブチルチタネート)、及びトリメリット酸1.0部を添加し、220℃で2時間加熱して、エステル交換反応を行った。触媒の使用量(mol)は、3×10-4×(多価カルボン酸の合計使用量、mol)とした。樹脂粒子2の合成ではエステル交換反応を行わなかった。その後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して加圧状態とし、シート状の樹脂を取り出した。この樹脂を25℃まで冷却した後、クラッシャーで粉砕し、各樹脂を得た。
容積2Lのビーカーに、撹拌機(商品名「トルネード撹拌機スタンダードSM-104」、アズワン製)をセットした。このビーカーに、上記の操作で得られた樹脂200部、適量の有機溶剤(メチルエチルケトン)を入れ、30℃で撹拌することで樹脂を溶解させた。次いで、5%水酸化カリウム水溶液15.9部を添加して30分間撹拌した。30℃で撹拌しながら、イオン交換水500部を30分かけて滴下した。60℃に昇温して、有機溶剤及びイオン交換水の一部を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網でろ過し、必要に応じてイオン交換水を添加し、樹脂粒子の含有量が25.0%の各樹脂粒子の水分散液を得た。樹脂粒子の特性を、表3の下部に示す。
(樹脂粒子3)
市販の樹脂粒子の水分散液(商品名「エリーテルKT-8803」、ユニチカ製)を、樹脂粒子3の水分散液として用いた。樹脂粒子3の水分散液は、樹脂粒子の含有量が30.0%であり、樹脂粒子3のガラス転移温度Tgは65℃であった。
(樹脂粒子4)
市販の樹脂粒子の水分散液(商品名「エリーテルKT-0507」、ユニチカ製)を、樹脂粒子4の水分散液として用いた。樹脂粒子4の水分散液は、液体成分を濃縮することによって、樹脂粒子の含有量が25.0%とした。樹脂粒子4のガラス転移温度Tgは-25℃であった。
(樹脂粒子5)
撹拌機、還流冷却装置、及び窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、0.20部の過硫酸カリウム、及び79.80部のイオン交換水を入れ、窒素ガスを導入した。そして、エチルメタクリレート14.00部、シクロヘキシルメタクリレート4.00部、メタクリル酸0.60部、エチレングリコールジメタクリレート0.84部、及び界面活性剤(商品名「アクアロンKH-05」、第一工業製薬製)0.56部を混合した。得られた混合物を、四つ口フラスコに撹拌しながら1時間かけて滴下した後、80℃で2時間反応させた。その後、内容物を25℃まで冷却し、水酸化カリウム、及び適量のイオン交換水を添加して、液体のpHを8.5に調整した。このようにして、樹脂粒子5の含有量が40.0%である樹脂粒子5の水分散液を得た。樹脂粒子5のガラス転移温度Tgは63℃であった。
Figure 2023066998000003
<顔料分散液の調製>
下記の手順で顔料分散液を製造した。顔料分散液の製造条件を表4に示す。具体的には、表4に示す酸化チタン粒子40.0部、樹脂を含む液体、及び成分の合計が100.0部となるイオン交換水を混合し、ホモジナイザーを用いて予備分散を行った。その後、0.5mmジルコニアビーズを用いて25℃、ペイントシェーカーで12時間分散処理(本分散)を行った。ジルコニアビーズをろ別し、必要に応じてイオン交換水を適量加え、酸化チタン粒子の含有量が40.0%である各顔料分散液を調製した。顔料分散液中の酸化チタン粒子の含有量T(%)、樹脂分散剤である樹脂の含有量B(%)、及びB/Tの値(倍)を表4にまとめて示す。
Figure 2023066998000004
<インクの調製>
表5~表8の上段に示す種類及び量の各成分を混合し、撹拌した。PEG1000は、数平均分子量1000のポリエチレングリコールである。アセチレノールE60(商品名)は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。プロキセルGXL(S)(商品名)は、LONZA製の防腐剤である。ノプコートPEM-17(商品名)は、ワックスの含有量が40.0%のサンノプコ製のポリオレフィン系ワックスである。実施例13及び実施例14では、樹脂粒子の含有量が50.0%となるように、樹脂粒子1の水分散液を濃縮したものを利用した。その後、ポアサイズ5.0μmのメンブレンフィルタ(ザルトリウス製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。各インクの特性を表5~表8の下部にまとめて示す。調製した各インクのpHを、pHメータ(商品名「ポータブル型pHメータD-74」、堀場製作所製)で測定したところ、いずれも7.5~8.5の範囲内であった。
Figure 2023066998000005
Figure 2023066998000006
Figure 2023066998000007
Figure 2023066998000008
<評価>
上記で得られたインクを用いて、以下に示す各評価を行った。本発明においては、以下に示す評価基準で、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表9に示す。比較例5のインクは、酸化チタン粒子を安定に分散させることができなかったため、以下の評価を行わなかった。そのため、評価結果の欄を「-」と表記した。
(耐擦過性)
(実施例1~27、29、比較例1~12)
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置に搭載した。このインクジェット記録装置は、商品名「imagePROGRAF PRO-2000」(キヤノン製)に、記録媒体の搬送方向における記録ヘッドより下流側に、裏面から記録媒体を加熱するためのヒータを組み込んだものである。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、1滴当たり4ngのインク滴を8滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。上記のインクジェット記録装置を使用し、記録デューティが100%である、9cm×15cmのベタ画像を、25℃、相対湿度50%の環境で、A4サイズに裁断した記録媒体(商品名「超透明PETフィルム GIY-0306」、LINTEC製)に記録した。そして、インクを付与した記録媒体を加熱する条件を80℃として、画像を記録媒体に定着させた。画像を25℃で24時間乾燥させた後、JIS L 0849:2013に準じた測定を行うことができる学振型試験機(商品名「AB-301 学振型摩擦堅牢度試験機」、テスター産業製)を用いて、荷重500gで150往復する条件の摩擦試験を行った。摩擦布は、JIS L 0803で規定される白布(商品名「試験用添付白布 綿(カナキン3号)」、日本規格協会グループ製)を用いた。摩擦試験後の画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
(実施例28)
画像の加熱を行わないこと以外は実施例1と同様の評価を行った。
(参考例1、2)
実施例1のインクジェット記録装置の記録ヘッドを、ピエゾ方式の記録ヘッドにしたこと以外は同様の評価を行った。
AA:150往復後の画像に擦過痕がついていなかった。
A:150往復後の画像に擦過痕がついていたが、50往復後の画像には擦過痕がついていなかった。
B:50往復後の画像に擦過痕がついていたが、記録媒体の表層部は見えなかった。
C:50往復後の画像に擦過痕がついており、記録媒体の表層部が見えた。
(保存安定性)
調製したインク中の酸化チタン粒子の粒子径を測定した(「保存前の粒子径」とする)。各インクを密閉容器に入れ、70℃で1週間保存した。インクを25℃に戻した後、酸化チタン粒子の粒子径を再び測定した(「保存後の粒子径」とする)。酸化チタン粒子の粒子径は、上記の動的光散乱法による粒度分析計を使用して測定した、体積基準の累積50%粒子径(D50)である。そして、「粒子径変化率」(%)=100×(「保存後の粒子径」-「保存前の粒子径」)/(「保存前の粒子径」)の式に基づいて粒子径変化率を算出し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
AA:粒子径変化率が、10%以下であった。
A:粒子径変化率が、10%を超えて15%以下であった。
B:粒子径変化率が、15%を超えて20%以下であった。
C:粒子径変化率が、20%を超えていた。
(吐出安定性)
耐擦過性の評価と同じ条件のベタ画像を30枚分、連続で記録した後、imagePROGRAF PRO-2000のノズルチェックパターンを1枚記録した。得られたノズルチェックパターンを目視で観察し、以下に示す基準にしたがってインクの吐出安定性を評価した。
AA:ノズルチェックパターンは正常に記録されていた。
A:ノズルチェックパターンにわずかなヨレがあったが、罫線は連続していた。
B:ノズルチェックパターンにややヨレがあり、罫線の一部が欠けていた。
C:ノズルチェックパターンに顕著な乱れがあり、不吐出もあった。
Figure 2023066998000009

Claims (10)

  1. 酸化チタン粒子、前記酸化チタン粒子を分散させるための樹脂分散剤、及び樹脂粒子を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記酸化チタン粒子が、その表面の少なくとも一部がアルミナによって被覆された酸化チタンであるとともに、そのゼータ電位が、0mV超であり、
    前記樹脂分散剤が、芳香環を有するモノマーに由来するユニット及びカルボン酸基を有するモノマーに由来するユニットを含む水溶性樹脂であり、
    前記樹脂粒子が、芳香環を有するモノマーに由来するユニットを含むポリエステル樹脂で形成される樹脂粒子であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記水性インク中の、前記樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.6倍以上2.0倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記樹脂分散剤に占める、芳香環を有するモノマーに由来するユニットの割合(質量%)が、前記樹脂分散剤全質量を基準として、20.0質量%以上70.0質量%以下である請求項1又は2に記載の水性インク。
  4. 前記水性インク中の、前記樹脂分散剤の含有量(質量%)が、前記酸化チタン粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.02倍以上0.20倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
  5. 前記酸化チタン粒子に占める、前記アルミナの割合(質量%)が、酸化チタン粒子全質量を基準として、2.0質量%以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
  6. 前記樹脂分散剤の酸価が、170mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
  7. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクをインクジェット方式の記録ヘッドからインクを吐出して記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
  9. 前記インクジェット記録方法が、さらに、前記インクが付与された前記記録媒体を加熱する加熱工程を有する請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 前記記録ヘッドのインクを吐出する方式が、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式である請求項8又は9に記載のインクジェット記録方法。
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