JP2023039842A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】発色性に優れた高品位な画像を低~非吸収性の記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法である。さらに、水性インクが付与された記録媒体を加熱する工程を有し、水性インクが、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、顔料が、アニオン性基の作用によって水性インク中に分散されており、記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である。【選択図】なし
Description
本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録方法は、ポスターや大きなサイズの広告の記録など、サイン&ディスプレイの分野で使用されることが増えている。この分野では、記録媒体の耐久性やコストなどの観点から、記録媒体として、ポリ塩化ビニルシートやポリエチレンテレフタレート(PET)シートなどが用いられることが多い。これらは、記録媒体の記録面に水性インクの吸収層を持たないか、ほぼ持たない記録媒体であり、いわゆる非吸収性の記録媒体(水性インクの吸収性を有しない記録媒体)や低吸収性の記録媒体(水性インクの吸収性が低い記録媒体)と呼ばれる。これらの記録媒体に画像を記録する際には、従来、溶剤系インクや硬化型インクなどが用いられていた。しかし、環境負荷や臭気などを低減する観点から、水性媒体を用いた水性インクのニーズが高まっている。
非吸収性の記録媒体の記録面は、表面エネルギーが低いためにインクが濡れ広がりにくく、インクを弾きやすい性質を持っている。このため、非吸収性の記録媒体に画像を記録しようとすると、付与されたインクの液滴が十分に広がらず、得られる画像に白抜けが生じて発色性が低下しやすいといった課題がある。非吸収性の記録媒体におけるインクの濡れ広がり性を高めるべく、例えば、フッ素系界面活性剤、及び表面張力45mN/m以下25mN/m以上の親水性水溶性有機溶剤を含有するインクが提案されている(特許文献1)。
また、白抜けが抑制された画像を記録すべく、例えば、樹脂、シリコン系界面活性剤又はフッ素系界面活性剤を含む複数の界面活性剤、及び環状構造を有する水溶性有機溶剤を含有するインクが提案されている(特許文献2)。さらに、発色性に優れた画像を記録すべく、例えば、アクリル樹脂粒子を有するインクを非吸収性の記録媒体に付与した後、記録媒体を加熱乾燥させるインクジェット記録方法が提案されている(特許文献3)。
近年、サイン&ディスプレイの分野で使用される、インクジェット記録方法により得られる画像に対しては、今まで以上に高いレベルの発色性を達成することが要求されている。しかし、特許文献1~3で提案されたインクや記録方法などを用いても、記録される画像の発色性は近年要求される高いレベルには達しておらず、改良の余地があった。
したがって、本発明の目的は、発色性に優れた高品位な画像を低~非吸収性の記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、さらに、前記水性インクが付与された前記記録媒体を加熱する工程を有し、前記水性インクが、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、前記顔料が、アニオン性基の作用によって前記水性インク中に分散されており、前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
本発明によれば、発色性に優れた高品位な画像を低~非吸収性の記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。本明細書においては、低吸収~非吸収の記録媒体をまとめて「非吸収性の記録媒体」と記載することがある。低吸収~非吸収の記録媒体であることを、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下である、と定義する。
本発明者らは、発色性に優れた高品位な画像を非吸収性の記録媒体に記録する方法について検討した。具体的には、顔料及びアクリル樹脂粒子を含有する様々な組成の水性インクを非吸収性の記録媒体に付与した後、熱定着させて画像を記録した。その結果、濡れ性を付与する成分であるフッ素系界面活性剤を含有するインクを用いても、記録される画像の発色性がさほど向上しないことがわかった。顔料、アクリル樹脂粒子、及びフッ素系界面活性剤を含有するインクで記録した画像を光学顕微鏡で観察したところ、白抜けが抑制されていることがわかった。電子顕微鏡(SEM)によって画像をさらに詳細に観察したところ、融着したアクリル樹脂粒子以外に顔料の粒子が多く点在していることがわかった。
次に、顔料を含有するインクと、樹脂粒子を含有するインクと、を調製し、以下の検討を行った。顔料を含有するインクの上に樹脂粒子を含有するインクを付与してから熱定着して記録した画像の発色性と、樹脂粒子を含有するインクの上に顔料を含有するインクを付与してから熱定着して記録した画像の発色性を比較した。その結果、後者の画像(顔料を含有するインクの上に樹脂粒子を含有するインクを付与してから熱定着して記録した画像)の発色性のほうが良好であることがわかった。これは、融着した樹脂で顔料を覆うことで画像表面の平滑性が向上し、発色性が高まったためであると推測される。したがって、画像の発色性を高めるには、融着した樹脂で顔料が覆われている層構成とすることが有効であると考えられる。
さらに詳細に検討した結果、本発明者らは、アニオン性基の作用によって分散した顔料、ポリエステル樹脂粒子、フッ素系界面活性剤、及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤を含有するインクを用いることを見出し、本発明に至った。このようなインクを用いることで、発色性に優れた画像を非吸収性の記録媒体に記録することができる。その理由につき、本発明者らは以下のように推測している。
フッ素系界面活性剤は、疎水性であるとともに疎油性でもあるため、油性に近い特性を持つ顔料やポリエステル樹脂粒子には付着しにくく、気液界面に配向しやすい傾向にある。一方、炭化水素系界面活性剤は親油性である。そして、気液界面にフッ素系界面活性剤が存在すると、炭化水素系界面活性剤は顔料やポリエステル樹脂粒子に付着しやすくなる。また、ポリエステル樹脂粒子を形成するポリエステル樹脂は、疎水性部分である炭化水素基と、親水性部分であるエステル基とを有する。そして、ポリエステル樹脂の炭化水素基は、炭化水素系界面活性剤の疎水性部分であるアルキル基と相互作用し、ポリエステル樹脂のエステル基は、炭化水素系界面活性剤の親水性部分であるエチレンオキサイド基と相互作用する。その結果、炭化水素系界面活性剤はポリエステル樹脂粒子に付着し、ポリエステル樹脂粒子は、付着した炭化水素系界面活性剤のエチレンオキサイド基の影響でノニオン性の性質を示すようになる。
非吸収性の記録媒体に付与されたインク中の液体成分が蒸発すると、形成される画像の表面は、画像の内部よりも液体成分の比誘電率が低い状態になる。このため、アニオン性基の作用によって分散していた顔料は、ノニオン性となったポリエステル樹脂粒子よりも優先して画像の内部へと移動する。その結果、ポリエステル樹脂粒子が画像の表面により多く存在することになり、発色性が向上する理想的な膜状態に近づくと考えられる。一方、顔料がノニオン性であると、画像の内部へと優先的に移動することがないので、発色性の向上効果を得ることができない。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。本発明のインクジェット記録方法は、さらに、水性インクが付与された記録媒体を加熱する工程を有する。水性インクは、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、顔料はアニオン性基の作用によって水性インク中に分散されている。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法に用いる装置である。本発明のインクジェット記録装置は、上記の記録方法に好適に用いられる装置である。以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置(以下、単に「記録方法及び記録装置」とも記す)について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有する。本発明のインクジェット記録方法は、さらに、水性インクが付与された記録媒体を加熱する工程を有する。水性インクは、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、顔料はアニオン性基の作用によって水性インク中に分散されている。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法に用いる装置である。本発明のインクジェット記録装置は、上記の記録方法に好適に用いられる装置である。以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置(以下、単に「記録方法及び記録装置」とも記す)について詳細に説明する。
(水性インク)
インクは、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、顔料はアニオン性基の作用によってインク中に分散されている。以下、インクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
インクは、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、顔料はアニオン性基の作用によってインク中に分散されている。以下、インクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
〔色材〕
インクは、アニオン性基の作用によってインク中に分散される顔料を色材として含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクは、アニオン性基の作用によってインク中に分散される顔料を色材として含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、ペリノンなどの有機顔料;を挙げることができる。顔料のなかでも、カーボンブラック、有機顔料を用いることが好ましい。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、水溶性樹脂を用いることが好ましい。
樹脂分散剤としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方の単量体に由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性単量体を重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体などを挙げることができる。酸性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性単量体を重合することで形成することができる。疎水性単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などを挙げることができる。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
〔ポリエステル樹脂粒子〕
インクはポリエステル樹脂粒子を含有する。インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂粒子は、分散状態、すなわち、樹脂エマルションの形態でインク中に存在する。ポリエステル樹脂粒子は色材を内包しないものであることが好ましい。
インクはポリエステル樹脂粒子を含有する。インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂粒子は、分散状態、すなわち、樹脂エマルションの形態でインク中に存在する。ポリエステル樹脂粒子は色材を内包しないものであることが好ましい。
本明細書における「樹脂粒子」とは、インクを構成する水性媒体に溶解しない樹脂をいい、具体的には、動的光散乱法により粒子径を測定可能な粒子を形成した状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。一方、「水溶性樹脂」とは、インクを構成する水性媒体に溶解しうる樹脂をいい、具体的には、動的光散乱法により粒子径を測定可能な粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。「樹脂粒子」を「水分散性樹脂(水不溶性樹脂)」と言い換えることもできる。
ある樹脂が「樹脂粒子」であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、判断対象の樹脂を含む液体(樹脂の含有量:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体をイオン交換水で10倍(体積基準)に希釈して試料を調製する。そして、試料中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されれば、その粒子は「樹脂粒子」(水分散性樹脂)であると判断する。一方、粒子径を有する粒子が測定されなければ、その樹脂は「樹脂粒子」ではない(「水溶性樹脂」である)と判断する。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「ナノトラックUPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
ポリエステル樹脂粒子及び樹脂分散剤などのその他の樹脂についても、上記の方法にしたがって樹脂粒子であるか否か判断する。但し、簡便に判断するため、その他の樹脂については、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂の含有量:10質量%)を用いることが好ましい。
[ポリエステル樹脂の構成材料]
ポリエステル樹脂は、通常、多価アルコールに由来するユニット及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。ポリエステル樹脂の末端には、未反応のヒドロキシ基又はカルボン酸基が存在する。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)及び多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)の合計は、90.0質量%以上であることが好ましい。また、95.0質量%以上であることがさらに好ましく、100.0質量%であってもよい。
ポリエステル樹脂は、通常、多価アルコールに由来するユニット及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。ポリエステル樹脂の末端には、未反応のヒドロキシ基又はカルボン酸基が存在する。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)及び多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)の合計は、90.0質量%以上であることが好ましい。また、95.0質量%以上であることがさらに好ましく、100.0質量%であってもよい。
(1)多価アルコール
多価アルコールとしては、2乃至4価の多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールとしては、脂肪族基を有する多価アルコール、芳香族基を有する多価アルコール、糖アルコールなどを挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール〔1,2-エタンジオール〕、ネオペンチルグリコール〔2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール〕、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕などの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;などを挙げることができる。多価アルコールとして、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
多価アルコールとしては、2乃至4価の多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールとしては、脂肪族基を有する多価アルコール、芳香族基を有する多価アルコール、糖アルコールなどを挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール〔1,2-エタンジオール〕、ネオペンチルグリコール〔2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール〕、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕などの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;などを挙げることができる。多価アルコールとして、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
(2)多価カルボン酸
多価カルボン酸としては、2乃至4価の多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸としては、脂肪族基を有する多価カルボン酸、芳香族基を有する多価カルボン酸、含窒素多価カルボン酸などを挙げることができる。多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの2価カルボン酸;トリメリット酸などの3価カルボン酸;エチレンジアミン四酢酸などの4価カルボン酸;などを挙げることができる。多価カルボン酸として、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
多価カルボン酸としては、2乃至4価の多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸としては、脂肪族基を有する多価カルボン酸、芳香族基を有する多価カルボン酸、含窒素多価カルボン酸などを挙げることができる。多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの2価カルボン酸;トリメリット酸などの3価カルボン酸;エチレンジアミン四酢酸などの4価カルボン酸;などを挙げることができる。多価カルボン酸として、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。ポリエステル樹脂に占める、多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤の含有量(質量%)に対する質量比率で、8.0倍以上80.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が8.0倍未満であると、炭化水素系界面活性剤が顔料にも吸着しやすくなり、顔料がノニオン性を示すことがある。このため、画像内部への顔料の移動が抑制されやすくなり、発色性の向上効果が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が80.0倍超であると、ポリエステル樹脂粒子に対する炭化水素系界面活性剤の量が少なくなるので、ポリエステル樹脂粒子がノニオン性になりにくくなる。このため、ポリエステル樹脂粒子も画像内部へと移動しやすくなることがあり、発色性の向上効果が低下する場合がある。
顔料のアニオン性基の量(μmol/g)は、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、6.0倍以上であることが好ましい。エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤はポリエステル樹脂粒子に付着しやすいが、一部の炭化水性系界面活性剤は顔料にも付着する。そして、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量が、顔料のアニオン性基の量に比して相対的に少ないと、炭化水素系界面活性剤はポリエステル樹脂粒子に付着しやすくなる。上記の比率が6.0倍未満であると、炭化水素系界面活性剤の多くが顔料に作用しやすくなり、画像内部へと顔料が移動しにくくなるため、発色性の向上効果が低下する場合がある。顔料のアニオン性基の量(μmol/g)は、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、20.0倍以下であることが好ましく、10.0倍以下であることがさらに好ましい。
顔料のアニオン性基とは、自己分散顔料であれば顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合しているアニオン性基を指し、樹脂分散剤などの分散剤により分散された顔料であれば、分散剤のアニオン性基を指す。顔料のアニオン性基の量(μmol/g)は、自己分散顔料であればそのものについての単位質量当たりのアニオン性基の量であり、分散剤により分散された顔料であれば、顔料及び分散剤の合計の単位質量当たりのアニオン性基の量である。樹脂粒子及び顔料のアニオン性基の量は、いずれもコロイド滴定によって測定することができる。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT-510」、京都電子工業製)を使用し、電位差を利用したコロイド滴定によって、樹脂粒子及び顔料のアニオン性基の量を測定した。なお、滴定試薬としてはメチルグリコールキトサンを用いた。
[ポリエステル樹脂粒子の分析]
樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂の組成については、例えば、以下に示す方法で分析することができる。まず、樹脂粒子を溶解しうるテトラヒドロフランなどの有機溶剤に樹脂粒子を溶解させて試料を調製する。有機溶剤に溶解させる樹脂粒子は、水分散液の状態であってもよく、乾燥状態であってもよい。調製した試料について、核磁気共鳴(NMR)分光法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの分析法で分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)の種類や割合を知ることができる。また、樹脂粒子を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。試料を調製する際に、有機溶剤に溶解しない不溶分が生ずる場合、生じた不溶分を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析して、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。
樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂の組成については、例えば、以下に示す方法で分析することができる。まず、樹脂粒子を溶解しうるテトラヒドロフランなどの有機溶剤に樹脂粒子を溶解させて試料を調製する。有機溶剤に溶解させる樹脂粒子は、水分散液の状態であってもよく、乾燥状態であってもよい。調製した試料について、核磁気共鳴(NMR)分光法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの分析法で分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)の種類や割合を知ることができる。また、樹脂粒子を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。試料を調製する際に、有機溶剤に溶解しない不溶分が生ずる場合、生じた不溶分を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析して、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。
〔界面活性剤〕
インクは、フッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤を含有する。フッ素系界面活性剤は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有することが好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数が6超であると、パーフルオロアルキル基の疎水性が強いため、疎水性相互作用によって顔料やポリエステル樹脂粒子に吸着しやすくなり、顔料及びポリエステル樹脂粒子の分散性がやや低下する場合がある。顔料及びポリエステル樹脂粒子の分散性が低下すると、乾燥時に顔料やポリエステル樹脂粒子の凝集塊ができやすくなるので、発色性の向上効果が低下する場合がある。フッ素系界面活性剤のパーフルオロアルキル基の炭素数は4以上であることが好ましい。また、ノニオン性のフッ素系界面活性剤が好ましい。
インクは、フッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤を含有する。フッ素系界面活性剤は、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有することが好ましい。パーフルオロアルキル基の炭素数が6超であると、パーフルオロアルキル基の疎水性が強いため、疎水性相互作用によって顔料やポリエステル樹脂粒子に吸着しやすくなり、顔料及びポリエステル樹脂粒子の分散性がやや低下する場合がある。顔料及びポリエステル樹脂粒子の分散性が低下すると、乾燥時に顔料やポリエステル樹脂粒子の凝集塊ができやすくなるので、発色性の向上効果が低下する場合がある。フッ素系界面活性剤のパーフルオロアルキル基の炭素数は4以上であることが好ましい。また、ノニオン性のフッ素系界面活性剤が好ましい。
炭化水素系界面活性剤のエチレンオキサイド基の数は、3以上であることが好ましい。エチレンオキサイド基の数が3未満であると、ポリエステル樹脂粒子がノニオン性になりにくく、ポリエステル樹脂粒子も画像内部へと移動しやすくなるので、発色性の向上効果が低下する場合がある。炭化水素系界面活性剤のエチレンオキサイド基の数は、100以下であることが好ましく、50以下であることがさらに好ましい。また、炭化水素系界面活性剤の炭化水素基の炭素数は、12以上であることが好ましい。炭化水素基の炭素数が12未満であると、疎水性が低く、ポリエステル樹脂粒子に吸着しにくくなるため、発色性の向上効果が低下する場合がある。炭化水素系界面活性剤の炭化水素基の炭素数は、24以下であることが好ましく、20以下であることがさらに好ましい。炭化水素系界面活性剤の炭化水素基は直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、また、ヒドロキシ基などが置換していてもよく、ノニオン性の炭化水素系界面活性剤であることが好ましい。
インク中のフッ素系界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上1.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.50質量%以下であることがさらに好ましい。また、インク中の炭化水素系界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.01質量%以上2.00質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上1.00質量%以下であることがさらに好ましい。
〔水性媒体〕
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。
水溶性有機溶剤は、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)に影響を及ぼす。本発明者らは、Fedors法により算出されるSP値(単位:(cal/cm3)1/2)が、ポリエステル樹脂粒子のSP値と近い水溶性有機溶剤を用いた場合に、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が低下しやすくなることを見出した。具体的には、水溶性有機溶剤のSP値と、ポリエステル樹脂粒子のSP値との差(以下、「ΔSP値」とも記す)が4.0以下の場合に、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が大きく低下する。
インク中の水溶性有機溶剤のうち、含有量が最も多い第1水溶性有機溶剤のSP値と、ポリエステル樹脂粒子のSP値との差(ΔSP値)は、4.0以下であることが好ましい。ΔSP値が4.0超であると、ポリエステル樹脂粒子同士の融着が不十分になりやすく、発色性の向上効果が低下する場合がある。ΔSP値は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。
インク中の第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上4.0倍以下である。上記の質量比率が1.0倍未満であると、ポリエステル樹脂粒子に対する第1水溶性有機溶剤の量が少ないため、発色性の向上効果が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が4.0倍超であると、第1水溶性有機溶剤が顔料やポリエステル樹脂粒子に吸着しやすくなり、顔料がポリエステル樹脂粒子の分散性がやや低下する場合がある。顔料がポリエステル樹脂粒子の分散性が低下すると、乾燥時に凝集塊ができやすくなることがあり、発色性の向上効果が低下する場合がある。
〔その他の成分〕
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体;などの、25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、インクには、必要に応じて、前述のフッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤以外の界面活性剤(その他の界面活性剤)、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。インク中の界面活性剤(前述のフッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤を含む)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素などの尿素誘導体;などの、25℃で固体の水溶性有機化合物を含有させてもよい。さらに、インクには、必要に応じて、前述のフッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤以外の界面活性剤(その他の界面活性剤)、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。インク中の界面活性剤(前述のフッ素系界面活性剤及びエチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤を含む)の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(記録媒体)
本発明の記録方法及び記録装置では、記録媒体として、非吸収性の記録媒体(低~非吸収性の記録媒体)を用いる。非吸収性の記録媒体は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載のブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下の記録媒体である。
本発明の記録方法及び記録装置では、記録媒体として、非吸収性の記録媒体(低~非吸収性の記録媒体)を用いる。非吸収性の記録媒体は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載のブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下の記録媒体である。
低~非吸収性の記録媒体としては、プラスチックフィルム;基材の記録面にプラスチックフィルムが接着された記録媒体;セルロースパルプを含有する基材の記録面に有機樹脂コート層が設けられた記録媒体;などを用いることができる。これらのなかでも、プラスチックフィルムが好ましく、また、セルロースパルプを含有する基材の記録面に有機樹脂層としての有機樹脂コート層が設けられた記録媒体も好ましい。
本発明の記録方法及び記録装置で用いる前述のインクは、非吸収性の記録媒体に付与されると、水や水溶性有機溶剤などの液体成分が揮発してポリエステル樹脂粒子が濃縮される。これにより、濃縮されたポリエステル樹脂粒子同士の融着が促進され、記録される画像の発色性が向上する。これに対して、液体成分の吸収性が高い記録媒体に前述のインクが付与されると、ポリエステル樹脂粒子同士の融着が促進されにくくなるので、画像の発色性の向上効果が不十分になる。
(インクジェット記録装置)
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の記録装置は、インクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッド22を備える。記録ヘッドとしては、力学的エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドや、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを挙げることができる。なかでも、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドが好ましい。熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドは、電気熱変換素子に電気パルスを加えることでインクに熱エネルギーを付与し、吐出口からインクを吐出させるサーマル方式の記録ヘッドである。このサーマル方式の記録ヘッドは、記録ヘッドから吐出して記録媒体に付与する水性インクを所定の温度に加熱する機構(温調機構)を備える。
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の記録装置は、インクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッド22を備える。記録ヘッドとしては、力学的エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドや、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを挙げることができる。なかでも、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドが好ましい。熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドは、電気熱変換素子に電気パルスを加えることでインクに熱エネルギーを付与し、吐出口からインクを吐出させるサーマル方式の記録ヘッドである。このサーマル方式の記録ヘッドは、記録ヘッドから吐出して記録媒体に付与する水性インクを所定の温度に加熱する機構(温調機構)を備える。
〔熱定着処理〕
本発明の記録方法は、インクが付与された記録媒体を加熱(熱定着処理)する工程を有する。インクが付与された記録媒体を加熱することで、ポリエステル樹脂粒子の成膜を促進し、発色性に優れた画像を記録することができる。インクが付与された記録媒体の加熱温度TF(℃)は、90℃以下とすることが好ましく、また、50℃以上であることが好ましい。
本発明の記録方法は、インクが付与された記録媒体を加熱(熱定着処理)する工程を有する。インクが付与された記録媒体を加熱することで、ポリエステル樹脂粒子の成膜を促進し、発色性に優れた画像を記録することができる。インクが付与された記録媒体の加熱温度TF(℃)は、90℃以下とすることが好ましく、また、50℃以上であることが好ましい。
熱定着処理は、特に限定されず、例えば、ヒータなどの公知の加熱手段、ドライヤなどの送風を利用した送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などの熱定着手段により行うことができる。すなわち、記録装置は、インクが付与された記録媒体を加熱する機構(熱定着手段)を備える。熱定着手段としては、上記の加熱手段、送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などを挙げることができる。熱定着処理の方法としては、例えば、記録媒体の記録面(インクの付与面)とは反対側からヒータなどで熱を与える方法、記録媒体の記録面に温風又は熱風を当てる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などを挙げることができる。また、これらの複数を組み合わせてもよい。
図1及び2に示す記録装置では、記録ヘッド22が主走査方向Bに往復走査する位置よりも、副走査方向Aの下流側の位置に、フレーム(図示せず)に支持されたヒータ25が配置されている。インクが付与された記録媒体1をヒータ25によって加熱することができる。ヒータ25の具体例としては、シーズヒータやハロゲンヒータなどを挙げることができる。ヒータ25はヒータカバー26に覆われている。ヒータカバー26は、ヒータ25から生じた熱を記録媒体1に効率よく照射するための部材である。さらに、ヒータカバー26は、ヒータ25を保護する部材でもある。記録ヘッド22から吐出されたインクが付与された記録媒体1は、巻き取りスプール27により巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体24を形成する。
画像の発色性を向上させる観点からは、インクが付与された記録媒体の加熱温度TF(℃)及びポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が、下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
TF(℃)≧Tg(℃)-10℃ ・・・(1)
TF(℃)≧Tg(℃)-10℃ ・・・(1)
本発明者らは、樹脂粒子の融着性に及ぼす水性媒体(水及び水溶性有機溶剤)の影響を検討すべく、Fedors法により算出される樹脂粒子及び水性媒体のSP値に注目してガラス転移温度(℃)の変化を測定した。樹脂粒子のガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定した。粉末状の樹脂のガラス転移温度(℃)(樹脂自体のガラス転移温度)を基準とし、粉末状の樹脂と水性媒体を1:1の質量比で混合した場合における樹脂のガラス転移温度(℃)を測定して比較した。樹脂としては、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂を用いた。
検討の結果、水は樹脂のガラス転移温度を10℃以上低下させること、及び水溶性有機溶剤は水よりも樹脂のガラス転移温度を低下させることがわかった。画像の発色性を高めるには、インク中のポリエステル樹脂粒子を十分に融着させることが重要である。そして、上述の通り、インクに用いられる水性媒体はポリエステル樹脂のTg(℃)を10℃以上低下させる。このため、インクが付与された記録媒体の加熱温度TF(℃)と、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)とが、前記式(1)の関係を満たすことが、樹脂粒子をより十分に融着させるために重要である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。Fedors法によるSP値の単位は(cal/cm3)1/2である。
<樹脂のガラス転移温度の測定方法>
樹脂粒子を含む液体を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析して昇温曲線を作成した。作成した昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を「樹脂(粒子)のガラス転移温度(Tg)」とした。
[温度プログラム]:
(1)200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
樹脂粒子を含む液体を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析して昇温曲線を作成した。作成した昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を「樹脂(粒子)のガラス転移温度(Tg)」とした。
[温度プログラム]:
(1)200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1~3)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(組成(モル)比=84.6/15.4)を酸価と等モルの水酸化ナトリウムを添加してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が25.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の酸価は、120mgKOH/gである。表1に示す種類及び量(単位:%)の各成分の混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、各顔料分散液を得た。各顔料分散液中の顔料の含有量は30.0%、樹脂の含有量は9.0%であった。顔料のアニオン性基の量を表1に示す。
(顔料分散液1~3)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(組成(モル)比=84.6/15.4)を酸価と等モルの水酸化ナトリウムを添加してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が25.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の酸価は、120mgKOH/gである。表1に示す種類及び量(単位:%)の各成分の混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、各顔料分散液を得た。各顔料分散液中の顔料の含有量は30.0%、樹脂の含有量は9.0%であった。顔料のアニオン性基の量を表1に示す。
(顔料分散液4)
顔料(カーボンブラック)250部、一般式(1)で表されるノニオン性の分散剤(竹本油脂製、n=40)50部、及び水700部を混合してスラリーを得た。0.015mmジルコニアビーズを充填率70%に充填したディスクタイプのメディアミル(UAM型、寿工業製)を使用し、周速6m/s、液温10℃の条件で循環分散処理した。遠心分離機(Model-7700、久保田商事製)を使用して粗大粒子を除去した後、1.2μmのフィルターでろ過して顔料分散液4を得た。顔料分散液4中の顔料の含有量は30.0%であった。
顔料(カーボンブラック)250部、一般式(1)で表されるノニオン性の分散剤(竹本油脂製、n=40)50部、及び水700部を混合してスラリーを得た。0.015mmジルコニアビーズを充填率70%に充填したディスクタイプのメディアミル(UAM型、寿工業製)を使用し、周速6m/s、液温10℃の条件で循環分散処理した。遠心分離機(Model-7700、久保田商事製)を使用して粗大粒子を除去した後、1.2μmのフィルターでろ過して顔料分散液4を得た。顔料分散液4中の顔料の含有量は30.0%であった。
<ポリエステル樹脂粒子の水分散液の調製>
オートクレーブ内に設置した反応容器に、エチレングリコール60.0部、ネオペンチルグリコール40.0部、テレフタル酸54.5部、及びイソフタル酸54.5部を入れ、220℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。240℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を90分間かけて13Paまで減圧した。240℃、13Paの減圧状態を5時間保ってエステル化(脱水縮合)反応を継続した後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。反応容器内の温度を220℃まで下げた後、触媒(テトラ-n-ブチルチタネート)及びトリメリット酸1.0部を添加し、220℃で2時間加熱してエステル交換反応を行った。触媒の量(mol)は、「3×10-4×多価カルボン酸の合計使用量(mol)」とした。その後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して加圧状態とし、シート状の樹脂を取り出した。取り出した樹脂を25℃まで冷却した後、クラッシャーで粉砕してポリエステル樹脂を得た。
オートクレーブ内に設置した反応容器に、エチレングリコール60.0部、ネオペンチルグリコール40.0部、テレフタル酸54.5部、及びイソフタル酸54.5部を入れ、220℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。240℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を90分間かけて13Paまで減圧した。240℃、13Paの減圧状態を5時間保ってエステル化(脱水縮合)反応を継続した後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。反応容器内の温度を220℃まで下げた後、触媒(テトラ-n-ブチルチタネート)及びトリメリット酸1.0部を添加し、220℃で2時間加熱してエステル交換反応を行った。触媒の量(mol)は、「3×10-4×多価カルボン酸の合計使用量(mol)」とした。その後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して加圧状態とし、シート状の樹脂を取り出した。取り出した樹脂を25℃まで冷却した後、クラッシャーで粉砕してポリエステル樹脂を得た。
容積2Lのビーカーに、撹拌機(商品名「トルネード撹拌機スタンダードSM-104」、アズワン製)をセットした。このビーカーに、上記のポリエステル樹脂200g及びメチルエチルケトン(MEK)を入れ、30℃で撹拌してポリエステル樹脂を溶解させた。次いで、5%水酸化カリウム水溶液15.9gを添加して30分間撹拌した。30℃で撹拌しながら、脱イオン水500gを20mL/minの速度で滴下した。60℃に昇温した後、MEK及び一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網でろ過し、脱イオン水を添加して、ポリエステル樹脂粒子の水分散液(樹脂の含有量30%)を得た。得られた水分散液中のポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量は71μmol/g、ガラス転移温度Tgは74℃、SP値(Fedors法)は11.9であった。
<アクリル樹脂粒子の分散液の調製>
水1,160mLを反応器内で90℃に加熱した。また、水160mLに重合開始剤として過硫酸カリウム1.39gを混合し、開始剤溶液を調製した。調製した開始剤溶液のうち32mLを反応器に加えて撹拌した。これとは別個に、水159.4mLに、スチレン183g、ベンジルアクリレート80g、メタクリル酸1.5g、連鎖移動剤としてイソオクチルチオグリコレート1.6g、及び乳化剤の30%水溶液9.98gを混合してモノマー混合液を調製した。乳化剤としては、商品名「Rhodafac RS 710」(Rhodia Novecare製)を用いた。調製したモノマー混合液を30分間かけて反応器内に滴下すると同時に、開始剤溶液129.4gを30分間かけて反応器内に滴下して撹拌した。得られた反応物を撹拌し、90℃で3時間維持した。50℃にまで冷却した後、50%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した。内容物を周囲温度にまで冷却した後、200メッシュフィルタでろ過し、脱イオン水を添加して、アクリル樹脂粒子の分散液(樹脂の含有量30%)を得た。得られた分散液中のアクリル樹脂粒子のアニオン性基の量は71μmol/g、ガラス転移温度(Tg)は67℃、SP値(Fedors法)は10.8であった。
水1,160mLを反応器内で90℃に加熱した。また、水160mLに重合開始剤として過硫酸カリウム1.39gを混合し、開始剤溶液を調製した。調製した開始剤溶液のうち32mLを反応器に加えて撹拌した。これとは別個に、水159.4mLに、スチレン183g、ベンジルアクリレート80g、メタクリル酸1.5g、連鎖移動剤としてイソオクチルチオグリコレート1.6g、及び乳化剤の30%水溶液9.98gを混合してモノマー混合液を調製した。乳化剤としては、商品名「Rhodafac RS 710」(Rhodia Novecare製)を用いた。調製したモノマー混合液を30分間かけて反応器内に滴下すると同時に、開始剤溶液129.4gを30分間かけて反応器内に滴下して撹拌した。得られた反応物を撹拌し、90℃で3時間維持した。50℃にまで冷却した後、50%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した。内容物を周囲温度にまで冷却した後、200メッシュフィルタでろ過し、脱イオン水を添加して、アクリル樹脂粒子の分散液(樹脂の含有量30%)を得た。得られた分散液中のアクリル樹脂粒子のアニオン性基の量は71μmol/g、ガラス転移温度(Tg)は67℃、SP値(Fedors法)は10.8であった。
<界面活性剤の用意>
以下に示す炭化水素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を用意した。
以下に示す炭化水素系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を用意した。
(炭化水素系界面活性剤)
・NIKKOL BO50(日光ケミカルズ製):エチレンオキサイド基の数50、炭化水素基の炭素数18
・CRODA FOS N3A(CRODA Inc製):エチレンオキサイド基の数3、炭化水素基の炭素数18
・サーフィノール420(エアプロダクツ製):エチレンオキサイド基の数1.3、炭化水素基の炭素数14
・ノイゲンSD-60(第一工業製薬製):エチレンオキサイド基の数7、炭化水素基の炭素数10
・NIKKOL BL-9EX(日光ケミカルズ製):エチレンオキサイド基の数9、炭化水素基の炭素数12
・NIKKOL BO50(日光ケミカルズ製):エチレンオキサイド基の数50、炭化水素基の炭素数18
・CRODA FOS N3A(CRODA Inc製):エチレンオキサイド基の数3、炭化水素基の炭素数18
・サーフィノール420(エアプロダクツ製):エチレンオキサイド基の数1.3、炭化水素基の炭素数14
・ノイゲンSD-60(第一工業製薬製):エチレンオキサイド基の数7、炭化水素基の炭素数10
・NIKKOL BL-9EX(日光ケミカルズ製):エチレンオキサイド基の数9、炭化水素基の炭素数12
(フッ素系界面活性剤)
・Zonyl FS-3100(Chemours製):パーフルオロアルキル基の炭素数6
・Zonyl FSO-100(Chemours製):パーフルオロアルキル基の炭素数8
・メガファック444(DIC製):パーフルオロアルキル基の炭素数6
・Zonyl FS-3100(Chemours製):パーフルオロアルキル基の炭素数6
・Zonyl FSO-100(Chemours製):パーフルオロアルキル基の炭素数8
・メガファック444(DIC製):パーフルオロアルキル基の炭素数6
<インクの調製>
表2-1~2-3に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのセルロースアセテートフィルター(商品名「Minisart」、ザルトリウス製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。調製した各インクの特性を表2-1~2-3の下段に示す。
表2-1~2-3に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのセルロースアセテートフィルター(商品名「Minisart」、ザルトリウス製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。調製した各インクの特性を表2-1~2-3の下段に示す。
<評価>
(発色性)
インクジェット記録装置(商品名「imagePROGRAF PRO-2000」、キヤノン製)に熱定着工程を搭載した改造機を使用して以下に示す評価を行った。このインクジェット記録装置は、1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に4ngのインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティが100%であると定義される。各インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置に搭載した。この記録装置を使用し、表3に示す条件で、以下に示す2種の記録媒体に記録デューティが200%であるベタ画像を記録した。記録媒体1は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下の記録媒体である。一方、記録媒体2は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2を超える記録媒体である。
・記録媒体1:商品名「スコッチカル グラフィックフィルム IJ1220」、3M製、材質:ポリ塩化ビニル
・記録媒体2:商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]PT-201」、キヤノン製
(発色性)
インクジェット記録装置(商品名「imagePROGRAF PRO-2000」、キヤノン製)に熱定着工程を搭載した改造機を使用して以下に示す評価を行った。このインクジェット記録装置は、1/1,200インチ×1/1,200インチの単位領域に4ngのインク滴を1滴付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティが100%であると定義される。各インクをインクカートリッジに充填し、上記のインクジェット記録装置に搭載した。この記録装置を使用し、表3に示す条件で、以下に示す2種の記録媒体に記録デューティが200%であるベタ画像を記録した。記録媒体1は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下の記録媒体である。一方、記録媒体2は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2を超える記録媒体である。
・記録媒体1:商品名「スコッチカル グラフィックフィルム IJ1220」、3M製、材質:ポリ塩化ビニル
・記録媒体2:商品名「キヤノン写真用紙・光沢 プロ [プラチナグレード]PT-201」、キヤノン製
蛍光分光濃度計(商品名「FD-7」、コニカミノルタ製)を使用し、記録した画像の明度(L*値)を測定した。そして、以下に示す評価基準にしたがって画像の発色性を評価した。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「A」及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表3に示す。
A:L*値が7.5以下であった。
B:L*値が7.5を超えて9.0以下であった。
C:L*値が9.0を超えていた。
A:L*値が7.5以下であった。
B:L*値が7.5を超えて9.0以下であった。
C:L*値が9.0を超えていた。
Claims (9)
- インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法であって、
さらに、前記水性インクが付与された前記記録媒体を加熱する工程を有し、
前記水性インクが、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、
前記顔料が、アニオン性基の作用によって前記水性インク中に分散されており、
前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。 - 前記炭化水素系界面活性剤のエチレンオキサイド基の数が、3以上である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
- 前記炭化水素系界面活性剤の炭化水素基の炭素数が、12以上である請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インク中の前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記炭化水素系界面活性剤の含有量(質量%)に対する質量比率で、8.0倍以上80.0倍以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記顔料のアニオン性基の量(μmol/g)が、前記ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、6.0倍以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記フッ素系界面活性剤が、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
- 前記水性インクが、さらに水溶性有機溶剤を含有し、
前記水溶性有機溶剤のうち、含有量が最も多い第1水溶性有機溶剤のSP値と、前記ポリエステル樹脂粒子のSP値との差が、4.0以下であり、
前記インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上4.0倍以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。 - 前記記録媒体の加熱温度TF(℃)及び前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度Tg(℃)が、下記式(1)の関係を満たす請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
TF(℃)≧Tg(℃)-10℃ ・・・(1) - インクジェット方式の記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する工程を有するインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置であって、
前記水性インクが付与された前記記録媒体を加熱する機構を備え、
前記水性インクが、顔料、ポリエステル樹脂粒子、エチレンオキサイド基を有する炭化水素系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を含有し、
前記顔料が、アニオン性基の作用によって前記水性インク中に分散されており、
前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m2以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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---|---|---|---|
JP2021147161A JP2023039842A (ja) | 2021-09-09 | 2021-09-09 | インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 |
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2021
- 2021-09-09 JP JP2021147161A patent/JP2023039842A/ja active Pending
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