JP2023039913A - インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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栄一 中田
Eiichi Nakada
絵里子 吉野
Eriko Yoshino
凌 辻井
Ryo Tsujii
吉敬 鳥阪
Yoshitaka Torisaka
正典 吉田
Masanori Yoshida
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Abstract

【課題】インクを加熱する機構を持った記録ヘッドを用いながらも、インクの吐出安定性が良好であり、耐擦過性に優れた画像を非吸収性記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】記録ヘッドから水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法である。温度TH(℃)に加熱した水性インクを記録ヘッドから吐出して記録媒体に付与する工程と、水性インクが付与された記録媒体を温度TF(℃)に加熱する工程と、を有し、水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度TG(℃)、温度TH(℃)、及び温度TF(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たす。TG(℃)>TH(℃) ・・・(1)TF(℃)≧TH(℃)+10℃ ・・・(2)TF(℃)≧TG(℃)-10℃ ・・・(3)【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置に関する。
近年、インクジェット記録方法は、ポスターや大きなサイズの広告の記録など、サイン&ディスプレイの分野で使用されることが増えている。この分野では、記録媒体の耐久性やコストなどの観点から、記録媒体として、ポリ塩化ビニルシートやポリエチレンテレフタレート(PET)シートなどが用いられることが多い。これらは、記録媒体の記録面に水性インクの吸収層を持たないか、ほぼ持たない記録媒体であり、いわゆる非吸収性の記録媒体(水性インクの吸収性を有しない記録媒体)や低吸収性の記録媒体(水性インクの吸収性が低い記録媒体)と呼ばれる。これらの記録媒体に画像を記録する際には、従来、溶剤系インクや硬化型インクなどが用いられていた。しかし、環境負荷や臭気などを低減する観点から、水性媒体を用いた水性インクのニーズが高まっている。
サイン&ディスプレイの分野で使用される画像に対しては、優れた耐擦過性を有することが要求されている。このような要求に応えるべく、例えば、アクリル樹脂粒子を含有するインク、及びこのインクを低~非吸収性の記録媒体に付与して画像を記録した後、記録した画像を加熱する方法が提案されている(特許文献1)。また、その沸点が所定の範囲内にあるアルキルポリオール類を含有する、記録ヘッドでの固着を抑制しつつ耐擦過性に優れた画像を記録しうるインクが提案されている(特許文献2)。
一方、熱エネルギーの作用により水性インクを吐出する記録ヘッドを用いて画像を記録する場合、熱エネルギーを生成する複数の記録素子(吐出用のヒータ)のうち、使用頻度の高い記録素子と、使用頻度の低い記録素子との間で温度差が生ずる。そして、このように生じた温度差により、記録素子に対応する吐出口からのインクの吐出量に差が生じてしまい、記録される画像に「ムラ」が生ずることがある。このようなインクの吐出量の差を解消すべく、例えば、記録ヘッド及び記録ヘッド内のインクの温度を加温制御(以下、「温調」とも記す)しつつ画像を記録する方法が提案されている(特許文献3)。
特開2005-220352号公報 特開2012-251049号公報 特開2016-002738号公報
しかし、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドから特許文献1で提案されたインクを吐出して記録媒体に付与すると、記録される画像に「ムラ」が生じやすくなるとともに、生じた「ムラ」の部分の耐擦過性が低下することがわかった。また、温調した記録ヘッドから特許文献1で提案されたインクを吐出すると、記録される画像に「ムラ」が生じにくくなり、画像の耐擦過性が向上することがわかった。しかし、温調した記録ヘッドからインクを連続して長期間吐出すると、吐出口付近でインクが固着しやすくなり、インクの吐出安定性が低下することがわかった。
したがって、本発明の目的は、インクを加熱する機構を持った記録ヘッドを用いながらも、インクの吐出安定性が良好であり、耐擦過性に優れた画像を低~非吸収性の記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、温度T(℃)に加熱した前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して前記記録媒体に付与する工程と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を温度T(℃)に加熱する工程と、を有し、前記水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、前記ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下であり、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、前記温度T(℃)、及び前記温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たし、前記記録媒体に付与された前記水性インクに加えられる熱量((W・h)/g)が、2(W・h)/g以上であり、前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法が提供される。
(℃)>T(℃) ・・・(1)
(℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
(℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
本発明によれば、インクを加熱する機構を持った記録ヘッドを用いながらも、インクの吐出安定性が良好であり、耐擦過性に優れた画像を低~非吸収性の記録媒体に記録することが可能なインクジェット記録方法を提供することができる。また、本発明によれば、このインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置を提供することができる。
本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。 本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)、常圧(1気圧)における値である。
また、本明細書においては、「ユニット」とは、特に断りのない限り、1のモノマーに対応する単位構造のことを意味する。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」と記載する場合は、それぞれ「アクリル酸、メタクリル酸」、「アクリレート、メタクリレート」を表すものとする。インクジェット用の水性インクに汎用のポリエステル樹脂は、多価アルコールに由来するユニット、及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。多価アルコールに由来するユニット及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される、エステル結合(-COO-)を含む構造を、「エステルユニット」と呼ぶことがある。
さらに、本明細書においては、低吸収~非吸収の記録媒体をまとめて「非吸収性の記録媒体」と記載することがある。低吸収~非吸収の記録媒体であることを、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である、と定義する。
本発明者らは、温調した記録ヘッドから特許文献1で提案されたインク(「アクリル樹脂粒子Aを含有するインク」とする)を連続して長期間吐出した場合に、吐出口付近でインクが固着する原因について検討した。インクが固着して不吐出となった吐出口を観察したところ、インク中のアクリル樹脂粒子Aの一部が融着して吐出口を塞いでいることがわかった。このとき、インク中のアクリル樹脂粒子Aのガラス転移温度(T(℃))は、温調した記録ヘッドの温度(記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりも低かった(約10℃)。そのため、インク中のアクリル樹脂粒子Aのガラス転移温度(T(℃))以上の温度に温調した記録ヘッドの吐出口付近では、インク中の液体成分が急速に蒸発してアクリル樹脂粒子Aが濃縮される。その際、濃縮したアクリル樹脂粒子の一部が溶融し、吐出口で固着したと考えられる。
そこで、ガラス転移温度(T(℃))が記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりもやや高い(約20℃高い)アクリル樹脂粒子B、及び十分に高い(約50℃高い)アクリル樹脂粒子Cをそれぞれ用いてインクを調製した。これらのインクを使用して、記録ヘッドからの吐出安定性を評価した。その結果、アクリル樹脂粒子Bを含有するインクの吐出安定性は改善しなかったが、アクリル樹脂粒子Cを含有するインクの吐出安定性が改善することがわかった。つまり、アクリル樹脂粒子の場合、インクの吐出安定性を確保するには、記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりも十分に高いガラス転移温度(T(℃))を有するアクリル樹脂粒子を用いる必要がある。
次に、ガラス転移温度(T(℃))が異なる上記3種のアクリル樹脂粒子を含有するインクを付与した記録媒体を所定の定着温度(T(℃))で加熱し、インクを十分乾燥させて画像の耐擦過性を確認した。その結果、アクリル樹脂粒子Cを含有するインクを用いて記録した画像の耐擦過性は十分なレベルに到達していないことが判明した。電子顕微鏡を使用して、記録された画像の成膜状態を観察したところ、アクリル樹脂粒子C同士の融着が不十分であることがわかった。
さらに、アクリル樹脂粒子C同士が融着しうる定着温度T(℃)まで加熱したところ、非吸収性の記録媒体の代表例である塩化ビニルシートが熱により収縮した。これにより、記録物に凹凸のウネリが生じ、外力によって凸部の画像が擦れて、耐擦過性が低下することがわかった。つまり、塩化ビニルシートなどの記録媒体を用いるとともに、熱によるダメージが生じにくい定着温度(T(℃))とする場合、アクリル樹脂粒子を含有するインクでは、インクの吐出安定性及び記録される画像の耐擦過性が両立しえないことが判明した。
次いで、樹脂粒子の種類に着目し、温調した記録ヘッドからのインクの吐出安定性と、記録される画像の耐擦過性との両立を目指した。具体的には、軟化する温度範囲がアクリル樹脂粒子よりも狭いことが予想されるポリエステル樹脂粒子に着目して検討した。一般的なポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分(モノマーA)と多価アルコール成分(モノマーB)とを交互反応させて製造する。このため、共重合で製造するアクリル樹脂に比して分子量分布が狭く、樹脂中のモノマーユニットの状態は、多くの場合「ABABAB」となる。すなわち、ポリエステル樹脂は、分子量分布がシャープであるとともに、組成の均一性が高いことから、アクリル樹脂よりも軟化する温度範囲が狭いと考えられる。本発明においては、ポリエステル樹脂粒子のなかでも、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値が6.0以下であるもの(狭いもの)を用いる。Mw/Mn比の値が6.0超であると分子量分布が広すぎるため、樹脂粒子の軟化温度が所望とする範囲内に収まらず、インクの吐出安定性及び画像の耐擦過性を両立することができない。
本発明者らは、記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりもやや高い(約20℃高い)ガラス転移温度(T(℃))のポリエステル樹脂粒子を含有するインクを調製して検証した。具体的には、このインクを用い、塩化ビニルシートなどの記録媒体に熱によるダメージが生じにくい定着温度(T(℃)(約90℃)として、インクの吐出安定性及び記録される画像の耐擦過性を評価した。その結果、アクリル樹脂粒子を含有するインクを用いた場合と異なり、吐出安定性及び耐擦過性が両立することが判明した。
ガラス転移温度が同一であれば、ポリエステル樹脂粒子よりもアクリル樹脂粒子のほうが軟化する温度範囲が広い。すなわち、ポリエステル樹脂粒子に比して、アクリル樹脂粒子は軟化開始温度が低く、軟化終了温度が高い。このため、温調した記録ヘッド内のインク中のアクリル樹脂粒子の融着を抑制するには、その軟化開始温度が記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりも高いアクリル樹脂粒子を用いる必要がある。そのようなアクリル樹脂粒子のガラス転移温度(T(℃))は記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))よりも十分に高いので、軟化終了温度もさらに高く、樹脂粒子同士を融着させるためのT(℃)もさらに高くなる。一方、ポリエステル樹脂粒子の軟化開始温度は、ガラス転移温度(T(℃))が同一のアクリル樹脂粒子に比して高い。さらに、ポリエステル樹脂粒子の軟化終了温度は、ガラス転移温度(T(℃))が同一のアクリル樹脂粒子に比して低い。以上の理由により、ポリエステル樹脂粒子を含有するインクを用いた場合には、ガラス転移温度(T(℃))が同等のアクリル樹脂粒子を含有するインクを用いた場合に比して、吐出安定性及び画像の耐擦過性が向上したと考えられる。
但し、吐出安定性及び耐擦過性をより高いレベルで両立する観点では、ポリエステル樹脂粒子を用いた場合であっても、定着温度(T(℃))と記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))との差を大きくしておくことが必要である。具体的には、温調した記録ヘッドの温度(記録ヘッドから吐出するインクの温度(T(℃))と、インクが付与された記録媒体の加熱温度T(℃)とが、下記式(2)の関係を満たすことが必要である。
(℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
定着温度(T(℃))と記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))の差が10℃未満であると、以下のような状況となる。すなわち、定着温度(T(℃))で十分融着するガラス転移温度(T(℃))のポリエステル樹脂粒子を用いた場合に、インクの吐出安定性が低下する。また、定着温度(T(℃))と記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))の差が10℃未満であると、以下のような状況となる。すなわち、記録ヘッド内のインクの温度(T(℃))では融着しないガラス転移温度(T(℃))のポリエステル樹脂粒子を用いた場合には、定着温度(T(℃))で加熱しても十分に融着せず、画像の耐擦過性が低下する。
さらに、画像の耐擦過性を向上させる観点からは、インクが付与された記録媒体の加熱温度T(℃)と、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)とが、下記式(3)の関係を満たすことが必要である。
(℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
本発明者らは、樹脂粒子の融着性に及ぼす水性媒体(水及び水溶性有機溶剤)の影響を検討すべく、Fedors法により算出される樹脂粒子及び水性媒体のSP値(単位:(cal/cm1/2)に注目してガラス転移温度(℃)の変化を測定した。樹脂粒子のガラス転移温度(℃)は、示差走査熱量計(DSC)を使用して測定した。粉末状の樹脂のガラス転移温度(℃)(樹脂自体のガラス転移温度)を基準とし、粉末状の樹脂と水性媒体を1:1の質量比で混合した場合における樹脂のガラス転移温度(℃)を測定して比較した。樹脂としては、アクリル樹脂で形成された樹脂粒子(アクリル樹脂粒子)及びポリエステル樹脂で形成された樹脂粒子(ポリエステル樹脂粒子)を用いた。
検討の結果、水は樹脂のガラス転移温度を10℃以上低下させること、及びインクジェット用の水性インクに汎用の水溶性有機溶剤は水よりも樹脂のガラス転移温度を大きく低下させやすい傾向にあることがわかった。画像の耐擦過性を高めるには、ポリエステル樹脂粒子を十分に融着させることが重要である。そして、上述の通り、インクジェット用の水性インクに用いられる水性媒体はポリエステル樹脂のT(℃)を10℃以上低下させるものであると言える。このため、インクが付与された記録媒体の加熱温度T(℃)と、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)とが、前記式(3)の関係を満たすことが、樹脂粒子を十分に融着させるために重要である。
また、インクを十分に乾燥させる観点から、記録媒体に付与されたインクに加えられる熱量((W・h)/g)を、2(W・h)/g以上とすることが必要である。インクに加えられる熱量が2(W・h)/g未満であると、記録媒体に付与されたインクが十分に乾燥せず、記録される画像の耐擦過性が不十分になる。
<インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録する方法である。本発明のインクジェット記録方法は、温度T(℃)に加熱した水性インクを記録ヘッドから吐出して記録媒体に付与する工程と、水性インクが付与された記録媒体を温度T(℃)に加熱する工程と、を有する。水性インクは、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下である。そして、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、温度T(℃)、及び温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たす。また、本発明のインクジェット記録装置は、インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いる装置であり、上記の記録方法に好適に用いられる装置である。なお、色材を含有しないようなコート液などをインクのほかに付与する工程や、活性エネルギー線などの照射により画像を硬化する工程を設ける必要はない。以下、本発明のインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置(以下、単に「記録方法及び記録装置」とも記す)について詳細に説明する。
(℃)>T(℃) ・・・(1)
(℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
(℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
図1は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す斜視図である。また、図2は、本発明のインクジェット記録装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。図1及び2に示すように、本実施形態の記録装置は、インクを吐出するインクジェット方式の記録ヘッド22を備える。記録ヘッド22は、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドである。熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドは、電気熱変換素子に電気パルスを加えることでインクに熱エネルギーを付与し、吐出口からインクを吐出させるサーマル方式の記録ヘッドである。このサーマル方式の記録ヘッドは、記録ヘッドから吐出して記録媒体に付与する水性インクを温度T(℃)に加熱する機構(温調機構)を備える。画像の耐擦過性を高めることができるため、記録ヘッドから吐出するインクの加熱温度T(℃)は、40℃以上とすることが好ましい。また、記録ヘッドから吐出するインクの加熱温度T(℃)は、70℃以下とすることが好ましい。
〔加熱工程〕
本発明の記録方法は、インクが付与された記録媒体を温度T(℃)に加熱(加熱処理)する工程を有する。インクが付与された記録媒体を加熱することで、ポリエステル樹脂粒子の成膜を促進し、耐擦過性に優れた画像を記録することができる。
記録媒体を加熱する手段は、特に限定されず、例えば、ヒータなどの公知の加温手段、ドライヤなどの送風を利用した送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などの加熱手段を挙げることができる。すなわち、インクジェット記録装置は、インクが付与された記録媒体を温度T(℃)に加熱する機構(加熱手段)を備える。加熱手段としては、上記の加温手段、送風手段、及びこれらを組み合わせた手段などを挙げることができる。加熱処理の方法としては、例えば、記録媒体の記録面(インクの付与面)とは反対側(裏面)からヒータなどで熱を与える方法、記録媒体の記録面に温風又は熱風を当てる方法、記録面又は裏面から赤外線ヒータを用いて加熱する方法などを挙げることができる。また、これらの複数を組み合わせてもよい。画像の耐擦過性を高めることができるため、インクが付与された記録媒体の加熱温度(画像の温度)T(℃)は、90℃以下とすることが好ましい。また、インクが付与された記録媒体の加熱温度(画像の温度)T(℃)は、50℃以上であることが好ましい。画像の耐擦過性をさらに高めることができるため、記録ヘッドから吐出するインクの加熱温度T(℃)を40℃以上とするとともに、インクが付与された記録媒体の加熱温度(画像の温度)T(℃)を90℃以下とすることが好ましい。インクが付与された記録媒体の加熱温度は、記録装置の加熱手段に対応する位置に組み込んだセンサにより読み取ってもよいし、インクと記録媒体の種類に応じて定めておいた熱量と記録媒体の温度との関係から判断してもよい。
記録媒体に付与されたインクに加えられる熱量((W・h)/g)は、2(W・h)/g以上とすることが必要である。インクに2(W・h)/g以上の熱量を加えると、記録媒体に付与されたインクが十分に乾燥することで、記録される画像の耐擦過性を向上することができる。記録媒体に付与されたインクに加えられる熱量((W・h)/g)は、10(W・h)/g以下であることが好ましい。インクに加えられる熱量は以下のようにして測定することができる。まず、記録媒体を加熱する加熱手段にかかる電力A(W)を測定する。また、記録装置の単位時間当たりの記録面積B(m/h)、及び、この記録に用いる単位面積当たりのインク消費量C(g/m)を得る。これらの値から、下記式(4)に基づいて、記録媒体に付与されたインクに加えられる熱量((W・h)/g)を計算する。
記録媒体に付与されたインク加えられる熱量((W・h)/g)
=A(W)/B(m/h)/C(g/m) ・・・(4)
図1及び2に示す記録装置では、記録ヘッド22が主走査方向Bに往復走査する位置よりも、副走査方向Aの下流側の位置に、フレーム(図示せず)に支持されたヒータ25が配置されている。インクが付与された記録媒体1をヒータ25によって加熱することができる。ヒータ25の具体例としては、シーズヒータやハロゲンヒータなどを挙げることができる。ヒータ25はヒータカバー26に覆われている。ヒータカバー26は、ヒータ25から生じた熱を記録媒体1に効率よく照射するための部材である。さらに、ヒータカバー26は、ヒータ25を保護する部材でもある。記録ヘッド22から吐出されたインクが付与された記録媒体1は、巻き取りスプール27により巻き取られ、ロール状の巻き取り媒体24を形成する。
(記録媒体)
本発明の記録方法及び記録装置では、記録媒体として、非吸収性の記録媒体(低~非吸収性の記録媒体)を用いる。低~非吸収性の記録媒体は、JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.51の「紙及び板紙の液体吸収性試験方法」に記載のブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下の記録媒体である。本発明においては、上記水吸収量の条件を満たす記録媒体を「低~非吸収性の記録媒体」と定義する。無機粒子で形成されたコート層(インク受容層)を有するインクジェット記録用の記録媒体(光沢紙、マット紙など)や、コート層を有しない普通紙は、上記水吸収量が10mL/mを超える「吸収性記録媒体」である。
低~非吸収性の記録媒体としては、プラスチックフィルム;基材の記録面にプラスチックフィルムが接着された記録媒体;セルロースパルプを含有する基材の記録面に有機樹脂コート層が設けられた記録媒体;などを用いることができる。これらのなかでも、プラスチックフィルムが好ましく、また、セルロースパルプを含有する基材の記録面に有機樹脂層としての有機樹脂コート層が設けられた記録媒体も好ましい。
本発明の記録方法及び記録装置で用いる前述のインクは、非吸収性の記録媒体に付与されると、水や水溶性有機溶剤などの成分が揮発してポリエステル樹脂粒子が濃縮される。これにより、濃縮されたポリエステル樹脂粒子同士の融着が促進され、記録される画像の耐擦過性が向上する。これに対して、液体成分の吸収性が高い記録媒体に前述のインクが付与されると、ポリエステル樹脂粒子同士の融着が促進されにくくなるので、画像の耐擦過性の向上効果が不十分になる。なお、本明細書における記録媒体とは、転写体ではなく、記録物としての画像が記録される対象の記録媒体を意味する。
(水性インク)
インクは、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有する。以下、インクを構成する各成分などについて詳細に説明する。
〔色材〕
インクは、色材として顔料を含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジン、ペリノンなどの有機顔料;を挙げることができる。顔料のなかでも、カーボンブラック、有機顔料を用いることが好ましい。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを挙げることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子表面を樹脂などで被覆したマイクロカプセル顔料などを挙げることができる。
顔料を水性媒体中に分散させるための樹脂分散剤としては、アニオン性基の作用によって顔料を水性媒体中に分散させうるものを用いることが好ましい。樹脂分散剤としては、水溶性樹脂を用いることが好ましい。
樹脂分散剤としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂などを挙げることができる。なかでも、アクリル系樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルに由来するユニットで構成されるアクリル系樹脂がさらに好ましい。
アクリル系樹脂としては、親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして有するものが好ましい。なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、芳香環を有する単量体及び(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも一方に由来する疎水性ユニットと、を有する樹脂が好ましい。特に、(メタ)アクリル酸に由来する親水性ユニットと、スチレン及びα-メチルスチレンの少なくとも一方の単量体に由来する疎水性ユニットとを有する樹脂が好ましい。これらの樹脂は、顔料との相互作用が生じやすいため、顔料を分散させるための樹脂分散剤として好適に利用することができる。
親水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性単量体を重合することで形成することができる。親水性基を有する親水性単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボン酸基を有する酸性単量体、これらの酸性単量体の無水物や塩などのアニオン性単量体などを挙げることができる。酸性単量体の塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンを挙げることができる。疎水性ユニットは、アニオン性基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、アニオン性基などの親水性基を有しない、疎水性単量体を重合することで形成することができる。疎水性単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの芳香環を有する単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などを挙げることができる。
自己分散顔料としては、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基などのアニオン性基が、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団(-R-)を介して結合しているものを用いることができる。アニオン性基は、酸型及び塩型のいずれであってもよく、塩型である場合は、その一部が解離した状態及び全てが解離した状態のいずれであってもよい。アニオン性基が塩型である場合において、カウンターイオンとなるカチオンとしては、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、有機アンモニウムなどを挙げることができる。他の原子団(-R-)の具体例としては、炭素原子数1乃至12の直鎖又は分岐のアルキレン基;フェニレン基やナフチレン基などのアリーレン基;カルボニル基;イミノ基;アミド基;スルホニル基;エステル基;エーテル基などを挙げることができる。また、これらの基を組み合わせた基であってもよい。
〔ポリエステル樹脂粒子〕
インクはポリエステル樹脂粒子を含有する。インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.5倍以上であることが好ましく、1.7倍以上であることがさらに好ましく、また、5.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が1.5倍未満であると、顔料に比べてポリエステル樹脂粒子が少なすぎて、記録媒体との密着性が高まりにくいとともに、ポリエステル樹脂粒子が顔料を十分に覆うことができず、画像の耐擦過性が低下する場合がある。ポリエステル樹脂粒子は、分散状態、すなわち、樹脂エマルションの形態でインク中に存在する。ポリエステル樹脂粒子は色材を内包しないものであることが好ましい。
本明細書における「樹脂粒子」とは、インクを構成する水性媒体に溶解しない樹脂をいい、具体的には、動的光散乱法により粒子径を測定可能な粒子を形成した状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。一方、「水溶性樹脂」とは、インクを構成する水性媒体に溶解しうる樹脂をいい、具体的には、動的光散乱法により粒子径を測定可能な粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在しうる樹脂を意味する。「樹脂粒子」を「水分散性樹脂(水不溶性樹脂)」と言い換えることもできる。
ある樹脂が「樹脂粒子」であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、判断対象の樹脂を含む液体(樹脂の含有量:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体をイオン交換水で10倍(体積基準)に希釈して試料を調製する。そして、試料中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されれば、その粒子は「樹脂粒子」(水分散性樹脂)であると判断する。一方、粒子径を有する粒子が測定されなければ、その樹脂は「樹脂粒子」ではない(「水溶性樹脂」である)と判断する。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、形状:真球形、屈折率:1.59、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「ナノトラックUPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
ポリエステル樹脂粒子及び樹脂分散剤などのその他の樹脂についても、上記の方法にしたがって樹脂粒子であるか否か判断する。但し、簡便に判断するため、その他の樹脂については、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂の含有量:10質量%)を用いることが好ましい。
[ポリエステル樹脂の構成材料]
ポリエステル樹脂は、通常、多価アルコールに由来するユニット及び多価カルボン酸に由来するユニットで構成される。ポリエステル樹脂の末端には、未反応のヒドロキシ基又はカルボン酸基が存在する。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)及び多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)の合計は、90.0質量%以上であることが好ましい。また、95.0質量%以上であることがさらに好ましく、100.0質量%であってもよい。
(1)多価アルコール
多価アルコールとしては、2乃至4価の多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールとしては、脂肪族基を有する多価アルコール、芳香族基を有する多価アルコール、糖アルコールなどを挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール〔1,2-エタンジオール〕、ネオペンチルグリコール〔2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール〕、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ベンゼンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕などの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコール;などを挙げることができる。多価アルコールとして、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。多価アルコールとしては、2価アルコールを用いることが好ましい。ポリエステル樹脂に占める、多価アルコールに由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
(2)多価カルボン酸
多価カルボン酸としては、2乃至4価の多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボン酸としては、脂肪族基を有する多価カルボン酸、芳香族基を有する多価カルボン酸、含窒素多価カルボン酸などを挙げることができる。多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの2価カルボン酸;トリメリット酸などの3価カルボン酸;エチレンジアミン四酢酸などの4価カルボン酸;などを挙げることができる。多価カルボン酸として、オリゴマー(分子量1,000以下の低分子量の重合体)を用いることもできる。多価カルボン酸としては、2価カルボン酸を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂に占める、多価カルボン酸に由来するユニットの割合(質量%)は、40.0質量%以上60.0質量%以下であることが好ましい。
[ポリエステル樹脂粒子の物性]
ポリエステル樹脂粒子(ポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、6.0以下であり、好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下である。また、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、1.5以上であることが好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。Mw/Mn比の値が6.0超であると分子量分布が広すぎるため、樹脂粒子の軟化温度が所望とする範囲内に収まらず、インクの吐出安定性及び画像の耐擦過性を両立することができない。
ポリエステル樹脂粒子(ポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂)の重量平均分子量は、30,000以上70,000以下であることが好ましい。重量平均分子量が30,000未満であると、ポリエステル樹脂の分子鎖が短すぎて絡み合いにくくなるため、画像の耐擦過性の向上効果が低下する場合がある。一方、重量平均分子量が70,000超であると、ポリエステル樹脂の分子鎖が長すぎて分子運動が生じにくく、絡み合いが起こりにくくなるため、画像の耐擦過性の向上効果が低下する場合がある。ポリエステル樹脂粒子(ポリエステル樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂)の数平均分子量は、5,000以上30,000以下であることが好ましい。本明細書における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算の値である。
ガラス転移温度は、樹脂粒子の溶融しやすさを示す指標であり、樹脂粒子が結晶状態から非結晶状態に変化し始める温度を意味する。ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、また、90℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度は、樹脂粒子そのものについて、示差走査熱量計(DSC)などの熱分析装置を用いて測定することができる。
ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)と、記録ヘッドから吐出するインクの加熱温度T(℃)は、下記式(1)の関係を満たすことが必要である。すなわち、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)は、温度T(℃)よりも高いことが重要である。T(℃)がT(℃)以下であると、記録ヘッドの吐出口付近でポリエステル樹脂粒子の一部が融着しやすくなり、インクの吐出安定性が不十分となる。
(℃)>T(℃) ・・・(1)
本発明者らは、耐擦過性を評価した後の画像の削られた部分を電子顕微鏡で観察した。その結果、削られた部分には、融着したポリエステル樹脂粒子以外にも顔料粒子が多く点在していることがわかった。次いで、顔料を含有しないインクで記録した画像の膜物性と、ポリエステル樹脂粒子を含有しないインクで記録した画像の膜物性を解析して比較した。その結果、ポリエステル樹脂を含有しないインクで記録した画像表面の摩擦係数のほうが大きいことがわかった。
耐擦過性のみを考慮すると、画像表面は摩擦係数の小さい樹脂膜で構成されていることが理想的であると考えられる。そこで、非吸収性の記録媒体に付与したインクドットにおいて、顔料を優先的に内部に移動させるべく、樹脂粒子と顔料のアニオン性基の量(μmol/g)に着目してさらに検討した。非吸収性の記録媒体に付着したインクドットにおいて、水及び水溶性有機溶剤は、非吸収性の記録媒体上にある程度の時間留まっていると考えられる。その間にインクドット表面から液体成分が蒸発し、インクドット表面の液体成分の比誘電率は、インクドット内部の液体成分の比誘電率よりも低い状態になる。このとき、アニオン性基の量が相対的に多い顔料粒子が優先的にインクドット内部に移動すると考えられる。
さらなる検討の結果、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量よりも、顔料のアニオン性基の量のほうがある程度多い場合に、画像の耐擦過性がより向上することが判明した。具体的には、顔料がアニオン性基の作用によってインク中に分散されており、顔料のアニオン性基の量(μmol/g)が、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、6.0倍以上であることが好ましい。顔料のアニオン性基の量(μmol/g)は、ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、20.0倍以下であることが好ましく、10.0倍以下であることがさらに好ましい。
顔料のアニオン性基とは、自己分散顔料であれば顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合しているアニオン性基を指し、樹脂分散剤などの分散剤により分散された顔料であれば、分散剤のアニオン性基を指す。顔料のアニオン性基の量(μmol/g)は、自己分散顔料であればそのものについての単位質量当たりのアニオン性基の量であり、分散剤により分散された顔料であれば、顔料及び分散剤の合計の単位質量当たりのアニオン性基の量である。樹脂粒子及び顔料のアニオン性基の量は、いずれもコロイド滴定によって測定することができる。後述する実施例においては、流動電位滴定ユニット(PCD-500)を搭載した電位差自動滴定装置(商品名「AT-510」、京都電子工業製)を使用し、電位差を利用したコロイド滴定によって、樹脂粒子及び顔料のアニオン性基の量を測定した。なお、滴定試薬としてはメチルグリコールキトサンを用いた。
[ポリエステル樹脂粒子の分析]
樹脂粒子を構成するポリエステル樹脂の組成については、例えば、以下に示す方法で分析することができる。まず、樹脂粒子を溶解しうるテトラヒドロフランなどの有機溶剤に樹脂粒子を溶解させて試料を調製する。有機溶剤に溶解させる樹脂粒子は、水分散液の状態であってもよく、乾燥状態であってもよい。調製した試料について、核磁気共鳴(NMR)分光法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの分析法で分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)の種類や割合を知ることができる。また、樹脂粒子を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析することで、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。試料を調製する際に、有機溶剤に溶解しない不溶分が生ずる場合、生じた不溶分を熱分解ガスクロマトグラフィーで分析して、樹脂を構成するユニット(単量体)を検出することもできる。
〔ワックス粒子〕
インクは、さらに、ワックス粒子を含有することが好ましい。ワックス粒子を含有するインクを用いて記録した画像は、その表面の動摩擦係数が低下し、擦過により加えられる応力を逃がすことができるため、より良好な耐擦過性を示す。ワックス粒子を形成するワックスの融点は、インクが付与された記録媒体の加熱温度T(℃)よりも高いことが好ましい。ワックスの融点が加熱温度T(℃)以下であると、加熱によりワックスが溶融して、画像の表面近傍に存在しにくくなり、画像の耐擦過性を向上する効果が弱くなる場合がある。ワックスの融点は、JIS K2235:1991(石油ワックス)の5.3.1(融点試験方法)に記載の試験法に準拠して測定することができる。
ワックス粒子を形成するワックスとしては、合成ワックスを挙げることができる。合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びα-オレフィン・無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のワックスを挙げることができる。これらの合成ワックスは、パラフィンワックスやカルナバワックスなどの天然ワックスと比較して、分子量分布が狭い傾向にある。このため、合成ワックスは、インクが付与された記録媒体の加熱温度T(℃)に対して、ワックス粒子が溶融しないように、ワックスの融点を精度よく制御しやすいため、好適に用いることができる。
インク中のワックス粒子の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中のポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)は、ワックス粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上30.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が2.0倍未満であると、ワックス粒子がポリエステル粒子の成膜を阻害しやすく、インク膜の強度がやや弱くなるため、画像の耐擦過性を向上する効果が弱くなる場合がある。一方、上記の質量比率が30.0倍超であると、ポリエステル樹脂粒子に対してワックス粒子が少なくなりすぎて、画像の表面に存在するワックス粒子が少なくなり、画像の耐擦過性を向上する効果が弱くなる場合がある。
〔水性媒体〕
インクは、水性媒体として少なくとも水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水やイオン交換水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上30.0質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類、(ポリ)アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができる。「水溶性有機溶剤」とは、通常、液体を指し示す用語であるが、本発明においては、温度25℃で固体であるものも、便宜上、「水溶性有機溶剤」に含めることとする。
水溶性有機溶剤は、インクの乾燥性及びポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)に影響を及ぼす。本発明者らは、インクの吐出安定性と画像の耐擦過性をより高いレベルで両立すべく、最適な水溶性有機溶剤について検討した。その結果、水溶性有機溶剤の沸点が低すぎると、インクの吐出安定性が低下する傾向にあることがわかった。例えば、水溶性有機溶剤の沸点が120℃以下であると、温調した記録ヘッドから長期間インクを吐出して画像を記録した場合に一部の吐出口において不吐出が生じた。水溶性有機溶剤の沸点が低すぎると、温調した記録ヘッドの吐出口付近でインクの保湿性が担保されにくくなり、インク中の樹脂が固着しやすくなると考えられる。
一方、水溶性有機溶剤の沸点が高すぎると、記録される画像の耐擦過性が低下する傾向にあることがわかった。例えば、水溶性有機溶剤の沸点が310℃以上であると、画像の耐擦過性が低下する場合があった。塩化ビニルシートの熱収縮が収まる上限温度(約90℃)で長時間加熱しても、高沸点の水溶性有機溶剤の一部が画像に残存し、画像の耐擦過性が低下したと考えられる。
さらに、そのSP値が、ポリエステル樹脂粒子のSP値と近い水溶性有機溶剤を用いた場合に、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)が低下しやすくなる傾向にあることが判明した。具体的には、水溶性有機溶剤のSP値と、ポリエステル樹脂粒子のSP値との差(以下、「ΔSP値」とも記す)が4.0以下の場合に、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)が大きく低下する。
[第1水溶性有機溶剤]
インクは、その沸点が120℃以上220℃以下である第1水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。そして、インク中のすべての水溶性有機溶剤のうち、第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が最も多いことが好ましい。非吸収性の記録媒体に付与されたインクが加熱されると、インク中の液体成分が蒸発し、インクドット中でポリエステル樹脂及び水溶性有機溶剤が濃縮される。このとき、SP値が近似した水溶性有機溶剤と接触したポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)が大きく低下し、ポリエステル樹脂粒子同士の融着が促進される。第1の水溶性有機溶剤の沸点が220℃以下であると、融着して形成された樹脂膜から第1の水溶性有機溶剤が揮発しやすいため、画像の耐擦過性がより向上すると考えられる。一方、水溶性有機溶剤の沸点が120℃未満であると、インクの保湿性が低下しやすくなり、吐出安定性がやや低下する場合がある。
沸点が120℃以上220℃以下である第1水溶性有機溶剤としては、例えば、1,3-プロパンジオール(214℃)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(214℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(202℃)、エチレングリコール(198℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(194℃)、1,2-ブタンジオール(193℃)、プロピレングリコール(188℃)、3-メトキシ-3-メチルブタノール(174℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(160℃)、2-エトキシエタノール(136℃)、2-メトキシエタノール(125℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(120℃)などを挙げることができる。
記録される画像の耐擦過性をより向上させる観点から、第1水溶性有機溶剤のSP値と、ポリエステル樹脂粒子のSP値との差(ΔSP値)は、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。ΔSP値は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。また、インク中の第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上4.0倍以下であることが好ましい。上記の質量比率が1.0倍未満であると、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)を十分に低下させることがやや困難になり、画像の耐擦過性の向上効果が低下する場合がある。一方、上記の質量比率が4.0倍超であると、ガラス転移温度T(℃)が低下したポリエステル樹脂粒子の一部が溶融しやすくなり、インクの吐出安定性の向上効果が低下する場合がある。
第1水溶性有機溶剤に該当する水溶性有機溶剤を複数種用いる場合における、第1水溶性有機溶剤の「SP値」は、「平均SP値」の概念で捉えることが適している。この「平均SP値」は、ある水溶性有機溶剤のSP値に、インク中の水溶性有機溶剤の合計量に占める、当該水溶性有機溶剤の割合(質量%)を乗じた値を、それぞれの水溶性有機溶剤について算出及び積算した値である。例えば、以下に示す組成の水溶性有機溶剤(合計15.0質量部)の平均SP値は、「(12.8×10.0/15.0)+(13.5×5.0/15.0)=12.8」である。なお、括弧内の数値は、各水溶性有機溶剤のSP値(単位は省略)である。
・1,2-ブタンジオール(12.8):10.0質量部
・1,2-プロパンジオール(13.5):5.0質量部
[第2水溶性有機溶剤]
第1水溶性有機溶剤のみを水溶性有機溶剤として含有するインクで記録した画像を詳細に解析したところ、ポリエステル樹脂粒子が十分に融着していない部分が存在することがわかった。非吸収性の記録媒体に付与されたインク中において、ポリエステル樹脂粒子と十分に馴染む前に第1水溶性有機溶剤が揮発してしまい、ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)を十分に低下させることが困難であったためと考えられる。そこで、本発明者らは、第1水溶性有機溶剤よりも高沸点の水溶性有機溶剤を用いることで、得られる画像の耐擦過性がさらに向上することを見出した。すなわち、インクは、その沸点が220℃を超えて310℃以下である第2水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。また、第2水溶性有機溶剤のSP値と、ポリエステル樹脂粒子のSP値との差(ΔSP値)は、4.0以下であることが好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。ΔSP値は、0.1以上であることが好ましく、0.5以上であることがさらに好ましい。第2水溶性有機溶剤に該当する水溶性有機溶剤を複数種用いる場合における、第2水溶性有機溶剤の「SP値」は、第1の水溶性有機溶剤の場合と同様に、「平均SP値」の概念で捉えることが適している。
沸点が220℃超310℃以下である第2水溶性有機溶剤としては、例えば、2-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン(309℃)、トリメチロールプロパン(296℃)、グリセリン(290℃)、トリエチレングリコール(288℃)、スルホラン(287℃)、ジエチレングリコール(246℃)、2-ピロリドン(245℃)、ジプロピレングリコール(232℃)、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル(229℃)、1,2-ヘキサンジオール(223℃)などを挙げることができる。
[水溶性有機溶剤のSP値]
本発明におけるSP値(δ)は、下記式(A)に基づき、Fedors法により算出される値[単位:(cal/cm1/2]である。樹脂のΔEvap及びVは、例えば、コーティング時報No.193号(1992)などの記載を参考にして求めることができる。
Figure 2023039913000001
(前記式(A)中、ΔEvapは化合物のモル蒸発熱(cal/mol)を表し、Vは25℃における化合物のモル体積(cc/mol)を表す)
インクジェット用の水性インクに汎用の水溶性有機溶剤のFedors法によるSP値を、単位(cal/cm1/2を省略して以下に示す。グリセリン(16.4)、1-ヒドロキシ-2-ピロリドン(16.4)、1,3-プロパンジオール(16.1)、トリメチロールプロパン(15.9)、1,4-ブタンジオール(15.0)、ジエチレングリコール(15.0)、エチレングリコール(14.8)、1,3-ブタンジオール(14.8)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(14.8)、1,2,6-ヘキサントリオール(14.5)、尿素(14.4)、エチレン尿素(14.2)、1,5-ペンタンジオール(14.2)、1-(ヒドロキシメチル)-2-ピロリドン(14.2)、1,2,7-ヘプタントリオール(13.9)、メタノール(13.8)、トリエタノールアミン(13.7)、トリエチレングリコール(13.6)、1,6-ヘキサンジオール(13.5)、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(13.5)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(13.4)、2-エチルプロパン-1,3-ジオール(13.2)、2-メチルペンタン-2,4-ジオール(13.1)、テトラメチレンスルホキシド(12.9)、1-(3-ヒドロキシプロピル)-2-ピロリドン(12.9)、テトラエチレングリコール(12.8)、数平均分子量200のポリエチレングリコール(12.8)、1,2-ブタンジオール(12.8)、2-ピロリドン(12.6)、1-(4-ヒドロキシブチル)-2-ピロリドン(12.5)、1,2-ペンタンジオール(12.2)、3-メチルスルホラン(12.1)、エチレングリコールモノメチルエーテル(12.0)、n-プロパノール(11.8)、1,2-ヘキサンジオール(11.8)、イソプロパノール(11.6)、N-メチル-2-ピロリドン(11.5)、エチレングリコールモノエチルエーテル(11.5)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(11.4)、n-ブタノール(11.3)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(11.2)、2-ブタノール(11.1)、イソブタノール(11.1)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(10.9)、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(10.6)、数平均分子量600のポリエチレングリコール(10.5)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(10.5)、3-メトキシ-3-メチルブタノール(10.5)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(10.3)、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル(10.2)、数平均分子量1000のポリエチレングリコール(10.1)、γーブチロラクトン(9.9)、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(9.2)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(8.5)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル(8.4)、エチレングリコールジメチルエーテル(7.6)。インクに含有させる水溶性有機溶剤のSP値は、5.0(cal/cm1/2以上、20.0(cal/cm1/2以下であることが好ましい。
〔その他の成分〕
インクには、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、及びキレート剤などの種々の添加剤を含有させてもよい。これらの成分(その他の成分)は、水溶性有機溶剤とは異なるため、沸点及びSP値を考慮する対象とする必要はない。界面活性剤を含有させる場合、インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<物性値の測定方法>
(樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量)
以下の手順にしたがって、樹脂(粒子)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した。樹脂をテトラヒドロフランに添加し、25℃で24時間かけて溶解させた後、メンブレンフィルターでろ過して試料を調製した。試料中の樹脂の含有量は約0.3%となるように調整した。調製した試料について、以下に示す条件にしたがってゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分析を行い、標準ポリスチレン樹脂を用いて作成した分子量校正曲線を使用して数平均分子量を算出した。標準ポリスチレン樹脂としては、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」(東ソー製)を用いた。
・HPLC装置:商品名「2695 Separations Module」(Waters製)
・示差屈折率(RI)検出器:商品名「2414 detector」(Waters製)
・カラム:商品名「GPC KF-806M」の4連カラム(昭和電工製)
・溶離液:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
・オーブン温度:40℃
・試料注入量:100μL
(樹脂のガラス転移温度)
樹脂粒子を含む液体を60℃で乾固させて得た樹脂粒子2mgをアルミ容器に入れて封管し、測定用の試料を用意した。用意した試料につき、示差走査熱量計(商品名「Q1000」、TA instruments製)を使用し、以下に示す温度プログラムにしたがって熱分析して昇温曲線を作成した。作成した昇温曲線(横軸:温度、縦軸:熱量)における、低温側の曲線中の2点を通って高温側まで延長した直線と、曲線中の階段状の変化部分の勾配が最大になる点で引いた接線との交点における温度を「樹脂(粒子)のガラス転移温度(T)」とした。
[温度プログラム]:
(1)200℃まで10℃/分で昇温
(2)200℃から-50℃まで5℃/分で降温
(3)-50℃から200℃まで10℃/分で昇温
(樹脂が樹脂粒子であるか否かの判断、粒子径)
樹脂を含む液体をイオン交換水で希釈し、樹脂の含有量が約1.0%である試料を調製した。この試料について、動的光散乱法による粒度分布計を使用し、以下に示す測定条件にしたがって樹脂粒子の粒子径(体積基準の累積50%粒子径D50)を測定した。粒度分布計としては、商品名「ナノトラックWAVEII-Q」(マイクロトラック・ベル製)を使用した。この測定方法によって粒子径を有する粒子が測定された場合、その樹脂は「樹脂粒子」である(「水分散性樹脂」である)と判断した。一方、この測定方法によって粒子径を有する粒子が測定されなかった場合、その樹脂は「樹脂粒子」ではない(「水溶性樹脂」である)と判断した。
[測定条件]:
・SetZero:30s
・測定回数:3回
・測定時間:180秒
・形状:真球形
・屈折率:1.6
・密度:1.0
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1~3)
水溶性樹脂であるスチレン/アクリル酸共重合体(組成(モル)比=84.6/15.4)を酸価と等モルの水酸化ナトリウムを添加してイオン交換水に溶解させ、樹脂の含有量が25.0%である樹脂分散剤の水溶液を調製した。この水溶性樹脂の酸価は、120mgKOH/gである。表1に示す種類及び量(単位:%)の各成分の混合物をサンドグラインダーに入れ、1時間分散処理を行った。その後、遠心分離処理を行って粗大粒子を除去し、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、適量のイオン交換水を加えて、各顔料分散液を得た。顔料のアニオン性基の量を表1に示す。
Figure 2023039913000002
(顔料分散液4)
特許文献2(特開2012-251049号公報)における「ブラック顔料分散液1の調製」の記載を参考にして、水不溶性樹脂を樹脂分散剤として用いた、顔料(C.I.ピグメントブラック7)分散液4を得た。樹脂分散剤として用いた水不溶性樹脂は、メタクリル酸/スチレンマクロマー/2-エチルヘキシルメタクリレート/スチレン/メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート共重合体である。得られた顔料分散液中の顔料の含有量は30.0%、樹脂の含有量は6.0%、顔料のアニオン性基の量は398μmol/gであった。
<樹脂粒子の水分散液の調製>
(樹脂粒子1~8)
オートクレーブ内に設置した撹拌装置を有する反応容器に、表2に示す種類及び使用量(部)のモノマーの混合物を入れた。220℃まで昇温し、表2に示す「撹拌速度」及び「反応時間」にしたがってエステル化反応を行った。240℃まで昇温し、オートクレーブ内の圧力を90分間かけて13Paまで減圧した。240℃、13Paの減圧状態を5時間保ってエステル化(脱水縮合)反応を継続した後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して常圧に戻した。反応容器内の温度を220℃まで下げた後、触媒(テトラ-n-ブチルチタネート)及びトリメリット酸1.0部を添加し、220℃で2時間加熱してエステル交換反応を行った。触媒の量(mol)は、「3×10-4×多価カルボン酸の合計使用量(mol)」とした。その後、オートクレーブ内に窒素ガスを導入して加圧状態とし、シート状の樹脂を取り出した。取り出した樹脂を25℃まで冷却した後、クラッシャーで粉砕してポリエステル樹脂を得た。表2中のモノマーの略称の意味を以下に示す。
・EG:エチレングリコール
・NPG:ネオペンジルグリコール
・tPA:テレフタル酸
・iPA:イソフタル酸
容積2Lのビーカーに、撹拌機(商品名「トルネード撹拌機スタンダードSM-104」、アズワン製)をセットした。このビーカーに、ポリエステル樹脂200g及びメチルエチルケトン(MEK)を入れ、30℃で撹拌してポリエステル樹脂を溶解させた。次いで、5%水酸化カリウム水溶液15.9gを添加して30分間撹拌した。30℃で撹拌しながら、脱イオン水500gを20mL/minの速度で滴下した。60℃に昇温した後、MEK及び一部の水を留去した。25℃まで冷却後、150メッシュの金網でろ過し、脱イオン水を添加して、樹脂粒子1~8の水分散液(樹脂の含有量30.0%)を得た。得られた水分散液中の樹脂粒子の特性を表2に示す。
Figure 2023039913000003
(樹脂粒子9)
市販のポリエステル樹脂粒子の水分散液(商品名「エリーテルKT-8803」、ユニチカ製、樹脂の含有量30.0%)を「樹脂粒子9の水分散液」とした。樹脂粒子9のアニオン性基の量は398μmol/g、数平均分子量は15,000、ガラス転移温度Tは65℃、SP値は11.9であった。
(樹脂粒子10~12)
水1,160mLを反応器内で90℃に加熱した。また、水160mLに重合開始剤として過硫酸カリウム1.39gを混合し、開始剤溶液を調製した。調製した開始剤溶液のうち32mLを反応器に加えて撹拌した。これとは別個に、水159.4mLに、表3に示す種類及び使用量(g)のモノマー連鎖移動剤としてイソオクチルチオグリコレート1.6g、及び乳化剤の30%水溶液9.98gを混合してモノマー混合液を調製した。乳化剤としては、商品名「Rhodafac RS 710」(Rhodia Novecare製)を用いた。調製したモノマー混合液を30分間かけて反応器内に滴下すると同時に、開始剤溶液129.4gを30分間かけて反応器内に滴下して撹拌した。得られた反応物を撹拌し、90℃で3時間維持した。50℃にまで冷却した後、50%水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した。内容物を周囲温度にまで冷却した後、200メッシュのフィルタでろ過し、脱イオン水を添加して、樹脂粒子10~12の分散液(樹脂の含有量30.0%)を得た。得られた分散液中の樹脂粒子の特性を表3に示す。表3中のモノマーの略称の意味を以下に示す。
・St:スチレン
・HMA:メタクリル酸ヘキシル
・EGDMA:ジメタクリル酸エチレングリコール
・αMSt:α-メチルスチレン
・BzA:アクリル酸ベンジル
・MAA:メタクリル酸
Figure 2023039913000004
<ワックス粒子の準備>
以下に示す市販のワックス粒子の含有量を脱イオン水で調整し、ワックス粒子の水分散液(ワックス粒子の含有量:30.0%)を調製した。
・ワックス粒子1の水分散液:フィッシャー・トロプシュワックス(商品名「EMUSTAR-6315」、日本精蝋製、融点113℃)
・ワックス粒子2の水分散液:カルバナワックス(商品名「セロゾール524」、中京油脂製、融点83℃)
・ワックス粒子3の水分散液:酸化ポリエチレンワックス(商品名「AQUACER515」、ビックケミー・ジャパン製、融点135℃)
<インクの調製>
表4-1~4-4に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズ4.5μmのメンブレンフィルター(商品名「HDCIIフィルター」、ポール製)にて加圧ろ過して、各インクを調製した。調製した各インクの特性を表4-1~4-4の下段に示す。また、表4-1~4-4中の各成分の詳細を以下に示す。表4-1~4-4中、水溶性有機溶剤に付した括弧内の数値は、水溶性有機溶剤の沸点(℃)、SP値である。複数の第2水溶性有機溶剤を含有する場合における「第2水溶性有機溶剤のSP値V」は、含有量の質量比で重みづけした値である。
・Zonyl FS-3100:商品名、フッ素系界面活性剤、Chemours製
・BYK333:商品名、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン製
・BYK349:商品名、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン製
・サーフィノールDF-110D:商品名、アセチレンジオール系界面活性剤、日信化学工業製
Figure 2023039913000005
Figure 2023039913000006
Figure 2023039913000007
Figure 2023039913000008
<評価>
以下に示すインクジェット方式の記録ヘッドを備えた記録装置1及び2、並びに記録媒体1及び2を用意した。記録媒体1は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下の記録媒体である。一方、記録媒体2は、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/mを超える記録媒体である。本発明においては、以下に示す各項目の評価基準で、「AAA」、「AA」、「A」、及び「B」を許容できるレベルとし、「C」を許容できないレベルとした。評価結果を表5-1及び5-2に示す。
・記録装置1(商品名「Pixus Pro-2000」、キヤノン製)、熱エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを備え、記録ヘッド内のインクを加熱する機構を有する。
・記録装置2(商品名「PX-G5300」、セイコーエプソン製)、物理エネルギーの作用によりインクを吐出する記録ヘッドを備え、記録ヘッド内のインクを加熱する機構を有しない。
・記録媒体1:商品名「スコッチカル グラフィックフィルム IJ1220」、3M製、材質:ポリ塩化ビニル
・記録媒体2:高品位専用紙、商品名「HR-101S」、キヤノン製
(吐出安定性)
各インクをインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置に搭載した。温度25℃、相対湿度50%の条件下、1/600インチ×1/600インチの単位領域に32ngのインクを付与する条件、及び表5-1及び5-2に示す条件で、A3サイズの記録媒体に27cm×38cmのベタ画像を100枚分連続して記録した。100枚記録後にノズルチェックパターンを記録するとともに、不吐出が生じた吐出口の割合を確認し、以下に示す評価基準にしたがってインクの吐出安定性を評価した。
A:不吐出が生じた吐出口の割合が全ての吐出口の0%であった。
B:不吐出が生じた吐出口の割合が全ての吐出口の80%未満であった。
C:不吐出が生じた吐出口の割合が全ての吐出口の80%以上であった。
(耐擦過性)
各インクをインクカートリッジに充填し、インクジェット記録装置に搭載した。温度25℃、相対湿度50%の条件下、1/600インチ×1/600インチの単位領域に32ngのインクを付与する条件、及び表5-1及び5-2に示す条件で、A3サイズの記録媒体に27cm×38cmのベタ画像を記録した。JIS L0849に準じた学振型試験機である耐摩耗試験機(テスター産業製)を使用し、JIS L0803で規定される摩擦用白布(綿)を用いて、記録した画像の表面を荷重500gで150回往復する摩擦試験を行った。摩擦試験後の画像を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって画像の耐擦過性を評価した。
AAA:300回往復後の画像に擦過痕が認められなかった。
AA:300回往復後の画像に擦過痕が認められたが、150回往復後の画像には擦過痕が認められなかった。
A:150回往復後の画像に擦過痕が認められたが、50回往復後の画像には擦過痕が認められなかった。
B:50回往復後の画像に擦過痕が認められたが、記録媒体の白地は見えなかった。
C:50回往復後の画像に擦過痕が認められ、記録媒体の白地が見えていた。
Figure 2023039913000009
Figure 2023039913000010
なお、本実施形態の開示は、以下の方法及び構成を含む。
(方法1)インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
温度T(℃)に加熱した前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して前記記録媒体に付与する工程と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を温度T(℃)に加熱する工程と、を有し、
前記水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、
前記ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下であり、
前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、前記温度T(℃)、及び前記温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
前記記録媒体に付与された前記水性インクに加えられる熱量((W・h)/g)が、2(W・h)/g以上であり、
前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(℃)>T(℃) ・・・(1)
(℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
(℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
(方法2)前記温度T(℃)が、40℃以上であり、
前記温度T(℃)が、90℃以下である方法1に記載のインクジェット記録方法。
(方法3)前記水性インクが、さらに、その沸点が120℃以上220℃以下である第1水溶性有機溶剤を含有し、
前記水性インク中のすべての水溶性有機溶剤のうち、前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が最も多い方法1又は2に記載のインクジェット記録方法。
(方法4)前記第1水溶性有機溶剤のSP値と前記ポリエステル樹脂粒子のSP値との差が、4.0以下であり、
前記水性インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上4.0倍以下である請求項3に記載のインクジェット記録方法。
(方法5)前記水性インクが、さらに、その沸点が220℃を超えて310℃以下である第2水溶性有機溶剤を含有し、
前記第2水溶性有機溶剤のSP値と前記ポリエステル樹脂粒子のSP値との差が、4.0以下である方法1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法6)前記顔料が、アニオン性基の作用によって前記水性インク中に分散されており、
前記顔料のアニオン性基の量(μmol/g)が、前記ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、6.0倍以上である方法1乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法7)前記ポリエステル樹脂粒子の重量平均分子量が、30,000以上70,000以下である方法1乃至6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法8)前記水性インク中の前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.5倍以上である方法1乃至7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(方法9)前記水性インクが、さらに、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びα-オレフィン・無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のワックスで形成されるワックス粒子を含有し、
前記水性インク中の前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記ワックス粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上30.0倍以下である方法1乃至8のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(構成1)インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドから吐出して前記記録媒体に付与する前記水性インクを温度T(℃)に加熱する機構と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を温度T(℃)に加熱する機構と、を備え、
前記水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、
前記ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下であり、
前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、前記温度T(℃)、及び前記温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
前記記録媒体に付与された前記水性インクに加えられる熱量((W・h)/g)が、2(W・h)/g以上であり、
前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
(℃)>T(℃) ・・・(1)
(℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
(℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)

Claims (10)

  1. インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    温度T(℃)に加熱した前記水性インクを前記記録ヘッドから吐出して前記記録媒体に付与する工程と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を温度T(℃)に加熱する工程と、を有し、
    前記水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、
    前記ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下であり、
    前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、前記温度T(℃)、及び前記温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
    前記記録媒体に付与された前記水性インクに加えられる熱量((W・h)/g)が、2(W・h)/g以上であり、
    前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録方法。
    (℃)>T(℃) ・・・(1)
    (℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
    (℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
  2. 前記温度T(℃)が、40℃以上であり、
    前記温度T(℃)が、90℃以下である請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記水性インクが、さらに、その沸点が120℃以上220℃以下である第1水溶性有機溶剤を含有し、
    前記水性インク中のすべての水溶性有機溶剤のうち、前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が最も多い請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1水溶性有機溶剤のSP値と前記ポリエステル樹脂粒子のSP値との差が、4.0以下であり、
    前記水性インク中の前記第1水溶性有機溶剤の含有量(質量%)が、前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.0倍以上4.0倍以下である請求項3に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記水性インクが、さらに、その沸点が220℃を超えて310℃以下である第2水溶性有機溶剤を含有し、
    前記第2水溶性有機溶剤のSP値と前記ポリエステル樹脂粒子のSP値との差が、4.0以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記顔料が、アニオン性基の作用によって前記水性インク中に分散されており、
    前記顔料のアニオン性基の量(μmol/g)が、前記ポリエステル樹脂粒子のアニオン性基の量(μmol/g)に対する比率で、6.0倍以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記ポリエステル樹脂粒子の重量平均分子量が、30,000以上70,000以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 前記水性インク中の前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、1.5倍以上である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記水性インクが、さらに、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリオレフィンワックス、及びα-オレフィン・無水マレイン酸共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のワックスで形成されるワックス粒子を含有し、
    前記水性インク中の前記ポリエステル樹脂粒子の含有量(質量%)が、前記ワックス粒子の含有量(質量%)に対する質量比率で、2.0倍以上30.0倍以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  10. インクジェット方式の記録ヘッドから熱エネルギーの作用により水性インクを吐出し、記録媒体に付与して画像を記録するインクジェット記録方法に用いるインクジェット記録装置であって、
    前記記録ヘッドから吐出して前記記録媒体に付与する前記水性インクを温度T(℃)に加熱する機構と、前記水性インクが付与された前記記録媒体を温度T(℃)に加熱する機構と、を備え、
    前記水性インクが、顔料及びポリエステル樹脂粒子を含有し、
    前記ポリエステル樹脂粒子の数平均分子量に対する重量平均分子量の比が、6.0以下であり、
    前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移温度T(℃)、前記温度T(℃)、及び前記温度T(℃)が、下記式(1)~(3)の関係を満たし、
    前記記録媒体に付与された前記水性インクに加えられる熱量((W・h)/g)が、2(W・h)/g以上であり、
    前記記録媒体が、ブリストー法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
    (℃)>T(℃) ・・・(1)
    (℃)≧T(℃)+10℃ ・・・(2)
    (℃)≧T(℃)-10℃ ・・・(3)
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