JP2023066294A - 2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】収率が高い2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法の提供。【解決手段】下記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる工程を備える、2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。下記式(1)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数2~19のアシル基である。但し、R1、R2及びR3がすべて水素原子の場合を除く。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。TIFF2023066294000012.tif33165【選択図】なし

Description

本発明は、2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法に関する。
2-メチレン-1,3-プロパンジオール(以下、「MPDA」とも称する。)は、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート(以下、「MPDAc」とも称する。)の原料の1種である。MPDAcは、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」とも称する。)の変性剤(コモノマー)等として用いられている。エチレンとビニルエステルとMPDAcとの共重合体をけん化して得られるMPDAc変性EVOHは、非変性のEVOHに対して良好なバリア性を維持しつつ、延伸性及び収縮性が高められているという特徴を有する。
MPDAcの原料の1種であるMPDAを合成する方法として、ペンタエリスリトールを臭素化し、得られたペンタエリスリトールの一臭素化体を塩基と反応させる方法が知られている。非特許文献1には、以下の手順でMPDAが合成されたことが記載されている。ペンタエリスリトールの一臭素化体(pentaerythrityl monobromide;2-(ブロモメチル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオールであり、以下「BrPE」とも称する。)39.8g(0.2mol)をエタノール160mL中に溶かし、13g(0.23mol)の水酸化カリウムエタノール溶液190mLを添加し、2時間室温で撹拌した。その後、5分間加熱還流し、氷浴で冷却し、析出した臭化カリウムをろ過により除去した。次いで、酢酸で中和し、減圧蒸留することにより、4gのMPDAが得られた。また、この合成で16.5gの3,3-ビス(ヒドロキシメチル)-オキセタン(以下、「BHMO」とも称する。)が得られた。
C.H.Issidorides and A.I.Matar、「Pentaerythritol Derivatives. I. The Preparation of Pentaerythritol Monomethyl Ether」、Journal of the American Chemical Society、1955、77(23)、p6382-6383
上記非特許文献1の合成方法においては、39.8g(0.2mol)のBrPEから4g(0.0454mol)のMPDAが得られており、MPDAの収率は23%である。また、MPDAと共に16.5g(0.140mol)BHMOが70%の収率で生成している。このように、上記の合成方法は、MPDAの収率が低く、MPDAの有用な合成方法ではない。
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、収率が高いMPDAの製造方法を提供するものである。
上記の目的は、
[1]下記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる工程を備える、MPDAの製造方法;
Figure 2023066294000001
上記式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数2~19のアシル基である。但し、R、R及びRがすべて水素原子の場合を除く。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
[2]上記反応させる工程を40℃以上120℃以下の温度で行う、[1]のMPDAの製造方法;
[3]上記Xが臭素原子である、[1]又は[2]のMPDAの製造方法;
[4]上記R、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又はアセチル基である、[1]~[3]のいずれかのMPDAの製造方法;
[5]上記反応させる工程の前に、下記式(2)で表される化合物のエステル化により、上記式(1)で表される化合物を得る工程をさらに備える、[1]~[4]のいずれかのMPDAの製造方法;
Figure 2023066294000002
上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
[6]下記式(2)で表される化合物と塩基とを40℃以上120℃以下の反応温度で反応させる工程を備える、MPDAの製造方法;
Figure 2023066294000003
上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
[7]上記反応させる工程で得られた生成物を含む溶液に30℃以下の温度でハロゲン化水素を混合する工程、及び上記ハロゲン化水素を混合する工程を経た上記溶液に塩基を混合する工程をさらに備える[1]~[6]のいずれかのMPDAの製造方法;
を提供することで達成される。
本発明によれば、収率が高いMPDAの製造方法を提供できる。
<第一の形態>
本発明の2-メチレン-1,3-プロパンジオール(MPDA)の製造方法の第一の形態は、下記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる工程(工程B1)を備える。
Figure 2023066294000004
上記式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数2~19のアシル基である。但し、R、R及びRがすべて水素原子の場合を除く。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基(CH-SO-)又はトシル基(CH-C-SO-)である。
当該製造方法によれば、高い収率でMPDAを製造することができる。この理由は定かではないが、以下の理由が推測される。非特許文献1に記載のBrPE(2-(ブロモメチル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール)等と塩基との反応においては、ホルムアルデヒドの脱離によるMPDAの合成反応と、分子内環化によるBHMOの合成反応とが競合し、室温下では分子内環化が支配的になる。なお、BrPEは、後述する式(2)におけるXがBrである化合物である。これに対し、BrPE等が有するヒドロキシ基の一部をエステル化し、エステル化された上記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させた場合、分子内環化が抑制され、脱離反応が生じ易くなる結果、MPDAの収率が高まると推測される。
当該製造方法においては、上記の工程B1の前に、下記式(2)で表される化合物のエステル化により、上記式(1)で表される化合物を得る工程(工程A)をさらに備えることが好ましい。
Figure 2023066294000005
上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基(CH-SO-)又はトシル基(CH-C-SO-)である。
当該製造方法がこの工程Aをさらに備える場合、例えば式(2)におけるXがBrであるBrPE等を原料として用いて、効率的にMPDAを製造することができる。
本発明の第一の形態においては、以下のスキーム1でMPDAを製造することができる。なお、スキーム1には、後述する工程Cも含めて記載している。
Figure 2023066294000006
以下、本発明の第一の形態について、各工程に沿って詳説する。
(工程A)
本工程においては、上記式(2)で表される化合物のエステル化により、上記式(1)で表される化合物を得る。
上記式(2)におけるXとしては、臭素原子が好ましい。
上記式(2)で表される化合物としては、2-ブロモメチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2-クロロメチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。上記式(2)で表される化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。また、上記式(2)で表される化合物は、例えばペンタエリスリトールのハロゲン化、メシル化又はトシル化等の公知の方法により合成することができる。
上記式(2)で表される化合物のエステル化は、上記式(2)で表される化合物と、カルボン酸、カルボン酸の無水物、カルボン酸のハロゲン化物等とを反応させることにより行うことができる。カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸等が挙げられる。カルボン酸としては、炭素数2~19のカルボン酸が好ましく、炭素数2~7のカルボン酸がより好ましく、炭素数2~4のカルボン酸がさらに好ましく、酢酸が特に好ましい。カルボン酸のハロゲン化物としては、塩化物、臭化物等が挙げられる。カルボン酸、カルボン酸の無水物、カルボン酸のハロゲン化物等の中でも、カルボン酸を用いることが好ましい。また、酢酸、無水酢酸又は酢酸のハロゲン化物(塩化アセチル、臭化アセチル等)が好ましく、酢酸がより好ましい。
本工程は、上記式(2)で表される化合物とカルボン酸等とを水、アルコール等の溶媒中で混合することにより行うことができ、この際、加熱して行うことが好ましい。本工程の反応温度(反応液温度)としては、例えば60℃以上120℃以下が好ましく、80℃以上110℃以下がより好ましく、90℃以上100℃未満がさらに好ましい。反応時間としては、例えば5分以上8時間以下が好ましく、15分以上6時間以下がより好ましく、30分以上4時間以下がさらに好ましい。なお、本工程は、加圧又は減圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。また、上記溶媒としては、水が好ましい。本工程に供される反応液には、上記式(2)で表される化合物、カルボン酸等、及び溶媒以外の他の成分がさらに含有されていてもよい。
本工程において用いるカルボン酸等の量としては、上記式(2)で表される化合物1モルに対して、例えば0.2モル以上10モル以下が好ましく、1モル以上5モル以下がより好ましく、1.2モル以上4モル以下がさらに好ましい。本工程においては、反応液中に存在する上記式(2)で表される化合物の少なくとも一部がエステル化すればよい。
本工程を経て得られた上記式(1)で表される化合物を含む溶液中には、副生成物、未反応の上記式(2)で表される化合物、カルボン酸等が存在していてもよい。また、このような溶液をそのまま次の工程B1に用いることができる。得られた溶液を精製等して工程B1に用いてもよい。
(工程B1)
本工程においては、上記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる。この反応においては、塩基が触媒となり、上記式(1)で表される化合物からMPDAが生成される。反応液中に上記式(2)で表される化合物も含まれる場合、この式(2)で表される化合物も、本工程においてMPDAとなる。また、本工程においては、通常、副生成物としてBHMOも生成され得る。
上記式(1)におけるXとしては、臭素原子が好ましい。
上記式(1)におけるR、R及びRで表される炭素数2~19のアシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。炭素数2~19のアシル基としては、炭素数2~7のアシル基が好ましく、炭素数2~4のアシル基がより好ましく、アセチル基が特に好ましい。すなわち、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアセチル基であることが特に好ましい。
上記式(1)中、R、R及びRの全てがアシル基であってもよく、2つのみがアシル基であってもよく、1つのみがアシル基であってもよい。上記式(1)で表される化合物は、1種のみを用いてもよく、又は2種以上の混合物を用いてもよい。
本工程に用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。塩基は、1種又は2種以上を用いることができる。
本工程は、上記式(1)で表される化合物と塩基とを水、アルコール等の溶媒中で混合することにより行うことができ、この際、加熱して行うことが好ましい。本工程の反応温度(反応液温度)の下限としては、40℃が好ましく、60℃がより好ましく、80℃がさらに好ましい。反応温度を上記下限以上とすることで、分子内環化がより抑制され、MPDAの収率をより高めることができる。この反応温度の上限としては、120℃が好ましく、110℃がより好ましく、100℃がさらに好ましい。反応温度を上記上限以下とすることで、その他の副反応が生じることを抑制し、また、塩基によるグラスライニングの溶出に起因する製造装置の腐食を抑制することなどもできる。また、上記溶媒としては、水が好ましい。本工程に供される反応液には、上記式(1)で表される化合物、残存する上記式(2)で表される化合物、塩基、及び溶媒以外の他の成分がさらに含有されていてもよい。
本工程における反応時間としては、例えば5分以上4時間以下が好ましく、10分以上3時間以下がより好ましく、20分以上2時間以下がさらに好ましい。なお、本工程は、加圧又は減圧下で行ってもよく、大気圧下で行ってもよい。
本工程において用いる塩基の量としては、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物の合計1モルに対して、例えば0.5モル以上20モル以下が好ましく、1モル以上15モル以下がより好ましく、2モル以上10モル以下がさらに好ましい。なお、工程Aと工程B1とを連続して行う場合、すなわち上記式(2)で表される化合物を含む溶液にカルボン酸等を添加して上記式(1)で表される化合物が生成した溶液に、塩基を添加して工程B1を行う場合、残存するカルボン酸等と塩基とが中和し、塩基が消費されることがある。従って、残存するカルボン酸等の量を考慮して、添加する塩基の量を調整することが好ましい。
工程B1の後、生成物であるMPDAを含む溶液に対して、公知の方法で精製等をすることにより、MPDAを単離することができる。また、後述するように、原料である上記式(2)で表される化合物を再生する工程(工程C)に供し、MPDAの収率をより高めてもよい。
<第二の形態>
本発明の2-メチレン-1,3-プロパンジオール(MPDA)の製造方法の第一の形態は、下記式(2)で表される化合物と塩基とを40℃以上120℃以下の反応温度で反応させる工程(工程B2)を備える。
Figure 2023066294000007
上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基(CH-SO-)又はトシル基(CH-C-SO-)である。
当該製造方法は、上記式(2)で表される化合物を、エステル化することなくそのまま、比較的高温下での塩基による反応を行う方法である。本発明の第二の形態においては、以下のスキーム2でMPDAを製造する。なお、スキーム2には、後述する工程Cも含めて記載している。当該製造方法によっても、高い収率でMPDAを製造することができる。この理由は定かではないが、以下の理由が推測される。上述のように、非特許文献1に記載のBrPE等と塩基との反応においては、ホルムアルデヒドの脱離によるMPDAの合成反応と、分子内環化によるBHMOの合成反応とが競合し、室温下では分子内環化が支配的になる。そこで、反応温度を高めることにより、分子内環化が抑制され、MPDAの収率が高まると推測される。
Figure 2023066294000008
工程B2は、上記式(1)で表される化合物に替えて、上記式(2)で表される化合物を用い、且つ反応温度を40℃以上120℃以下とすること以外は、上記した工程B1と同様に行うことができる。工程B2における具体的形態及び好適形態は、上記式(2)で表される化合物を用いること以外は、上記した工程B1の具体的形態及び好適形態と同様である。また、工程B2に用いられる上記式(2)で表される化合物の具体的形態及び好適形態は、上記した工程Aに用いられる上記式(2)で表される化合物の具体的形態及び好適形態と同様である。
(工程C等)
本発明の製造方法は、第一の形態及び第二の形態のいずれにおいても、上記式(1)又は上記式(2)で表される化合物と塩基とを反応させる工程(工程B1又は工程B2)で得られた生成物を含む溶液に30℃以下の温度でハロゲン化水素を混合する工程(工程C)、及び
上記ハロゲン化水素を混合する工程(工程C)を経た上記溶液に塩基を混合する工程(工程B1、B2)をさらに備えることが好ましい。
工程B1及び工程B2においては、上述のように、ホルムアルデヒドの脱離によるMPDAの合成反応と、分子内環化によるBHMOの合成反応とが競合する。従って、工程B1又は工程B2を経て得られた、生成物であるMPDAを含む溶液には、通常、副生成物であるBHMOも含まれる。そこで、上記工程Cを行うことで、BHMOが、原料である上記式(2)で表される化合物に再生され、これを再度原料として用いることができる。
この工程Cにおける反応温度(反応液温度)の上限は、30℃が好ましく、20℃がより好ましく、15℃がさらに好ましい。反応温度を上記上限以下とすることで、混合するハロゲン化水素がMPDAと反応することを抑制し、MPDAの収率を高めることができる。この再生工程における反応温度の下限としては、例えば0℃であってもよく、5℃であってもよい。
ハロゲン化水素としては、臭化水素、塩化水素、ヨウ化水素等が挙げられ、臭化水素が好ましい。ハロゲン化水素は1種又は2種以上を用いることができる。ハロゲン化水素は、臭化水素酸、塩酸等の水溶液として用いることができる。
本工程において用いるハロゲン化水素の量としては、溶液中の生成物(MPDA及びBHMO)の合計1モルに対して、例えば0.5モル以上10モル以下が好ましく、1モル以上6モル以下がより好ましい。
本工程における反応時間としては、例えば0.5時間以上12時間以下が好ましく、1時間以上8時間以下がより好ましく、1.5時間以上5時間以下がさらに好ましい。
この工程Cに続けて、例えば、得られた生成物(MPDA及び上記式(2)で表される化合物等)を含む溶液に塩基を混合する工程B2を行うことができる(スキーム2参照)。この工程B2により、再生された上記式(2)で表される化合物がMPDAに変換され、MPDAの収率を高めることができる。工程C後の工程B2は、第二の形態の説明として記載した工程B2と同様に行うことができる。なお、工程Cを経て得られた生成物を含む溶液は、通常、酸性であるため、中和により消費される量を考慮して塩基を用いることが好ましい。また、一端中和処理をした後、工程B2に供してもよい。
また、工程Cに続けて、まず、再生された上記式(2)で表される化合物のエステル化により上記式(1)で表される化合物を得る工程Aを行ってもよい(スキーム1参照)。その後、上記式(1)で表される化合物を含む溶液に塩基を混合することにより、上記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる工程B2を行うことができる。工程C後の工程A、及びその後の工程B1は、第一の形態の説明として記載した工程A及び工程B1と同様に行うことができる。このような工程を行うMPDAを製造することにより、MPDAの収率をより高めることができる。
なお、再生工程を伴うこのスキーム1又はスキーム2のサイクルは2サイクル以上行ってもよい。すなわち、工程Cを2回以上行うサイクルで、MPDAを製造してもよい。複数回の再生処理を行うことで、副生成物であるBHMOを減らし、MPDAの収率をより高めることができる。
(その他の工程等)
当該製造方法においては、最後の工程B1又はB2の後、得られた生成物を含む溶液(生成液)を精製する工程(精製工程)を備えていることが好ましい。精製を行うことで、純度の高いMPDAを得ることができる。MPDAの精製は、従来公知の方法により行うことができる。
また、当該製造方法において、通常、生成液には、臭化ナトリウム等のハロゲン化水素と塩基との塩が含まれる。このようなハロゲンを含む塩は、回収し、公知の方法、例えば硫酸、リン酸等の酸と水中で反応させることで、ハロゲン化水素として再利用することができる。
(用途等)
当該製造方法により得られるMPDAは、従来公知の各種用途に用いることができる。例えば、触媒下、酢酸、無水酢酸等を用いてMPDAをアセチル化することにより、2-メチレン-1,3-プロパンジオールジアセテート(MPDAc)が得られる。MPDAcは、特に変性エチレン-ビニルエステル共重合体(変性EVOH)を製造する際のコモノマーとして好適に用いることができる。このようなMPDAc変性EVOHは、非変性のEVOHに対して良好なバリア性を維持しつつ、延伸性及び収縮性が高められているという特徴を有する。
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態の記載に限定されるものではない。例えば上記した第一の形態において、上記式(2)で表される化合物のエステル化により上記式(1)で表される化合物を得る工程B1を行わなくてもよい。例えば、上記式(1)で表される化合物を購入し、当該化合物を用いて工程B1を行ってもよい。また、エステル化以外の方法によって上記式(1)で表される化合物を合成してもよい。例えば、(a)四酢酸ペンタエリスリトールとハロゲン化水素とを反応させること、(b)四酢酸ペンタエリスリトールとペンタエリスリトールとの任意の比率の混合物とハロゲン化水素とを混合してエステル交換反応を行いつつハロゲン化反応させること、(c)ペンタエリスリトールに酢酸を加えてハロゲン化水素と反応させること等によっても、上記式(1)で表される化合物を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(反応物及び生成物の組成分析)
反応物及び生成物の組成は、H-NMR(測定溶媒:重水)により分析を行った。測定温度は、25℃で行った。各化合物のケミカルシフトは、次の通りである。
2-(ブロモメチル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(BrPE):3.44ppm(6H)、3.33ppm(2H)
2-メチレン-1,3-プロパンジオール(MPDA):5.04ppm(2H)、4.00ppm(4H)
3,3-ビス(ヒドロキシメチル)-オキセタン(BHMO):4.42ppm(4H)、3.69ppm(4H)
上記式(1)におけるRがアセチル基、R及びRが水素原子、XがBrである化合物(アセチル一置換体):3.94ppm(2H)、3.47ppm(4H)、3.36ppm(2H)、1.97ppm(3H)
各化合物の組成比は、H-NMRより求めた。その他の成分の量は、以下の手順で算出した。測定されたH-NMRチャートにおいて、0.5~6ppmのケミカルシフトの全積分値から、溶媒の重水:4.65ppm、酢酸:1.93ppm(3H)、BrPE、MPDA及びBHMO由来の各ピークを除き、その値を8Hの化合物と仮定し、その他の成分の収率を算出した。
[実施例1]MPDAの合成(工程B2:反応液温度95℃)
2-(ブロモメチル)-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(BrPE)100質量部と水100質量部とを還流管付きの三口フラスコ内に入れ、110℃のオイルバス中で反応液温度95℃にて10分間撹拌し、溶解させた。反応液温度95℃の状態で、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液160質量部(2.0モル当量)を加え、反応液温度95℃にて30分間撹拌した。オイルバスから反応器を取り出し、室温に冷却後、H-NMR(測定溶媒:重水)により、2-メチレン-1,3-プロパンジオール(MPDA)、3,3-ビス(ヒドロキシメチル)-オキセタン(BHMO)及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ40%、57%及び3%であった。反応液温度95℃でのMPDAの収率は40%であった。
[実施例2]MPDAの合成(工程B2:反応液温度70℃)
オイルバスの温度を85℃に変更し、反応液温度を70℃に変更した以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ33%、63%及び4%であった。反応液温度70℃でのMPDAの収率は33%であった。
[比較例1]MPDAの合成(工程B2:反応液温度25℃)
オイルバスを用いず、反応液温度を25℃に変更したこと、及び反応時間を4時間としたこと以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ20%、75%及び5%であった。反応液温度25℃でのMPDAの収率は20%であった。
実施例1、2及び比較例1の対比から、反応温度(反応液温度)を40℃以上に高めることで、BHMOの生成が抑制され、MPDAの収率が高まることがわかる。
[実施例3]MPDAの合成(工程A+工程B1:反応液温度95℃)
BrPE100質量部と、水100質量部と、酢酸60質量部とを還流管付きの三口フラスコ内に入れ、110℃のオイルバス中で反応液温度95℃にて10分間撹拌し、溶解させた。さらに、95℃にて2時間エステル化反応を行った。H-NMR(測定溶媒:重水)により、BrPEのエステル化率を確認したところ、上記式(1)のXがBr(臭素)であるアセチル一置換体が32%生成していることが確認された。
その後、反応液温度95℃の状態で、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液320質量部(4.0モル当量)を加え、反応液温度95℃にて30分間撹拌した。オイルバスから反応器を取り出し、室温に冷却後、H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及び酢酸を除くその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ52%、44%及び4%であった。反応液温度95℃で酢酸を加えた際のMPDAの収率は、52%であり、酢酸によりエステル化させた後に塩基による反応を行うことで、より高い収率でMPDAが得られた。
[実施例4-1]MPDA存在下での原料の再生(工程C:反応液温度10℃)
実施例1で得られた生成物を含む溶液360質量部の入った三口フラスコを0℃の氷浴に入れ撹拌し、反応液温度が5℃以下となるように48質量%の臭化水素酸202質量部(2.2モル当量)をゆっくり滴下した。さらに反応液温度を10℃に維持し、3時間撹拌した。反応液温度10℃にて、さらに25質量%水酸化ナトリウム水溶液16質量部を加え中和した。H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO、BrPE及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ40%、0%、57%及び3%であった。反応液温度10℃では、MPDAとHBrとは反応せず、BHMOが定量的にBrPEに変換された。
[実施例4-2]MPDAの合成(工程B2:反応温度95℃)
実施例4-1で得られた生成物を含む溶液578質量部を還流管付きの三口フラスコに入れ、110℃のオイルバス中で反応液温度95℃にて10分間撹拌した。反応液温度95℃の状態で、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液160質量部(2.0モル当量)を加え、反応液温度95℃にて30分間撹拌した。オイルバスから反応器を取り出し、室温に冷却後、H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ63%、31%及び6%であった。本反応で得られたMPDAの収率は63%であり、高い収率でMPDAが得られた。
[実施例5]原料の再生(2回目)及びMPDAの合成
実施例1で得られた生成物を含む溶液360質量部の代わりに、実施例4-2で得られた738質量部の生成物を含む溶液を原料に用いた以外は、実施例4-1及び実施例4-2と同様に原料の再生及びMPDAの合成を行った。H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ75%、17%及び8%であった。本反応で得られたMPDAの収率は75%であり、より高い収率でMPDAが得られた。
[参考例2-1]MPDA存在下での原料の再生(工程C:反応液温度95℃)
実施例1で得られた生成物を含む溶液360質量部の入った三口フラスコを110℃のオイルバスに入れ撹拌し、反応液温度が95℃となるように48質量%の臭化水素酸202質量部(2.2モル当量)をゆっくり滴下した。反応液温度が95℃にてさらに3時間撹拌し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液16質量部を加え中和した。H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO、BrPE及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ2%、0%、57%及び41%であった。反応液温度95℃では、MPDAはHBrと反応し、MPDAを残したままBHMOをBrPEに変換することはできなかった。
[参考例2-2]MPDAの合成(工程B2:反応液温度95℃)
参考例2-1で得られた生成物を含む溶液578質量部を還流管付きの三口フラスコに加え、110℃のオイルバス中で反応液温度95℃にて10分間撹拌した。反応液温度95℃の状態で、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液160質量部(2.0モル当量)を加え、反応液温度95℃にて30分間撹拌した。オイルバスから反応器を取り出し、室温に冷却後、H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ23%、32%及び45%であった。本反応で得られたMPDAの収率は23%であり、MPDAの収率は低かった。
[実施例6-1]アセチル基を有する臭素化ペンタエリスリトールの合成
還流管付きの三口フラスコに四酢酸ペンタエリスリトール304質量部を入れ、酢酸120質量部(2.0モル当量)と無水酢酸510質量部(5.0モル当量)との混合液で溶解した。さらに、48質量%の臭化水素酸169質量部(1.0モル当量)を加え、130℃のオイルバス中で反応液温度118℃にて5時間撹拌し、臭素化反応を行った。還流管を取り外し、連結管、冷却管及びフラスコを備える設備に変更し、200Torrの減圧下、酢酸及び未反応の臭化水素を留去した。オイルバスからフラスコを取り出し、常温に戻したのち、窒素ガスにて常圧に戻した。13C-NMR(測定溶媒:重オルトジクロロベンゼン)により、4級炭素の積分値(40~43ppm、TMS基準)により臭素化率を分析した結果、非臭素化体が35%、一臭素化体(上記式(1)におけるR、R及びRがアセチル基、XがBrである化合物)が55%及び二臭素化体が10%の割合で生成していることが確認された。得られた生成物は、322質量部であった。
[実施例6-2]MPDAの合成(工程B1:反応液温度70℃)
実施例6-1で得られたアセチル基を有する臭素化ペンタエリスリトールの混合物322質量部を含む三口フラスコ中にエタノール461質量部を加えて撹拌及び溶解し、80℃のオイルバス中にフラスコを加え、反応液温度70℃を維持するように15質量%水酸化ナトリウムエタノール溶液1600質量部(6.0モル当量)を徐々に加え、添加後、1時間70℃にて撹拌を行った。室温に冷却後、H-NMR(測定溶媒:重水)により、MPDA、BHMO及びその他の生成物の収率を分析した結果、それぞれ40%、10%及び50%であり、MPDAはBHMOに対して高い選択性で得られた。

Claims (7)

  1. 下記式(1)で表される化合物と塩基とを反応させる工程を備える、2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
    Figure 2023066294000009
    上記式(1)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数2~19のアシル基である。但し、R、R及びRがすべて水素原子の場合を除く。Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
  2. 上記反応させる工程を40℃以上120℃以下の温度で行う、請求項1に記載の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
  3. 上記Xが臭素原子である、請求項1又は2に記載の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
  4. 上記R、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又はアセチル基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
  5. 上記反応させる工程の前に、下記式(2)で表される化合物のエステル化により、上記式(1)で表される化合物を得る工程をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
    Figure 2023066294000010
    上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
  6. 下記式(2)で表される化合物と塩基とを40℃以上120℃以下の反応温度で反応させる工程を備える、2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
    Figure 2023066294000011
    上記式(2)中、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、メシル基又はトシル基である。
  7. 上記反応させる工程で得られた生成物を含む溶液に30℃以下の温度でハロゲン化水素を混合する工程、及び
    上記ハロゲン化水素を混合する工程を経た上記溶液に塩基を混合する工程
    をさらに備える請求項1~6のいずれか1項に記載の2-メチレン-1,3-プロパンジオールの製造方法。
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