JP2023059932A - ツルーイング方法及び面取り装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ツルーイングの転写率、加工性を向上すると共に、ツルアーに形成される溝の精度を向上する。【解決手段】ウェーハWの面取り部を研削する砥石55の溝を円盤状のツルアー41によって形成するツルーイング方法であって、溝の幅より厚さが小さくされたツルアー41の平面を厚さ方向にツルアー41の外周形状よりも小さいテーブル34で固定し、ツルアー41を砥石55に形成する溝の予定位置における上部あるいは下部をツルアー41で加工し、その後、ツルアー41を砥石55に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させて加工する。【選択図】図6
Description
本発明は、シリコン、サファイア、化合物、ガラス等の様々な素材、特に半導体ウェーハ、ガラスパネル等の板状被加工材の端面における高精度な面取り装置に関し、特に板状被加工材に対して砥石を傾けるヘリカル研削に用いられる砥石の加工溝を形成するツルーイング方法及び面取り装置に好適である。
シリコン等は固くてもろく、ウェーハの端面がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウェーハ表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、切り出されたウェーハの端面をダイヤモンドでコートされた面取り砥石で面取りする。
また、スマートフォンやタブレットの薄型化、軽量化のガラス基板にマスキング印刷し、センサー電極形成し、その後に切断することが行われ、面取りの加工品質、加工面粗さ、マイクロクラックの発生などがガラス基板の端面強度に直接影響する。
さらに、通常の研削ではレジン砥石の回転軸に対してウェーハの主面が垂直となる状態で面取り部を研削するが、この場合、面取り部には円周方向の研削痕が発生し易い。そこで、ウェーハに対して例えばレジンボンド砥石(レジン砥石)を傾けてウェーハの面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行うことが知られている。
また、砥石の溝形状を、ツルアーを介して転写し、ウェーハの面取り部を研削するための溝を形成するツルーイングにおいては、ツルアーの反りやうねりを生じやすく、形成される溝の精度、ツルーイング時間等に影響を与え、ツルーイング効率の著しい低下の原因となる。
そして、ヘリカル研削を行う場合、レジン砥石に対し、縁部を上下対称形状に形成したツルアーを用いて溝の形成あるいは修正(ツルーイング)を行うと、レジン砥石に傾斜がついているため、ツルアーにねじれが生じるため、レジン砥石の溝が上下に非対称の形状に加工されてしまう。そのため、ツルアーの縁部を上下非対称の溝形状に成形し、ツルアーと砥石とを相対的に傾けて砥石を研削して溝形状を形成することが知られ、特許文献1に記載されている。
上記従来技術においては、ツルアーを用いて溝の形成を行う際あるいはツルーイングを行う際において、砥石の溝を上下対称的な形状に面取り加工する点では良いが、ツルアーの上下の方向への負荷や、ツルアーが回転方向に変形することについては、変わりは無い。そのため、転写率が悪く、形成される溝の精度、ツルーイング時間等に影響を与え、ツルーイング効率の著しい低下となる。また、ツルアーと砥石との接触面積が広くなるため、キリコの排出性、クーラントの流入が損なわれる。
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ツルーイングの転写率、加工性を向上すると共に、ツルアーによって形成される溝の精度を向上させることにある。特に、溝の精度に関しては、寸法精度のみならず、溝の角度、端部の角に丸味がつかないようにして、形状精度を改善して、最終的な面取り形状の精度を向上することにある。
上記課題を解決するための、本発明の構成は以下のとおりである。
[1] ウェーハの面取り部を研削する砥石の溝を円盤状のツルアーによって形成するツルーイング方法であって、上記ツルアーは、上記溝の幅より厚さが小さくされ、上記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、上記ツルアーを用いて、逆回転する上記上研削砥石と上記下研削砥石とに上記溝が加工されることを特徴とするツルーイング方法。
[2] 上記溝の加工の際、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記回転軸を傾けた状態で上記逆回転する、[1]に記載のツルーイング方法。
[3] ウェーハの面取り部を砥石の溝で研削する面取り装置において、上記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、円盤状で上記溝の幅より厚さが小さくされたツルアーを備え、上記ツルアーを用いて、逆回転する上記上研削砥石と上記下研削砥石とに上記溝が加工されることを特徴とする面取り装置。
[4] 上記溝の加工の際、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記回転軸を傾けた状態で上記逆回転する、[3]に記載の面取り装置。
[1] ウェーハの面取り部を研削する砥石の溝を円盤状のツルアーによって形成するツルーイング方法であって、上記ツルアーは、上記溝の幅より厚さが小さくされ、上記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、上記ツルアーを用いて、逆回転する上記上研削砥石と上記下研削砥石とに上記溝が加工されることを特徴とするツルーイング方法。
[2] 上記溝の加工の際、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記回転軸を傾けた状態で上記逆回転する、[1]に記載のツルーイング方法。
[3] ウェーハの面取り部を砥石の溝で研削する面取り装置において、上記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、円盤状で上記溝の幅より厚さが小さくされたツルアーを備え、上記ツルアーを用いて、逆回転する上記上研削砥石と上記下研削砥石とに上記溝が加工されることを特徴とする面取り装置。
[4] 上記溝の加工の際、上記上研削砥石と上記下研削砥石とは、上記回転軸を傾けた状態で上記逆回転する、[3]に記載の面取り装置。
本発明のツルーイング方法の他の形態は、ウェーハの面取り部を研削する砥石の溝を円盤状のツルアーによって形成するツルーイング方法であって、前記溝の幅より厚さが小さくされた前記ツルアーの平面を厚さ方向に前記ツルアーの外周形状よりも小さいテーブルで固定し、前記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、回転方向が逆回転となるように駆動され、前記面取り部は、前記上研削砥石と前記下研削砥石とで形成された前記溝で前記ウェーハに対して前記回転軸を傾けた状態のヘリカル研削が行われるものであり、前記ツルアーを用いて、前記回転軸を傾けた状態で逆回転する前記上研削砥石と前記下研削砥石とに前記溝が加工されることを特徴とする。
また、本発明の面取り装置の他の形態は、板状の被加工材の端面を砥石の溝で面取り加工する面取り装置において、前記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記被加工材の厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、回転方向が逆回転となるように駆動される前記砥石と、円盤状で前記溝の幅より厚さが小さくされたツルアーと、前記ツルアーの平面を厚さ方向に固定する前記ツルアーの外周形状よりも小さくされたテーブルと、を備え、面取り部は、前記上研削砥石と前記下研削砥石とで形成された前記溝で前記被加工材に対して前記回転軸を傾けた状態のヘリカル研削が行われるものであり、外周部にマスター溝の形状が転写された前記ツルアーを用いて、前記回転軸を傾けた状態で逆回転する前記上研削砥石と前記下研削砥石とに前記溝が加工されることを特徴とする。
また、本発明の他の形態としては、ウェーハの面取り部を研削する砥石(外周精研削砥石55)の溝を円盤状のツルアーによって形成するツルーイング方法であって、前記溝の幅より厚さが小さくされた前記ツルアーの平面を厚さ方向に前記ツルアーの外周形状よりも小さいテーブル(ウェーハテーブル34)で固定し、前記ツルアーを前記砥石に形成する前記溝の予定位置における上部または下部を前記ツルアーで加工し、その後、前記ツルアーを前記砥石に対して相対的に前記厚さ方向に下降あるいは上昇させて加工する。
また、上記において、前記ツルアーの平面に垂直となる前記厚さ方向の軸に対して前記砥石の回転軸は傾いていることが望ましい。
さらに、上記において、前記ツルアーを前記砥石に形成する前記溝の予定位置における上部を前記ツルアーで加工し、その後、前記ツルアーを前記砥石に対して相対的に前記厚さ方向に下降させて前記溝の予定位置の下部まで加工することが望ましい。
さらに、上記において、前記ツルアーを前記砥石に形成する前記溝の予定位置における中央部を前記ツルアーで加工し、その後、前記ツルアーを前記砥石に対して相対的に前記厚さ方向に上昇あるいは下降させて加工することが望ましい。
さらに、上記において、前記ツルアーを前記砥石に対して相対的に前記厚さ方向に揺動させながら加工することが望ましい。
さらに、上記において、前記ツルアーの平面に垂直となる前記厚さ方向の軸に対して前記砥石の回転軸は3~15°傾いていることが望ましい。
さらに、上記において、前記ツルアーの厚さは、前記溝の幅より20~30%小さくされたことが望ましい。
また、本発明は、板状の被加工材の端面を砥石の溝で面取り加工する面取り装置において、円盤状で前記溝の幅より厚さが小さくされたツルアーと、前記ツルアーの平面を厚さ方向に固定する前記ツルアーの外周形状よりも小さくされたテーブルと、を備え、前記ツルアーを前記砥石に形成する前記溝の予定位置における上部あるいは下部を前記ツルアーで加工し、その後、前記ツルアーを前記砥石に対して相対的に前記厚さ方向に下降あるいは上昇させて加工するものである。
さらに、上記のものにおいて、前記ツルアーの平面に垂直となる前記厚さ方向の軸に対して前記砥石の回転軸は傾いていることが望ましい。
さらに、上記のものにおいて、前記砥石は、上研削砥石と下研削砥石とが隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられており、前記溝は前記上研削砥石と前記下研削砥石とで形成されることが望ましい。
本発明によれば、ウェーハの面取り部を研削する砥石の溝の幅より厚さが小さくされたツルアーで溝の予定位置における上部あるいは下部を加工し、その後、ツルアーを砥石に対して相対的に厚さ方向に下降あるいは上昇させて加工するので、ツルーイングの転写率、加工性を向上すると共に、ツルアーに形成される溝の精度を向上することができる。したがって、面取り形状の精度が向上された面取り装置を得ることができる。
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態に係る面取り装置の主要部を示す正面図である。面取り装置10は、ウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50、図示しないウェーハ供給/収納部、ウェーハ洗浄/乾燥部、ウェーハ搬送手段、及び面取り装置各部の動作を制御するコントローラ等から構成されている。
面取り装置でウェーハWは、ウェーハカセット70に入れられた状態から供給回収ロボット40により加工部へ搬送され、回収される(図2参照)。また、通常の研削ではレジン砥石の回転軸に対してウェーハの主面が垂直となる状態で面取り部を研削するが、レジン砥石を傾けてウェーハの面取り部を研削する、いわゆるヘリカル研削を行う。
図1において、ウェーハ送りユニット20は、本体ベース11上に載置されたX軸ベース21、2本のX軸ガイドレール22、22、4個のX軸リニアガイド23、23、… 、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るX軸駆動機構25によって図のX方向に移動されるXテーブル24を有している。
Xテーブル24には、2本のY軸ガイドレール26、26、4個のY軸リニアガイド27、27、… 、図示しないボールスクリュー及びステッピングモータから成るY軸駆動機構によって図のY方向に移動されるYテーブル28が組み込まれている。
Yテーブル28には、2本のZ軸ガイドレール29、29と図示しない4個のZ軸リニアガイドによって案内され、ボールスクリュー及びステッピングモータから成るZ軸駆動機構30によって図のZ方向に移動されるZテーブル31が組み込まれている。
Zテーブル31には、モータ32、θスピンドル33が組み込まれ、θスピンドル33にはウェーハW(板状の被加工材)を吸着載置するウェーハテーブル34が取り付けられており、ウェーハテーブル34はウェーハテーブル回転軸心CWを中心として図のθ方向に回転される。
また、ウェーハテーブル34の下部には、ウェーハWの周縁を仕上げ面取りする砥石のツルーイングに用いるツルーイング砥石41(以下ツルアー41と称する)が、ウェーハテーブル回転軸心CWと同芯になるように固定されている。ツルアー41の材質は、例えば炭化珪素からなる砥粒を、必要に応じて充填剤等も加えてフェノール樹脂で結合し、これを円盤状のツルアー41に成形したものが望ましい。
ウェーハ送りユニット20によって、ウェーハW及びツルアー41は図のθ方向に回転可能とされると共に、X、Y、及びZ方向に移動可能とされる。砥石回転ユニット50は、外周粗研削砥石52が取り付けられ、図示しない外周砥石モータによって軸心を中心に回転駆動される外周砥石スピンドル51、上方に配置されたターンテーブル53に取り付けられた上外周精研スピンドル54及び上外周精研モータ56を有している。同じくターンテーブル53に下固定枠59(図1では、一部切り欠いて図示)を介して下外周精研スピンドル57及び下外周精研モータ(図示せず)が設けられている。
上外周精研スピンドル54及び下外周精研スピンドル57は、ウェーハWの回転軸に対して回転軸が3~15°、望ましくは6~10°傾斜させた状態でウェーハWの外周面取りの仕上げ加工を行う。これにより、ヘリカル研削が行われ、ウェーハWの面取り部には斜め方向に弱い研削痕が発生するものの、通常研削に比べ面取り部の表面粗さが改善される効果が得られる。
上外周精研スピンドル54にはウェーハWの外周を仕上げ研削する面取り用砥石である上外周精研削砥石(上研削砥石)が取り付けられ、同様に、下外周精研スピンドル57には下外周精研削砥石(下研削砥石)が上外周精研削砥石に対してウェーハWの厚さより小さい0.1~1mm程度の隙間を持って回転軸が略同芯となるように取り付けられる。
また、上外周精研削砥石と下外周精研削砥石とは回転方向が逆回転、つまり反対回転となるように上外周精研スピンドル54、下外周精研スピンドル57でそれぞれ駆動される。ウェーハWを加工するための研削溝は、上外周精研削砥石と下外周精研削砥石とで形成される。
ウェーハ加工プロセスは、ブロック切断→オリエンテーションフラット(OF)加工→スライス→面取り→ラップ→エッチング→ドナーキラー→精面取りの順で行われ、工程間には汚れを取り除くため、各種洗浄が用いられる。ブロック切断では、インゴットの両端部(トップとテール)を切断し外周を研削して、長いものは適切な長さで切断され所定の直径を持った円柱状の「ブロック」を作る。
オリエンテーションフラット(OF)加工では、結晶方位を測定し、後の工程で方位が判るように所定の位置にオリエンテーションフラット(OF)又は「ノッチ」を刻み込む。スライスでは、ブロックからダイシングソー、ワイヤーソー、又は内周刃ブレードでウェーハ状に切り出す。直径300mmのブロックは、通常、マルチ・ワイヤーソーによって1度に最大200枚の切断が行われる。
面取りでは、ウェーハの端面がスライシング時の鋭利なままでは、続く処理工程での搬送や位置合わせなどの取り扱い時に容易に割れたり欠けたりして、断片がウェーハ表面を傷つけたり汚染したりする。これを防ぐため、切り出されたウェーハの端面をダイヤモンドでコートされた研削砥石で面取りする。
面取り工程は、ラッピング工程の後に行われることもある。この時、ばらつきのある外周の直径を合わせ、オリエンテーションフラット(OF)の幅の長さを合わせることや、ノッチと呼ばれる微少な切り欠きの寸法を合わせることも含まれる。
図2は、面取り装置10全体の主要部を示す平面図であり、供給回収部は、面取り加工するウェーハWをウェーハカセット70から供給すると共に、面取り加工されたウェーハをウェーハカセット70に回収する。この動作は供給回収ロボット40で行われる。ウェーハカセット70はカセットテーブル71にセットされ、面取り加工するウェーハWが多数枚収納されている。供給回収ロボット40はウェーハカセット70からウェーハWを1枚ずつ取り出したり、面取り加工されたウェーハWをウェーハカセット70に収納したりする。
供給回収ロボット40は3軸回転型の搬送アーム80を備えており、搬送アーム80は、その上面部に図示しない吸着パッドを備えている。搬送アーム80は、吸着パッドでウェーハの裏面を真空吸着してウェーハWを保持する。すなわち、この供給回収ロボット40の搬送アーム80は、ウェーハWを保持した状態で前後、昇降移動、及び旋回することができ、この動作を組み合わせることによりウェーハWの搬送を行う。
面取り装置10は正面部に配置されており、ウェーハWの外周面取りの全加工、すなわち、粗加工から仕上げ加工までを行う。この面取り装置10はウェーハ送りユニット20、砥石回転ユニット50から構成されている。
図3は、加工部の構成を示す平面図であり、加工開始前の待機状態では、ウェーハテーブル34に保持されるウェーハWは、その中心がウェーハテーブル34の回転軸と一致するように配置される。このとき、ウェーハWのOF部は所定方向を向くように配置される。
また、外周粗研削砥石52及び外周精研削砥石55は、ウェーハWからそれぞれ所定距離だけ離れた位置にある。具体的には、外周粗研削砥石52の回転中心はウェーハWの回転中心に対してY軸方向に所定距離だけ離れた位置に配置され、かつその回転中心はウェーハWに対してX軸方向に所定距離だけ離れた位置に配置される。
まず始めに、アライメント動作が行われる。このアライメント動作では、ウェーハテーブル34に保持されたウェーハWと外周粗研削砥石52及び外周精研削砥石55との上下方向(Z軸方向)について相対的な位置関係が調整される。
アライメント動作が完了したら、外周砥石スピンドル51が駆動される。次に、外周粗研削砥石52による研削(粗加工)を開始する。具体的には、外周粗研削装置62のY軸モータ(図示せず)が駆動され、外周砥石スピンドル51がY軸方向に沿ってウェーハテーブル34に向かって送られる。
ウェーハテーブル34に向かって外周砥石スピンドル51が送られると、ウェーハWの外周が外周粗研削砥石52に形成された外周粗研削用の研削溝に接触し、ウェーハWの外周部が外周粗研削砥石52により研削されて、ウェーハWの外周面取りの粗加工が開始される。
外周粗研削砥石52による粗加工が開始された後、ウェーハテーブル34に保持されたウェーハWが一定速度で矢印方向に回転を開始する。この回転角度、つまり加工点が直線部となるOF部に至ると、外周砥石スピンドル51をY方向、ウェーハテーブル34に向かう送り量を多くすると共に、外周砥石スピンドル51をX方向に直線移動させ直線部を加工する。その後、直線部の加工を終了すると、再び、ウェーハテーブル34に保持された板状のウェーハWを一定速度で矢印方向に回転させ、残りの円形部を研削して外周粗研削砥石52による粗加工を終了する。
次に、外周精研削砥石55による仕上げ加工が同様に行われる。さらに、外周精研削砥石55は、面取り用加工溝がツルアー41によって形成される。
外周精研削砥石55である上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2による仕上げ加工が同様に行われる。上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2は、ダイヤモンド砥粒のレジンボンド砥石が適している。また、上外周精研スピンドル54及び下外周精研スピンドル57は、同芯とされ、その回転軸をウェーハテーブル34の回転軸に対してウェーハWの外周の接線方向に3~15°、望ましくは6~10°、つまり、ウェーハWの面に垂直な方向に対して傾斜させた状態でウェーハWの外周面取りの仕上げ加工が行われる。
また、上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2は、一組となって、面取り用加工溝がツルアー41によって形成される。また、上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2は同じ材料で、例えば、Fe、Cr、Cu等の金属粉等を主成分とし、ダイヤモンド砥粒を混ぜて成形したものが用いられる。その材質は、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂又はポリエチレン樹脂等を主成分とし、ダイヤモンド砥粒や立方晶窒化ホウ素砥粒を混ぜて成形したものが望ましい。
さらに、上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2は、直径50mmのダイヤモンド砥粒のレジンボンド砥石で、粒度#3000が用いられる。上外周精研スピンドル54及び下外周精研スピンドル57は、エアーベアリングを用いたビルトインモータ駆動のスピンドルで、回転速度35,000rpmで回転される。
ツルアー41の材質は、外周粗研削砥石52によって加工することができる一方、上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2を研削することができるものを採用する。例えば炭化珪素からなる砥粒を、必要に応じて充填剤等も加えてフェノール樹脂で結合し、これを円盤状のツルアー41に成形したものが望ましい。また、ツルアー41は、加工されるウェーハWと同等以下の外径であり、同厚の円盤状GC(Green silicon carbide)砥石、又はWA(White fused alumina)砥石でも良く、砥石の粒度は#320程度が良い。
また、研削砥石は、ポーラスな表面を有する面取り砥石素材に飽和脂肪酸溶液と共に潤滑剤を供給し、表面を乾燥させて潤滑剤含浸砥石とし、この潤滑剤を含む砥石を研削時に水冷却で使用することが望ましい。
図4は、外周精研スピンドル部におけるウェーハWを加工中の状態を示す側面図であり、上外周精研スピンドル54及び下外周精研スピンドル57の回転方向と力、クーラント液の流入、滞留、切屑の排出の関係を示している。上外周精研スピンドル54は左回転(矢印Aが示す方向図面視左から右へ回転)し、ウェーハWの回転軸に対して時計方向に傾斜、図で左から右に下方に傾斜しているので、ウェーハWに対して矢印Aのように力が加わる。
ウェーハWは中央が保持され、外周は自由端となっているので、分力により下に曲げられるようになる。一方、下外周精研スピンドル57は、右回転(矢印Bが示す方向図面視右から左へ回転)し図で右から左に上方に傾斜しているので、ウェーハWに対して矢印Bのように力が加わる。
上外周精研削砥石55-1と下外周精研削砥石55-2との隙間は回転軸方向に中央で対称となっているので、ウェーハWと上外周精研削砥石55-1及び下外周精研削砥石55-2との接触面積は等しくなる。したがって、それぞれの研削抵抗がつり合い、ウェーハWを曲げるような力を生じない。これにより、ウェーハWが中心から先端に架けて曲げ変形することがなく、曲げ変形による加工面の形状精度に影響を与えることがない。また、上外周精研削砥石55-1と下外周精研削砥石55-2の回転軸は略同芯となっている。
矢印C、Dは、クーラント液の流入方向を示し、ウェーハWの上側は、上外周精研削砥石55-1の回転方向、反時計方向に沿って、図4で左側からウェーハWの外周から中心に向かって流入させる。下側は、下外周精研削砥石55-2の回転方向、時計方向に沿って、図4で右側からウェーハWの外周から中心に向かって流入させる。
図5は、ツルーイング加工を示した側面図であり、ツルアー41は、ウェーハテーブル34の下部にウェーハテーブル回転軸心と同芯で取付けられ、ウェーハテーブル34で回転される。ウェーハテーブル34は、ツルアー41の外周形状よりも小さくされている。ツルーイング動作は、最初にマスター砥石(図示せず)でツルアー41の外周に面取り加工を行う。この加工においては、マスター砥石が回転速度8,000rpmで回転されている。この状態でZテーブル31がZ軸駆動機構30によって移動され、ツルアー41の高さがマスター砥石のマスター溝に一致する高さに位置決めされる。
ツルアー41の外周部が面取りされ、ツルアー41の外周部にマスター溝の形状が転写される。外周部にマスター溝の断面形状が転写されたツルアー41を用いて、回転軸がウェーハWの接線方向に傾斜した上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2に溝を形成する。外周精研削砥石55に形成される溝は、ウェーハWの外径Dと同等の外径を有するツルーイング砥石で形成したものと同等となる。
図8は、従来技術によるツルーイング加工時にツルアー41へ加わる力を矢印で示している。なお、上記の説明では外周精研削砥石55を上外周精研削砥石55-1、下外周精研削砥石55-2とで一組として説明したが、図8では従来通り、上下に分離されていないものとして示している。
外周精研削砥石55は、左回転(矢印Iが示す方向)し、図8で左から右に下方に傾斜しているので、ツルアー41に対して矢印Iのように力が加わる。そして、ツルアー41は、矢印G、Hに示すようにモーメントを受けて変形する。したがって、転写率が悪く、形成される溝の精度、ツルーイング時間等に影響を与え、ツルーイング効率の著しい低下となる。
図9は、図8と同様に従来技術によるツルーイング加工時にツルアー41と外周精研削砥石55との接触する範囲を矢印Jで示している。ツルアー41と外周精研削砥石55との接触面積は、外周精研削砥石55が傾斜する分広くなる。そのため、キリコの排出性、クーラントの流入が損なわれ、加工性が劣化する。
図8、図9の場合、特に、加工される溝形状における右側上端の角部は、ツルアー41の変形により正確な形状とすることが困難であり、加工半径Rの精度が劣化する。
図6、図7は、一実施形態による加工方法を示す説明図であり、ツルアー41により外周精研削砥石55を加工する。ヘリカル研削を行うため、外周精研削砥石55の回転軸を3~15°、望ましくは6~10°ツルアー41の平面に垂直となるツルアー41の厚さ方向の軸に対して傾けるので、ツルアー41の厚さtは、外周精研削砥石55の溝幅hより少なくとも20~30%小さくする。
図6は、上部のツルーイング加工を示し、図7は、下部のツルーイング加工を示している。図6でツルアー41の上面を外周精研削砥石55に形成する溝の予定位置における上部に位置を合わせる。外周精研削砥石55をツルアー41の端面に垂直方向となるX方向より押し付けて当接して切り込んで行く。逆にツルアー41を外周精研削砥石55に対してX方向へ切り込んで行くことでも良い。
このとき、図8で説明したように、ツルアー41に対して下向きの力が加わるが、ツルアー41の厚さtは、外周精研削砥石55の溝厚さhより小さくされているので、その分、研削抵抗が小さくなる。
次に、溝の下部に向かって矢印Z方向へ徐々に下降させてツルーイングを行う。最終的には図7に示すように形成すべき溝の下部に位置が合うまで進めて行く。加工の順番は、上記の逆、即ち下部を加工してからツルアー41を上昇させて上部を加工しても良い。即ち、図6と図7の順番は逆にしても良く、いずれにしてもツルアー41をZ方向に揺動させながらツルーイングを行う。これにより、加工性、クーラントの流入、キリコの排出が改善され、転写率の向上が可能となる。
また、上部の研削(図6)、下部の研削(図7)の順で説明したが、これに限ることなく、中央部の研削(図示せず)、上部の研削(図6)、下部の研削(図7)の順、中央部の研削(図示せず)、下部の研削(図7)、上部の研削(図6)の順でも良い。中央部の研削(図示せず)を先に行うことが、先に形状を削り出すことができる点、その後、より慎重、正確に上部の研削(図6)、下部の研削(図7)を行える点では優れている。
さらに、これらの順番を繰り返す、例えば上部の研削(図6)から下部の研削(図7)を行い、下部の研削(図7)から上部の研削(図6)を再び行うことで切り込み量を小さくして、所望の値まで徐々にZ方向に揺動しながら切り込むと良い。これによれば、ツルアー41へ加わる力をより小さくして、変形による加工精度への影響を小さくすることができる。
さらに、ツルアー41の上面を外周精研削砥石55に形成すべき溝の上部に位置を合わせるとして説明したが、ツルアー41の上面を形成すべき溝の上部よりやや下に合わせ、その後、溝の上部における角部の加工を行うことも良い。この際、ツルアー41の切り込みを小さくして上下に繰り返すことが望ましい。これによれば、角部の形状、半径、丸味等をより精度良く行うことができる。
なお、ツルーイングは、研削能力の低下に伴い、所定の外周面幅、外周角度、外周形状を満たさなくなったとき、ツルアー41を用いて適宜溝の修正(ツルーイング)を行う。このとき、本発明により砥石の溝のツルーイングを行えば、1回あたりのツルーイングに対して加工できるウェーハの枚数が増えるほか、レジン砥石であっても寿命が延びて1つのレジン砥石で加工できるウェーハの枚数が増える。従って、半導体ウェーハの製造におけるコストの低減にもつながる。
W…ウェーハ、10…面取り装置、11…本体ベース、20…ウェーハ送りユニット、21…X軸ベース、22…X軸ガイドレール、23…X軸リニアガイド、24…Xテーブル、25…X軸駆動機構、26…Y軸ガイドレール、27…Y軸リニアガイド、28…Yテーブル、29…Z軸ガイドレール、30…Z軸駆動機構、31…Zテーブル、32…モータ、33…θスピンドル、34…ウェーハテーブル、40…供給回収ロボット、41…ツルアー、50…砥石回転ユニット、51…外周砥石スピンドル、52…外周粗研削砥石、53…ターンテーブル、54…上外周精研スピンドル、55…外周精研削砥石、55-1…上外周精研削砥石(上研削砥石)、55-2…下外周精研削砥石(下研削砥石)、56…上外周精研モータ、57…下外周精研スピンドル、59…下固定枠、62…外周粗研削装置、70…ウェーハカセット、71…カセットテーブル、80…搬送アーム
Claims (4)
- ウェーハの面取り部を研削する砥石の溝を円盤状のツルアーによって形成するツルーイング方法であって、
前記ツルアーは、前記溝の幅より厚さが小さくされ、
前記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、
前記ツルアーを用いて、逆回転する前記上研削砥石と前記下研削砥石とに前記溝が加工されることを特徴とするツルーイング方法。 - 前記溝の加工の際、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記回転軸を傾けた状態で前記逆回転する、請求項1に記載のツルーイング方法。
- ウェーハの面取り部を砥石の溝で研削する面取り装置において、
前記砥石は上研削砥石と下研削砥石とで構成され、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記ウェーハの厚さより小さい隙間を有して回転軸が略同芯となるように取り付けられ、
円盤状で前記溝の幅より厚さが小さくされたツルアーを備え、
前記ツルアーを用いて、逆回転する前記上研削砥石と前記下研削砥石とに前記溝が加工されることを特徴とする面取り装置。 - 前記溝の加工の際、前記上研削砥石と前記下研削砥石とは、前記回転軸を傾けた状態で前記逆回転する、請求項3に記載の面取り装置。
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