JP2023058182A - シーラントフィルム、積層体及び包装袋 - Google Patents

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Haruna Kadoya
茂樹 工藤
Shigeki Kudo
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Eiichiro Kasado
秀夫 上田
Hideo Ueda
慎一 藤村
Shinichi Fujimura
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Abstract

Figure 2023058182000001
【課題】シール強度及び耐衝撃性に優れたポリエステル系のシーラントフィルムを提供すること。
【解決手段】テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いた(A)ベースポリエステル樹脂と、(A)ベースポリエステル樹脂に対して非相溶である(B)ポリエステルエラストマー樹脂と、を含有し、(B)ポリエステルエラストマー樹脂が、芳香族ジカルボン酸を含む酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリオキシアルキレングリコールを含むジオール成分とを用いた樹脂であり、長手方向及び幅方向の少なくとも一方の23℃における引張弾性率が300~1000N/mmである、シーラントフィルム。
【選択図】図1

Description

本開示は、シーラントフィルム、積層体及び包装袋に関する。
環境対応の一環として、ビン、缶からの置き換えのためにプラスチックフィルムからなる軟包袋が普及している。特に、自立性や大容量化の観点から優れた包装袋として、自立性包装袋、いわゆるスタンディングパウチが知られており、液体スープ等の食品や、トイレタリー用の詰替パウチとして広く用いられている。
大容量化に対応する観点から、包装袋の最内層であるシーラント層には、一般にシール性と耐衝撃性に優れるポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムが用いられる。しかし、ポリオレフィン系フィルムは内容物である化成品の有効成分や香気成分を吸着するという欠点がある。また、ポリオレフィン系フィルムはフィルムが柔軟であるがゆえに、内容物を使用して内容量が減少するとパウチがお辞儀するように折れ曲がり、保管性に劣るという欠点がある。
一方、内容物の低吸着性や剛性に優れたシーラントフィルムとして、ポリエステル系フィルムがある。ポリエステル系フィルムはこれらの性能が優れる一方、ポリオレフィン系フィルムと比較してシール強度が劣るという欠点がある。これに対し特許文献1では、ポリエステル系フィルムに用いる非晶性モノマーの種類や比率、成膜条件によって結晶融解熱容量を制御し、高いシール強度を得る試みがなされている。
特開2018-188668号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された方法を以てしてもなお、ポリエステル系フィルムのシール強度は十分とは言えず、その用途はプラスチック容器のフタ材やパッチ薬の包装袋など、シール強度や耐衝撃性の要求レベルが比較的低い用途に限定されている。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シール強度及び耐衝撃性に優れたポリエステル系のシーラントフィルム、並びに、それを用いた積層体及び包装袋を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本開示は、テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いた(A)ベースポリエステル樹脂と、上記(A)ベースポリエステル樹脂に対して非相溶である(B)ポリエステルエラストマー樹脂と、を含有し、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂が、芳香族ジカルボン酸を含む酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリオキシアルキレングリコールを含むジオール成分とを用いた樹脂であり、長手方向及び幅方向の少なくとも一方の23℃における引張弾性率が300~1000N/mmである、シーラントフィルムを提供する。
上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂は、芳香族ジカルボン酸を含む酸成分及び1,4-ブタンジオールを含むジオール成分により構成されるハードセグメントと、ポリオキシアルキレングリコールにより構成されるソフトセグメントとを有する。かかる(B)ポリエステルエラストマー樹脂を用いることで、シーラントフィルムの柔軟性及び耐衝撃性を向上させることができる。そして、上記特定の構造を有する(B)ポリエステルエラストマー樹脂が、(A)ベースポリエステル樹脂に対して非相溶の状態で存在することで、シーラントフィルムは、(A)ベースポリエステル樹脂の持つシール性能と、(B)ポリエステルエラストマー樹脂の持つ柔軟性及び耐衝撃性とを併せ持つことができる。なお、(B)ポリエステルエラストマー樹脂が(A)ベースポリエステル樹脂と相溶した場合、それぞれの成分の機能が阻害されることとなり、シール性能と耐衝撃性との両立が困難となる。更に、上記シーラントフィルムは、長手方向及び幅方向の少なくとも一方の23℃における引張弾性率が300~1000N/mmであることで、より優れた耐衝撃性を得ることができる。すなわち、本開示のシーラントフィルムによれば、上記特定の構造を有する(B)ポリエステルエラストマー樹脂を、(A)ベースポリエステル樹脂と非相溶状態で含有すると共に、引張弾性率を特定の範囲内とすることで、優れたシール強度と優れた耐衝撃性とを両立させることができる。また、本開示のシーラントフィルムはポリエステル系フィルムであるため、スタンディングパウチのような自立性があり内容量の多い包装袋にも使用可能である。
上記シーラントフィルムにおいて、上記(A)ベースポリエステル樹脂を構成する上記ジオール成分は、上記エチレングリコール以外の脂肪族グリコール、及び、脂環式グリコールからなる群より選択される少なくとも一種を更に含んでもよい。これにより、シーラントフィルムのシール強度をより向上させることができる。
上記シーラントフィルムにおいて、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する上記1,4-ブタンジオールの含有量は、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂のジオール成分全量を基準として80モル%以上であってもよい。これにより、(B)ポリエステルエラストマー樹脂の(A)ベースポリエステル樹脂に対する非相溶性を高め易く、シーラントフィルムの優れたシール強度と優れた耐衝撃性とを両立させ易い。
上記シーラントフィルムにおいて、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する上記酸成分は、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよい。これにより、シーラントフィルムの耐衝撃性をより向上させることができる。
上記シーラントフィルムにおいて、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する上記ポリオキシアルキレングリコールの含有量は、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂全量を基準として35~55質量%であってもよい。これにより、良好な成膜性を示しつつ、シーラントフィルムの柔軟性及び耐衝撃性をより向上させることができる。
上記シーラントフィルムは、20℃から250℃までの範囲の示差走査熱量測定を行った場合、以下の条件(1)及び(2)の少なくとも一方を満たすものであってよい。これにより、シーラントフィルムを既存のポリオレフィン系フィルムと同様の温度及び装置でシールすることが可能となる。
(1)ガラス転移温度が50℃以上90℃以下である。
(2)0.5J/g以上の融解熱量を示す融解ピーク温度が140℃以上180℃以下である。
上記シーラントフィルムにおいて、上記(B)ポリエステルエラストマー樹脂の含有量は、上記シーラントフィルム全量を基準として5~60質量%であってもよい。これにより、シーラントフィルムの柔軟性及び耐衝撃性をより向上させることができる。
本開示はまた、基材層と、上記シーラントフィルムと、を備える積層体を提供する。かかる積層体は、優れたシール強度及び優れた耐衝撃性を得ることができる。
上記積層体において、上記基材層が、テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いたポリエステル樹脂からなる層を含んでいてもよい。
上記積層体において、上記基材層が、無機酸化物を含有する蒸着層を含んでいてもよい。
本開示はまた、上記積層体の上記シーラントフィルム同士を貼り合わせてなる包装袋を提供する。かかる包装袋は、優れたシール強度及び優れた耐衝撃性を得ることができる。
上記包装袋は、自立性を有してもよい。
本開示によれば、シール強度及び耐衝撃性に優れたポリエステル系のシーラントフィルム、並びに、それを用いた積層体及び包装袋を提供することができる。本開示のシーラントフィルム及び積層体は、スタンディングパウチのような自立性があり内容量の多い包装袋にも使用可能である。
図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。 図2は、一実施形態に係る自立性包装袋の正面図を示す。 図3は、図2における破線Cに沿った自立性包装袋の断面図を示す。 図4は、一実施形態に係るシーラントフィルムの模式断面図を示す。 図5は、実施例3及び比較例1で得られたシーラントフィルムの断面の原子間力顕微鏡写真を示す。
以下、場合により図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
<シーラントフィルム>
本実施形態に係るシーラントフィルムは、(A)ベースポリエステル樹脂と、(A)ベースポリエステル樹脂に対して非相溶である(B)ポリエステルエラストマー樹脂とを含有するポリエステル系シーラントフィルムである。
(A)ベースポリエステル樹脂は、テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いた樹脂である。(A)ベースポリエステル樹脂を構成する酸成分は、テレフタル酸を主たる成分とすることが好ましい。また、(A)ベースポリエステル樹脂を構成するジオール成分は、エチレングリコールを主たる成分とすることが好ましい。ここで、主たる成分とは、酸成分の全量又はジオール成分の全量を基準として、50モル%以上含まれる成分を意味する。
(B)ポリエステルエラストマー樹脂は、芳香族ジカルボン酸を含む酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリオキシアルキレングリコールを含むジオール成分とを用いた樹脂である。
シーラントフィルムは、非晶部、又は、非晶部と結晶部とからなり、ガラス転移温度以上に加熱された際の非晶部の流動と、融点以上に加熱された際の結晶部の流動によりシール強度が発現する。ガラス転移温度及び融点が低いほど、低温又は高速度でのシール及び製袋が可能となる。シーラントフィルムのガラス転移温度は50~90℃、融点は140~180℃であってもよい。これにより、シーラントフィルムを既存のポリオレフィン系フィルムと同様の温度及び装置でシールすることが可能となる。
シーラントフィルムのガラス転移温度及び融点を制御する手段としては、例えば、(A)ベースポリエステル樹脂を構成する酸成分全量を基準として、テレフタル酸50~95モル%に対して、テレフタル酸以外の他の酸成分(ジカルボン酸類)を50~5モル%用いる方法、及び、(A)ベースポリエステル樹脂を構成するジオール成分全量を基準として、エチレングリコール50~95モル%に対し、エチレングリコール以外の他のジオール成分(ジオール類)を50~5モル%用いる方法等が挙げられる。酸成分及びジオール成分の両方に、上記他の成分を用いてもよいし、いずれか一方に用いてもよい。
(A)ベースポリエステル樹脂に用いるテレフタル酸以外の他のジカルボン酸類としては、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。シーラントフィルムのガラス転移温度及び融点を適切な範囲に制御するために、(A)ベースポリエステル樹脂は非晶質化することが好ましく、その観点から、ジカルボン酸類としては、テレフタル酸とイソフタル酸とを使用し、酸成分総量を基準としたイソフタル酸の含有量を5~50モル%の範囲とすることが好ましい。一方、シーラントフィルムの耐衝撃性をより高める観点からは、酸成分としてテレフタル酸のみを用いることが好ましい。
(A)ベースポリエステル樹脂に用いるエチレングリコール以外の他のジオール類としては、例えば、脂肪族グリコール及び脂環式グリコールが挙げられる。他のジオール類としてより具体的には、例えば、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バイオマス由来のエチレングリコールや2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールを用いてもよい。シーラントフィルムのガラス転移温度及び融点を適切な範囲に制御するために、(A)ベースポリエステル樹脂は非晶質化することが好ましく、その観点から、ジオール類としては、エチレングリコールと1,4-シクロヘキサンジメタノール又は2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールとを使用し、ジオール成分総量を基準とした1,4-シクロヘキサンジメタノール又は2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールの含有量を15~50モル%の範囲とすることが好ましい。
(A)ベースポリエステル樹脂は、上述した酸成分とジオール成分とを脱水縮合してエステル化することで得ることができる。また、(A)ベースポリエステル樹脂は、エラストマー成分を含まないものであり、(B)ポリエステルエラストマー樹脂に用いられるポリオキシアルキレングリコールを含まないものである。
(B)ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメントを構成する芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また、(B)ポリエステルエラストマー樹脂のハードセグメントを構成するジオール成分(ジオール類)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。ジオール類は、1,4-ブタンジオールを少なくとも含む。1,4-ブタンジオールを用いることで、(A)ベースポリエステル樹脂との非相溶性を確保し、シーラントフィルムの耐衝撃性を向上させることができる。なお、(A)ベースポリエステル樹脂との非相溶性をより高める点から、1,4-ブタンジオール単位の含有量は(B)ポリエステルエラストマー樹脂のジオール成分全量を基準として、80モル%以上であってもよい。また、シーラントフィルムの融点を適切な範囲に制御し、既存のポリオレフィン系フィルムと同様の温度及び装置でシール可能とする観点から、芳香族ジカルボン酸類としてテレフタル酸とイソフタル酸とを組合せ、酸成分総量を基準としたイソフタル酸の含有量を10~40モル%の範囲とすることが好ましい。
(B)ポリエステルエラストマー樹脂のソフトセグメントを構成する成分として、ポリオキシアルキレングリコールが用いられる。ポリオキシアルキレングリコールとしては、ポリオキシトリメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等が挙げられる。なかでもポリオキシテトラメチレングリコールを用いることで、(A)ベースポリエステル樹脂に対する非相溶性、並びに、シール強度及び耐衝撃性をより向上させることができる。
ポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量は、シーラントフィルムの耐衝撃性をより高める観点から、500~3000であってもよく、1000~2000であってもよい。上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
ポリオキシアルキレングリコールの含有量は、(B)ポリエステルエラストマー樹脂全量を基準として35~55質量%であることが好ましく、40~50質量%であることがより好ましい。この含有量が35質量%以上であると、シーラントフィルムの融点を低下させ易く、柔軟性と耐衝撃性をより向上させることができる傾向があり、55質量%以下であると、シーラントフィルムの粘つきを低減し、成膜性を向上させることができる傾向がある。
(B)ポリエステルエラストマー樹脂は、上述した酸成分とジオール成分とソフトセグメント成分とを脱水縮合してエステル化することで得られる。なお、エステル交換反応により(B)ポリエステルエラストマー樹脂を合成する場合、芳香族ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸エステルの状態で用いることができる。
シーラントフィルムにおける(B)ポリエステルエラストマー樹脂の含有量は、シーラントフィルム全量を基準として60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。この含有量が60質量%以下であると、エラストマー成分の分散によるシーラントフィルムの透明性低下や、押出した際の冷却ロールへのシーラントフィルムの貼りつき、及び、フィルム同士の融着等が生じることを抑制し易い傾向がある。一方、シール性や柔軟性及び耐衝撃性の観点から、(B)ポリエステルエラストマー樹脂の含有量は5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましい。
シーラントフィルムは、(A)ベースポリエステル樹脂及び(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する成分の種類や割合のほか、シーラントフィルムを成膜する際の冷却温度を変えることで、結晶化の進行の程度、いわゆる結晶化度を調整し、同一材料であっても異なる結晶化度を得ることができる。更に、成膜したシーラントフィルムに熱処理や延伸処理を施すことによっても、結晶化度を調整することができる。
シーラントフィルムに用いる(A)ベースポリエステル樹脂と(B)ポリエステルエラストマー樹脂とは非相溶である。これらが非相溶であることによって、(A)ベースポリエステル樹脂の持つシール性能と、(B)ポリエステルエラストマー樹脂の持つ柔軟性及び耐衝撃性とを併せ持ったシーラントフィルムを得ることができる。反対に、両者に高い相溶性がある場合、(B)ポリエステルエラストマー樹脂が(A)ベースポリエステル樹脂のシールを阻害し、シール強度が低下する、及び/又は、(B)ポリエステルエラストマー樹脂によるシーラントフィルムへの柔軟性及び耐衝撃性の付与が(A)ベースポリエステル樹脂により阻害され、柔軟性及び耐衝撃性が低下することとなる。
ここで、非相溶とは、主たる材料のマトリクスに対しもう一方の材料が分散相として存在するいわゆる海島構造や、2種類の材料がそれぞれ連続相を成す層状構造であることを指す。
図4は、一実施形態に係るシーラントフィルムの模式断面図を示す。非相溶であるとは、主たる材料のマトリクスに対しもう一方の材料が、島の最大径が100nm以上の海島構造で分散する、又は、サイズを問わず層状構造で分散することを意味する。また、示差走査型熱量分析(DSC)において、ガラス転移温度(Tg)及び/又は融点(Tm)に関して、それぞれの樹脂に由来するベースラインシフト及び/又はピークが観測された場合に、非相溶であると判定することも可能である。図4に示すシーラントフィルム100においては、(A)ベースポリエステル樹脂101のマトリクスに対し、(B)ポリエステルエラストマー樹脂が非相溶状態で分散している。
シーラントフィルムは、(A)ベースポリエステル樹脂、及び、(B)ポリエステルエラストマー樹脂以外の他の成分を、本開示の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。他の成分としては、(A)ベースポリエステル樹脂及び(B)ポリエステルエラストマー樹脂以外の樹脂、帯電防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、離型剤、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、顔料、染料等が挙げられる。他の成分の合計の含有量は、シーラントフィルム全量を基準として、3質量%以下であってもよい。すなわち、シーラントフィルムにおける(A)ベースポリエステル樹脂及び(B)ポリエステルエラストマー樹脂の合計の含有量は、97質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
本実施形態に係るシーラントフィルムは、長手方向及び幅方向の少なくとも一方の23℃における引張弾性率が300~1000N/mmである。この引張弾性率が1000N/mm以下であることで、シーラントフィルムの柔軟性及び耐衝撃性がより向上し、落下時の破袋リスクをより低減することができる。上記観点から、引張弾性率は低い方が望ましいが、現状得られる下限は300N/mm程度である。引張弾性率は、上記効果をより十分に得る観点から、300~900N/mmであってもよく、300~600N/mmであってもよく、300~500N/mmであってもよい。
シーラントフィルムにおける長手方向は、成膜時の流れ方向を指し、幅方向は、上記流れ方向に垂直な方向を指す。
本実施形態に係るシーラントフィルムは、厚さ12~50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと貼り合わせ、シーラントフィルム同士をシール温度200℃、シール時間5秒、シール圧0.5MPaの条件でヒートシールしたときのシール強度が30~80N/15mmであることが好ましく、35~80N/15mmであることがより好ましく、40~80N/15mmであることが更に好ましい。シール強度が30N/15mm以上であると、落下による衝撃によりシールが後退して内容物が漏洩するリスクを低減することができる。シール強度は高い方が望ましいが、現状得られる上限は80N/15mm程度である。
本実施形態に係るシーラントフィルムは、20℃から250℃まで示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、ガラス転移温度が50~90℃であることが好ましく、60~85℃であることがより好ましく、70~80℃であることが更に好ましい。ガラス転移温度は、より低温でのシールが可能となるという観点では低温であるほど好ましいが、50℃以下ではガラス転移による非晶質部分の流動が低温で起こるため、シーラントフィルムロールでのブロッキングが懸念される。また、(A)ベースポリエステル樹脂がエチレンテレフタレートユニットを主たる成分とする場合、現状得られるガラス転移温度の上限は90℃程度である。
本実施形態に係るシーラントフィルムは、20℃から250℃まで示差走査熱量分析(DSC)を行ったとき、0.5J/g以上の融解熱量を示す融解ピーク温度が120℃以上190℃以下であることが好ましく、140℃以上180℃以下であることがより好ましく、140℃以上170℃以下であることが更に好ましい。融解ピーク温度は190℃以下とすることで既存のポリオレフィン系フィルムと同様の温度及び装置でシールが可能となる。融解ピーク温度は低い方が望ましいが、90℃以下ではシーラントフィルムロールでのブロッキングや融着が懸念される。
引張弾性率、シール強度、ガラス転移温度、及び融解ピーク温度は、上述した(A)ベースポリエステル樹脂の組成、(B)ポリエステルエラストマー樹脂の組成、(A)ベースポリエステル樹脂と(B)ポリエステルエラストマー樹脂との相溶状態、(A)ベースポリエステル樹脂と(B)ポリエステルエラストマー樹脂との混合比率、シーラントフィルムの結晶化度などによって制御することができる。引張弾性率、シール強度、ガラス転移温度、及び融解ピーク温度は、具体的には実施例に示した方法で測定することができる。
シーラントフィルムはキャスト法やインフレーション法といった公知の方法により成膜することができる。ガラス転移温度が低い場合、キャスト法では溶融状態の樹脂が最初に接触する冷却ロールに貼り付き搬送不良を起こす恐れがある。また、インフレーション法ではピンチロール部で折りたたまれたフィルム同士が貼り付き分離できない恐れがある。これらの問題の発生を抑制する観点から、ガラス転移温度は50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることが更に好ましい。
シーラントフィルムは、単層からなるものであってもよいし、2層以上の層を含むものであってもよい。2層以上の層を含む場合、そのうちの最表面の少なくとも1層に上述した(A)ベースポリエステル樹脂、及び(B)ポリエステルエラストマー樹脂が含まれていればよく、全ての層に(A)ベースポリエステル樹脂、及び(B)ポリエステルエラストマー樹脂が含まれていてもよい。
シーラントフィルムの厚さは、優れたシール強度及び優れた耐衝撃性を得る観点から、例えば5~200μmとすることができ、20~100μmであってよい。シーラントフィルムが2層以上の層を含む場合は、その合計厚さを上記範囲内としてよい。
<積層体>
図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。一実施形態に係る積層体10は、基材層1、接着層2及びシーラントフィルム3をこの順に備える。
(基材層)
基材層は支持体となるフィルム(ベースフィルム)である。本実施形態に係るシーラントフィルムに用いる(A)ベースポリエステル樹脂はエチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とする場合、積層体に用いる基材層もまたエチレンテレフタレートユニットを主たる構成成分とすることが好ましい。これにより積層体がより単一素材に近づき、リサイクル性が高まる。リサイクル性を高める観点から、シーラントフィルムにおける(B)ポリエステルエラストマー樹脂の占める割合も低い方が好ましく、その含有量は、シーラントフィルム全量を基準として20質量%以下としてもよい。
基材層は単層であっても多層であってもよいが、テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いたポリエステル樹脂からなる層を少なくとも含むことが好ましい。上記酸成分は、テレフタル酸を主たる成分とすることが好ましく、上記ジオール成分は、エチレングリコールを主たる成分とすることが好ましい。ここで、主たる成分とは、酸成分の全量又はジオール成分の全量を基準として、50モル%以上含まれる成分を意味する。
基材層は、環境負荷を減らす観点から、再生ポリエステルを含んでもよい。再生ポリエステルとしてはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をケミカルリサイクルしてなるケミカルリサイクルポリエステル、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル等を挙げることができる。
基材層としては、例えば水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、少なくとも一方の表面に無機酸化物を含有する蒸着層を備えるガスバリアフィルムを用いてもよい。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物を含有する蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮され易く、厚さが100nm以下であることで、積層体の可撓性が維持され易い。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
基材層は、フィルムを複数層含む場合、各フィルムは同一であっても異なっていてもよい。基材層がポリエステルフィルムを複数層含む場合は、少なくとも一層のポリエステルフィルムが、その表面に無機酸化物を含有する蒸着層を備えてよい。
基材層の厚さは、例えば5μm~1mmとすることができ、5~800μmであってよく、5~500μmであってよい。基材層が上記フィルムを複数含む場合は、その合計厚さを上記範囲内としてよい。
(接着層)
接着層の接着成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能基以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる、2液硬化型ポリウレタン系接着剤が挙げられる。
接着層は、接着成分を基材層上に塗工後、乾燥することで形成することができる。ポリウレタン系接着剤を用いる場合、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行なうことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
接着層の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、1~50μmとすることができ、1~20μmであってよい。
積層体は、上述した基材層及びシーラントフィルムを、接着層を介してドライラミネート等により積層することで得ることができる。基材層が蒸着層を備える場合、基材層の蒸着層側の面とシーラントフィルムとを接着層を介して貼り合わせることができる。
<包装袋>
本実施形態に係る積層体は、内容物を包装するための包装袋を形成するために好適に用いることができる。内容物としては、液体調味料、トイレタリー用品、スープ、液体洗剤等の液状物、煮物等の固形物、カレー等の液状物と固形物との固液混合物などが挙げられる。
包装袋としては、例えば、平パウチ形状の包装袋や、自立性包装袋(スタンディングパウチ)などが挙げられる。
平パウチ形状の包装袋は、1枚の上記積層体をシーラントフィルムが対向するように二つ折りにした後、3方をヒートシールすることによって袋形状にしたものであってもよく、2枚の上記積層体をシーラントフィルムが対向するように重ねた後、4方をヒートシールすることによって袋形状としたものであってもよい。
図2は、一実施形態に係る自立性包装袋の正面図であり、図3は、図2における破線Cに沿った自立性包装袋の断面図である。自立性包装袋20は、胴部4と折込部5とを備え、胴部4及び折込部5は、縦方向縁部6、船底型の底部7及び上部シール部8によりシールされている。自立性包装袋20は、胴部4を形成する2枚のフィルム41,42のシーラントフィルムを対向させ、フィルム41,42の間に折込部5を形成するフィルム51をシーラントフィルムが外面を向くように二つ折りにして挿入し、縦方向縁部6と、船底型の底部7、及び上部シール部8を加熱、加圧することにより形成される。上述した本実施形態に係る積層体は、上記胴部4におけるフィルム41及び/又は42に用いられてもよく、折込部5におけるフィルム51に用いられてもよく、耐衝撃性を向上させる観点からは、胴部4及び折込部5の両方に上記積層体が用いられることが好ましい。
本開示を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
また、合成したベースポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー樹脂に関し、極限粘度は、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒に樹脂試料を溶解させた後、20℃に温度制御されたウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置(サン電子工業社製、商品名:ALC-6C)により測定された値であり、ガラス転移温度及び融点は、示差走査熱量分析(DSC)により測定された値である。
[ベースポリエステル樹脂の合成]
酸成分としてテレフタル酸100モル部と、ジオール成分としてエチレングリコール94モル部及び2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール35モル部とを、攪拌機を備えたスラリー調製槽に仕込み、常温でスラリー化した。得られたスラリーを精留塔と攪拌機とを備えたエステル化反応槽へ送液し、250℃にてエステル化反応を行い、反応により留出する水を系外へ留去することでエステル化反応を進めてエステルオリゴマーを得た。その後、得られたエステルオリゴマーに、熱安定剤としてリン酸トリエチル0.035モル部と、重合触媒として二酸化ゲルマニウム0.027モル部とを添加し、減圧装置を備えた重縮合反応槽へ送液した。1時間かけて反応槽内を減圧した後、100Pa以下の減圧下において、280℃で所定の溶融粘度まで重縮合反応を行い、極限粘度0.83dL/g、ガラス転移温度73℃のベースポリエステル樹脂を得た。
[ポリエステルエラストマー樹脂の合成]
<エラストマーA>
酸成分としてジメチルテレフタレートを75モル部及びジメチルイソフタレートを25モル部と、ジオール成分として1,4-ブタンジオールを115モル部及びエチレングリコールを80モル部とを、攪拌機を備えた原料調製槽へ仕込み、150℃で溶融させた。得られた溶融物を、精留塔と攪拌機とを備えたエステル化反応槽へ送液し、ソフトセグメントとして数平均分子量1500のポリオキシテトラメチレングリコールを、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が40質量%となるように添加し、更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名:AO-60、ADEKA社製)を得られるポリエステルエラストマー樹脂全量に対して0.0005質量部、エステル交換触媒としてテトラブチルチタネート0.034モル部を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合触媒としてテトラブチルチタネート0.086モル部を添加した後、減圧装置を備えた重縮合反応槽へ送液した。1.5時間かけて反応槽内を減圧した後、100Pa以下の減圧下において、240℃にて所定の溶融粘度まで重縮合反応を行い、極限粘度1.36dL/g、融点154℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーA)を得た。エラストマーAを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量(ポリオキシテトラメチレングリコールも含む)を基準として82モル%であった。なお、ジオール成分の一部は重縮合反応時に反応系外に飛散しており、エチレングリコールは1,4-ブタンジオールよりも沸点が低いことから、1,4-ブタンジオールよりも多く飛散した。
<エラストマーB>
ジオール成分として、1,4-ブタンジオールのみを195モル部仕込んだこと以外は、エラストマーAの合成と同様にエステル交換反応及び重縮合反応を行い、極限粘度1.43dL/g、融点164℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーB)を得た。エラストマーBを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として91モル%であった。
<エラストマーC>
酸成分としてジメチルテレフタレートを85モル部及びジメチルイソフタレートを15モル部仕込んだこと、並びに、ソフトセグメントとして数平均分子量1500のポリオキシテトラメチレングリコールを、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が30質量%となるように添加したこと以外は、エラストマーBの合成と同様にエステル交換反応及び重縮合反応を行い、極限粘度1.35dL/g、融点190℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーC)を得た。エラストマーCを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として94モル%であった。
<エラストマーD>
ソフトセグメントとして数平均分子量1500のポリオキシテトラメチレングリコールを、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が30質量%となるように添加したこと以外は、エラストマーBの合成と同様にエステル交換反応及び重縮合反応を行い、極限粘度1.33dL/g、融点175℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーD)を得た。エラストマーDを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として94モル%であった。
<エラストマーE>
ソフトセグメントとして数平均分子量1500のポリオキシテトラメチレングリコールを、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が50質量%となるように添加したこと以外は、エラストマーBの合成と同様にエステル交換反応及び重縮合反応を行い、極限粘度1.66dL/g、融点155℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーE)を得た。エラストマーEを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として87モル%であった。
<エラストマーF>
ソフトセグメントとして数平均分子量1500のポリオキシテトラメチレングリコールを、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が60質量%となるように添加したこと以外は、エラストマーBの合成と同様にエステル交換反応及び重縮合反応を行い、極限粘度1.88dL/g、融点142℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーF)を得た。エラストマーFを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として81モル%であった。
<エラストマーG>
酸成分としてテレフタル酸を100モル部と、ジオール成分としてエチレングリコールを112モル部とを、攪拌機を備えたスラリー調製槽に仕込み、常温でスラリー化した。得られたスラリーを精留塔と攪拌機とを備えたエステル化反応槽へ送液し、250℃にてエステル化反応を行い、反応により留出する水を系外へ留去することでエステル化反応を進めてエステルオリゴマーを得た。その後、得られたエステルオリゴマーに、熱安定剤としてリン酸トリエチル0.017モル部を加え、ソフトセグメントとして水添ダイマー酸と1,4-ブタンジオールとからなる数平均分子量2200のポリエステルポリオール(商品名:Priplast3199、クローダ社製)を、得られるポリエステルエラストマー樹脂全量を基準とした含有量が30質量%となるように添加し、更に、重合触媒としてテトラブチルチタネート0.03モル部を添加し、減圧装置を備えた重縮合反応槽へ送液した。1時間かけて反応槽内を減圧した後、100Pa以下の減圧下において、265℃にて所定の溶融粘度まで重縮合反応を行い、極限粘度0.75dL/g、融点188℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーG)を得た。エラストマーGを構成する1,4-ブタンジオールの含有量は、ジオール成分全量を基準として3モル%であった。なお、1,4-ブタンジオールは、Priplast3199に含まれている。
<エラストマーH>
酸成分としてテレフタル酸を70モル部及びソフトセグメントとしてセバシン酸を30モル部と、ジオール成分としてエチレングリコールを112モル部とを、攪拌機を備えたスラリー調製槽に仕込み、常温でスラリー化した。得られたスラリーを精留塔と攪拌機とを備えたエステル化反応槽へ送液し、250℃にてエステル化反応を行い、反応により留出する水を系外へ留去することでエステル化反応を進めてエステルオリゴマーを得た。その後、得られたエステルオリゴマーに、熱安定剤としてリン酸トリエチル0.017モル部と、重合触媒としてテトラブチルチタネート0.03モル部とを添加し、減圧装置を備えた重縮合槽へ送液した。1時間かけて反応槽内を減圧した後、100Pa以下の減圧下において、265℃で所定の溶融粘度まで重縮合反応を行い、極限粘度0.88dL/g、融点173℃のポリエステルエラストマー樹脂(エラストマーH)を得た。
[シーラントフィルム、積層体及びスタンディングパウチの作製]
(実施例1)
ベースポリエステル樹脂ペレット90質量部と、エラストマーAペレット10質量部とをドライブレンドしてキャスト成膜機に投入した。その後、単軸押出機を使用して240℃の温度にて6kg/hで押出し、速やかに30℃の冷却ロールで冷却して未延伸フィルムを作製した。以上により、厚さ50μmのシーラントフィルムを得た。
積層体の基材層として結晶性ポリエステルフィルムである厚さ50μmの延伸PETフィルムを準備し、上記のシーラントフィルムとドライラミネート法により貼り合わせて積層体を得た。ドライラミネートに用いる接着剤には、一般的なウレタン樹脂系接着剤を用いた。ウレタン樹脂系接着剤の乾燥後の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。
得られた積層体を用いて胴部及び折込部を形成し、図2に示す構造を有するスタンディングパウチを得た。スタンディングパウチの幅(図2のW)は130mm、高さ(図2のH)は220mm、折込量(図2のa-b間の距離)は40mmとした。また、製袋時のシール条件は、シール温度200℃、シール時間5秒、シール圧0.5MPaとした。
(実施例2)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を80質量部、エラストマーAペレットの配合量を20質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例3)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を60質量部、エラストマーAペレットの配合量を40質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例4)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を40質量部、エラストマーAペレットの配合量を60質量部としたこと以外は実施例1と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例5)
エラストマーAをエラストマーBに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例6)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を60質量部、エラストマーBペレットの配合量を40質量部としたこと以外は実施例5と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例7)
エラストマーAをエラストマーCに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例8)
エラストマーAをエラストマーDに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例9)
エラストマーAをエラストマーEに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例10)
エラストマーAをエラストマーFに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(実施例11)
結晶性ポリエステルフィルムである厚さ12μmの延伸PETフィルムの一方の表面に、バリア層として厚さ10nmのシリカ蒸着膜を設けたバリアフィルムを準備した。このバリアフィルムの非シリカ蒸着面に、厚さ38μmの延伸PETフィルムをドライラミネート法で貼り合わせた。ドライラミネートに用いる接着剤には、一般的なウレタン樹脂系接着剤を用い、その乾燥後の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。これにより、厚さ38μmの延伸PETフィルム/厚さ12μmの延伸PETフィルム/シリカ蒸着膜の積層構造を有する基材層を得た。この基材層のシリカ蒸着面に、シーラントフィルムをドライラミネート法により貼り合わせたこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(比較例1)
エラストマーAをエラストマーGに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(比較例2)
エラストマーAをエラストマーHに変更したこと以外は実施例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(比較例3)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を60質量部、エラストマーHペレットの配合量を40質量部としたこと以外は比較例2と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
(比較例4)
ベースポリエステル樹脂ペレットの配合量を100質量部とし、エラストマーAペレットを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチを得た。
[評価方法]
上記で得られたシーラントフィルム、積層体、スタンディングパウチについて、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(成膜性)
キャスト成膜時のシーラントフィルムの状態について下記の基準で評価を行った。
A:冷却ロールへの貼り付きやフィルム同士の融着(ブロッキング)がなく、問題なく搬送可能であり、成膜性が良好である。
B:冷却ロールへの貼り付きやフィルム同士の融着(ブロッキング)があり、搬送し難く、成膜性が劣る。
(非相溶性)
上記で得られたシーラントフィルムを-120℃まで冷やした状態で切断し、得られた断面を原子間力顕微鏡(AFM)にて観察した。観察結果から、下記の基準で評価を行った。
A:図4に示す例のように、ポリエステルエラストマー樹脂の存在領域がベースポリエステル樹脂の存在領域と分かれて観測され、ベースポリエステル樹脂とポリエステルエラストマー樹脂とが非相溶状態である。
B:ポリエステルエラストマー樹脂の存在領域が観測されず、ベースポリエステル樹脂とポリエステルエラストマー樹脂とが相溶状態である。
図5の(a)に実施例3で得られたシーラントフィルムの断面の原子間力顕微鏡写真を、図5の(b)に比較例1で得られたシーラントフィルムの断面の原子間力顕微鏡写真を、それぞれ示す。図5の(a)における暗い部分(黒色部分)が(B)ポリエステルエラストマー樹脂102であり、明るい部分がベースポリエステル樹脂101であり、図5の(a)では、両者が非相溶状態で存在していることが分かる。一方、図5の(b)では、暗い部分と明るい部分の区別がつかず、両者が相溶していることが分かる。
(引張弾性率)
シーラントフィルムの長手方向(MD方向)及び幅方向(TD方向)の引張弾性率を、JIS K7127に準拠して測定した。試験片の幅は15mm、チャック間の初期距離は100mm、試験速度は300mm/min.で、23℃の環境下で測定して得られたデータに対し、荷重2Nと10N間を直線近似し、その直線の傾きを引張弾性率とした。
(示差走査熱量分析(DSC))
シーラントフィルムについて、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を行った。10℃/min.の昇温速度で20℃から250℃まで加熱し、得られた曲線からガラス転移温度と融解ピーク温度を読み取った。融解熱量が0.5J/gよりも小さい場合、融解ピーク温度は読取不可とした。
(透明性)
シーラントフィルムについて、JIS K7105に準拠してヘイズの測定を行った。測定にはヘイズメーター(商品名:NDH2000、日本電色工業社製)を用いた。測定した値に対して、下記の基準で評価を行った。
A:ヘイズ20%未満
B:ヘイズ20%以上
(シール強度)
積層体のシーラントフィルム同士を対向させ、シール温度200℃、シール時間5秒、シール圧0.5MPa、シール幅10mmでヒートシールした。その後、ヒートシールされたフィルムを15mm幅×100mmに切出して試験片とした。この試験片について、引張試験機(島津製作所社製)を用いて、23℃の環境下、300mm/min.の引張速度でT字剥離を行い、ヒートシール部分のシール強度を測定した。
(落袋試験)
実施例及び比較例で作製したスタンディングパウチに内容物として水を100mL又は150mL入れ、パウチの上部をシール温度200℃、シール時間5秒、シール圧0.5MPaの条件でヒートシールすることにより、内容物入りのスタンディングパウチを得た。次に内容物入りのスタンディングパウチを5℃の環境下で24時間保管後、高さ1mから折込部が下になるように垂直落下させ、破袋するまでの落下回数を数えた。破袋は主として、ヒートシール部と非ヒートシール部との境界付近でパウチが破れることによって生じた。但し、シール強度の低いパウチの一部では、ヒートシール部が剥がれることによって破袋が生じる場合もあった。同一条件で20サンプルを評価し、下記の評価基準に従って評価した。
A:20回落下時点でのパウチ残存率(破袋せずに残ったパウチの割合)が90%以上
B:20回落下時点でのパウチ残存率が50%以上90%未満
C:20回落下時点でのパウチ残存率が50%未満
Figure 2023058182000002
Figure 2023058182000003
本開示に係るシーラントフィルムによって、ポリエステル樹脂を用いた、シール強度及び耐衝撃性に優れた積層体及び包装袋を得ることが可能となる。また、積層体を構成するフィルムを実質的に全てポリエステルフィルムとすることも可能であり、そのような積層体は、単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料ということができ、優れたリサイクル性が期待される。
1…基材層、2…接着層、3…シーラントフィルム、4…胴部、5…折込部、6…縦方向縁部、7…底部、8…上部シール部、10…積層体、20…自立性包装袋、41,42,51…フィルム、100…シーラントフィルム、101…(A)ベースポリエステル樹脂、102…(B)ポリエステルエラストマー樹脂。

Claims (12)

  1. テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いた(A)ベースポリエステル樹脂と、
    前記(A)ベースポリエステル樹脂に対して非相溶である(B)ポリエステルエラストマー樹脂と、
    を含有し、
    前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂が、芳香族ジカルボン酸を含む酸成分と、1,4-ブタンジオール及びポリオキシアルキレングリコールを含むジオール成分とを用いた樹脂であり、
    長手方向及び幅方向の少なくとも一方の23℃における引張弾性率が300~1000N/mmである、シーラントフィルム。
  2. 前記(A)ベースポリエステル樹脂を構成する前記ジオール成分が、前記エチレングリコール以外の脂肪族グリコール、及び、脂環式グリコールからなる群より選択される少なくとも一種を更に含む、請求項1に記載のシーラントフィルム。
  3. 前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する前記1,4-ブタンジオールの含有量が、前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂のジオール成分全量を基準として80モル%以上である、請求項1又は2に記載のシーラントフィルム。
  4. 前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する前記酸成分が、テレフタル酸及びイソフタル酸からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
  5. 前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂を構成する前記ポリオキシアルキレングリコールの含有量が、前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂全量を基準として35~55質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
  6. 20℃から250℃までの範囲の示差走査熱量測定を行った場合、以下の条件(1)及び(2)の少なくとも一方を満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
    (1)ガラス転移温度が50℃以上90℃以下である。
    (2)0.5J/g以上の融解熱量を示す融解ピーク温度が140℃以上180℃以下である。
  7. 前記(B)ポリエステルエラストマー樹脂の含有量が、前記シーラントフィルム全量を基準として5~60質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシーラントフィルム。
  8. 基材層と、請求項1~7のいずれか一項に記載のシーラントフィルムと、を備える積層体。
  9. 前記基材層が、テレフタル酸を含む酸成分と、エチレングリコールを含むジオール成分とを用いたポリエステル樹脂からなる層を含む、請求項8に記載の積層体。
  10. 前記基材層が、無機酸化物を含有する蒸着層を含む、請求項8又は9に記載の積層体。
  11. 請求項8~10のいずれか一項に記載の積層体の前記シーラントフィルム同士を貼り合わせてなる包装袋。
  12. 自立性を有する、請求項11に記載の包装袋。
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