JP2023055372A - インクジェット印刷用のオーバーコート材 - Google Patents

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博之 嶋中
Hiroyuki Shimanaka
純 釜林
Jun Kamabayashi
路 田
Lu Tian
利江 大久保
Rie Okubo
幸男 吉川
Yukio Yoshikawa
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Abstract

【課題】印刷物の耐光性を向上させることができるとともに、被印刷基材に対する密着性に優れ、かつ、耐摩擦性、耐薬品性、耐衝撃性、及び耐引っ掻き性等の耐久性に優れた印刷皮膜を形成することが可能なインクジェット印刷用のオーバーコート材を提供する。【解決手段】水及び水溶性有機溶媒を含む水系媒体、界面活性剤、バインダー成分、並びに第1のアルカリ成分を含有するインクジェット印刷用のオーバーコート材である。バインダー成分が、メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が90質量%以上であり、リマーブロックA及びポリマーブロックBを含む、数平均分子量が10,000~50,000であり、分子量分布が1.2~1.8のABブロックコポリマーであり、メタクリル酸に由来するカルボキシ基が第1のアルカリ成分で中和されて水系媒体中に自己乳化している。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット印刷用のオーバーコート材に関する。
近年、事務用や家庭用のみならず、インクジェット印刷法によって様々な印刷物が製造されている。例えば、産業用途でサインディスプレイとして採用されている、屋外用の広告、施設サイン、ディスプレイ、POP広告、及び交通広告等の多くは、インクジェット記録装置を使用して大型の被印刷基材に印刷して作製されている。なお、サインディスプレイを作製する際には、溶剤系のインクが多く用いられている。
インクジェットインクを用いて製造された屋外用途のサインディスプレイ等の印刷物は、紫外線を含む日光に曝されるため、劣化して退色しやすい。このため、紫外線による劣化を抑制すべく、耐光性に劣る染料に代えて、耐光性の良好な結晶粒子である顔料を色材として含有するインクが使用されている。
但し、顔料は、粒径の小さい微粒子の状態でインクジェット印刷用のインクに配合されるため、紫外線に対する耐久性が低下しやすい。また、画像の鮮明さ及び発色性を高めるとともに、色相等を調整する必要があるため、比較的耐光性の低い顔料を使用せざるを得ない場合もある。このため、画像等の印刷物の耐光性を向上すべく、紫外線吸収剤を配合したインクジェットインクが提案されている(特許文献1及び2)。また、紫外線吸収性基を有するモノマーを構成成分とするポリマーを顔料分散剤として用いたインクジェットインクが提案されている(特許文献3)。
特開平11-199808号公報 特開2003-276323号公報 特開2000-7967号公報
特許文献1~3で提案されたインクを用いることで、得られる印刷物の耐光性を向上させることは可能ではある。しかし、屋外用途の印刷物が、近年の温暖化の影響でより強烈になった直射日光に長期間にわたって曝される場合、従来のインクを用いて製造した印刷物であっても、その耐光性は必ずしも十分であるとはいえなかった。また、近年、自動車や航空機等の外表面に直接記録して意匠や広告等の効果を発揮させる機会が増加している。しかし、従来のインクを用いて自動車等の外表面に直接記録した印刷物の耐光性は不十分であり、改善の余地があった。
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、印刷物の耐光性を向上させることができるとともに、被印刷基材に対する密着性に優れ、かつ、耐摩擦性、耐薬品性、耐衝撃性、及び耐引っ掻き性等の耐久性に優れた印刷皮膜を形成することが可能なインクジェット印刷用のオーバーコート材を提供することにある。
すなわち、本発明によれば、以下に示すオーバーコート材が提供される。
[1]水及び水溶性有機溶媒を含む水系媒体、界面活性剤、バインダー成分、並びに第1のアルカリ成分を含有するインクジェット印刷用のオーバーコート材であって、前記バインダー成分が、下記(1-1)~(1-5)の要件を満たすポリマー(i)であるオーバーコート材。
(1-1)メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が90質量%以上である。
(1-2)ポリマーブロックA及びポリマーブロックBを含む、数平均分子量が10,000~50,000であり、分子量分布が1.2~1.8であるABブロックコポリマーである。
(1-3)前記ポリマーブロックAが、ベンゾトリアゾール骨格又はトリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が10~80質量%であり、前記紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が20~90質量%であり、数平均分子量が5,000~30,000であり、分子量分布が1.1~1.6である。
(1-4)前記ポリマーブロックBが、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が10~50質量%であり、前記メタクリル酸以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が50~90質量%である。
(1-5)前記メタクリル酸に由来するカルボキシ基が前記第1のアルカリ成分で中和されて前記水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
[2]前記第1のアルカリ成分が、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]に記載のオーバーコート材。
[3]下記(2-1)及び(2-2)の要件を満たすポリマー(ii)をさらに含有する前記[1]又は[2]に記載のオーバーコート材。
(2-1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、及びこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のカルボキシ基を有するポリマーの前記カルボキシ基が第2のアルカリ成分で中和されて前記水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
(2-2)前記カルボキシ基を有するポリマーの酸価が10~150mgKOH/gである。
[4]前記第2のアルカリ成分が、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である前記[3]に記載のオーバーコート材。
[5]前記紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーが、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-ドデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート、及び1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-トリデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメートからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]~[4]のいずれかに記載のオーバーコート材。
[6]前記ポリマー(i)が、さらに、ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位を1~10質量%含む前記[1]~[5]のいずれかに記載のオーバーコート材。
本発明によれば、印刷物の耐光性を向上させることができるとともに、被印刷基材に対する密着性に優れ、かつ、耐摩擦性、耐薬品性、耐衝撃性、及び耐引っ掻き性等の耐久性に優れた印刷皮膜を形成することが可能なインクジェット印刷用のオーバーコート材を提供することができる。
<オーバーコート材>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明のオーバーコート材は、インクジェット印刷用のオーバーコート材であり、水系媒体、界面活性剤、バインダー成分、及び第1のアルカリ成分を含有する。水系媒体は、水及び水溶性有機溶媒を含む。そして、バインダー成分が、所定の要件を満たすABブロックコポリマー(ポリマー(i))である。以下、本発明のオーバーコート材の詳細について説明する。
(水系媒体)
水系媒体は、水及び水溶性有機溶媒を含有する。水溶性有機溶媒は、保湿性や乾燥性を向上させるための成分であるとともに、表面張力及び粘度を調整するための成分でもある。水溶性有機溶媒としては、完全に水と混合するものが特に好ましい。但し、25℃における水溶解度が20g/100g前後のものでもよい。
水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エタノール、イソプロパノール、3-ブタノール、1,3-プロパンジオール、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等のアルコール類の他;3-メチルオキサゾリジノン、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
オーバーコート材中の水溶性有機溶媒の含有量としては、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましい。水溶性有機溶媒の含有量が5%未満であると、インクジェット印刷用の記録ヘッドのノズルで乾燥しやすくなり、吐出することがやや困難になることがある。一方、水溶性有機溶媒の含有量が50質量%超であると、粘度がやや高くなって印刷特性が低下したり、印刷物の乾燥性がやや低下したりすることがある。
(界面活性剤)
オーバーコート材に界面活性剤を含有させることで、オーバーコート材の表面張力を適切な範囲とすることができる。表面張力を適切な範囲とすることにより、被印刷物に対するオーバーコート材の濡れ性を向上させることができ、インクジェット方式の記録ヘッドから吐出されるオーバーコート材の液滴が適度に広がりやすくなる。オーバーコート材の25℃における表面張力は、15~45mN/mであることが好ましく、20~40mN/mであることがさらに好ましい。
界面活性剤としては、シリコーン系、アセチレングリコール系、フッ素系、アルキレンオキサイド系、及び炭化水素系の界面活性剤等を挙げることができる。なかでも、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤が好ましい。オーバーコート材中の界面活性剤の含有量は、0.01~3質量%であることが好ましくは、0.05~1質量%であることがさらに好ましい。界面活性剤の含有量を上記の範囲内とすることで、オーバーコート材の発泡を抑制しつつ、非印刷物の表面で弾かれるのを抑制することができる。
(バインダー成分)
バインダー成分は、下記(1-1)~(1-5)の要件を満たすポリマー(i)である。
(1-1)メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が90質量%以上である。
(1-2)ポリマーブロックA及びポリマーブロックBを含む、数平均分子量が10,000~50,000であり、分子量分布が1.2~1.8であるABブロックコポリマーである。
(1-3)ポリマーブロックAが、ベンゾトリアゾール骨格又はトリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が10~80質量%であり、紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が20~90質量%であり、数平均分子量が5,000~30,000であり、分子量分布が1.1~1.6である。
(1-4)ポリマーブロックBが、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が10~50質量%であり、メタクリル酸以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が50~90質量%である。
(1-5)メタクリル酸に由来するカルボキシ基が第1のアルカリ成分で中和されて水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
ポリマー(i)は、(1-1)メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が90質量%以上のポリマーであり、好ましくはメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位のみで実質的に構成されたポリマーである。本明細書における「メタクリル酸系モノマー」には、「メタクリル酸」及び「メタクリル酸エステル」が含まれる。メタクリル酸系モノマーを用いることで、ポリマー(i)のガラス転移温度(Tg)を任意に制御することができるとともに、アルカリ水溶液中での耐加水分解性を向上させることができる。また、ABブロックコポリマーの構造制御が容易であるとともに、製造条件も温和であるために好ましい。
ポリマー(i)は、(1-2)ポリマーブロックA及びポリマーブロックBを含む、数平均分子量が10,000~50,000であり、分子量分布が1.2~1.8であるABブロックコポリマーである。ポリマーブロックA(以下、単に「A鎖」とも記す)は、紫外線吸収性基を有するポリマーブロックである。また、ポリマーブロックB(以下、単に「B鎖」とも記す)は、カルボキシ基を有し、このカルボキシ基が第1のアルカリで中和されて水に溶解しうるポリマーブロックである。
ABブロックコポリマーであるポリマー(i)の数平均分子量(Mn)は10,000~50,000であり、好ましくは20,000~30,000である。ポリマー(i)の数平均分子量(Mn)を上記の範囲内とすることで、耐摩擦性及び被印刷基材に対する密着性に優れた印刷皮膜(オーバーコート層)を形成することができる。ポリマー(i)の数平均分子量が10,000未満であると、形成される印刷皮膜の物性を十分に向上させることができない。一方、数平均分子量(Mn)が50,000超のポリマー(i)を製造するには過剰な時間を要するとともに、形成されるエマルジョン粒子の粒子径が過度に大きくなることがある。本明細書におけるポリマーの分子量(数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。
ポリマー(i)の分子量分布(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は1.1~1.8であり、好ましくは1.5以下である。ポリマー(i)のPDIが1.8超であると、小さい分子量のものから大きい分子量のものまで幅広く含まれることとなるので、耐摩擦性及び被印刷基材に対する密着性に優れた印刷皮膜を形成することが困難になる。
(1-3)ポリマーブロックA(A鎖)は、ベンゾトリアゾール骨格又はトリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が10~80質量%であり、紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が20~90質量%であり、数平均分子量が5,000~30,000であり、分子量分布が1.1~1.6である。A鎖は、耐久性を有する水不溶性の皮膜を形成しうる、紫外線吸収性のポリマーブロックである。このA鎖を有するABブロックコポリマーをバインダー成分として含有するオーバーコート材を用いることで、密着性及び耐摩擦性を向上させつつ、印刷物の耐光性を高めて画像の退色等を抑制し、画像の発色性、鮮明性、彩度、及び色相を長期間にわたって維持することができる。
ベンゾトリアゾール骨格を持った紫外線吸収性基としては、下記一般式(1)で表される構造を有する基から1つの水素原子を取り除いた1価の残基等を挙げることができる。このような紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーは、一般式(1)で表される構造中の任意の位置にメタクリロイル基が直接又は他の結合(エステル結合、アミド結合等)を介して結合している化合物等を挙げることができる。
Figure 2023055372000001
一般式(1)中、R及びR’は、相互に独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、エステル基、及びオキシカルボニル基のいずれかである。
トリアジン骨格を持った紫外線吸収性基としては、下記一般式(2)で表される構造を有する基から1つの水素原子を取り除いた1価の残基等を挙げることができる。このような紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーは、一般式(2)で表される構造中の任意の位置にメタクリロイル基が直接又は他の結合(エステル結合、アミド結合等)を介して結合している化合物等を挙げることができる。
Figure 2023055372000002
一般式(2)中、R~Rは、相互に独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリル基、アルコキシ基、エステル基、水酸基、及びオキシカルボニル基のいずれかである。
ベンゾトリアゾール骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーとしては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールや2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと、メタクリル酸やグリシジルメタクリレート等とを反応させて得られる化合物等を挙げることができる。
トリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーとしては、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと、メタクリル酸やグリシジルメタクリレート等とを反応させて得られる化合物;2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-ヒドロキシ-3-(ドデシルオキシ)プロポキシ]フェノール、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-ヒドロキシ-3-(トリデシルオキシ)プロポキシ]フェノール、及び2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロポキシ]フェノール等と、メタクリロキシエチルイソシアネート等とを反応させて得られる化合物;2-[4-[4,6-ビス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシフェノキシ]-プロピオン酸と、グリシジルメタクリレート等とを反応させて得られる化合物;等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーとしては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(極大吸収波長338.5nm)が好ましい。
トリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーとしては、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート(極大吸収波長336nm)、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-ドデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート(極大吸収波長340nm)、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-トリデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート(極大吸収波長340nm)が好ましい。
ポリマーブロックA中、紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量は10~80質量%であり、好ましくは20~70質量%、さらに好ましくは30~50質量%である。紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が10質量%未満であると、耐光性向上効果が不十分になる。一方、紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が80質量%超であると、重合性が低下し、得られるポリマー(i)の分子量が増大しなくなるとともに、重合せずに残存したモノマーがB鎖に導入されやすくなる。このため、B鎖が水不溶性になりやすく、形成される印刷皮膜の密着性及び耐摩擦性が低下する。
A鎖中、紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマー(その他のメタクリル酸系モノマー)に由来する構成単位の含有量は20~90質量%である。その他のモノマーに由来する構成単位をA鎖に含有させることで、形成される印刷皮膜の特性をさらに向上させることができるとともに、得られるポリマー(i)の分子量を調整することができる。その他のメタクリル酸系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸ヘキシル等のメタクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル等のメタクリル酸脂環族アルキルエステル;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、メタクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系メタクリル酸エステル;メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリレート;等を挙げることができる。
A鎖の数平均分子量(Mn)は5,000~30,000、好ましくは10,000~25,000であり、PDIは1.1~1.6である。A鎖の数平均分子量(Mn)が5,000未満であると、耐摩擦性及び被印刷基材に対する密着性に優れた印刷皮膜を形成することが困難になる。一方、A鎖の数平均分子量(Mn)が30,000超であると、形成されるエマルジョン粒子の粒子径が大きくなりすぎてしまい、インクジェット方式の記録ヘッドからの吐出性が低下する。
(1-4)ポリマーブロックB(B鎖)は、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が10~50質量%であり、メタクリル酸以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が50~90質量%である。B鎖は、メタクリル酸に由来するカルボキシ基を有する、このカルボキシ基が第1のアルカリで中和されて水に溶解しうるポリマーブロックである。水不溶性のA鎖が粒子を形成するとともに、B鎖が水に溶解するので、これらのA鎖及びB鎖を有するABブロックコポリマーであるポリマー(i)は、水系媒体中でエマルジョン粒子を形成することができる。
ポリマーブロックB中、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量は10~50質量%であり、好ましくは15~30質量%である。メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が10質量%未満であると、B鎖が水に溶解せず、ポリマー(i)がエマルジョン粒子を形成しない場合がある。一方、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が50質量%超であると、形成されるオーバーコート層の耐水性が低下するとともに、オーバーコート材の粘度が高くなる場合がある。
B鎖中、メタクリル酸以外のメタクリル酸系モノマー(その他のメタクリル酸系モノマー)に由来する構成単位の含有量は50~90質量%である。その他のメタクリル酸系モノマーとしては、A鎖に用いる前述のその他のメタクリル酸系モノマーと同様のものを挙げることができる。
ポリマー(i)は、(1-5)メタクリル酸に由来するカルボキシ基が第1のアルカリ成分で中和されて水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子を形成している。
第1のアルカリ成分としては、アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等の脂肪族第1~3級アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアルコールアミン;ピペリジン、モルホリン、N-メチルモルホリン等の複素環式アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;等を挙げることができる。なかでも、第1のアルカリ成分としては、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールが好ましい。これらの第1のアルカリ成分は、常温下又は加熱条件下で容易に揮発する。このため、これらの第1のアルカリ成分を用いると、乾燥して形成されるオーバーコート層からこれらの第1のアルカリ成分が揮発し、B鎖が水不溶性となるので、オーバーコート層の耐水性を向上させることができる。
エマルジョン粒子の数平均粒子径は30~300nmであり、好ましくは50~150nmである。エマルジョン粒子の数平均粒子径が30nm未満であると、オーバーコート材の粘度が高くなりすぎるとともに、形成される印刷皮膜の親水性も高くなりすぎる。一方、エマルジョン粒子の数平均粒子径が300nm超であると、形成される印刷皮膜に、いわゆる「ブツ」と呼ばれる異物等が形成されやすくなる。さらに、記録ヘッドのノズルに詰まりやすくなる等、オーバーコート材の吐出性やろ過性が低下することがある。本明細書におけるエマルジョン粒子の数平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径分布測定装置を使用して測定及び算出される物性値である。
ポリマー(i)(ABブロックコポリマー)は、従来公知の方法によって合成することができる。なかでも、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、及びリビングラジカル重合法等のリビング性を有する重合法が好ましく、条件、材料、及び装置等の観点からリビングラジカル重合法が特に好ましい。リビングラジカル重合法としては、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、可逆的付加開裂型連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキサイド法(NMP法)、有機テルル法(TERP法)、可逆的移動触媒重合法(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合法(RCMP法)等を挙げることができる。なかでも、有機化合物を触媒として用いるとともに、有機ヨウ化物を重合開始化合物として用いるRTCP法やRCMP法が好ましい。これらの方法は、比較的安全な市販の化合物を使用し、重金属や特殊な化合物を使用せず、コスト及び精製の面で有利である。さらに、成長末端を第3級のヨウ素とすることで、精度のよいブロック構造を一般的なの設備で容易に形成することができる。
重合は、熱重合及び光重合のいずれであってもよく、アゾ系ラジカル発生剤、過酸化物系ラジカル発生剤、光増感剤等を重合反応系に添加してもよい。重合形式は、無溶剤、溶液重合、及び乳化重合のいずれであってもよく、なかでも溶液重合が好ましい。オーバーコート材に用いる水系媒体中の水溶性有機溶媒と同一の水溶性有機溶媒を溶液重合時の溶媒として用いることで、得られるABブロックコポリマーの溶液をそのまま用いてオーバーコート材を調製することができるために好ましい。
A鎖とB鎖のいずれを先に重合してもよい。但し、B鎖を先に重合すると、重合反応系にメタクリル酸が残存する場合がある。この場合、その後に重合するA鎖にメタクリル酸に由来する構成単位が導入されてしまうことがある。このため、A鎖にメタクリル酸に由来する構成単位が導入されるのを回避すべく、A鎖を先に重合し、B鎖を後に重合することが好ましい。
従来公知の方法にしたがって得られたABブロックコポリマーを中和、乳化、及び分散させることで、オーバーコート材を調製することができる。例えば、溶液重合によって得たABブロックコポリマーの溶液を撹拌しながら、第1のアルカリ成分の水溶液を添加することで、ABブロックコポリマーのカルボキシ基を中和して水系媒体中に自己乳化させてエマルジョン粒子を形成することができる。また、重合後に(i)乾燥する;(ii)貧溶剤中に析出させる;又は(iii)中和して水に溶解させた後に酸を添加して析出させる;等の方法によって取り出したA-Bブロックコポリマーを中和しながら水系媒体中に乳化及び分散させてもよく、必要に応じて加熱してもよい。
オーバーコート材中のバインダー成分の含有量は、1~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがさらに好ましい。バインダー成分の含有量が1質量%未満であると、十分な厚さの印刷皮膜(オーバーコート層)を形成することがやや困難になることがある。バインダー成分の含有量が20質量%超であると、オーバーコート材の粘度が過度に高くなることがあり、吐出性が低下したり、形成される印刷皮膜が厚くなりすぎたりする場合がある。
バインダー成分であるポリマー(i)を架橋して三次元構造とすることで、形成される印刷皮膜の耐久性を向上させることができ、風雨などの外的要因に曝される屋外用途の印刷物を製造するためのオーバーコート材としてより好適なものとすることができる。具体的には、ポリマー(i)が、さらに、ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位は、紫外線によって架橋する性質を有する。このため、ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位を含むポリマー(i)をバインダー成分として含有するオーバーコート材で形成したオーバーコート層に日光(紫外線)が当たると、ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位が他の構成単位と分子間架橋し、オーバーコート層が硬化して耐久性が向上する。
ポリマー(i)中のベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位の含有量は、1~10質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがさらに好ましい。ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位は、A鎖及びB鎖の少なくともいずれかに含まれていればよい。
(ポリマー(ii))
本発明のオーバーコート材は、下記(2-1)及び(2-2)の要件を満たすポリマー(ii)をさらに含有することが好ましい。
(2-1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、及びこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のカルボキシ基を有するポリマーのカルボキシ基が第2のアルカリ成分で中和されて水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
(2-2)カルボキシ基を有するポリマーの酸価が10~150mgKOH/gである。
このポリマー(ii)は、疎水性ポリマーであり、ポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムに対する親和性が高い。このため、ポリマー(ii)を含有させることで、形成される印刷皮膜の撥水性、撥油性、及び耐摩擦性をさらに向上させることができる。
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、及びこれらの共重合体の具体例としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び1-オクタデセン等のα-オレフィンの単独重合体や共重合体等を挙げることができる。ポリマー(ii)は分岐構造を有していてもよく、ブロック共重合体であってもよい。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、及びこれらの共重合体等のポリマーを酸化する;無水マレイン酸等を付加する;熱分解する;又はアクリル酸やメタクリル酸を共重合させる;ことで、カルボキシ基が導入されたポリマー(ii)とすることができる。
カルボキシ基を有するポリマーの酸価は10~150mgKOH/gであり、好ましくは20~100mgKOH/gである。カルボキシ基を有するポリマーの酸価が10mgKOH/g未満であると、十分に乳化することが困難になることがある。一方、カルボキシ基を有するポリマーの酸価が150mgKOH/g超であると、乳化や分散が困難になり、形成される印刷皮膜の耐水性がやや低下する場合がある。
ポリマー(ii)は、その数平均分子量が10,000以下のワックスであってもよく、その数平均分子量が数万以上のポリマーであってもよい。ポリマー(ii)の融点(又は軟化点)は、通常、0~180℃である。ポリマー(ii)の融点が120℃以下であることが、エマルジョン化するのにより適しているために好ましい。
ポリマー(ii)によって形成されるエマルジョン粒子の数平均粒子径は30~300nmであり、好ましくは50~120nmである。エマルジョン粒子の数平均粒子径が30nm未満であると、オーバーコート材の粘度が過度に高くなることがある。一方、エマルジョン粒子の数平均粒子径が300nm超であると、オーバーコート材が記録ヘッドのノズルに詰まりやすくなる等、インクの吐出性やろ過性がやや低下することがある。
ポリマー(ii)を加熱して溶融させる、又はトルエン等の溶媒に必要に応じて加熱して溶解させた後、第2のアルカリ成分の水溶液等を添加して、カルボキシ基を中和する。トルエン等の溶媒を用いた場合には、用いた溶媒を留去する。これにより、水系媒体中に自己乳化して分散したエマルジョン粒子を含有するポリマーエマルジョンとすることができる。なお、第2のアルカリ成分としては、前述の第1のアルカリ成分と同様のものを用いることができる。なかでも、第2のアルカリ成分は、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールであることが好ましい。
オーバーコート材中のポリマー(ii)の含有量は、0.05~5質量%であることが好ましく、0.1~1質量%であることがさらに好ましい。ポリマー(ii)の含有量が0.05質量%未満であると、少なすぎるために効果が発揮されない場合がある。一方、ポリマー(ii)の含有量が5質量%超であると、形成されるオーバーコート層にポリマー(ii)の特性が顕著に発生しやすくなり、オーバーコート材の所望の効果がやや発揮されにくくなる場合がある。
(その他の成分)
オーバーコート材には、防腐剤をさらに含有させることができる。防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、ソルビタン酸カリウム、ソルビタン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、チアゾスルファミド、及びピリジンチオールオキシド等を挙げることができる。オーバーコート材中の防腐剤の含有量は、オーバーコート材全質量を基準として、0.05~2.0質量%であることが好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。
オーバーコート材には、必要に応じて、前述の水溶性有機溶媒以外の有機溶媒、染料、レベリング剤、表面張力調整剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、染料、フィラー、ワックス、増粘剤、消泡剤、防カビ剤、帯電防止剤、金属微粒子、磁性粉等の添加剤をさらに含有させることができる。
(オーバーコート材の製造)
水、水溶性有機溶媒、界面活性剤、バインダー成分、及び必要に応じて用いられるポリマー(ii)のエマルジョンを所定の割合で配合し、ディスパー等を使用して十分混合する。次いで、必要に応じて用いられるその他の添加剤等を添加するとともに、アルカリ物質等をさらに添加してpHを調整する。その後、フィルター等でろ過して粗大粒子やゴミを除去することで、目的とするオーバーコート材を製造することができる。
オーバーコート材の粘度を、インクジェット方式の記録ヘッドのノズルから吐出しうる適度な粘度に調整することが好ましい。25℃におけるオーバーコート材の粘度は、2~10mPa・sであることが好ましい。また、25℃におけるオーバーコート材のpHは、7.0~10.0であることが好ましく、7.5~9.5であることがさらに好ましい。オーバーコート材のpHが7.0未満であると、バインダー成分が析出しやすくなることがある。一方、オーバーコート材のpHが10.0超であると、アルカリ性が強いため、記録ヘッドが劣化しやすくなることがある。
<オーバーコート材の使用>
オーバーコート材を充填したカートリッジを装填したインクジェット印刷機を使用し、インクジェット記録法により記録(印刷)された画像上に、インクジェット法によってオーバーコート材を塗布することで、印刷皮膜である透明なオーバーコート層を形成することができる。また、形成されるオーバーコート層は、印刷物を紫外線から保護するとともに、耐摩擦性に優れていることから、印刷物の耐久性を向上させることができる。印刷物は、染料を用いたインクジェット用のインクで記録した印刷物であってもよいし、顔料を用いたインクジェット用のインクで記録した印刷物であってもよい。インクを充填したカートリッジとともに、オーバーコート材を充填したカートリッジを装填したインクジェット印刷機を使用し、印画と同時又は印画後にオーバーコート材を塗布することで、オーバーコート印刷物を得ることができる。また、スクリーン印刷やスリットコート印刷によって、印刷物の上にオーバーコート材を塗布してもよい。
印刷物を構成する基材(被印刷基材)としては、例えば、紙、光沢紙、写真紙、インクジェット紙の他、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリハロゲン化ビニル系等のプラスチックフィルム等を挙げることができる。これらの被印刷基材上にオーバーコート材を塗布することで、透明な印刷皮膜を形成することができる。なお、透明なフィルムにオーバーコート材を塗布してオーバーコート層を形成したものは、紫外線吸収フィルムとして利用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
<ポリマーエマルジョンの製造(1)>
(合成例1)
ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)160部、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MPG)160部、ヨウ素1.2部、2,2-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(商品名「V-70」、富士フィルム和光純薬製)(V-70)4.4部、ジフェニルメタン(DPM)0.1部、メタクリル酸ベンジル(BzMA)114.4部、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール(RUVA-1)64.7部、及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)13.0部を反応容器に入れた。窒素をバブリングしながら撹拌して45℃に加温し、4.5時間重合してポリマー鎖A(A鎖)を合成した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は37.0%であり、固形分に基づき算出した重合転化率(収率)は約100%であった。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したA鎖のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は10,000、分散度(PDI=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は1.30であった。
得られたA鎖の溶液を40℃まで降温させた後、V-70 1.9部、メタクリル酸(MAA)18.5部、BzMA65.1部、及びメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)33.6部を添加した。40℃で4時間重合してポリマー鎖B(B鎖)を形成し、ブロックコポリマーを得た。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は48.5%であり、重合転化率(収率)は約100%であった。得られたブロックコポリマーのMnは16,000、PDIは1.42であった。エタノール性の0.1mol/L水酸化カリウム溶液を用いた滴定により測定したブロックコポリマーの酸価(実測値)は、38.9mgKOH/gであった。
得られたブロックコポリマーの溶液に、室温条件下、28%アンモニア水14.4部(メタクリル酸の当モル量×1.1倍量)及びイオン交換水625.6部の混合液を添加して中和し、ポリマーエマルジョンE-1を得た。ポリマーエマルジョンE-1の固形分は24.9%であり、pH(25℃)は8.8であった。また、動的光散乱式の粒子径分布測定装置(粒度測定器、商品名「NICOMP 380ZLS-S」、インターナショナル・ビジネス社製)を使用して測定した、ポリマーエマルジョンE-1中のエマルジョン粒子の数平均粒子径は、50.3nmであった。
(合成例2~5)
表1に示す処方としたこと以外は、前述の合成例1と同様にしてポリマーエマルジョンE-2~E-5を得た。得られたポリマーエマルジョンE-2~E-5の特性を表1に示す。また、表1中の略号の意味を以下に示す。
・EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
・MMA:メタクリル酸メチル
・BPMA:メタクリル酸ベンゾフェノン
・DMAE:ジメチルアミノエタノール
・AMP:2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール
Figure 2023055372000003
<紫外線吸収基含有モノマーの合成>
(合成例6)
3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(MDMPA)48.8部、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[2-ヒドロキシ-3-(2-エチルヘキシルオキシ)プロポキシ]フェノール(商品名「チヌビン405」、BASF社製)58.3部、及び0.1%ジラウリン酸スズのMDMPA溶液25部を反応容器に入れ、80℃に加温した。2-イソシアナトエチルメタクリレート(商品名「カレンズMOI」、昭和電工社製)15.5部を1時間かけて滴下し、80℃で7時間反応させた。反応終了後、反応液の一部をサンプリングして赤外分光光度計を使用してIR吸収を測定した。その結果、2,260cm-1付近の吸収(イソシアネート基)が消失し、3,340cm-1付近の吸収(ウレタン結合の-NH-)が生成したことを確認した。また、不揮発分は50.1%であった。これにより、紫外線吸収性基含有モノマーである、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート(RUVA-2、極大吸収波長336nm)を得た。
<ポリマーエマルジョンの製造(2)>
(合成例7)
BDG120.1部、MDMPA97.9部、2-シアノ-2-アイオド-プロパン1.56部、V-70 2.4部、BzMA140.8部、RUVA-2のMDMPA溶液44.3部、及びN-アイオドスクシンイミド0.2部を反応容器に入れた。窒素をバブリングしながら撹拌して45℃に加温し、4.5時間重合してポリマー鎖A(A鎖)を合成した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は40.9%であり、重合転化率は約100%であった。A鎖のMnは15,000、PDIは1.21であった。
得られたA鎖の溶液を40℃まで降温させた後、V-70 1.9部、MAA12.9部、CHMA33.6部、及びメタクリル酸メチル(MMA)30.0部を添加した。40℃で4時間重合してポリマー鎖B(B鎖)を形成し、ブロックコポリマーを得た。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は48.5%であり、重合転化率は約100%であった。得られたブロックコポリマーのMnは18,300、PDIは1.31、酸価は35.0mgKOH/gであった。
得られたブロックコポリマーの溶液に、室温条件下、28%アンモニア水10部及びイオン交換水470部の混合液を添加して中和し、ポリマーエマルジョンE-6を得た。ポリマーエマルジョンE-6の固形分は25.3%であり、pHは8.3であった。また、ポリマーエマルジョンE-6中のエマルジョン粒子の数平均粒子径は、107.6nmであった。
<ポリマーエマルジョンの製造(3)>
(比較合成例1)
BDG252.8部、ヨウ素0.4部、V-70 1.4部、DPM0.1部、BzMA80.4部、EHMA90.5部、及びHEMA15.2部を反応容器に入れた。窒素をバブリングしながら撹拌して45℃に加温し、4.5時間重合してA鎖を合成した。重合転化率は約100%であり、A鎖のMnは26,000、PDIは1.38であった。
得られたA鎖の溶液を40℃まで降温させた後、V-70 1.9部、MAA11.8部、BzMA24.1部、及びEHMA27.1部を添加した。40℃で4時間重合してB鎖を形成し、ブロックコポリマーを得た。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は48.9%であり、重合転化率は約100%であった。得られたブロックコポリマーのMnは29,000、PDIは1.51、酸価は30.8mgKOH/gであった。
得られたブロックコポリマーの溶液にBDG56.2部を添加して希釈した。室温条件下、28%アンモニア水9.1部及びイオン交換水383.8部の混合液を添加して中和し、ポリマーエマルジョンH-1を得た。ポリマーエマルジョンH-1の固形分は25.4%であり、エマルジョン粒子の数平均粒子径は86.0nmであった。
(比較合成例2)
イオン交換水300部を反応容器に入れ、75℃に加温した後、過硫酸ナトリウム1部を添加した。また、スチレン100部、アクリル酸ブチル50部、RUVA-1 50部、及び反応性界面活性剤(商品名「アクアロンKH-10」、第一工業薬品社製)6部を別容器に入れ、50℃で混合して均一なモノマー混合液を調製した。滴下ロートを用いて調製したモノマー混合液を2時間かけて反応容器内に滴下した後、75℃で4時間反応させて、若干透明感のある青白色のポリマーエマルジョンH-2を得た。ポリマーエマルジョンH-2の固形分は40.2%であり、粘度は39mPa・sであり、エマルジョン粒子の数平均粒子径は132nmであった。
<ポリマーエマルジョン(ポリマーii)の製造>
(合成例8)
酸化ポリエチレンワックス(融点150℃、酸価20mgKOH/g)100部及びトルエン100部を反応容器に入れ、90℃に加熱して均一化した。内容物を激しく撹拌しながら、ジメチルアミノエタノール3.3部及びイオン交換水368.1部の混合物を、温度が低下しないように徐々に添加し、相転換してエマルジョン化させた。加熱してトルエン及び水を留去し、ガスクロマトグラフィーによりトルエンが検出されなくなるまで継続した。イオン交換水を添加して固形分を20%に調整し、黄味がかった半透明のポリマーエマルジョンO-1を得た。得られたポリマーエマルジョンO-1のpHは8.8であり、エマルジョン粒子の数平均粒子径は86.3nmであった。
<オーバーコート材の製造>
(実施例1~9、比較例1~3)
表2及び3の上段に示す各成分(単位:部)を配合し、ディスパーを使用して30分間撹拌して十分均一化した。その後、5μmのフィルターでろ過して粗大粒子及びゴミを除去して、オーバーコート材OV-1~9及びオーバーコート材HOV-1及び2を得た。また、表3に示すように、比較合成例1で得たポリマーエマルジョンH-1、及びポリマー化していない水溶性で低分子量の紫外線吸収剤(商品名「チヌビン1130」(BASF社製)を用いて、オーバーコート材HOV-3を得た。表2及び3中の各ポリマーエマルジョンの量は、各ポリマーエマルジョンに含まれるポリマーの純分(量)を意味する。また、表2及び3中、「DMDG」はジエチレングリコールジメチルエーテルである。「界面活性剤」としては、商品名「シルフェイスSAG-503A」(信越化学社製)を用いた。
Figure 2023055372000004
Figure 2023055372000005
<インクジェット用のインク及び印刷物の製造>
(製造例1)
イオン交換水675部、BDG50部、顔料分散剤140部、及びC.I.ピグメントブルー15:3(PB15:3、大日精化工業社製)150部を混合し、ディゾルバーを使用して十分撹拌混合して混合物を得た。顔料分散剤としては、スチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル/メタクリル酸2-ヒドロキシエチル/メタクリル酸=20/10/10/20/10/10の共重合体(Mn20,000、PDI2.2)をアンモニアで中和し、プロピレングリコールモノプロピルエーテル/ジプロピレングリコールモノメチルエーテル/水=1/1/2(質量比)に溶解させた溶液(固形分35%)を用いた。ジルコニアビーズ(直径1mm)を分散メディアとし、分散メディアの充填率が40体積%であるペイントシェイカーに得られた混合物を入れ、120分間分散処理して分散液を得た。得られた分散液を遠心分離処理(7,500rpm、20分間)した後、10μmのメンブレンフィルターでろ過して粗粒を除去した。イオン交換水を添加して濃度を調整し、顔料濃度14%である青色の顔料分散液を得た。
得られた顔料分散液37.1部、ピロリドン5部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10部、フッ素系界面活性剤(商品名「サーフロンS-211」、旭硝子社製)の1%水溶液30部、防腐剤(商品名「プロキセルGXL」、アビシア製)0.2部、及びイオン交換水17.7部を、ディスパーを使用して撹拌混合した。その後、1μmのメンブランフィルター及び0.5μmのメンブランフィルターでろ過して、青色インクを得た。
得られた青色インクをカートリッジに充填し、プレートヒーター付きのインクジェット印刷機(商品名「MMP825H」、マスターマインド社製)に装着した。インクジェット法により被印刷基材(ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、フタムラ化学社製、60μm)にベタ画像を記録して印刷物-1を得た。具体的には、プレートヒーターを用いて表面温度が50℃になるように被印刷基材を加熱してから青色インクを付与して印刷した。
(製造例2)
PB15:3に代えてC.I.ピグメントレッド122(PR122、大日精化工業社製)を用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして赤色インクを得た。さらに、青色インクに代えて赤色インクを用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして印刷物-2を得た。
(製造例3及び4)
PB15:3に代えて、C.I.ピグメントイエロー74(PY74、大日精化工業社製)及びC.I.ピグメントイエロー155(PY155、クラリアントジャパン社製)をそれぞれ用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして黄色インク-1及び黄色インク-2をそれぞれ得た。さらに、青色インクに代えて黄色インク-1及び黄色インク-2をそれぞれ用いたこと以外は、前述の製造例1と同様にして印刷物-3及び印刷物-4を得た。
<オーバーコート印刷物の製造及び評価>
(実施例10~21及び比較例4~6)
表4に示す種類のオーバーコート材をカートリッジにそれぞれ充填し、インクジェット印刷機に装着した。そして、表4に示す種類の印刷物の全面に、前述の製造例1と同様にインクジェット法によりオーバーコート材を塗布して、オーバーコート印刷物OV印刷物-1~13、及びオーバーコート印刷物HOV印刷物-1~3を得た
(吐出安定性)
インクジェット印刷機の記録ヘッドからのオーバーコート材の吐出状態等を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがってオーバーコート材の吐出安定性を評価した。結果を表4に示す。以下に示す評価基準のうち、「○」を合格とした。
○:問題なく吐出できており、良好なオーバーコート層を印刷することができた。
△:微小液滴の飛び散りが認められた。
×:吐出の際に液滴が飛び散り、画像が乱れた。
(密着性)
セロハンテープ剥離試験によって、被印刷基材に対するオーバーコート層の密着性を評価した。具体的には、ドライヤーを使用して印刷物を十分に乾燥させてから、オーバーコート層にセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)、ニチバン社製」)を十分に押し当てた後、剥離した。剥離後のオーバーコート層の剥がれ具合を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって密着性を評価した。結果を表4に示す。以下に示す評価基準のうち、「◎」及び「○」を合格とした。
◎:オーバーコート層が全く剥がれなかった。
○:オーバーコート層が僅かに剥がれた。
△:剥がれたオーバーコート層の面積の方が、剥がれずに残ったオーバーコート層の面積よりも小さかった。
×:剥がれたオーバーコート層の面積の方が、剥がれずに残ったオーバーコート層の面積よりも大きかった。
(耐摩擦性)
学振型摩擦堅牢度試験機(商品名「RT-300」、大栄科学社製)を使用し、得られた印刷物のオーバーコート層の表面を、(1)荷重500gの白布で20往復する乾摩擦;及び(2)荷重500gの水で湿らせた白布で20往復する湿摩擦;をそれぞれ実施した。摩擦後のオーバーコート層の状態を目視で観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐摩擦性を評価した。結果を表4に示す。以下に示す評価基準のうち、「◎」及び「○」を合格とした。
◎:オーバーコート層が全く剥がれなかった。
○:オーバーコート層が僅かに剥がれた。
△:剥がれたオーバーコート層の面積の方が、剥がれずに残ったオーバーコート層の面積よりも小さかった。
×:剥がれたオーバーコート層の面積の方が、剥がれずに残ったオーバーコート層の面積よりも大きかった。
(耐光性)
アイスーパーUVテスター(商品名「SUV-161W」、メタルハライドランプ、岩崎電気社製、ランプ照度50mW/cm、63℃)を使用し、印刷物の表面に紫外線を100時間照射する耐光性試験を実施した。紫外線照射前と紫外線照射後の色差(ΔE)を測定及び算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。結果を表4に示す。以下に示す評価基準のうち、「○」及び「△」を合格とした。
〇:ΔEが1.0未満であった。
△:ΔEが1.0以上3.0未満であった。
×:ΔEが3.0以上であった。
Figure 2023055372000006
耐光性試験後のOV印刷物-2(実施例11)及びOV印刷物-7(実施例16)のオーバーコート層上にメチルエチルケトン(MEK)一滴を滴下した。その結果、OV印刷物-2のオーバーコート層は溶解したが、OV印刷物-7のオーバーコート層は溶解せず、僅かにシワがよる程度であった。OV印刷物-7のオーバーコート層を形成したオーバーコート材OV-7には、メタクリル酸ベンゾフェノンに由来する構成単位を有するバインダー成分(ポリマーエマルジョンE-5)が含まれている。このため、バインダー成分中のベンゾフェノン基が紫外線と反応して架橋し、形成されたオーバーコート層がさらに硬化したと考えられる。
本発明のオーバーコート材は、例えば、屋外宣伝物、自動車、航空機、外壁等の印刷物を保護するための保護膜として有用である。また、透明フィルム等をコーティングすることで、透明な紫外線吸収フィルムを製造することも可能であり、内容物保護用フィルム等への展開も期待される。

Claims (6)

  1. 水及び水溶性有機溶媒を含む水系媒体、界面活性剤、バインダー成分、並びに第1のアルカリ成分を含有するインクジェット印刷用のオーバーコート材であって、
    前記バインダー成分が、下記(1-1)~(1-5)の要件を満たすポリマー(i)であるオーバーコート材。
    (1-1)メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が90質量%以上である。
    (1-2)ポリマーブロックA及びポリマーブロックBを含む、数平均分子量が10,000~50,000であり、分子量分布が1.2~1.8であるABブロックコポリマーである。
    (1-3)前記ポリマーブロックAが、ベンゾトリアゾール骨格又はトリアジン骨格を持った紫外線吸収性基を有する紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が10~80質量%であり、前記紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマー以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が20~90質量%であり、数平均分子量が5,000~30,000であり、分子量分布が1.1~1.6である。
    (1-4)前記ポリマーブロックBが、メタクリル酸に由来する構成単位の含有量が10~50質量%であり、前記メタクリル酸以外のメタクリル酸系モノマーに由来する構成単位の含有量が50~90質量%である。
    (1-5)前記メタクリル酸に由来するカルボキシ基が前記第1のアルカリ成分で中和されて前記水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
  2. 前記第1のアルカリ成分が、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1に記載のオーバーコート材。
  3. 下記(2-1)及び(2-2)の要件を満たすポリマー(ii)をさらに含有する請求項1又は2に記載のオーバーコート材。
    (2-1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリα-オレフィン、及びこれらの共重合体からなる群より選択される少なくとも一種のカルボキシ基を有するポリマーの前記カルボキシ基が第2のアルカリ成分で中和されて前記水系媒体中に自己乳化し、数平均粒子径30~300nmのエマルジョン粒子が形成されている。
    (2-2)前記カルボキシ基を有するポリマーの酸価が10~150mgKOH/gである。
  4. 前記第2のアルカリ成分が、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、及び2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールからなる群より選択される少なくとも一種である請求項3に記載のオーバーコート材。
  5. 前記紫外線吸収性基含有メタクリル酸系モノマーが、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-(2-エチルヘキシルオキシ)-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート、1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-ドデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメート、及び1-[3-ヒドロキシ-4-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]フェニロキシ]-3-トリデシルオキシ-2-プロピルメタクリロイルオキシエチルカーバメートからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1~4のいずれか一項に記載のオーバーコート材。
  6. 前記ポリマー(i)が、さらに、ベンゾフェノンメタクリレートに由来する構成単位を1~10質量%含む請求項1~5のいずれか一項に記載のオーバーコート材。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116514733A (zh) * 2023-06-16 2023-08-01 吉林省卓材新研科技有限公司 共价有机框架材料、配体和在钙钛矿太阳能电池中的应用

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