JP2023051338A - 内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低温プラズマプラグに掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御方法を提供することを目的とする。【解決手段】低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ20と、外気温又は内燃機関1,1Bの状態を示す温度を測定するセンサ32,32A,32Bと、を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関1,1Bの制御装置10,10Bであって、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する電圧印加部13と、電圧印加部13を制御する制御部12と、を備え、制御部12は、内燃機関1,1Bの始動時に、温度センサ32,32A,32Bが測定した温度が所定値未満の場合、内燃機関1,1Bの状態を示す温度が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御することを特徴とする。【選択図】図1
Description
この発明は、内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法に関する。
近年、モビリティーからのCO2排出量の削減は急務であり、内燃機関を駆動するために、サトウキビ等の植物を発酵して製造されたカーボンニュートラル燃料を用いる方法が、ブラジルをはじめとする多くの諸外国で推進されている。カーボンニュートラル燃料は、アルコール類からなる燃料や、アルコールとガソリンとの混合燃料等であり、低温環境下において、揮発性を有するガソリンと比べ着火性に劣ることが知られている。カーボンニュートラル燃料の着火性の低さは、ユーザーがカーボンニュートラル燃料を敬遠する理由の一つである。カーボンニュートラル燃料を低温環境下で着火する手段として、近年低温プラズマプラグを用いて、シリンダ内にプラズマを発生させてそれを起点として混合気を爆発させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
低温プラズマプラグでプラズマを発生させるためには約20kV以上の電圧を印加する必要がある。このような高電圧を電源から低温プラズマプラグに印加すると、プラグコードが接続される端子と主体金具との間に設けられた碍子部近傍で短絡が生じる所謂フラッシュオーバー現象が発生しやすくなる。このフラッシュオーバー現象の発生を抑制するために、低温プラズマプラグの碍子部には、絶縁性のプラグキャップが設けられている。また、フラッシュオーバー現象の発生を効果的に防止するためには、短絡の経路となる碍子部を絶縁材で隙間なく覆うことが求められることから、絶縁材の材料としてゴムなどの有機系材料が用いられることが多い。しかし、有機系材料などの絶縁材からなるプラグキャップは、低温プラズマプラグに電圧が印加されるたびに少しずつ劣化し、また、その印加電圧が大きいほど劣化が進み、絶縁性低下が懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされた発明であり、低温プラズマプラグに掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる内燃機関の制御装置及び内燃機関の制御方法を提供することを目的とする。
この発明に係る内燃機関の制御装置および内燃機関の制御方法は、以下の構成を採用した。
(1)この発明の一態様に係る内燃機関の制御装置は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグを有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御装置であって、外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度を検知する温度センサと、前記低温プラズマプラグに電圧を印加する電圧印加部と、前記内燃機関の始動時における前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す前記内燃機関の状態を示す温度を測定し、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満の場合、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部を制御する制御部と、を備える。
(1)この発明の一態様に係る内燃機関の制御装置は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグを有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御装置であって、外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度を検知する温度センサと、前記低温プラズマプラグに電圧を印加する電圧印加部と、前記内燃機関の始動時における前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す前記内燃機関の状態を示す温度を測定し、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満の場合、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部を制御する制御部と、を備える。
(2)上記(1)の態様において、前記混合気は、ガソリンとアルコールとを含むアルコール混合燃料および空気の混合気であり、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満のとき、前記制御部は、前記混合気におけるアルコール燃料の比率を理論空燃比よりも高くし、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値以上のとき、前記制御部は、前記低温プラズマプラグに印加する電圧を、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満のときの印加電圧よりも低くする。
(3)上記(1)の態様において、内燃機関は、火花点火式の火花点火プラグをさらに備え、制御装置は、前記火花点火プラグに電圧を印加する点火コイルをさらに備え、前記混合気は、ガソリンとアルコールとを含むアルコール混合燃料および空気の混合気であり、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満のとき、前記制御部は、前記火花点火プラグを作動するように前記点火コイルを制御する。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記所定値は、0℃以上15℃以下の範囲内の温度である。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記外気温として、前記内燃機関のシリンダ内に供給される吸入空気の温度を検知する吸気温度センサを備え、前記制御部は、前記吸気温度センサで検知された吸気温度が所定値未満の場合、前記吸気温度が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部を制御する。
(6)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記内燃機関の状態を示す温度として、前記内燃機関に供給されるオイルの温度を検知する油温センサを備え、前記制御部は、前記油温センサで検知された油温が所定値未満の場合、前記油温が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部を制御する。
(7)上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記内燃機関の状態を示す温度として、前記内燃機関に供給される冷却水の温度を検知する水温センサを備え、前記制御部は、前記水温センサで検知された水温が所定値未満の場合、前記水温が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部を制御する。
(8)この発明の一態様に係る内燃機関の制御装置は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグを有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御装置であって、前記低温プラズマプラグに電圧を印加する電圧印加部と、始動時の第1クランキングにおいて、前記低温プラズマプラグに第1電圧を印加し、前記第1電圧で前記内燃機関が始動しているか否か判定し、且つ第1電圧で前記内燃機関が始動していない場合に、第1電圧よりも高い第2電圧を前記低温プラズマプラグに印加するように前記電圧印加部を制御する制御部と、を備える。
(9)上記(8)の態様において、前記制御部は、前記第2電圧で前記内燃機関が始動しているか否かを判定し、前記第2電圧で前記内燃機関が始動していない場合に、前記第2電圧よりも高い第3電圧を前記低温プラズマプラグに印加する。
(10)上記(8)または(9)の態様において、前記制御部は、前記第1クランキングの後の第2クランキングにおいて、前記第1クランキングにおける印加電圧の最大値よりも高い第4電圧を前記低温プラズマプラグに印加する。
(11)上記(10)の態様において、前記制御部は、前記第2クランキングにおいて、前記第4電圧で前記内燃機関が始動していない場合に、第4電圧よりも高い第5電圧を前記低温プラズマプラグに印加するように前記電圧印加部を制御する。
(12)上記(10)の態様において、前記制御部は、前記第1クランキングの終了から次のクランキングの開始までの時間を測定し、前記時間が所定値未満である場合には、当該クランキングを第2クランキングと判断して前記第4電圧を前記低温プラズマプラグに印加し、前記時間が所定値以上である場合には、当該クランキングを前記第1クランキングと判断して前記第1電圧を前記低温プラズマプラグに印加する。
(13)上記(8)~(12)の態様において、内燃機関は、火花点火式の火花点火プラグをさらに備え、制御装置は、前記火花点火プラグに電圧を印加する点火コイルをさらに備え、前記第1クランキングにおいて、前記制御部は、前記火花点火プラグを作動するように前記点火コイルを制御し、前記火花点火プラグの作動により前記内燃機関が始動しているか否か判定し、前記火花点火プラグの作動により前記内燃機関が始動していない場合に、前記低温プラズマプラグに前記第1電圧を印加するように電圧印加部を制御する。
(14)この発明の一態様に係る内燃機関の制御方法は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグを有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御方法であって、前記内燃機関の始動時における外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度を測定する工程と、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値未満の場合、前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が低いほど前記低温プラズマプラグに印加する電圧を高くする工程と、を有する。
(15)この発明の一態様に係る内燃機関の制御方法は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグを有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御方法であって、始動時の第1クランキングにおいて、前記低温プラズマプラグに第1電圧を印加する第1印加工程と、前記第1電圧で前記内燃機関が始動しているか否かを判定する判定工程と、前記第1電圧で前記内燃機関が始動していない場合に、前記第1電圧よりも高い第2電圧を前記低温プラズマプラグに印加する第2印加工程と、を有する。
(1)の態様によれば、低温プラズマプラグに掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる。
(2)の態様によれば、アルコール混合燃料および空気の混合気に点火をしづらい低温環境下において点火をしやすくすることができるとともに、低温環境下と比べ、点火をしやすい温度域において、低温プラズマプラグにかかる負担を低減することができる。尚、アルコール混合燃料及び空気の混合気に点火をしづらい低温環境下において点火をしやすくする効果は、E85以下のアルコール混合燃料を用いる場合に特に有効である。
(3)の態様によれば、アルコール混合燃料及び空気の混合気に点火をしやすい温度域において、低温プラズマプラグの使用頻度を減らし、低温プラズマプラグにかかる負担を減らすことができる。
(4)の態様によれば、アルコール燃料に対し、機関運転時の印加電圧でプラズマ点火をしづらい低温度域では、必要に応じて低温プラズマプラグへの印加電圧を高くし、機関運転時の印加電圧でプラズマ点火が可能な温度域では、低温度域よりも低温プラズマプラグへの印加電圧を小さくし、低温プラズマプラグに係る負担を低減することができる。
(5)の態様によれば、外気温を基に、混合気の点火に必要な電圧を低温プラズマプラグに印加することができる。
(6)および(7)の態様によれば、内燃機関の状態を基に、混合気の点火に必要な電圧を低温プラズマプラグに印加することができる。
(8)の態様によれば、低温プラズマプラグに掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる。
(9)の態様によれば、第2電圧を基に、低温プラズマプラグに印加する電圧を設定することができる。
(10)の態様によれば、セルモーターをオフにした場合であっても、先のクランキングでの最大印加電圧を基に、次のクランキングにおいて、低温プラズマプラグに印加する電圧を設定することができる。
(11)の態様によれば、第4電圧を基に、低温プラズマプラグに印加する電圧を設定することができる。
(12)~(15)の態様によれば、低温プラズマプラグに掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、内燃機関1の制御装置10および内燃機関1の要部の断面模式図である。本実施形態に係る内燃機関1の制御装置10は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ20と、外部の空気の温度又は内燃機関の状態を示す温度を測定する温度センサと、を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関1の制御装置10であって、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する電圧印加部13と、電圧印加部13を制御する制御部(ECU)12と、を備える。
図1は、内燃機関1の制御装置10および内燃機関1の要部の断面模式図である。本実施形態に係る内燃機関1の制御装置10は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ20と、外部の空気の温度又は内燃機関の状態を示す温度を測定する温度センサと、を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関1の制御装置10であって、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する電圧印加部13と、電圧印加部13を制御する制御部(ECU)12と、を備える。
内燃機関1は、内燃機関1の下部を形成したピストン4が摺動自在に嵌入されるシリンダ2aと、シリンダ2aを画定するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の上部に取り付けられてピストン4の頂面とともに燃焼室5を形成するシリンダヘッド3と、を備える。
シリンダヘッド3には、燃焼室5に臨む吸気ポート34および排気ポート37が設けられている。シリンダヘッド3には、吸気管31および排気管38が接続されている。吸気管31内は、吸気ポート34を通じて燃焼室5に連通している。シリンダヘッド3の上部には、吸気ポート34を開閉可能な吸気バルブ35と、排気ポート37を開閉可能な排気バルブ36と、が設けられている。
吸気管31には、例えば吸気温度センサ32およびインジェクタ33が取り付けられている。
吸気温度センサ32は、内燃機関1の外部から吸気バルブ35により吸気され、吸気管31内を流れる空気の温度を測定する。すなわち、吸気温度センサ32は、燃焼室5内が吸気する空気の温度を測定しており、内燃機関1の始動時においては、当該空気の温度は、始動時の外気温に対応する。また、吸気温度センサ32は制御部12に接続されており、燃焼室5内が吸気する空気の温度に対応するセンサ信号が制御部12に送信される。
インジェクタ33は、燃料を燃焼室5内に向けて噴射する。燃焼室5内には、インジェクタ33から供給される燃料と、吸気管31から供給される空気との混合気が供給される。燃料としては、エタノール燃料などのアルコール燃料、ガソリン等の燃料が用いられる。本発明は、燃料としてアルコール燃料を用いる場合に特に有効である。
吸気温度センサ32は、内燃機関1の外部から吸気バルブ35により吸気され、吸気管31内を流れる空気の温度を測定する。すなわち、吸気温度センサ32は、燃焼室5内が吸気する空気の温度を測定しており、内燃機関1の始動時においては、当該空気の温度は、始動時の外気温に対応する。また、吸気温度センサ32は制御部12に接続されており、燃焼室5内が吸気する空気の温度に対応するセンサ信号が制御部12に送信される。
インジェクタ33は、燃料を燃焼室5内に向けて噴射する。燃焼室5内には、インジェクタ33から供給される燃料と、吸気管31から供給される空気との混合気が供給される。燃料としては、エタノール燃料などのアルコール燃料、ガソリン等の燃料が用いられる。本発明は、燃料としてアルコール燃料を用いる場合に特に有効である。
燃焼室5の上部には、低温プラズマプラグ20が取り付けられている。低温プラズマプラグ20は、先端部21,接地電極22,主体金具23,絶縁部24,碍子部25,端子部27及び基端部28を有する。低温プラズマプラグ20は、プラグコード(不図示)および電圧印加部13を介してECU12に接続されている。低温プラズマプラグ20は、基端部28がプラズマコード(不図示)により接続されていることで電圧印加部13およびECU12と電気的に接続されている。
低温プラズマプラグ20の内部には、軸方向に沿って基端部28から先端部21までつながる円柱状の中心電極(不図示)および中心電極の周囲を囲む絶縁体が設けられている。基端部28は、端子部27とつながる。端子部27は、碍子部25と接続され、碍子部25は、絶縁部24を介して主体金具23とつながる。碍子部25は、表面全面をプラグキャップ26により覆われている。プラグキャップ26は、ゴムなどの有機系材料などが用いられる。プラグキャップ26は、碍子部25の延材方向に対して垂直な表面の全面を隙間なく覆っていることが好ましい。このようにプラグキャップ26が設けられることで、端子部27と主体金具23との間でのフラッシュオーバー現象の発生が抑制される。
低温プラズマプラグ20は、燃焼室5側における端部に先端部21、接地電極22が設けられている。先端部21は、中心電極の先端の周囲を取り囲む有底筒状の絶縁体である。接地電極22は、主体金具23の燃焼室5側の端部に接合された複数の棒状の金属製の部材である。図1においては、接地電極22は、断面が矩形状の第1接地電極22aおよび第2接地電極22bからなる。第1接地電極22aおよび第2接地電極22bは、低温プラズマプラグ20の軸方向に沿って設けられている。
ECU12は、吸気温度センサ32等の温度センサ、内燃機関1の回転数を測定するエンジン回転センサ42、電圧印加部13およびインジェクタ33と接続している。ECU12、温度センサ、エンジン回転センサ等のセンサからの検出信号に基づき、電圧印加部13から低温プラズマプラグ20に印加する電圧の電圧値およびインジェクタ33からの燃料噴射量を制御する。制御装置10は、このようにして、所望のA/F(空燃比)で燃焼室5内に燃料を供給するとともに、低温プラズマプラグ20の先端部21に所望の高周波パルスを与える。
電圧印加部13から中央電極を介して先端部21に所定の高周波パルスが印加されると、非平衡プラズマ放電が起こり、先端部21と第1接地電極22aとの間および先端部21と第2接地電極22bとの間に放電ギャップが生じる。ここで、非平衡プラズマ放電が起こる際、先端部21および接地電極22の近傍には、ラジカルが発生する。非平衡プラズマ放電が起こる際のラジカルの発生量は、中央電極に印加される電圧が大きいほど多い。
このように燃焼室5内に発生された非平衡プラズマ放電により、燃焼室5内に供給された混合気は燃焼される。
図2は、内燃機関1の制御装置10において、温度センサで測定した温度に基づいて低温プラズマプラグ20に印加する電圧を決定するためのマップのイメージ図である。マップは、予め調べた、始動時の外気温又は内燃機関1の状態を示す温度と、内燃機関1が始動するために必要な低温プラズマプラグ20への印加電圧と、の関係に基づいて作成される。図2のマップでは、温度センサで検知した温度がTaである場合、低温プラズマプラグ20に対して電圧値Vaを印加するよう規定されている。
温度センサで測定した温度が所定値T0以上である場合、混合気を点火させるのに必要なプラズマの量は少なくてよい一方、一定以下の電圧では点火時の筒内圧力でプラズマを発生させることができず混合気を点火させることはできない。外気温又は内燃機関の状態を示す温度が所定値T0以上の範囲において、内燃機関1の始動に必要な低温プラズマプラグ20への印加電圧の電圧値は、温度が変化してもほとんど変化しない。外気温又は内燃機関の状態を示す温度が所定値T0における、内燃機関1を始動させるために必要な、低温プラズマプラグ20への印加電圧を符号V0で示す。印加電圧V0は、低温プラズマプラグ20で非平衡プラズマ放電を起こすために必要な電圧であり、約20kVである。外気温又は内燃機関の状態を示す温度が所定値T0以上の範囲にいて、内燃機関1を始動させるために必要な、低温プラズマプラグ20への印加電圧は、機関運転時に低温プラズマプラグ20に印加する電圧と略同一である。ここで、機関運転時に低温プラズマプラグ20に印加する電圧とは、例えば、暖気後に内燃機関1が継続的に運転可能な電圧のことをいう。図2に示すマップは、温度が所定値T0以上の場合、印加電圧をV0にするよう示されている。
外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0未満で、内燃機関1の低温プラズマプラグ20に対し、電圧値V0の電圧を印加する場合、放電ギャップにプラズマが発生したとしても、非平衡プラズマ放電に必要なラジカルの発生量が十分ではなく、混合気への点火を出来ない。ラジカルの発生量は、低温プラズマプラグ20への印加電圧の増大に伴い増大する。また、混合気への点火に必要なラジカルの発生量は、低温プラズマプラグ20への印加電圧の電圧値Vaに依存し、電圧値Vaが大きいほど多い。そのため、混合気への点火をするためには、温度が低いほど、低温プラズマプラグ20への印加電圧を大きくする必要がある。
マップにおける外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0未満のとき、温度変化に対する低温プラズマプラグ20に印加する電圧の変化の傾きの大きさは、1(kV/℃)以上2(kV/℃)以下であることが好ましく、0.2(kV/℃)以上10(kV/℃)以下であってもよい。
混合気がアルコールとガソリンとを含むアルコール混合燃料および空気の混合気であり、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0未満のとき、ECU12は、混合気におけるアルコール混合燃料の比率を理論空燃比よりも高くすることが好ましい。低温環境下では、アルコール混合燃料の着火性が低く、例外的に理論空燃比よりも燃料の比率が高いことで、着火性が向上する。この現象は、アルコール混合燃料がE85以下のアルコール混合燃料を中心に確認される。
また混合気がアルコールと空気との混合気であり、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0以上のとき、ECU12は、低温プラズマプラグ20に印加する電圧を、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0未満のときの印加電圧よりも低くすることが好ましい。すなわち、外気温又は内燃機関の状態を示す温度がT0以上である場合、低温プラズマプラグ20に対して印加する電圧の電圧値をV0以下にすることが好ましい。ここで、低温プラズマプラグに対して印加する電圧の電圧値はV0であってもよい。
外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値T0以上である場合、先に記載の通り、機関運転時の低温プラズマプラグ20への印加電圧と同じ電圧値を印加した場合であっても、混合気に点火することが可能である。そのため、この構成により、低温でない温度下において、低温プラズマプラグ20への印加電圧が過剰になることを抑制できる。
温度に関する所定値T0は、例えば0℃以上15℃以下であり、5℃以上12℃以下であることが好ましい。燃料として、バイオエタノール等のアルコールとガソリンとの混合物を燃料として用いる場合、ガソリンからなる燃料と比較し、低温環境下での着火性が低い。低温環境下での着火性は、アルコールの比率が高い燃料ほど低い。具体的には、E80(エタノール燃料80体積%)燃料、E85燃料等の80体積%以上のアルコールを含むアルコール燃料を用いる場合、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が5℃未満の環境下において、低温プラズマプラグ20に対し、機関運転時の印加電圧を加えた場合であっても、内燃機関1が始動しにくい場合がある。
このよう場合でも、低温プラズマプラグ20への印加電圧を増加させることで、アルコール混合燃料に対して着火性を向上することができる。例えば、E100燃料や、E3燃料を用いる場合であっても、10℃以上であれば、機関運転時と同じ印加電圧を低温プラズマプラグ20に印加することで混合気への点火が可能である。用いられるアルコール燃料は、国や地域ごとに異なるが、所定値T0が0℃以上15℃以下であることで、アルコール混合燃料が用いられる場合において、機関運転時の印加電圧での混合気への点火が難しい低温環境下で、機関運転時よりも高い電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように制御できる。というのも、0℃では、低温プラズマプラグへの印加電圧として例えば20kVにしても始動できず、15℃では、従来のプラグでの着火性が悪くなる。ここで、所定値T0の値に応じて、印加電圧V0は変更されてもよい。
ECU12は、吸気温度センサ32で検知された吸気温度が所定値未満の場合、吸気温度が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御する。混合気への点火の可否に影響を及ぼす主な要素は外気温であり、吸気管31内に設けられた吸気温度センサ32を用いることで、外気温を正確に把握することができる。
内燃機関1は、内燃機関1の状態を示す温度として、内燃機関1に供給されるオイルの温度を検知する油温センサ(32A)を備えてもよい。この場合、ECU12は、油温センサ(32A)で検知された油温が所定値未満の場合、油温が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御してもよい。内燃機関1には、ピストン4とシリンダ2aとの間の潤滑性を高め、ピストン4の摺動を円滑にする役割、ピストン4とシリンダ2aとの隙間の密閉する役割等を果たすために、オイルが供給される。内燃機関1の始動時におけるオイルの温度は外気温と略同一であるため、始動時に内燃機関1に供給されるオイルの温度は外気温と推定することができる。
内燃機関1は、内燃機関1の状態を示す温度として、内燃機関1に供給される冷却水の温度を検知する水温センサ(32B)を備えてもよい。この場合ECU12は、水温センサ(32B)で検知された水温が所定値未満の場合、水温が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御してもよい。内燃機関1には、オーバーヒートを防ぐための冷却水が流される。内燃機関1の始動時における冷却水の温度は、外気温と略同一であるため、始動時に内燃機関1に供給される冷却水の温度は、外気温と推定することができる。
(内燃機関の制御方法)
図3は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の内燃機関の制御方法は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ20を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関1の制御方法であって、内燃機関1の始動時における外気温又は内燃機関1の状態を示す温度を測定する工程と、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値未満の場合、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧を高くする工程と、を有する。以下、本発明の詳細な手順について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の制御方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態の内燃機関の制御方法は、低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ20を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関1の制御方法であって、内燃機関1の始動時における外気温又は内燃機関1の状態を示す温度を測定する工程と、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が所定値未満の場合、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧を高くする工程と、を有する。以下、本発明の詳細な手順について説明する。
先ず、ユーザーは、セルスイッチ60をオンにして、セルモーター6を起動する(ステップS11)。セルモーター6が起動すると、ピストン4の上下方向の摺動による燃焼室5内の体積の増大および収縮が連続して起こる。
燃焼室5内の体積が増大するよりも前のタイミングでは、吸気バルブ35から燃料と空気との混合気が吸気され、燃焼室5の体積が収縮するタイミングでは、吸気バルブ35を介して燃焼室5内に供給された混合気が排気バルブ36を介して排気される。燃料としては、例えばアルコール燃料とガソリンとの混合燃料が用いられ、エタノール燃料が用いられることが好ましく、エタノールの比率が80体積%以上の高濃度エタノール燃料が用いられることが好ましい。高濃度エタノール燃料は、低温環境下で点火され難く、点火をするためには、低温プラズマプラグ20に高電圧を印加する必要がある。また、高濃度エタノール燃料は、低温環境下で、温度変化に対する、低温プラズマプラグ20の点火に必要な印加電圧の変化量が大きく、本発明の効果を得られやすい。
燃焼室5内の体積が増大するよりも前のタイミングでは、吸気バルブ35から燃料と空気との混合気が吸気され、燃焼室5の体積が収縮するタイミングでは、吸気バルブ35を介して燃焼室5内に供給された混合気が排気バルブ36を介して排気される。燃料としては、例えばアルコール燃料とガソリンとの混合燃料が用いられ、エタノール燃料が用いられることが好ましく、エタノールの比率が80体積%以上の高濃度エタノール燃料が用いられることが好ましい。高濃度エタノール燃料は、低温環境下で点火され難く、点火をするためには、低温プラズマプラグ20に高電圧を印加する必要がある。また、高濃度エタノール燃料は、低温環境下で、温度変化に対する、低温プラズマプラグ20の点火に必要な印加電圧の変化量が大きく、本発明の効果を得られやすい。
次いで、温度センサにより、外気温又は内燃機関1の状態を示す温度を測定する(ステップS12)。外気温は、吸気温度センサ32により測定される。内燃機関1の状態を示す温度は、例えば、エンジンオイルの温度(油温)、冷却水の温度(水温)等である。エンジンオイルの温度は、油温センサ(32A)により測定される。冷却水の水温は、水温センサ(32B)により測定される。始動時では、内燃機関1全体の温度が均一であり、外気温と略同一であるとみなすことができる。温度センサにより検出された信号は、ECU12に伝えられる。
次いで、温度センサにより測定した温度が所定値T0未満であるか否かを判定する(ステップS13)。所定値T0は、例えば0℃以上15℃以下の温度であり、5℃以上12℃以下の温度であることが好ましい。所定値T0がこのような範囲にあることで、アルコール燃料のアルコール濃度に拠らず、燃焼室5内に供給された混合気への点火性を高められる。
温度センサにより測定した温度が所定値未満である場合、低温プラズマプラグ20に対し、機関運転時の印加電圧を印加した場合であっても、アルコール燃料と空気の混合気に点火することができない。そのため、図2に例を示すマップを読み込み、温度センサで測定した温度に応じて、低温プラズマプラグ20に印加すべき適切な電圧を決定する(ステップS14)。当該マップは、温度が所定値T0未満である場合、温度が低いほど低温プラズマプラグ20への印加電圧を大きく設定する情報を含み、温度毎に低温プラズマプラグ20に印加する電圧(指定電圧)の情報を含む。ここで、温度センサにより測定した温度が所定値未満のとき、ECU12は、混合気におけるアルコール混合燃料の噴射量を増大させ、混合気におけるアルコール混合燃料の比率を理論空燃比よりも高くしておくことが好ましい。特に、アルコール混合燃料として、E85以下のアルコール濃度のアルコール混合燃料を用いる場合、上述のように制御することが好ましい。ステップS13では、このようにして内燃機関1を制御することで、混合気への点火性を高められる。
次いで、電圧印加部13より低温プラズマプラグ20に指定電圧を印加する(ステップS15)。指定電圧は、ステップS13において温度センサで測定した温度が所定値T0未満の場合ステップS14で読み込んだマップに記された電圧であり、ステップS13において温度センサで測定した温度が所定値T0以上の場合、例えば機関運転時と同じ印加電圧である。
次いで、セルモーター6によるクランキングを行う(ステップS16)。クランキングにより、燃焼室5内に供給された混合気が圧縮されると、点火に十分な指定電圧が印加された低温プラズマプラグ20の非平衡プラズマ放電により、混合気が点火される。このようにして、内燃機関1は、始動する(ステップS17)。
内燃機関1が始動したか否かは、例えば、内燃機関1の回転数に基づいて確認することができる。内燃機関1の回転数が機関運転時の回転数以上であれば、内燃機関1が始動したと確認することができる。すなわち、内燃機関1の回転数が、例えば1500rpm以上であれば、内燃機関1は始動したと確認することができる。このような内燃機関1の回転数を測定するため、内燃機関1は、エンジン回転センサ(不図示)をさらに備えていてもよい。内燃機関1が始動した後、ECU12は、例えばセルモーター6を停止し、低温プラズマプラグ20に対し、機関運転時の印加電圧を印加するように、電圧印加部13を制御する。
上述したように、本実施形態によれば、内燃機関1の始動時における外気温を測定し、外気温が所定値未満の場合、当該外気温が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧を高くするので、低温環境下で、内燃機関1の低温プラズマプラグ20に対して、混合気の点火に必要十分な電圧を印加することができる。そのため、プラグキャップ26に対し、過剰に高い電圧が加わることを抑制できる。従って、低温プラズマプラグ20に掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる。
尚、上記の実施形態では、吸気管31内に取り付けられた温度センサ32により測定した外気温が所定値T0未満の場合、温度が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御したが、この例に限定されず、内燃機関1の状態を示す温度を測定する温度センサが測定した温度に基づいて電圧印加部13を制御してもよい。
すなわち、例えば、内燃機関1の状態を示す温度として、内燃機関1に供給されるオイルの温度を検知する油温センサ32Aを備え、制御部(ECU)12は、油温センサ32Aで検知された油温が所定値未満の場合、油温が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御してもよい。
小排気量二輪車等には、油温センサ32Aが備えられ、吸気温度センサ32が備えられていない場合があるため、このように、内燃機関1に供給されるオイルの温度に基づいて、電圧印加部13を制御することは、コスト削減の観点で好ましい。
小排気量二輪車等には、油温センサ32Aが備えられ、吸気温度センサ32が備えられていない場合があるため、このように、内燃機関1に供給されるオイルの温度に基づいて、電圧印加部13を制御することは、コスト削減の観点で好ましい。
また、内燃機関1の状態を示す温度として、内燃機関1に供給される冷却水の温度を検知する水温センサ(32B)を備え、制御部(ECU)12は、水温センサ(32B)で検知された水温が所定値未満の場合、水温が低いほど低温プラズマプラグ20に印加する電圧が高くなるように電圧印加部13を制御してもよい。
小排気量二輪車等には、水温センサ32Bが備えられ、吸気温度センサ32が備えられていない場合があるため、このように、内燃機関1に供給される冷却水の温度に基づいて、電圧印加部13を制御することは、コスト削減の観点で好ましい。
小排気量二輪車等には、水温センサ32Bが備えられ、吸気温度センサ32が備えられていない場合があるため、このように、内燃機関1に供給される冷却水の温度に基づいて、電圧印加部13を制御することは、コスト削減の観点で好ましい。
尚、内燃機関1の気筒数や気筒列は任意である。また、低温プラズマプラグ20や、その他内燃機関1の形状は、適宜変更される。例えば、上記実施形態では、ポート噴射内燃機関を用いる場合を例に説明したが、本実施形態はこの例に限定されず、直噴内燃機関にも適用可能である。
図2に示すマップでは、所定値T0未満の温度下において、温度に対し、低温プラズマプラグ20への印加電圧が直線的である例を示したが、この例に限定されず、曲線的であってもよい。また、図2に示すマップでは、所定値T0以上の温度下において、低温プラズマプラグ20への印加電圧が一定である例を示したが、この例に限定されず、温度の上昇に伴い、低温プラズマプラグ20への印加電圧が減少する変化を示してもよい。
図3に示すフローチャートでは、温度が所定値以上である場合、マップを読み込まずに、予め指定された電圧を低温プラズマプラグ20に印加する例を示したが、この例に限定されず、温度が所定値以上である場合に、低温プラズマプラグ20に対してどの程度の電圧を印加するかの情報をマップが含み、当該マップを読み込むことで、低温プラズマプラグ20に印加する電圧を決定する構成であってもよい。
<第2実施形態>
図4は、内燃機関1Aの制御装置10Aおよび内燃機関1Aの要部の断面模式図である。
本実施形態に係る内燃機関1Aは、吸気温度センサ32を備えない点で、内燃機関1と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
図4は、内燃機関1Aの制御装置10Aおよび内燃機関1Aの要部の断面模式図である。
本実施形態に係る内燃機関1Aは、吸気温度センサ32を備えない点で、内燃機関1と異なる。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態の内燃機関1Aの制御装置10は、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する電圧印加部13と、電圧印加部13を制御する制御部(ECU)12と、を備える。制御部(ECU)12は、始動時の第1クランキングにおいて、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加し、第1電圧で内燃機関1Aが始動しているか否か判定し、且つ第1電圧で内燃機関1が始動していない場合に、第1電圧よりも高い第2電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する。
混合気に点火するために必要な、低温プラズマプラグ20への印加電圧は、混合気の成分比率や、外気温等により異なる。上記実施形態に記載の通り、アルコールと空気とを有するアルコール燃料を用いる場合、アルコール濃度が高い場合、低温条件下で点火するためには、低温プラズマプラグ20に高電圧を印加する必要がある。しかしながら、アルコール濃度を測定する濃度センサおよび外気温を測定する吸気温度センサを備えない場合、混合気の着火に必要な低温プラズマプラグ20への印加電圧を適切に測ることが難しい。
第1クランキングは、例えば冷間始動における一度目のクランキングであって、セルモーター6がオン状態となり、クランクシャフトが回転し、ピストン4が上下に摺動する動作をいう。第1クランキングは、セルモーター6がオフ状態になると終了する。
本実施形態の内燃機関1Aの制御装置10Aにおいて、ECU12は、吸気バルブ35が開状態となり混合気を燃焼室5内に吸気した後、吸気バルブ35が閉じ、ピストン4により混合気が断熱圧縮されている際に、電圧印加部13に信号を送信し、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加する。
第1電圧の電圧値は、機関運転時に低温プラズマプラグ20に印加される電圧値以上であり、例えば機関運転時に低温プラズマプラグ20に印加される電圧値である。また、第1クランキングよりも先に内燃機関1Aの始動が試みられた場合、第1電圧の電圧値は、先の内燃機関1Aの始動が試みられたときの印加電圧の電圧値以上である。第1電圧の電圧値が、混合気に点火可能な電圧値以上であれば、混合気が点火され、内燃機関1Aが始動する。
内燃機関1Aが始動したか否かは、内燃機関1Aの回転数を基に、ECU12が判定する。内燃機関1Aの回転数は、内燃機関1Aに備えられたエンジン回転センサ42が測定する。ECU12は、エンジン回転センサ42と接続しており、エンジン回転センサ42が測定した内燃機関1Aの回転数に関する信号を検出し、当該信号を基に内燃機関1Aが始動しているか否かを判定する。
ECU12は、例えば、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加してから所定時間(基準時間)経過後における内燃機関1Aの回転数が所定値(基準回転数)以上であるか否かで、内燃機関1Aが始動しているか否かを判定する。ECU12は、第1電圧の印加から基準時間経過後における内燃機関1Aの回転数が基準回転数以上である場合、内燃機関1Aが始動したと判定し、基準回転数未満である場合、内燃機関1Aが始動していないと判定する。
基準時間は、例えば1秒~5秒である。基準回転数は、例えば700rpm~2500rpmである。通常、常温(25℃程度)であれば、内燃機関1Aは、低温プラズマプラグ20に電圧を印加してから1秒以内に始動する。そのため、基準時間が1秒以上であれば、内燃機関1Aが始動する場合であっても、内燃機関1Aの始動の可否を判定するまでに内燃機関1Aが始動するために必要な時間を十分に確保できる。一方、後述する通り、同じ電圧値の電圧を低温プラズマプラグ20に印加し続けても、内燃機関1Aが始動する可能性は低い。そのため、基準時間が5秒以下であれば、内燃機関1Aが始動する場合であっても、内燃機関1Aの始動の可否を判定するまでに必要な時間を十分に確保できるとともに、時間のロスを抑えられる。
第1電圧の印加から基準時間経過後における内燃機関1Aの回転数が基準回転数以上である場合、すなわち、内燃機関1Aが始動した場合、機関運転をするために必要な印加電圧を低温プラズマプラグ20に印加し、内燃機関1Aを稼働させる。
第1電圧の印加から基準時間経過後における内燃機関1Aの回転数が基準回転数未満である場合、すなわち内燃機関1Aが始動していないと判定された場合、低温プラズマプラグ20へ第1電圧の印加を継続しても、内燃機関1Aが始動する可能性は低い。外気温が低い場合など着火性が悪い環境下で、内燃機関1Aが始動しないことの原因は、ラジカルの発生量が不足していることである場合が多く、ラジカルの発生量を増加させるためには低温プラズマプラグへの印加電圧を増加させる必要がある。そのため、第1電圧で内燃機関1Aが始動していない場合、印加電圧が不十分と判断し、印加電圧を増加させる。すなわち、ECU12は、第1電圧よりも高い第2電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する。
第2電圧の印加は、第1クランキング中に行う。すなわち、セルモーター6がオン状態のときであって、第1電圧で内燃機関1Aが始動していないとき、セルモーター6のオン状態が維持された状態で、ECU12は低温プラズマプラグ20に印加する電圧を切り替えるように電圧印加部13を制御する。
内燃機関1Aが始動していないと判定した場合、次に印加する電圧は、先に印加した電圧よりも、例えば1kV以上2kV以下だけ高い電圧である。すなわち、第2電圧は、例えば、第1電圧よりも1kV以上2kV以下だけ高い電圧である。第2電圧は、第1電圧よりも高い電圧値であり、低温プラズマプラグ20に第2電圧が印加されると、第1電圧が印加された場合と比べ、ラジカルが多く発生するため、混合気が点火されやすい。
第2電圧が低温プラズマプラグ20に印加されると、ECU12は、第2電圧で内燃機関1Aが始動しているか否かを判定し、第2電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第2電圧よりも高い第3電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する。内燃機関1Aが始動しているか否かの判定は、先に記載の方法と同様の方法で行われる。すなわち、第2電圧が低温プラズマプラグ20に印加されてから基準時間経過後の内燃機関1Aの回転数が基準回転数であるか否かで判定する。
第2電圧で内燃機関1Aが始動していない場合には、上述の通り、第2電圧よりも高い第3電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。第3電圧を低温プラズマプラグ20に印加した場合、第2電圧を低温プラズマプラグ20に印加したときと同様の方法で、基準時間経過後の内燃機関1Aの回転数が基準回転数以上であるか否かを判定することで、内燃機関1Aが始動しているか否かを判定する。
第3電圧でも内燃機関1Aが始動していない場合には、上述の通り、第3電圧よりも高い電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。更に、第3電圧よりも高い電圧を低温プラズマプラグ20に印加した後は、第2電圧、第3電圧を低温プラズマプラグ20に印加した場合と同様に、内燃機関1Aが始動していない場合であって、セルモーター6のオン状態が継続する限り、さらに高い電圧を低温プラズマプラグ20に印加し、始動を試みる。
ここで、内燃機関1Aに対して電圧を印加している最中にセルスイッチ60がオフにされ、セルモーター6がオフ状態になると、第1クランキングは終了する。このとき、ECU12は、低温プラズマプラグ20に電圧を印加しないように電圧印加部13を制御する。ECU12は、不図示のタイマーを有しており、第1クランキングが停止した後の経過時間を測定する。また、セルモーター6の起動が複数回行われる場合、ECU12は、次のクランキングを開始する際に、直前のクランキングが終了した後の経過時間を測定することができる。
ここで、内燃機関1Aに対して電圧を印加している最中にセルスイッチ60がオフにされ、セルモーター6がオフ状態になると、第1クランキングは終了する。このとき、ECU12は、低温プラズマプラグ20に電圧を印加しないように電圧印加部13を制御する。ECU12は、不図示のタイマーを有しており、第1クランキングが停止した後の経過時間を測定する。また、セルモーター6の起動が複数回行われる場合、ECU12は、次のクランキングを開始する際に、直前のクランキングが終了した後の経過時間を測定することができる。
セルスイッチ60が再度オンにされると、セルモーター6がオン状態になり、再度クランキングが行われる。以下、第1クランキングに続くクランキングを第2クランキングと呼称する。
ECU12は、第1クランキングの終了から次のクランキングの開始までの時間を測定し、時間が所定値(待機基準時間)未満である場合には、当該クランキングを第2クランキングと判断して第4電圧を低温プラズマプラグ20に印加し、時間が所定値(待機基準時間)以上である場合には、当該クランキングを第1クランキングと判断して第1電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。第1クランキングと判断した場合、ECU12は、先に記載の第1クランキングと同様の手順を繰り返すよう内燃機関1Aを制御する。
待機基準時間は、例えば、1秒以上60分以下であり、5秒以上5分以下であることが好ましい。待機基準時間経過後であれば、外部環境が変化している場合が多く、先に行った第1クランキングの条件で低温プラズマプラグ20に電圧を印加した場合であっても内燃機関1Aを始動できる可能性があり、先に記載の通り、再始動工程の条件を制御することが好ましい。
ECU12は、第1クランキングの後の第2クランキングにおいて、第1クランキングにおける印加電圧の最大値よりも高い第4電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する。第4電圧は、第1クランキングにおける印加電圧の最大値よりも1kV以上2kV以下だけ高いことが好ましい。
第4電圧が低温プラズマプラグ20に印加されると、ECU12は、第4電圧で内燃機関1Aが始動しているか否かを判定し、第4電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第4電圧よりも高い第5電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する。
内燃機関1Aが始動しているか否かの判定は、先に記載の方法と同様の方法で行われる。すなわち、第4電圧が低温プラズマプラグ20に印加されてから基準時間経過後の内燃機関1Aの回転数が基準回転数であるか否かで判定する。
第4電圧で内燃機関1Aが始動していない場合、上述の通り、第4電圧よりも高い第5電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。
第5電圧が低温プラズマプラグ20に印加されると、ECU12は、第5電圧で内燃機関1Aが始動しているか否かを判定し、第5電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第5電圧よりも高い第6電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御し、第5電圧で内燃機関1Aが始動した場合、内燃機関1Aを稼働させる。
以下、先に記載の工程を繰り返す。すなわち、セルモーター6がオン状態であって、印加している電圧で内燃機関1Aが始動していない場合、ECU12は、それよりも高い電圧を印加するように電圧印加部13を制御する操作を繰り返す。また、セルモーター6がオフ状態になったとき、ECU12はタイマーで次のクランキングまでの待機時間を測定する。待機時間が待機基準時間未満であれば、次のクランキングでは、先のクランキングでの最大電圧よりも高い電圧を低温プラズマプラグ20に印加し、待機基準時間以上であれば、第1電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。
尚、上記例では、第1クランキング中に、第1電圧から第2電圧に、第2電圧から第3電圧に、2回電圧を切り替え、第2クランキング中に第4電圧から第5電圧に、第5電圧から第6電圧に、2回電圧を切り替える例を示したが、ユーザーがセルスイッチ60を押す時間、即ちセルモーター6のオン状態を継続する時間と基準時間に応じて、電圧を切り替える回数は、任意に選択される。
(内燃機関の制御方法)
図5は、本発明の一実施形態に係る内燃機関1Aの制御方法を説明するためのフローチャートである。
図5は、本発明の一実施形態に係る内燃機関1Aの制御方法を説明するためのフローチャートである。
先ず、ユーザーは、セルスイッチ60をオンにして、セルモーター6を起動する(ステップS21)。
次いで、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する(ステップS22)。ステップS22において、印加する電圧を第1電圧と呼称する。第1電圧は、機関運転時に印加する電圧以上の電圧であり、例えば、機関運転時に印加する電圧と同じ電圧を印加する。
次いで、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する(ステップS22)。ステップS22において、印加する電圧を第1電圧と呼称する。第1電圧は、機関運転時に印加する電圧以上の電圧であり、例えば、機関運転時に印加する電圧と同じ電圧を印加する。
次いで、セルモーター6による第1クランキングを行う(ステップS23)。第1クランキングにより、燃焼室5内に供給された混合気が圧縮され、低温プラズマプラグ20による非平衡プラズマ放電が起こる。
次いで、低温プラズマプラグ20に電圧を印加後、基準時間待機する(ステップS24)。基準時間は、例えば1秒以上5秒以下の時間である。低温プラズマプラグ20に電圧を印加してから基準時間経過後、内燃機関1Aが始動したか否かを判定する(ステップS25)。内燃機関1Aが始動したか否かの判定は、例えば低温プラズマプラグに電圧を印加してから基準時間経過後の内燃機関1Aの回転数が基準回転数以上か否かに基づいて判定する。
ステップS25において、内燃機関1Aが始動したと判定した場合、内燃機関1Aの始動制御を終了する。内燃機関1Aの始動制御を終了した後、ECU12は、例えば、機関運転時に印加する電圧を低温プラズマプラグ20に印加し、内燃機関1Aを稼働する。
ステップS25において、内燃機関1Aが始動していないと判定した場合であって、セルモーター6がオン状態に保持されているとき、ECU12は、低温プラズマプラグ20に印加する印加電圧を増加させる(ステップS27)。すなわちECU12は、上記第1電圧よりも高い第2電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。その後、第1クランキングから基準時間経過後に内燃機関1Aが始動したか否かを再度判定し(ステップS23~S25)、内燃機関1Aが始動した場合には本処理を終了する。
内燃機関が始動したか否かを再度判定し、始動していないと判定した場合(ステップS25でNO)、セルモーター6がオン状態に保持されている限り(ステップS26でYES)、ECU12は、ステップS23~ステップS27を繰り返す。例えば、ECU12は、第2電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、上記第2電圧よりも高い第3電圧を低温プラズマプラグ20に印加する。このようにして、セルモーター6がオフ状態になるか、内燃機関1Aが始動するまで本処理を継続する。
図6は、内燃機関の制御方法の変形例を示すフローチャートである。変形例に係る内燃機関の制御方法は、ステップS26,S30、S31~S8,S40が示されている点で先の内燃機関の制御方法と異なる。ステップS26,S30は、図5では、省略したが、先の内燃機関の制御方法でも同様のステップを備えている。
ステップS26は、内燃機関が始動していないと判定した後、セルモーターがオン状態であるか判定するステップである。ステップS30は、第1クランキング中にセルモーターがオフにされたとき、第1クランキングを停止するステップである。一定期間セルモーター6を回転させ続けても、内燃機関が始動しない場合、ユーザーが一度セルスイッチ60をオフにし、セルモーター6をオフにしたとき、ステップS30が行われる。
ECU12は、第1クランキングが停止された後に、ユーザーは、再度セルスイッチをオンにし、セルモーターを起動する(ステップS32)。このとき、第1クランキングが停止された後であってセルモーターが起動されるまでの間、例えばイグニッション電源がオンの状態において、ECU12は、第1クランキング終了時からの経過時間が所定値未満であるか否か判定する(ステップS31)。先のクランキングの終了時から次のクランキングまでの経過時間が待機基準時間以上であれば、当該クランキングを第1クランキングと判断し、先のステップに戻って、ステップS22においてクランキングを行う際に第1電圧を印加する。第1クランキングの終了時から次のクランキングまでの経過時間が待機基準時間未満であれば、当該クランキングを第2クランキングと判断し、セルモーター6がオン状態にされた際に、ECU12は、第1クランキングにおける印加電圧の最大値よりも高い第4電圧を低温プラズマプラグ20に印加するように電圧印加部13を制御する(ステップS32)。待機基準時間未満であれば、先のクランキング時と条件がほとんど変わっておらず、先のクランキングで印加した電圧を再度印加しても、始動できる可能性は低いためである。
その後、ステップS23~ステップS27と同様の手順で、ステップS33~ステップS38を行う。例えば、ECU12は、本第2クランキングにおいて、第4電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第4電圧よりも高い第5電圧を低温プラズマプラグ20に印加する(ステップS38)。
また、内燃機関が始動したか否かを再度判定し、始動していないと判定した場合(ステップS36でNO)、セルモーター6がオン状態に保持されている限り(ステップS37でYES)、ECU12は、ステップS34~ステップS38を繰り返す。例えば、制御部12は、本第2クランキングにおいて、上記第5電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第5電圧よりも高い第6電圧を低温プラズマプラグ20に印加する(ステップS38)。このように、再セルオン時においても、セルモーター6がオフ状態になるか、内燃機関1Aが始動するまで本処理を継続する。
内燃機関1Aが始動した場合(ステップS36でYES)、ECU12は、例えばセルモーター6を停止し、低温プラズマプラグ20に対し、機関運転時の印加電圧を印加するように、電圧印加部13を制御する。
ステップS37において、セルモーター6がオフ状態になったとき、第2クランキングを停止する(ステップS40)。第2クランキング停止後、再々度セルスイッチ60がオンとなり、セルモーター6がオン状態になったとき、先のステップS31と同様にして低温プラズマプラグ20に印加する電圧を決定し、上述のステップを繰り返す。
上述したように、本実施形態によれば、始動時の第1クランキングにおいて、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加し、第1電圧で内燃機関1Aが始動しているか否かを判定し、第1電圧で内燃機関1Aが始動していない場合に、第1電圧よりも高い第2電圧を低温プラズマプラグ20に印加するので、外気温および混合気の成分比率に拠らずに確実に点火が可能な高電圧を低温プラズマプラグに印加していた従来方法よりも、低電圧で内燃機関1Aを始動させることができる。そのため、低温プラズマプラグ20に掛かる負荷を低減して高寿命化を実現することができる。
<変形例>
図7は、本発明の変形例に係る内燃機関1Bの制御装置10Bおよび内燃機関1Bの要部の断面模式図である。内燃機関1Bの制御装置10Bは、ECU12とつながる点火コイル14を備える点で先に記載の内燃機関1Bの制御装置10,10Aと異なる。内燃機関1Bは、低温プラズマプラグ20に加え、アーク放電を行うスパークプラグ61を備える点で、先に記載の内燃機関1,1Aと異なる。スパークプラグ61は、ECU12により制御された点火コイル14に電圧を印加され、一対の電極62,63間でアーク放電を起こし、混合気に着火する。図7の内燃機関1Bおよび内燃機関1Bの制御装置10Bにおいて、図1及び図4に示す内燃機関1,1Aおよび内燃機関の制御装置10,10Aと同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
図7は、本発明の変形例に係る内燃機関1Bの制御装置10Bおよび内燃機関1Bの要部の断面模式図である。内燃機関1Bの制御装置10Bは、ECU12とつながる点火コイル14を備える点で先に記載の内燃機関1Bの制御装置10,10Aと異なる。内燃機関1Bは、低温プラズマプラグ20に加え、アーク放電を行うスパークプラグ61を備える点で、先に記載の内燃機関1,1Aと異なる。スパークプラグ61は、ECU12により制御された点火コイル14に電圧を印加され、一対の電極62,63間でアーク放電を起こし、混合気に着火する。図7の内燃機関1Bおよび内燃機関1Bの制御装置10Bにおいて、図1及び図4に示す内燃機関1,1Aおよび内燃機関の制御装置10,10Aと同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
変形例に係る内燃機関1Bの制御装置10Bは、上記実施形態に係る内燃機関1,1Aの制御装置10,10Aと同様の方法で、内燃機関1Bを始動させた後、スパークプラグ61を用いて、アーク放電により熱プラズマを発生させ、内燃機関1Bを稼働させることができる。スパークプラグ61を用いる場合、制御装置10Bは、ECU12により、スパークプラグ61の先端に設けられた電極間に所定の電圧を印加し、アーク放電を起こすように点火コイル14を制御する。このように、上記実施形態に係る内燃機関1,1Aの制御装置10,10Aおよび内燃機関の制御方法は、低温プラズマプラグ20およびスパークプラグ61のいずれも備える内燃機関1Bにも適用できる。
このような、低温プラズマプラグ20およびスパークプラグ61のいずれも備える内燃機関1Bを用いる場合、内燃機関1Bが始動した後、スパークプラグ61により混合気に点火できるため、低温プラズマプラグ20の使用頻度を抑えることができる。そのため、低温プラズマプラグ20に掛かる負荷をより低減でき、更なる高寿命化を測ることができる。
また、内燃機関1Bの制御装置10Bは、内燃機関1Bの始動時に、低温プラズマプラグ20に電圧を印加する前に火花点火プラグ61に電圧を印加してもよい。具体的には、例えば、第1クランキングにおいて、制御部12は、火花点火プラグ61を作動するように点火コイル14を制御し、火花点火プラグ61の作動により内燃機関1Bが始動しているか否か判定し、火花点火プラグ61の作動により内燃機関1Bが始動していない場合に、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加するように電圧印加部13を制御してもよい。図8および図9は、このような第2実施形態の変形例に係る内燃機関1Bの制御方法を説明するためのフローチャートである。
先ず、ユーザーは、セルスイッチ60をオンにして、セルモーター6を起動する(ステップS1)。次いで、点火コイル14を制御して火花点火プラグ61に電圧を印加する(ステップS2)。
次いで、セルモーター6による第1クランキングを行う(ステップS3)。第1クランキングにより、燃焼室5内に供給された混合気が圧縮され、火花点火プラグ61によるアーク放電が起こる。
次いで、火花点火プラグ61に電圧を印加後、基準時間待機する(ステップS4)。火花点火プラグ61に電圧を印加してから基準時間経過後、内燃機関1Bが始動したか否かを判定する(ステップS5)。内燃機関1Bが始動したか否かの判定は、例えば低温プラズマプラグに電圧を印加してから基準時間経過後の内燃機関1Bの回転数が基準回転数以上か否かに基づいて判定する。基準時間および基準回転数は、上記実施形態の基準時間および基準回転数が採用される。
ステップS5において、内燃機関1Bが始動したと判定した場合(ステップS5でYES)、内燃機関1Bの始動制御を終了する。内燃機関1Bの始動制御を終了した後、ECU12は、内燃機関1Bを稼働する。
ステップS5において、内燃機関1Bが始動していないと判定した場合(ステップS5でNO)であって、セルモーター6がオン状態に保持されているとき、ECU12は、電圧印加部13を制御し、低温プラズマプラグ20に第1電圧を印加する(ステップS22)。以下、ステップS31においてNOである場合、ステップS1に戻り、火花点火プラグ61を作動させる点を除き、上記第2実施形態と同様の方法で内燃機関1Bを制御する。本変形例に係る内燃機関の制御方法では、火花点火プラグ61でも混合気への点火が可能なとき、火花点火プラグ61を用いて点火するため、低温プラズマプラグ20の負荷をより低減し、より長寿命化を図ることができる。
また、ECU12は、火花点火プラグ61に電圧を印加する前に、外気温又は内燃機関1Bの状態を示す温度が所定値以上であるか否かを判定し、温度に応じて火花点火プラグ61に電圧を印加してもよい。すなわち、変形例に係る内燃機関1Bの制御装置10Bを第1実施形態に適用し、混合気として、ガソリンとアルコールとを含むアルコール合燃料および空気の混合気を用い、かつ外気温又は内燃機関1Bの状態を示す温度が所定値未満のとき、ECU12は、火花点火プラグ61を作動するように点火コイル14を制御してもよい。温度が所定値以上の環境下では、火花点火プラグ61による点火であっても、混合気に点火することが可能な場合がある。例えば、温度が10℃以上のときであって、E80以下のアルコール混合燃料を用いるとき、火花点火プラグ61で混合気への点火が可能であり、始動が可能である。
図10及び図11は、第1実施形態の変形例に係る内燃機関の制御方法を説明するためのフローチャートである。第1実施形態の変形例に係る内燃機関の制御方法は、温度センサで測定した温度が所定値以上であるとき(ステップS13でNO)、ECU12は、火花点火プラグ61に電圧を印加し(ステップS14-1)、クランキングして始動を試みる(ステップS14-2)。火花点火プラグ61に電圧を印加してから所定時間経過後(ステップS14-3)、第2実施形態と同様の基準で内燃機関1Bが始動しているか否か判定する(ステップS14-4)。内燃機関1Bが始動していないと判断した場合(ステップS14-4でNO)、低温プラズマプラグ20に指定電圧を印加する(ステップS15)。内燃機関が始動していると判定した場合(ステップS14-4でYES)、内燃機関1Bの始動制御を終了する。内燃機関1Bの始動制御を終了した後、ECU12は、内燃機関1Bを稼働する。このように、変形例を第1実施形態に適用する場合であっても、低温プラズマプラグ20の使用頻度を抑え、より長寿命化が可能である。
尚、本発明は、上記の実施形態に限定されない。例えば、内燃機関の気筒数や気筒列は任意である。
また、内燃機関が始動したか否かを判定する、セルモーター起動からの経過時間は、任意に選択される。内燃機関が始動したか否かの判定は、セルモーター起動から所定時間経過後の内燃機関の回転数に限らず、セルモーター起動時から所定時間経過後のヒューエルポンプの消費量の変化等、他のパラメータを基準にしてもよい。
尚、上記実施形態では、ポート噴射内燃機関を用いる場合を例に説明したが、本実施形態はこの例に限定されず、直噴内燃機関にも適用可能である。
また、内燃機関が始動したか否かを判定する、セルモーター起動からの経過時間は、任意に選択される。内燃機関が始動したか否かの判定は、セルモーター起動から所定時間経過後の内燃機関の回転数に限らず、セルモーター起動時から所定時間経過後のヒューエルポンプの消費量の変化等、他のパラメータを基準にしてもよい。
尚、上記実施形態では、ポート噴射内燃機関を用いる場合を例に説明したが、本実施形態はこの例に限定されず、直噴内燃機関にも適用可能である。
この発明は、プラズマプラグへの負荷を抑制するとともに着火困難な環境下での内燃機関の早期始動が可能である。また、アルコール燃料を用いた場合であっても、早期始動が可能であり、ユーザーのアルコール濃度の高いアルコール燃料に対する抵抗を払拭し、CO2排出量の削減に有効である。
1,1A,1B:内燃機関
10,10A,10B:内燃機関の制御装置
2:シリンダブロック、2a:シリンダ、3:シリンダヘッド
4:ピストン、5:燃焼室、
11:低温プラズマプラグ、12:ECU(制御部)、13:電圧印加部
21:先端部、22:接地電極、23:主体金具23:絶縁部、25:碍子部、
26:プラグキャップ、27:端子部、28:基端部
31:吸気管、32:吸気温度センサ、33:インジェクタ、34:吸気ポート、
35:吸気バルブ、36:排気バルブ、37:排気ポート、38:排気管
42:エンジン回転センサ
6:セルモーター
60:セルスイッチ
10,10A,10B:内燃機関の制御装置
2:シリンダブロック、2a:シリンダ、3:シリンダヘッド
4:ピストン、5:燃焼室、
11:低温プラズマプラグ、12:ECU(制御部)、13:電圧印加部
21:先端部、22:接地電極、23:主体金具23:絶縁部、25:碍子部、
26:プラグキャップ、27:端子部、28:基端部
31:吸気管、32:吸気温度センサ、33:インジェクタ、34:吸気ポート、
35:吸気バルブ、36:排気バルブ、37:排気ポート、38:排気管
42:エンジン回転センサ
6:セルモーター
60:セルスイッチ
Claims (15)
- 低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ(20)と、外気温又は内燃機関(1,1B)の状態を示す温度を測定する温度センサ(32,32A,32B)と、を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御装置(10,10B)であって、
前記低温プラズマプラグ(20)に電圧を印加する電圧印加部(13)と、
前記電圧印加部(13)を制御する制御部(12)と、を備え、
前記制御部(12)は、前記内燃機関(1,1B)の始動時に、前記温度センサ(32,32A,32B)が測定した温度が所定値未満の場合、前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度が低いほど前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部(13)を制御することを特徴とする、内燃機関の制御装置。 - 前記混合気は、ガソリンとアルコールとを含むアルコール混合燃料および空気の混合気であり、
前記外気温又は前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度が所定値未満のとき、前記制御部(12)は、前記混合気におけるアルコール燃料の比率を理論空燃比よりも高くし、
前記外気温又は前記内燃機関の状態を示す温度が所定値以上のとき、前記制御部(12)は、前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧を、前記外気温又は前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度が所定値未満のときの印加電圧よりも低くする、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 火花点火式の火花点火プラグ(61)をさらに備える内燃機関(1B)の制御装置(10B)であって、
前記火花点火プラグ(61)に電圧を印加する点火コイル(14)をさらに備え、
前記制御部(12)は、前記内燃機関(1B)の始動時に、前記温度センサ(32,32A,32B)が測定した温度が所定値以上の場合、前記火花点火プラグ(61)を作動するように前記点火コイル(14)を制御する、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記所定値は、0℃以上15℃以下の範囲内の温度である、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記外気温として、前記内燃機関(1,1B)のシリンダ(2a)内に供給される吸入空気の温度を検知する吸気温度センサ(32)を備え、
前記制御部(12)は、前記吸気温度センサ(32)で検知された吸気温度が所定値未満の場合、前記吸気温度が低いほど前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度として、前記内燃機関に供給されるオイルの温度を検知する油温センサ(32A)を備え、
前記制御部(12)は、前記油温センサ(32A)で検知された油温が所定値未満の場合、前記油温が低いほど前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度として、前記内燃機関(1,1B)に供給される冷却水の温度を検知する水温センサ(32B)を備え、
前記制御部(12)は、前記水温センサ(32B)で検知された水温が所定値未満の場合、前記水温が低いほど前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧が高くなるように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ(20)を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関の制御装置(10A,10B)であって、
前記低温プラズマプラグ(20)に電圧を印加する電圧印加部(13)と、
始動時の第1クランキングにおいて、前記低温プラズマプラグ(20)に第1電圧を印加し、前記第1電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動しているか否か判定し、且つ第1電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動していない場合に、第1電圧よりも高い第2電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加するように前記電圧印加部(13)を制御する制御部(12)と、
を備える、内燃機関の制御装置。 - 前記制御部(12)は、前記第2電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動しているか否かを判定し、
前記第2電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動していない場合に、前記第2電圧よりも高い第3電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加するように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項8に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記制御部(12)は、前記第1クランキングの後の第2クランキングにおいて、前記第1クランキングにおける印加電圧の最大値よりも高い第4電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加するように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項8または9に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記制御部(12)は、前記第2クランキングにおいて、前記第4電圧で前記内燃機関(1A)が始動していない場合に、第4電圧よりも高い第5電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加するように前記電圧印加部(13)を制御する、請求項10に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記制御部(12)は、前記第1クランキングの終了から次のクランキングの開始までの時間を測定し、前記時間が所定値未満である場合には、当該クランキングを第2クランキングと判断して前記第4電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加し、前記時間が所定値以上である場合には、当該クランキングを前記第1クランキングと判断して前記第1電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加する、請求項10に記載の内燃機関の制御装置。
- 火花点火式の火花点火プラグ(61)をさらに備える内燃機関(1B)の制御装置(10B)であって、
前記火花点火プラグ(61)に電圧を印加する点火コイル(14)をさらに備え、
前記第1クランキングにおいて、前記制御部(12)は、前記火花点火プラグ(61)を作動するように前記点火コイル(14)を制御し、前記火花点火プラグ(61)の作動により前記内燃機関(1B)が始動しているか否か判定し、前記火花点火プラグ(61)の作動により前記内燃機関(1B)が始動していない場合に、前記低温プラズマプラグ(20)に前記第1電圧を印加するように電圧印加部(13)を制御する、請求項8~12のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ(20)を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関(1,1B)の制御方法であって、
前記内燃機関(1,1B)の始動時における外気温又は前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度を測定する工程と、
前記外気温又は前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度が所定値未満の場合、前記外気温又は前記内燃機関(1,1B)の状態を示す温度が低いほど前記低温プラズマプラグ(20)に印加する電圧を高くする工程と、を有する、内燃機関の制御方法。 - 低温プラズマを発生させる低温プラズマプラグ(20)を有し、燃料と空気の混合気に点火することで運転する内燃機関(1A,1B)の制御方法であって、
始動時の第1クランキングにおいて、前記低温プラズマプラグ(20)に第1電圧を印加する第1印加工程と、
前記第1電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動しているか否かを判定する判定工程と、
前記第1電圧で前記内燃機関(1A,1B)が始動していない場合に、前記第1電圧よりも高い第2電圧を前記低温プラズマプラグ(20)に印加する第2印加工程と、を有する、内燃機関の制御方法。
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- 2021-09-30 JP JP2021161938A patent/JP2023051338A/ja active Pending
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