JP3695954B2 - 火花点火式筒内直噴型内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火方式で、かつ燃料を筒内へ直接に噴射する形式の内燃機関における燃料噴射装置および点火装置を作動させる制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、火花点火式の内燃機関に属するものとして、燃料を筒内へ直接に噴射する所謂「筒内直噴型内燃機関」が実用化されている。この内燃機関においては、点火栓の近傍にのみ可燃混合気を形成することによって、全体としては燃料の希薄な混合気を筒内に形成し、所謂「リーン燃焼」の状態となる成層燃焼を実現することにより燃費の低減を図っている。しかしながら、筒内直噴型内燃機関においては成層燃焼のために点火栓の電極付近に燃料を噴射するので、特に冷間始動時には点火栓の電極間に燃料が付着して失火するという恐れがあった。
【0003】
そこで、特公平4−37264号公報に示されているように、まず「パイロット噴射」を行って火花点火させることにより所謂「パイロット燃焼」を起こさせると共に、続けて大部分の燃料を噴射する所謂「主噴射」を行って、パイロット燃焼による火炎によって主噴射燃料に着火させて「主燃焼」を起こさせると、失火を確実に防止することができる。また、それによってノック防止の効果も得られる。ただし、この火花点火によるパイロット燃焼と、それに続く主燃焼の組合せを実現することができるのは、吸気弁の閉弁時期から後に燃料を筒内へ供給することができる筒内直噴型内燃機関に限られる。
【0004】
一方、燃焼室内に一対の電極を設けて、この電極間に数百ボルト程度の比較的低い電圧を印加し、この電極に火炎が触れたときにプラズマ火炎の導電性により電流が流れるという性質を利用した着火確認装置が知られている。この着火確認装置によれば、筒内において火炎が発生(着火)したか、或いは失火したかということを検知することができる。着火確認装置の電極は内燃機関の燃焼室に装着されるので、普通は点火栓の電極と共用される。
【0005】
【発明が解決しようとする問題】
筒内直噴型の内燃機関における失火の原因として考えられるものには、始動時に未だ温度が低い筒内へ直接に燃料を噴射することによって、燃料の液滴が筒内壁や点火栓の電極へ付着すること、フューエルインジェクタの噴射孔が燃焼生成物のデポジットによって部分的に閉塞することによる燃料の霧化不良等がある。特に、低温始動時においては、燃料が筒内壁に付着して蒸発しないために点火栓の電極間にある混合気が燃料希薄になる場合や、点火栓の電極間に燃料の液滴が付着して電極を短絡させる場合がある。
【0006】
従来、これらの原因による失火が生じた後の着火回復措置としては、再度の火花点火を行うこと以外に方法がなかった。また、再度の火花点火を行うこともできない内燃機関では、着火確認装置を設けて失火を検知しても、失火したときに筒内に残っている混合気を再度着火させる手段がないので、失火した気筒内に残っている全ての混合気をそのまま排出する操作を行う結果、エミッションが悪化するという恐れがあった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された火花点火式筒内直噴型内燃機関の制御装置を提供する。
【0008】
請求項1および2の制御装置においては、いずれもパイロット燃焼と主燃焼とが分けて行われると共に、まず、パイロット燃焼において、着火確認手段による失火の判定が行われる。着火確認手段は筒内に設けられた電極の間に流れるイオン電流を検出することによって着火確認操作を行う。電極の間に全く電流が流れないときは、電極の近傍の混合気が燃料希薄であるために失火したものと判断されるし、所定の大きさの電流(イオン電流)が流れたことを検知した時は適正なパイロット燃焼が成立したものと判定することができ、直ちに主噴射操作を行って主燃焼に移行することができる。また、所定値以上の大きな電流が流れた時は、電極間に燃料の液滴が付着して電気的に短絡したものであるから、パイロット燃焼は失火したものと判定することができる。
【0009】
従って、パイロット燃焼の失火時には主燃焼分の燃料を噴射しないという制御が可能になり、未燃の燃料をエミッションとして大気中へ排出することが防止される。また、パイロット燃焼の失火状態から着火状態へ回復させようとする着火回復制御をとり入れた場合には、パイロット噴射操作、パイロット点火操作、パイロット燃焼の着火確認操作を複数回続けて行うことができるため、着火回復制御に大きな自由度があり、内燃機関の運転状況に応じた制御が可能になる。
【0010】
パイロット燃焼は主燃焼の失火を抑えるために行われるが、パイロット燃焼そのものが失火した場合でも、パイロット燃焼を圧縮行程の初期、すなわちピストンの下死点付近から開始すれば、普通は平均有効圧が最大になる点を選ぶ主燃焼の燃焼開始時期まで時間的には十分な余裕がある。また、筒内直噴型内燃機関においては、吸気弁が閉じた後でも火花点火操作、燃料噴射操作、および着火確認操作を行うことができるので、パイロット燃焼の開始時期は固定されることがなく自由度がある。従って、複数回のパイロット燃焼を行うことによって確実に着火させることができる。
この場合、請求項1の制御装置によれば、着火確認手段の信号によってパイロット燃焼の失火が検知されると、直ちに主噴射を禁止すると共に、パイロット噴射と点火を繰り返すことによって着火回復制御が行われる。パイロット噴射の燃料量は僅かであるから、仮に再び着火に失敗しても、大気中へ排出されるエミッションの量は無視することができる程度である。このようにパイロット噴射と点火を複数回繰り返すことによって着火すると、始めて主噴射が行われて主燃焼が開始される。
また、請求項2の制御装置においては、パイロット燃焼の失火が検知された時でも直ちに主噴射が行われ、所定の時間を置くことによって燃料を蒸発させてから、主噴射燃料に対して火花点火手段によって複数回繰り返して点火操作が行われる。この点火操作は、点火可能な期間内において、着火確認手段によって主燃焼の生じたことが検知される時まで続けられる。
【0011】
請求項3の制御装置によれば、請求項1に記載された構成を有する内燃機関において、主燃焼の燃焼開始が点火手段によらないで、先行するパイロット燃焼を点火源として自動的に行われる。パイロット燃焼の火炎の温度が燃料の発火温度よりも高くなると、燃料噴射手段が主噴射操作を行うと同時に主燃焼が開始される。従って、この場合は、点火手段によって主燃焼の燃焼開始時期を制御する代わりに、燃料噴射手段による主噴射操作の開始時期を制御することによって主燃焼の燃焼開始時期を制御することができる。
【0012】
請求項4の制御装置においては、点火手段の電極と着火確認手段の電極を共用すること、具体的には、点火手段としての通常の点火栓の付勢回路を切り換えることによって、点火栓を着火確認手段として流用するので、特別に着火確認手段としての電極を筒内に新設する必要がない。
【0016】
本発明によれば、火花による点火手段と、燃料を筒内へ直接に噴射することができる燃料噴射手段と、筒内に設けられた電極間に電圧を印加することにより炎の導電性を利用して火炎を認識する着火確認手段とを備えている筒内直噴型内燃機関において、制御装置によってパイロット燃焼の着火を確認する手順を経たのちに燃料の噴射制御と点火制御を行うので、失火によるエミッションの悪化を防ぐと共に、自由度の大きい着火回復制御を行うことができ、失火そのものを防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
本発明の第1実施例の構成と作動について図1から図5を用いて説明する。第1実施例における制御は、パイロット燃焼の失火を検出した時に主燃焼の燃料噴射を停止する点に特徴を有するもので、着火回復制御のない比較的簡易な制御の例である。しかし、この第1実施例によれば、失火を検出した後は余分な燃料を噴射しないので、エミッションの悪化を確実に防止することができる。
【0018】
図1に第1実施例の筒内直噴型内燃機関であるガソリンエンジン100の構成を示す。ガソリンエンジン100の構成部品には、クランク軸の付近に設けられたクランク角センサ1、筒内へ燃料を噴射するフューエルインジェクタ2、シリンダヘッドに取り付けられて筒内における着火の確認装置を兼ねる点火栓3、カム軸付近に設けられたカム角センサ4、点火栓3に高電圧を印加するイグナイタ5、マイクロコンピュータを内蔵している電子式制御装置(ECU)200等が含まれている。
【0019】
図2に、着火確認装置を兼ねる点火栓3と、図1にも示したイグナイタ5に加えて、イグナイタ5へ点火時期信号を供給するために前述のECU200内に設けられた点火時期計算手段6と、やはりECU200内に設けられて、着火確認装置としての点火栓3に火炎イオン電流が発生したか否かを検知する火炎イオン電流検出手段7と、点火栓3へ比較的低電圧の電流を供給する低電圧電源8とを含む制御ブロックの関連構成を示す。
【0020】
ECU200に含まれている点火時期計算手段によって点火時期信号が計算されてイグナイタ5に送られると、この点火時期信号によって指令された時期に、高電圧(数万ボルト)の電流がイグナイタ5によって点火栓3の電極に印加される。点火電圧は高圧であるから、点火栓3の電極間にある混合気の絶縁層を破って火花放電が生じ、それによって混合気が着火する。この後、着火確認のために点火栓3の電極には低圧電源8から火炎イオン電流検出手段7を介して数百ボルト程度の電圧が印加される。
【0021】
火炎の内部ではガスの分子がイオン化して電離状態となっているので火炎には導電性があり、ガスの中に挿入された電極に電圧を印加すると電流が流れる。この電流は「火炎イオン電流」と呼ばれる。図3にはパイロット燃焼が着火した場合に点火栓3によって検出される火炎イオン電流の信号の波形と、失火した場合に検出される電流の信号の波形がそれぞれ示されている。パイロット燃焼が正常に着火した場合がAで、失火した場合がBおよびCである。
【0022】
なお、点火栓3を利用して火炎イオン電流を検出する場合でも、点火時期にはイグナイタ5によって点火栓3へ高電圧が印加されるので、点火時期以外の時期に点火栓3の付勢回路をイグナイタ5から火炎イオン電流検出手段7へ切り換えて、比較的低い電圧を点火栓3に印加することによってイオン電流を検出することになる。従って、図3や後出の線図においては、便宜上、火炎イオン電流を示す曲線が連続的に描かれているものの、実際は点火時期において切断された形になる。
【0023】
図3のAの場合は、点火後も点火栓3の電極の間に火炎イオン電流が流れている。しかしパイロット燃焼が失火してしまったBの場合は火炎が生じないので、数百ボルト程度の低電圧の印加では点火栓3の電極間に電流は流れていない。また、同じくパイロット燃焼が失火した例でもCの場合は、点火栓3の電極間に燃料の液滴が付着して電極間が短絡した場合であって、この点火栓に着火確認用の低電圧を印加すると、燃料の短絡経路を通してAの火炎イオン電流よりも大きい電流が流れる。以上のような火炎イオン電流信号、或いはそれに代わる電流の波形から、パイロット燃焼の着火或いは失火を確認することができる。
【0024】
図4に第1実施例の制御フローを示す。この場合は、パイロット燃焼が正常に着火したのを確認した後に、比較的多量の燃料噴射を行って主燃焼を起こさせることになっているので、パイロット燃焼の失火が検出された時は主燃焼の燃料噴射は停止される。ただし、第1実施例の場合は、主噴射を停止するだけで、その後の着火回復制御は行わない。従って、適当な時間を置いて筒内を乾燥させるというような措置を講じた後に再び始動操作を行うことになる。
【0025】
なお、図4に示す制御フローは、パイロット燃焼を制御するためのブロック10と、主燃焼を制御するためのブロック11と、パイロット燃焼の失火判定ブロック9とに大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック9により、その後に続く主燃焼のための燃料を噴射するか否かが決定される。パイロット燃焼が失火したときは主燃焼の燃料噴射を停止するので、無用の燃料を噴射して大気中へ排出する恐れがない。
【0026】
またパイロット燃焼が失火し、かつ点火栓3の電極に燃料による短絡がないと失火判定ブロック9が判断した場合は、次回のパイロット燃焼において燃料噴射量を増量させると着火しやすくなる。パイロット燃料に対する増量は僅かであるから、仮に次回のパイロット燃焼が失火した場合でも、大気中への未燃焼燃料の排出量を低く抑えることができる。
【0027】
図5と図6に第1実施例の制御信号の波形と、制御結果としての燃焼波形を示す。図5は燃焼が正常である場合を示していると共に、図6は失火した場合を示している。図5や図6の(3)等に示す燃焼波形は、筒内圧の変化を時間の経過(クランク角)に従って記録したもので、燃焼が発生すると筒内圧が高い値まで上昇する。なお、破線によって示したモータリング圧は、エンジン100が始動用モータによって駆動されることによって、圧縮行程において生じる筒内圧の変化を示すものであるから、筒内に燃焼が生じていなくても比較的小さな筒内圧の変化が見られる。
【0028】
燃焼が正常である場合を示す図5の(1)において、12はパイロット燃焼のための燃料噴射を表しているが、この噴射量は内燃機関100の出力とは無関係に一定の大きさとしてよい。図5の(2)に示すように、そのパイロット燃焼に対応した火炎イオン電流14を検出した時は、内燃機関100に要求される出力に応じた燃料噴射量13によって主噴射が行われ、パイロット燃焼の火炎によって確実に着火して主燃焼が行われる。その結果、図5の(3)に実線によって示すような燃焼波形が生じる。
【0029】
これに対して、失火した場合を示す図6では、図5と同じくパイロット燃焼のための燃料噴射15が行われるが、前述のような理由で着火しない。この場合はパイロット燃焼に対応する火炎イオン電流17は立ち上がらないで平坦なままであるから、波形を監視しているECU200によって失火したものと判断され、主燃料の燃料噴射16は停止される。従って、図6の場合は主燃焼は生じない。従来の制御においては、失火が生じた場合は内燃機関100の出力に応じた図5の(1)に示す12の部分と13の部分の燃料噴射の総和量が大気中へ排出されていたのに対し、本発明の第1実施例によれば、パイロット噴射分の15の部分の燃料が排出されるに過ぎないので、エミッションの悪化が防止される。なお、第1実施例の制御は内燃機関100が高圧縮比である時や、ノッキングを生じやすい低回転高負荷の運転状態にある時に有効である。
【0030】
(第2実施例)
第2実施例においても、エンジン100を含めたハードウエアのシステム構成は、第1実施例の図1および図2に示したものと同じである。以下、第2実施例の特徴とする制御の作動について図7から図8を用いて説明する。図7は第2実施例の制御フローを示すもので、第2実施例の制御は、パイロット燃焼の失火を検出した時に、直ちに次のパイロット燃焼を行って着火させる点に特徴を有するものである。
【0031】
図7に示す第2実施例の制御フローはパイロット燃焼を制御するブロック31と、主燃焼を制御するブロック32と、パイロット燃焼の失火を判定するブロック33に大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック33により、その後に続く主燃焼の燃料噴射が決定されることは第1実施例の場合と同様である。しかし、パイロット燃焼が失火したときは、点火栓の電極間が燃料によって短絡されていないこと(ブロック34)、および、既にパイロット燃焼のために噴射された燃料量が1気筒分の噴射予定量よりも小さいこと(ブロック35)を確認した後に、直ちに次のパイロット噴射と点火を行って着火の回復を図る。
【0032】
このように、第2実施例においては複数回のパイロット噴射と点火を繰り返すことによって着火の回復制御を行い、パイロット燃焼が確認された時に始めて主噴射が行われて主燃焼に移る。従って、失火の発生を極力抑えることができる結果、エミッション悪化の防止および内燃機関の早期暖機が可能となる。
【0033】
図8に第2実施例における制御信号の波形と、制御結果として検出される燃焼波形を例示する。図8の例では、初めの数回のパイロット燃焼が失火した後に、着火回復制御によってパイロット燃焼が成立している。すなわち、まずパイロット噴射36と点火が行われるが、パイロット噴射36に対応する火炎イオン電流37の立ち上がりが検知されないので、第2実施例の制御の特徴として、直ちに複数回のパイロット噴射38と点火が繰り返して行われる。そして火炎イオン電流39が検出された時に主燃焼の燃料噴射40へ制御が移行する。従って、第2実施例の制御は内燃機関100の冷間始動時に有利である。
【0034】
(第3実施例)
第3実施例も、そのハードウェアのシステム構成は第1実施例の図1および図2に示すものと同じである。第3実施例の特徴とする制御作動について図9から図10を用いて説明する。図9に第3実施例の制御フローを示す。第3実施例は、パイロット燃焼の失火を検出した時でも、第1実施例や第2実施例の場合と違って、直ちに主燃焼のための燃料噴射を行う。そして点火栓3の電極間にある混合気の燃料が十分に蒸発するだけの時間を置いてから、複数回の火花放電を行うことによって着火を達成するものである。
【0035】
この制御フローは、パイロット燃焼を制御するためのブロック41と、主燃焼を制御するためのブロック42と、パイロット燃焼の失火を判定するためのブロック43とに大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック43により、その後に続く主燃焼の燃料噴射が決定されることは第1実施例や第2実施例の場合と同じである。しかし、第3実施例の場合は、パイロット燃焼の失火が検出された時でも、点火栓3の電極が燃料の液滴によって短絡されていないことを確認(ブロック44)した後に直ちに主燃焼のための燃料噴射45を行う。次に1回目の主燃焼点火46が実行されて、火炎イオン電流入力47によって主燃焼の着火確認を行う。主燃焼の失火判断ブロック48において失火を検知した時は、着火回復のための点火制御49に移行する。この着火回復のための点火は、ピストン位置が最終点火時期を過ぎる時まで複数回繰り返される。この第3実施例によれば、主燃焼のための複数回の点火による着火回復制御によって失火が極力抑えられるので、エミッション悪化の防止および内燃機関の早期暖機に効果がある。
【0036】
図10に第3実施例の制御信号波形と、制御結果としての燃焼波形を示す。図10においてはパイロット燃焼が失火した後に、主噴射に対する複数回の点火による着火回復制御を行うことにより燃焼が確立している。すなわち、まずパイロット噴射50と点火が行われるが、パイロット噴射50に対応する火炎イオン電流51が検知されていない。そこで直ちに主燃焼の燃料噴射52が行われる。そして点火栓3の電極間に混合気の蒸発した燃料が行き渡ってから点火が始まることになる。複数回の点火が行われている間も火炎イオン電流は常に監視されており、火炎が発生したことを示す波形53が検出された時に、着火回復のための制御が終了する。これらの制御によって、失火の発生を極力抑えた燃焼状態が得られる。第3実施例の制御は、特に内燃機関100の冷間始動時に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例に共通のシステム構成を示すための、内燃機関の断面図と制御装置のブロック図との結合図である。
【図2】各実施例に共通の構成を示すための、点火栓の概念図と着火確認装置を兼ねる火花点火装置のブロック図との結合図である。
【図3】パイロット燃焼に対応した火炎イオン電流の波形を例示する線図である。
【図4】第1実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図5】第1実施例の制御によってパイロット燃焼と主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【図6】パイロット燃焼が失火した状態を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例の制御によってパイロット燃焼と主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図10】第3実施例の制御によって主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…クランク角センサ
2…フューエルインジェクタ
3…点火栓(点火確認装置の一部を兼ねる)
4…カム角センサ
5…イグナイタ
6…点火時期計算手段
7…火炎イオン電流検出手段
8…低圧電源
100…火花点火式筒内直噴型内燃機関
200…電子式制御装置(ECU)
【発明の属する技術分野】
本発明は、火花点火方式で、かつ燃料を筒内へ直接に噴射する形式の内燃機関における燃料噴射装置および点火装置を作動させる制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、火花点火式の内燃機関に属するものとして、燃料を筒内へ直接に噴射する所謂「筒内直噴型内燃機関」が実用化されている。この内燃機関においては、点火栓の近傍にのみ可燃混合気を形成することによって、全体としては燃料の希薄な混合気を筒内に形成し、所謂「リーン燃焼」の状態となる成層燃焼を実現することにより燃費の低減を図っている。しかしながら、筒内直噴型内燃機関においては成層燃焼のために点火栓の電極付近に燃料を噴射するので、特に冷間始動時には点火栓の電極間に燃料が付着して失火するという恐れがあった。
【0003】
そこで、特公平4−37264号公報に示されているように、まず「パイロット噴射」を行って火花点火させることにより所謂「パイロット燃焼」を起こさせると共に、続けて大部分の燃料を噴射する所謂「主噴射」を行って、パイロット燃焼による火炎によって主噴射燃料に着火させて「主燃焼」を起こさせると、失火を確実に防止することができる。また、それによってノック防止の効果も得られる。ただし、この火花点火によるパイロット燃焼と、それに続く主燃焼の組合せを実現することができるのは、吸気弁の閉弁時期から後に燃料を筒内へ供給することができる筒内直噴型内燃機関に限られる。
【0004】
一方、燃焼室内に一対の電極を設けて、この電極間に数百ボルト程度の比較的低い電圧を印加し、この電極に火炎が触れたときにプラズマ火炎の導電性により電流が流れるという性質を利用した着火確認装置が知られている。この着火確認装置によれば、筒内において火炎が発生(着火)したか、或いは失火したかということを検知することができる。着火確認装置の電極は内燃機関の燃焼室に装着されるので、普通は点火栓の電極と共用される。
【0005】
【発明が解決しようとする問題】
筒内直噴型の内燃機関における失火の原因として考えられるものには、始動時に未だ温度が低い筒内へ直接に燃料を噴射することによって、燃料の液滴が筒内壁や点火栓の電極へ付着すること、フューエルインジェクタの噴射孔が燃焼生成物のデポジットによって部分的に閉塞することによる燃料の霧化不良等がある。特に、低温始動時においては、燃料が筒内壁に付着して蒸発しないために点火栓の電極間にある混合気が燃料希薄になる場合や、点火栓の電極間に燃料の液滴が付着して電極を短絡させる場合がある。
【0006】
従来、これらの原因による失火が生じた後の着火回復措置としては、再度の火花点火を行うこと以外に方法がなかった。また、再度の火花点火を行うこともできない内燃機関では、着火確認装置を設けて失火を検知しても、失火したときに筒内に残っている混合気を再度着火させる手段がないので、失火した気筒内に残っている全ての混合気をそのまま排出する操作を行う結果、エミッションが悪化するという恐れがあった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の各請求項に記載された火花点火式筒内直噴型内燃機関の制御装置を提供する。
【0008】
請求項1および2の制御装置においては、いずれもパイロット燃焼と主燃焼とが分けて行われると共に、まず、パイロット燃焼において、着火確認手段による失火の判定が行われる。着火確認手段は筒内に設けられた電極の間に流れるイオン電流を検出することによって着火確認操作を行う。電極の間に全く電流が流れないときは、電極の近傍の混合気が燃料希薄であるために失火したものと判断されるし、所定の大きさの電流(イオン電流)が流れたことを検知した時は適正なパイロット燃焼が成立したものと判定することができ、直ちに主噴射操作を行って主燃焼に移行することができる。また、所定値以上の大きな電流が流れた時は、電極間に燃料の液滴が付着して電気的に短絡したものであるから、パイロット燃焼は失火したものと判定することができる。
【0009】
従って、パイロット燃焼の失火時には主燃焼分の燃料を噴射しないという制御が可能になり、未燃の燃料をエミッションとして大気中へ排出することが防止される。また、パイロット燃焼の失火状態から着火状態へ回復させようとする着火回復制御をとり入れた場合には、パイロット噴射操作、パイロット点火操作、パイロット燃焼の着火確認操作を複数回続けて行うことができるため、着火回復制御に大きな自由度があり、内燃機関の運転状況に応じた制御が可能になる。
【0010】
パイロット燃焼は主燃焼の失火を抑えるために行われるが、パイロット燃焼そのものが失火した場合でも、パイロット燃焼を圧縮行程の初期、すなわちピストンの下死点付近から開始すれば、普通は平均有効圧が最大になる点を選ぶ主燃焼の燃焼開始時期まで時間的には十分な余裕がある。また、筒内直噴型内燃機関においては、吸気弁が閉じた後でも火花点火操作、燃料噴射操作、および着火確認操作を行うことができるので、パイロット燃焼の開始時期は固定されることがなく自由度がある。従って、複数回のパイロット燃焼を行うことによって確実に着火させることができる。
この場合、請求項1の制御装置によれば、着火確認手段の信号によってパイロット燃焼の失火が検知されると、直ちに主噴射を禁止すると共に、パイロット噴射と点火を繰り返すことによって着火回復制御が行われる。パイロット噴射の燃料量は僅かであるから、仮に再び着火に失敗しても、大気中へ排出されるエミッションの量は無視することができる程度である。このようにパイロット噴射と点火を複数回繰り返すことによって着火すると、始めて主噴射が行われて主燃焼が開始される。
また、請求項2の制御装置においては、パイロット燃焼の失火が検知された時でも直ちに主噴射が行われ、所定の時間を置くことによって燃料を蒸発させてから、主噴射燃料に対して火花点火手段によって複数回繰り返して点火操作が行われる。この点火操作は、点火可能な期間内において、着火確認手段によって主燃焼の生じたことが検知される時まで続けられる。
【0011】
請求項3の制御装置によれば、請求項1に記載された構成を有する内燃機関において、主燃焼の燃焼開始が点火手段によらないで、先行するパイロット燃焼を点火源として自動的に行われる。パイロット燃焼の火炎の温度が燃料の発火温度よりも高くなると、燃料噴射手段が主噴射操作を行うと同時に主燃焼が開始される。従って、この場合は、点火手段によって主燃焼の燃焼開始時期を制御する代わりに、燃料噴射手段による主噴射操作の開始時期を制御することによって主燃焼の燃焼開始時期を制御することができる。
【0012】
請求項4の制御装置においては、点火手段の電極と着火確認手段の電極を共用すること、具体的には、点火手段としての通常の点火栓の付勢回路を切り換えることによって、点火栓を着火確認手段として流用するので、特別に着火確認手段としての電極を筒内に新設する必要がない。
【0016】
本発明によれば、火花による点火手段と、燃料を筒内へ直接に噴射することができる燃料噴射手段と、筒内に設けられた電極間に電圧を印加することにより炎の導電性を利用して火炎を認識する着火確認手段とを備えている筒内直噴型内燃機関において、制御装置によってパイロット燃焼の着火を確認する手順を経たのちに燃料の噴射制御と点火制御を行うので、失火によるエミッションの悪化を防ぐと共に、自由度の大きい着火回復制御を行うことができ、失火そのものを防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
本発明の第1実施例の構成と作動について図1から図5を用いて説明する。第1実施例における制御は、パイロット燃焼の失火を検出した時に主燃焼の燃料噴射を停止する点に特徴を有するもので、着火回復制御のない比較的簡易な制御の例である。しかし、この第1実施例によれば、失火を検出した後は余分な燃料を噴射しないので、エミッションの悪化を確実に防止することができる。
【0018】
図1に第1実施例の筒内直噴型内燃機関であるガソリンエンジン100の構成を示す。ガソリンエンジン100の構成部品には、クランク軸の付近に設けられたクランク角センサ1、筒内へ燃料を噴射するフューエルインジェクタ2、シリンダヘッドに取り付けられて筒内における着火の確認装置を兼ねる点火栓3、カム軸付近に設けられたカム角センサ4、点火栓3に高電圧を印加するイグナイタ5、マイクロコンピュータを内蔵している電子式制御装置(ECU)200等が含まれている。
【0019】
図2に、着火確認装置を兼ねる点火栓3と、図1にも示したイグナイタ5に加えて、イグナイタ5へ点火時期信号を供給するために前述のECU200内に設けられた点火時期計算手段6と、やはりECU200内に設けられて、着火確認装置としての点火栓3に火炎イオン電流が発生したか否かを検知する火炎イオン電流検出手段7と、点火栓3へ比較的低電圧の電流を供給する低電圧電源8とを含む制御ブロックの関連構成を示す。
【0020】
ECU200に含まれている点火時期計算手段によって点火時期信号が計算されてイグナイタ5に送られると、この点火時期信号によって指令された時期に、高電圧(数万ボルト)の電流がイグナイタ5によって点火栓3の電極に印加される。点火電圧は高圧であるから、点火栓3の電極間にある混合気の絶縁層を破って火花放電が生じ、それによって混合気が着火する。この後、着火確認のために点火栓3の電極には低圧電源8から火炎イオン電流検出手段7を介して数百ボルト程度の電圧が印加される。
【0021】
火炎の内部ではガスの分子がイオン化して電離状態となっているので火炎には導電性があり、ガスの中に挿入された電極に電圧を印加すると電流が流れる。この電流は「火炎イオン電流」と呼ばれる。図3にはパイロット燃焼が着火した場合に点火栓3によって検出される火炎イオン電流の信号の波形と、失火した場合に検出される電流の信号の波形がそれぞれ示されている。パイロット燃焼が正常に着火した場合がAで、失火した場合がBおよびCである。
【0022】
なお、点火栓3を利用して火炎イオン電流を検出する場合でも、点火時期にはイグナイタ5によって点火栓3へ高電圧が印加されるので、点火時期以外の時期に点火栓3の付勢回路をイグナイタ5から火炎イオン電流検出手段7へ切り換えて、比較的低い電圧を点火栓3に印加することによってイオン電流を検出することになる。従って、図3や後出の線図においては、便宜上、火炎イオン電流を示す曲線が連続的に描かれているものの、実際は点火時期において切断された形になる。
【0023】
図3のAの場合は、点火後も点火栓3の電極の間に火炎イオン電流が流れている。しかしパイロット燃焼が失火してしまったBの場合は火炎が生じないので、数百ボルト程度の低電圧の印加では点火栓3の電極間に電流は流れていない。また、同じくパイロット燃焼が失火した例でもCの場合は、点火栓3の電極間に燃料の液滴が付着して電極間が短絡した場合であって、この点火栓に着火確認用の低電圧を印加すると、燃料の短絡経路を通してAの火炎イオン電流よりも大きい電流が流れる。以上のような火炎イオン電流信号、或いはそれに代わる電流の波形から、パイロット燃焼の着火或いは失火を確認することができる。
【0024】
図4に第1実施例の制御フローを示す。この場合は、パイロット燃焼が正常に着火したのを確認した後に、比較的多量の燃料噴射を行って主燃焼を起こさせることになっているので、パイロット燃焼の失火が検出された時は主燃焼の燃料噴射は停止される。ただし、第1実施例の場合は、主噴射を停止するだけで、その後の着火回復制御は行わない。従って、適当な時間を置いて筒内を乾燥させるというような措置を講じた後に再び始動操作を行うことになる。
【0025】
なお、図4に示す制御フローは、パイロット燃焼を制御するためのブロック10と、主燃焼を制御するためのブロック11と、パイロット燃焼の失火判定ブロック9とに大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック9により、その後に続く主燃焼のための燃料を噴射するか否かが決定される。パイロット燃焼が失火したときは主燃焼の燃料噴射を停止するので、無用の燃料を噴射して大気中へ排出する恐れがない。
【0026】
またパイロット燃焼が失火し、かつ点火栓3の電極に燃料による短絡がないと失火判定ブロック9が判断した場合は、次回のパイロット燃焼において燃料噴射量を増量させると着火しやすくなる。パイロット燃料に対する増量は僅かであるから、仮に次回のパイロット燃焼が失火した場合でも、大気中への未燃焼燃料の排出量を低く抑えることができる。
【0027】
図5と図6に第1実施例の制御信号の波形と、制御結果としての燃焼波形を示す。図5は燃焼が正常である場合を示していると共に、図6は失火した場合を示している。図5や図6の(3)等に示す燃焼波形は、筒内圧の変化を時間の経過(クランク角)に従って記録したもので、燃焼が発生すると筒内圧が高い値まで上昇する。なお、破線によって示したモータリング圧は、エンジン100が始動用モータによって駆動されることによって、圧縮行程において生じる筒内圧の変化を示すものであるから、筒内に燃焼が生じていなくても比較的小さな筒内圧の変化が見られる。
【0028】
燃焼が正常である場合を示す図5の(1)において、12はパイロット燃焼のための燃料噴射を表しているが、この噴射量は内燃機関100の出力とは無関係に一定の大きさとしてよい。図5の(2)に示すように、そのパイロット燃焼に対応した火炎イオン電流14を検出した時は、内燃機関100に要求される出力に応じた燃料噴射量13によって主噴射が行われ、パイロット燃焼の火炎によって確実に着火して主燃焼が行われる。その結果、図5の(3)に実線によって示すような燃焼波形が生じる。
【0029】
これに対して、失火した場合を示す図6では、図5と同じくパイロット燃焼のための燃料噴射15が行われるが、前述のような理由で着火しない。この場合はパイロット燃焼に対応する火炎イオン電流17は立ち上がらないで平坦なままであるから、波形を監視しているECU200によって失火したものと判断され、主燃料の燃料噴射16は停止される。従って、図6の場合は主燃焼は生じない。従来の制御においては、失火が生じた場合は内燃機関100の出力に応じた図5の(1)に示す12の部分と13の部分の燃料噴射の総和量が大気中へ排出されていたのに対し、本発明の第1実施例によれば、パイロット噴射分の15の部分の燃料が排出されるに過ぎないので、エミッションの悪化が防止される。なお、第1実施例の制御は内燃機関100が高圧縮比である時や、ノッキングを生じやすい低回転高負荷の運転状態にある時に有効である。
【0030】
(第2実施例)
第2実施例においても、エンジン100を含めたハードウエアのシステム構成は、第1実施例の図1および図2に示したものと同じである。以下、第2実施例の特徴とする制御の作動について図7から図8を用いて説明する。図7は第2実施例の制御フローを示すもので、第2実施例の制御は、パイロット燃焼の失火を検出した時に、直ちに次のパイロット燃焼を行って着火させる点に特徴を有するものである。
【0031】
図7に示す第2実施例の制御フローはパイロット燃焼を制御するブロック31と、主燃焼を制御するブロック32と、パイロット燃焼の失火を判定するブロック33に大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック33により、その後に続く主燃焼の燃料噴射が決定されることは第1実施例の場合と同様である。しかし、パイロット燃焼が失火したときは、点火栓の電極間が燃料によって短絡されていないこと(ブロック34)、および、既にパイロット燃焼のために噴射された燃料量が1気筒分の噴射予定量よりも小さいこと(ブロック35)を確認した後に、直ちに次のパイロット噴射と点火を行って着火の回復を図る。
【0032】
このように、第2実施例においては複数回のパイロット噴射と点火を繰り返すことによって着火の回復制御を行い、パイロット燃焼が確認された時に始めて主噴射が行われて主燃焼に移る。従って、失火の発生を極力抑えることができる結果、エミッション悪化の防止および内燃機関の早期暖機が可能となる。
【0033】
図8に第2実施例における制御信号の波形と、制御結果として検出される燃焼波形を例示する。図8の例では、初めの数回のパイロット燃焼が失火した後に、着火回復制御によってパイロット燃焼が成立している。すなわち、まずパイロット噴射36と点火が行われるが、パイロット噴射36に対応する火炎イオン電流37の立ち上がりが検知されないので、第2実施例の制御の特徴として、直ちに複数回のパイロット噴射38と点火が繰り返して行われる。そして火炎イオン電流39が検出された時に主燃焼の燃料噴射40へ制御が移行する。従って、第2実施例の制御は内燃機関100の冷間始動時に有利である。
【0034】
(第3実施例)
第3実施例も、そのハードウェアのシステム構成は第1実施例の図1および図2に示すものと同じである。第3実施例の特徴とする制御作動について図9から図10を用いて説明する。図9に第3実施例の制御フローを示す。第3実施例は、パイロット燃焼の失火を検出した時でも、第1実施例や第2実施例の場合と違って、直ちに主燃焼のための燃料噴射を行う。そして点火栓3の電極間にある混合気の燃料が十分に蒸発するだけの時間を置いてから、複数回の火花放電を行うことによって着火を達成するものである。
【0035】
この制御フローは、パイロット燃焼を制御するためのブロック41と、主燃焼を制御するためのブロック42と、パイロット燃焼の失火を判定するためのブロック43とに大別される。パイロット燃焼の失火判定ブロック43により、その後に続く主燃焼の燃料噴射が決定されることは第1実施例や第2実施例の場合と同じである。しかし、第3実施例の場合は、パイロット燃焼の失火が検出された時でも、点火栓3の電極が燃料の液滴によって短絡されていないことを確認(ブロック44)した後に直ちに主燃焼のための燃料噴射45を行う。次に1回目の主燃焼点火46が実行されて、火炎イオン電流入力47によって主燃焼の着火確認を行う。主燃焼の失火判断ブロック48において失火を検知した時は、着火回復のための点火制御49に移行する。この着火回復のための点火は、ピストン位置が最終点火時期を過ぎる時まで複数回繰り返される。この第3実施例によれば、主燃焼のための複数回の点火による着火回復制御によって失火が極力抑えられるので、エミッション悪化の防止および内燃機関の早期暖機に効果がある。
【0036】
図10に第3実施例の制御信号波形と、制御結果としての燃焼波形を示す。図10においてはパイロット燃焼が失火した後に、主噴射に対する複数回の点火による着火回復制御を行うことにより燃焼が確立している。すなわち、まずパイロット噴射50と点火が行われるが、パイロット噴射50に対応する火炎イオン電流51が検知されていない。そこで直ちに主燃焼の燃料噴射52が行われる。そして点火栓3の電極間に混合気の蒸発した燃料が行き渡ってから点火が始まることになる。複数回の点火が行われている間も火炎イオン電流は常に監視されており、火炎が発生したことを示す波形53が検出された時に、着火回復のための制御が終了する。これらの制御によって、失火の発生を極力抑えた燃焼状態が得られる。第3実施例の制御は、特に内燃機関100の冷間始動時に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】各実施例に共通のシステム構成を示すための、内燃機関の断面図と制御装置のブロック図との結合図である。
【図2】各実施例に共通の構成を示すための、点火栓の概念図と着火確認装置を兼ねる火花点火装置のブロック図との結合図である。
【図3】パイロット燃焼に対応した火炎イオン電流の波形を例示する線図である。
【図4】第1実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図5】第1実施例の制御によってパイロット燃焼と主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【図6】パイロット燃焼が失火した状態を示すタイムチャートである。
【図7】第2実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図8】第2実施例の制御によってパイロット燃焼と主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【図9】第3実施例における制御作動を示すフローチャートである。
【図10】第3実施例の制御によって主燃焼が生じた状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
1…クランク角センサ
2…フューエルインジェクタ
3…点火栓(点火確認装置の一部を兼ねる)
4…カム角センサ
5…イグナイタ
6…点火時期計算手段
7…火炎イオン電流検出手段
8…低圧電源
100…火花点火式筒内直噴型内燃機関
200…電子式制御装置(ECU)
Claims (4)
- 少なくとも火花による点火手段と、燃料を筒内へ直接に噴射する燃料噴射手段と、前記筒内に設けられた電極の間に電圧を印加することにより火炎の導電性を利用して火炎の存在を認識することができる着火確認手段が組み合わされて設けられている火花点火式の筒内直噴型内燃機関において、
前記燃料噴射手段によって行われるパイロット噴射操作と、前記パイロット噴射操作によって噴射された燃料に前記点火手段によって着火させるパイロット点火操作と、前記パイロット点火操作によってパイロット燃焼が生じたか否かを前記着火確認手段によって検出するパイロット燃焼の着火確認操作と、前記パイロット燃焼の着火確認操作が行われた後に前記燃料噴射手段によって行われる主噴射操作と、前記主噴射操作によって噴射された燃料に主燃焼が生じたか否かを前記着火確認手段によって確認する主燃焼の着火確認操作とが、それぞれ前操作に続いて順次に実行されるように構成されていて、前記着火確認手段の信号によって前記パイロット燃焼を検出し、パイロット燃焼が失火と判定された時に前記主噴射操作を行うことを禁止すると共に、前記パイロット噴射操作と前記パイロット点火操作を繰り返して行うように設定されていることを特徴とする火花点火式筒内直噴型内燃機関の制御装置。 - 少なくとも火花による点火手段と、燃料を筒内へ直接に噴射する燃料噴射手段と、前記筒内に設けられた電極の間に電圧を印加することにより火炎の導電性を利用して火炎の存在を認識することができる着火確認手段が組み合わされて設けられている火花点火式の筒内直噴型内燃機関において、
前記燃料噴射手段によって行われるパイロット噴射操作と、前記パイロット噴射操作によって噴射された燃料に前記点火手段によって着火させるパイロット点火操作と、前記パイロット点火操作によってパイロット燃焼が生じたか否かを前記着火確認手段によって検出するパイロット燃焼の着火確認操作と、前記パイロット燃焼の着火確認操作が行われた後に前記燃料噴射手段によって行われる主噴射操作と、前記主噴射操作によって噴射された燃料に主燃焼が生じたか否かを前記着火確認手段によって確認する主燃焼の着火確認操作とが、それぞれ前操作に続いて順次に実行されるように構成されていて、前記着火確認手段の信号によって前記パイロット燃焼を検出し、パイロット燃焼が失火と判定された時に直ちに前記主噴射操作を行うと共に、所定の時間の後に前記点火手段を作動させて、点火が可能な期間内において前記着火確認手段によって主燃焼の着火が確認される時まで、前記点火手段によって主噴射燃料に対する点火操作を繰り返して行うように設定されていることを特徴とする火花点火式筒内直噴型内燃機関の制御装置。 - 請求項1または2において、前記着火確認手段によってパイロット燃焼が生じたことが確認された状態においては、前記主噴射操作によって噴射された燃料に対する点火が、前記パイロット燃焼による火炎を点火源として、前記主噴射操作が行われた時に自動的に生じるように設定されていることを特徴とする制御装置。
- 請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記筒内に設けられた前記着火確認手段の電極が前記点火手段の電極と共用されていることを特徴とする制御装置。
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