JP2007187130A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】成層燃焼時の燃焼悪化を抑制し、成層燃焼で運転可能な運転領域を従来よりも拡大して燃料消費率を改善可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】燃焼室6内に電極部10aが配置される点火プラグ10を備えるとともに、燃焼室6内における燃料の燃焼形態を成層燃焼に切り替えることが可能な火花点火式内燃機関1に適用される制御装置において、燃焼室6内にオゾンを供給するオゾン供給装置20を備え、ECU30は、内燃機関1の燃焼形態が成層燃焼の場合に燃焼室6内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるようにオゾン供給装置20の動作を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】燃焼室6内に電極部10aが配置される点火プラグ10を備えるとともに、燃焼室6内における燃料の燃焼形態を成層燃焼に切り替えることが可能な火花点火式内燃機関1に適用される制御装置において、燃焼室6内にオゾンを供給するオゾン供給装置20を備え、ECU30は、内燃機関1の燃焼形態が成層燃焼の場合に燃焼室6内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるようにオゾン供給装置20の動作を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃焼室内における燃料の燃焼形態を成層燃焼に切り替えることが可能な火花点火式内燃機関の制御装置に関する。
圧縮行程中に燃料とオゾンを略同時に気筒内に供給し、内燃機関に安定した自己着火燃焼を行わせる自己着火式内燃機関が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2〜4が存在する。
内燃機関の燃焼形態として、点火プラグの電極部の付近に燃焼室内の他の領域に形成される燃料混合気(以下、希薄混合気と呼ぶこともある。)よりも燃料濃度の濃い燃料混合気(以下、高濃度混合気と呼ぶこともある。)を導き、この高濃度混合気に着火する成層燃焼が知られている。成層燃焼時の燃焼は高濃度混合気の混合状態及び高濃度混合気に含まれる燃料の微粒化に影響され、混合気の混合状態又は燃料の微粒化が悪化すると燃焼が悪化する。このような場合は内燃機関の燃焼形態を成層燃焼から均質燃焼に切り替えるが、成層燃焼と比較して均質燃焼では使用する燃料量が増加するため、燃料消費率が悪化する。上述した従来の内燃機関は自己着火燃焼の燃焼改善を目的としており、成層燃焼の燃焼改善は考慮されていない。
そこで、本発明は、成層燃焼時の燃焼悪化を抑制し、成層燃焼で運転可能な運転領域を従来よりも拡大して燃料消費率を改善可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関の制御装置は、燃焼室内に電極部が配置される点火プラグを備えるとともに、前記燃焼室内における燃料の燃焼形態を成層燃焼に切り替えることが可能な火花点火式内燃機関に適用される制御装置において、前記燃焼室内にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記内燃機関の燃焼形態が成層燃焼の場合に前記燃焼室内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御する動作制御手段と、を備えていることにより、上述した課題を解決する(請求項1)。
本発明の制御装置によれば、内燃機関の燃焼形態が成層燃焼の場合に燃焼室内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるので、このオゾンによって燃料混合気の燃焼を促進させて燃焼の悪化を抑制できる。そのため、従来よりも成層燃焼で運転可能な運転領域を拡大して燃料消費率を改善することができる。内燃機関が高負荷、高回転で運転されている場合はピストンスピードが速く、点火プラグ周辺の燃料混合気が吹き飛ばされ易くなる。この場合も、オゾンを供給することによって点火プラグの周辺に残った燃料混合気の燃焼を促進させることができるので、燃焼の悪化を抑制できる。なお、本発明では燃焼室内にオゾンを供給することを、オゾンを付加すると呼ぶこともある。
本発明の制御装置の一形態において、前記オゾン供給手段は、前記電極部付近にオゾンを供給可能なオゾン供給ノズルを備えていてもよい(請求項2)。この場合、電極部付近の高濃度混合気にオゾンを供給することができるので、この高濃度混合気の燃焼を確実に改善することができる。
本発明の制御装置の一形態においては、前記燃焼室に供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定手段をさらに備え、前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段の判定結果に基づいて前記燃焼室内へのオゾンの供給時期が調整されるように前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項3)。燃焼室内における燃料と吸気の混合状態は、燃料性状に影響される。例えば、軽質の燃料は重質の燃料よりも分散し易い。この場合、燃料の性状に応じてオゾンの供給時期を変更するので、燃焼室内で形成される燃料混合気に適切にオゾンを供給し、成層燃焼の燃焼悪化を適切に抑制できる。
この形態においては、吸気温度を取得する吸気温度取得手段をさらに備え、前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定された場合、前記燃料性状判定手段の判定結果及び前記吸気温度温度取得手段によって取得された吸気温度の両方に基づいてオゾンの供給時期が調整されるように前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項4)。燃焼状態は吸気温度に影響され、吸気温度が低い場合は吸気温度が高い場合よりも燃焼が悪化し易い。特に分散し難い重質の燃料の場合は吸気温度の影響を受け易い。そこで、燃料の性状が重質と判定された場合は、燃料の性状及び吸気温度の両方に基づいてオゾンの供給時期を調整する。このように供給時期を調整することにより、より適切な時期にオゾンを供給し、成層燃焼の燃焼悪化をより適切に抑制できる
前記内燃機関は、前記燃焼室内に燃料を噴射する燃焼噴射弁を備え、前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定され、かつ前記吸気温度取得手段により取得された吸気温度が所定の判定温度以上の場合、前記燃料噴射弁から燃料が噴射されると略同時に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御するとともに、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定され、かつ前記吸気温度取得手段により取得された吸気温度が前記所定の判定温度未満の場合、前記燃料噴射弁から前記燃焼室内に燃料が噴射されて燃料混合気が形成されてから前記点火プラグによってこの燃料混合気に点火されるまでの間に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項5)。吸気温度が低い場合は吸気温度が高い場合よりも燃焼が悪化し易いので、燃料噴射弁から燃料が噴射されて燃料混合気が形成された後にオゾンを燃焼室内に供給し、燃料混合気に確実にオゾンを付加する。このようにオゾンを付加することにより、吸気温度が低い場合でも成層燃焼の燃焼悪化を抑制できる。一方、吸気温度が高い場合は、燃料の噴射開始と略同時に燃焼室内にオゾンを供給するので、燃料混合気とオゾンとの混合時間を確保することができる。そのため、燃料混合気中にオゾンを分散させることができる。この場合、燃料混合気が形成された後にオゾンを付加する場合よりも燃焼室内のより多くの領域の燃焼を改善できる。
また、前記動作制御手段は、前記燃料性状判定取得手段によって燃料の性状が軽質と判定された場合、前記燃焼室に設けられた吸気弁の開弁開始時に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項6)。軽質の燃料は重質の燃料よりも分散し易いため、成層燃焼時でも燃焼室内全体に燃料が分散するおそれがある。そこで、吸気弁の開弁開始時にオゾンを供給してオゾンを燃焼室内に分散させる。このようにオゾンを分散させることにより、燃料混合気とオゾンとを適切に混合できるので、成層燃焼の悪化が抑制できる。
本発明の制御装置の一形態において、前記燃料性状判定手段は、燃料の性状として燃料の沸点の高低を判定し、前記動作制御手段は、前記燃焼室に設けられた吸気弁の開弁開始時期から前記点火プラグによる点火時期までの期間内に前記燃焼室内にオゾンが供給され、かつ前記燃料性状判定手段により判定された燃料の沸点が高いほど前記燃焼室内へのオゾンの供給時期が遅くなるように前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項7)。上述したように燃料の性状が重質であるほど、すなわち燃料の沸点が高いほど燃焼室内に噴射された燃料が分散し難くなる。そこで、このように燃料の沸点が高いほどオゾンの供給時期を遅くすることによって、上述した形態と同様に成層燃焼の悪化を抑制できる。
本発明の制御装置の一形態において、前記動作制御手段は、前記内燃機関の回転数と前記燃焼室内に供給される燃料量とに基づいて前記オゾン供給手段から前記燃焼室内に供給するオゾン量を設定するオゾン供給量設定手段を備えていてもよい(請求項8)。内燃機関が回転数が高くなるほど燃料が燃焼室内に噴射されてから点火までの時間が短くなるため、燃料と吸気とが十分に混合されず燃焼が悪化するおそれがある。また、燃料噴射量が増加すればその燃焼を改善するために必要となるオゾン量は増加する。この形態では、内燃機関の回転数と燃料噴射量とに基づいてオゾンの供給量を設定するので、燃焼を改善するために必要な適正量のオゾン量を設定することができる。
本発明の制御装置の一形態においては、前記内燃機関の排気温度を取得する排気温度取得手段と、前記排気温度取得手段により取得された排気温度が上昇した場合、この排気温度の上昇に応じて前記燃焼室内に供給される燃料量を減少させる燃料量調整手段と、をさらに備えていてもよい(請求項9)。オゾンの供給によって燃焼が改善された場合は排気温度が上昇するので、このように燃料量を減少させることによって安定な燃焼を維持しつつ消費される燃料量を低減できる。そのため、燃料消費率を改善できる。
本発明の制御装置の一形態において、前記動作制御手段は、前記内燃機関の燃焼形態が成層燃焼であり、かつアイドル運転時に前記燃焼室内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるよう前記オゾン供給手段の動作を制御してもよい(請求項10)。アイドル運転時は燃料の供給時期が遅角されるので、燃料が噴射されてから点火までの時間が短縮され、燃焼が悪化し易い。そこで、成層燃焼時であり、かつアイドル運転時に燃焼室内にオゾンを供給することによってアイドル運転時に成層燃焼を安定に行わせる。これにより、均質燃焼でアイドル運転を行う場合よりも消費される燃料量を低減できるので、燃料消費率を改善できる。
以上に説明したように、本発明によれば、成層燃焼時に燃焼室内にオゾンを供給するので、燃焼の悪化を抑制できる。そのため、成層燃焼で運転可能な運転領域を従来よりも拡大し、燃料消費率を改善できる。
図1は、本発明の制御装置が組み込まれた内燃機関の一例を示している。図1の内燃機関(以下、エンジンと呼ぶこともある。)1は、車両に走行用動力源として搭載される火花点火式ガソリンエンジンであり、シリンダブロック2とシリンダヘッド3とを備えている。シリンダブロック2には複数(図1では1つのみを示す。)の気筒4が形成されている。各気筒4には、ピストン5が往復動自在にそれぞれ挿入され、ピストン5と気筒4の壁面とシリンダヘッド3とによって燃焼室6がそれぞれ形成される。また、各気筒4には吸気通路7及び排気通路8がそれぞれ接続されるとともに、燃料噴射弁としてのインジェクタ9と点火プラグ10とがそれぞれ設けられている。吸気通路7は吸気弁11によって開閉され、排気通路8は排気弁12によって開閉される。図1に示したようにピストン5の頂面5aにはピストンキャビティ5bが形成されており、インジェクタ9は、ピストン5が上死点付近にあるときに燃料が噴射されると噴射された燃料がピストンキャビティ5bに沿って点火プラグ10の電極部10aに到達するように設けられている。
エンジン1は、オゾン供給手段としてのオゾン供給装置20を備えている。オゾン供給装置20は、オゾン生成器21とアキュムレータ22と開閉バルブ23とオゾン供給ノズル24とを備えている。オゾン生成器21は、放電などを利用して空気中の酸素からオゾンを生成する周知の装置である。アキュムレータ22には、オゾン生成器21で生成されたオゾンが高圧で貯留される。オゾンの貯留圧力としては、例えば点火プラグ10によって燃料混合気に点火する直前の燃焼室6内の圧力よりも高い圧力が設定される。図1に示したようにアキュムレータ22とオゾン供給ノズル24とはオゾン供給管25で接続されており、開閉バルブ23はこのオゾン供給管25に設けられている。開閉バルブ23は、オゾン供給管25を開閉することによってアキュムレータ22とオゾン供給ノズル23との連通及び遮断を切り替える。図1に示したように、オゾン供給ノズル24は点火プラグ10と一体に設けられており、その先端24aは電極部10a付近にオゾンが付加されるように配置されている。なお、オゾン供給ノズル24からオゾンが付加されたときのオゾンの状態の一例を図1に示した。オゾン生成器21は、エンジン1の運転中にアキュムレータ22から燃焼室6にオゾンが供給可能な程度のオゾンがアキュムレータ22に貯留されるように動作が制御されればよく、例えばアキュムレータ22の圧力が所定圧力以下になった場合に動作するように制御されてもよいし、所定時間ごとに動作するように制御されてもよい。
開閉バルブ23の動作は、エンジンコントロールユニット(ECU)30によって制御される。ECU30は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なRAM、ROM等の周辺機器を含んだコンピュータとして構成され、所定のセンサの出力信号を参照してインジェクタ9、点火プラグ10などの動作を制御してエンジン1の運転状態を制御する周知のコンピュータユニットである。ECU30が参照するセンサとしては、例えばエンジン1のクランク角に対応した信号を出力するクランク角センサ31、エンジン1の排気温度に対応した信号を出力する排気温度取得手段としての排気温センサ32、エンジン1の吸気量に対応した信号を出力するエアフローメータ33、吸気温度に対応した信号を出力する吸気温度取得手段としての吸気温センサ34、燃料性状判定手段としての燃料性状センサ35、及びエンジン1のスロットルバルブがアイドリング位置にあるときにオンの信号を出力するアイドルスイッチ36などが設けられる。燃料性状センサ35は、例えば燃料を加熱したときにその燃料の50%が蒸発する温度である50%蒸留点を参照して燃料の性状を判定する。この50%蒸留点は、例えばエンジン1の燃料タンクに貯留されている燃料の一部を加熱して検出してもよいし、50%蒸留点と相関関係を有する物理量を検出し、この物理量に基づいて燃料の50%蒸留点を推定してもよい。
ECU30は、例えばクランク角センサ31の出力信号及びエアフローメータ33の出力信号を参照してインジェクタ9から気筒4内に噴射すべき燃料量を算出する。また、ECU30は、エンジン1の回転数及びエンジン1のトルクに応じてこの算出した量の燃料を噴射すべき噴射タイミングを決定する。なお、エンジン1の回転数はクランク角センサ31の出力信号に基づいて取得され、エンジン1のトルクはエアフローメータ23の出力信号に基づいて取得される。上述したように、ピストン5が上死点付近にある場合はインジェクタ9から噴射された燃料をピストンキャビティ5bによって点火プラグ10の電極部10aに導くことができるので、噴射タイミングをピストン5が上死点付近にある圧縮行程末期に設定することにより、燃焼室6内に希薄混合気と高濃度混合気を形成するとともに点火プラグ10の電極部10aに高濃度混合気を導き、この高濃度混合気に着火するいわゆる成層燃焼を行うことができる。一方、噴射タイミングを吸気行程に設定することにより、燃焼室6内に燃料濃度が略均等の燃料混合気を形成してこの燃料混合気に着火するいわゆる均質燃焼を行うことができる。すなわち、ECU30は、エンジン1の燃焼形態をエンジン1の回転数及びエンジン1のトルクに応じて均質燃焼又は成層燃焼に切り替える。図2は、エンジン1の回転数及びエンジン1のトルクと燃焼形態との関係の一例を示している。ECU30は、図2に示した関係をマップとして有し、このマップを参照して燃焼形態の切り替えを行う。
エンジン1が成層燃焼時に高負荷、高回転で運転されると、ピストン5の往復動のスピードが増加して高濃度混合気が電極部10aの周辺から吹き飛ばされるおそれがある。また、燃焼室6内に供給する燃料量が増加すると噴射された燃料の貫徹力が増加するので、高濃度混合気がピストンキャビティ5bからはみ出し易くなり、燃焼が悪化し易くなる。そこで、ECU30は、エンジン1の燃焼形態が成層燃焼の場合に燃料混合気の燃焼の悪化を抑制すべく燃焼室6内にオゾンを供給する。図3及び図4は、ECU30が成層燃焼時にエンジン1の燃焼を安定にするために実施するオゾン供給制御ルーチンを示している。この制御ルーチンは、エンジン1の運転中に所定の周期で繰り返し実行される。
図3の制御ルーチンにおいてECU30は、まずステップS11においてエンジン1の燃焼形態が成層燃焼であるか否か判定する。この判定は、図2のマップを参照して行われ、エンジン1の回転数及びエンジン1のトルクによって特定された位置が図2のマップにおいて成層燃焼を行う領域内の場合にエンジン1の燃焼形態が成層燃焼であると判断する。エンジン1の燃焼形態が均質燃焼であると判断した場合は図4に進み、今回の制御ルーチンを終了する。一方、エンジン1の燃焼形態が成層燃焼であると判断した場合はステップS12に進み、ECU30は開閉バルブ23を開けて燃焼室6内にオゾンを供給するオゾン供給時期が設定されていることを示す設定フラグがオンの状態か否か判定する。設定フラグがオンの状態と判断した場合はステップS13〜S20をスキップし、ステップS21に進む。一方、設定フラグがオフの状態と判断した場合はステップS13に進み、ECU30はエンジン1の回転数、及びインジェクタ9から燃焼室6内に噴射される燃料噴射量をそれぞれ取得する。
次のステップS14においてECU30は、燃焼室6内に付加すべきオゾン付加量Qを算出する。オゾン付加量Qは、基本オゾン付加量Qbに第1補正係数α1及び第2補正係数α2を掛けることによって算出される。基本オゾン付加量Qには、例えば成層燃焼時に燃焼室6内において燃料を安定に燃焼させることが可能なオゾン量の最低値が設定される。なお、この最低値は実験又は数値計算などによって予め設定される。図5は、エンジン1の回転数と第1補正係数α1との関係の一例を示している。成層燃焼時の燃料の燃焼は、エンジン1の回転数が高いほど不安定になり易い。これは、エンジン1の回転数が高いほど燃料と吸気との混合時間が短くなるためである。そこで、エンジン1の回転数が高いほどオゾン付加量Qが増加するように、エンジン1の回転数が高いほど第1補正係数α1が大きく設定される。図6は、インジェクタ9から燃焼室6内に噴射される燃料噴射量と第2補正係数α2との関係の一例を示している。燃料噴射量が多いほどその燃焼を安定化するために必要なオゾン量は多くなるので、燃料噴射量が多いほど第2補正係数α2が大きく設定される。
次のステップS15においてECU30は、燃料性状センサ35の出力信号を参照して燃料の性状が重質か否か判定する。燃料が重質か否かは例えば50%蒸留点が予め設定した所定判定温度以上か否かによって判定し、50%蒸留点が所定判定温度以上の場合に燃料が重質と判断する。軽質の燃料は重質の燃料と比較して分散し易いため、インジェクタ9から噴射した燃料がピストンキャビティ5bからはみ出し易い。そのため、高濃度混合気を電極部10aに導き難い。そこで、所定判定温度には、例えばインジェクタ9から燃料を噴射してもピストンキャビティ5bに沿って燃料が電極部10aに到達し難い燃料の50%蒸留点が設定される。なお、ピストンキャビティ5bの外への燃料の分散し易さは、ピストンキャビティ5bの形状、インジェクタ9の配置位置などに応じて変化するため、所定判定温度はこれらのパラメータに応じて適宜変更される。
燃料が重質であると判断した場合はステップS16に進み、ECU30は吸気温度が所定の判定温度未満か否か判定する。吸気温度は燃料の燃焼に影響を与え、吸気温度が低いほど燃焼が不安定になり易い。そこで、後述するように吸気の温度が低い場合は電極部10aの周辺に確実にオゾンを供給し、燃料混合気の燃焼を改善する。なお、燃焼が不安定になり易い吸気温度は、エンジン1の諸元、燃料の性状等に応じて変化するので、所定の判定温度はこれらのパラメータに応じて適宜変更される。
吸気温度が所定の判定温度未満と判断した場合はステップS17に進み、ECU30はオゾンの供給時期をインジェクタ9から燃料が噴射されて燃料混合気が形成されてから点火プラグ10によってこの燃料混合気に点火されるまでの間に設定する。電極部10aの周辺に確実にオゾンを供給するために、オゾンの供給時期を点火直前、例えば点火プラグ10の点火時期よりもクランク角度で数°CA前の時期に設定するのが望ましい。一方、吸気温度が所定の判定温度以上と判断した場合はステップS18に進み、ECU30はオゾンの供給時期をインジェクタ9から燃料が噴射されると略同時に燃焼室6内にオゾンが供給されるようにインジェクタ9からの燃料噴射時期と同一時期に設定する。
なお、ステップS15で燃料の性状が軽質であると判断した場合はステップS19に進み、ECU30はオゾンの供給時期を吸気弁11の開弁開始時期と同一時期に設定する。
ステップS17、S18、又はS19の処理においてオゾン供給時期を設定した後は図4のステップS20に進み、ECU30は設定フラグをオンの状態に切り替える。続くステップS21においてECU30は設定したオゾン供給時期に達したか否か判断する。点火時期、燃料噴射時期、及び吸気弁11の開弁開始時期はクランク角度によって特定できるので、ECU30はクランク角センサ31の出力信号を参照してオゾン供給時期に達したか否か判断する。オゾン供給時期に達していないと判断した場合はステップS22及びS23をスキップしてステップS24に進む。一方、オゾン供給時期に達したと判断した場合はステップS23に進み、オゾン付加量Qのオゾンが燃焼室6内に付加されるように開閉バルブ23の動作を制御する。続くステップS24においてECU30は設定フラグをオフの状態に切り替える。
次のステップS24においてECU30は、排気温度が上昇したか否か判断する。排気温度が上昇していないと判断した場合は今回の制御ルーチンを終了する。一方、排気温度が上昇したと判断した場合はステップS25に進み、ECU30は排気温度の上昇に応じて燃料噴射量を減少させるべく次に燃焼室6内に噴射する燃料量の減少量を設定する。図7は、単位時間あたりにおける排気温度の変化量(以下、排気温度上昇量と呼ぶ。)と燃料噴射量の減少量との関係の一例を示している。図7に示したように、排気温度上昇量が大きいほど減少量が大きく設定される。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
以上に説明したように、この形態では成層燃焼時に燃焼室6内にオゾンを供給するので、このオゾンによって燃料混合気の燃焼を促進させ、燃焼の悪化を抑制できる。また、燃料の性状及び吸気温度に応じてオゾン供給時期を調整することによって燃焼の悪化を適切に抑制できる。燃料が重質で、かつ吸気温度が低い場合は、オゾン供給時期を点火時期の直前に設定するので、点火プラグ10の電極部10aの周辺に確実にオゾンを供給できる。そのため、電極部10a周辺の燃料混合気にオゾンを付加し、燃料混合気の燃料を確実に促進させることができる。燃料が重質で、かつ吸気温度が高い場合は、オゾンの供給時期を燃料の噴射時期と同一時期に設定するので、オゾンと燃料混合気との混合時間を確保することができる。そのため、電極部10aの周辺以外の燃料混合気の燃焼も促進させることができる。燃料が軽質の場合は、オゾンの供給時期を吸気弁11の開弁開始時期と同一に設定する。軽質の燃料は重質の燃料よりも分散し易いので、燃焼室6内に噴射された燃料がピストンキャビティ5bからはみ出し易い。そこで、オゾンの供給時期を吸気弁11の開弁開始時期と同一に設定し、吸気によってオゾンを燃焼室6内の略全体に分散させる。このようにオゾンを供給することにより、ピストンキャビティ5bからはみ出た燃料の燃焼もオゾンによって促進させることができる。
燃焼が改善された場合は排気温度が上昇するので、排気温度が上昇した場合は排気温度上昇量に応じて燃料噴射量を減少させることによって安定な燃焼を維持しつつエンジン1で消費される燃料量を低減できる。そのため、燃料消費率を改善できる。
ECU30は、図3及び図4に示した制御ルーチンを実行してオゾン供給装置20の動作を制御することにより、本発明の動作制御手段として機能する。また、ECU30は、図3のステップS13及びS14の処理を実行することにより本発明のオゾン供給量設定手段として機能し、図4のステップS24及びS25の処理を実行することにより本発明の燃料量調整手段として機能する。
アイドル運転時は燃料の供給時期が遅角されるので、燃焼が悪化し易い。そこで、成層燃焼時であり、かつアイドル運転時に燃焼室内にオゾンを供給してアイドル運転時の成層燃焼を安定に行わせてもよい。図8及び図9は、このようなアイドル運転時の成層燃焼を安定化させるためにECU30が実行するアイドル運転時オゾン供給制御ルーチンを示している。この制御ルーチンは、エンジン1の運転中に所定の周期で繰り返し実行される。なお、図8及び図9において図3及び図4と同一の処理には同一の参照符号を付し、説明を省略する。図8及び図9に示したように、この制御ルーチンは、図3のステップS13及びS14の処理の代わりにステップS31の処理が設けられるとともに、図4のステップS24及びS25の処理が無い点が異なる。
図8の制御ルーチンにおいてステップS12までは図3の制御ルーチンと同様の処理が行われる。ステップS12において設定フラグがオンであると判断した場合はステップS31に進み、ECU30はアイドルスイッチ36の状態を参照してエンジン1がアイドル運転中であるか否か判定する。エンジン1がアイドル運転中ではないと判断した場合は今回の制御ルーチンを終了する。一方、エンジン1がアイドル運転中であると判断した場合はステップS13以下に進み、図3及び図4に示した制御ルーチンと同様の処理を行う。なお、アイドル運転時の燃料噴射量は、エンジン1の諸元及びアイドル回転数などに基づいて予め推定できる。そこで、ステップS22の処理において燃焼室6内に供給されるオゾン量は、この推定された燃料量の燃料の燃焼が改善可能な量が設定される。
以上に説明したように、この制御ルーチンによれば、エンジン1の燃焼形態が成層燃焼であり、かつエンジンがアイドル運転中の時は、燃焼室6内にオゾンが供給されるので、燃焼を改善して成層燃焼のアイドル運転を従来よりも安定に行うことができる。また、成層燃料でアイドル運転を行うことにより、均質燃焼でアイドル運転を行う場合よりも消費される燃料量を低減できるので、アイドル運転時の燃料消費率を改善できる。
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、オゾン供給時期の設定方法は上述した方法に限定されない。気筒内に供給される燃料の性状として燃料の沸点の高低を判定し、燃料の沸点が高いほど、すなわち燃料が重質であるほどオゾン供給時期を遅く設定してもよい。なお、この場合、オゾンは吸気弁の開弁開始時期から点火時期までの期間内に供給されるようにオゾン供給時期が設定される。また、吸気温度が低いほどこの期間内においてオゾン供給時期を遅く設定してもよい。このようにオゾン供給時期を設定しても上述した形態と同様の効果を得ることができる。
1 エンジン(内燃機関)
6 燃焼室
9 インジェクタ(燃料噴射弁)
10 点火プラグ
10a 電極部
20 オゾン供給装置(オゾン供給手段)
24 オゾン供給ノズル
30 エンジンコントロールユニット(動作制御手段、オゾン供給量設定手段、燃料量調整手段)
32 排気温センサ(排気温度取得手段)
34 吸気温センサ(吸気温度取得手段)
35 燃料性状センサ(燃料性状判定手段)
6 燃焼室
9 インジェクタ(燃料噴射弁)
10 点火プラグ
10a 電極部
20 オゾン供給装置(オゾン供給手段)
24 オゾン供給ノズル
30 エンジンコントロールユニット(動作制御手段、オゾン供給量設定手段、燃料量調整手段)
32 排気温センサ(排気温度取得手段)
34 吸気温センサ(吸気温度取得手段)
35 燃料性状センサ(燃料性状判定手段)
Claims (10)
- 燃焼室内に電極部が配置される点火プラグを備えるとともに、前記燃焼室内における燃料の燃焼形態を成層燃焼に切り替えることが可能な火花点火式内燃機関に適用される制御装置において、
前記燃焼室内にオゾンを供給するオゾン供給手段と、前記内燃機関の燃焼形態が成層燃焼の場合に前記燃焼室内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御する動作制御手段と、を備えていることを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記オゾン供給手段は、前記電極部付近にオゾンを供給可能なオゾン供給ノズルを備えていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃焼室に供給される燃料の性状を判定する燃料性状判定手段をさらに備え、
前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段の判定結果に基づいて前記燃焼室内へのオゾンの供給時期が調整されるように前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。 - 吸気温度を取得する吸気温度取得手段をさらに備え、
前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定された場合、前記燃料性状判定手段の判定結果及び前記吸気温度温度取得手段によって取得された吸気温度の両方に基づいてオゾンの供給時期が調整されるように前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記内燃機関は、前記燃焼室内に燃料を噴射する燃焼噴射弁を備え、
前記動作制御手段は、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定され、かつ前記吸気温度取得手段により取得された吸気温度が所定の判定温度以上の場合、前記燃料噴射弁から燃料が噴射されると略同時に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御するとともに、前記燃料性状判定手段によって燃料の性状が重質と判定され、かつ前記吸気温度取得手段により取得された吸気温度が前記所定の判定温度未満の場合、前記燃料噴射弁から前記燃焼室内に燃料が噴射されて燃料混合気が形成されてから前記点火プラグによってこの燃料混合気に点火されるまでの間に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記動作制御手段は、前記燃料性状判定取得手段によって燃料の性状が軽質と判定された場合、前記燃焼室に設けられた吸気弁の開弁開始時に前記燃焼室内にオゾンが供給されるように前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記燃料性状判定手段は、燃料の性状として燃料の沸点の高低を判定し、
前記動作制御手段は、前記燃焼室に設けられた吸気弁の開弁開始時期から前記点火プラグによる点火時期までの期間内に前記燃焼室内にオゾンが供給され、かつ前記燃料性状判定手段により判定された燃料の沸点が高いほど前記燃焼室内へのオゾンの供給時期が遅くなるように前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記動作制御手段は、前記内燃機関の回転数と前記燃焼室内に供給される燃料量とに基づいて前記オゾン供給手段から前記燃焼室内に供給するオゾン量を設定するオゾン供給量設定手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記内燃機関の排気温度を取得する排気温度取得手段と、前記排気温度取得手段により取得された排気温度が上昇した場合、この排気温度の上昇に応じて前記燃焼室内に供給される燃料量を減少させる燃料量調整手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記動作制御手段は、前記内燃機関の燃焼形態が成層燃焼であり、かつアイドル運転時に前記燃焼室内で形成される燃料混合気にオゾンが供給されるよう前記オゾン供給手段の動作を制御することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
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