本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1に示す本実施形態の液体吐出装置1は、液体供給装置2の液体供給部3にニードル4が設けられたものである。なお、ニードル4はノズルと呼ばれることもある。
ニードル4より下位置には図示しないステージが配置され、このステージの上面に塗布対象物が載置される。液体吐出装置1は、ニードル4の下端に開口した吐出口4aから塗布対象物に向けて液体を吐出する。以下の説明では、図1の上下方向を液体供給装置2及び液体吐出装置1の上下方向とする。
本実施形態の液体供給装置2は、ニードル4に液体を供給するものであり、液体が収容されるシリンジ10と、シリンジ10の第1の端を閉鎖するキャップ11と、シリンジ10内に気密に嵌合され、シリンジ10に対して相対的に移動自由であるピストン12と、ピストン12が設けられたロッド13と、第1の空圧供給部41と、第2の空圧供給部44と、ロッド13がシリンジ10に対して液体の液面から離れる方向(本実施形態では「上方向」とも言う)へ移動するのを制限する移動制限機構30と、ピストン12を液面から離れる方向に所定距離L1を移動させるピストン戻り機構20とを備えている。本実施形態では液体供給装置2は一回あたり約50ナノリットル(0.05立方ミリメートル)の容量の液体をニードル4に供給するように設計されているが、供給量はこれに限定されない。
図1に示すように、シリンジ10は内径が略13mmの略円筒形状の容器であって、ニードル4に供給される液体が収容される。シリンジ10の第1の端(「上端」とも言う。)は開放され上端縁には外側に延びるフランジ部10aが形成されている。第2の端(「下端」とも言う。)には下方に向けて先細り形状である液体供給部3が設けられ、液体供給部3の下端にはニードル4が接続されている。
シリンジ10内に収容された液体の上方及び後述するシート材70の上方には、ロッド13の第2の端側(下端側)に設けられたピストン12が配置されている。ピストン12はシリンジ10の内面に気密及び液密に嵌合されて、上下方向に移動自由である。シリンジ10内のピストン12と液体の液面との間には第1の空間S1が形成されている。第1の空間S1に空圧を付与する毎に、液面に押圧が加わり所定量の液体がニードル4に供給される。ピストン12の詳細については後述する。
ロッド13は、下端側部分にピストン12は設けられており、上端がシリンジ10の上端から外側に延びている。ロッド13の内部には、上端から下端にわたって第1の空気流路50が形成されている。ロッド13の下端は第1の空間S1内に位置しており、第1の空気流路50が第1の空間S1と連通している。ロッド13の第1の空気流路50の上端は、シリンジ10の外側で第1の空圧供給部41と接続されている。
シリンジ10の上端のフランジ10aにはキャップ11が取付けられ、シリンジ10の上端の開口を気密に閉鎖している。図1、図3に示すように、キャップ11にはフランジ係合部11aが形成されており、シリンジ10の上端のフランジ10aにフランジ係合部11aを係合させることでキャップ11はフランジ10aに装着される。
図3に示すように、キャップ11の平面視における中央部に設けられた嵌め込み孔11bには、移動制限機構30が設けられている。移動制限機構30は、第1の空圧供給部41により第1の空間S1に空圧を供給して液体供給装置2が液体を液体供給部3からニードル4に供給するときに、ロッド13が第1の空間S1の空圧によって液体の液面から離れる方向へ移動するのを阻止するためのものである。移動制限機構30は、プッシュナット31と、プッシュナット31を保持する保持部材32を備えている。保持部材32は略円筒形状であってキャップ11の嵌め込み孔11bに嵌め込まれて固定される。保持部材32の中央部にはロッド13が貫通する貫通孔33が形成されている。保持部材32の上面には凹部36が設けられ、凹部36の底面に貫通孔33が開口する。凹部36の底面にはプッシュナット31が配置される。プッシュナット31にはロッド13が挿通されており、プッシュナット31はロッド13の下方向(液面に向かう方向)への移動を許容するが、上方向(液面から離れる方向)への移動を制限する。保持部材32の貫通孔33の下方の内面には一周にわたって溝34が形成されており、ロッド13を保持部材32の貫通孔に気密に保持するためのOリング35が収容されている。
なお、移動制限機構30の構成は本実施形態に限定されず、ロッド13の上方向への移動を制限できればどのような構成であってもよい。例えば、移動制限機構30は、ロッド13の外周面に上下方向に設けられた複数個の段差部と、保持部材32に設けられ、ロッド13の段差部に係止する係止爪とを備えていてもよい。段差部は、断面視において下方がロッド13の中心軸に近くなる中心軸に対して斜めの摺動面と、中心軸に対して直交する水平面である係止面とを有し、保持部材32に設けられた係止爪が摺動面上を摺動してロッド13の段差部に係止することで、ロッド13の上方向への移動を規制する。
キャップ11には、給気管61が挿通される給気孔11cが設けられている。給気管61の上側の端は第2の空圧供給部44に接続されており、下端はピストン12とキャップ11の間に形成される第2の空間S2に位置している。給気管61の内部には第2の空気流路60が設けられており、第2の空気流路60は第2の空間S2と連通している。
第1の空圧供給部41は、第1の空気流路50を介して第1の空間S1に液体供給装置2が液体を吐出するための所定の空圧を供給するものであり、レギュレータ42と電磁バルブ43とを備える。電磁バルブ43はレギュレータ42を介して空圧源47に接続されるとともにロッド13の上端に接続されている。電磁バルブ43は図示しない制御部によりオン、オフされてロッド13の内部に設けられた第1の空気流路50の開閉を行っており、電磁バルブ43をオンすることで第1の空気流路50が開かれ所定の空圧が第1の空間S1に供給される。レギュレータ42は空圧源47から供給される圧力を所望の圧力値に調整するものである。本実施形態では、電磁バルブ43はロッド13と一体となって移動する。しかし、電磁バルブ43は液体供給装置2内の所定位置に固定されていてもよい。この場合、電磁バルブ43は、可撓性を有しロッド13の移動距離よりも長い長さのチューブを介してロッド13の上端と接続され、ロッド13のみが移動自由に構成される。
第2の空圧供給部44は、第2の空気流路60を介してピストン12を液体の液面へ向かう方向に移動させるための空圧を供給するものであり、レギュレータ45と電磁バルブ46とを備える。電磁バルブ46はレギュレータ45を介して空圧源47に接続されるとともに給気管61の上端に接続されている。電磁バルブ46は、図示しない制御部によりオン、オフされて給気管61の内部に形成された第2の空気流路60の開閉を行っており、電磁バルブ46をオンすることで第2の空気流路60が開かれ第2の空間S2に所定の空圧が供給される。レギュレータ45は空圧源47からの圧力を所望の圧力値に調整するものである。
第1の空圧供給部41のレギュレータ42及び電磁バルブ43、第2の空圧供給部44のレギュレータ45及び電磁バルブ46、制御部は既知のものが用いられる。例えば制御部は、CPUやメモリを備えたコンピュータであってもよく、電磁バルブ43、46のオンオフを制御できればいずれの構成であってもよい。なお、第1の空圧供給部41及び第2の空圧供給部44が供給する空圧の圧力値が同じである場合には、第2の空圧供給部44のレギュレータ45は第1の空圧供給部41のレギュレータ42と兼用してもよい。
本実施形態では、シリンジ10はシリンジ固定手段5により液体供給装置2内の所定位置に固定されており、ロッド13は図示しないロッドガイド手段によりガイドされて下方向に移動自由である。
ピストン12の構成の詳細及びピストン戻り機構20について説明する。図2(A)、図2(B)に示すように、ピストン12は略円柱形状のピストン本体14とOリング16とを備えている。ピストン本体14の外周面には一周にわたり溝15が形成され、溝15にはシリンジ10の内面とピストン12との気密及び液密を確保するためのOリング16が収容されている。また、ピストン本体14の下面の平面視における中央部には、平面形状が円状の凹部17が設けられ、凹部17にはピストン戻り機構20の付勢部材を構成するスポンジ21が収容されている。スポンジ21はピストン12を上方向に付勢するものであり、凹部17に収容可能な大きさの円柱形状を呈し中央部にはロッド13が挿通される貫通孔21aが形成されている。ピストン本体14の中央部には、凹部17の底面からピストン12の上面に貫通する貫通孔18が形成されており、ロッド13の下端側部分が気密および液密であって、ピストン本体14がロッド13に対して移動自由に挿通される。
ロッド13の下端側部分には所定の間隔を空けて第1、第2の各固定部材22、23が固定されている。ピストン12は第1、第2の各固定部材22、23の間に位置しており、第1、第2の各固定部材22、23の間をロッド13に対して移動自由である。すなわち、ピストン12は、シリンジ10に対してロッド13とともに下方向に移動自由であるとともに、ロッド13に対して第1、第2の各固定部材22、23の間を上下方向に移動自由である。本実施形態では、第1、第2の各固定部材22、23の間の間隔は、ピストン本体14の厚みとほぼ等しく設定されているが第1、第2の各固定部材22、23の間の間隔がピストン本体14の厚みより長くてもよい。ピストン12は、上面が第1の固定部材22に当接することでロッド13に対して上方向への移動が規制され、第2の固定部材23にスポンジ21を介して押し当てられることでロッド13に対して下方向への移動が規制される。下方向への移動が規制されているときのピストン12の位置は、スポンジ21の収縮の度合いに応じた位置となる。
スポンジ21と、第1、第2の各固定部材22、23とはピストン戻り機構20を構成する。ピストン戻り機構20は、第2の空圧供給部44により第2の空間S2に空圧を供給しピストン12を下方向に移動させた後に第2の空間S2に印加する空圧を解除したときに、ピストン12を上方向に所定の距離L1を移動させるものである。本実施形態においては、第1、第2の各固定部材22、23の間の距離は約8mmに設定され、ピストン12の移動自由な距離L1は約1mmに設定されているが、これに限定されない。
本実施形態では、ピストン戻り機構20の付勢部材としてのスポンジ21はウレタンフォームよりなる連泡スポンジを用いているが、スポンジ21の素材はウレタンフォームに限らず天然ゴム系、合成ゴム系、PE(ポリエチレン)系、ビニール系の素材であってもよい。また、耐溶剤性の高いものとして、フッ素スポンジ、低付着性の良好なものとしてシリコーンスポンジも好ましくも用いられる。本実施形態では、スポンジ21の厚み(上下方向の長さ)は約3mmに設定されている。また、付勢部材はピストン12を液面から離れる方向に付勢するものであればスポンジ21に限定されず、例えば天然ゴム、アクリルゴム等の材質からなるゴム、弾性バネ、板バネ、皿バネ等が用いられてもよい。
図1に示すように、シリンジ10内のピストン12と液面との間には液体の液面に接するようにシート材70が配置されており、本実施形態においては、シート材70は浮力により液面に浮いている。シート材70は平面視において円形であり、シート材70の外径は、円筒形状のシリンジ10の内径よりも小さいが、液面の略50%以上を覆う程度に設定されている。本実施形態では厚み(上下方向の長さ)は約3mmに設定されているがこれに限定されない。シート材70は液面に浮くことが可能なように構成される、すなわち、シート材70の密度は液体の密度よりも小さくなるように構成されている。シート材70は1枚の柔軟性のあるシート状の部材であって、液体よりも比重の小さい素材から構成されてもよい。本実施形態では素材としてウレタンフォームよりなる連泡スポンジを用いている。しかし、ウレタンフォームに限らず天然ゴム系、合成ゴム系、PE(ポリエチレン)系、ビニール系の素材であってもよい。また、耐溶剤性の高いものとして、フッ素スポンジ、低付着性の良好なものとしてシリコーンスポンジも好ましくも用いられる。また、シート材70の素材によらず、シート材70の内部に空気層を設けてシート材70が液面に浮くことができるように構成してもよい。
シート材70は、ピストン12の下面に開口している第1の空気流路50に液体が多量に浸入するのを防ぐ液体侵入防止部材として機能するとともに、ロッド13の第1の空気流路50の下端から供給される空圧により液面が陥没するのを防ぐ液面陥没防止部材として機能する。なお、本実施形態において、シート材70は設けられていなくてもよい。
液体供給装置2の動作について説明する。液体供給の開始前においては、シリンジ10には液体が収容され、ピストン12は、ピストン本体14の下面やロッド13の下端がシート材70に当接する位置か、シート材70に近接した位置にある。このとき、ロッド13の内部に設けられた第1の空気流路50にはシート材70により液体の進入が防がれるか、僅かな液体の浸入は許容される。なお、シート材70が設けられていない場合には、ピストン本体14の下面やロッド13の下端は液面に当接する位置にあるか、液面に近接する位置にある。
液体供給時においては、第1の空圧供給部41がロッド13の第1の空気流路50を通じて所定値の空圧を所定時間第1の空間S1に供給する。このとき、図2(B)に示すように、ピストン本体14の上面が第1の固定部材22に当接してピストン12の上方向への移動が規制され、ロッド13は移動制限機構30により上方向には移動しないので、第1の空圧供給部41による空圧は液面への押圧となり、液体が液体供給部3からニードル4に供給される。
上記の液体のニードル4への供給を所定の回数繰り返すと、第1の空間S1の容積が大きくなる。第1の空圧供給部41からは所定の空圧が供給されるため、第1の空間S1の容積が大きくなると液面への押圧が小さくなり、液体供給量が少なくなることがある。第1の空間S1の容積が所定の設定値よりも大きくなると、第1の空間S1を小さくするために、第2の空圧供給部44から第2の空間S2に空圧を供給してピストン12をシリンジ10に対して下方向に移動させる。
第2の空圧供給部44は、キャップ11に設けられた給気管61の第2の空気流路60を通じて所定値の空圧を所定時間第2の空間S2に供給する。このとき、図2(A)に示すように、ピストン12はロッド13に対して下方向に移動し、ピストン戻り機構20のスポンジ21が第2の固定部材23に当接し、ピストン12は第2の固定部材23により下方向への移動が規制される。このとき、スポンジ21はピストン本体14により第2の固定部材23に押し付けられて圧縮され、上方向への付勢力を蓄積する。そして、ロッド13は下方向には移動自由であるため、ロッド13及びピストン12は一体となってさらに下方向に移動する。
ピストン12のピストン本体14の下面やロッド13の下端がシート材70に当接するような所定の位置まで下降し、第2の空圧供給部44が空圧の供給を解除すると、スポンジ21に蓄積された付勢力が開放されて、図2(B)に示すように、ピストン本体14の上面が第1の固定部材22と当接するまでの距離L1だけピストン12を上方向に移動させる。なお、ピストン12は必ずしもピストン本体14の上面が第1の固定部材22と当接するまで上方向に移動する必要はない。
第2の空圧供給部44により第2の空間S2に空圧を供給し、ピストン12を液面に向かう方向に所定の位置まで移動させた後に第2の空間S2に印加する空圧を解除するが、ピストン12が所定の位置に固定されていると第2の空圧供給部44による空圧解除後もピストン12が第1の空間を介して液面を僅かに押圧した状態となり、液体がシリンジから少しずつ漏れる。一方、本実施形態においては、ピストン12が液面に向かう方向に所定の位置まで移動した後に、ピストン12はピストン戻り機構により僅かに液面から離れる方向に移動する。このため、第1の空間S1の容積が僅かに大きくなり液面への押圧が小さくなるため、液体がシリンジ10から少しずつ漏れることを防ぐことができる。
また、本実施形態ではロッド13の内部に第1の空気流路50を形成しているため、別途第1の空気流路50を設ける場合に比べて、液体供給装置2の構造が簡単である。さらに、液面にシート材70を配置しているため、ロッド13の下端の第1の空気流路50の開口に液面が触れにくくなり、液体が第1の空気流路50に浸入するのを防ぐことができる。さらに、ロッド13の下端から液面に向けて空圧が供給されたときに、液面に窪みが生じることで液体の供給量が変化することがあるが、シート材70を設けることで液面に窪みができるのを防ぐことができる。
図4、図5は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態においては、図1の実施形態とはピストン12の構成及びピストン戻り機構20の構成が異なっている。図4に示すように、ピストン12はピストン本体14が円柱形状であり、外周面にOリング16を収容するための溝15が設けられている。ピストン本体14はロッド13の下端側部分に固定され、ロッド13の下端はピストン本体14の下面から僅かに突出して第1の空間S1内に位置しており、第1の空気流路50が第1の空間S1と連通している。
図5に示すように、キャップ11の嵌め込み孔11bの下部には、付勢部材を構成する弾性バネ24が図示しない支持手段により支持され、嵌め込み孔11bの上部であって弾性バネ24の上側には移動制限機構30の保持部材32が嵌め込み孔11bに対して摺動自由に配置されている。保持部材32の下面は弾性バネ24の上端面に固定されており、弾性バネ24が保持部材32を上方向に付勢するとともに保持部材32が嵌め込み孔11bから抜け出るのを防止している。保持部材32の上面には保持部材32を貫通するロッド13を所定の把持力で把持するチャック機構25が設けられている。チャック機構25と付勢部材を構成する弾性バネ24は、ピストン戻り機構20を構成している。
第2の空圧供給部44が第2の空間S2に空圧を印加したときに、ピストン12が下方向にロッド13とともに移動するが、このとき、ロッド13を把持したチャック機構25は下向きの力を受け、チャック機構25の下位置にある保持部材32はチャック機構25により下向きに押され、チャック機構25、保持部材32はロッド13とともに下方向に移動する。弾性バネ24が限界まで圧縮されてチャック機構25及び保持部材32の下方向への移動が制限されると、チャック機構25の把持力よりもロッド13が下方向に引っ張られる力が大きくなり、ロッド13はチャック機構25により把持されているにもかかわらず下方向に移動する。第2の空圧供給部44による第2の空間S2への空圧の供給が解除されると、弾性バネ24が保持部材32及びチャック機構25を上方向に付勢し、チャック機構25に把持されたロッド13はチャック機構25及び保持部材32とともに上方向に移動する。
チャック機構25によりロッド13が把持される上下方向の把持力は、弾性バネ24の付勢力よりも大きいが、第2の空圧供給部44の空圧によりピストン12及びロッド13が下方向に移動する際にロッド13に加わる下方向の力よりも小さい大きさに設定されている。弾性バネ24及びチャック機構25はピストン戻り機構20を構成する。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
図4の実施形態の液体供給装置2の動作について説明する。液体供給時においては、第1の空圧供給部41がロッド13の第1の空気流路50を通じて所定値の空圧を所定時間第1の空間S1に供給する。このとき、図5(B)に示すように、弾性バネ24により保持部材32及びチャック機構25は上方向に付勢された状態であり、プッシュナット31及びチャック機構25の把持力によりロッド13は上方向には移動せず、第1の空圧供給部41による空圧は液面への押圧となり、液体が液体供給部3からニードル4に供給される。
次に、第2の空圧供給部44が給気管61の第2の空気流路60を通じて所定の空圧を所定時間第2の空間S2に供給して、ピストン12をシリンジ10に対して下方向に移動させる。このとき、ピストン12は空圧により下方向に押圧され、図5(A)に示すように、ピストン12、ロッド13、ロッド13を把持しているチャック機構25、保持部材32はともに下方向に移動する。弾性バネ24は保持部材32により押されて圧縮され、上方向への付勢力が蓄積される。さらに第2の空間S2に空圧が供給され続けると、ロッド13はチャック機構25の把持力以上の力で下方向への力を受け、チャック機構25に対してロッド13はさらに下方に移動する。
ピストン12が所定の位置まで下降し、第2の空圧供給部44が空圧の供給を解除すると、図5(B)に示すように、弾性バネ24に蓄積された付勢力が開放されて保持部材32を上方向に移動させ、チャック機構25に把持されたロッド13及びロッド13に固定されたピストン12も上方向に移動する。
このように、本実施形態によっても、第2の空圧供給部44により第2の空間S2に空圧を供給しピストン12を液面方向に移動させた後に第2の空間S2に印加する空圧を解除したときに、ピストン12が僅かに液面から離れる方向に移動するため、第1の空間S1の容積が僅かに大きくなり液面への押圧が小さくなるため、液体がシリンジ10から漏れることを防ぐことができる。また、キャップ11にピストン戻り機構20を設けているため、ピストン戻り機構20のメンテナンスがしやすい。
図6は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態においては、ロッド13は円柱形状の棒状部材であり、内部に第1の空気流路は設けられていない。液体供給装置2は、空気供給管51を備えており、空気供給管51は、上端がシリンジ10の外側に位置して、第1の空圧供給部41の電磁バルブ43に接続され、下端が第1の空間S1に位置している。空気供給管51の内部に第1の空気流路50が形成されており、第1の空気流路50は下端で第1の空間S1と連通して、第1の空圧供給部41からの空圧を第1の空間S1に供給する。
空気供給管51は第1給気管52、第2給気管53、第3給気管54を備える。第1給気管52はキャップ11に形成された第1貫通孔11dに挿通されており、上側の端部がシリンジ10の外側に位置して第1の空圧供給部41の電磁バルブ43に接続され、下端が第2の空間S2内の上部に位置して接続部材により第2給気管53に接続されている。第2給気管53は第2の空間S2内に配置されており、上端が第1給気管52の下端に、下端が第3給気管54の上端に接続されている。第2給気管53は例えば可撓性のあるチューブからなり、チューブの長さはピストン12及びロッド13のシリンジ10に対する移動距離よりも長く設定されている。第2給気管53はピストン12及びロッド13の移動に伴って変形可能である。第3給気管54はピストン本体14に設けられた第2貫通孔19に挿通されて保持されており、上端が第2の空間S2に位置して接続部材により第2給気管53の下端に接続され、下端が第1の空間S1に位置している。第1給気管52、第2給気管53、第3給気管54は内部に互いに連通する第1~第3の各給気路52a、53a、54aが形成されており、第1~第3の各給気路52a、53a、54aが第1の空気流路50を構成する。空気供給管51の第1給気管52に接続された電磁バルブ43の位置が、ロッド13の下端及びピストン12がキャップ11に近い上方位置にある場合のロッド13の上端の位置より下となるように、第1給気管52の長さが調整される。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
本実施形態によれば、図1の実施形態のようにロッド13の内部に第1の空気流路50を設けておらず、ロッド13とは別に第1の空気流路50を含む空気供給管51を設けている。このため、ロッド13の上端には第1の空圧供給部41の電磁バルブ43を設ける必要がない。ロッド13はキャップ11から上方向に延びており、ロッド13の下端及びピストン12がキャップ11に近い上方位置にある場合に、ロッド13がキャップ11から延びる長さは長くなる。液体供給装置2はロッド13がキャップ11から延びた状態においても、筐体(図示せず)内にロッド13が収容される大きさに設定される。ロッド13の上端に第1の空圧供給部41の電磁バルブ43が連結されている場合には、ロッド13と電磁バルブ43とがキャップ11から上方向に突出することになり、液体供給装置2の筐体が大きくなる。しかし、本実施形態においてはロッド13の上端に電磁バルブ43を設けなくてよいため、図1の実施形態と比べてキャップ11から上方向への突出長さは電磁バルブ43の長さだけ短くなり、液体供給装置2をより小型化することができる。
図7は本発明の他の実施形態を示す。図7の実施形態は、空気供給管51及び第1の空気流路の構成が図6の実施形態とは異なっている。図7の実施形態においては、ロッド13の下端部の内部に第3の給気路58が設けられている。また、第1給気管56、第2給気管57からなる空気供給管55を備えており、第1給気管56、第2給気管57の内部には第1の給気路56a、第2の給気路57aが形成されている。第3の給気路58の上側の端部はロッド13の外周面であって第2の空間S2内に開口しており、第2給気路57の下端と接続されている。第3の給気路58の下端はロッド13の底面に開口しており、第1の空間S1と連通している。第1~第3の各給気路56a、67a、58は互いに連通して第1の空気流路50を構成する。その他の構成については、図6の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
本実施形態によれば、第1の空気流路50の下流側の部分はロッド13の下端部の内部に形成されているため、図6の実施形態のようにピストン本体14に新たな給気管を取り付ける必要がない。このため、小型のシリンジ10であってピストン本体14の大きさが小さく、新たな給気管を取り付けるスペースが十分にない場合であっても、ロッド13の上端には第1の空圧供給部41の電磁バルブ43を設けずに第1の空間S1に空圧を供給する構成を実現できる。図1の実施形態と比べてキャップ11から上方向への突出長さは電磁バルブ43の長さだけ短くなり、液体供給装置2をより小型化することができる。
図8は本発明の他の実施形態を示す。図8の実施形態はシート材70がシート材支持部材71によりピストン12に係止されている点において図1の実施形態と異なっている。シート材支持部材71は、ピストン12の下面から下方向に突出するように設けられた複数の棒状部材71Aからなる。本実施形態では、棒状部材71Aは平面視において同一の円周上に所定の中心角(例えば90度)の間隔を空けて複数(例えば4つ)設けられている。各棒状部材71Aの先端には棒状部材71Aの本体部71bよりも径の大きい抜け止め部材71aが設けられている。シート材70には、棒状部材71Aに対応する箇所に孔70aが設けられている。孔70aの径は、棒状部材71Aの抜け止め部材71aよりも径が小さく、本体部71bの径よりもわずかに大きく設定されている。シート材70に引っ張り力を加えて孔70aを大きくして抜け止め部材71a及び棒状部材71Aを孔70aに通し、シート材70を抜け止め部材71aに係止する。シート材70は棒状部材71Aに対して上下方向に移動可能である。本実施形態では棒状部材71Aの長さは約3mmに設定されているが、これに限定されない。第1の空間S1の上下方向の長さ、すなわち、液面とピストン本体14との下面との間の距離が棒状部材71Aの長さよりも常に小さくなるようにピストン12を移動させることで、シート材70は液面に浮いた状態が保たれる。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
本実施形態によれば、シート材70はピストン12に係止されているため、シリンジ10からピストン12を取り外す際にシート材70も一緒に取り出すことができ、シート材70を取り出す作業が容易となる。
図9は本発明の他の実施形態を示す。図9に示す本実施形態の液体吐出装置1は、ニードル4に換えて、液体供給装置2の液体供給部3に液体流通管6を介してディスペンサ80が接続されている点において図1の実施形態とは異なっている。本実施形態のディスペンサ80は、液体を加圧することにより液体を吐出するものであって、ヘッド本体部81と、ヘッド本体部81に往復移動可能に設けられた加圧部材82と、加圧部材82を駆動させるアクチュエータ83と、ヘッド本体部81の下面に設けられるノズルプレート84とを備えている。
ノズルプレート84は、ヘッド本体部81から突出する加圧部材82の一端部が入り込む部85と、液体を導入する導入流路86と、凹部85の底に形成された吐出流路87とを備えている。ノズルプレート84の側面にはジョイント部88が形成され、ジョイント部88の入口は導入流路86と連通している。液体供給装置2の液体供給部3はジョイント部88の入口に液体流通管6を介して接続されている。液体供給装置2から供給される液体は、ノズルプレート84の導入流路86を通って凹部85に導かれ、加圧部材82による押圧により吐出流路(ノズル)87の先端から吐出される。
このように、液体供給装置2にディスペンサ80を接続しても、吐出量の変動を生じさせずに液体を吐出させることができる。なお、ディスペンサ80の構成は本実施形態の構成に限定されず、任意のディスペンサ80が用いられてもよい。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
図10に本発明の他の実施形態を示す。図1の実施形態においては、シリンジ10はシリンジ固定手段5に固定され、シリンジ10に対してピストン12及びロッド13が上下方向に移動していたが、本実施形態においては、ロッド13はロッド固定手段7により固定されており、シリンジ10は図示しないシリンジガイド手段にガイドされてロッド13に対して上下方向に移動可能である。また、液体供給装置2の液体供給部3には、可撓性のある液体流通管8を介してニードル4が接続されている。ニードル4は、ニードル4の下端面に開口する吐出口4aの位置P1が、液体吐出前のシリンジ10に液体が充填された状態での液面の位置と同じになるように、図示しないニードル固定手段により固定されている。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
液体供給装置2の動作について説明する。液体供給前においては、図10(A)に示すように、シリンダには液体が収容され、ピストン12の下面はシート材70及び液面に近い位置にある。液体供給時において、第1の空圧供給部41がロッド13の第1の空気流路50を通じて所定の空圧を所定時間第1の空間S1に供給する。第1の空圧供給部41による空圧は液面への押圧となり、液体が液体供給部3からニードル4に供給される。このとき、ロッド13はロッド固定手段7により移動しない。
上記の液体のニードル4への供給を所定の回数繰り返すと、液面がニードル4の吐出口4aよりも下に位置して第1の空間S1の容積が大きくなる。第1の空間S1の容積を小さくするために、第2の空圧供給部44が所定の空圧を所定時間第2の空間S2に供給する。ロッド13は固定されているので、図10(B)に示すようにシリンジ10が上方向に移動する、すなわち、相対的にロッド13及びピストン12はシリンジ10に対して下方向に移動する。第2の空圧供給部44が空圧の供給を解除すると、スポンジ21に蓄積された付勢力が開放されてピストン12を上方向に移動させ、液面に加わる押圧を小さくする。
本実施形態によれば、液体の吐出が進んでシリンジ10に収容された液体の量が減っても、シリンジ10がロッド13及びピストン12に対して上方向に移動するため、シリンジ10に収容された液体の液面の高さ位置がニードル4の吐出口4aの高さ位置P1と大きくずれることがない。このため、液体の残量によって液体の供給量が変動するのを防ぐことができる。さらに、液面の高さ位置と吐出口4aの高さ位置が大きくずれることがないため、長時間吐出動作をさせない状態でも、ニードル4から液が流出したりニードル4から空気を吸い込んだりすることがない。
図11に本発明の他の実施形態を示す。図1の実施形態においては、シリンジ10はシリンジ固定手段5に固定され、シリンジ10に対してピストン12及びロッド13が上下方向に移動していたが、本実施形態においては、ロッド13はロッド固定手段7により固定されており、シリンジ10は図示しないシリンジガイド手段にガイドされてロッド13に対して上下方向に移動可能である。また、液体供給装置2の液体供給部3には、液体流通管6を介してディスペンサ80が接続されている。液体流通管6は可撓性を有するチューブであって、その長さはシリンジ10の移動距離よりも長く設定されている。ディスペンサ80の構成は例えば図9に示す構成と同じであるがこれに限定されない。シリンジ10は、ディスペンサ80の吐出流路87よりも常に高い位置となるように配置されている。その他の構成については、図1の実施形態と同様であるため、対応する部分に同一の符号を付すことで説明を省略する。
液体供給装置2の動作について説明する。液体供給前においては、図11(A)に示すように、シリンダには位置P2まで液体が収容され、ピストン12はシート材70及び液面に近い位置にある。液体供給時において、第1の空圧供給部41がロッド13の第1の空気流路50を通じて所定の空圧を所定時間第1の空間S1に供給する。第1の空圧供給部41による空圧は液面への押圧となり、液体が液体供給部3からディスペンサ80に供給される。このとき、ロッド13はロッド固定手段7により移動しない。
上記の液体のニードル4への供給を所定の回数繰り返すと、液面が下がり第1の空間S1の容積が大きくなる。第1の空間S1の容積を小さくするために、第2の空圧供給部44が所定の空圧を所定時間第2の空間S2に供給する。ロッド13は固定されているので、図11(B)に示すようにシリンジ10が上方向に移動する、すなわち、相対的にロッド13及びピストン12はシリンジ10に対して下方向に移動する。第2の空圧供給部44が空圧の供給を解除すると、スポンジ21に蓄積された付勢力が開放されてピストン12を上方向に移動させ、液面に加わる押圧を小さくする。
本実施形態によれば、液体の吐出が進んでシリンジ10に収容された液体の量が減っても、シリンジ10がロッド13及びピストン12に対して上方向に移動するため、ディスペンサ80からの液体の液面の高さ位置P2が大きくずれることがない。このため、液体の残量によって液体の供給量が変動するのを防ぐことができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。