JP2023050939A - プラスチック容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】滑落性に優れ、且つ滑落性の持続性が高いプラスチック容器を提供する。【解決手段】本発明によれば、内容物を収容するためのプラスチック容器であって、前記内容物と接する最内層を備え、前記最内層は、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成され、前記最内層の前記内容物と接する側の表面の少なくとも一部は、前記潤滑液により形成された液膜により被覆されていることを特徴とする、プラスチック容器が提供される。【選択図】図1
Description
本発明は、プラスチック容器に関する。
調味料等の内容物を収容するために、容器の内面をポリオレフィン系樹脂で構成した容器が一般に使用されている。このような容器に対しては、内容物をロスなく使い切るために、内容物が容器の内面上を速やかに落下する滑落性が要求される。特許文献1には、プラスチック容器の最内層を構成するポリオレフィン系樹脂に不飽和脂肪族アミド及び飽和脂肪族アミドを滑剤として添加することにより、滑落性を向上させたプラスチック容器が開示されている。
内容物の充填直後に滑落性が良好であっても、その後の保存期間の経過とともに滑落性が低下する場合がある。従って、滑落性の持続性が高く、長期保存した場合でも滑落性の低下が少ないプラスチック容器が望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、調味料等の内容物を収容するためのプラスチック容器であって、滑落性に優れ、且つ滑落性の持続性が高いプラスチック容器を提供するものである。
本発明によれば、内容物を収容するためのプラスチック容器であって、前記内容物と接する最内層を備え、前記最内層は、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成され、前記最内層の前記内容物と接する側の表面の少なくとも一部は、前記潤滑液により形成された液膜により被覆されていることを特徴とする、プラスチック容器が提供される。
内容物と接する最内層を、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成し、最内層の内容物と接する側の表面の少なくとも一部を潤滑液により形成された液膜により被覆することにより、内容物を収容した場合に優れた滑落性を示し、且つ20日超の長期保存後においても滑落性の低下が少ないことを見出し、本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記潤滑液は、流動パラフィンである。
好ましくは、前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである。
好ましくは、前記混合樹脂における前記エラストマーの含有量は、1~30質量%である。
好ましくは、前記最内層における前記潤滑液の保持量は、1~20g/m2である。
好ましくは、前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーである。
好ましくは、EVOH樹脂からなる中間層と、最外層とを備える。
好ましくは、前記潤滑液は、流動パラフィンである。
好ましくは、前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである。
好ましくは、前記混合樹脂における前記エラストマーの含有量は、1~30質量%である。
好ましくは、前記最内層における前記潤滑液の保持量は、1~20g/m2である。
好ましくは、前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーである。
好ましくは、EVOH樹脂からなる中間層と、最外層とを備える。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
1.プラスチック容器の構成
図1は、本発明の実施形態に係るプラスチック容器1の構成の一例を示す図である。プラスチック容器1に収容される内容物は特に限定されず、種々の調味料を収容可能である。調味料として、ソース等の水性物質や、マヨネーズ等の油性物質が挙げられる。本実施形態のプラスチック容器1は、水性の内容物を収容した場合に特に好適である。なお、本発明における水性の内容物とは、内容物中の水分が30質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であるものを指し、例えば、ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース等のソースが挙げられる。プラスチック容器1は、上述の水性の内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高く、とりわけ水分が50質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であり、粘度が150mPa・s以上の比較的粘性の高い内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高い。
図1は、本発明の実施形態に係るプラスチック容器1の構成の一例を示す図である。プラスチック容器1に収容される内容物は特に限定されず、種々の調味料を収容可能である。調味料として、ソース等の水性物質や、マヨネーズ等の油性物質が挙げられる。本実施形態のプラスチック容器1は、水性の内容物を収容した場合に特に好適である。なお、本発明における水性の内容物とは、内容物中の水分が30質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であるものを指し、例えば、ウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース等のソースが挙げられる。プラスチック容器1は、上述の水性の内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高く、とりわけ水分が50質量%以上、且つ脂質が20質量%未満であり、粘度が150mPa・s以上の比較的粘性の高い内容物に対して特に優れた滑落性を示し、滑落性の持続性が高い。
本発明の実施形態に係るプラスチック容器1は、容器本体2及びキャップ3を備える。容器本体2は、内容物を収容する収容部21、及び収容部21から内容物を吐出するための開口部を有する口部22を備える。
キャップ3は、キャップ本体32及びキャップカバー31を備える。キャップ本体32とキャップカバー31は連結部33において連結されていて、キャップカバー31が開閉可能になっている。キャップ本体32は、上部32aと、上部32aに設けられた吐出口32bと、及び上部32aの外周から筒状に延びる筒部32cを備える。
筒部32cの内面には、口部22の外面と螺合可能な係合部(不図示)が形成され、キャップ3を口部22に対して上方から螺合させることによって、口部22の外面と係合部が係合し、キャップ3が容器本体2に装着される。なお、キャップ3の容器本体2への装着方法は、上述のネジ式に限定されるものではなく、打栓式であってもよい。
図2は、容器本体2の層構成の一例を示す図である。容器本体2は、複数の層を含む多層構成を有し、内側から順に、最内層4、接着樹脂層5、中間層6、接着樹脂層7、及び最外層8を備える。各層の厚さの比率は、例えば、以下の通りである。
最内層4:10~40%
接着樹脂層5:1~15%
中間層6:5~10%
接着樹脂層7:1~15%
最外層8:20~60%
以下、各層について説明する。
最内層4:10~40%
接着樹脂層5:1~15%
中間層6:5~10%
接着樹脂層7:1~15%
最外層8:20~60%
以下、各層について説明する。
(最内層4)
最内層4は、内容物と接する層であり、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成される。ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等が例示される。また、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよく、さらには、いわゆる環状オレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo-Olefin Polymer))や環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo-Olefin Copolymer))等であってもよい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
最内層4は、内容物と接する層であり、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成される。ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン等が例示される。また、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン同士のランダムあるいはブロック共重合体等であってもよく、さらには、いわゆる環状オレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo-Olefin Polymer))や環状オレフィンとα-オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo-Olefin Copolymer))等であってもよい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
例示されたポリオレフィン系樹脂の中では、ポリエチレンを使用することが好ましく、ポリエチレンを混合樹脂の主成分とすること、つまり、混合樹脂全体の50質量%以上とすることが好ましい。また、ポリエチレンとしては、成形性等の観点から、低密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
混合樹脂中のエラストマーは、潤滑液を吸収して保持する役割を果たす。エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、及びウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム等の熱硬化性エラストマーを用いることができる。また、エラストマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
例示されたエラストマーの中では、熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーは、弾性を示すソフトセグメントと架橋点としての役割を果たすハードセグメントから構成される。オレフィン系エラストマーは、ハードセグメントがポリオレフィンで、ソフトセグメントがエチレン-プロピレンゴム等のゴム成分であり、エチレン-α-オレフィン共重合体等のエチレン系エラストマー、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のプロピレン系エラストマー等が例示される。スチレン系エラストマーは、ハードセグメントがポリスチレンであり、ソフトセグメントがオレフィン、ジエン等のブロック共重合体であり、ソフトセグメントが異なるスチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)等が例示される。
例示された熱可塑性エラストマーの中では、オレフィン系エラストマーを用いることがさらに好ましい。オレフィン系エラストマーを用いた場合、ポリオレフィン系樹脂との混合樹脂中での分散性が高く、透明度が高く良好な表面性状を有する樹脂組成物を得ることができる。オレフィン系エラストマーには、エチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレン系エラストマー、プロピレン・α-オレフィン共重合体等のプロピレン系エラストマーが含まれる。ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを用いる場合、オレフィン系エラストマーとしてエチレン系エラストマーを用いることが好ましい。
混合樹脂中のエラストマーの含有量は、1~30質量%が好ましく、5~25質量%がさらに好ましく、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。エラストマーの含有量が上述の範囲であれば、潤滑液を十分な量保持することができる。一方、エラストマーの含有量が上述の範囲よりも大きいと、成形性が低下し、押出成形又はブロー成形により多層構造の容器を製造する場合に最内層4を均一に形成することが困難となる。
潤滑液は、最内層4の表面のうち内容物と接する側の表面(内側表面)4a上に液膜9を形成する。最内層4の内側表面4aの少なくとも一部が液膜9により被覆されることで、内容物が内側表面4aへ付着しにくくなり、優れた滑落性が発揮される。また、潤滑液はその一部がエラストマーに吸収され混合樹脂に保持される。最内層4の内側表面4a上に液膜9として存在する潤滑液量が減少すると、エラストマーに吸収された潤滑液が樹脂組成物内から内側表面4a上に滲み出して液膜9が維持され、これにより滑落性を長期に渡って持続させることができる。
潤滑液は、常温で液体でありエラストマーが吸収可能な物質から選択であり、例えば、炭化水素化合物、シリコーンオイル等の疎水性潤滑液を用いることができる。また、1種の潤滑液を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。例示された潤滑液の中では、炭化水素化合物を用いることが好ましく、流動パラフィンを用いることがさらに好ましい。流動パラフィンは、石油の潤滑油留分から不純物を除去して高度に生成して得られた炭化水素油である。流動パラフィンは、エラストマーに吸収されやすく、無味、無臭、無色透明であることから内容物への影響も少ない。
潤滑液により形成される液膜9は、最内層4の内側表面4aの60%以上を被覆することが好ましく、80%以上を被覆することがさらに好ましい。液膜9による最内層4の内側表面4aの被覆率が上述の範囲であれば、十分な滑落性を発揮することができる。
潤滑液の粘度は、70mPa・s以上が好ましく、150~300mPa・sがさらに好ましい。潤滑液の粘度が上述の範囲であれば、最内層4の内側表面4a上に液膜9を形成しやすく、また形成された液膜9が比較的長期に維持される。粘度は、25℃でJIS Z8803に準拠して測定されるものである。
最内層4における潤滑液の保持量は、内側表面4aの単位面積あたり1~25g/m2が好ましく、5~20g/m2がさらに好ましく、具体的には例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25g/m2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。潤滑液の保持量が上述の範囲であれば、良好な滑落性を発揮することができる一方、内容物への影響も十分に小さい。
最内層4の厚みは、例えば、50~70μmである。また、潤滑液により最内層4の内側表面4a上に形成される液膜9の厚みは、0.5~2.5μmが好ましく、1.1~2.5μmがさらに好ましく、具体的には例えば、0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8,1.9,2.0,2.1,2.2,2.3,2.4,2.5μmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。液膜9の厚みが上述の範囲であれば、良好な滑落性を発揮することができる。
潤滑液は、例えば、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂で構成される最内層4を有するプラスチック容器1を製造し、最内層4の内側表面4aに対してスプレーガン等を用いて潤滑液を塗布することで、混合樹脂に保持させることができる。或いは、潤滑液とポリオレフィン系樹脂又はエラストマーと混合したマスターバッチを用いて最内層4の樹脂組成物を調整してもよい。
(最外層8)
最外層8は、容器本体2の最も外側に配置される層であり、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成される。好ましいポリオレフィン系樹脂は、最内層4と同様であり、最内層4及び最外層8を構成するポリオレフィン系樹脂が同一であることがより好ましい。
最外層8は、容器本体2の最も外側に配置される層であり、ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物で構成される。好ましいポリオレフィン系樹脂は、最内層4と同様であり、最内層4及び最外層8を構成するポリオレフィン系樹脂が同一であることがより好ましい。
当該ポリオレフィン系樹脂には、滑剤として脂肪酸アミドを添加することが好ましい。脂肪酸アミドの添加により、プラスチック容器1の成形から、内容物の充填、移送、包装の各工程において、様々な環境温度に応じた滑り性を発揮できるようになり、各工程においてプラスチック容器1表面の滑り不良等による問題をなくすことができる。最外層8には、例えば、主としてステンレス等の金属材料で構成されている食品充填ライン等での滑り性を付与するために、滑剤(特に、後記する脂肪酸アミド系滑剤)をポリオレフィン系樹脂中に添加、混合して練りこんだ樹脂組成物を使用することが好ましい。
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドや不飽和脂肪酸アミドを使用することができる。飽和脂肪酸アミドとしては、ブチルアミド、ヘキシルアミド、デシルアミド、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等が挙げられる。これらの飽和脂肪酸アミドの中では、ステアリン酸アミドを使用することが好ましい。これらの飽和脂肪酸アミドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
不飽和脂肪酸アミドとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミド、イソクロトンアミド、ウンデシレン酸アミド、セトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、オレイルパルミトアミド、ステアリルエルカミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド等が挙げられる。この中で、炭素数が14~24の範囲にあるもの、例えばセトレイン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド等を使用することが好ましく、中でもオレイン酸アミドを使用することが特に好ましい。これらの不飽和脂肪酸アミドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
最外層8における脂肪酸アミドの含有量は、最外層8を構成する樹脂組成物全体に対して0.01~10質量%とすることが好ましい。脂肪酸アミドの添加量を上述の範囲とすることにより、良好な滑り性を発揮することができる。脂肪酸アミドは、最外層8を構成する樹脂組成物全体に対して0.1~5質量%とすることが特に好ましい。
(中間層6)
中間層6は、最内層4と最外層8との間に配置される層であり、比較的高密度の樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す)、及びポリオレフィン系樹脂にフィラーを添加した樹脂組成物等が挙げられる。中間層6を設けることによって、最内層4に保持されている潤滑液が外側の層へ浸透することを抑制することができる。
中間層6は、最内層4と最外層8との間に配置される層であり、比較的高密度の樹脂で構成される。このような樹脂としては、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH:エチレン酢酸ビニル共重合体ケン化物等を指す)、及びポリオレフィン系樹脂にフィラーを添加した樹脂組成物等が挙げられる。中間層6を設けることによって、最内層4に保持されている潤滑液が外側の層へ浸透することを抑制することができる。
例示された樹脂の中では、EVOH樹脂を用いることが好ましい。EVOH樹脂は、潤滑液の浸透の抑制効果が高く、また、ガスバリア性も高いため酸素透過による内容物の酸化劣化を効果的に抑制することもできる。
(接着樹脂層5,7)
接着樹脂層5,7は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層5,7を設けることによって中間層6と、最内層4又は最外層8との接着性が向上する。接着樹脂層5,7を設ける代わりに、中間層6に接着性樹脂を配合してもよい。
接着樹脂層5,7は、接着性樹脂で構成される。接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。接着樹脂層5,7を設けることによって中間層6と、最内層4又は最外層8との接着性が向上する。接着樹脂層5,7を設ける代わりに、中間層6に接着性樹脂を配合してもよい。
なお、プラスチック容器1の層構成は、上述の例に限定されるものではない。例えば、中間層6と最外層8との間、又は最内層4と中間層6との間に、熱可塑性樹脂含む樹脂組成物で構成される層をさらに設けてもよい。当該層は、プラスチック容器1の成形時に発生するスクラップを再生して得られるリプロ材料を含む樹脂組成物で構成することができる。スクラップにはプラスチック容器1の全層が含まれているため、リプロ材料は各層を構成する樹脂組成物を混合したものとなる。或いは、リプロ材料と新規の熱可塑性樹脂の混合物で構成してもよい。
また、前記した各層には、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、増核剤、離型剤、着色剤及び中和剤等、樹脂材料の分野で一般に使用される各種添加剤を添加してもよい。
2.プラスチック容器1の製造方法
プラスチック容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによってプラスチック容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
プラスチック容器1は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによってプラスチック容器1を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、プラスチック容器1の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。
1.サンプルの製造
図1に示す形状を有し、図2に示すように内側から順に最内層4、接着樹脂層5、中間層6、接着樹脂層7、及び最外層8を備える層構成を有するプラスチック容器1(容量500ml)を製造した。プラスチック容器1は、容器本体2をブロー成形によって、キャップ3を射出成形によって形成することによって製造した。
図1に示す形状を有し、図2に示すように内側から順に最内層4、接着樹脂層5、中間層6、接着樹脂層7、及び最外層8を備える層構成を有するプラスチック容器1(容量500ml)を製造した。プラスチック容器1は、容器本体2をブロー成形によって、キャップ3を射出成形によって形成することによって製造した。
全ての実施例及び比較例において、最内層4を構成するポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、サンテック(登録商標)M2206)を用いた。実施例1~6においては、エラストマーとしてオレフィン系エラストマー(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)DF605)を用い、エラストマーの含有量が表1に示す値となるように調整した低密度ポリエチレン及びオレフィン系エラストマーの混合樹脂を用いて、最内層4を構成した。実施例7においては、エラストマーとしてオレフィン系エラストマー(三井化学株式会社製、タフマー(登録商標)DF605)を用い、エラストマーの含有量が40質量%となるように調整した低密度ポリエチレン及びオレフィン系エラストマーの混合樹脂を用いて、最内層4を構成した。比較例1~3においては、エラストマーを混合せず、低密度ポリエチレンのみからなる樹脂を用いて最内層4を構成した。
全ての実施例及び比較例において、潤滑液として流動パラフィン(小堺製薬株式会社製、流動パラフィン(食品添加物))を用いた。流動パラフィンの粘度は、194mPa・s(25℃)であった。最内層4の内側表面4aの単位面積あたりの流動パラフィンの塗布量が表1の値となるように、スプレーガンを用いて流動パラフィンを内側表面4a全体に吹き付けて混合樹脂に保持させ、液膜9を形成した。
最外層8を構成する樹脂として、全ての実施例及び比較例において低密度ポリエチレン(旭化成株式会社製、サンテック(登録商標)M2206)を用いた。
中間層6を構成する樹脂として、全ての実施例及び比較例においてエチレンビニルアルコール共重合体(三菱ケミカル株式会社製、SF7503B)を用いた。
接着樹脂層5は、全ての実施例及び比較例において、接着性樹脂(三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)L522)を用いて構成した。また、接着樹脂層7は、全ての実施例及び比較例において、接着性樹脂(三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)L522)を用いて構成した。
2.評価
2.1.滑落速度評価
実施例1~6及び比較例1~3のプラスチック容器1に対し、滑落速度の評価のための試験を行った。容器本体2の収容部21から矩形状(縦7cm、横1cm)の試験片を切り取り、試験片の長手方向の一端付近において、最内層4の内側表面4a上に調味料を1ml滴下した。調味料として、ウスターソース類に分類されるお好みソース(オタフクソース株式会社製、含水率:約60%、粘度:840mPa・s(23℃)、原材料:野菜、果実、香辛料等)を用いた。調味料を滴下した当該一端側が上側となるように、試験片を鉛直方向に直立させて静置し、調味料の液滴が内側表面4a上を滑落する様子を観察し、鉛直方向における単位時間あたりの滑落距離を測定し、滑落速度[mm/分]を算出した。
2.1.滑落速度評価
実施例1~6及び比較例1~3のプラスチック容器1に対し、滑落速度の評価のための試験を行った。容器本体2の収容部21から矩形状(縦7cm、横1cm)の試験片を切り取り、試験片の長手方向の一端付近において、最内層4の内側表面4a上に調味料を1ml滴下した。調味料として、ウスターソース類に分類されるお好みソース(オタフクソース株式会社製、含水率:約60%、粘度:840mPa・s(23℃)、原材料:野菜、果実、香辛料等)を用いた。調味料を滴下した当該一端側が上側となるように、試験片を鉛直方向に直立させて静置し、調味料の液滴が内側表面4a上を滑落する様子を観察し、鉛直方向における単位時間あたりの滑落距離を測定し、滑落速度[mm/分]を算出した。
初回の試験を行った日を1日目とし、1日目に用いたプラスチック容器1を保存し、上述のような収容部21からの試験片の切り取り、調味料の滴下、及び滑落の観察を3,7,14,21日目に行った。このようにして得られた滑落速度の評価結果を、表1に示した。
2.2.成形性評価
実施例1~7及び比較例1~3のプラスチック容器1に対して、成形性評価として最内層4の形成状態の観察を行った。具体的には、最内層4の破れの有無等を観察し、最内層4が均一に形成されているかを評価した。
実施例1~7及び比較例1~3のプラスチック容器1に対して、成形性評価として最内層4の形成状態の観察を行った。具体的には、最内層4の破れの有無等を観察し、最内層4が均一に形成されているかを評価した。
2.3.結果
滑落速度評価の試験1日目においては、実施例1~6及び比較例1~3の全てにおいて、滑落速度が40mm/分よりも大きく、良好な滑落性を示した。潤滑液の塗布量が等しい実施例1,2及び比較例1と、実施例3,4及び比較例2、実施例5,6及び比較例3においてそれぞれ比較を行うと、それぞれ比較例1,2,3が最も大きな滑落速度を示した。実施例1~6においては、塗布した潤滑液の一部がエラストマーに吸収される。一方、比較例1,2,3の最内層4はエラストマーを含有せず、塗布した潤滑液が吸収されずにほぼ全量が内側表面4a上に液膜9として存在するため、より大きな滑落性を示したものと考えられる。
滑落速度評価の試験1日目においては、実施例1~6及び比較例1~3の全てにおいて、滑落速度が40mm/分よりも大きく、良好な滑落性を示した。潤滑液の塗布量が等しい実施例1,2及び比較例1と、実施例3,4及び比較例2、実施例5,6及び比較例3においてそれぞれ比較を行うと、それぞれ比較例1,2,3が最も大きな滑落速度を示した。実施例1~6においては、塗布した潤滑液の一部がエラストマーに吸収される。一方、比較例1,2,3の最内層4はエラストマーを含有せず、塗布した潤滑液が吸収されずにほぼ全量が内側表面4a上に液膜9として存在するため、より大きな滑落性を示したものと考えられる。
比較例1,2,3においては、保存期間の経過に伴い滑落速度が急激に低下した。比較例1では試験7日目以降、比較例2,3においては試験14日目以降、滑落速度が40mm/分よりも小さくなった。これは、最内層4の内側表面4aを被覆する液膜9の減少によるものと考えられる。
一方、最内層4がエラストマーを含む実施例1~5においては、保存期間の経過に伴う滑落速度の低下がより小さく、試験21日目においても滑落速度が40mm/分よりも大きく良好な滑落性を示した。エラストマーに吸収された潤滑液が最内層4の内側表面4a上に徐々に滲み出し、内側表面4a上の液膜9が維持されたものと考えられる。このように、実施例1~5においては、比較例1~3と比較して、滑落性の持続性の向上が認められた。
成形性評価においては、実施例1~6及び比較例1~3のプラスチック容器1の最内層4は、破れ等が観察されず均一に形成されていた。エラストマーの含有量が40質量%である実施例7においては、最内層4上の一部に破れが発生し、実施例1~6と比べて均一性がやや低下した。
1:プラスチック容器、2:容器本体、3:キャップ、4:最内層、4a:内側表面、5:接着樹脂層、6:中間層、7:接着樹脂層、8:最外層、9:液膜、21:収容部、22:口部、31:キャップカバー、32:キャップ本体、32a:上部、32b:吐出口、32c:筒部、33:連結部
Claims (7)
- 内容物を収容するためのプラスチック容器であって、
前記内容物と接する最内層を備え、
前記最内層は、ポリオレフィン系樹脂及びエラストマーの混合樹脂に潤滑液を保持させた樹脂組成物で構成され、
前記最内層の前記内容物と接する側の表面の少なくとも一部は、前記潤滑液により形成された液膜により被覆されていることを特徴とする、プラスチック容器。 - 請求項1に記載のプラスチック容器であって、
前記潤滑液は、流動パラフィンである、プラスチック容器。 - 請求項1又は請求項2に記載のプラスチック容器であって、
前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンである、プラスチック容器。 - 請求項1~請求項3の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記混合樹脂における前記エラストマーの含有量は、1~30質量%である、プラスチック容器。 - 請求項1~請求項4の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記最内層における前記潤滑液の保持量は、1~20g/m2である、プラスチック容器。 - 請求項1~請求項5の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
前記エラストマーは、オレフィン系エラストマーである、プラスチック容器。 - 請求項1~請求項6の何れか1つに記載のプラスチック容器であって、
EVOH樹脂からなる中間層と、最外層とを備える、プラスチック容器。
Priority Applications (1)
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