JP2023033889A - エポキシ樹脂組成物および硬化物 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性に優れ、熱伝導率、高温弾性率が高く、かつ低熱膨張性で耐熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物、更にそれを用いた硬化物を提供する。【解決手段】エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、特定構造の二官能性エポキシ樹脂を含有し、硬化剤として、二官能フェノール化合物を50wt%以上、下記一般式(2)TIFF2023033889000007.tif30159で表される多価フェノール樹脂を5~50wt%含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、信頼性に優れた半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料、炭素繊維強化複合材料として有用なエポキシ樹脂組成物及びそれを用いた硬化物に関する。
従来、ダイオード、トランジスタ、集積回路等の電気、電子部品や、半導体装置等の封止方法として、例えばエポキシ樹脂やシリコン樹脂等による封止方法やガラス、金属、セラミック等を用いたハーメチックシール法が採用されていたが、近年では信頼性の向上と共に大量生産が可能で、コストメリットのあるトランスファー成形による樹脂封止が主流を占めている。
トランスファー成形による樹脂封止に用いられる樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と、硬化剤としてフェノール樹脂を主成分とする樹脂組成物からなる封止材料が一般的に使用されている。
パワーデバイスなどの素子を保護する目的で使用されるエポキシ樹脂組成物は、素子が放出する多量の熱に対応するため、結晶シリカなどの無機充填材を高密度に充填している。
パワーデバイスには、ICの技術を組み込んだワンチップで構成されるものやモジュール化されたものなどがあり、封止材料に対する熱放散性、耐熱性、熱膨張性の更なる向上が望まれている。
これらの要求に対応するべく、熱伝導率を向上するために熱伝導率の大きい結晶シリカ、窒化珪素、窒化アルミニウム、球状アルミナ粉末等の無機充填材を含有させるなどの試みがなされている(特許文献1)が、無機充填材の含有率を上げていくと成形時の粘度上昇とともに流動性が低下し、成形性が損なわれるという問題が生じる。従って、単に無機充填材の含有率を高める方法には限界があった。
上記背景から、マトリックス樹脂自体の高熱伝導率化によって組成物の熱伝導率を向上する方法も検討されている。例えば、特許文献2、3および4には、剛直なメソゲン基を有する液晶性のエポキシ樹脂およびそれを用いたエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、これらのエポキシ樹脂組成物に用いる硬化剤として芳香族ジアミン化合物のみを用いており、無機充填材の高充填率化に限界があるとともに、電気絶縁性の点でも問題があった。また、芳香族ジアミン化合物のみで硬化させた場合、硬化物の液晶性は確認できるものの、硬化物の結晶化度は低く、高熱伝導性、低熱膨張性、低吸湿性等の点で十分ではなかった。特許文献5には、ビスフェノール系のメソゲン構造を有するエポキシ樹脂と二官能性のフェノール性化合物を主成分とする硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物および硬化物が開示され、結晶性の硬化物を与えることが開示されているが、硬化性が十分ではないうえに耐熱性が不足し、熱伝導率も十分ではなかった。非特許文献1には、メソゲン構造のエポキシ樹脂をフェノール系硬化剤やアミン系硬化剤で硬化させて得られる硬化物が開示されているが、硬化剤として例えばカテコールノボラックを使用した場合、分子鎖の配向が不十分で結晶性を発現せず熱伝導率も不足していた。
越智光一他,高分子論文集,52(5)286(1995)
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、成形性に優れ、熱伝導率、高温弾性率が高く、かつ低熱膨張性で耐熱性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物を提供し、更にそれを用いた硬化物を提供することである。
本発明者らは、特定の構造を持つエポキシ樹脂に硬化剤として二次元的に反応が進行する特定の二官能の硬化剤と特定の多価フェノール樹脂を組み合わせた場合において、熱伝導率、耐熱性、高温弾性率等の物性が特異的に向上することを見出し、本発明に到達した。
本発明は、エポキシ樹脂及び硬化剤を主成分とするエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の50wt%以上が二官能エポキシ樹脂であり、硬化剤の50wt%以上が二官能フェノール性化合物、硬化剤の5~40wt%が多価フェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物であり、それを硬化させて得られる結晶性のエポキシ樹脂硬化物である。
上記二官能エポキシ樹脂は、下記式(1)で表される。
(但し、Xは、単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-COO-、-NHCO-、-CH=CH-、-CH=N-、-φ-、-O-φ-O-、-OOC-φ-COO-、-Z-、-COO-Z-、から選ばれる二価の基、R1、R2は独立に、水素原子またはメチル基であり、nは0~5の数を示す。ここで、φはフェニレン基、Zはシクロヘキシレン基を示す。)
上記の二官能フェノール性化合物としては、ハイドロキノン、2,5-ジメチルハイドロキノン、2,3,5-トリメチルハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルメタン類、ナフタレンジオール類からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は無機充填材を含むことができ、この場合エポキシ樹脂組成物中に無機充填材を50~96wt%含有することが好ましい。また、無機充填材としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭素粉、炭素繊維粉末等の粉状物、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の繊維状基材が好ましく挙げられ、この使用量は無機充填材の50wt%以上であることがよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子材料として適する。
更に、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られることを特徴とする硬化物である。
上記硬化物は、走査示差熱分析における融点の吸熱ピークが120℃から350℃の範囲にあること、または走査示差熱分析における結晶融解の吸熱量(樹脂成分換算)が5J/g以上であることが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、成形性、信頼性に優れ、かつ高熱伝導性、低熱膨張性、高耐熱性、耐溶剤溶解性に優れた成形物を与え、半導体封止、積層板、放熱基板等の電気・電子材料用絶縁材料として好適に応用され、優れた高放熱性、高耐熱性および高寸法安定性が発揮される。このような特異的な効果が生ずる理由は、特定のエポキシ樹脂を特定の二官能性のフェノール性硬化剤と反応させることで分子鎖の配向を促進させ高い融点を持つ結晶性を発現させるとともに、特定の多価フェノール樹脂を硬化剤として用いることで結晶性を維持しつつ成形性が改善されるとともに硬化物の高い熱伝導率、低熱膨張性、耐溶剤溶解性等を持たせることが可能となった。
以下、本発明を詳細に説明する。
式(1)でXは単結合、-CH2-、-O-、-CO-、-COO-、-NHCO-、-CH=CH-、-CH=N-、-φ-、-O-φ-O-、-OOC-φ-COO-、-Z-、-COO-Z-、から選ばれる二価の基であるが、硬化物が結晶性を発現するためには、好ましくは、単結合、-O-、-CO-、-φ-、-O-φ-O-である。なお、ここでφはフェニレン基、Zはシクロヘキシレン基である。また、R1、R2は独立に、水素原子またはメチル基であるが、好ましくは水素原子である。
nは繰り返し数であり、0~10の数を示す。繰り返し数の異なる複数の化合物の混合物である場合は、nの平均値(Σn/Σ分子数)が0から5の範囲にある。エポキシ樹脂組成物として、無機フィラー高充填率化のためには、低粘度であることが望ましく、好ましいnの範囲(平均値)は0.1~2.0である。
本発明に用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、通常180から600の範囲であるが、無機フィラーの高充填率化および流動性向上の観点からは低粘度性のものが良く、エポキシ当量が180から350の範囲のものが好ましい。
本発明に用いるエポキシ樹脂は、通常、常温で結晶性を有するものが好適に使用される。好ましい融点の範囲は80℃~250℃であり、より好ましくは、100℃~200℃の範囲である。これより低いとブロッキング等が起こりやすくなり固体としての取扱い性に劣り、これより高いと硬化剤等との相溶性、溶剤への溶解性等が低下する。
本発明に用いるエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、適用する電子部品の信頼性向上の観点より少ない方がよい。特に限定するものではないが、好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下である。なお、本発明でいう加水分解性塩素とは、以下の方法により測定された値をいう。すなわち、試料0.5gをジオキサン30mlに溶解後、1N-KOH、10mlを加え30分間煮沸還流した後、室温まで冷却し、さらに80%アセトン水100mlを加え、0.002N-AgNO3水溶液で電位差滴定を行い得られる値である。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必須成分として使用される式(1)のエポキシ樹脂以外に、エポキシ樹脂成分として分子中にエポキシ基を2個以上有する他のエポキシ樹脂を併用してもよい。例を挙げれば、ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、フルオレンビスフェノール、レゾルシン、カテコール、t‐ブチルカテコール、t‐ブチルハイドロキノン、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック等の2価のフェノール類、あるいは、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o‐クレゾールノボラック、m‐クレゾールノボラック、p‐クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ‐p‐ヒドロキシスチレン、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フルオログリシノール、ピロガロール、t‐ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4‐ベンゼントリオール、2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等の3価以上のフェノール類、または、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種または2種以上を用いることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる式(1)のエポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂の50wt%以上であり、好ましくは70wt%以上、より好ましくは90wt%以上である。さらには、二官能性エポキシ樹脂の合計量が90wt%以上、好ましくは95wt%以上であることが望ましい。これより少ないと硬化物とした際の熱伝導率等の物性向上効果が小さい。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として用いる二官能フェノール性化合物は、一分子中に2個のフェノール性水酸基を有するものであり、特に限定されるものではないが、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、ヒドロキノン、レゾルシン、t‐ブチルハイドロキノン、1,2‐ジヒドロキシナフタレン、1,3‐ジヒドロキシナフタレン、1,4‐ジヒドロキシナフタレン、1,5‐ジヒドロキシナフタレン、1,6‐ジヒドロキシナフタレン、1,7‐ジヒドロキシナフタレン、1,8‐ジヒドロキシナフタレン、2,3‐ジヒドロキシナフタレン、2,6‐ジヒドロキシナフタレン、2,7‐ジヒドロキシナフタレン等を挙げることができる。これらは2種類以上を使用しても良い。
好ましい二官能フェノール性化合物としては、ハイドロキノン、2,5-ジメチルハイドロキノン、2,3,5-トリメチルハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルメタン類、ナフタレンジオール類からなる群より選ばれるものである。
硬化剤として用いる二官能フェノール化合物の使用量は全硬化剤の50wt%以上、好ましくは70wt%以上、より好ましくは80wt%以上である。これより少ないと硬化物とした際の熱伝導率等の物性向上効果が小さい。これは、二官能フェノール化合物の含有率が高いものほど、成形物としての配向度が高くなるためである。
さらに本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、上記の二官能フェノール性化合物と共に、下記一般式(2)、
で表される多価フェノール樹脂を必須成分とする。芳香環上の隣接位に二つの水酸基を有する構造を持つことで、二官能エポキシ樹脂と反応した際に、分子鎖が配向しやすくなるとともに、多官能性であることから、成形性および硬化後の硬化物の硬度、耐溶剤溶解性等が向上する。
式(2)において、Yは単結合または二価の炭化水素基であり、例えば、-CH2-、-CH(Me)-、-C(Me)2-、-CH2-φ-CH2-、-CH(Me)-φ-CH(Me)-、-CH2-φ-φ-CH2-が挙げられるが、好ましくは、単結合、-CH2-、-CH2-φ-CH2-、-CH2-φ-φ-CH2-である。特に好ましくは、単結合、または-CH2-であり、この場合、好ましい水酸基当量(g/eq.)は、50~150、より好ましくは60~100である。ここで、φはフェニレン基である。また、R3は水素原子、水酸基、メトキシ基またはメチル基であるが、好ましくは水素原子である。
mは繰り返し数であり、1~50の数を示す。繰り返し数の異なる複数の化合物の混合物である場合は、mの平均値(Σm/Σ分子数)1から15の範囲にあり、好ましくは1.1~10.0である。これより小さいと硬化性や耐熱性が低下し、これより大きいと粘度が高くなり無機フィラーの充填性は低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いる式(2)の多価フェノール樹脂の配合割合は、全硬化剤中の5~40wt%であり、好ましくは10~30wt%である。これより少ないと硬化物の耐熱性が十分ではなく、これより多いと硬化物の結晶性が低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として、上述した二官能フェノール性化合物および式(2)で表される多価フェノール樹脂以外に、一般的に知られている他の硬化剤をさらに用いることもできる。例を挙げれば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。これら他の硬化剤の配合量は、配合する硬化剤の種類や得られる熱伝導性エポキシ樹脂成形体の物性を考慮して適宜設定すればよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物では、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比率は、エポキシ基と硬化剤中の官能基が当量比で0.8~1.5の範囲であることが好ましい。この範囲外では硬化後も未反応のエポキシ基、または硬化剤中の官能基が残留し、電子部品用絶縁材料に関しての信頼性が低下する。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填材が配合されることが好ましい。この場合の無機充填材の添加量は、通常、エポキシ樹脂組成物に対して50~96wt%であるが、好ましくは60~94wt%、さらに好ましくは70~92wt%である。これより少ないと高熱伝導性、低熱膨張性、高耐熱性等の効果が十分に発揮されない。これらの効果は、無機充填材の添加量が多いほど向上するが、その体積分率に応じて向上するものではなく、特定の添加量以上となった時点から飛躍的に向上する。これらの物性は、高分子状態での高次構造が制御された効果によるものであり、この高次構造が主に無機充填材表面で達成されることから、特定量の無機充填材を必要とするものであると考えられる。一方、無機充填材の添加量がこれより多いと粘度が高くなり、成形性が悪化する。
無機充填材は、球状のものが好ましく、断面が楕円上であるものも含めて球状であれば特に限定されるものではないが、流動性改善の観点からは、極力真球状に近いものであることが特に好ましい。これにより、面心立方構造や六方稠密構造等の最密充填構造をとり易く、充分な充填量を得ることができる。球形でない場合、充填量が増えると充填材同士の摩擦が増え、上記の上限に達する前に流動性が極端に低下して粘度が高くなり、成形性が悪化する。
熱伝導率向上の観点からは、無機充填材の50wt%以上、好ましくは80wt%以上を、熱伝導率が5W/m・K以上のものとすることがよい。かかる無機充填材としては、アルミナ、窒化アルミニウム、結晶シリカ等が好適である。これらの中でも、球状アルミナが優れる。その他、必要に応じて形状に関係なく無定形無機充填材、例えば溶融シリカ、結晶シリカなどを併用しても良い。
本発明のエポキシ樹脂組成物には、従来より公知の硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルポレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルポレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。これらは単独で用いても良く、併用しても良い。
上記硬化促進剤の添加量は、エポキシ樹脂と硬化剤の合計に対して、0.1~10.0wt%が好ましい。0.1wt%未満ではゲル化時間が遅くなって加熱反応時の剛性低下による作業性の低下をもたらし、逆に10.0wt%を超えると成形途中で反応が進んでしまい、未充填が発生し易くなる。
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、上記成分の他に、離型剤、カップリング剤、熱可塑性のオリゴマー類、その他の一般的にエポキシ樹脂組成物に使用可能なものを適宜配合して用いることができる。例えば、リン系難燃剤、ブロム化合物や三酸化アンチモン等の難燃剤、及びカーボンブラックや有機染料等の着色剤等を使用することができる。
離型剤としては、ワックスが使用できる。ワックスとしては、例えばステアリン酸、モンタン酸、モンタン酸エステル、リン酸エステル等が使用可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分として含み、無機充填材等の成分を含む配合成分(カップリング剤を除く)をミキサー等によって均一に混合した後、カップリング剤を添加し、加熱ロール、ニーダー等によって混練して製造することができる。これらの成分の配合順序にはカップリング剤を除き特に制限はない。更に、混練後に溶融混練物の粉砕を行い、パウダー化することやタブレット化することも可能である。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、電子材料用途、特に電子部品封止用および放熱基板用として適する。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、ガラス繊維等の繊維状基材と複合させて複合材とすることができる。例えば、エポキシ樹脂および硬化剤を主成分としたエポキシ樹脂組成物を有機溶剤に溶解させたものを、シート状繊維基材に含浸し加熱乾燥して、エポキシ樹脂を部分反応させて、プリプレグとすることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて硬化成形物を得るためには、例えば、トランスファー成形、プレス成形、注型成形、射出成形、押出成形等の加熱成形方法が適用されるが、量産性の観点からは、トランスファー成形が好ましい。
本発明の硬化物は、高耐熱性、低熱膨張性および高熱伝導性の観点から結晶性を有するものであることが好ましい。成形物の結晶性の発現は、走査示差熱分析で結晶の融解に伴う吸熱ピークを融点として観測することにより確認することができる。好ましい融点は120℃から350℃の範囲であり、より好ましくは150℃から320℃の範囲である。
ここで結晶性発現の効果を簡単に説明する。一般的に、エポキシ樹脂硬化物においては耐熱性の指標としてガラス転移点が用いられる。これは、通常のエポキシ樹脂硬化物が結晶性を持たないアモルファス状(ガラス状)の成形物でありガラス転移点を境として物性が大きく変化するためである。従って、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を高くするため、すなわちガラス転移点を高くするためには架橋密度を高くする必要があるが、逆に可撓性が低下し脆くなる欠点があった。これに対して、本発明の硬化成形物は、結晶性を発達させる点に特徴があるが、融点まで物性変化が少ないことから融点を耐熱性の指標とすることができる。高分子物質は、融点の方がガラス転移点よりも高い温度にあるため、本発明の硬化成形物は、低い架橋密度により高い可撓性を維持しつつ、高い耐熱性を確保できる。また、結晶性発現は、高い分子間力を意味しており、これにより分子の運動が抑制され、低熱膨張性の達成とともに、高い熱拡散率が発揮され熱伝導率が向上する。
従って、本発明の硬化成形物の結晶化度は高いものほどよい。ここで結晶化の程度は走査示差熱分析での結晶の融解に伴う吸熱量から評価することができる。好ましい吸熱量は、充填材を除いた樹脂成分の単位重量あたり5J/g以上である。より好ましくは10J/g以上であり、特に好ましくは20J/g以上である。これより小さいと成形物としての耐熱性、低熱膨張性および熱伝導率の向上効果が小さい。ここで、吸熱量は、示差走査熱分析計により、約10mgを精秤した試料を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件で測定して得られる吸熱量を指す。また、結晶化した本発明の硬化成形物は、広角X線回折においても、明確なピークとして観察することができる。この場合、結晶化度は、全体のピーク面積から結晶化していないアモルファス状樹脂のピークを差引いた面積を全体のピーク面積で除することにより求めることができる。このようにして求めた望ましい結晶化度は10%以上、より望ましくは15%以上、特に望ましくは20%以上である。
本発明の硬化成形物は、上記成形方法により加熱反応させることにより得ることができるが、通常、成形温度としては80℃から280℃であるが、成形物の結晶化度を上げるためには、成形物の融点よりも低い温度で反応させることが望ましい。好ましい成形温度は100℃から220℃の範囲であり、より好ましくは130℃から200℃である。また、好ましい成形時間は30秒から1時間であり、より好ましくは1分から30分である。さらに成形後、ポストキュアにより、さらに結晶化度を上げることができる。通常、ポストキュア温度は130℃から250℃であり、時間は1時間から20時間の範囲であるが、示差熱分析における吸熱ピーク温度よりも5℃から40℃低い温度で、1時間から24時間かけてポストキュアを行うことが望ましい。
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
合成例
カテコール440g、ジエチレングリコールジメチルエーテル100g、p-トルエンスルホン酸0.8gを仕込んだ後、100℃にて92%パラホルムアルデヒド39.1gを加えて6時間反応した。反応後、160℃にて過剰のカテコールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルを減圧留去した後、室温まで冷却し、トルエン500mLを加えて溶解した。水洗後、トルエンを留去し、カテコールノボラック樹脂320gを得た。
得られたカテコールノボラック樹脂は、式(2)においてYが-CH2-(メチレン基)、R3=H、m=4(平均値)であり、水酸基当量が78g/eq.、軟化点が118℃、150℃での溶融粘度が11.0Pa・sであった。
カテコール440g、ジエチレングリコールジメチルエーテル100g、p-トルエンスルホン酸0.8gを仕込んだ後、100℃にて92%パラホルムアルデヒド39.1gを加えて6時間反応した。反応後、160℃にて過剰のカテコールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルを減圧留去した後、室温まで冷却し、トルエン500mLを加えて溶解した。水洗後、トルエンを留去し、カテコールノボラック樹脂320gを得た。
得られたカテコールノボラック樹脂は、式(2)においてYが-CH2-(メチレン基)、R3=H、m=4(平均値)であり、水酸基当量が78g/eq.、軟化点が118℃、150℃での溶融粘度が11.0Pa・sであった。
実施例1~3、比較例1~4
エポキシ樹脂として、ジフェニルエーテル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂A:日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、式(1)においてX=-O-、R1、R2=H、n=0.1(平均値)、エポキシ当量163、融点84℃)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂B:日鉄ケミカル&マテリアル製、YD-8125、エポキシ当量173)を使用する。硬化剤として4,4’-ジヒドロキシビフェニル(硬化剤A)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤B)、合成例で得たカテコールノボラック樹脂(硬化剤C)、フェノ-ルノボラック(硬化剤D:アイカ工業製、BRG-557、OH当量104、軟化点83℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用する。
エポキシ樹脂として、ジフェニルエーテル系エポキシ樹脂(エポキシ樹脂A:日鉄ケミカル&マテリアル製、YSLV-80DE、式(1)においてX=-O-、R1、R2=H、n=0.1(平均値)、エポキシ当量163、融点84℃)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂B:日鉄ケミカル&マテリアル製、YD-8125、エポキシ当量173)を使用する。硬化剤として4,4’-ジヒドロキシビフェニル(硬化剤A)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル(硬化剤B)、合成例で得たカテコールノボラック樹脂(硬化剤C)、フェノ-ルノボラック(硬化剤D:アイカ工業製、BRG-557、OH当量104、軟化点83℃)を使用する。硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを使用する。
表1に示す成分を配合し、ミキサーで十分混合した後、加熱ロールで約5分間混練したものを冷却し、粉砕してそれぞれ実施例1~3、比較例1~4のエポキシ樹脂組成物を得た。これらのエポキシ樹脂組成物を用いて170℃、5分の条件で成形後、170℃で12時間ポストキュアを行い硬化成形物を得て、その物性を評価した。結果をまとめて表1に示す。なお、表1中の各成分の数字は重量部を表す。
[評価]
(1)線膨張係数、ガラス転移温度
セイコーインスツル(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)高温弾性率
日立ハイテクサイエンス製,DMA6100型測定装置を用いて、窒素気流下,周波数10Hzで昇温速度2 ℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、150℃での貯蔵弾性率を読み取った。
(3)熱伝導率
NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて、キセノンフラッシュ法により測定した。
(4)融点、融解熱(DSC法)
日立ハイテクサイエンス製DSC7020型示差走査熱量分析装置を用いて,窒素気流下,昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(5)熱分解温度、熱重量
日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300型熱重量測定装置により、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件にて、熱分解温度(10%重量減少温度)、および700℃での残炭率を求めた。
(6)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
(1)線膨張係数、ガラス転移温度
セイコーインスツル(株)製TMA120C型熱機械測定装置を用いて、昇温速度10℃/分にて測定した。
(2)高温弾性率
日立ハイテクサイエンス製,DMA6100型測定装置を用いて、窒素気流下,周波数10Hzで昇温速度2 ℃/分の条件で動的粘弾性測定を行い、150℃での貯蔵弾性率を読み取った。
(3)熱伝導率
NETZSCH製LFA447型熱伝導率計を用いて、キセノンフラッシュ法により測定した。
(4)融点、融解熱(DSC法)
日立ハイテクサイエンス製DSC7020型示差走査熱量分析装置を用いて,窒素気流下,昇温速度10℃/分の条件で測定した。
(5)熱分解温度、熱重量
日立ハイテクサイエンス製TG/DTA7300型熱重量測定装置により、窒素気流下、昇温速度10℃/分の条件にて、熱分解温度(10%重量減少温度)、および700℃での残炭率を求めた。
(6)吸水率
直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後、85℃、相対湿度85%の条件で100時間吸湿させた後の重量変化率とした。
Claims (7)
- エポキシ樹脂及び硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物において、エポキシ樹脂の50wt%以上が下記一般式(1)、
で表される二官能エポキシ樹脂であり、硬化剤の50wt%以上が二官能フェノール性化合物、硬化剤の5~40wt%が下記一般式(2)、
で表される多価フェノール樹脂であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 - 二官能フェノール性化合物が、ハイドロキノン、2,5-ジメチルハイドロキノン、2,3,5-トリメチルハイドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ジヒドロキシジフェニルメタン類、ナフタレンジオール類からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填材を50~96wt%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 電子材料として用いることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物。
- 結晶性であって示差走査熱量分析における融点の吸熱ピークが120℃~350℃の範囲にある請求項5に記載の硬化物。
- 結晶性であって示差走査熱量分析における結晶融解の吸熱量が樹脂換算で5J/g以上である請求項5または6に記載の硬化物。
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JP2021139825A JP2023033889A (ja) | 2021-08-30 | 2021-08-30 | エポキシ樹脂組成物および硬化物 |
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