JP2023032938A - 燃料噴射量の補正システム - Google Patents
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Abstract
【課題】内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサの出力信号に基づく空燃比フィードバック制御の最適化を図る。【解決手段】内燃機関の排気通路に装着される排気浄化用の触媒を用いた車両の走行距離、若しくは前記触媒が装着された状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、前記触媒を用いた状態で内燃機関の気筒に燃料を供給し、燃料を燃焼させたときの前記触媒の劣化の度合い、及び前記気筒に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの前記触媒の劣化の度合いを総合した、前記触媒の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、前記第一の指標値と前記第二の指標値とを参照して、気筒に対する燃料噴射量を補正する燃料噴射量の補正システムを構成した。【選択図】図2
Description
本発明は、車両に搭載された内燃機関の気筒に対する燃料噴射量の補正制御に関する。
一般に、内燃機関の排気通路には、気筒から排気されるガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている(例えば、下記特許文献を参照)。この種の触媒は、空燃比リーンのガスが流入したときに余剰の酸素を吸蔵する能力(O2 Storage Capacity)を有している。そして、空燃比リッチのガスが流入したときに、吸蔵していた酸素を放出する。これにより、空燃比リーンのガスに含まれるNOxを適切に還元処理でき、また空燃比リッチのガスに含まれるHC、COを適切に酸化処理できる。
尤も、HC、CO、NOxの全てを効率よく浄化するには、ガスの空燃比を理論空燃比近傍の一定範囲に収める必要がある。そのために、内燃機関の排気通路上に空燃比センサを設置して、当該センサが検出する空燃比を所要の目標値に追従させるフィードバック制御を実施することが通例となっている。
図3は、排気通路における触媒の下流に空燃比センサとしてO2センサを設置し、その出力信号を参照して気筒に対する燃料噴射量を増減調整する空燃比フィードバック制御の一例である。周知の通り、O2センサの出力特性は、理論空燃比近傍の一定範囲では空燃比に対する出力電圧の変化率が大きく急峻な傾きを示し、それよりも空燃比が大きいリーン領域では出力電圧が低位飽和値に漸近し、それよりも空燃比が小さいリッチ領域では出力電圧が高位飽和値に漸近する、いわゆるZ特性曲線を描く。
この空燃比フィードバック制御では、ベース値に、触媒下流のO2センサの出力電圧と目標値との偏差に応じた補正量を加味した値を用いて、燃料噴射量を修正する。O2センサの出力電圧が目標値よりも高い、即ち触媒の下流に流出するガスの空燃比が目標空燃比よりもリッチであるならば、上記の補正量を逓減させる。結果、燃料噴射量がより減量される。
翻って、O2センサの出力電圧が目標値よりも低い、即ち触媒の下流に流出するガスの空燃比が目標空燃比よりもリーンであるならば、上記の補正量を逓増させる。結果、燃料噴射量がより増量される。
触媒下流のガスの空燃比の変動は、触媒に吸蔵されていた酸素の大半が消費されて酸素が欠乏した事実、または触媒の最大酸素吸蔵能力近くまで酸素が吸蔵されて酸素が過剰となった事実を示す。触媒内で酸素が不足すると、HCやCOの酸化が困難となり、これらが排出されやすくなる。触媒内に酸素が充満すると、NOxの還元が難しくなり、NOxが排出されやすくなる。触媒下流のガスの空燃比に基づき燃料噴射量に修正を施すことは、有害物質の排出抑制にとって非常に有効である。
車両の走行中、運転者がアクセルペダルから足を離して惰行または減速を要求したときには、内燃機関の気筒に対する燃料噴射を一時休止する燃料カットを実行する。燃料カット中は、多量の酸素を含む空気が触媒に流入し、その酸素が触媒に吸蔵される。そして、燃料カットはしばしば発生するので、内燃機関の暖機完了後の多くの時期でNOxの排出が問題となり得る。
触媒の最大酸素吸蔵能力は、経年劣化により減退する。劣化の進んだ触媒では、NOxの浄化能率が落ちる。つまり、NOxの排出量が増大する懸念が生じる。
そこで、図3に例示しているように、空燃比フィードバック制御では、触媒下流のガスの空燃比が明らかに目標空燃比よりもリーンとならない、どちらかと言えば目標空燃比よりもリッチ寄りであるように、燃料噴射量を調整する傾向にある。従前のシステムでは、空燃比フィードバック制御におけるベース値を、予め触媒の経年劣化を見込んで余裕を持たせた(長い走行距離を経た後であっても法令上の排出基準を十分に満足できるような)高い値に設定し、燃料を常に多めに噴射するようにして、触媒の経年劣化が進んでもNOxの排出増を招かないように対策していた。
だが、上記のベース値は、触媒の劣化の度合い如何によらず恒常的に一定値である。従って、新品ないし劣化が進んでいない、酸素吸蔵能力の大きい触媒に対しては、燃料噴射量が過剰となって、燃費性能を低下させる、またはHCやCOの排出増を招く可能性があった。図3(I)に示す新品の触媒では、図3(II)に示す劣化が進んだ触媒よりも、触媒下流の空燃比が大きくリッチとなっている。
以上の点に着目してなされた本発明は、内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサの出力信号に基づく空燃比フィードバック制御の最適化を図ることを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関の排気通路に現在装着している排気浄化用の触媒を用いた状態で車両を走行させた距離、若しくはその状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、同触媒を用いた状態で内燃機関の気筒に燃料を供給し燃料を燃焼させたときの当該触媒の劣化の度合い、及び気筒に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの当該触媒の劣化の度合いを総合した、現在の同触媒の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、前記第一の指標値と前記第二の指標値とのうち少なくとも一方を参照して、気筒に対する燃料噴射量に修正を施す燃料噴射量の補正システムを構成した。
より詳しくは、内燃機関の排気通路における排気浄化用の触媒の下流に設置された空燃比センサの出力信号とその目標値との偏差に応じて燃料噴射量を増減させるフィードバック制御にて、ベース値に前記偏差に応じた補正量を加味したものを用いて燃料噴射量に修正を施す。
加えて、前記第一の指標値と前記第二の指標値との乖離が所定以下に小さいことを条件として、第一の指標値または第二の指標値を参照して記憶保持している前記ベース値を更新することとしてもよい。
本発明に係る燃料噴射量の補正方法は、内燃機関の排気通路に現在装着している排気浄化用の触媒を用いた状態で車両を走行させた距離、若しくはその状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、同触媒を用いた状態で内燃機関の気筒に燃料を供給し燃料を燃焼させたときの当該触媒の劣化の度合い、及び気筒に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの当該触媒の劣化の度合いを総合した、現在の同触媒の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、前記第一の指標値と前記第二の指標値とのうち少なくとも一方を参照して、気筒に対する燃料噴射量に修正を施すというものである。
本発明によれば、内燃機関の排気通路に設置された空燃比センサの出力信号に基づく空燃比フィードバック制御の最適化を図ることができる。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。排気通路4における触媒41の上流及び下流には、排気通路4を流通するガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設けている。空燃比センサ43、44はそれぞれ、ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO2センサであってもよく、ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよい。本実施形態では、触媒41の上流の空燃比センサ43、下流の空燃比センサ44ともに、O2センサを想定している。
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)に接続している。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラが、CAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速(または、車輪の回転速度)を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関の出力軸であるクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、運転者によるアクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、排気浄化用の触媒41の上流側におけるガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側におけるガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、内燃機関の点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号k、EGRバルブ23の弁体を駆動するモータに対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関及び車両の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、気筒1に吸入される空気(新気)量に見合った(理論空燃比またはその近傍の目標空燃比を具現するために必要な)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
ECU0は、気筒1に充填される混合気の空燃比、ひいては気筒1から排出される排気ガスの空燃比をフィードバック制御する。ECU0は、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数、要求EGR率等から、気筒1に充填される新気の量を算出し、これに見合った基本噴射量TPを決定する。
次いで、この基本噴射量TPを、排気通路4における触媒41の上流側及び/または下流側のガスの空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。一般に、フィードバック補正係数FAFは、空燃比センサ43、44を介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比(平常時は理論空燃比またはその近傍)との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
そして、内燃機関の状況や環境条件等に応じて定まる各種補正係数Kや、インジェクタ11の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。ECU0は、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを通電し、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
T=TP×FAF×K+TAUV
となる。ECU0は、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを通電し、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比信号f、gを参照したフィードバック制御は、例えば、内燃機関の冷間始動から所定時間が経過し、内燃機関の冷却水温が所定温度以上に高く(既に内燃機関が暖機され、触媒41及び空燃比センサ43、44も昇温して活性化している)、燃料カット中でなく、パワー増量中でなく、吸気圧が正常である、等の諸条件が全て成立している場合に行う。
また、ECU0は、所定の燃料カット条件が成立したときに、気筒1への燃料供給を一時的に中断する燃料カットを実行する。ECU0は、少なくとも、内燃機関の冷却水温が所定温度以上に高く、アクセル開度が0または0に近い閾値以下となり、かつ現在のエンジン回転数が燃料カット許可回転数以上に高いことを以て、燃料カット条件が成立したと判断して、インジェクタ11からの燃料噴射を停止する。
燃料カット条件の成立後、所定の燃料カット終了条件が成立したならば、燃料カットを終了することとし、インジェクタ11からの燃料噴射を再開する。ECU0は、アクセル開度が閾値を上回った、エンジン回転数が燃料カット復帰回転数を下回るまで低下した、等のうちの何れかを以て、燃料カット終了条件が成立したと判断する。
以降、ECU0が実施する、触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gに基づく空燃比フィードバック制御に関して詳記する。
図2に、空燃比フィードバック制御の模様を例示する。この空燃比フィードバック制御では、ECU0が、ベース値に、空燃比センサ44の出力信号gと目標値との偏差に応じた補正量を加味(加算、または乗算)した値を算出し、これを用いて燃料噴射量に修正を施す。より具体的には、ベース値に偏差に応じた補正量を加味した値が、フィードバック補正係数FAFに影響を及ぼす。ベース値に偏差に応じた補正量を加味した値が大きいほど、補正係数FAFが大きくなり、結果として燃料噴射量が増加する。逆に、ベース値に偏差に応じた補正量を加味した値が小さいほど、補正係数FAFが小さくなり、結果として燃料噴射量が減少する。
上記のベース値は、内燃機関の運転領域毎に異なる値に設定することができる。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域[エンジン回転数,吸気圧(または、アクセル開度(エンジン負荷率)、吸気量若しくは燃料噴射量等)]とベース値との関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]をキーとして当該マップを検索し、ベース値を知得する。
本実施形態では、触媒41の下流の空燃比センサ44としてO2センサを想定している。O2センサ44の出力信号gの電圧は、理論空燃比近傍の一定範囲では空燃比に対する出力電圧の変化率が大きく急峻な傾きを示し、それよりも空燃比が大きいリーン領域では出力電圧が低位飽和値に漸近し、それよりも空燃比が小さいリッチ領域では出力電圧が高位飽和値に漸近する。
ECU0は、O2センサ44の出力電圧gが目標値よりも高い、即ち触媒41から流下するガスの空燃比が目標空燃比よりもリッチである間、上記の偏差に応じた補正量を逓減させる。
翻って、O2センサ44の出力電圧gが目標値よりも低い、即ち触媒41のから流下するガスの空燃比が目標空燃比よりもリーンである間、偏差に応じた補正量を逓増させる。
本実施形態の特徴として、現在の触媒41の劣化の度合いに応じて、上記のベース値を変更することが挙げられる。図3(I)及び図3(II)に示すように、従来の制御では、触媒41の劣化の度合い如何によらず、ベース値を恒常的に固定の一定値としていた。本実施形態の制御では、触媒41の劣化の度合いが大きい場合、触媒41の劣化の度合いがより小さい場合と比較して、ベース値を大きくする。図2(I)は触媒41が新品であるときの制御例、図2(II)は触媒41の劣化が進んだときの制御例である。後者のベース値は、前者のベース値よりも大きい。ベース値が大きくなれば、その分補正係数FAFが大きくなり、燃料噴射量が増加することになる。
触媒41は、これに流入する排気ガスから受ける高熱や被毒によって経年劣化し、酸素吸蔵能力が減退してゆく。ECU0は、下記の二つの指標値のうち少なくとも一方を基に、現在使用している触媒41の劣化の度合いを推定する:
[第一の指標値]
内燃機関の排気通路4に現在装着している触媒41を用いた状態で車両を走行させた距離、若しくはその状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を求める。
車両の走行距離は、車載のオドメータにより計測される値を参照したり、車速センサの出力信号aから判明する車速を積算(または、時間積分)したりして知得できる。
内燃機関の運用機関の長さは、例えば、クランク角センサの出力信号bから判明するエンジン回転数を積算(または、時間積分。これは、内燃機関の累積の回転回数を算出することを意味する)したり、気筒1に充填される吸気量または気筒1に対する燃料噴射量を積算(または、時間積分。これは、触媒41に流入したガスの累積の総量を算出することを意味する)したりして知得できる。
第一の指標値は、間接的ながら現在の触媒41の劣化の度合いを示す。第一の指標値が大きいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
[第二の指標値]
排気通路4に現在装着している触媒41を用いた状態で、気筒1に燃料を供給し燃料を燃焼させて内燃機関を運転しているファイアリング中(特に、暖機完了後の空燃比フィードバック制御の実施中)の当該触媒41の劣化の度合い、及び気筒1に燃料を供給しない燃料カット中の当該触媒41の劣化の度合いを総合した、同触媒41の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を求める。
ファイアリング中の単位時間あたりまたは単位サイクル(吸気行程-圧縮行程-膨脹行程-排気行程の一連を一サイクルとする)あたりの劣化の度合いである熱劣化感度DFは、
DF=eα
α=CF×logeTF-SF
として算定される。上式にあって、eはネイピア数である。TFは、ファイアリング中の触媒41の温度であり、既知の任意の手法に則って推定することができる。例えば、現在の内燃機関の運転領域を基に、触媒41に流入する排気の温度を求める。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]と排気温度との関係を規定したマップデータ格納されている。ECU0は、現在の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]をキーとして当該マップを検索し、排気温度を知得する。触媒41に流入した排気の持つ熱が触媒41に伝わり触媒41を昇温させるのに要する時間を加味して、触媒41の推定温度TFを算出する。勿論、触媒41の温度TFを検出するセンサが付設されているのであれば、当該温度センサを介して触媒41の温度TFを実測すればよい。
CF及びSFはそれぞれ、実験的に定められる正の定数である。CF及びSFは、触媒41を含む内燃機関の諸元(気筒1の数、排気量、出力、触媒41の容量等)に応じて数値が異なり得る。
燃料カット中の単位時間あたりまたは単位サイクルあたりの劣化の度合いである熱劣化感度DSは、
DS=eβ
β=CS×logeTS-SS
として算定される。TSは、燃料カット中の触媒41の温度であり、既知の任意の手法に則って推定することができる。勿論、触媒41の温度TSを検出するセンサが付設されているのであれば、当該温度センサを介して触媒41の温度TSを実測すればよい。
CS及びSSはそれぞれ、実験的に定められる正の定数である。CS及びSSは、触媒41を含む内燃機関の諸元に応じて数値が異なり得る。CSはCFとは必ずしも同値でなく、SSはSFとは必ずしも同値でない。
その上で、ファイアリング中の熱劣化感度DFを積算(または、時間積分)したものと、燃料カット中の熱劣化感度DSを積算(または、時間積分)したものとの総和を、第二の指標値、換言すれば触媒41の熱劣化指数として求める。第二の指標値は、より直接的に現在の触媒41の劣化の度合いを示す。第二の指標値が大きいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
[第二の指標値の変形例(触媒41の酸素吸蔵能力)]
ECU0が、現在の触媒41の最大酸素吸蔵能力を推定し、これを第二の指標値とする態様もとり得る。触媒41の酸素吸蔵能力は、既知の任意の手法を採用して推算することができる。例えば、触媒41から酸素を完全に放出した状態で、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリーンに操作し、触媒41の上流に設置した空燃比センサ43の出力信号fがリーンに切り替わってから触媒41の下流に設置した空燃比センサ44の出力信号gがリーンに切り替わるまでの期間に、触媒41に流入したガスの量を積算し、そのガス量から触媒41が吸蔵した酸素量を推計する。触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gがリーンに反転した時点での酸素吸蔵量が、現在の触媒41の最大酸素吸蔵能力である。
あるいは、触媒41に酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態で、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリッチに操作し、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fがリッチに切り替わってから触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gがリッチに切り替わるまでの期間に、触媒41に流入したガスの量を積算し、そのガス量から触媒41が放出した酸素の量を推計する。触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gがリッチに反転した時点の酸素放出量が、現在の触媒41の最大酸素放出能力、即ち最大酸素吸蔵能力ということになる。
このようにして推算した酸素吸蔵能力もまた、ファイアリング中の触媒41の劣化の度合い及び燃料カット中の触媒41の劣化の度合いを総合した第二の指標値たり得る。そして、酸素吸蔵能力が小さいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
[第一の指標値]
内燃機関の排気通路4に現在装着している触媒41を用いた状態で車両を走行させた距離、若しくはその状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を求める。
車両の走行距離は、車載のオドメータにより計測される値を参照したり、車速センサの出力信号aから判明する車速を積算(または、時間積分)したりして知得できる。
内燃機関の運用機関の長さは、例えば、クランク角センサの出力信号bから判明するエンジン回転数を積算(または、時間積分。これは、内燃機関の累積の回転回数を算出することを意味する)したり、気筒1に充填される吸気量または気筒1に対する燃料噴射量を積算(または、時間積分。これは、触媒41に流入したガスの累積の総量を算出することを意味する)したりして知得できる。
第一の指標値は、間接的ながら現在の触媒41の劣化の度合いを示す。第一の指標値が大きいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
[第二の指標値]
排気通路4に現在装着している触媒41を用いた状態で、気筒1に燃料を供給し燃料を燃焼させて内燃機関を運転しているファイアリング中(特に、暖機完了後の空燃比フィードバック制御の実施中)の当該触媒41の劣化の度合い、及び気筒1に燃料を供給しない燃料カット中の当該触媒41の劣化の度合いを総合した、同触媒41の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を求める。
ファイアリング中の単位時間あたりまたは単位サイクル(吸気行程-圧縮行程-膨脹行程-排気行程の一連を一サイクルとする)あたりの劣化の度合いである熱劣化感度DFは、
DF=eα
α=CF×logeTF-SF
として算定される。上式にあって、eはネイピア数である。TFは、ファイアリング中の触媒41の温度であり、既知の任意の手法に則って推定することができる。例えば、現在の内燃機関の運転領域を基に、触媒41に流入する排気の温度を求める。ECU0のメモリには予め、内燃機関の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]と排気温度との関係を規定したマップデータ格納されている。ECU0は、現在の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]をキーとして当該マップを検索し、排気温度を知得する。触媒41に流入した排気の持つ熱が触媒41に伝わり触媒41を昇温させるのに要する時間を加味して、触媒41の推定温度TFを算出する。勿論、触媒41の温度TFを検出するセンサが付設されているのであれば、当該温度センサを介して触媒41の温度TFを実測すればよい。
CF及びSFはそれぞれ、実験的に定められる正の定数である。CF及びSFは、触媒41を含む内燃機関の諸元(気筒1の数、排気量、出力、触媒41の容量等)に応じて数値が異なり得る。
燃料カット中の単位時間あたりまたは単位サイクルあたりの劣化の度合いである熱劣化感度DSは、
DS=eβ
β=CS×logeTS-SS
として算定される。TSは、燃料カット中の触媒41の温度であり、既知の任意の手法に則って推定することができる。勿論、触媒41の温度TSを検出するセンサが付設されているのであれば、当該温度センサを介して触媒41の温度TSを実測すればよい。
CS及びSSはそれぞれ、実験的に定められる正の定数である。CS及びSSは、触媒41を含む内燃機関の諸元に応じて数値が異なり得る。CSはCFとは必ずしも同値でなく、SSはSFとは必ずしも同値でない。
その上で、ファイアリング中の熱劣化感度DFを積算(または、時間積分)したものと、燃料カット中の熱劣化感度DSを積算(または、時間積分)したものとの総和を、第二の指標値、換言すれば触媒41の熱劣化指数として求める。第二の指標値は、より直接的に現在の触媒41の劣化の度合いを示す。第二の指標値が大きいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
[第二の指標値の変形例(触媒41の酸素吸蔵能力)]
ECU0が、現在の触媒41の最大酸素吸蔵能力を推定し、これを第二の指標値とする態様もとり得る。触媒41の酸素吸蔵能力は、既知の任意の手法を採用して推算することができる。例えば、触媒41から酸素を完全に放出した状態で、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリーンに操作し、触媒41の上流に設置した空燃比センサ43の出力信号fがリーンに切り替わってから触媒41の下流に設置した空燃比センサ44の出力信号gがリーンに切り替わるまでの期間に、触媒41に流入したガスの量を積算し、そのガス量から触媒41が吸蔵した酸素量を推計する。触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gがリーンに反転した時点での酸素吸蔵量が、現在の触媒41の最大酸素吸蔵能力である。
あるいは、触媒41に酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態で、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリッチに操作し、触媒41の上流の空燃比センサ43の出力信号fがリッチに切り替わってから触媒41の下流の空燃比センサ44の出力信号gがリッチに切り替わるまでの期間に、触媒41に流入したガスの量を積算し、そのガス量から触媒41が放出した酸素の量を推計する。触媒41の下流の空燃比センサ44の出力gがリッチに反転した時点の酸素放出量が、現在の触媒41の最大酸素放出能力、即ち最大酸素吸蔵能力ということになる。
このようにして推算した酸素吸蔵能力もまた、ファイアリング中の触媒41の劣化の度合い及び燃料カット中の触媒41の劣化の度合いを総合した第二の指標値たり得る。そして、酸素吸蔵能力が小さいほど、触媒41が劣化していると推測できる。
しかして、ECU0は、上掲の第一の指標値及び/第二の指標値に応じて、空燃比フィードバック制御におけるベース値を変更する。原則は、触媒41の劣化が進んでいるほどベース値を引き上げる、裏返せば触媒41の劣化が進んでいなければベース値を低く抑える、ということである。よって、
・第一の指標値が大きいほど、ベース値を大きくする。及び/または、
・第二の指標値が大きいほど(但し、熱劣化指数に代えて現在の酸素吸蔵能力を第二の指標値とする場合には、これが小さいほど)、ベース値を大きくする
ことになる。現在の内燃機関の運転領域や、実測空燃比と目標空燃比との偏差その他の条件が同等であるならば、ベース値が大きいほど燃料噴射量が増加する。
・第一の指標値が大きいほど、ベース値を大きくする。及び/または、
・第二の指標値が大きいほど(但し、熱劣化指数に代えて現在の酸素吸蔵能力を第二の指標値とする場合には、これが小さいほど)、ベース値を大きくする
ことになる。現在の内燃機関の運転領域や、実測空燃比と目標空燃比との偏差その他の条件が同等であるならば、ベース値が大きいほど燃料噴射量が増加する。
ベース値を決定するに際し、第一の指標値及び第二の指標値の双方を参照する場合には、第一の指標値が同等ならば、第二の指標値が大きいほどベース値を大きくする。また、第二の指標値が同等ならば、第一の指標値が大きいほどベース値を大きくする。
既に述べた通り、ECU0のメモリには、内燃機関の運転領域[エンジン回転数,吸気圧等]とベース値との関係を規定したマップデータが格納されており、このマップデータを検索して現在の運転領域に対応したベース値を知得し、それを燃料噴射量の制御に用いている。
本実施形態では、ECU0が、そのマップデータ上のベース値を適宜更新する。マップデータを更新する条件は、現時点での第一の指標値と前記第二の指標値との乖離が所定以下に小さいことである。現時点での第一の指標値を第二の指標値に換算したものと、現時点での第二の指標値との差(または、比)の絶対値が所定以下に小さければ(例えば、両者の差分の絶対値が前者(または、後者)の10%ないし15%以内に収まっているならば)、両者の精度がともに高いと考えられる。そこで、現時点での第一の指標値及び/または第二の指標値から決定したベース値を、マップデータとしてメモリに記憶保持することで、マップデータを更新する。更新したマップデータは、以後の燃料噴射量の制御に用いる。
なお、ECU0メモリには予め、第一の指標値である車両の走行距離等と、その走行距離等を経た時点で予想される第二の指標値との関係を規定したデータが格納されている。ECU0は、現時点での第一の指標値をキーとして当該データを検索し、予想される第二の指標値を知得することで、第一の指標値を第二の指標値に換算する。
本実施形態では、内燃機関の排気通路4に現在装着している排気浄化用の触媒41を用いた状態で車両を走行させた距離、若しくはその状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、同触媒41を用いた状態で内燃機関の気筒1に燃料を供給し燃料を燃焼させたときの当該触媒41の劣化の度合い、及び気筒1に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの当該触媒41の劣化の度合いを総合した、現在の同触媒41の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、前記第一の指標値と前記第二の指標値とを参照して、気筒1に対する燃料噴射量に修正を施す燃料噴射量の補正システムを構成した。
より詳しくは、触媒41の下流に設置された空燃比センサ44の出力信号gとその目標値との偏差に応じて燃料噴射量を増減させるフィードバック制御にて、ベース値に前記偏差に応じた補正量を加味したものを用いて燃料噴射量に修正を施す。これに加えて、前記第一の指標値と前記第二の指標値との乖離が所定以下に小さいことを条件として、第一の指標値または第二の指標値を参照して記憶保持している前記ベース値を更新する。
本実施形態では、触媒41の劣化が進行していない段階ではベース値をより小さく設定し、触媒41の劣化が進行するにつれてベース値をより大きく引き上げる。本実施形態によれば、図2(I)に示す新品または劣化の進んでいない触媒41であっても、図2(II)に示す劣化が進んだ触媒41であっても、触媒41の下流のガスの空燃比を目標空燃比の近傍に収束させることが可能である。図2(I)に示す新品の触媒でも、触媒41の下流の空燃比が大きくリッチ化しない。
しかも、新品または劣化の進んでいない触媒41に対して、過剰な量の燃料を噴射せずに済む、即ち燃料消費量を削減、節約することができる。従って、燃費性能のより一層の向上を図り得る。また、HCやCOの排出増を招かずに済む。
本実施形態のシステムは、触媒41の温度を精確に実測するセンサを必要とせず、低コストで実現できる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限定されない。各部の具体的な構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
44…触媒の下流の空燃比センサ(O2センサ)
g…触媒の下流の空燃比信号
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
44…触媒の下流の空燃比センサ(O2センサ)
g…触媒の下流の空燃比信号
Claims (3)
- 内燃機関の排気通路に装着される排気浄化用の触媒を用いた車両の走行距離、若しくは前記触媒が装着された状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、
前記触媒を用いた状態で内燃機関の気筒に燃料を供給し、燃料を燃焼させたときの前記触媒の劣化の度合い、及び前記気筒に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの前記触媒の劣化の度合いを総合した、前記触媒の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、
前記第一の指標値と前記第二の指標値とを参照して、気筒に対する燃料噴射量を補正する燃料噴射量の補正システム。 - 前記排気通路における前記触媒の下流に設置された空燃比センサの出力信号とその目標値との偏差に応じて燃料噴射量を増減させるフィードバック制御にて、
ベース値に前記偏差に応じた補正量を加味したものを用いて燃料噴射量を補正し、
前記第一の指標値と前記第二の指標値との乖離が所定以下に小さいことを条件として、第一の指標値及び第二の指標値を参照して前記ベース値を更新する請求項1記載の燃料噴射量の補正システム。 - 内燃機関の排気通路に装着される排気浄化用の触媒を用いた車両の走行距離、若しくは前記触媒が装着された状態で内燃機関を運用した期間の長さを示唆する第一の指標値を得、
前記触媒を用いた状態で内燃機関の気筒に燃料を供給し、燃料を燃焼させたときの前記触媒の劣化の度合い、及び前記気筒に燃料を供給しない燃料カットを実行したときの前記触媒の劣化の度合いを総合した、前記触媒の劣化の度合いを示唆する第二の指標値を得、
前記第一の指標値と前記第二の指標値とを参照して、気筒に対する燃料噴射量を補正する燃料噴射量の補正方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021139321A JP2023032938A (ja) | 2021-08-27 | 2021-08-27 | 燃料噴射量の補正システム |
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Family Applications (1)
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2021
- 2021-08-27 JP JP2021139321A patent/JP2023032938A/ja active Pending
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