JP2016070106A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】減圧下における触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の向上を図る。【解決手段】内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、その際の大気圧の高低及び内燃機関の運転領域に応じて、当該期間を通じて推算される触媒の酸素吸蔵能力を補正する内燃機関の制御装置を構成した。【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関における燃料噴射量を調整して空燃比を制御する制御装置に関する。
一般に、内燃機関の排気通路には、内燃機関の気筒から排出される排気ガス中に含まれる有害物質HC、CO、NOxを酸化/還元して無害化する三元触媒が装着されている。
触媒の酸素吸蔵能力(OSC:O2 Storage Capacity)は、経年劣化により減退する。触媒による排気ガスの浄化率は、触媒内に吸着できる酸素量に依存する。触媒の劣化が進行すると、排出される有害物質の量も増大する。一方で、触媒の劣化は、車両自体の運転性能にはほとんど影響を与えない。それ故、異常な排出ガス車が長期間、無意識に使用され続けるおそれがある。
そのような事象に対処するべく、触媒の経年劣化の度合いを自己診断するダイアグノーシス機能を車両に実装することも通例となっている(例えば、下記特許文献を参照)。具体的には、触媒から酸素を完全に放出した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリーンに操作し、触媒上流の空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わってから触媒下流の空燃比センサの出力信号がリーンに切り替わるまでの間の経過時間を計測することにより、現在触媒に吸蔵している酸素量を推算する。下流側センサ出力がリーンに反転した瞬間の酸素吸蔵量が、当該触媒の最大酸素吸蔵能力となる。
触媒に酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態で、触媒に流入するガスの空燃比を強制的にリッチに操作し、上流側センサ出力がリッチに切り替わってから下流側センサ出力がリッチに切り替わるまでの間の経過時間を計測することにより、触媒が放出した酸素の量、即ち酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵した状態を基準とした酸素吸蔵量を推算することもできる。下流側センサ出力がリッチに反転した瞬間の酸素吸蔵量が、当該触媒の最大酸素放出能力、換言すれば最大酸素吸蔵能力ということになる。
触媒のダイアグノーシスにおいては、最大酸素吸蔵能力の推算値を判定閾値と比較し、前者が後者を下回ったならば触媒が劣化したと判断する。そして、触媒が劣化した旨を運転者に報知して、触媒の交換を促す。
高地のような大気圧の低い場所では、大気中に含まれる酸素の分圧、換言すれば酸素イオン濃度が低下する。このため、空燃比センサの出力信号電圧を参照して推算される触媒の最大酸素吸蔵能力が、実際の触媒の能力よりも目減りして推算されることがある。その場合、必要十分な性能を有している触媒であっても劣化した触媒であると誤判定することになりかねない。
減圧下でのダイアグノーシスにおける誤判定を回避する方法としては、減圧下で推算された触媒の酸素吸蔵能力値を嵩上げするように補正し、平地にて推算される値に近づけることが考えられる。
しかしながら、ダイアグノーシスの際に推算される触媒の酸素吸蔵能力は、その推算中に遷移した内燃機関の運転領域による影響を受ける。具体的には、高回転域や高負荷域に遷移した場合に、触媒の酸素吸蔵能力が実際の触媒の能力よりも低く見積もられる。そして、高地では、平地とは異なる運転領域を通過することが間々あり、そのような運転領域に遷移することで触媒の酸素吸蔵能力の推算値が不当に小さくなって、嵩上げ補正を加味したとしてもこれが判定閾値を下回り、未だ劣化してないにもかかわらず劣化した触媒と誤判定してしまう懸念がある。
以上の問題に初めて着目してなされた本発明は、減圧下における触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の向上を図ることを所期の目的としている。
本発明では、内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、その際の大気圧の高低及び内燃機関の運転領域に応じて、当該期間を通じて推算される触媒の酸素吸蔵能力を補正する内燃機関の制御装置を構成した。
本発明によれば、減圧下における触媒の酸素吸蔵能力の推定の精度の向上を図り得る。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関の概要を示す。本実施形態における内燃機関は、火花点火式の4ストロークガソリンエンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を具備している。各気筒1の吸気ポート近傍には、燃料を噴射するインジェクタ11を設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させたことで生じる排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
排気通路4における触媒41の上流及び下流には、排気通路を流通する排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサ43、44を設置する。空燃比センサ43、44はそれぞれ、排気ガスの空燃比に対して非線形な出力特性を有するO2センサであってもよく、排気ガスの空燃比に比例した出力特性を有するリニアA/Fセンサであってもよい。O2センサの出力特性は、理論空燃比近傍の範囲では空燃比に対する出力の変化率が大きく急峻な傾きを示し、それよりも空燃比が大きいリーン領域では低位飽和値に漸近し、空燃比が小さいリッチ領域では高位飽和値に漸近する、いわゆるZ特性曲線を描く。本実施形態では、触媒41の上流側の空燃比センサ43としてリニアA/Fセンサを想定し、下流側の空燃比センサ44としてO2センサを想定している。
本実施形態の内燃機関には、外部EGR装置2が付帯している。EGR装置2は、いわゆる高圧ループEGRを実現するものであり、排気通路4における触媒41の上流側と吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流側とを連通するEGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における排気マニホルド42またはその下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所、具体的にはサージタンク33に接続している。
本実施形態の内燃機関の制御装置たるECU(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、クランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するエンジン回転センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求負荷)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、吸気通路3(特に、サージタンク33)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の温度を示唆する冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、触媒41の上流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される空燃比信号f、触媒41の下流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される空燃比信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
出力インタフェースからは、点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、要求される燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング、要求EGR量(または、EGR率)等といった運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
本実施形態のECU0は、気筒1に充填される混合気の空燃比、ひいては気筒1から排出され触媒41へと導かれる排気ガスの空燃比をフィードバック制御する。ECU0は、まず、吸気圧及び吸気温、エンジン回転数、要求EGR率等から、気筒1に充填される新気の量を算出し、これに見合った基本噴射量TPを決定する。
次いで、この基本噴射量TPを、触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比に応じて定まるフィードバック補正係数FAFで補正する。一般に、フィードバック補正係数FAFは、空燃比センサ43、44を介して実測されるガスの空燃比と目標空燃比(平常時は理論空燃比近傍)との偏差に応じて調整され、実測空燃比が目標空燃比に対してリーンであるときには増加し、実測空燃比が目標空燃比に対してリッチであるときには減少する。
そして、内燃機関の状況に応じて定まる各種補正係数Kや、後述するインジェクタ11の性能のばらつきを吸収するための補正係数X、さらにはインジェクタ11の無効噴射時間TAUVをも加味して、最終的な燃料噴射時間(インジェクタ11に対する通電時間)Tを算定する。燃料噴射時間Tは、
T=TP×FAF×K×X+TAUV
となる。しかして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
T=TP×FAF×K×X+TAUV
となる。しかして、燃料噴射時間Tだけインジェクタ11に信号jを入力、インジェクタ11を開弁して燃料を噴射させる。
触媒41の上流側及び/または下流側の空燃比信号f、gを参照したフィードバック制御は、例えば、内燃機関の冷却水温が所定温度以上であり、燃料カット中でなく、パワー増量中でなく、内燃機関の始動から所定時間が経過し、空燃比センサ43、43が活性中、吸気圧が正常である、等の諸条件が全て成立している場合に行う。
また、本実施形態のECU0は、触媒41の最大酸素吸蔵能力を推定するとともに、推定した最大酸素吸蔵能力値を劣化判定値と比較して、当該触媒41が正常であるか異常であるかを判定するダイアグノーシスを行う。
触媒41の酸素吸蔵能力は既知の任意の手法を採用して推算することができるが、ここではその一典型例を示す。内燃機関の気筒1に空燃比リーンの混合気を供給して触媒41の酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵している状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リッチに操作するアクティブ制御を実行する。すると、上流側空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リッチを示す。これに対し、下流側空燃比センサ44の出力信号gは、上流側空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リッチを示す。上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから(または、混合気を空燃比リッチに操作してから)下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間、触媒41に吸蔵していた酸素が放出されて酸素の不足が補われるためである。
上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リッチを示してから、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示すまでの間に経過した時間をTRとおき、このTRの間に供給した燃料の総重量をGF、理論空燃比とリッチ時の空燃比との差分をΔA/FRとおくと、TRの間に触媒41中で不足した酸素量は、
(α・ΔA/FR・GF)
となる。αは、空気中に占める酸素の重量割合(≒0.23)である。
(α・ΔA/FR・GF)
となる。αは、空気中に占める酸素の重量割合(≒0.23)である。
上式は、TRの時点までに触媒41が放出した酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFは、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリッチな(14.6よりも小さい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数(エンジン回転数に比例)を乗じれば、単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TRを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リッチを示した時点での経過時間TRに基づいて、触媒41の最大酸素放出能力を算出することが可能である。この最大酸素放出能力は、最大酸素吸蔵能力と同義である。
厳密には、TRの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TRの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTRの範囲で時間積分して求めることが好ましい。また、本実施形態では、触媒31の上流にリニアA/Fセンサ11を配しており、触媒31に流入するガスの空燃比を実時間で計測することが可能である。よって、ΔA/FR(t)を理論空燃比とA/Fセンサ11を介して計測した実測空燃比との差分として、触媒31の最大酸素吸蔵能力を、TRの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt
あるいは、内燃機関の気筒1に空燃比リッチの混合気を供給して触媒41に酸素を全く吸蔵していない状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リーンに操作するアクティブ制御を実行する。すると、上流側空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リーンを示す。これに対し、下流側空燃比センサ44の出力信号gは、上流側空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リーンを示す。上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから(または、混合気を空燃比リーンに操作してから)下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間、過剰な酸素が触媒41に吸着するためである。
α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt
あるいは、内燃機関の気筒1に空燃比リッチの混合気を供給して触媒41に酸素を全く吸蔵していない状態から、気筒1に供給する混合気を意図的に空燃比リーンに操作するアクティブ制御を実行する。すると、上流側空燃比センサ43の出力信号fは即座に空燃比リーンを示す。これに対し、下流側空燃比センサ44の出力信号gは、上流側空燃比センサ43の出力信号fに遅れて空燃比リーンを示す。上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから(または、混合気を空燃比リーンに操作してから)下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間、過剰な酸素が触媒41に吸着するためである。
上流側空燃比センサ43の出力信号fが空燃比リーンを示してから、下流側空燃比センサ44の出力信号gが空燃比リーンを示すまでの間に経過した時間をTLとおき、このTLの間に供給した燃料の総重量をGF、リーン時の空燃比と理論空燃比との差分をΔA/FLとおくと、TLの間に触媒41中で過剰となった酸素量は、
(α・ΔA/FL・GF)
となる。
(α・ΔA/FL・GF)
となる。
上式は、TLの時点で触媒41が吸蔵している酸素の量を表している。供給した燃料の総重量GFはやはり、ECU0において演算することができる。即ち、一回の燃料噴射機会における燃料噴射量は、空燃比を理論空燃比よりもリーンな(14.6よりも大きい)所定値とするために必要な量であり、その噴射量に単位時間当たりの膨張行程回数を乗じれば単位時間当たりの燃料供給量となる。そして、単位時間当たりの燃料供給量に経過時間TLを乗じれば、供給した燃料の総重量GFとなる。要するに、下流側空燃比センサ44の出力信号が空燃比リーンを示した時点での経過時間TLに基づいて、触媒41の最大酸素吸蔵能力を算出することが可能である。
厳密には、TLの期間において、運転者のアクセル操作等に起因して単位時間当たりの燃料供給量(または、一回の噴射量)は増減し得る。故に、TLの期間中の供給燃料の総重量GFは、単位時間当たりの供給量gF(t)をTLの範囲で時間積分して求めることが好ましい。ΔA/FL(t)を理論空燃比とA/Fセンサ11を介して計測した実測空燃比との差分とすれば、触媒31の最大酸素吸蔵能力を、TLの期間の時間積分として求めることができる。即ち;
α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dt
触媒41のダイアグノーシスは、触媒41の劣化の兆候を感知したことを契機として実施する。その兆候の例としては、内燃機関の運転中に刻々と変動する下流側空燃比センサ44の出力電圧gの振動の周波数が閾値よりも高く(または、振動の周期が閾値よりも短く)なったことや、上流側空燃比センサ43の出力電圧fの変動と下流側空燃比センサ44の出力電圧gの変動との時間差が閾値よりも短くなったこと等が挙げられる。
α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dt
触媒41のダイアグノーシスは、触媒41の劣化の兆候を感知したことを契機として実施する。その兆候の例としては、内燃機関の運転中に刻々と変動する下流側空燃比センサ44の出力電圧gの振動の周波数が閾値よりも高く(または、振動の周期が閾値よりも短く)なったことや、上流側空燃比センサ43の出力電圧fの変動と下流側空燃比センサ44の出力電圧gの変動との時間差が閾値よりも短くなったこと等が挙げられる。
但し、触媒41のダイアグノーシスの実施は、内燃機関の冷却水温が所定以上、内燃機関の負荷、気筒1に充填される吸気量、エンジン回転数、空燃比フィードバック制御による補正係数FAF及び触媒41の温度がそれぞれ所定範囲内、等といった諸条件がおしなべて成立していることを前提とする。
また、触媒41のダイアグノーシスは、一トリップ(イグニッションスイッチがONに操作されて内燃機関を始動してから、イグニッションスイッチがOFFに操作されて内燃機関を停止するまでの期間)毎に少なくとも一回実施することが好ましい。
図2に示しているように、アクティブ制御では、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリッチ判定値に到達した、即ち出力gがリーンからリッチへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリーン側の所定空燃比に設定し、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリーン化する。そして、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TL、即ち出力gが再度リーンへと切り替わるまでの経過時間TLを計測する。リッチ判定値とリーン判定値とは、相異なる値であってもよく、同一の値であってもよい。
並びに、下流側空燃比センサ44の出力gがリッチからリーンへと切り替わったタイミングで、制御目標空燃比をリッチ側の所定空燃比に設定し、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが当該制御目標に対応した値をとるように燃料噴射量を補正する。これにより、触媒41に流入するガスの空燃比を強制的にリッチ化する。そして、上流側空燃比センサ43の出力電圧fが前記制御目標に対応した値に到達してから、下流側空燃比センサ44の出力電圧gが所定のリーン判定値に到達するまでの間の経過時間TR、即ち出力gが再度リッチへと切り替わるまでの経過時間TRを計測する。
ECU0は、酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵していた触媒41がその酸素の全てを放出するのに要した時間TR、及び、酸素を吸蔵していない触媒41が酸素吸蔵能力一杯まで酸素を吸蔵するのに要した時間TLをそれぞれ一回以上計測し、計測したTR、TLを基に最大酸素吸蔵能力(α・ΔA/FR・GF)、(α・ΔA/FL・GF)を算出して、それらの平均値を求める。
触媒41が劣化したか否かの判断は、当該触媒41の最大酸素吸蔵能力(の複数回の推算値の平均)を判定閾値を比較することにより行う。即ち、最大酸素吸蔵能力が判定閾値未満であれば、当該触媒41は既に劣化しており十分な性能を発揮できないものと診断される。触媒41が劣化しているとの判断を下したECU0は、触媒41の異常の旨を示す情報(ダイアグノーシスコード)をメモリに記憶保持するとともに、触媒41の異常の旨を運転者の視覚または聴覚に訴えかける態様で出力して報知する。例えば、コックピット内のエンジンチェックランプを点灯させたり、ディスプレイに表示させたり、警告音を発したりして、触媒41の点検及び交換を促す。
車両が高地を走行しているとき等、大気圧が標準大気圧よりも低い状況下では、空燃比センサ43、44の出力信号f、gに依拠して推算される触媒41の最大酸素吸蔵能力が、実際の触媒41の能力よりも目減りして推算される。そのような状況下で触媒41のダイアグノーシスの契機が訪れた場合、未だ必要十分な性能を有している触媒41であるにもかかわらず、酸素吸蔵能力の推算値が判定閾値を下回り、劣化した触媒41であると誤判定してしまうおそれがある。
そこで、本実施形態のECU0は、大気圧センサの出力信号hを参照して現在の大気圧をセンシングしておき、触媒41のダイアグノーシスを実施する際の大気圧の高低に応じて、判定閾値と比較するべき触媒41の酸素吸蔵能力の推算値に補正を加える。
即ち、触媒41の酸素吸蔵能力を推算したときの大気圧が低いほど、その推算値をより大きく嵩上げする。酸素吸蔵能力の推算値に補正係数を乗じることで補正を施す場合には、大気圧が低いほど当該補正係数を高く設定する。
ところで、ダイアグノーシスの際に推算される触媒41の酸素吸蔵能力は、その推算中に遷移した内燃機関の運転領域[エンジン回転数,負荷(または、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される新気量若しくは燃料噴射量)]による影響を受ける。具体的には、高回転域や高負荷域に遷移した場合に、触媒41の酸素吸蔵能力が実際の触媒の能力よりも低く見積もられる。図3に、同一の触媒41に対する酸素吸蔵能力の推算値と、その推算を行ったときのエンジン回転数との関係を例示する。図3から明らかなように、触媒41の酸素吸蔵能力の推算中のエンジン回転数が高いほど、及び/または、内燃機関の負荷が増大するほど、酸素吸蔵能力の推算値が低下する傾向にある。
そして、高地では、平地とは異なる運転領域を通過することが間々あり、そのような運転領域に遷移することで触媒41の酸素吸蔵能力の推算値が不当に小さくなって、上述の大気圧に応じた嵩上げ補正を加味したとしてもこれが判定閾値を下回ってしまい、劣化してない触媒41を劣化した触媒41であると誤判定する懸念がある。
この誤判定を回避するべく、本実施形態のECU0は、触媒41の酸素吸蔵能力の推算中の内燃機関の運転領域のパラメータであるエンジン回転数及び/または機関負荷(または、サージタンク33内吸気圧、気筒1に充填される新気量若しくは燃料噴射量)をメモリに記憶保持するとともに、その推算によって得られた酸素吸蔵能力値に、内燃機関の運転領域に応じた補正を加えることとしている。
即ち、触媒41の酸素吸蔵能力を推算したときのエンジン回転数が高いほど、及び/または、内燃機関の負荷が大きいほど、酸素吸蔵能力の推算値をより大きく嵩上げする。酸素吸蔵能力の推算値に補正係数を乗じることで補正を施す場合には、エンジン回転数及び/または機関負荷が大きいほど当該補正係数を高く設定する。
総じて言えば、触媒41の酸素吸蔵能力の推算値(α・ΔA/FR・GF、α∫{ΔA/FR(t)・gF(t)}dt、α・ΔA/FL・GF、α∫{ΔA/FL(t)・gF(t)}dtまたはそれらの平均値)をCmaxとおき、その推算値を算出したときの大気圧の高低に応じた補正係数をK1とおき、同推算値を算出したときの内燃機関の運転領域に応じた補正係数K2とおくと、触媒41のダイアグノーシスのために判定閾値と比較するべき酸素吸蔵能力値は、
K1・K2・Cmax
と表される。ECU0のメモリには予め、大気圧と補正係数K1との関係を規定したマップデータ、並びに、エンジン回転数及び/または機関負荷と補正係数K2との関係を規定したマップデータがそれぞれ格納されている。ECU0は、酸素吸蔵能力の推算値Cmaxを算出したときの大気圧をキーとして前者のマップを検索することで補正係数K1を知得するとともに、同推算値Cmaxを算出したときのエンジン回転数及び/または機関負荷をキーとして後者のマップを検索することで補正係数K2を知得する。
K1・K2・Cmax
と表される。ECU0のメモリには予め、大気圧と補正係数K1との関係を規定したマップデータ、並びに、エンジン回転数及び/または機関負荷と補正係数K2との関係を規定したマップデータがそれぞれ格納されている。ECU0は、酸素吸蔵能力の推算値Cmaxを算出したときの大気圧をキーとして前者のマップを検索することで補正係数K1を知得するとともに、同推算値Cmaxを算出したときのエンジン回転数及び/または機関負荷をキーとして後者のマップを検索することで補正係数K2を知得する。
本実施形態では、内燃機関の排気通路4に装着される排気ガス浄化用の触媒41の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間TR、TLの長さを計測することを通じて、触媒41の酸素吸蔵能力Cmaxの推定を行うものであり、その際の大気圧の高低及び内燃機関の運転領域に応じて、当該期間TR、TLを通じて推算される触媒41の酸素吸蔵能力Cmaxを補正する内燃機関の制御装置0を構成した。
本実施形態によれば、減圧下における触媒41の酸素吸蔵能力の推定の精度をより一層向上させることができ、未だ必要十分な性能を有している触媒41を劣化した触媒であると誤判定したり、あるいは逆に劣化した触媒41を劣化していない触媒41であると誤判定したりするリスクが非常に小さくなる。誤判定のリスクの低減は、触媒41に使用する貴金属の量を減らすことにもつながり、コストの低廉化に資する。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態には限られない。例えば、上記実施形態では、触媒41の酸素吸蔵能力の推算値Cmaxに大気圧の高低に応じた補正を加味することとしていたが、これとともに、またはこれに代えて、以下に述べるような手立てを講じることも考えられる。
即ち、内燃機関の制御装置たるECU0が、触媒41のダイアグノーシスを実施する際の大気圧の高低に応じて、空燃比センサ43の出力信号fと触媒41に流入するガスの実際の空燃比との関係特性を変更することとする。より具体的に述べると、ECU0のメモリには予め、大気圧と大気中の酸素分圧との関係を規定したマップデータ、並びに、大気中の酸素分圧と空燃比センサ43の入出力特性との関係を規定したマップデータが格納されている。いわば、大気圧の大きさ毎に異なる、複数の空燃比センサ43の入出力特性を記憶保持している。ここで、空燃比センサ43の入出力特性とは、空燃比センサ43の出力信号fの電圧値を触媒41に流入するガスの空燃比の値に換算するためのマップデータまたは関数式である。
ECU0は、現在の大気圧をキーとして前者のマップを検索し、現在の大気中の酸素分圧を知得する。さらに、その酸素分圧をキーとして後者のマップを検索し、酸素分圧に対応した空燃比センサ43の入出力特性を選出する。このようにして、触媒41に流入するガスの空燃比の計測に用いる空燃比センサ43の入出力特性を切り替える。
その上で、大気圧に応じて選出した入出力特性に照らし合わせて、空燃比センサ43の出力信号fの電圧を、触媒41に流入するガスの空燃比に換算する。これにより、減圧下においても、触媒41に流入するガスの空燃比を精度よく知得することが可能となる。その空燃比を以て上述のΔA/FRまたはΔA/FLを算定し、触媒41の酸素吸蔵能力Cmaxを推算すれば、触媒41のダイアグノーシスにおける誤判定のリスクを著しく低減できる。
このような手立てによっても、判定閾値と比較するべき酸素吸蔵能力Cmaxを大気圧の高低に応じて補正することが可能である。
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関の制御に適用することができる。
0…制御装置(ECU)
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒上流の空燃比センサ
44…触媒下流の空燃比センサ
f…触媒上流の空燃比信号
g…触媒下流の空燃比信号
h…大気圧信号
1…気筒
11…インジェクタ
4…排気通路
41…触媒
43…触媒上流の空燃比センサ
44…触媒下流の空燃比センサ
f…触媒上流の空燃比信号
g…触媒下流の空燃比信号
h…大気圧信号
Claims (1)
- 内燃機関の排気通路に装着される排気ガス浄化用の触媒の上流側の空燃比を強制的に変動させてから下流側の空燃比が変動するまでの期間を利用して触媒の酸素吸蔵能力の推定を行うものであり、
その際の大気圧の高低及び内燃機関の運転領域に応じて、当該期間を通じて推算される触媒の酸素吸蔵能力を補正する内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014197616A JP2016070106A (ja) | 2014-09-26 | 2014-09-26 | 内燃機関の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014197616A JP2016070106A (ja) | 2014-09-26 | 2014-09-26 | 内燃機関の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016070106A true JP2016070106A (ja) | 2016-05-09 |
Family
ID=55866398
Family Applications (1)
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JP2014197616A Pending JP2016070106A (ja) | 2014-09-26 | 2014-09-26 | 内燃機関の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2016070106A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2018003606A (ja) * | 2016-06-27 | 2018-01-11 | トヨタ自動車株式会社 | 内燃機関の排気浄化システム |
-
2014
- 2014-09-26 JP JP2014197616A patent/JP2016070106A/ja active Pending
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