JP2023028771A - イリジウム合金 - Google Patents

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健太 寺井
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俊亮 竹谷
Toshiaki Takeya
颯人 安原
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Abstract

【課題】耐久性の高いイリジウム合金を提供する。【解決手段】イリジウム、白金、及びタンタルを含むイリジウム合金であって、白金の含有量が5重量%から30重量%までの範囲内であり、タンタルの含有量が0.3重量%から5重量%までの範囲内である。【選択図】なし

Description

本開示は、イリジウム合金に関する。
イリジウムに例えば白金等を含有させたイリジウム合金は、耐熱性や耐食性に優れた材料として知られており、様々な分野で利用されている。例えば下記特許文献1には、所定量の白金と、所定量のアルカリ土類金属元素とをイリジウム合金に含有させることで、当該イリジウム合金を高温環境下で長期間に亘り安定的に使用できるようになる旨記載されている。
特開2010-138418号公報
近年では、イリジウム合金に対して求められる耐久性の要求が更に高くなってきている。例えば、点火プラグの分野においては、内燃機関の高出力化や燃費改善等を目的として、点火プラグの高電流化や高電圧化が進んでいる。このため、放電部の材料であるイリジウム合金には、従来よりも高いレベルでの耐久性が求められるようになってきており、上記特許文献に記載されているイリジウム合金では、その要求に今後は応えられなくなる可能性がある。尚、点火プラグ以外の分野においても、イリジウム合金に求められる耐久性の水準は今後更に高くなっていくものと考えられる。
本開示は、耐久性の高いイリジウム合金を提供することを目的とする。
本開示に係るイリジウム合金は、イリジウム、白金、及びタンタルを含むイリジウム合金であって、白金の含有量が5重量%から30重量%までの範囲内であり、タンタルの含有量が0.3重量%から5重量%までの範囲内である。
上記構成のイリジウム合金では、白金及びタンタルの含有量を上記範囲内とすることで、高温の酸化雰囲気(例えば大気)に曝された際における耐久性を、従来に比べて高めることができる。
本開示によれば、耐久性の高いイリジウム合金が提供される。
以下、本実施形態について説明する。
第1の実施形態に係るイリジウム合金は、イリジウム(Ir)に対して所定量の白金(Pt)及び所定量のタンタル(Ta)を含有させたものである。イリジウム合金における白金の含有量は、5重量%から30重量%までの範囲内とすることが好ましい。また、イリジウム合金におけるタンタルの含有量は、0.3重量%から5重量%までの範囲内とすることが好ましい。
イリジウム合金に白金を含有させると、当該イリジウム合金を高温の酸化雰囲気(例えば大気)に曝した際に、結晶粒界からのイリジウムの酸化揮発が抑制され、その結果として当該イリジウム合金の耐酸化消耗性が著しく改善される。尚、イリジウム合金における白金の含有量を5重量%未満とした場合には、上記の効果が十分には発揮されないことを本発明者らは確認している。
一方、イリジウム合金における白金の含有量を30重量%よりも大きくした場合には、イリジウム合金の耐酸化消耗性は更に高くなる。しかしながら、この場合にはイリジウム合金の融点及び再結晶温度がいずれも低下するので、イリジウム合金を安定的に使用可能な温度範囲の上限が低下してしまう。
以上のようであるから、本実施形態に係るイリジウム合金では、先に述べたように、白金の含有量を5重量%から30重量%までの範囲内と規定している。
イリジウム合金にタンタルを含有させると、固溶硬化により強度が向上する。また再結晶温度も上昇する。イリジウム合金の再結晶温度が上昇するので、高温時においてもイリジウム合金の微細組織が維持され、結晶粒の脱落が生じにくくなる。また、再結晶温度の上昇に伴い、高温時におけるイリジウム合金の軟化が抑制される。それらの結果としてイリジウム合金の耐久性が向上する。尚、イリジウム合金におけるタンタルの含有量を0.3重量%未満とした場合には、上記の効果が十分には発揮されないことを本発明者らは確認している。
一方、イリジウム合金におけるタンタルの含有量を5重量%よりも大きくした場合には、イリジウム合金の密度が低下する。このため、例えば、当該イリジウム合金で点火プラグの放電部を構成した場合には、火花放電にともなう耐消耗性が低下してしまうことを本発明者らは確認している。また、イリジウム合金におけるタンタルの含有量を5重量%よりも大きくすると、イリジウム合金の固溶硬化が過度に生じる結果、塑性変形能が低下して、イリジウム合金の加工が困難になるという問題も生じる。更に、イリジウム合金に含まれる他の元素(例えば、後述のコバルトやニッケル等)の酸化が生じやすくなり、耐酸化消耗性が低下するという問題も生じ得る。
以上のようであるから、本実施形態に係るイリジウム合金では、先に述べたように、タンタルの含有量を0.3重量%から5重量%までの範囲内と規定している。尚、イリジウム合金におけるタンタルの含有量は、0.5重量%以上にするとより好ましく、0.7重量%以上にすると更に好ましいことを本発明者らは確認している。
第2の実施形態として、上記の第1の実施形態に係るイリジウム合金に対し、コバルト及びニッケルのうちの何れか一方もしくは両方の元素により構成された添加材料を、イリジウムの一部と置き換える形で更に含ませることとしてもよい。上記添加材料は、コバルト元素のみを含む材料であってもよく、ニッケル元素のみを含む材料であってもよく、コバルト元素及びニッケル元素を任意の割合で混合させた材料であってもよい。いずれの場合であっても、イリジウム合金における上記添加材料の含有量は、1.5重量%までの範囲内とすることが好ましい。
イリジウム、白金、及びタンタルを含むイリジウム合金に対して、上記添加材料を1.5重量%までの範囲内で含有させると、先に述べた固溶硬化が促進され、更に強度を向上させることができる。また、当該イリジウム合金を高温の酸化雰囲気(例えば1200℃以上の大気)に曝した際には、上記添加材料の酸化物が生成され、イリジウム合金の粒界に分布するようになる。この酸化物が保護材として機能し、イリジウムの外方拡散やそれに続く酸化揮発が抑制されるので、イリジウム合金の耐酸化消耗性は更に高くなる。
一方、イリジウム合金における上記添加材料の含有量を1.5重量%よりも大きくした場合には、上記添加材料の酸化物が過剰に生成され、イリジウム合金の耐酸化消耗性が逆に低下してしまうことを本発明者らは確認している。また、この場合にはイリジウム合金の融点が低下するため、イリジウム合金を安定的に使用可能な温度範囲の上限が低下してしまうという問題も生じる。
以上のようであるから、本実施形態に係るイリジウム合金では、先に述べたように、上記添加材料の含有量を1.5重量%までの範囲内と規定している。
尚、イリジウム合金における上記添加材料の含有量が1.5重量%までの範囲内であったとしても、タンタルの含有量と上記添加材料の含有量との合計が5重量%を超えると、イリジウム合金の加工性が低下してしまうことを本発明者らは確認している。これは、タンタルの添加に伴う加工硬化が上記添加材料によって促進され過ぎてしまうことによるものと考えられる。従って、イリジウム合金における、タンタルの含有量と上記添加材料の含有量との合計は、5重量%までの範囲内とすることが好ましい。
上記いずれの実施形態においても、イリジウム合金は第2相を持たない単相の固溶体となる。このため、展延性が良好で、公知の加工方法(例えば温間加工や熱間加工等)を用いて様々な形状・寸法に塑性加工することができる。また、機械加工や溶接も容易に行うことができる。
本発明者らは、上記の各実施形態に含まれる複数のイリジウム合金の試験片を「実施例」として作成し、上記の各実施形態には含まれない複数のイリジウム合金の試験片を「比較例」として作成し、それぞれの評価を行った。表1には、それぞれの試験片について、密度等のパラメータと、加工性等の評価結果とが示されている。
Figure 2023028771000001
表1における「番号」の欄には、それぞれの試験片に対応する固有の番号が示されている。実施例については1から32までの番号が付されており、比較例については1から6までの番号が付されている。表1における「密度」の欄には、それぞれの試験片の密度が「g/cm」の単位で示されている。表1における「含有量」の欄には、それぞれの試験片におけるイリジウム(Ir)、白金(Pt)、タンタル(Ta)、ニッケル(Ni)、及びコバルト(Co)の含有量が、それぞれ「重量%」の単位で示されている。これらのうちニッケル及びコバルトの全体は、上記の「添加材料」に該当する。
<試験片の作成方法>表1に示されるそれぞれの試験片を作成するにあたっては、イリジウム粉末、白金粉末、タンタル粉末、ニッケル粉末、及びコバルト粉末のそれぞれを用意した。続いて、これらの材料粉末を、各試験片に対応した割合で混合して混合粉末を作成した。
その後、各混合粉末を、一軸加圧成型機を用いて成形して圧粉体とし、得られた圧粉体をアーク溶解法により溶解させることで、各試験片の元となるインゴットを作成した。続いて、それぞれのインゴットを1500℃以上の高温で熱間鍛造し、幅15mmの角棒とした上で、それぞれの角棒を直径0.5mmの線材に加工してこれを試験片とした。尚、角棒から線材への加工は、1000℃から1400℃までの温度環境下で角棒を溝圧延し、これにダイス伸線加工を施すことにより行った。
以上のような方法で複数の試験片を作成した後、本発明者らは、それぞれの試験片について様々な評価を行った。表1における「加工性」、「固相点」、「耐酸化消耗性」、「再結晶温度」、「高温強度」、及び「総合評価」の欄には、各試験片の評価結果が示されている。各項目の評価方法等の詳細は以下の通りである。
<加工性の評価方法>加工性は、上記のような角棒から線材への加工ができたかどうかで評価した。加工の途中で割れが発生し、線材が得られなかったものについては加工性を「×」と評価し、それ以外のもの、すなわち線材が得られたものについては加工性を「〇」と評価した。尚、加工性が「×」と評価されたものについては、試験片が得られなかったため、加工性以外の項目については評価を行っていない。
<固相点の評価方法>各試験片を、電気炉によりアルゴン雰囲気の中で2100℃まで昇温させ、昇温の前後における外観及び断面の変化を目視で観察した。外観および断面に変化が無かったものについては、固相点が2100℃以上であると推定し、「〇」と評価した。外観および断面に溶融の痕跡が認められたものについては、固相点が2100℃未満であると推定し、「×」と評価した。
<耐酸化消耗性の評価方法>各試験片を長さ0.8mmとなるように切り出して、これを電気炉内で加熱して、所定温度で20時間保持した。電気炉内での加熱は大気雰囲気中で行った。また、上記の所定温度として、1000℃及び1200℃の2つの条件で試験を行った。加熱前の試験片の表面積をS(単位:mm)とし、加熱前の試験片の質量をM0(単位:mg)とし、加熱後の試験片の質量をM1(単位:mg)としたときに、ΔM=(M1-M0)/Sの式で算出される質量変化ΔM(単位:mg/mm)を、各試験片の耐酸化消耗性を示す指標として用いた。尚、試験片の表面積S(mm)は、試験片の寸法から算出した。
1000℃まで加熱した際における耐酸化消耗性については、ΔMの値が-0.25以上であれば「◎」(特に良好)と評価し、ΔMの値が-0.25未満であれば「〇」(良好)と評価した。
1200℃まで加熱した際における耐酸化消耗性については、ΔMの値が-0.35以上であれば「◎」(特に良好)と評価し、ΔMの値が-0.35未満であれば「〇」(良好)と評価した。
<再結晶温度の評価方法>各試験片を所定温度まで加熱する熱処理を行い、熱処理後に再結晶が生じたか否かを確認することで、各試験片について再結晶が生じる温度(つまり再結晶温度)を測定した。再結晶温度が1150℃を超えていたものについては「◎」と評価し、再結晶温度が1050℃を超えており且つ1150℃以下であったものについては「〇」と評価し、再結晶温度が1050℃以下であったものについては「△」と評価した。
<高温強度の評価方法>高温強度の評価は、各試験片について高温での引張試験を行い、得られた引張強さ(引張強度)の値に基づいて行った。尚、引張試験の対象である試験片としては、先に述べた線材である試験片に替えて、これと同じ材料の板材からワイヤ放電加工により切り出したものを用いた。試験片の切り出しは、平行部の断面が0.5mm×0.5mmの正方形となり、平行部の長さが3mmとなるように行った。引張試験は、試験片の温度が1200℃、大気雰囲気中、クロスヘッドスピードが5mm/分という条件で行った。表1に示される高温強度の測定値は、得られた引張強度の値を「MPa」の単位で示すものである。
高温強度は、測定された引っ張り強さが550MPaを超えていたのものについては「◎」と評価し、引っ張り強さが250MPを超えており且つ550MPa以下であったものについては「〇」と評価し、引っ張り強さが250MP以下であったものについては「△」と評価した。
<総合評価>以上の各評価項目のうち、耐酸化消耗性、再結晶温度、及び高温強度の3項目を総合的に評価した。評価が「◎」の項目を3点、評価が「〇」の項目を2点、評価が「△」の項目を1点、評価が「×」の項目を0点とした上で、各評価項目の点数の合計に基づいて総合評価を行った。点数の合計が12の試験片については総合評価を「A」とし、点数の合計が9から11の試験片については総合評価を「B」とし、点数の合計が8以下の試験片については総合評価を「C」とした。加工性が「×」と評価された試験片の総合評価は「D」とした。
表1に示されるように、実施例の試験片については、いずれも総合評価がA又はBであり、耐久性の高い良好なイリジウム合金であることが確認された。一方、比較例の試験片については、いずれも総合評価がC又はDであり、実施例に比べると耐久性や加工性が劣ることが確認された。
表1に示されるように、実施例の試験片はいずれも、その密度が、21.5g/cm以上となっている。イリジウム合金におけるイリジウム、白金、タンタル、及び上記添加材料のそれぞれの含有量を先に説明した範囲内とすることで、結果的に、好ましい密度の範囲が21.5g/cm以上になったものと考えられる。上記各元素の含有量を第1及び第2の実施形態の範囲内で変化させて、表1に示されるものとは異なる実施例を作成した場合においても、耐久性が十分なイリジウム合金については、その密度が21.5g/cm以上であったことを本発明者らは確認している。
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。

Claims (3)

  1. イリジウム、白金、及びタンタルを含むイリジウム合金であって、
    前記白金の含有量が5重量%から30重量%までの範囲内であり、
    前記タンタルの含有量が0.3重量%から5重量%までの範囲内である、イリジウム合金。
  2. コバルト及びニッケルのうちの何れか一方もしくは両方の元素により構成された添加材料を更に含み、
    前記添加材料の含有量は1.5重量%までの範囲内である、請求項1に記載のイリジウム合金。
  3. 前記タンタルの含有量と前記添加材料の含有量との合計は、5重量%までの範囲内である、請求項2に記載のイリジウム合金。
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