JP4735963B2 - 点火プラグ用電極材料 - Google Patents
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Description
従来から本用途の点火プラグ用電極材料には耐酸化性、耐火花損耗性、高温強度等が要求されるため種々のNi基合金が広く使用されている。また、最近では、Ni基合金単体の電極を用いた点火プラグ以外に、さらに高温に耐えられるように、Ni基合金からなる電極の放電部分に貴金属を接合し、寿命を改善した点火プラグや、Ni基合金からなる電極母材内に芯材として熱伝導の良好なAgやCuを設けたものも多く使用されてきている。
具体的には、低CrのNi基合金において、耐酸化性を補うためにSi、Mn、Al等の元素を1種または2種以上、あるいはYや希土類元素の添加を行う提案が、特開昭63−188033号(特許文献1参照)、特開平2−34734号(特許文献2参照)、特開平2−34735号(特許文献3参照)、特開平4−45239号(特許文献4参照)、特開平9−235637号(特許文献5参照)に提案されている。
耐酸化性を補うための合金元素量が多くなると、熱伝導率が低いことによって電極温度が下がりにくくなり、結果的に高温にさらされることになって酸化しやすくなったり、融点低下による溶損が影響する火花損耗を起こし易くなる恐れがあった。
最近の内燃機関の高性能化及び燃焼効率向上、燃焼機構の変換等による高負荷化により、点火プラグ用合金に対する環境は更に苛酷になってきており、上述した合金では必ずしも満足できる特性が得られなくなってきた。
本発明の目的は、上記事情に鑑みて内燃機関の高負荷化、高性能化に対応して、耐酸化性、耐火花損耗性に優れ、さらに製造性も優れた特性を有する点火プラグ用電極材料を提供することである。
本発明の好ましい組成の範囲は、質量%でC:0.05%以下(0を含む)、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.3%以下(0を含む)、Al:0.3%以下(0を含む)、HfとReの1種または2種を合計で0.01〜0.5%である。
また、本発明の電極材料の室温での熱伝導率は35W/(m・K)以上であることが望ましく、更に、本発明の電極材料の昇温過程における融点は1420℃以上であることが望ましい。
本発明者の検討によれば、熱伝導率を高くすることにより、点火プラグとしての使用時に材料温度を低くでき、結果として耐酸化性を向上できる。また、融点低下を防止することにより、点火プラグとしての使用時に火花損耗を起こし難くすることができる。
Cは、加工性を良好にするには低い方が良く、0.1%を超えると焼鈍後の硬さが上昇し、冷間加工性が低下するため0.1%以下に限定する。Cの望ましい範囲は0.05%以下であり、0%(無添加レベル以下)であっても差し支えない。
Siは、耐酸化性向上に非常に有効な元素である一方、熱伝導率、融点を低下させる元素であるため、良好な耐酸化性を得るために、熱伝導率、融点を大きく低下させない範囲で積極的に添加する。0.3%より少ないと耐酸化性の向上効果が少なく、一方、3.0%を超えて添加すると融点、熱伝導率の低下が大きくなることから、Siは0.3〜3.0%とした。好ましいSiの下限は0.5%であり、また、好ましいSiの上限は1.5%である。
Mnも、耐酸化性を向上させる元素である一方、熱伝導率、融点を低下させる元素であるが、Siをある程度含有する場合には、高い熱伝導率と融点を確保するためにMnは低く抑える必要がある。0.5%以上添加すると融点の低下が大きくなることから、Mnは0.5%未満とした。さらに好ましくはMnは0.2%以下がよく、0%(無添加レベル以下)であっても差し支えない。
なお、本発明においては、Crを0.5%未満に抑えることによる耐酸化性の不足分を、Siの少量添加に加えてHfとReの1種または2種を添加することで補うものである。Crの望ましい範囲は0.3%以下であり、0%(無添加レベル以下)であっても差し支えない。
Alは、耐酸化性を高める元素である一方、熱伝導率を大きく低下させる元素であるため、Siをある程度含有する場合には、Alは低く抑える必要がある。Alは0.3%より多く添加すると熱伝導率が大きく低下することから、Alは0.3%以下とした。好ましくは、0.1%以下がよく、0%(無添加レベル以下)であっても差し支えない。
本発明で規定したHf、Re以外でも耐酸化性を向上させる元素として、例えばREMやYもあるが、Hf、ReはNi中の固溶度が大きく、含有させやすいという利点があり、成分調整が容易である。そのため、本発明ではHfとReの1種または2種を必須で含有する。
本発明において、Hf及びReの含有量は、HfとReの1種または2種を0.005%以上含有させることが必要である。しかし、HfとReは高価な元素であり、その合計が1.0%を超えると材料が高価になるので好ましくないだけでなく、多量添加は融点の低下をまねく。そのため、Hf及びReは、1種または2種を合計で0.005〜1.0%とした。HfおよびReの好ましい下限は、1種または2種の合計で0.01%であり、またHfおよびReの好ましい上限は、1種または2種の合計で0.5%である。
なお、本発明の点火プラグ用電極材料の高温での強度、延性、耐粒界酸化性を高め耐場合、粒界強化元素として必要に応じて、B:0.015%以下、Ti:0.50%以下、Nb:1.0%以下、Zr:0.20%以下の範囲で1種または2種以上を添加するのが有効である。
また、Ca及びMgは脱酸、脱硫元素として合金の清浄度を高め、高温での延性を改善することから、必要に応じてCa:0.20%以下、Mg:0.05%以下の範囲で添加するのが有効である。
熱伝導率は、加熱した点火プラグ電極の降温に影響し、先端部分が到達する温度を左右する重要な特性の一つであり、高い方が望ましい。
熱伝導率は合金元素の増加につれて低下する傾向があるので、熱伝導率を高く維持するためには合金元素の添加量を抑制する必要がある。一方、耐酸化性を向上させるのは、耐酸化性向上効果のある合金元素を多く添加することが望ましい。
したがって、良好な耐酸化性を確保しつつ、高い熱伝導率を維持するには、本発明の成分範囲の規定のとおり、合金元素の総量を抑制する中で耐酸化性に効果のある元素を適切に選択すること、熱伝導率を低下させにくい合金元素を選択することが必要である。
熱伝導率を高くすることで、点火プラグ電極の温度が下がるので、酸化に対しても有利となる。上記の合金成分の規定範囲内で、効果的な合金元素の選択により、熱伝導率は、点火プラグ電極の温度を低くすることに効果のある35W/(m・K)以上に調整することができる。さらに適切な合金元素の選択により、40W/(m・K)以上に調整することが望ましい。
したがって、良好な耐酸化性を確保しつつ、高い融点を維持するには、本発明の成分範囲の規定のとおり、合金元素の総量を抑制する中で耐酸化性に効果のある元素を適切に選択すること、融点を低下させにくい合金元素を選択することが必要である。
上記の合金成分の規定範囲内で、効果的な合金元素の選択により、融点は、点火プラグ電極の耐火花損耗性を向上させることに効果のある1420℃以上に調整することができる。
真空溶解で10kg鋼塊を作製し、均質化熱処理後、熱間加工を行い、熱間加工性を確認するとともに、30mm角の棒材を作製した。また、一部、冷間加工を行い、加工性を確認した。化学組成を表1に示す。
試料No.1〜8は本発明合金、試料No.21〜23は比較合金である。これらの合金に、さらに800℃で1hの焼鈍を行った後、以下に示す各試験の試料とした。
表2に得られた試料の焼鈍後の硬さ、熱伝導率、融点、耐酸化試験後の増量、スケール剥離量を測定した結果を示す。なお、耐酸化試験は試料を800、900、1000℃の大気中にそれぞれ100hr暴露して行った。また、熱伝導率は25℃及び900℃における値を示したものである。
一方、Siが本発明の規定量を超えて高い試料No.21は融点が1420℃より低く、十分な耐火花損耗性が得られないと考えられる。Cr、Alが本発明の規定量を超えて高い試料No.22は、25℃での熱伝導率が30W/(m・K)より低く、酸化スケールの剥離も多くなっており、点火プラグ電極に用いた場合に温度上昇が大きくなり、酸化が起こりやすいと考えられる。
また、Hf、Reのいずれも添加していない試料No.23は、熱伝導率、融点は高いものの、高温、特に900、1000℃での酸化増量、剥離スケール量が多く、点火プラグ電極材に必要な耐酸化性が十分得られないものと考えられる。
Claims (4)
- 質量%でC:0.1%以下(0を含む)、Si:0.3〜3.0%、Mn:0.5%未満(0を含む)、Cr:0.5%未満(0を含む)、Al:0.3%以下(0を含む)、HfとReの1種または2種を合計で0.005〜1.0%、残部はNi及び不可避不純物からなることを特徴とする点火プラグ用電極材料。
- 質量%でC:0.05%以下(0を含む)、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.2%以下(0を含む)、Cr:0.3%以下(0を含む)、Al:0.3%以下(0を含む)、HfとReの1種または2種を合計で0.01〜0.5%、残部はNi及び不可避不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の点火プラグ用電極材料。
- 室温での熱伝導率が35W/(m・K)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の点火プラグ用電極材料。
- 融点が1420℃以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の点火プラグ用電極材料。
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