JP2023028077A - ハイブリッド車両における変速制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイブリッド車両における走行モードもしくは変速段を設定するドグクラッチをパーキング時においても確実に係合させる。【解決手段】第1ドグクラッチおよび第2ドグクラッチの係合および解放の制御を行うコントローラを有し、コントローラは、ハイブリッド車両が制動されてパーキングポジションが選択されていることを判断(ステップS1)し、パーキングポジションが選択されていることの判断が成立した場合に第1ドグクラッチおよび第2ドグクラッチを係合させる固定段設定制御を実行し(ステップS6)、かつモータによって第1ドグクラッチと第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方にトルクを付与して第1ドグクラッチと第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方に相対回転を生じさせて係合を促進するアシスト制御を実行する(ステップS9,S14,S15)。【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関とモータとを駆動力源とするハイブリッド車両における変速を制御する装置に関し、特にドグクラッチを係合あるいは解放することにより走行モードもしくは変速段を切り替える変速を制御する装置に関するものである。
車両用の駆動力源として使用されている内燃機関(以下、エンジンと記す。)は、大きいトルクを出力できるかわりに、排ガス(温室効果ガス)を生じてしまい、またエネルギ効率の良い運転点が限られるなどの不都合がある。また、電気自動車の駆動力源であるモータは、排ガスを生じず、またエネルギ回生を行うことができ、さらには低回転数での出力トルクが大きいなどの利点がある半面、回転数が増大するのに伴って出力トルクが低下し、また出力トルクの増大に伴って体格が大きくなるなどの不都合がある。これらエンジンとモータとを動力源とするハイブリッド車両では、エンジンとモータとでそれぞれの不都合な点を補い、排ガスを抑制し、またエネルギ効率を向上させることができる。この種のハイブリッド車両の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載されたハイブリッド車両は、エンジンが出力したトルクを出力側と第1モータ・ジェネレータ側とに分割する動力分割用の第1の遊星歯車機構に加えて、第2の遊星歯車機構を備え、これら二つの遊星歯車機構によって複合遊星歯車機構を構成して、車速とエンジン回転数との関係として表現できる走行モードを複数設定できるように構成されている。具体的には、第1遊星歯車機構のキャリヤにエンジンが連結されているとともにそのサンギヤに発電機能のあるモータである第1モータ・ジェネレータが連結され、さらに第1遊星歯車機構のリングギヤが、第2遊星歯車機構のキャリヤに連結されている。第2遊星歯車機構のリングギヤが出力要素となっていてそのリングギヤから駆動輪に対してトルクを出力するようになっている。また、第2遊星歯車機構のサンギヤをエンジンもしくは第1遊星歯車機構のキャリヤに選択的に連結する第1クラッチと、第2遊星歯車機構の全体を一体化するためにそのキャリヤとリングギヤとを選択的に連結する第2クラッチとが設けられている。なお、第1モータ・ジェネレータで発電した電力で駆動されて、駆動輪に対してトルクを出力する第2モータ・ジェネレータが設けられている。
この特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、第1クラッチを係合させることにより、そのリングギヤの回転数すなわち出力回転数を増大させることができ、こうすることにより車速に対するエンジン回転数を下げたハイモードが設定される。これに対して第2クラッチを係合させることにより、第2遊星歯車機構の全体が一体化するので、第1遊星歯車機構のリングギヤから出力されたトルクが第2遊星歯車機構で増減されることなく駆動輪に対して出力され、この状態ではエンジン回転数がハイモードよりも高回転数になり、したがっていわゆるローモードが設定される。なお、第1および第2のクラッチの両方を係合させれば、各遊星歯車機構からなるギヤトレーンが一体化されるので、エンジンおよび第1モータ・ジェネレータのトルクを特に増減することなくそのまま駆動輪に対して出力するいわゆる直結モードが設定される。これに対して、第1および第2のクラッチを共に解放することにより、エンジンおよび第1モータ・ジェネレータが駆動輪に対して遮断される。この場合、第2モータ・ジェネレータを蓄電装置の電力によって駆動することにより、第2モータ・ジェネレータによって走行でき、いわゆる電気自動車(EV)モードとなる。その場合、エンジンおよび第1モータ・ジェネレータを連れ回すことがないので、エネルギ効率が良好になる。
特許文献1に記載されたハイブリッド車両では、エンジンを駆動する通常のハイブリッド走行時には、車速や要求駆動力(例えばアクセル開度)に応じてハイモードとローモードとのいずれかを設定する。例えば、前方に向けて発進する場合には、大きい駆動トルクが要求されるので、ローモードを設定して発進し、車速が増大した場合にハイモードに切り替える。これに対して後進する場合はハイモードを設定することが好ましい。したがって、ハイブリッド車両が停車している場合に上述した直結モードを設定すれば、前進もしくは後進の発進時に、第1クラッチと第2クラッチとのいずれか一方を解放することにより、発進時の走行モードを設定できるので、制御性が良好になる。また、直結モードでは、第1および第2のクラッチの両方を係合させて第1および第2の遊星歯車機構を主体とするギヤトレーンの全体を一体化させる。したがって、その状態で、一体化されているギヤトレーンのいずれかの回転部材を固定すれば、ハイブリッド車両を停止状態に維持するパーキング状態とすることができる。すなわち、従来の一般的な車両で採用されるパーキングギヤやパーキングロックポールなどのパーキング機構を省略し、あるいは簡略化することが可能になる。
このような多様なモードを設定する上記の第1クラッチや第2クラッチとしては、従来の車両で採用されている適宜の構成のものを採用できるが、湿式多板クラッチなどの摩擦式クラッチに替えて、噛み合い式のクラッチ(ドグクラッチ)を採用すれば、駆動装置を小型軽量化し、またトルク伝達効率を向上させることができる。したがって、上述した特許文献1に記載されたハイブリッド車両における第1クラッチや第2クラッチをドグクラッチによって構成することが考えられる。しかしながら、ドグクラッチは、駆動側および従動側のドグ歯を噛み合わせてその歯面でトルクを伝達するから、ドグ歯同士を噛み合わせる場合やその噛み合いを外す場合、ドグ歯同士の相対的な位相や歯面の接触圧を制御する必要がある。そのため、例えば上記の特許文献1に記載されているハイブリッド車において、パーキング状態で第1クラッチおよび第2クラッチを係合させて上記の直結モードを設定する場合、それらのクラッチがドグクラッチであれば、各ドグ歯の位相が一致もしくは近似してドグ歯の先端面(頂面)同士が突き当たり、ドグ歯が噛み合わない事態が生じる可能性がある。このような場合、ハイブリッド車はパーキング状態となっているので、先端面同士を突き当てているドグ歯同士の位相が変化せず、結局は、直結モードを設定できない可能性がある。
本発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、ハイブリッド車両における走行モードもしくは変速段を設定するドグクラッチをパーキング時においても確実に係合させることのできる変速制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関とモータとを含む駆動力源から駆動輪に対するトルクの伝達状態を第1の状態である第1モードにするために係合する第1ドグクラッチと、前記駆動力源から前記駆動輪に対するトルクの伝達状態を第2の状態である第2モードにするために係合する第2ドグクラッチとを備え、停車状態を維持するパーキングポジションが選択されることにより前記第1ドグクラッチおよび前記第2ドグクラッチを係合させるハイブリッド車両における変速制御装置において、前記第1ドグクラッチおよび前記第2ドグクラッチの係合および解放の制御を行うコントローラを有し、前記コントローラは、前記ハイブリッド車両が制動されて前記パーキングポジションが選択されていることを判断し、前記パーキングポジションが選択されていることの判断が成立した場合に前記第1ドグクラッチおよび第2ドグクラッチを係合させる固定段設定制御を実行し、かつ前記モータによって前記第1ドグクラッチと前記第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方にトルクを付与して前記第1ドグクラッチと前記第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方に相対回転を生じさせて係合を促進するアシスト制御を実行することを特徴としている。
本発明においては、ハイブリッド車両を停止させるために制動し、パーキングポジションが選択された場合、前記第1ドグクラッチと前記第2ドグクラッチとを係合させる固定段設定制御が実行される。併せて、モータがトルクを出力して少なくともいずれか一方のドグクラッチにトルクが作用し、当該一方のドグクラッチで相対回転が生じる。ハイブリッド車両が制動されていて駆動輪の回転が止められていても、駆動輪にトルクを伝達する伝動経路には不可避的なクリアランスもしくはバックラッシや捻れなどによる相対回転が生じるので、ドグクラッチにおいても駆動力源側の部材と駆動輪側の部材との間の相対回転が生じる。したがって、解放状態から係合状態に切り替わるドグクラッチにおいて、ドグ歯の先端面(頂面)同士が突き当たってしまう相対位相になっていても、上記の相対回転によってドグ歯同士が噛み合うように相対位相がずれ、その結果、ハイブリッド車両が制動されて停止しているとしても、ドグクラッチを確実に係合させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施した場合の一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
図1は、本発明の実施形態におけるハイブリッド車両1のパワートレーンの一例を示すスケルトン図であり、ここに示す例は、左右の前輪もしくは後輪を駆動輪2とし、内燃機関(以下、エンジンと記す。)3と二つのモータ4,5とを含む駆動力源から駆動輪2に駆動トルクを伝達して走行するように構成されている。
エンジン3の出力軸6が動力分割機構7に連結されている。動力分割機構7は、エンジン3が出力した動力の一部を駆動輪2に伝達する一方、エンジン3が出力した動力の他の部分を電力に変換し、その電力変換に伴う反力トルクによってエンジン3の回転数を制御するように構成された差動機構である。図1に示す例では、動力分割機構7は、主として、トルクを分割する分割部8と、変速部9とによって構成されている。分割部8は、三つの回転要素によって差動作用を行う構成であればよく、遊星歯車機構によって構成することができる。図1に示す例では、シングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。その遊星歯車機構は、サンギヤ10と、サンギヤ10に対して同心円上に配置された、内歯歯車であるリングギヤ11と、これらサンギヤ10とリングギヤ11との間に配置されてサンギヤ10とリングギヤ11とに噛み合っているピニオンギヤ12と、ピニオンギヤ12を自転および公転可能に保持するキャリヤ13とを回転要素として備えている。そのサンギヤ10が主に反力要素として機能し、リングギヤ11が主に出力要素として機能し、キャリヤ13が主に入力要素として機能する。
エンジン3の出力軸6に、動力分割機構7の入力軸14が連結され、その入力軸14がキャリヤ13に連結されている。なお、その出力軸6と入力軸14との間にダンパ機構やトルクコンバータなどの機構(それぞれ図示せず)を配置してもよい。
サンギヤ10に第1モータ4が連結されている。図1に示す例では、分割部8および第1モータ4は、エンジン3の回転中心軸線と同一の軸線上に配置され、第1モータ4は分割部8を挟んでエンジン3とは反対側に配置されている。この分割部8とエンジン3との間で、これら分割部8およびエンジン3と同一の軸線上に、軸線方向に並んで変速部9が配置されている。
変速部9は、上述した分割部8における遊星歯車機構と共に複合遊星歯車機構を構成する差動機構であり、図1に示す例ではシングルピニオン型の遊星歯車機構によって構成されている。その遊星歯車機構は、サンギヤ15と、サンギヤ15に対して同心円上に配置された内歯歯車であるリングギヤ16と、これらサンギヤ15とリングギヤ16との間に配置されてこれらサンギヤ15およびリングギヤ16に噛み合っているピニオンギヤ17と、ピニオンギヤ17を自転および公転可能に保持しているキャリヤ18とを有し、サンギヤ15、リングギヤ16、およびキャリヤ18の三つの回転要素によって差動作用を行う。この変速部9におけるサンギヤ15に分割部8におけるリングギヤ11が連結されている。また、変速部9におけるリングギヤ16に、出力ギヤ19が連結されている。したがって、サンギヤ15が入力要素、リングギヤ16が出力要素、キャリヤ18が反力要素となっている。
上記の変速部9におけるキャリヤ18と分割部8におけるキャリヤ13とを選択的に連結する第1クラッチ機構CL1と、変速部9における少なくともいずれか二つの回転要素(例えばリングギヤ16とキャリヤ18と)を選択的に連結する第2クラッチ機構CL2とが設けられている。これらのクラッチ機構CL1,CL2は共に、噛み合い式のクラッチによって構成され、本発明の実施形態における第1ドグクラッチあるいは第2ドグクラッチに相当している。
第1および第2のクラッチ機構CL1,CL2に用いられるドグクラッチは、従来知られている構成のものであってよく、例えばエンジン3や第1のモータ4からトルクが伝達される駆動側部材と、駆動輪2にトルクを伝達する従動側部材とを軸線方向で対向させ、それらの対向面に互いに噛み合うドグ歯を設け、駆動側部材と従動側部材とが接近することによりドグ歯同士が噛み合い、また駆動側部材と従動側部材とが離隔することによりドグ歯同士の噛み合いが外れるように構成されている。そのドグ歯同士の噛み合い(係合)および噛み合いの解除(解放)は、駆動側部材と従動側部材とのいずれか一方を、電気的に制御されて前後動するシフトフォーク(図示せず)によって他方に対して接近させ、また離隔させて行うように構成されている。
この第1クラッチ機構CL1を係合させることにより分割部8におけるキャリヤ13と変速部9におけるキャリヤ18とが連結されてこれらが入力要素となり、また分割部8におけるサンギヤ10が反力要素となり、さらに変速部9におけるリングギヤ16が出力要素となった複合遊星歯車機構が形成される。また、第2クラッチ機構CL2は、変速部9の全体を一体化させるための係合機構である。したがって、図1に示すパワートレーンでは、第1クラッチ機構CL1を係合させたLoモード、第2クラッチ機構CL2を係合させたHiモード、二つのクラッチ機構CL1,CL2を共に係合させた直結モード(固定段)、ならびに両方のクラッチ機構CL1,CL2を共に解放した切り離しモードの四つの走行モードを設定することができる。
上記のエンジン3や分割部8あるいは変速部9の回転中心軸線と平行にカウンタシャフト20が配置されており、このカウンタシャフト20に前記出力ギヤ19に噛み合っているドリブンギヤ21が取り付けられている。また、カウンタシャフト20にはドライブギヤ22が取り付けられており、このドライブギヤ22が終減速機であるデファレンシャルギヤユニット23におけるリングギヤ24に噛み合っている。さらに、前記ドリブンギヤ21には、第2モータ5におけるロータシャフト25に取り付けられたドライブギヤ26が噛み合っている。したがって、前記出力ギヤ19から出力された動力もしくはトルクに、第2モータ5が出力した動力もしくはトルクを、上記のドリブンギヤ21を介して付加するように構成されている。このようにして合成された動力もしくはトルクをデファレンシャルギヤユニット23から左右のドライブシャフト27を介して駆動輪2に伝達されるように構成されている。
第1モータ4がエンジントルクとは反対向きのトルク(仮に負トルクとし、これとは反対向きのトルクを正トルクとする。)を出力することにより、エンジントルクが駆動トルクとして駆動輪2に伝達される。これに対して、第1モータ4がモータとして機能して正トルクを出力した場合、これを動力分割機構7から駆動輪2に向けて出力させて走行するいわゆるモータ(EV)走行するためのブレーキ機構Bが設けられている。ブレーキ機構Bは、前述した出力軸6もしくはこれに連結されている入力軸14を選択的に固定するように構成されている。
ハイブリッド車両1を制動し、また停止状態に維持するための電気ブレーキ28が駆動輪2に設けられている。この電気ブレーキ28は電気的に制御されて駆動輪2に制動力を付与する従来知られている構成のものであってよい。その構成を簡単に説明すると、駆動輪2と一体となって回転するブレーキディスク29の外周側にブレーキキャリパ30が配置されており、ブレーキキャリパ30がブレーキディスク29を挟み付けることによる摩擦力で駆動輪2の回転を止める制動力を発生するように構成されている。そのブレーキキャリパ30は電気的に制御されてブレーキディスク29を挟み付け、また挟み付けを解除するように構成されており、その制御を行うブレーキコントローラ31が設けられている。ブレーキコントローラ31はマイクロコンピュータを主体にして構成され、入力される制動信号32に基づいて、ブレーキキャリパ30を制御するように構成されている。この制動信号32は、図示しないブレーキペダルのストロークあるいは踏力を検出するセンサからの信号や、サイドブレーキやパーキングブレーキペダルの操作を検出するセンサからの信号、シフト装置によってパーキングポジションが選択されたことを検出するセンサからの信号などである。
さらに、第1モータ4のトルクや回転数を制御するためのモータコントローラ33と、第2モータ5のトルクや回転数を制御するためのモータコントローラ34とが設けられている。これらのモータコントローラ33,34はインバータやコンバータを備えていて、リチウムイオン電池やキャパシタなどから構成された蓄電装置35から出力される電圧や電流、周波数を適宜に変換して各モータ4,5に供給し、またいずれかのモータ4,5で発電した電力の電圧や電流、周波数を適宜に変換して蓄電装置35に充電するように構成されている。
上記の各モータコントローラ33,34やエンジン3、各クラッチ機構CL1,CL2、およびブレーキ機構Bを制御するための電子制御装置(ECU)36が設けられている。このECU36は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、各種のセンサから入力されたデータや予め記憶しているデータならびにプログラムを使用して演算を行い、その演算の結果を制御指令信号として出力するように構成されている。その入力されるデータ(信号)の例を挙げると、図示しないシフト装置で選択されているパーキングポジションやドライブポジションを含むシフトポジション、ハイブリッド車両1のいわゆるメインスイッチであるレディースイッチのON・OFF、各クラッチ機構CL1,CL2を含む各機能部品のフェールの状態、各モータ4,5や蓄電装置35ならびに外気などの温度、各クラッチ機構CL1,CL2を切り替え動作させるアクチュエータなどに給電する補機バッテリの電圧、ナビゲーションシステムなどで得られる道路勾配などの走行路情報、ハイブリッド車両1で設定されている前述した各走行モードなどである。
本発明の実施形態に係る上記のハイブリッド車両1では、低車速でかつ要求駆動力が大きい(高負荷の)場合に第1クラッチ機構CL1を係合させてロー(Lo)モードを設定し、車速が増大した場合に第2クラッチ機構CL2を係合させてハイ(Hi)モードを設定する。また、後進走行する場合には、ハイモードを設定する。さらに、エンジン3のみの動力で走行する場合には、各クラッチ機構CL1,CL2を共に係合させて直結モード(固定段)を設定し、反対に第2モータ5のみの動力で走行する場合には、各クラッチ機構CL1,CL2を共に解放してシングルEVモード(EV切り離しモード)を設定する。そして、パーキング状態からの発進は、前進と後進とが可能であり、その場合のモードもしくは変速段の設定を迅速化するために、パーキング状態では各クラッチ機構CL1,CL2を共に係合させて直結モード(固定段)を設定する。これらの各モードが、本発明の実施形態における第1の状態もしくは第1モードあるいは第2の状態もしくは第2モードに相当する。なお、パーキング状態で固定段を設定し、かつブレーキ機構Bなどによっていずれかの回転部材を固定すれば、ギヤトレーンの全体が固定されるので、結局、駆動輪2を固定してパーキング状態を成立させることができる。すなわち、前述した電気ブレーキ28と共にパーキングの冗長系を成立させることができる。
上述したハイブリッド車両1における各クラッチ機構CL1,CL2は、ドグクラッチによって構成されており、ドグ歯同士が向き合っている状態ではドグ歯同士を噛み合わせることがでない。ドグ歯同士を噛み合わせるためには、ドグ歯が設けられている駆動側部材と従動側部材との相対的な位相をずらせる必要がある。これに対して、上述したハイブリッド車両1では、停車してパーキングポジションが選択された場合に固定段を設定するが、解放状態から係合状態に切り替えるクラッチ機構CL1(CL2)におけるドグ歯同士が対向していた場合には、そのクラッチ機構CL1(CL2)を係合させることができず、固定段を設定できない。本発明の実施形態における変速制御装置は、パーキング時に固定段を設定する際にドグ歯同士が対向して当接することによりドグ歯の噛み合いが進行しないいわゆる頂面停止の状態を容易かつ確実に解消するように構成されている。
図2はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、前述したECU36によって実行される。したがって、ECU36が本発明におけるコントローラに相当している。図2に示す制御例では、先ず、シフトレンジ(シフトポジション)が判断される(ステップS1)。この判断は、図示しないシフト装置を運転者が手動操作することにより選択されているポジションをセンサ(もしくはシフトポジションスイッチ)が検出するので、その検出信号に基づいて行うことができる。
ステップS1で、パーキング(P)ポジションが選択されていることの判断が成立した場合は、ドグ歯の噛み合わせのための制御の前提条件が成立しているか否かが判断される。例えば、ハイブリッド車両1のいわゆるメインスイッチに相当するレディースイッチのON/OFFが判断される(ステップS2)。ハイブリッド車両1が一時的に停止するのではなく、継続的に停車することすなわち実質的にパーキング状態とすることを確認するためである。また、ドグフェールが判断される(ステップS3)。この判断は、ドグクラッチによって構成されているクラッチ機構CL1,CL2ならびにその制御系統の異常の有無を判断するものであり、例えばダイアグノーシスからの信号によって判断することができる。さらに、温度条件が判断される(ステップS4)。この判断は、補機バッテリや各モータ4,5などが正常に動作する温度(低温~高温)か、それを下回る温度(極低温)かを判断するためのものであり、環境温度あるいは各機器の温度に基づいて判断することができる。そして、補機バッテリの電圧が設計上想定している通常の温度か否かが判断される(ステップS5)。クラッチ機構CL1,CL2を切り替え動作させるアクチュエータは補機バッテリによって駆動されるので、そのアクチュエータに充分給電できるか否かを判断する。
レディースイッチがOFFであること、ドグフェールが生じていないこと、温度条件が低温~高温であること、補機バッテリの電圧が通常の電圧であることのいずれの判断も成立した場合には、ドグ歯の噛み合わせのための制御の前提条件が成立していることになる。その場合は、固定段(直結モード)を設定する制御開始が指示される(ステップS6)。すなわち、各クラッチ機構CL1,CL2を係合させる制御が開始される。したがって、係合していたクラッチ機構CL1(CL2)は係合状態を維持させ、解放していたクラッチ機構CL2(CL1)は係合させる。このステップS6での制御が本発明の実施形態における固定段設定制御に相当する。
このステップS6の制御と併せて第1モータ4(MG1)の出力制限が行われているか否かが判断される(ステップS7)。第1モータ4の出力が大きいほど、蓄電装置35や第1モータ4を制御するインバータなどの負荷が大きくなって、高温になりやすい。そのため、蓄電装置35やインバータなどの保護のために第1モータ4の出力が制限されることがあり、ステップS7ではそのような制限の有無が判断される。
第1モータ4についての出力制限がない場合には、ハイブリッド車両1が停止している道路の勾配の有無が判断される(ステップS8)。この判断は、例えばナビゲーションシステムで記憶している道路情報やサインポストから受信できる道路情報などに基づき、あるいはハイブリッド車両1が搭載している加速度計からの信号などに基づいて判断することができる。
道路に勾配がなく平坦路に停車していることがステップS8で判断された場合には、第1モータ4による噛み合い制御を実行する(ステップS9)。すなわち、第1モータ4によって正トルクもしくは負トルクを出力する。第1モータ4から駆動輪2までのトルクの伝達経路には、不可避的なクリアランスやバックラッシあるいは弾性的な捻れが存在するから第1モータ4がトルクを出力することによりそれらのクリアランスもしくはバックラッシが詰まるように、またトルクに応じた捻れが生じるように、遊星歯車機構やクラッチ機構CL1,CL2などが回転する。その結果、ドグ歯の先端面同士が突き当たっていた場合には、当該ドグクラッチにおける駆動側部材と従動側部材との相対回転によってそれらの相対的な位相にずれが生じ、ドグ歯の先端面同士が突き当り(頂面停止)が解消されてドグ歯同士が噛み合う。
したがって、第1モータ4による噛み合い制御を実行するにあたり、直前に設定されていたモードが判断される(ステップS10)。この判断は、例えば、いずれのクラッチ機構CL1,CL2が解放しているかの判断であってよい。直前のモードでハイモードもしくはローモードであれば、いずれか一方のクラッチ機構CL1,CL2が解放していることになり、その場合は、解放状態(未係合)のクラッチ機構CL1,CL2を係合させる(ステップS11)。この制御は、各クラッチ機構CL1,CL2をシフトフォークによって動作させ、かつそのシフトフォークをカム溝が形成されているシフトドラムもしくはシフトバレル(それぞれ図示せず)によって移動させる機構を備えているハイブリッド車両であれば、そのシフトドラムを、固定段を設定する位置に回転させることにより行う。その後、図2に示すルーチンを一旦終了する。
これに対して両方のクラッチ機構CL1,CL2を解放させて切り離しモードが設定されていた場合には、先ず、ハイモードを設定し、ついでローモードに切り替え、その後に固定段を設定するように制御し(ステップS12)、その後にリターンする。第1モータ4から駆動輪2に伝達されるトルクの増幅率は、ローモードにおけるよりハイモードで小さいから、先ずハイモードに切り替えれば、駆動輪2でのトルクの変化すなわち車体の振動やショックを抑制できる。また、ハイモードからローモードに切り替える場合、第1モータ4から駆動輪に既にトルクが伝達されて、クリアランスやバックラッシが詰まり、また捻れが収まっているから、ショックや振動が特には生じない。これはローモードから固定段に切り替える場合も同様である。
なお、いずれの場合であっても、ハイブリッド車両1は電気ブレーキ28によって停車状態に維持されているから、固定段やハイモードあるいはローモードが設定され、かつ第1モータ4がトルクを出力するとしても、そのトルクによってハイブリッド車両1が移動することはない。
一方、ステップS8において、勾配があることが判断された場合には、その道路が登坂路か否かが判断される(ステップS13)。降坂路であることによりステップS13で否定的に判断された場合には、第2モータ5によって負トルクを出力することによる噛み合い制御を実行する(ステップS14)。ここで、負トルクとは、ハイブリッド車両1を後進させる方向のトルクである。第2モータ5が出力したトルクは、電気ブレーキ28によって固定されている駆動輪2からの反力を受けて、前述した動力分割機構7を含むパワートレーンに作用するから、上述した第1モータ4によって噛み合い制御を行う場合と同様に、遊星歯車機構やクラッチ機構CL1,CL2などで回転が生じ、いわゆる頂面停止しているドグクラッチでの噛み合いを可能にする。また、駆動輪2にトルクが掛かるとしても、そのトルクの方向は、降坂路に停止しているハイブリッド車両1を、重力加速度による前進を阻止する方向のトルクとなるので、ハイブリッド車両1を前進させたり、あるいは前進方向のショックあるいは振動を生じさせたりすることがなく、したがって運転者に違和感を与えることが回避もしくは抑制される。なお、ステップS14の後、前述したステップS10に進み、モードに応じて、解放しているクラッチ機構CL1,CL2を係合させる制御を実行する。
また、ハイブリッド車両1が登坂路に停車していることによりステップS13で肯定的に判断された場合には、第2モータ5によって正トルクを出力することによる噛み合い制御を実行する(ステップS15)。ここで、正トルクとは、ハイブリッド車両1を前進させる方向のトルクである。この正トルクは、上述した負トルクを出力した場合と同様に、電気ブレーキ28によって固定されている駆動輪2からの反力を受けて、前述した動力分割機構7を含むパワートレーンに作用するから、上述した第1モータ4によって噛み合い制御を行う場合と同様に、遊星歯車機構やクラッチ機構CL1,CL2などで回転が生じ、いわゆる頂面停止しているドグクラッチでの噛み合いを可能にする。また、駆動輪2にトルクが掛かるとしても、そのトルクの方向は、登坂路に停止しているハイブリッド車両1を、重力加速度による後進を阻止する方向のトルクとなるので、ハイブリッド車両1を後退させたり、あるいは後進方向のショックあるいは振動を生じさせたりすることがなく、したがって運転者に違和感を与えることが回避もしくは抑制される。なお、ステップS15の後、前述したステップS10に進み、モードに応じて、解放しているクラッチ機構CL1,CL2を係合させる制御を実行する。
このように、第2モータ5によっても、いわゆる頂面停止するドグクラッチに相対的な回転を生じさせてドグ歯同士の噛み合いを促進することができるので、前述したステップS7で第1モータ4の出力制限が行われていることの判断が成立した場合には、ステップS15に進んで上述した噛み合い制御を実行する。以上説明したステップS9ならびにステップS14およびステップS15における噛み合い制御は、いわゆる頂面停止を回避して各クラッチ機構CL1,CL2の噛み合いを可能にし、あるいは促進する制御であり、これらの制御が、本発明の実施形態におけるアシスト制御に相当する。
また一方、上述したステップS1で判断されたシフトレンジ(シフトポジション)がパーキング(P)以外であった場合には、選択されているシフトレンジ(シフトポジション)ならびにハイブリッド車両1の車速やアクセル開度などの走行状態に応じた任意の変速段を設定し(ステップS16)、その後、リターンする。同様に、前述した前提条件が成立していない場合には、ステップS16に進んで任意の変速段を設定し、その後、リターンする。すなわち、レディースイッチがONとなっていてハイブリッド車両1がパーキング状態になる可能性が低い場合、ドグフェールが生じている場合、極低温で正規の制御が困難な場合、そして補機バッテリの電圧が低くてクラッチ機構CL1,CL2の係合・解放の制御が困難な場合のいずれかの場合には、ステップS16に進んで、その時点の状態に応じた任意の変速段を設定する。なお、本発明の実施形態における制御前提条件は、ステップS2~S5で挙げた条件に限られないのであり、他の条件を適宜に追加し、あるいは削除してもよい。また、それらの前提条件の判断の順序は特には限定されないのであり、同時並行的に判断してもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないのであって、本発明で対象とするハイブリッド車両は、図1に示す構成のパワートレーンとは異なる構成のパワートレーンを備えたハイブリッド車両であってもよい。したがって、本発明における各ドグクラッチは、上述したハイモードならびにローモードおよび直結モードを設定するために係合するクラッチに限られないのであり、適宜の変速比もしくはトルクの伝達状態を設定するために係合するクラッチであってもよい。なお、これらのドグクラッチが上述したハイモードならびにローモードおよび直結モードを設定するために係合するクラッチの場合には、両方のドグクラッチを解放している状態から直結モードを設定する際に、ハイモードおよびローモードの順で走行モードを経由して直結モードに切り替えるように各ドグクラッチを係合させることが好ましいことは前述したとおりである。
1 ハイブリッド車両
2 駆動輪
3 エンジン
4,5 モータ
7 動力分割機構
28 電気ブレーキ
31 ブレーキコントローラ
32 制動信号
33,34 モータコントローラ
35 蓄電装置
CL1,CL2 クラッチ機構
2 駆動輪
3 エンジン
4,5 モータ
7 動力分割機構
28 電気ブレーキ
31 ブレーキコントローラ
32 制動信号
33,34 モータコントローラ
35 蓄電装置
CL1,CL2 クラッチ機構
Claims (1)
- 内燃機関とモータとを含む駆動力源から駆動輪に対するトルクの伝達状態を第1の状態である第1モードにするために係合する第1ドグクラッチと、前記駆動力源から前記駆動輪に対するトルクの伝達状態を第2の状態である第2モードにするために係合する第2ドグクラッチとを備え、停車状態を維持するパーキングポジションが選択されることにより前記第1ドグクラッチおよび前記第2ドグクラッチを係合させるハイブリッド車両における変速制御装置において、
前記第1ドグクラッチおよび前記第2ドグクラッチの係合および解放の制御を行うコントローラを有し、
前記コントローラは、
前記ハイブリッド車両が制動されて前記パーキングポジションが選択されていることを判断し、
前記パーキングポジションが選択されていることの判断が成立した場合に前記第1ドグクラッチおよび第2ドグクラッチを係合させる固定段設定制御を実行し、かつ
前記モータによって前記第1ドグクラッチと前記第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方にトルクを付与して前記第1ドグクラッチと前記第2ドグクラッチとの少なくともいずれか一方に相対回転を生じさせて係合を促進するアシスト制御を実行する
ことを特徴とするハイブリッド車両における変速制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021133552A JP2023028077A (ja) | 2021-08-18 | 2021-08-18 | ハイブリッド車両における変速制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021133552A JP2023028077A (ja) | 2021-08-18 | 2021-08-18 | ハイブリッド車両における変速制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2023028077A true JP2023028077A (ja) | 2023-03-03 |
Family
ID=85331312
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021133552A Pending JP2023028077A (ja) | 2021-08-18 | 2021-08-18 | ハイブリッド車両における変速制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2023028077A (ja) |
-
2021
- 2021-08-18 JP JP2021133552A patent/JP2023028077A/ja active Pending
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