JP2023024856A - ヒートシール紙、包装袋 - Google Patents

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友史 磯▲崎▼
Tomofumi Isozaki
泰友 野一色
Yasutomo Noishiki
正啓 鶴原
Masanori Tsuruhara
裕太 社本
Yuta SHAMOTO
三代子 田中
Miyoko Tanaka
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Abstract

【課題】耐衝撃性および加工性に優れるヒートシール紙を提供すること。【解決手段】紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX2a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をY2aとしたとき、X1aおよびY1aの相乗平均が120J/m2以上であり、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)が0.5以上2.0以下であり、X2aおよびY2aの相乗平均が2.0J/g以上である、ヒートシール紙。【選択図】なし

Description

本発明は、ヒートシール紙およびこれを用いた包装袋に関する。
ヒートシール方式を利用した包装体は、一般の工業製品の包装の他、食品、医薬、医療器具の包装など広く利用されている。
近年、プラスチックゴミ問題が深刻化している。世界のプラスチックの生産量のうち、包装容器セクターでのプラスチック生産量が多く、プラスチックごみの原因となっている。プラスチックは半永久的に分解されず、そのゴミは自然環境下でマイクロプラスチック化し、生態系に深刻な悪影響を与えている。その対策として、プラスチックを紙に代替することが提案されている。
例えば、特許文献1には、紙基材の少なくとも一方の面上にアイオノマーを含むヒートシール層が2層以上形成されてなるヒートシール紙が記載されている。
特許第6580291号公報
しかし、特許文献1に記載のヒートシール紙は、耐衝撃性および加工性に乏しいという問題があった。
よって、本発明は、耐衝撃性および加工性に優れたヒートシール紙および該ヒートシール紙を用いた包装袋を提供することを目的とする。
本発明の課題は、以下の構成によって解決することができる。
<1> 紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX2a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をY2aとしたとき、X1aおよびY1aの相乗平均が120J/m以上であり、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)が0.5以上2.0以下であり、X2aおよびY2aの相乗平均が2.0J/g以上である、ヒートシール紙。
<2> 前記紙基材の坪量が120g/m以下である、<1>に記載のヒートシール紙。
<3> 前記ヒートシール層が水分散性樹脂バインダーを含む、<1>または<2>に記載のヒートシール紙。
<4> 前記水分散性樹脂バインダーは、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体およびスチレン/ブタジエン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、<3>に記載のヒートシール紙。
<5> 前記ヒートシール層中の前記水分散性樹脂バインダーの含有量が50質量%以上99質量%以下である、<3>または<4>に記載のヒートシール紙。
<6> 前記ヒートシール層が、滑剤をさらに含む、<3>~<5>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<7> 前記滑剤が、カルナバワックスおよびパラフィンワックスからなる群より選択される少なくとも1種である、<6>に記載のヒートシール紙。
<8> 前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が0.2質量%以上20質量%以下である、<6>または<7>に記載のヒートシール紙。
<9> 前記ヒートシール層が顔料をさらに含む、<3>~<8>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<10> 再離解後のパルプ回収率が85%以上である、<1>~<9>のいずれかに記載のヒートシール紙。
<11> <1>~<10>のいずれかに記載のヒートシール紙を用いた包装袋。
本発明によれば、耐衝撃性および加工性に優れたヒートシール紙および該ヒートシール紙を用いた包装袋を得ることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は、室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの両方を含む総称である。
<ヒートシール紙>
本実施形態に係るヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX2a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をY2aとしたとき、X1aおよびY1aの相乗平均が120J/m以上であり、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)が0.5以上2.0以下であり、X2aおよびY2aの相乗平均が2.0J/g以上である、ヒートシール紙である。本実施形態のヒートシール紙を用いると、密封袋状にしたときに、耐衝撃性に優れ、破損しにくい包装袋とすることができる。また、本実施形態のヒートシール紙は、低坪量でも耐衝撃性に優れるため、コシが低く、柔らかい。ゆえに、包装機械での加工がしやすい。本明細書中、ヒートシール紙の縦方向は、紙基材の抄紙方向(MD方向)に対応する方向を意味し、ヒートシール紙の横方向は、紙基材の幅方向(CD方向)に対応する方向を意味する。
[紙基材]
(原料パルプ)
紙基材を構成するパルプとしては、針葉樹、広葉樹等から得られる木材パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合せて使用してもよい。これらの中でも、木材パルプを原料とする紙基材が好ましく、針葉樹パルプを主成分とする原料パルプからなることがより好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料パルプ」とは、原料パルプ中、針葉樹パルプの含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹パルプの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。針葉樹パルプは、平均繊維長が長く、針葉樹パルプを原料パルプとして用いた紙基材は、優れた加工性を有する傾向にある。紙基材を構成する原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、晒クラフトパルプであることがより好ましい。
(カナダ標準ろ水度(CSF))
パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、透気抵抗度を高める観点から、カナダ標準ろ水度(CSF)として、好ましくは80mL以上、より好ましくは100mLであり、そして、好ましくは300mL以下、より好ましくは280mL以下、さらに好ましくは250mLである。CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
(引張エネルギー吸収量(TEA))
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をYとしたとき、XおよびYの相乗平均ならびにYに対するXの比(X/Y)は、それぞれ下記範囲を満たすことが好ましい。TEA物性が下記範囲内である紙基材を使用すると、本実施形態のTEA物性を有するヒートシール紙を得ることができる。
およびYの相乗平均(XとYの積の平方根)は、好ましくは120J/m以上、より好ましくは150J/m以上、さらに好ましくは160J/m以上、さらにより好ましくは170J/m以上であり、ヒートシール剥離強度のさらなる向上の観点から、さらに一層好ましくは240J/m以上、さらにより一層好ましくは280J/m以上である。XおよびYの相乗平均の上限は、特に限定されないが、好ましくは400J/m以下である。
紙基材のXおよびYの相乗平均は、叩解条件やクルパック処理条件を調整することにより、調整することができる。
叩解条件については、一般的に、パルプの叩解を進めると、紙基材のXおよびYの相乗平均は高くなる傾向にある。パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、カナダ標準濾水度(CSF)として、好ましくは200mL以上、より好ましくは450mL以上であり、そして、好ましくは800mL以下、より好ましくは700mL以下である。CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
クルパック処理条件については、例えば、クルパック装置を使用した抄紙において、クルパック処理の前後の抄紙速度の差、ニップロールの圧力によって、紙基材のXおよびYの相乗平均を制御しうる。
抄紙速度は特に制限されないが、例えば、好ましくは200m/分以上、より好ましくは300m/分以上、さらに好ましくは400m/分以上であり、そして、好ましくは1000m/分以下、より好ましくは800m/分以下、さらに好ましくは700m/分以下で制御すればよい。クルパック処理時のニップロールとブランケット間のニップ圧も特に制限されない。例えば、好ましくは5kN/m以上、より好ましくは10kN/m以上であり、そして、好ましくは50kN/m以下、より好ましくは25kN/m以下の範囲で適宜制御すればよい。
クルパック処理の前後の抄紙速度差は、特に制限されず、坪量やパルプの材料に応じて、所望の紙基材のXおよびYの相乗平均が得られるように制御すればよい。速度差が大きい方が紙基材のXおよびYの相乗平均が高くなるが、速度差が大きすぎると断紙などの操業における不具合が発生するため、好ましくは-45.0%以上、より好ましくは-40.0%以上であり、そして、好ましくは-10.0%以下、より好ましくは-15.0%以下である。ここでのマイナス「-」はクルパック処理後の速度が遅いことを示す。
カレンダー処理によるニップ圧も、特に制限されず、坪量やパルプの材料、クルパック処理の前後の速度差などに応じて、所望の紙基材のXおよびYの相乗平均が得られるように制御すればよい。好ましくは100kN/m以上、より好ましくは130kN/m以上であり、そして、好ましくは200kN/m以下、より好ましくは170kN/m以下である。
に対するXの比(X/Y)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上である。Yに対するXの比(X/Y)は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下、さらにより好ましくは1.5以下である。
紙基材のX/Yは、ジェットワイヤー比(パルプ懸濁液の噴出速度/ワイヤーの速度)を調整することにより、調整することができる。一般的に、ジェットワイヤー比が1に近づくほど、紙基材のX/Yは小さくなる傾向にある。
(比引張エネルギー吸収量(TEAI))
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をYとしたとき、XおよびYの相乗平均は、好ましくは2.0J/g以上、より好ましくは2.1J/g以上である。TEAI物性が上記範囲内である紙基材を使用すると、本実施形態のTEAI物性を有するヒートシール紙を得ることができる。ヒートシール剥離強度のさらなる向上の観点から、さらに好ましくは2.4J/g以上、さらにより好ましくは2.8J/g以上である。XおよびYの相乗平均の上限は、特に限定されないが、好ましくは5.0J/g以下、より好ましくは4.0J/g以下である。
紙基材のXおよびYの相乗平均は、叩解条件やクルパック処理条件を調整することにより、調整することができる。
叩解条件については、一般的に、パルプの叩解を進めると、紙基材のXおよびYの相乗平均は高くなる傾向にある。パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、カナダ標準濾水度(CSF)として、好ましくは200mL以上、より好ましくは450mL以上であり、そして、好ましくは800mL以下、より好ましくは700mL以下である。CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
クルパック処理条件については、例えば、クルパック装置を使用した抄紙において、クルパック処理の前後の抄紙速度の差、ニップロールの圧力によって、紙基材のXおよびYの相乗平均を制御しうる。
抄紙速度は特に制限されないが、例えば、好ましくは200m/分以上、より好ましくは300m/分以上、さらに好ましくは400m/分以上であり、そして、好ましくは1000m/分以下、より好ましくは800m/分以下、さらに好ましくは700m/分以下である。クルパック処理時のニップロールとブランケット間のニップ圧も特に制限されない。例えば、好ましくは5kN/m以上、より好ましくは10kN/m以上であり、そして、好ましくは50kN/m以下、より好ましくは25kN/m以下である。
クルパック処理の前後の抄紙速度差は、特に制限されず、坪量やパルプの材料に応じて、所望の紙基材のXおよびYの相乗平均が得られるように制御すればよい。速度差が大きい方が紙基材のXおよびYの相乗平均が高くなるが、速度差が大きすぎると断紙などの操業における不具合が発生するため、好ましくは-45.0%以上、より好ましくは-40.0%以上であり、そして、好ましくは-10.0%以下、より好ましくは-15.0%以下である。ここでのマイナス「-」はクルパック処理後の速度が遅いことを示す。
カレンダー処理によるニップ圧も、特に制限されず、坪量やパルプの材料、クルパック処理の前後の速度差などに応じて、所望の紙基材のXおよびYの相乗平均が得られるように制御すればよい。好ましくは100kN/m以上、より好ましくは130kN/m以上であり、そして、好ましくは200kN/m以下、より好ましくは170kN/m以下である。
(坪量)
紙基材の坪量は、特に限定されないが、耐衝撃性および加工性を有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくは50g/m以上、より好ましくは60g/m以上、さらに好ましくは70g/m以上であり、そして、好ましくは150g/m以下、より好ましくは140g/m以下、さらに好ましくは120g/m以下、さらにより好ましくは110g/m以下、さらに一層好ましくは100g/m以下である。紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
(厚さ)
紙基材の厚さは、耐衝撃性および加工性を有するヒートシール紙を得る観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは40μm以上、さらにより好ましくは60μm以上、より一層好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは160μm以下である。紙基材の厚さは、JIS P 8118:2014に準拠して測定される。
(密度)
紙基材の密度は、成形加工性の観点から、好ましくは0.3g/cm以上、より好ましくは0.5g/cm以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下である。紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた、紙基材の坪量および厚さから算出される。
(任意成分)
紙基材には、必要に応じて、例えば、アニオン性、カチオン性もしくは両性の歩留剤、濾水性向上剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、填料等の内添助剤、耐水化剤、染料、蛍光増白剤等の任意成分を含んでいてもよい。
乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。乾燥紙力増強剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
サイズ剤としては、ロジンサイズ剤、合成サイズ剤、石油樹脂系サイズ剤等の内添サイズ剤、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体等の表面サイズ剤が挙げられる。サイズ剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
定着剤としては、硫酸バンド、ポリエチレンイミン等が挙げられる。定着剤の含有量は、特に限定されないが、原料パルプ(絶乾質量)あたり、好ましくは3.0質量%以下である。
填料としては、タルク、カオリン、焼成カオリン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の無機填料、アクリル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の有機填料が挙げられる。
紙基材としては、例えば、紙匹を収縮させるクルパック処理を施したクルパック紙等を用いることができる。なお、伸張紙は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向または横方向の伸びが5%以上である紙をいい、JIS P 3401:2000に記載のクラフト紙5種 1号、2号が例示される。
[ヒートシール層]
本実施形態に係るヒートシール紙は、紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有する。ヒートシール層は、加熱、超音波等で溶融し、接着する層である。
(水分散性樹脂バインダー)
ヒートシール層は、水分散性樹脂バインダーを含むことが好ましい。水分散性樹脂バインダーとは、水溶性ではない(具体的には、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下である)が、エマルションやサスペンションのように水中で微分散された状態となる樹脂バインダーをいう。水分散性樹脂バインダーを用いてヒートシール層を水系塗工することで、再離解性に優れ、紙として再生利用可能なヒートシール紙を得ることができる。なお、水分散性樹脂バインダーが下記の滑剤にも該当する場合は、滑剤に分類するものとする。
水分散性樹脂バインダーの骨格となるポリマーとしては、特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/ブタジエン系共重合体、スチレン/不飽和カルボン酸系共重合体(例えば、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体)、スチレン/アクリル系共重合体(例えば、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体)、アクリル系樹脂、アクリロニトリル/スチレン系共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン系共重合体、ABS系樹脂、AAS系樹脂、AES系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ-4-メチルペンテン-1樹脂、ポリブテン-1樹脂、フッ化ビニリデン系樹脂、フッ化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アセタール系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体、およびこれらの変性物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、高いヒートシール強度を有することから、エチレン-酢酸ビニル共重合体、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体および/またはスチレン/ブタジエン系共重合体が好ましい。中でも、リサイクル性の観点では、スチレン/ブタジエン系共重合体がより好ましい。
オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体としては、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。中でも、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましく、エチレン-アクリル酸共重合体がより好ましい。よって、好ましい実施形態において、ヒートシール層に含まれる水分散性樹脂バインダーは、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体およびスチレン/ブタジエン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である。さらに、塗工時の装置の汚れを抑制し、操業性を向上させる観点では、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体がより好ましい。なお、オレフィン/不飽和カルボン酸系共重合体は、アイオノマーであってもよい。
エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、マイケルマンジャパン合同会社製のMFHS1279、MP498345N、MP4983R、MP4990R、住友精化株式会社製のザイクセン(登録商標)A、ザイクセン(登録商標)AC、三井化学株式会社製のケミパールSシリーズ等が挙げられる。
スチレン/ブタジエン系共重合体としては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、日本ゼオン株式会社製のNipol LX407-F7、LX407-G51、LX407-S10、LX407-S12、日本エイアンドエル株式会社製のナルスターSR-100、SR-102、SR-103等が挙げられる。
ヒートシール層中の水分散性樹脂バインダーの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。上記範囲内であれば、高いヒートシール強度を有するヒートシール紙を得ることができる。
すなわち、一実施形態によれば、ヒートシール層中のエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体およびスチレン/ブタジエン系共重合体の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
また、水分散性樹脂バインダーがエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である場合、ヒートシール層中のエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下である。
また、水分散性樹脂バインダーがスチレン/ブタジエン系共重合体である場合、ヒートシール層中のスチレン/ブタジエン系共重合体の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
(滑剤)
ヒートシール紙の滑り性付与およびブロッキング抑制の観点から、ヒートシール層は、上記の水分散性樹脂バインダーに加えて、滑剤を含有することが好ましい。滑剤とは、ヒートシール層に配合することにより、ヒートシール層表面の摩擦係数を低減させることができる物質である。
滑剤としては、特に限定されず、例えば、ワックス、金属石鹸、脂肪酸エステル等を使用することができる。滑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ワックスとしては、例えば、動物または植物由来のワックス(例えば、ミツロウ、カルナバワックスなど)、鉱物ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックスなど)、石油ワックス等の天然ワックス;ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、ポリエステルワックス等の合成ワックス等が挙げられる。金属石鹸としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、オレイン酸カリ石鹸、ヒマシ油カリ石鹸、およびそれらの複合体等が挙げられる。また、融点が比較的低くワックス成分が塗工層表面に形成されやすく、ブロッキング抑制効果に優れることから、カルナバワックスも好ましい。また、耐油性および耐水性付与効果に優れ、市場で入手しやすく、安価であることから、パラフィンワックスも好ましい。従って、滑剤は、カルナバワックスおよびパラフィンワックスからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。カルナバワックスとしても、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては中京油脂株式会社製セロゾール524、マイケルマン社製ML160RPH等が挙げられる。パラフィンワックスとしては、合成品、市販品のいずれを使用してもよく、市販品としては、中京油脂株式会社製ハイドリンL-700等が挙げられる。
ヒートシール層が滑剤を含有する場合、滑剤の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
ヒートシール層が滑剤を含有する場合、ヒートシール層中の滑剤の含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
(顔料)
ヒートシール紙のブロッキング抑制の観点から、ヒートシール層は、上記の水分散性樹脂バインダーに加えて、顔料を含有することが好ましい。
顔料としては特に限定されるものではなく、従来の顔料塗工層に使用されている各種顔料が例示される。具体的には、カオリン、焼成カオリン、構造化カオリン、デラミネーテッドカオリン等の各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、コロイダルシリカ、中空もしくは密実である有機顔料のプラスチックピグメント、バインダーピグメント、プラスチックビーズ、マイクロカプセルなどが例示される。これらの中でも、ブロッキング抑制効果に優れることから、好ましくはカオリンである。顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
顔料の平均粒径は特に限定されないが、耐ブロッキング性およびヒートシール性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、そして、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。なお、顔料の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置によって測定される値を採用するものとする。
ヒートシール層が顔料を含有する場合、顔料の含有量は、水分散性樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下、さらにより好ましくは10質量部以下である。
ヒートシール層が顔料を含有する場合、ヒートシール層中の顔料の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
ヒートシール層は、上記の水分散性樹脂バインダー、ならびに必要に応じて顔料または/および滑剤に加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、シランカップリング剤;レベリング剤;消泡剤;粘度調整剤;着色染料等の着色剤などが例示される。
<ヒートシール紙の物性>
(引張エネルギー吸収量(TEA))
本実施形態のヒートシール紙は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY1aとしたとき、X1aおよびY1aの相乗平均が120J/m以上であり、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)が0.5以上2.0以下である。
本実施形態の効果のさらなる向上の観点から、X1aおよびY1aの相乗平均(X1aとY1aの積の平方根)は、好ましくは150J/m以上、より好ましくは160J/m以上、さらに好ましくは170J/m以上、さらにより好ましくは180J/m以上、さらに一層好ましくは200J/m以上であり、ヒートシール剥離強度のさらなる向上の観点から、さらに一層好ましくは240J/m以上、さらにより一層好ましくは280J/m以上である。X1aおよびY1aの相乗平均の上限は、特に限定されないが、好ましくは400J/m以下である。
ヒートシール紙のX1aおよびY1aの相乗平均は、使用する紙基材のXおよびYの相乗平均を調整することで、所望の範囲とすることができる。紙基材のXおよびYの相乗平均の調整方法は上述のとおりである。
本実施形態の効果のさらなる向上の観点から、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上である。Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)は、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下である。
ヒートシール紙のX1a/Y1aは、使用する紙基材のX/Yを調整することで、所望の範囲とすることができる。紙基材のX/Yの調整方法は上述のとおりである。
(比引張エネルギー吸収量(TEAI))
本実施形態のヒートシール紙は、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX2a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をY2aとしたとき、X2aおよびY2aの相乗平均が2.0J/g以上である。
本実施形態の効果のさらなる向上の観点から、X2aおよびY2aの相乗平均(X2aとY2aの積の平方根)は、好ましくは2.1J/g以上であり、ヒートシール剥離強度のさらなる向上の観点から、より好ましくは2.4J/g以上、さらにより好ましくは2.8J/g以上である。X2aおよびY2aの相乗平均の上限は、特に限定されないが、好ましくは5.0J/g以下、より好ましくは4.0J/g以下である。
ヒートシール紙のX2aおよびY2aの相乗平均は、使用する紙基材のXおよびYの相乗平均を調整することで、所望の範囲とすることができる。紙基材のXおよびYの相乗平均の調整方法は上述のとおりである。
(再離解後のパルプ回収率)
本実施形態のヒートシール紙は、再離解後のパルプ回収率が85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、98%以上であることがさらにより好ましい。再離解後のパルプ回収率が上記範囲内であれば、リサイクル性に優れる。ヒートシール紙の再離解後のパルプ回収率は、後述の実施例に記載の方法により測定される値である。
(剥離強度)
本実施形態のヒートシール紙は、ヒートシール層の剥離強度が、好ましくは5.5N/15mm以上、より好ましくは6.0N/15mm以上、さらにより好ましくは6.7N/15mm以上であり、そして好ましくは10N/15mm以下、より好ましくは9.5N/mm以下、さらに好ましくは9.0N/15mm以下、さらにより好ましくは8.5N/15mm以下、より一層好ましくは8.0N/15mm以下である。ヒートシール層の剥離強度は、ヒートシール層同士を160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした際の剥離強度であり、具体的には後述の実施例に記載の方法によって測定される値である。
(坪量)
本実施形態のヒートシール紙の坪量は、耐衝撃性および加工性に優れたヒートシール紙を得る観点から、好ましくは60g/m以上、より好ましくは70g/m以上、さらに好ましくは80g/m以上であり、そして、好ましくは180g/m以下、より好ましくは160g/m以下、さらに好ましくは140g/m以下、よりさらに好ましくは120g/m以下である。
ヒートシール紙の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
(厚さ)
本実施形態のヒートシール紙の厚さは、耐衝撃性および加工性に優れたヒートシール紙を得る観点から、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上、さらにより好ましくは70μm以上、より一層好ましくは90μm以上であり、そして、好ましくは250μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは170μm以下である。
ヒートシール紙の厚さは、実施例に記載の方法により測定される。
(密度)
本実施形態のヒートシール紙の密度は、耐衝撃性および加工性に優れたヒートシール紙を得る観点から、好ましくは0.4g/cm以上、より好ましくは0.5g/cm以上、さらに好ましくは0.6g/cm以上であり、そして、好ましくは1.2g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下、さらに好ましくは0.9g/cm以下である。
ヒートシール紙の密度は、坪量および厚さから算出される。
[ヒートシール紙の製造方法]
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、原料パルプのカッパー価を30以上60以下とする蒸解処理を行なう蒸解工程と、蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する叩解工程と、叩解処理した原料パルプを抄紙する抄紙工程と、を含む方法により得られた紙基材の少なくとも一方の面上に、少なくとも1層のヒートシール層を塗工する塗工工程を含む製造方法が挙げられる。当該製造方法のそれぞれの工程について、以下に説明する。
(蒸解工程)
蒸解工程は、原料パルプのカッパー価を好ましくは30以上60以下とする蒸解処理を行なう工程である。特に限定されないが、原料パルプの材料として用いられる原料チップを、水酸化ナトリウムを含む薬液で処理することにより、カッパー価が30以上60以下である原料パルプが得られる。水酸化ナトリウムを含む薬液による処理方法としては、公知の薬液を使用する公知の処理方法を用いることができる。
原料パルプのカッパー価を30以上60以下とすることにより、上記のTEA物性およびTEAI物性を満たし、耐衝撃性および加工性を有する紙基材および該紙基材を用いたヒートシール紙が得られる。当該観点から、原料パルプのカッパー価は、55以下とすることが好ましく、50以下とすることがより好ましく、46以下とすることがより好ましい。
原料パルプの材料として用いられる原料チップは、特に制限されないが、針葉樹パルプを主成分とすることが好ましい。「針葉樹パルプを主成分とする原料チップ」とは、原料チップ中、針葉樹パルプの含有量が50質量%超のものをいい、針葉樹パルプの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
原料パルプに、漂白処理を施さなくてもよいし、漂白処理を施してもよい。原料パルプは、晒クラフトパルプおよび未晒クラフトパルプからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、未晒クラフトパルプであることがより好ましい。
(叩解工程)
叩解工程は、蒸解処理した原料パルプを好ましくは20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理する工程である。叩解処理の方法は特に限定されないが、蒸解処理した原料パルプを水中に分散させて、上記の原料パルプ濃度の分散液を作製し、叩解することが好ましい。叩解処理方法としては、特に限定されないが、例えば、ダブルディスクリファイナー、シングルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等の叩解機を用いて行うことができる。
蒸解処理した原料パルプを20質量%以上45質量%以下含有する分散液を叩解処理することにより、上記のTEA物性およびTEAI物性を満たし、耐衝撃性および加工性を有する紙基材および該紙基材を用いたヒートシール紙が得られるとともに、生産性に優れる。
(抄紙工程)
抄紙工程は、叩解処理した原料パルプを抄紙する工程である。抄紙方法については、特に限定されず、例えばpHが4.5付近で抄紙を行う酸性抄紙法、pHが約6~約9で抄紙を行う中性抄紙法等が挙げられる。抄紙工程では、必要に応じて、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等の抄紙工程用薬剤を適宜添加できる。抄紙機についても、特に限定されず、例えば、長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機、またはこれらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機等が挙げられる。
本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材は、上述した蒸解工程と、叩解工程と、抄紙工程と、を含む方法により得ることができる。抄紙工程の後に、必要に応じて、クルパック設備を用いて紙匹を収縮させるクルパック工程を有していてもよい。クルパック設備としては、公知のものを用いることができる。なお、本実施形態のヒートシール紙に用いられる紙基材の製造方法は、上記方法に限定されない。
また、本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、紙基材の表面を薬剤で処理する表面処理工程を含んでいてもよい。表面処理工程に用いられる薬剤としては、サイズ剤、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤等が挙げられる。表面処理工程に用いられる装置としては、公知の装置を用いることができる。
本実施形態のヒートシール紙の製造方法は、上記のように得られた紙基材上の少なくとも一方の面上に、ヒートシール層を塗工する塗工工程を含む。なお、ヒートシール層塗工液(ヒートシール層塗料)は、二度以上塗工してもよい。
紙基材に複数のヒートシール層を形成する場合において、逐次的にヒートシール層を形成する上記の方法が好ましいが、これに限定されるものではなく、同時多層塗工法を採用してもよい。同時多層塗工法とは、複数種の塗工液をそれぞれ別個にスリット状ノズルから吐出させて、液体状の積層体を形成し、それを紙基材上に塗工することにより、多層のヒートシール層を同時に形成する方法である。
ヒートシール層塗工液を紙基材に塗工するための塗工設備には、特に限定はなく、公知の設備を用いればよい。塗工設備としては、例えば、ブレードコーター、バーコーター、エアナイフコーター、スリットダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロールコーター、サイズプレス、ゲートロールコーター、シムサイザー等が挙げられる。
ヒートシール層を乾燥するための乾燥設備には、特に限定されず、公知の設備を用いることができる。乾燥設備としては、例えば、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ガスバーナー、熱板等が挙げられる。また、乾燥温度は、乾燥時間等を考慮して、適宜設定すればよい。
ヒートシール層塗工液の溶媒としては、特に限定されず、水またはエタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。これらの中でも、揮発性有機溶媒の問題を生じない観点から、ヒートシール層塗工液の分散媒としては、水が好ましい。すなわち、ヒートシール層塗工液は、ヒートシール層用水系組成物であることが好ましい。
ヒートシール層塗工液の固形分量は、特に限定されず、塗工性および乾燥容易性の観点から適宜選択すればよいが、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下である。
ヒートシール層の合計塗工量(乾燥後)は、特に限定されないが、所望のヒートシール剥離強度を得る観点から、好ましくは1g/m以上、より好ましくは2g/m以上、さらに好ましくは5g/m以上であり、そして、好ましくは50g/m以下、より好ましくは30g/m以下、さらに好ましくは20g/m以下である。
<用途>
本実施形態に係るヒートシール紙は、食品、生活雑貨、書籍、日用品(石鹸、洗剤、おむつ)などの包装袋として好適に使用できる。従って、本実施形態は、上記ヒートシール紙を用いた包装袋についても提供する。
以下に、本実施形態を具体的に説明するために実施例を挙げるが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、以下の操作は23℃、相対湿度50%RHの条件で行った。また、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
[実施例1]
<ヒートシール層塗料の調製1>
エチレン-アクリル酸共重合体(固形分42%)231部、カルナバワックス(固形分30%)10部を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌しヒートシール層塗料(濃度35%)を得た。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を坪量88g/m、厚さ135μm、密度0.65g/cmの一般伸張紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:178J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.5、XおよびYの相乗平均:2.1J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、カッパー価45、叩解後フリーネス560mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0.1質量%、カチオン化澱粉0.6質量%(計0.7質量%))、サイズ剤(合成サイズ剤0.1質量%)、硫酸バンド0.9質量%)に、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が10g/mとなるように、エアナイフコーターで塗工し、熱風乾燥器を用いて120℃で1分間乾燥し、ヒートシール層を形成した。
[実施例2]
実施例1のヒートシール層塗料を以下のように調製した塗料に変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
<ヒートシール層塗料の調製2>
エチレン-アクリル酸共重合体(固形分42%)219部、カルナバワックス(固形分30%)10部、カオリンA(平均粒径8μm)の濃度50%水分散液10部を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌しヒートシール層塗料(濃度35%)を得た。
[実施例3]
<ヒートシール層塗料の調製3>
スチレン-ブタジエン共重合体(日本ゼオン株式会社製、LX407-S12、固形分46%)213部、パラフィンワックス水懸濁液(中京油脂株式会社製、ハイドリンL-700、固形分30%)6.7部を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌しヒートシール層塗料(濃度35%)を得た。上記のスチレンーブタジエン共重合体は、25℃の水に対する溶解度が10g/L以下であった。
<ヒートシール紙の製造>
得られたヒートシール層塗料を坪量88g/m、厚さ135μm、密度0.64g/cmの一般伸張紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:178J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.5、XおよびYの相乗平均:2.1J/g)に、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が12g/mとなるように、エアナイフコーターで塗工し、ヒートシール層を形成した。
[実施例4]
実施例3のヒートシール層塗料を以下のように調製した塗料に変更した以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
<ヒートシール層塗料の調製4>
スチレン-ブタジエン共重合体(日本ゼオン株式会社製、LX407-S12、固形分46%)202部、パラフィンワックス水懸濁液(中京油脂株式会社製、ハイドリンL-700、固形分30%)6.7部、カオリンA(平均粒径8μm)の濃度50%水分散液10部を混合し、固形分濃度が35%になるよう水を加えて撹拌しヒートシール層塗料(濃度35%)を得た。
[実施例5]
紙基材を、坪量100g/m、厚さ125μm、密度0.80g/cmの超伸張紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:320J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.2、XおよびYの相乗平均:3.2J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ100質量%、カッパー価45、叩解後フリーネス670mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0.9質量%、カチオン化澱粉0.7質量%(計1.6質量%))、サイズ剤(合成サイズ剤0.2質量%)、硫酸バンド1.1質量%)に変更し、ヒートシール層の乾燥後の塗工量が8g/mとなるように塗工したこと以外は、実施例3と同様にしてヒートシール紙を得た。
[比較例1]
紙基材を、坪量80g/m、厚さ113μm、密度0.71g/cmの未晒クラフト紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:65J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.2、XおよびYの相乗平均:0.8J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%、叩解後フリーネス480mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0質量%、カチオン化澱粉0.3質量%(計0.3質量%))、サイズ剤(エマルションサイズ剤0.14質量%)、硫酸バンド1.4質量%)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[比較例2]
紙基材を、坪量100g/m、厚さ143μm、密度0.70g/cmの未晒クラフト紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:80J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.2、XおよびYの相乗平均:0.8J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%、叩解後フリーネス420mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0質量%、カチオン化澱粉0.3質量%(計0.3質量%))、サイズ剤(エマルションサイズ剤0.14質量%)、硫酸バンド1.4質量%)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[比較例3]
紙基材を、坪量120g/m、厚さ173μm、密度0.69g/cmの未晒クラフト紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:90J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.2、XおよびYの相乗平均:0.8J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%、叩解後フリーネス420mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0質量%、カチオン化澱粉0.3質量%(計0.3質量%))、サイズ剤(エマルションサイズ剤0.14質量%)、硫酸バンド1.4質量%)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[比較例4]
紙基材を、坪量130g/m、厚さ196μm、密度0.66g/cmの未晒クラフト紙(王子マテリア株式会社製、XおよびYの相乗平均:100J/m、Yに対するXの比(X/Y):1.2、XおよびYの相乗平均:0.8J/g、針葉樹未晒クラフトパルプ80質量%、広葉樹晒クラフトパルプ20質量%、叩解後フリーネス420mL、紙力増強剤(ポリアクリルアミド0質量%、カチオン化澱粉0.3質量%(計0.3質量%))、サイズ剤(エマルションサイズ剤0.14質量%)、硫酸バンド1.4質量%)に変更した以外は実施例1と同様にしてヒートシール紙を得た。
[評価]
<ヒートシール紙の坪量>
JIS P 8124:2011に準じて、ヒートシール紙の坪量を測定した。
<ヒートシール紙の厚さ>
JIS P 8118:2014に準じて、ヒートシール紙の厚さを測定した。
<ヒートシール紙の密度>
JIS P 8118:2014に準じて、ヒートシール紙の密度を測定した。
<引張エネルギー吸収量>
実施例および比較例のヒートシール紙について、JIS P 8113:2006に準拠して、縦方向の引張エネルギー吸収量X1a、横方向の引張エネルギー吸収量Y1aを測定し、X1aおよびY1aの相乗平均、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)を算出した。
<比引張エネルギー吸収量>
実施例および比較例のヒートシール紙について、JIS P 8113:2006に準拠して、縦方向の比引張エネルギー吸収量X2a、横方向の比引張エネルギー吸収量Y2aを測定し、X2aおよびY2aの相乗平均を算出した。
<ヒートシール剥離強度の測定>
1組のヒートシール紙を、ヒートシール層が向き合うように重ね、ヒートシールテスター(テスター産業製、TP-701-B)を用いて、160℃、0.2MPa、1秒の条件でヒートシールした。続いて、ヒートシールされた試験片を15mm幅にカットし、引張試験機を用いて、引張速度300mm/minでT字剥離し、記録された最大荷重をヒートシール剥離強度とした。
<再離解性(再離解後のパルプ回収率)の評価>
絶乾質量30gのヒートシール紙を手で3~4cm角に破き、20℃の水道水に一晩浸漬した。ヒートシール紙の濃度を2.5%になるよう希釈後、TAPPI標準離解機(熊谷理機株式会社製)を用いて3000rpmの回転数で20分間離解処理した。得られたパルプスラリーを6カット(スリット幅0.15mm)のスクリーンプレートをセットしたフラットスクリーン(熊谷理機株式会社製)に供し、8.3L/minの水流中で精選処理した。スクリーンプレート上に残った未離解物を回収して105℃のオーブンで乾燥して絶乾質量を測定し、以下の計算式:
パルプ回収率(%)={試験に供したヒートシール紙の絶乾質量(g)-未離解物の絶乾質量(g)}/試験に供したヒートシール紙の絶乾質量×100
からパルプ回収率を算出した。
<ピロー成形加工性の評価>
ヒートシール紙を用いて、縦型ピロー成形機(株式会社川島製作所製KBF6000X2)により縦15cm、横11cmのピロー袋を作製し、以下の基準ででき栄えを評価した。
A:ピロー袋を成形でき、不具合はない
B:袋形状にはできるが、シワが入る、形が崩れる、シール不良になる等の不具合がある
C:ピロー袋の形にすることが不可能。
<耐衝撃性の評価>
縦400mm×横760mmに切ったヒートシール紙を、縦400mm×横380mmになるようにヒートシール層面同士が向き合う形で2つ折りにし、内部に3kgの砂利を入れた状態でシール幅10mmのインパルスシーラー(富士インパルス株式会社製、VG-400)でシールして、三方シール袋を5袋作製した。60cmの高さから「1:底角→2:ボトム→3:サイド→4:サイド→5:トップ→6:表面→7:裏面」の順で三方シール袋をコンクリート床へ落下させ、袋の破損状態を以下の基準で目視にて評価した。
A:上記1から7までを1セットとして、複数セット落下させても袋は破損しない(5袋全てが複数セットで破損しない)
B:上記1から7までを1セットとして、1セット以内に袋が破損することはないが、複数セットで袋が破損することがある(5袋中1袋以上が複数セットで破損する)
C:上記1から7までを1セットとして、1セット以内に袋が破損することがある(5袋中1袋以上が1セット以内に破損する)
D:上記1から7までを1セットとして、5袋全てが1セット以内に袋が破損する。
Figure 2023024856000001
結果を上記表1に示す。実施例1~5のヒートシール紙は、ピロー成形加工性および耐衝撃性に優れていた。中でも、超伸張紙を使用した実施例5は、少ないヒートシール層塗工量でも、ヒートシール剥離強度に優れていた。一方、比較例1~4のヒートシール紙は、ピロー成形加工性および耐衝撃性の少なくとも一方で劣っていた。

Claims (11)

  1. 紙基材の少なくとも一方の面に、少なくとも1層のヒートシール層を有するヒートシール紙であって、
    JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の引張エネルギー吸収量をX1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の引張エネルギー吸収量をY1a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される縦方向の比引張エネルギー吸収量をX2a、JIS P 8113:2006に準拠して測定される横方向の比引張エネルギー吸収量をY2aとしたとき、X1aおよびY1aの相乗平均が120J/m以上であり、Y1aに対するX1aの比(X1a/Y1a)が0.5以上2.0以下であり、X2aおよびY2aの相乗平均が2.0J/g以上である、ヒートシール紙。
  2. 前記紙基材の坪量が120g/m以下である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  3. 前記ヒートシール層が水分散性樹脂バインダーを含む、請求項1に記載のヒートシール紙。
  4. 前記水分散性樹脂バインダーは、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体およびスチレン/ブタジエン系共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のヒートシール紙。
  5. 前記ヒートシール層中の前記水分散性樹脂バインダーの含有量が50質量%以上99質量%以下である、請求項3に記載のヒートシール紙。
  6. 前記ヒートシール層が、滑剤をさらに含む、請求項3に記載のヒートシール紙。
  7. 前記滑剤が、カルナバワックスおよびパラフィンワックスからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のヒートシール紙。
  8. 前記ヒートシール層中の滑剤の含有量が0.2質量%以上20質量%以下である、請求項6に記載のヒートシール紙。
  9. 前記ヒートシール層が顔料をさらに含む、請求項3に記載のヒートシール紙。
  10. 再離解後のパルプ回収率が85%以上である、請求項1に記載のヒートシール紙。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載のヒートシール紙を用いた包装袋。
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