JP2023021929A - セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023021929A
JP2023021929A JP2022110418A JP2022110418A JP2023021929A JP 2023021929 A JP2023021929 A JP 2023021929A JP 2022110418 A JP2022110418 A JP 2022110418A JP 2022110418 A JP2022110418 A JP 2022110418A JP 2023021929 A JP2023021929 A JP 2023021929A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mol
concentration
less
dielectric layer
electronic component
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022110418A
Other languages
English (en)
Inventor
康之 猪又
Yasuyuki Inomata
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Taiyo Yuden Co Ltd
Original Assignee
Taiyo Yuden Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Taiyo Yuden Co Ltd filed Critical Taiyo Yuden Co Ltd
Priority to US17/864,179 priority Critical patent/US20230046855A1/en
Priority to TW111128750A priority patent/TW202319366A/zh
Priority to CN202210920896.XA priority patent/CN115701642A/zh
Publication of JP2023021929A publication Critical patent/JP2023021929A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ceramic Capacitors (AREA)
  • Fixed Capacitors And Capacitor Manufacturing Machines (AREA)

Abstract

【課題】 焼成温度が低くても十分な機械的硬度を確保することができるセラミック電子部品を提供する。【解決手段】 セラミック電子部品は、交互に積層された誘電体層11と内部電極層12とを備え、誘電体層11は、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiyZr1-y)O3(0.6≦x1≦0.9、0≦x2≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下である。【選択図】 図1

Description

本発明は、セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法に関する。
内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が知られている。そのセラミック電子部品は、内部電極層形成用の金属導電ペーストと誘電体層用の誘電体グリーンシートとを積層し、これらの積層体を焼成することで作製される。焼成の際には金属を主成分とする内部電極層の方が誘電体層よりも早く収縮するため、これらの層にクラックが発生するおそれがある。これを防ぐには焼成温度を低温化するのが有効である。例えば、特許文献1では1300℃以下で焼成が可能な誘電体材料について開示している。更に、特許文献2では軟化点温度が低いガラス成分を誘電体材料に使用することで焼成温度の低温化を実現している。
特開平10-335169号公報 特開2005-179105号公報
しかしながら、誘電体層にクラックが入るのを効果的に抑制するには、特許文献1が開示する1300℃よりも焼成温度を更に低温化するのが好ましい。また、特許文献2のようにガラス成分を用いたのでは、焼成時にセラミック粒子が凝集してしまい、誘電体層の平滑度が落ちてその機械的強度が低下するおそれがある。更に、焼成温度の低温化と機械的強度の向上とを両立させようとすると、誘電体層の品質が劣化するおそれもある。
本発明は、誘電体層の焼成温度が低くても誘電体層の品質を維持することが可能なセラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るセラミック電子部品は、交互に積層された誘電体層と内部電極層とを備え、前記誘電体層は、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とする。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層は、更にマンガン化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記マンガン化合物の濃度がMnOに換算して0.2モル%以上5.0モル%以下の濃度でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層は、更にケイ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ケイ素化合物の濃度がSiOに換算して0.5モル%以上5.0モル%以下の濃度でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層は、更にホウ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ホウ素化合物の濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下の濃度でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層の断面において前記イットリア安定化ジルコニアの粒子が占める面積比率は、1%以上15%以下でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層に複数の空隙が形成されており、前記断面において前記空隙が占める総面積は、前記断面において前記イットリア安定化ジルコニアの粒子が占める総面積よりも小さくてもよい。
上記セラミック電子部品において、前記空隙の長径は、0.15μm以上0.6μm以下でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記空隙と前記粒子とが接してもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層の厚さは、2μm以下でもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層の25℃における静電容量と125℃における静電容量との差による温度係数は、-300ppm/℃以上300ppm/℃以下でもよい。
本発明に係る誘電体材料は、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とする。
上記誘電体材料は、更にマンガン化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記マンガン化合物の濃度がMnOに換算して0.2モル%以上5.0モル%以下の濃度でもよい。
上記誘電体材料は、更にケイ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ケイ素化合物の濃度がSiOに換算して0.5モル%以上5.0モル%以下の濃度でもよい。
上記誘電体材料は、更にホウ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ホウ素化合物の濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下の濃度でもよい。
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートと、内部電極形成用の金属導電ペーストとが交互に積層された積層体を作製する工程と、前記積層体を焼成する工程とを有し、前記セラミック粉末が、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とする。
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記セラミック粉末は、TiとZrの総量を100モル%としたときの濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下であり、かつ比表面積が100m/g以上300m/g以下の窒化ホウ素を含んでもよい。
本発明によれば、誘電体層の焼成温度が低くても誘電体層の品質を維持することができる。
実施形態に係る積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。 図1のA-A線断面図である。 図1のB-B線断面図である。 積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。 (a)および(b)は積層工程を例示する図である。 積層工程を例示する図である。 積層工程を例示する図である。 実施例1に係る積層セラミックコンデンサの誘電体層と内部電極層との積層方向に垂直な断面の研磨面をSEM-EDSで観察して得られた像である。
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
(実施形態)
まず、積層セラミックコンデンサの概要について説明する。図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図3は、図1のB-B線断面図である。図1~図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じである。
誘電体層11の厚さは、積層セラミックコンデンサ100の容量を高めるという観点から2μm以下とするのが好ましい。また、内部電極層12の厚さは0.3μm以上1.5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上1.0μm以下とするのが好ましい。これにより、内部電極層12の厚膜化に起因した高コスト化を抑制しつつ、内部電極層12に不連続な領域が発生するのを抑制でき、更に内部電極層12を安定して焼成できる。積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された2つの隣接する内部電極層12が対向する領域である。
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、容量を生じない領域である。
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。
カバー層13およびサイドマージン16は、容量領域14の外周を覆うことで保護している。そこで、以下の説明では、カバー層13およびサイドマージン16を、総称してセラミック保護部50と称する。
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金),Sn(スズ)などを含む合金を用いてもよい。
誘電体層11は、ペロブスカイト化合物を主成分とし、かつY安定化ジルコニア(ZrO)を含有する。なお、Y安定化ジルコニアは、イットリア安定化ジルコニアであって、「YSZ」と呼ばれることもある。本実施形態ではペロブスカイト化合物として(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oを使用する。Y安定化ジルコニアはそれ単体で強度が非常に高い。そのため、誘電体層11と内部電極層12を低温で焼成しても誘電体層11の機械的強度を高めることができる。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。
また、(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oを100モル%としたときのY安定化ジルコニアの濃度が5.0モル%を超えると焼成時に誘電体層11が緻密化するのがY安定化ジルコニアによって妨げられる。よって、誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときのY安定化ジルコニアの濃度は5.0モル%以下とするのが好ましい。
一方、Y安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%未満となると、誘電体層11の機械的強度を十分に高めることができない。そのため、Y安定化ジルコニアの濃度は0.5モル%以上とするのが好ましい。
本実施形態では、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oの各組成比率を0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1とし、誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときのY安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下とする。これにより、誘電体層11を低温で焼成しても、誘電体層11の機械的強度等の品質を維持することができる。
なお、積層セラミックコンデンサの誘電体層は、その材料が常誘電体の場合にClass1と呼ばれ、強誘電体の場合にClass2と呼ばれる。本実施形態に係る誘電体層11はClass1に属する誘電体層である。
Class1の誘電体層11は、膜厚が薄くなると温度特性が変化することがある。これは内部電極層12と誘電体層11との熱膨張係数差が影響していると考えられる。Y安定化ジルコニアは、このような熱膨張係数差に起因する誘電体層11の歪みによって生じる温度特性の変化を抑制する働きもある。誘電体層11にY安定化ジルコニアを添加しない場合、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおける各組成比x1、x2、yを調整して温度特性の変化を抑制する必要があるが、本実施形態では単純にY安定化ジルコニウムの添加量を調節することで誘電体層11の温度特性の変化を抑制することができる。
更に、マンガン化合物、ケイ素化合物、及びホウ素化合物を更に誘電体層11が含有してもよい。これらの化合物が相まって作用することにより誘電体層11の焼結温度を低温化することができる。マンガン化合物としては例えばMnOやMnCOがあり、ケイ素化合物としては例えばSiOがある。また、ホウ素化合物としては例えば酸化ホウ素(B)、窒化ホウ素(BN)、及びホウ酸(HBOまたはB(OH))等がある。
特に、マンガン化合物をMnOに換算して0.2モル%以上5.0モル%以下、ケイ素化合物をSiOに換算して0.5モル%以上5.0モル%以下、ホウ素化合物を(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下の濃度で誘電体層11が含有するのが好ましい。なお、いずれの濃度も誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときの濃度である。この濃度範囲を採用することで、1220℃以下の低温で誘電体層11を焼成するのが容易となる。
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。図4は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための出発原料を用意する。ここではSrCO、CaCO、TiO、BaCO及びZrOの各粉末を出発原料として準備する。次いで、これらの粉末を秤量し、イオン交換水と分散剤でボールミルにて分散させることにより誘電体材料を得る。
次いで、誘電体材料を乾燥させた後に乾式粉砕を行い、更に1100℃で仮焼することにより、誘電体層11の主成分であるペロブスカイト粉末として(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O粉を得る。なお、本実施形態では0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、及び0≦y≦0.1とする。
次に、エンドマージン15およびサイドマージン16を形成するための逆パターン材料を用意する。逆パターン材料は、エンドマージン15およびサイドマージン16の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、上記と同様にして(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O粉を作製する。
次に、カバー層13を形成するためのカバー材料を用意する。カバー材料は、カバー層13の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、上記と同様にして(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O粉を作製する。
(積層工程)
次に、原料粉末作製工程で得られたペロブスカイト粉末にマンガン化合物、ケイ素化合物、ホウ素化合物、及びY安定化ジルコニアを添加したセラミック粉末を作製し、それを有機溶剤、バインダ、及び分散剤等と一緒にボールミル処理を行うことによりスラリーを得る。
なお、Y安定化ジルコニアにおけるイットリア(Y)の濃度は3モル%~8モル%とする。なお、ZrOとYの総量を100モル%としたときに、ZrOが97モル%でYが3モル%となるZrOとYとの固溶体を以下では3Y安定化ジルコニアと書く。
同様に、ZrOとYの総量を100モル%としたときに、ZrOが95モル%でYが5モル%となるZrOとYとの固溶体を以下では5Y安定化ジルコニアと書く。
また、ZrOとYの総量を100モル%としたときに、ZrOが92モル%でYが8モル%となるZrOとYとの固溶体を以下では8Y安定化ジルコニアと書く。更に、以下では3Y安定化ジルコニア、5Y安定化ジルコニア、及び8Y安定化ジルコニアを使用しているが、3Y~8Yの範囲内にある安定化ジルコニアを用いてもよい。
また、マンガン化合物は例えばMnCOであり、MnOに換算して0.2モル%~5.0モル%の濃度でセラミック粉末に添加する。一方、ケイ素化合物は例えばSiOであり、0.5モル%~5.0モル%の濃度でセラミック粉末に添加する。更に、ホウ素化合物は、例えば窒化ホウ素であり、(B)/2に換算して0.2モル%~1.0モル%の濃度でセラミック粉末に添加する。
なお、窒化ホウ素は、有機溶剤に溶出し難いため、スラリーのゲル化を抑制することができる。特に、比表面積が100m/g以上300m/g以下の窒化ホウ素はスラリーのゲル化を効果的に抑制することができる。なお、窒化ホウ素に代えてBやホウ酸を使用してもよい。
その後、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム等の基材の上にスラリーをテープキャストすることにより厚さが3μm程度の誘電体グリーンシートを得る。
次いで、誘電体グリーンシートの表面に、有機バインダを含む内部電極層用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷する。金属導電ペーストには、ニッケルに加えて共材としてセラミック粒子を添加する。共材として添加するセラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
次に、図5(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の第1パターン52を配置する。金属導電ペーストには、ニッケルに加えて共材としてセラミック粒子を添加する。共材として添加するセラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
次に、原料粉末作製工程で得られた逆パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターン層用の逆パターンペーストを得る。図5(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51上において、第1パターン52が印刷されていない周辺領域に逆パターンペーストを印刷することで第2パターン53を配置し、第1パターン52との段差を埋める。
その後、図5(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層していく。例えば、誘電体グリーンシート51の積層数を100~500層とする。
次に、原料粉末作製工程で得られたカバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み10μm以下の帯状のカバーシート54を塗工して乾燥させる。図6で例示するように、積層された誘電体グリーンシート51の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットし、その後に外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両側面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、セラミック積層体が得られる。なお、所定数のカバーシート54を積層して圧着してから、積層された誘電体グリーンシート51の上下に貼り付けてもよい。
図5(a)~図6の手法では、誘電体グリーンシート51のうち第1パターン52に対応する部分と、第1パターン52と、が積層された領域が、(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O粒子を主成分セラミックとするシートと金属導電ペーストのパターンとが交互に積層された積層部分に相当する。誘電体グリーンシート51のうち第1パターン52よりも外側にはみ出した部分と、第2パターン53と、が積層された領域が、積層部分の側面に配置されたサイドマージン領域に相当する。
サイドマージン領域は、上記積層部分の側面に貼り付けまたは塗布してもよい。具体的には、図7で例示するように、誘電体グリーンシート51と、当該誘電体グリーンシート51と同じ幅の第1パターン52とを交互に積層することで、積層部分を得る。次に、積層部分の側面に、逆パターンペーストで形成したシートを貼り付ける、または逆パターンペーストを塗布することで得られる第2パターン53で、サイドマージン領域を形成してもよい。
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地となるNiペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1220℃以下の温度で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
(再酸化処理工程)
その後、Nガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
上記した本実施形態によれば、誘電体層11がY安定化ジルコニアと主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときのY安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下である。
これにより、焼成工程における温度が1220℃以下の低温であっても、機械的に強固なY安定化ジルコニアによって誘電体層11の機械的強度を高めることができる。
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
次に、実施例と比較例について説明する。表1は、実施例と比較例のそれぞれの条件について示す表である。
Figure 2023021929000002
(実施例1)
SrCO、CaCO、TiO及びZrOの各粉末を秤量し、イオン交換水と分散剤でボールミルにて分散させることにより誘電体材料を得た。次いで、誘電体材料を乾燥させた後に乾式粉砕を行い、更に1100℃で仮焼することにより、誘電体層11の主成分であるペロブスカイト粉末として(Ca0.7Sr0.3)(Ti0.03Zr0.97)O粉を得た。
そのペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1モル%、ケイ素化合物としてSiOを1モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.3モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを2モル%の濃度で添加した。なお、これらの濃度は、完成した製品の誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときの濃度である。これについては後述の各実施例と各比較例でも同様である。
また、誘電体層11の厚さは2μmとし、内部電極層12と誘電体層11との積層数は100層とした。
(実施例2)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して0.2モル%、ケイ素化合物としてSiOを2モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.2モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例3)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1.5モル%、ケイ素化合物としてSiOを1モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例4)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.6とした。
また、このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1モル%、ケイ素化合物としてSiOを3モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例5)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.9とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して2モル%、ケイ素化合物としてSiOを0.5モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.5モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを2.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例6)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるyの値を0とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して3モル%、ケイ素化合物としてSiOを5モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して1モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例7)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるyの値を0.05とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して5モル%、ケイ素化合物としてSiOを1モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.2モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例8)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.8とし、yの値を0.07とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して0.2モル%、ケイ素化合物としてSiOを1モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.7モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例9)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.8とし、yの値を0.1とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して2モル%、ケイ素化合物としてSiOを1モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.4モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを0.4モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例10)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して0.1モル%、ケイ素化合物としてSiOを0.5モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.4モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例11)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して7モル%、ケイ素化合物としてSiOを2モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例12)
ペロブスカイト粉末にケイ素化合物としてSiOを0.4モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例13)
ペロブスカイト粉末にケイ素化合物としてSiOを5.2モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.2モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを3.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例14)
ペロブスカイト粉末にホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.1モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例15)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1.5モル%、ケイ素化合物としてSiOを1.5モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して1.2モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例16)
ペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例17)
ペロブスカイト粉末にホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.4モル%の濃度で添加した。また、ペロブスカイト粉末に5Y安定化ジルコニアを1モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例18)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるyの値を0.04とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1.5モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に5Y安定化ジルコニアを3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例19)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるyの値を0.04とした。
このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して2モル%の濃度で添加した。更に、そのペロブスカイト粉末に8Y安定化ジルコニアを3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例20)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるyの値を0.04とした。
ペロブスカイト粉末にケイ素化合物としてSiOを2モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.5モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に8Y安定化ジルコニアを3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例21)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.01とした。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例22)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.65とし、xの値を0.1とした。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例23)
誘電体層11の厚さを0.7μmとした。これ以外は実施例1と同様である。
(実施例24)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.65とした。また、誘電体層11の厚さを0.7μmとした。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例1)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.5とした。また、このペロブスカイト粉末にホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.2モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例2)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.95とした。更に、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例3)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.8とし、yの値を0.12とした。更に、このペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1.5モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.4モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを1.5モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例4)
ペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを0.3モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例5)
ペロブスカイト粉末にマンガン化合物としてMnCOをMnOに換算して1.5モル%、ケイ素化合物としてSiOを2モル%、ホウ素化合物として窒化ホウ素を(B)/2に換算して0.5モル%の濃度で添加した。また、そのペロブスカイト粉末に3Y安定化ジルコニアを7モル%の濃度で添加した。これ以外は実施例1と同様である。
(比較例6)
ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるxの値を0.45とし、xの値を0.15とし、yの値を0.05とした。これ以外は実施例1と同様である。
表2は、実施例1~19及び比較例1~11のそれぞれに係る誘電体層11の品質の調査結果を示す表である。誘電体層11の品質として、この例では比誘電率(ε)、Q値、温度係数(τC)、加速寿命、及び3点曲げ強度を採用した。更に、表2には、誘電体層11の焼成温度、及び誘電体層11に含まれる安定化ジルコニア相の割合も併記してある。
Figure 2023021929000003
ここでは、LCRメータを用いて1kHz-1Vrmsの設定条件で静電容量とQ値とを測定した。比誘電率εは、以下の式に基づいて静電容量Cから求めた。
・ε=(C×誘電体層11の厚さ)/(誘電体層11の層数×ε×有効交差面積)
但し、εは真空の誘電率である。温度係数(τC)は、温度が1℃変化したときの静電容量の変化量(ppm)である。ここでは、25℃と125℃のそれぞれの静電容量の差から温度係数を求めた。また、静電容量は恒温槽で測定した。
加速寿命は、50V/μmの電界中で積層セラミックコンデンサ100を200℃に加熱してからその絶縁抵抗値が初期値から2桁低下するまでの時間の平均値である。
3点曲げ強度は、複数の積層セラミックコンデンサ100に対して3点曲げ試験を行ったときの平均値である。
ここでは、市場の要求値に基づいて比誘電率が29以上、Q値2000以上、温度係数が±300ppm/℃の範囲内、加速寿命が500h以上、3点曲げ試験が250MPa以上を合格とした。また、焼成温度については、1220℃以下で緻密化して焼成できるものを合格とした。
表2に示すように、実施例1~24においては、誘電体層11の品質が全て合格の範囲内にある。
一方、比較例1は、温度係数が-347ppm/℃であり、合格範囲(±300ppm/℃の範囲)から外れている。これは、比較例1においては、ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおいて組成比xの値が0.6未満であるためである。
また、比較例2は、比誘電率が28であり、合格範囲(29以上)から外れている。これは、比較例2においては、ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおいて組成比xの値が0.9を超えているためである。
比較例3は、温度係数が-375ppm/℃であり、合格範囲(±300ppm/℃の範囲)から外れている。これは、比較例3においては、ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおいて組成比yの値が0.1を超えているためである。
比較例4は、3点曲げ強度が210MPaであり、合格範囲(250MPa以上)から外れている。これは、比較例4においては、ペロブスカイト粉末に添加した3Y安定化ジルコニアの添加量が0.5モル%未満であり、安定化ジルコニアによる強度の向上が図られていないためである。
比較例5は、1220℃以下の焼成温度で緻密化しなかった。これは、比較例10においては、ペロブスカイト粉末に添加した3Y安定化ジルコニアの添加量が5.0モル%を超えているためである。
比較例6は、3点曲げ強度が180MPaであり、合格範囲(250MPa以上)から外れている。これは、比較例11においては、ペロブスカイト粉末の材料である(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおいて組成比xの値が0.6未満であり、更に組成比xの値が0.1を超えているためである。
以上の結果から、1220℃以下の温度で誘電体層11を焼成しても誘電体層11の品質を維持できるようにするためには、Y安定化ジルコニアの濃度を0.5モル%以上5.0モル%以下の範囲にし、かつ(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)Oにおけるx、x、yの各組成比を0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1とするのが好ましいことが確かめられた。
また、実施例1~24の誘電体層11の厚さは、いずれも0.7μm~2μmであり、積層セラミックコンデンサ100の大容量化に有利な2μm以下である。実施例1~24では、このように薄い誘電体層11を1220℃以下の温度で焼成できる。しかも、誘電体層11にデラミネーションやクラック等の構造的な欠陥が生じず、かつEIA(アメリカ電子工業会)のC0K、C0J、C0H、及びC0Gの各基準を満たす±250ppm/℃の温度特性や、EIAのR2HとS2Kの各基準に対応した±300ppm/℃の温度特性を満たす高品位で強度の高い積層セラミックコンデンサ100を提供できる。
図8は、実施例1に係る積層セラミックコンデンサ100の誘電体層11と内部電極層12との積層方向に垂直な断面の研磨面をSEM-BSE(Scanning Electron Microscope-Backscattered Electron)で観察して得られた像である。なお、SEMの倍率は5000倍である。図8において、11pはY安定化ジルコニアの粒子であり11sは空隙を表している。図8に示したように空隙11sに接してY安定化ジルコニア11pが存在していることにより空隙を起点としたクラックの伸長を抑制することができる。
誘電体層11の組成の同定と定量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析による化学分析の他に、図8のような誘電体層11の断面をSEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)で分析することで行い得る。なお、分析に際しては、偏析した組成物の影響がないように十分大きな領域を確保し、必要に応じて検量線となる標準試料を同時に分析して比較、数値化することで定量分析値の信頼性を高めるのが好ましい。
また、前述のように誘電体層11におけるTiとZrの総量を100モル%としたときのY安定化ジルコニアの濃度を0.5モル%以上5.0モル%以下とすると、Y安定化ジルコニアの粒子11pが誘電体層11の断面において占める面積比率が1%以上15%以下となることが明らかとなった。なお、面積比率は、誘電体層11のSEM断面の任意の位置から面積が10μmの領域を切り取り、その領域に含まれる全ての粒子11pの総面積と、当該領域の面積との比率で定義される。
また、誘電体層11には複数の空隙11sが形成されており、その空隙11sによって誘電体層11の靭性が向上する。但し、空隙11sの総面積が大きすぎると誘電体層11の3点曲げ強度等の機械的強度が低下してしまう。そのため、誘電体層11の断面において空隙11sが占める総面積を、誘電体層11の断面において粒子11pが占める総面積よりも小さくすることで、空隙11sに起因した誘電体層11の機械的強度の低下を防ぐのが好ましい。
なお、空隙11sの総面積は、誘電体層11のSEM断面の任意の位置から面積が10μmの領域を切り取り、その領域に含まれる全ての空隙11sの面積の合計値として定義される。また、粒子11pの総面積は、空隙11sの総面積の算出に使用したのと同じ領域に含まれる全ての粒子11pの面積の合計値として定義される。
また、一つの空隙11sが大きすぎても誘電体層11の機械的強度が低下するため、断面視における空隙11sの長径を0.1μm以上0.6μm以下とするのが好ましい。なお、長径の下限を0.1μmとしたのは、これよりも小さい空隙11sでは誘電体層11の靭性を向上させるのが困難なためである。また、長径の上限を0.6μmとしたのは、これよりも大きいと空隙11sによって誘電体層11の機械的強度が低下するためである。
より好ましくは、断面視における空隙11sの長径を0.15μm以上0.3μm以下とするのが好ましい。これにより、誘電体層11の機械的な品質を高い状態に維持することができる。
更に、誘電体層11の断面においてY安定化ジルコニアの粒子11pが空隙11sと接するのが好ましい。これにより、空隙11sが起点となって誘電体層11にクラックが生じるのを機械的に強固な粒子11pによって抑えることができる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a,20b 外部電極
50 セラミック保護部
100 積層セラミックコンデンサ

Claims (16)

  1. 交互に積層された誘電体層と内部電極層とを備え、
    前記誘電体層は、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とするセラミック電子部品。
  2. 前記誘電体層は、更にマンガン化合物を含み、
    TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記マンガン化合物の濃度がMnOに換算して0.2モル%以上5.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック電子部品。
  3. 前記誘電体層は、更にケイ素化合物を含み、
    TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ケイ素化合物の濃度がSiOに換算して0.5モル%以上5.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
  4. 前記誘電体層は、更にホウ素化合物を含み、
    TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ホウ素化合物の濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
  5. 前記誘電体層の断面において前記イットリア安定化ジルコニアの粒子が占める面積比率は、1%以上15%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
  6. 前記誘電体層に複数の空隙が形成されており、前記断面において前記空隙が占める総面積は、前記断面において前記イットリア安定化ジルコニアの粒子が占める総面積よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載のセラミック電子部品。
  7. 前記空隙の長径は、0.1μm以上0.6μm以下であることを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品。
  8. 前記空隙と前記粒子とが接していることを特徴とする請求項6に記載のセラミック電子部品。
  9. 前記誘電体層の厚さは、2μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
  10. 前記誘電体層の25℃における静電容量と125℃における静電容量との差による温度係数は、-300ppm/℃以上300ppm/℃以下である請求項1または請求項2に記載のセラミック電子部品。
  11. イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とする誘電体材料。
  12. 更にマンガン化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記マンガン化合物の濃度がMnOに換算して0.2モル%以上5.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項11に記載の誘電体材料。
  13. 更にケイ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ケイ素化合物の濃度がSiOに換算して0.5モル%以上5.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項11または12に記載の誘電体材料。
  14. 更にホウ素化合物を含み、TiとZrの総量を100モル%としたときに、前記ホウ素化合物の濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下の濃度であることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の誘電体材料。
  15. セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートと、内部電極形成用の金属導電ペーストとが交互に積層された積層体を作製する工程と、
    前記積層体を焼成する工程とを有し、
    前記セラミック粉末は、イットリア安定化ジルコニアと、主成分の(Cax1Bax2Sr1-x1-x2)(TiZr1-y)O(0.6≦x≦0.9、0≦x≦0.1、0≦y≦0.1)とを含み、TiとZrの総量を100モル%としたときのイットリア安定化ジルコニアの濃度が0.5モル%以上5.0モル%以下であることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
  16. 前記セラミック粉末が、TiとZrの総量を100モル%としたときの濃度が(B)/2に換算して0.2モル%以上1.0モル%以下であり、かつ比表面積が100m/g以上300m/g以下の窒化ホウ素を含むことを特徴とする請求項15に記載のセラミック電子部品の製造方法。
JP2022110418A 2021-08-02 2022-07-08 セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法 Pending JP2023021929A (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US17/864,179 US20230046855A1 (en) 2021-08-02 2022-07-13 Ceramic electronic device, dielectric material, and manufacturing method of ceramic electronic device
TW111128750A TW202319366A (zh) 2021-08-02 2022-08-01 陶瓷電子零件、介電體材料、及陶瓷電子零件之製造方法
CN202210920896.XA CN115701642A (zh) 2021-08-02 2022-08-02 陶瓷电子器件、电介质材料和陶瓷电子器件的制造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021126539 2021-08-02
JP2021126539 2021-08-02

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023021929A true JP2023021929A (ja) 2023-02-14

Family

ID=85201518

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022110418A Pending JP2023021929A (ja) 2021-08-02 2022-07-08 セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023021929A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN108735508B (zh) 多层陶瓷电容器及其制造方法
KR102587765B1 (ko) 적층 세라믹 콘덴서 및 그 제조 방법
JP5835150B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ
JP6686676B2 (ja) 積層セラミックコンデンサおよびその製造方法
KR101494851B1 (ko) 적층 세라믹 콘덴서 및 적층 세라믹 콘덴서의 제조방법
JP2019102766A (ja) セラミック電子部品およびその製造方法
JP6443072B2 (ja) 積層型セラミック電子部品
WO2006082833A1 (ja) 積層セラミックコンデンサ、及び該積層セラミックコンデンサの製造方法
JP2020155523A (ja) 積層セラミックコンデンサ
CN112216510A (zh) 陶瓷电子器件及其制造方法
CN112992538B (zh) 电介质组合物及电子部件
JP2022145817A (ja) セラミックコンデンサ
JP5558249B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ
JPWO2009041160A1 (ja) 誘電体セラミック及び積層セラミックコンデンサ
JP5387800B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ、および積層セラミックコンデンサの製造方法
CN115403370B (zh) 电介质组合物及层叠陶瓷电子部件
JP2023021929A (ja) セラミック電子部品、誘電体材料、及びセラミック電子部品の製造方法
JP7169069B2 (ja) 積層セラミックコンデンサおよびその製造方法
US20230046855A1 (en) Ceramic electronic device, dielectric material, and manufacturing method of ceramic electronic device
US20230298821A1 (en) Ceramic electronic device, dielectric material, and manufacturing method of ceramic electronic device
JP2017204562A (ja) 積層セラミックコンデンサの製造方法
JP5534942B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ
JP5534976B2 (ja) 積層セラミックコンデンサ
TW202239732A (zh) 陶瓷電子零件及其製造方法
JP2024076784A (ja) 積層電子部品