JP2023015909A - ジルコニウムの精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射性ジルコニウムを溶出させる際の酸性溶液の使用量を低減すること。【解決手段】ジルコニウムの精製方法は、ジルコニウムを含むイットリウムを溶解用酸性溶液に溶解して得られた溶解液を、陽イオン交換樹脂を母材とした樹脂に接触させて、ジルコニウムを樹脂に選択的に吸着させる吸着工程と、吸着工程の後、樹脂に酸性溶液を通液して、ジルコニウムイオンの錯体を含む回収通過液を得る回収工程と、を含み、樹脂の細孔径が30nm未満、好適には10nm以下である。【選択図】図2

Description

本発明は、ジルコニウムの精製方法に関する。
従来、放射性ジルコニウムは、医用イメージングに有効な放射性同位元素であることが知られている。そのため、放射性ジルコニウムの製造方法および精製方法の確立が求められている。製造方法としては、イットリウム(Y)ターゲットに対して陽子線を照射する方法が知られている。陽子線を用いた製造方法においては、数百ミリグラム単位のイットリウム中に、数十~数百ナノグラム単位の微量の放射性ジルコニウムが生成される。微量の放射性ジルコニウムが生成されたイットリウムから、放射性ジルコニウムを精製する精製方法としては、キレート樹脂を用いる方法が知られている。例えば、非特許文献1には、機能基としてヒドロキサム酸基を有するキレート樹脂(以下、ヒドロキサム酸樹脂)を使用して、イットリウムから放射性ジルコニウムを精製する方法が記載されている。
非特許文献1に記載されたヒドロキサム酸樹脂を用いた放射性ジルコニウムの精製方法においては、ヒドロキサム酸樹脂が有する多価金属イオン、特に4価以上の金属イオンと強いキレート結合を形成する性質を利用している。すなわち、ヒドロキサム酸樹脂は、4価であるジルコニウムイオンと、3価のイットリウムイオンとにおける、吸着力の相違による選択性を利用して、ジルコニウムイオンの精製に利用される。そこで、放射性ジルコニウムが生成されたイットリウムターゲットを塩酸によって溶解した後、得られた溶解液をヒドロキサム酸樹脂に通液すると、溶解液中のジルコニウムイオンがヒドロキサム酸樹脂に選択的に吸着される。ジルコニウムイオンを吸着して捕集したヒドロキサム酸樹脂に対して、洗浄用の水や酸性溶液を通液した後にシュウ酸水溶液((COOH)2)などの酸性溶液を通液すると、シュウ酸水溶液中に放射性ジルコニウムが溶出しジルコニウム(89Zr)を回収できる。非特許文献1などで使用されるヒドロキサム酸樹脂は、カルボキシル基を有する陽イオン交換樹脂を、カルボジイミドの存在下でテトラフルオロフェノール等と反応させて活性エステル化し、この活性エステルをろ別により分離した後、ヒドロキシルアミンなどと反応させて製造することができる。
特表2017-521645号公報
Jason P.Holland et al. "Standardized methods for the production of high specific-activity zirconium-89", Nucl. Med. Biol., 2009, 36, 729-739. Lars R. Perk et al. "p-Isothiocyanatobenzyl-desferrioxamine: a new bifunctional chelate for facile radiolabeling of monoclonal antibodies with zirconium-89 for immuno-PET imaging", European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging, 2010, 37, 250-259.
しかしながら、従来技術による、ヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法においては、放射性ジルコニウム(89Zr)を溶出させる場合に用いるシュウ酸水溶液などの酸性溶液の使用量が多いという問題があった。そのため、放射性ジルコニウムを溶出させる際の酸性溶液の使用量を低減できるジルコニウムの精製方法の開発が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、放射性ジルコニウムを溶出させる際の酸性溶液の使用量を低減できるジルコニウムの精製方法を提供することにある。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、ジルコニウムを含むイットリウムを溶解用酸性溶液に溶解して得られた溶解液を、陽イオン交換樹脂を母材とした樹脂に接触させて、ジルコニウムを前記樹脂に選択的に吸着させる吸着工程と、前記吸着工程の後、前記樹脂に酸性溶液を通液して、ジルコニウムイオンの錯体を含む回収通過液を得る回収工程と、を含み、前記樹脂の細孔径が30nm未満である。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記陽イオン交換樹脂の細孔径が10nm以下である。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記吸着工程の後かつ前記回収工程の前に、前記陽イオン交換樹脂を洗浄する洗浄工程を含む。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記酸性溶液が通液される前記樹脂の量が10mg以下である。
本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、上記の発明において、前記陽イオン交換樹脂がヒドロキサム酸樹脂である。本発明の一態様に係るジルコニウムの精製方法は、この構成において、前記ヒドロキサム酸樹脂は、カルボジイミドの存在下、陽イオン交換樹脂の交換基であるカルボキシル基と、ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンとを反応させてヒドロキサム酸基とする反応工程と、前記ヒドロキサム酸基を有する前記陽イオン交換樹脂、およびカルボジイミド由来の副生成物を含む反応液をろ過および洗浄してヒドロキサム酸基を有する前記陽イオン交換樹脂を分離および精製する分離工程と、を含んで製造され、前記反応工程で使用する溶媒を、カルボジイミド、およびヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを溶解し、かつカルボキシル基と反応しない有機溶媒とする。
本発明の係るジルコニウムの精製方法によれば、放射性ジルコニウムを溶出させる際の酸性溶液の使用量を低減することが可能となる。
図1は、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。 図2は、本発明の一実施形態によるヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法に沿った放射性ジルコニウムの溶出率を示すグラフである。 図3は、本発明の一実施形態によるヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法に沿った放射性ジルコニウムの溶出率を示すグラフである。 図4は、従来のヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法に沿った放射性ジルコニウムの溶出率を示すグラフである。 図5は、従来のヒドロキサム酸樹脂を用いたジルコニウムの精製方法に沿った放射性ジルコニウムの溶出率を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。また、本発明は以下に説明する一実施形態によって限定されるものではない。
(第1ヒドロキサム酸樹脂の製造方法)
まず、上述した非特許文献1などに記載されているヒドロキサム酸樹脂(R-C(=O)NHOH、R:樹脂の母材)について説明する。ヒドロキサム酸樹脂は、市販の弱酸性イオン交換樹脂(R-C(=O)OH、R:樹脂の母材)のカルボキシル基と、ヒドロキシルアミン(H2N-OH)とを反応させて合成している。具体的には、ヒドロキサム酸樹脂は、以下の反応式(1),(2)の2段階の反応によって合成することができる。
Figure 2023015909000002
反応式(1)に示す第1の反応は、水溶液中、カルボジイミド(R1-N=C=N-R2)存在下で、弱酸性陽イオン交換樹脂とテトラフルオロフェノールを反応させ、弱酸性陽イオン交換樹脂のカルボキシル基を活性エステル化する。カルボジイミドはカルボキシル基の活性エステル化を促進させる。
第1の反応後、カルボジイミド由来の副生成物を分離するために、活性エステル化された弱酸性陽イオン交換樹脂をろ別、洗浄した後、反応式(2)に示す第2の反応を行う。第2の反応は、活性エステル化された弱酸性陽イオン交換樹脂をヒドロキシルアミンと反応させてヒドロキサム酸基とする反応である。第2の反応後、ヒドロキサム酸樹脂をろ別して洗浄する。
上述した第1ヒドロキサム酸樹脂の合成方法においては、水溶液中において第1の反応および第2の反応を行う。この場合、以下の反応式(3)および反応式(4)に示すように、反応中間体が水と反応して失活する場合がある。
Figure 2023015909000003
(第2ヒドロキサム酸樹脂の製造方法)
そこで、本発明者は、反応に要する材料の使用量を低減するために鋭意検討を行い、さらにヒドロキサム酸樹脂の製造方法を案出した。すなわち、本発明者が案出したヒドロキサム酸樹脂の製造方法においては、反応工程と、分離工程とを含む。反応工程は、カルボジイミドの存在下、陽イオン交換樹脂の交換基であるカルボキシル基と、ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンとを反応させてヒドロキサム酸基とする。反応工程で用いる溶媒は、カルボジイミド、およびヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを溶解し、かつそれらの物質と反応しない有機溶媒とする。分離工程は、ヒドロキサム酸基を有する陽イオン交換樹脂、およびカルボジイミド由来の副生成物を含む反応液をろ過、洗浄してヒドロキサム酸基を有する陽イオン交換樹脂を分離、精製する。ここで、陽イオン交換樹脂は、交換基としてカルボキシル基を有するものであればよく、アクリル酸系およびメタクリル酸系のいずれも使用できる。陽イオン交換樹脂としては、具体的に例えば、Accell plus CM(Waters社製)やCBA樹脂(ジーエルサイエンス社製)を用いることができる。
カルボジイミド(R1-N=C=N-R2)は、後述する有機溶媒に溶解するものであれば、種類を問わない。R1およびR2は、同一であっても異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素数1~5のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基であり、例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-N-エチルカルボジイミド、N-tert-ブチル-N-エチルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N-(2-モルホリノエチル)カルボジイミド・メト-p-トルエンスルホネート、N,N-ジ-tert-ブチルカルボジイミド、N,N-ジ-p-トリルカルボジイミドなどを例示できる。
溶媒は、カルボジイミドおよびヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを溶解し、かつカルボキシル基と反応しない有機溶媒であればよい。溶媒は、極性、かつ非プロトン性の溶媒であり、カルボキシル基と反応するヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基を有しないものを用いる。例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリルなどを例示できる。
本発明者が案出したヒドロキサム酸樹脂の製造工程においては、反応式(5)に示す工程で行われる。
Figure 2023015909000004
交換基としてカルボキシル基を有する陽イオン交換樹脂(弱酸性陽イオン交換樹脂)を有機溶媒中に加えて懸濁させる。陽イオン交換樹脂が懸濁した溶媒中に、カルボジイミドを添加し、さらにヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを添加して、1時間程度撹拌してカルボキシル基をヒドロキシルアミド化する。塩酸ヒドロキシルアミンを用いる場合でも、塩基を加える必要はない。
上述した反応式(5)の反応において、陽イオン交換樹脂が有するカルボキシル基1等量に対し、カルボジイミドを1.1当量以上3等量以下の範囲、ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを1.1当量以上3等量以下の範囲で加えることが好ましい。本実施形態においては、溶媒として水を使用しないため、カルボジイミドおよびヒドロキシルアミンなどを過剰に添加する必要がなく、ヒドロキサム酸樹脂を低コストで得ることができる。また、上述した反応式(5)においては、カルボキシル基を有する陽イオン交換樹脂を、一段階でヒドロキシルアミンと反応させることができる。これにより、反応に要する手間を低減でき、生成物が樹脂であることから、ろ過によって、例えばカルボジイミドに由来する副生成物などの副生成物との分離を行うことができる。
本発明者が案出したヒドロキサム酸樹脂の製造方法においては、pH調整を行う必要がない。本発明者が、塩酸ヒドロキシルアミンに対して1当量のN,N-ジイソプロピルエチルアミンを加える系と加えない系とにおいて生成物を比較したところ、両者に差は見られなかった。この製造方法によって製造されたヒドロキサム酸樹脂は、製造工程において金属イオンを使用していないため、再生処理などを行うことなく、ジルコニウムイオンを吸着することができ、ジルコニウムイオンおよびイットリウムイオンを含む溶液から、ジルコニウムイオンを分離できる。
(ジルコニウムの精製方法)
次に、本発明の一実施形態によるジルコニウムの精製方法について説明する。まず、本発明の理解を容易にするために、本発明者が行った鋭意検討について説明する。
本発明者の知見によると、従来技術によるジルコニウムの精製方法においては、放射性ジルコニウムを溶出する溶出工程において、溶出用の酸性溶液であるシュウ酸((COOH)2)の使用量が多いという問題があった。具体的に、非特許文献1においては、ジルコニウム89(以下、89Zr)を溶出させるために用いるシュウ酸の使用量は、3mL程度であった。
一方、89Zrを抗体などの分子に標識する場合、89Zrを含有したシュウ酸溶液の使用量の上限は、1バッチあたり200μL程度であった。この場合、非特許文献1に記載されているように、精製した89Zrのうちで使用できる89Zrは、全量に対して(200/3000=)1/15(約6%)程度であった。すなわち、非特許文献1に記載された従来のジルコニウムの精製方法においては、89Zrを抗体などの分子に標識する場合において、標識抗体の製造量が少ない場合には、製造した89Zrのうちの一部の1/15(約6%)程度しか用いることができず、製造した89Zrのうちの残部の14/15(約94%)程度は廃棄せざるを得なかった。
そこで、本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決するために、ジルコニウムの精製に用いられる精製カラムに充填するヒドロキサム酸樹脂の使用量を低減する方法を案出した。これにより、従来に比して少量のシュウ酸を用いて89Zrを溶出することができるようになり、精製条件の最適化を図ることができる。本発明者は、実験および鋭意検討を重ね、ヒドロキサム酸樹脂の使用量を10mg程度にしても、89Zrを十分に吸着可能であることを見出した。なお、精製カラムの製造メーカによると、ヒドロキサム酸樹脂の使用量を10mg未満にすると、ヒドロキサム酸樹脂を精製カラム内に略均一に充填することが困難になる。そのため、ヒドロキサム酸樹脂の充填量や使用量が10mg程度であるとは、充填カラムに略均一にヒドロキサム酸樹脂を充填可能な下限値であるとも言える。
しかしながら、本発明者が実験を行ったところ、精製カラムに、質量が10mg程度のヒドロキサム酸樹脂を充填した場合であっても、89Zrの回収率を90%以上にするためには、シュウ酸溶液の使用量が400μL程度必要であることが判明した。これらの本発明者の検討によれば、上述したようなジルコニウムの精製条件の最適化だけでは、89Zrを溶出させる溶出溶液の使用量の低減が困難であると考えられる。
そこで、本発明者はさらに鋭意検討を行った。本発明者は、塩酸溶液中において89Zrは、周囲に水酸化物イオン(OH-)や水分子(H2O)などの比較的小さい大きさの分子によって配位された構造を有していると想定した。この想定に基づいて本発明者は、塩酸溶液中の89Zrに関しては、ヒドロキサム酸樹脂に対して、樹脂の細孔径に関わらず吸着されると考えた。なお、樹脂の細孔径は平均の細孔径である。一方、精製カラムにシュウ酸溶液を通液すると、89Zrは、シュウ酸と配位することによってヒドロキサム酸樹脂から脱離して精製カラムから溶出される。これとともに、89Zrがヒドロキサム酸樹脂に再度吸着する反応も考えられる。このように、89Zrが精製カラムに対して吸着と脱着とを、繰り返したり並行したりすることによって、89Zrの溶出工程においては、塩酸溶液に比して多量のシュウ酸溶液が必要になると考えられる。
さて、シュウ酸((COOH)2)は、水酸化物イオン(OH-)や水分子(H2O)に比して嵩高い分子であるため、ジルコニウムイオンに対して4配位して、[Zr(C2444-となる。さらに、電荷を中和するために、周囲に水素イオン(H+)や水分子(H2O)がさらに配位することも想定されることから、シュウ酸ジルコニウム錯体の分子サイズは比較的大きくなるものと考えられる。そのため、ヒドロキサム酸樹脂などの精製に用いる樹脂(以下、精製樹脂)の細孔径が小さい場合、シュウ酸と配位した状態の89Zrは樹脂の細孔の内部にふたたび入り込むことができず、精製樹脂に再吸着しない。これにより、89Zrは、少量のシュウ酸溶液であっても溶出可能となると考えられる。すなわち、本発明者は、細孔径が小さい精製樹脂を用いた場合、89Zrが分子サイズの比較的大きい錯体を形成することによって、サイズ排除クロマトグラフィのような効果を生じ、89Zrのシュウ酸錯体が精製樹脂から速やかに排除されると考えた。
本発明者は、以上の鋭意検討に基づいて、ジルコニウムの精製において、ヒドロキサム酸樹脂などの精製樹脂として、細孔径が比較的小さいイオン交換樹脂を母材として用いる方法を案出した。イオン交換樹脂は、見かけの表面においてイオン交換が行われるのみならず、樹脂の細孔の内部においてもイオン交換が行われる。従来技術においては、精製樹脂として、細孔径が30nm程度の細孔を有するイオン交換樹脂を母材としたヒドロキサム酸樹脂が用いられている。これに対し、本発明者が案出した細孔径が従来に比して小さい精製樹脂を用いることで、より少ない量のシュウ酸溶液であっても、89Zrを高い回収率で回収可能であることが確認された。本発明は、本発明者による以上の鋭意検討により案出されたものである。
上述した本発明者が案出したジルコニウムの精製方法について説明する。なお、本実施形態においては、精製樹脂として用いるヒドロキサム酸樹脂として、上述した第2ヒドロキサム酸樹脂を用いる。図1は、本実施形態によるジルコニウムの精製方法を説明するための模式図である。
図1に示すように、まず、陽子線照射により内部に放射性ジルコニウム(89Zr:以下、ジルコニウムまたはZr)(図示せず)が生成された89Yのイットリウムターゲット1を準備する。溶解工程においては、溶解槽2内の溶解用酸性溶液3によってZrが生成されたイットリウムターゲット1を溶解させて溶解液を調製する。ここで、溶解用酸性溶液3としては、水素イオン濃度が例えば0.5mol/L以上2.0mol/L以下の塩酸(HCl)が用いられる。また、イットリウムターゲット1を、例えば0.33g(330mg)用いる場合、2mL程度の溶解用酸性溶液3に溶解すればよい。また、塩酸以外に、硝酸(HNO3)や硫酸(H2SO4)の水溶液を用いることもできる。
吸着工程においては、溶解工程で得られた溶解液を、精製カラムとして用いられる上述したヒドロキサム酸樹脂4が充填されたキレート樹脂容器としての樹脂カラム5内に通液する。なお、ヒドロキサム酸樹脂4としては、上述した第2ヒドロキサム酸樹脂が用いられ、陽イオン交換樹脂として、細孔径が30nm未満の樹脂、好適には、細孔径が10nm以下の樹脂、具体的には細孔径が6nmの例えばCBA樹脂(ジーエルサイエンス社製)が用いられる。
樹脂カラム5は、各種溶液を通液後に排液口5aから排出可能に構成される。溶解液は、ヒドロキサム酸樹脂4に接触して、ジルコニウムイオン(Zr4+)がヒドロキサム酸樹脂4に吸着した後に、排液口5aから排出される。ここで、ジルコニウムイオン(Zr4+)のヒドロキサム酸樹脂4に対する平衡分配係数は、イットリウム(Y)に比して大きく、具体的に例えば、1mol/Lの塩酸において、ジルコニウム(Zr)は104.6に対して、イットリウム(Y)は10-0.2である。そのため、ヒドロキサム酸樹脂4には、ジルコニウムイオン(Zr4+)が選択的に吸着される。
洗浄工程においては、樹脂カラム5内に、例えば洗浄用酸性溶液を通液する。これにより、樹脂カラム5内の内壁やヒドロキサム酸樹脂4に付着した、イットリウムや溶解用酸性溶液などの不純物が洗浄されて、排液口5aから通過液として排出される。ここで、洗浄用酸性溶液としては、例えば水素イオン濃度が0.5mol/L以上2.0mol/L以下の塩酸、および水が用いられる。洗浄工程は、用いられる溶解用酸性溶液や洗浄用酸性溶液の濃度などによって適宜変更することが可能である。ここで、洗浄工程においては、溶解液の1倍量以上10倍量以下の範囲の洗浄用酸性溶液を用いて洗浄することが好ましい。
回収工程においては、樹脂カラム5内に、酸性溶液として回収酸性液を通液する。これにより、ヒドロキサム酸樹脂4に吸着したジルコニウムイオンが回収酸性液に溶出される。ジルコニウムを含む回収酸性液は、排液口5aから排出される。ここで、回収酸性液としては、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸水溶液、具体的に例えば、シュウ酸やクエン酸などを用いることができる。回収酸性液は例えば、濃度が0.1mol/L以上1mol/L以下のシュウ酸水溶液を用いることができる。また、回収酸性液のpHは1以上7以下とすることが好ましい。
(実施例)
次に、上述した一実施形態に基づいた実施例、および実施例の効果を説明するための比較例について説明する。本実施例において用いられるヒドロキサム酸樹脂としては次のように製造される。すなわち、交換基としてカルボキシル基を有する細孔径が6nmのCBA樹脂(ジーエルサイエンス社製)からなる陽イオン交換樹脂を1g、10mLのジメチルホルムアミドに加えて、撹拌により懸濁させる。陽イオン交換樹脂が懸濁した溶媒中に、85mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミドプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.2当量)を添加し、さらに31mgの塩酸ヒドロキシルアミン(1.2当量)を添加して、室温で2時間撹拌する。その後、陽イオン交換樹脂を含む反応溶液をろ紙によりろ別し、30mLの純水によって洗浄し、デシケータ中で一晩乾燥させてヒドロキサム酸樹脂を製造した。
一方、質量が例えば約0.33gのイットリウムターゲット1(イットリウム箔)に陽子線を照射して89Zrを生成させ、用量が2mLで濃度が2mol/Lの塩酸に溶解させた(溶解工程)。89Zrを塩酸に溶解させた溶解溶液を、第2ヒドロキサム酸樹脂が10mg充填された樹脂カラム5に通液した(吸着工程)。ここで、99%以上の89Zrの吸着が確認された。なお、ヒドロキサム酸樹脂への89Zrの吸着は、液相と樹脂相で吸着平衡に達した段階で、液相中に溶解している89Zrと樹脂相に吸着した89Zrのそれぞれの放射能を測定し、放射能の比率から算出した。
(第1実施例)
以上のようにして、樹脂カラム5に充填された第2ヒドロキサム酸樹脂に89Zrが吸着した状態で、用量が10mLで濃度が2.0mol/Lの塩酸、および用量が10mLの水を順次通液して樹脂カラム5の洗浄を行った(洗浄工程)。その後、回収酸性液として、用量が100μL(0.1mL)で濃度が1mol/Lのシュウ酸を、少なくとも1回、本実施例では10回通液して、89Zrを溶出させた回収通過液をそれぞれ回収した(回収工程)。第1実施例による、溶解工程において得られたターゲット溶解溶液、洗浄工程において得られた塩酸ならびに水、およびそれぞれの回収通過液に含まれる89Zrの放射能の比率を図2に示す。
図2から、実施例においては、回収酸性液を樹脂カラム5に1回通液させた段階で、約90%の89Zrを回収できることが分かる。すなわち、回収酸性液を100μLだけ用いるだけで、約90%の89Zrを回収できることが分かる。
(第2実施例)
第2実施例においては、樹脂カラム5に充填するヒドロキサム酸樹脂の量を100mgとしたこと以外は第1実施例と同様である。第2実施例による、溶解工程において得られたターゲット溶解溶液、洗浄工程において得られた塩酸ならびに水、およびそれぞれの回収通過液に含まれる89Zrの放射能の比率を図3に示す。
図3から、第2実施例においては、回収酸性液を7回通液させた段階で、約90%の89Zrを回収できることが分かる。すなわち、回収酸性液を700μL用いることによって、約90%の89Zrを回収できることが分かる。
(比較例)
次に、上述した実施例の効果を説明するための比較例について説明する。比較例においてヒドロキサム酸樹脂としては、非特許文献1に記載された方法で製造された第1ヒドロキサム酸樹脂を用いる。また、母材となる陽イオン交換樹脂としては、細孔径が30nmのAccell plus CM(Waters社製)を用いる。
(第1比較例)
第1比較例においては、樹脂カラム5に充填する樹脂を第1ヒドロキサム酸樹脂、および充填量を第1実施例と同様の10mgとし、溶解工程、吸着工程、洗浄工程、および回収工程についても、第1実施例と同様とする。ターゲット溶解溶液、塩酸ならびに水、およびそれぞれの回収通過液に含まれる89Zrの放射能の比率を図4に示す。
図4から、第1比較例においては、回収酸性液を4回通液させた段階で、約90%の89Zrを回収できることが分かる。すなわち、回収酸性液を400μL用いることによって、約90%の89Zrを回収できることが分かる。
(第2比較例)
第2比較例においては、樹脂カラム5に充填する樹脂を第1ヒドロキサム酸樹脂、および充填量を第2実施例と同様の100mgとし、溶解工程、吸着工程、洗浄工程、および回収工程については、第1,第2実施例と同様とする。ターゲット溶解溶液、塩酸ならびに水、およびそれぞれの回収通過液に含まれる89Zrの放射能の比率を図5に示す。
図5から、第2比較例においては、回収酸性液を9回通液させた段階で、約90%の89Zrが回収できることが分かる。すなわち、回収酸性液を900μL用いることによって、約90%の89Zrを回収できることが分かる。
第1実施例と第1比較例とを比較すると、細孔径が30nmのヒドロキサム酸樹脂を用いた第1比較例に比して、細孔径が6nmのヒドロキサム酸樹脂を用いた第1実施例の場合に、約90%の回収率を実現するための回収酸性液の量が、400μLから100μLと1/4に低減できることが分かる。すなわち、ヒドロキサム酸樹脂の細孔径を30nm未満の6nm以下にすることによって、使用する回収酸性液の使用量を低減できることが分かる。
また、第2実施例と第2比較例とを比較すると、細孔径が30nmのヒドロキサム酸樹脂を用いた第2比較例に比して、細孔径が6nmのヒドロキサム酸樹脂を用いた第2実施例の場合に、約90%の回収率を実現するための回収酸性液の量が、900μLから700μLと7/9に低減できることが分かる。すなわち、ヒドロキサム酸樹脂の細孔径を30nm未満の6nm以下にすることによって、使用する回収酸性液の使用量を低減できることが分かる。
さらに、第1実施例と第2実施例とを比較すると、樹脂カラム5に充填するヒドロキサム酸樹脂などの樹脂の充填量を100mgとした第2実施例に比して、充填量を10mgとした第1実施例の場合に、約90%の回収率を実現するための回収酸性液の量が、700μLから100μLと1/7に低減できることが分かる。すなわち、樹脂カラム5へのヒドロキサム酸樹脂の充填量を100mg以下の10mgとすることによって、使用する回収酸性液の使用量をさらに低減できることが分かる。
以上説明した一実施形態によれば、ジルコニウムイオンを吸着する樹脂の細孔径を30nm未満の10nm以下、例えば6nm以下にすることによって、ジルコニウムを回収するために通液させる回収酸性液としてのシュウ酸溶液などの酸性溶液の使用量を低減できるので、放射性ジルコニウムが吸着された樹脂から放射性ジルコニウムを溶出させる際の酸性溶液の使用量を低減できる。さらに、樹脂の使用量を10mg以下にすることによっても、回収酸性液として使用する酸性溶液の使用量を低減できる。
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよく、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。
例えば、上述した一実施形態においては、回収工程における回収酸性液としてシュウ酸水溶液を用いているが、必ずしもシュウ酸水溶液に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸(HOOC-R-COOH、Rは2価の置換基)、またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの、カルボキシル基を2つ以上有する有機酸水溶液を用いることも可能である。
1 イットリウムターゲット
2 溶解槽
3 溶解用酸性溶液
4 ヒドロキサム酸樹脂
5 樹脂カラム
5a 排液口

Claims (6)

  1. ジルコニウムを含むイットリウムを溶解用酸性溶液に溶解して得られた溶解液を、陽イオン交換樹脂を母材とした樹脂に接触させて、ジルコニウムを前記樹脂に選択的に吸着させる吸着工程と、
    前記吸着工程の後、前記樹脂に酸性溶液を通液して、ジルコニウムイオンの錯体を含む回収通過液を得る回収工程と、を含み、
    前記樹脂の細孔径が30nm未満である
    ジルコニウムの精製方法。
  2. 前記陽イオン交換樹脂の細孔径が10nm以下である
    請求項1に記載のジルコニウムの精製方法。
  3. 前記吸着工程の後かつ前記回収工程の前に、前記陽イオン交換樹脂を洗浄する洗浄工程を含む
    請求項1または2に記載のジルコニウムの精製方法。
  4. 前記酸性溶液が通液される前記樹脂の量が10mg以下である
    請求項1~3のいずれか1項に記載のジルコニウムの精製方法。
  5. 前記陽イオン交換樹脂がヒドロキサム酸樹脂である
    請求項1~4のいずれか1項に記載のジルコニウムの精製方法。
  6. 前記ヒドロキサム酸樹脂は、
    カルボジイミドの存在下、陽イオン交換樹脂の交換基であるカルボキシル基と、ヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンとを反応させてヒドロキサム酸基とする反応工程と、前記ヒドロキサム酸基を有する前記陽イオン交換樹脂、およびカルボジイミド由来の副生成物を含む反応液をろ過および洗浄してヒドロキサム酸基を有する前記陽イオン交換樹脂を分離および精製する分離工程と、を含んで製造され、前記反応工程で使用する溶媒を、カルボジイミド、およびヒドロキシルアミンまたは塩酸ヒドロキシルアミンを溶解し、かつカルボキシル基と反応しない有機溶媒とする
    請求項5に記載のジルコニウムの精製方法。
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