JP2023013994A - 筐体 - Google Patents

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Takeshi Tomori
彰太 野口
Shota Noguchi
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Abstract

【課題】従来のポリアミド系筐体に比べて、機械的特性、熱寸法安定性のみならず軽量性にも優れたポリアミド樹脂組成物を含む筐体を提供する。【解決手段】ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体を含む筐体であって、ポリアミド樹脂100質量部に対して、セルロース繊維0.01~200質量部を含有する筐体。本発明によれば、従来のポリアミド系筐体に比べて、機械的特性、熱寸法安定性のみならず軽量性にも優れたポリアミド樹脂組成物からなる筐体を提供することができる。【選択図】なし

Description

本発明はセルロース繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を用いた筐体に関する。
従来から、ポリアミド樹脂にガラス繊維を配合して、機械的強度や熱寸法安定性を向上させることが検討されている。また、このような繊維強化ポリアミド樹脂組成物を携帯電子機器の筐体に用いることが検討されている(特許文献1)。
特開2010-084007号公報
しかしながら、ポリアミド樹脂をガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレイ等の無機充填剤で強化した樹脂組成物は、比重が高いため、得られる樹脂組成物の質量が大きくなるという問題点がある。
本発明はかかる課題を解決することを目的としたものであって、従来のポリアミド系筐体に比べて、機械的特性、熱寸法安定性のみならず軽量性にも優れたポリアミド樹脂組成物を含む筐体を提供することを目的とする。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究を重ね結果、ポリアミド樹脂の重合時に特定のセルロース繊維を配合した樹脂組成物を用いることにより上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
本発明の要旨は、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体を含む筐体であって、ポリアミド樹脂100質量部に対して、セルロース繊維0.01~200質量部を含有する筐体である。
本発明によれば、従来のポリアミド系筐体に比べて、機械的特性、熱寸法安定性のみならず軽量性にも優れたポリアミド樹脂組成物からなる筐体を提供することができる。
本発明の筐体は、ポリアミド樹脂、セルロース繊維を含有するポリアミド樹脂組成物を含む成形体を含むものである。本発明の筐体には、いわゆるケージングといわれるものも含む。
[ポリアミド樹脂組成物]
本発明の筐体はポリアミド樹脂および当該ポリアミド樹脂中に分散されたセルロース繊維を含有する。
本発明におけるポリアミド樹脂とは、アミノカルボン酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸とによって形成されるアミド結合を有する重合体をいう。
アミノカルボン酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸が挙げられる。
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-ラウロラクタムが挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジンが挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ジグリコール酸が挙げられる。
ポリアミド樹脂の具体例として、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ポリアミド116)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドTMHT)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンテレフタル/イソフタルアミド(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタルアミド(ポリアミド11T(H))が挙げられる。これらのポリマーを構成する2種以上のモノマーの共重合体、またはこれらのポリマーから選択される2種以上のポリマーの混合物いずれであってもよい。中でも、筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12およびこれらの共重合体ならびに混合物からなる群から選択される1種以上のポリアミドが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66およびこれらの共重合体ならびに混合物からなる群から選択される1種以上のポリアミドがより好ましく、ポリアミド6がさらに好ましい。
本明細書中、軽量性は、成形体の軽量化率に関する特性のことである。
機械的物性は、成形体の機械的強度(例えば曲げ弾性率および引張弾性率)に関する特性のことである。
熱寸法安定性は、成形体の線膨張係数に関する特性のことである。
ポリアミド樹脂の分子量は、特に限定されないが、筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、ポリアミド樹脂の数平均分子量が1万~10万であることが好ましい。なお、数平均分子量は、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置を用い、ヘキサフルオロイソプロパノールを溶出液として40℃でPMMA換算にて求める値である。
ポリアミド樹脂は、溶融重合法、固相重合法およびそれらを併用することで製造することができる。
本発明に用いるセルロース繊維としては、例えば、木材、稲、綿、ケナフ、バガス、アバカ、麻等に由来するものが挙げられる。その他に、バクテリアセルロース、バロニアセルロース、ホヤセルロース等の生物由来のものも挙げられる。また、再生セルロース、セルロース誘導体等も挙げられる。筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、セルロース繊維は、木材に由来するセルロース繊維であることが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を均一に含有することによって、機械的特性を向上することができる。機械的特性をより十分に向上させるには、セルロース繊維を凝集させることなく、樹脂中により均一に分散させることが好ましい。セルロース繊維は、ポリアミド樹脂と接するセルロース繊維表面の水酸基が多いほど分散しやすいため、全体としての表面積が大きいことが好ましい。このため、セルロース繊維は、できるだけ微細化されたものが好ましい。なお、用いるセルロース繊維としては、最終的に樹脂組成物中に均一に分散できるものであれば、化学的に未変性のものでも、化学的に変性させたものでも、特に限定されない。
したがって、本発明に用いるポリアミド樹脂組成物におけるセルロース繊維は、筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、その平均繊維径が10μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、150nm以下であることが特に好ましく、120nm以下であることが最も好ましい。一方、平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、セルロース繊維の生産性を考慮すると4nmであることが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物におけるセルロース繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、10以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、40以上であることがさらに好ましく、50以上であることが特に好ましく、100以上であることが最も好ましい。アスペクト比が10以上であることにより、ポリアミド樹脂組成物の機械的特性がより向上する。
本発明においては、樹脂組成物におけるセルロース繊維の平均繊維径および平均繊維長はそれぞれ、当該樹脂組成物を用いて得られた成形体における平均繊維径および平均繊維長を指す。詳しくは、十分に乾燥した樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製 NEX110-12E)を用いて射出成形して得られた、ISO規格3167に記載のダンベル試験片における平均繊維径および平均繊維長を用いている。このときの詳しい成形条件は以下の通りである。ポリアミド樹脂がポリアミド6の場合、射出成形の条件は、樹脂温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒とした。ポリアミド樹脂がポリアミド66の場合、射出成形の条件は、樹脂温度290℃、金型温度80℃、射出時間12秒、冷却時間20秒とした。
セルロース繊維の平均繊維径を10μm以下とするためには、ポリアミド樹脂に配合するセルロース繊維として、平均繊維径が10μm以下のものを用いることが好ましい。平均繊維径が10μm以下のセルロース繊維は、セルロース繊維を裂いてミクロフィブリル化することによって得ることができる。ミクロフィブリル化する手段としては、ボールミル、石臼粉砕機、高圧ホモジナイザー、ミキサー等の、各種粉砕装置を挙げることができる。ミクロフィブリル化したセルロース繊維の水分散液の市販品としては、例えば、ダイセルファインケム社製の「セリッシュ」が挙げられる。
また、セルロース繊維として、セルロース繊維を使用した繊維製品の製造工程において、屑糸として出されたセルロース繊維の集合体を使用することもできる。繊維製品の製造工程とは紡績時、織布時、不織布製造時、そのほか繊維製品の加工時等が挙げられる。これらのセルロース繊維の集合体は、セルロース繊維がこれらの工程を経た後に屑糸となったものであるため、セルロース繊維が微細化したものとなっている。
また、セルロース繊維として、バクテリアが産出するバクテリアセルロースを挙げることもできる。バクテリアセルロースとしては、例えば、アセトバクター属の酢酸菌を生産菌として産出されたものが挙げられる。植物のセルロースは、セルロースの分子鎖が収束したもので、非常に細いミクロフィブリルが束になって形成されている。これに対し、酢酸菌により産出されたセルロースは、もともと幅20~50nmのリボン状であり、植物のセルロースと比較すると極めて細い網目状を形成する。バクテリアセルロースは、バクテリアが前記セルロースとともに酢酸を産出するため、酢酸と併存することがある。その場合は、溶媒を水に置換することが好ましい。
また、セルロース繊維として、微細化セルロースを挙げることもできる。微細化セルロースは、例えば、N-オキシル化合物と共酸化剤と臭化アルカリ金属とを含む水溶液中で、セルロース繊維を酸化させた後、水洗、解繊をおこなうことにより、製造することができる。N-オキシル化合物としては、2,2,6,6-Tetramethylpiperidine-1-oxylradical等が挙げられる。共酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
セルロース繊維の酸化反応は、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性の化合物を添加してpHを10付近としてから、pHの変化が見られなくなるまでおこなう。反応温度は、常温が好ましい。反応後、系内に残存するN-オキシル化合物や共酸化剤や臭化アルカリ金属を除去することが好ましい。水洗方法としては、ろ過や遠心分離による方法が挙げられる。解繊方法としては、上記のミクロフィブリル化する際の装置として例示された各種粉砕装置による方法が挙げられる。
また、セルロース繊維は、セルロース由来の水酸基がいかなる置換基によっても変性されていない未変性のセルロース繊維であってもよいし、またはセルロース由来の水酸基(特にその一部)が変性(または置換)された変性セルロース繊維であってもよい。セルロース由来の水酸基に導入される置換基としては特に限定されず、例えば、親水性の置換基、疎水性の置換基が挙げられる。変性セルロース繊維において、置換基により変性(または置換)される水酸基は、セルロース由来の水酸基のうちの一部であり、その置換度は、0.05~2.0であることが好ましく、0.1~1.0であることがより好ましく、0.1~0.8であることがさらに好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成する単位構造(グルコピラノース環)あたりの導入された置換基の個数を表す。すなわち、「導入された置換基のモル数を、グルコピラノース環の総モル数で割った値」として定義される。純粋なセルロースは単位構造(グルコピラノース環)あたり3個の置換可能な水酸基を有しているため、本発明のセルロース繊維の置換度の理論最大値は3、理論最小値は0である。親水性の置換基としては、例えば、カルボキシル基、カルボキシメチル基、リン酸エステル基等が挙げられる。疎水性の置換基としては、例えば、シリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルキルエステル基等が挙げられる。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物におけるセルロース繊維の含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01~200質量部であることが必要であり、筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、1~100質量部であることが好ましく、4~100質量部であることがより好ましく、8~100質量部であることがさらに好ましく、18~100質量部であることがさらに十分に好ましく、22~100質量部であることが特に好ましく、22~80質量部であることが最も好ましい。セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して0.01質量部未満である場合は、機械的特性を向上する効果がないので好ましくない。一方、セルロース繊維の含有量がポリアミド樹脂100質量部に対して200質量部を超える場合は、セルロース繊維を樹脂組成物中に含有させることが困難であったり、得られた樹脂組成物に着色が生じたりするので好ましくない。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、難燃剤、相溶化剤、充填材、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤等の添加剤を含有していてもよい。
また、本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、その特性を大きく損なわない限りにおいてポリアミド樹脂以外の他の重合体を含有していてもよい。他の重合体としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(アクリロニトリル-スチレン)共重合体、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタール等が挙げられる。
[ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、ポリアミド樹脂の重合時にセルロース繊維を添加するとともに、重合反応を「ポリアミド樹脂の融点」未満の温度でおこなうことにより製造することができる。本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、詳しくは、ポリアミド樹脂を構成するモノマーと、セルロース繊維の水分散液とを均一に混合した混合分散液を、「ポリアミド樹脂の融点」未満の温度に加熱して重合反応することにより、製造することができる。このとき、分散液を加熱する際に徐々に水蒸気を排出することにより、セルロース繊維の水分散液中の水分を排出することができる。また、重合反応は静置しておこなってもよく、攪拌しながらおこなってもよい。ポリアミド樹脂の重合時とは、ポリアミド樹脂を構成するモノマーを用いた重合時だけでなく、ポリアミドを構成し得るプレポリマーを用いた重合時も包含する。従って、重合させるモノマーは、プレポリマーであってもよい。プレポリマーとは、モノマーがポリマー化する途中の中間生成物のことである。
「ポリアミド樹脂の融点」とは「目的とするポリアミド樹脂の融点」のことであり、詳しくはポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂のモノマーまたはプレポリマーのみを用いて溶融重合法により十分に重合をおこなって得られるポリアミド樹脂の融点である。溶融重合法とは、溶媒を用いることなく、加熱により重合を十分におこない、溶融状態でポリアミド樹脂を得る方法である。従って、当該溶融重合法における重合温度は、得られるポリアミド樹脂(すなわち、「目的とするポリアミド樹脂」)の融点よりも高い。このような溶融重合法における重合温度は、例えば、ポリアミド6の場合、230~250℃(特に240℃)であり、また例えば、ポリアミド66の場合、250~290℃(特に280℃)である。当該溶融重合法における重合時間は通常、0.5~2時間であってもよく、特に1時間である。
従って、本発明に用いるポリアミド樹脂組成物を製造するに際しては、まず、使用される原料としてのモノマーまたはプレポリマーのみを用いて上記した溶融重合法により十分に重合をおこない、ポリアミド樹脂(詳しくは「目的とするポリアミド樹脂」)を得る。次いで、得られたポリアミド樹脂の融点を測定する。例えば、「目的とするポリアミド樹脂」がポリアミド6の場合、「目的とするポリアミド樹脂の融点」は通常、220℃である。また例えば、「目的とするポリアミド樹脂」がポリアミド66の場合、「目的とするポリアミド樹脂の融点」は通常、270℃である。融点の測定方法は特に限定されず、例えば、示差走査型熱量計により測定することができる。その後、モノマー(またはプレポリマー)およびセルロース繊維水分散液を含む混合分散液を、当該「融点」未満の温度で重合反応に供することにより、ポリアミド樹脂組成物を製造することができる。
ポリアミド樹脂組成物の製造方法においては、上記のように、従来の溶融重合法よりも低温にて重合をおこなうため、このような重合を「低温重合」と称することができる。低温重合により得られるポリアミド樹脂組成物は固形状態(または固相状態)で得られる。
セルロース繊維の水分散液は、精製水とセルロース繊維とをミキサー等で攪拌することにより得ることができる。水分散液中のセルロース繊維の含有量は0.01~50質量%、特に1~30質量%であることが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物を得るための低温重合時において、必要に応じて重合触媒を添加してもよい。重合触媒としては、ポリアミドの溶融重合に通常用いられるものであれば特に限定されない。中でも、リン系化合物が好ましく、亜リン酸または次亜リン酸ナトリウムを用いることが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物を得るための低温重合時において、重合温度は、詳しくは、「目的とするポリアミド樹脂の融点」をMp(℃)としたとき、Mp-75(℃)以上、Mp未満であることが必要であり、Mp-55(℃)以上、Mp-15(℃)以下であることが好ましく、Mp-45(℃)以上、Mp-25(℃)以下であることがより好ましく、Mp-35(℃)以上、Mp-25(℃)以下であることがさらに好ましい。重合温度がMp-75(℃)未満であると、反応速度が遅くなり、実用上必要な重合度に達するまでの時間が長くなる。一方、重合温度がMp以上では、生成したポリマーが溶融し、それに伴う粘度上昇によって操業性が低下したり、着色が生じたりする場合がある。さらには、セルロース繊維の熱劣化が起こるため、得られるポリアミド樹脂組成物の機械的特性が十分に向上しない。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物を得るための低温重合時において、重合時間は通常、ポリアミド樹脂組成物を構成するポリアミド樹脂が「目的とするポリアミド樹脂の融点」を有するようになる時間であり、例えば、8時間以上(特に8~24時間)であり、好ましくは10~20時間、より好ましくは10~14時間である。
低温重合は、不活性ガス流通下でおこなわれても、または不活性ガスを流通させることなく、空気雰囲気下でおこなわれてもよいが、筐体の機械的特性、熱寸法安定性および軽量性のさらなる向上の観点から、不活性ガス流通下でおこなわれることが好ましい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物の製造方法によれば、Mp未満の温度で重合するため、生成したポリアミドは溶融せず、固相重合へと移行してもよい。なお、必要に応じて、生成したポリアミド樹脂組成物の破砕および/または精練をおこなった後に、固相重合によりさらに高分子量化してもよい。ここでいう生成したポリアミド樹脂組成物には、モノマーがポリマー化する途中の中間生成物、すなわちオリゴマーや低重合体も含む。
したがって、本発明の製造方法によれば、ポリマーを溶融状態に保持する必要がないため、溶融重合時に起こる溶融粘度の上昇、それに伴う払出し性の低下が改善される。
低温重合の後におこなわれてもよい固相重合は、ポリアミド樹脂組成物、または必要に応じて破砕および/または精練した後のポリアミド樹脂組成物を、不活性ガス流通下または減圧下で、「ポリアミド樹脂組成物の融点」未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことが好ましく、1時間以上(例えば1~10時間)加熱することによりおこなうことが好ましい。
「ポリアミド樹脂組成物の融点」は、ポリアミド樹脂組成物を用いること以外、上記した融点の測定方法と同様の方法により測定することができる。
固相重合時の加熱温度は通常、「ポリアミド樹脂組成物の融点」をMp’(℃)としたとき、Mp’-75(℃)以上、Mp’未満であり、Mp’-55(℃)以上、Mp’-15(℃)以下であることが好ましく、Mp’-45(℃)以上、Mp’-25(℃)以下であることがさらに好ましく、Mp’-35(℃)以上、Mp’-25(℃)以下であることが特に好ましい。当該加熱温度が、Mp’-75(℃)未満であると、反応速度が遅くなることがある。一方、加熱温度がMp’以上では、ポリアミド樹脂組成物を構成するポリマー(すなわちポリアミド)が融着したり、着色が生じたりする場合がある。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物は、破砕することにより粉末形状(またはフレーク形状)にすることができる。また、前記ポリアミド樹脂組成物を押出機に供給し、ストランドカッターによりペレット状にすることもできる。ペレットのサイズは特に限定されないが、ハンドリングの観点や後述する精練の効率の観点から、直径2~5mm、長さ3~6mmとすることが好ましく、直径3~4mm、長さ4~5mmとすることがより好ましい。
重合効率を高めるため、重合触媒を用いてもよい。重合触媒は、重合前、重合中、精練前、精練中、精練後いずれの工程で添加してもよいが、重合前に添加することが好ましい。重合触媒としては、ポリアミドの溶融重合に通常用いられるものであれば特に限定されない。ポリアミド樹脂の重合時においては必要に応じてリン酸や亜リン酸等の触媒を添加してもよい。
セルロース繊維としてバクテリアセルロースを用いる場合においては、セルロース繊維の水分散液として、バクテリアセルロースを精製水に浸して溶媒置換したものを用いてもよい。バクテリアセルロースの溶媒置換したものを用いる際には、溶媒置換後、所定の濃度に調整したものを、ポリアミド樹脂を構成するモノマーに混合し、上記と同様に重合反応を進行させることが好ましい。
上記方法においては、セルロース繊維を水分散液のまま重合反応に供することになるため、セルロース繊維を分散性が良好な状態で重合反応に供することができる。
このような製造法により、ポリアミド樹脂中にセルロース繊維を比較的小さな平均繊維径で凝集させずに均一に分散させることが可能となる。セルロース繊維の存在下に重合させるモノマーは、プレポリマーであってもよい。ここで、プレポリマーとは、モノマーがポリマー化する途中の中間生成物のことである。
重合反応時(例えば重合反応前、重合反応中または重合反応後)に、上記した樹脂組成物中に添加されてもよい添加剤を加えてもよい。
上記方法においては、セルロース繊維を乾燥させる工程が不要となり、微細なセルロース繊維の飛散が生じる工程を経ずに製造が可能であるため、操業性よくポリアミド樹脂またはポリアミド樹脂組成物を得ることが可能となる。またモノマーとセルロース繊維を均一に分散させる目的として水を有機溶媒に置換する必要がないため、ハンドリングに優れるとともに製造工程中において化学物質の排出を抑制することが可能となる。
本発明の製造方法により得られたポリアミド樹脂組成物は、未反応のモノマーやオリゴマーを除去するため、90~100℃の水に浸漬して、精練することが好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物が上記した添加剤および/または他の重合体を含有する場合、当該添加剤および他の重合体は、低温重合前において、混合分散液中に混合されてもよい。
本発明に用いるポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率、引張弾性率および線膨張係数はそれぞれ、当該樹脂組成物を用いて得られた成形体における曲げ弾性率、引張弾性率および線膨張係数を指す。なお、これらの特性値を測定するための成形体は上記した平均繊維径および平均繊維長を測定するための成形体と同様の成形体である。
曲げ弾性率および引張弾性率はそれぞれ、ISO527およびISO178に準拠して測定された値を用いている。
線膨張係数は、成形体の製造時における射出方向(すなわち、射出成形時の樹脂の流動方向であり、MD方向とも称される)の線膨張係数であり、JIS K7197に基づいて測定された、20~150℃の領域での平均値を用いている。
本発明の筐体の軽量化率は、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂を用いた筐体の質量を基準として、0%を超える低下率を示す。ガラス繊維強化ポリアミド樹脂を用いた筐体とは、強化材としてガラス繊維を採用して製造されたこと以外、本発明の筐体と同様の筐体のことであり、本発明の筐体と同様の組成比を有する。従って、本発明の筐体は、当該ポリアミド樹脂組成物と同様の組成比を有するガラス繊維強化ポリアミド樹脂を用いた筐体と比較して、質量に関する有意な低減効果を有している。
軽量化率は、本発明の筐体の質量およびガラス繊維強化ポリアミド樹脂を用いた筐体の質量をそれぞれ「X」および「Y」と表したとき、{(Y-X)/Y}×100(%)で表される割合である。
軽量化率は、本発明の筐体と、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂を用いた筐体との比較に基づく特性値である。軽量化率が大きいほど、本発明の筐体の軽量性は優れている。
[成形体]
本発明の筐体は、上記ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体を含むものであり、公知の成形方法により、成形体とすることができる。公知の成形方法としては、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形が挙げられる。
成形方法としては、上記記載の方法の中でも、射出成形が好ましい。射出成形に用いる射出成形機としては、特に限定されないが、例えばスクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機が挙げられる。射出成形機のシリンダー内で加熱溶融されたポリアミド樹脂組成物は、ショットごとに計量され、金型内に溶融状態で射出され、所定の形状で冷却、固化され、その後に成形体として金型から取り出される。射出成形時の樹脂温度は、ポリアミド樹脂組成物の融点以上であることが好ましく、(融点+100℃)未満であることが好ましい。射出成形に供されるポリアミド樹脂組成物は、十分に乾燥していることが好ましい。水分率が高いポリアミド樹脂組成物では、射出成形機のシリンダー内で発泡し、最適な成形体を得ることが困難となることがある。このため、射出成形に供されるポリアミド樹脂組成物の水分率は、0.3質量%未満であることが好ましく、0.1質量%未満であることがより好ましい。
本発明の筐体は、化学発泡剤を用いた手法や、超臨界ガスや不活性ガスを用いた手法により、発泡体に成形することができる。
本発明の筐体は、機械的特性、熱寸法安定性および軽量性に優れる。このため、電気・電子機器筐体、例えばPDAや携帯電話等のモバイル端末、パソコン、VR機器、AR機器、OA機器、コネクタ、基板、プロジェクター部品、バッテリーあるいは電動工具等の筐体、それらの内部部品、自動車用外板、ドアパネル、コンソールボックス、リンク、レバー、ドアミラー、ドアミラーステイ、インテークマニホールド、ハンドル、ラッチ、スイッチ、コンパクトスピンドルドライブ、ギヤ、サンルーフスライドドアの摺動部部品、ガラスホルダー、ケーブルベア(登録商標)、バイク、スクーター、ドローン関連部品、船のカウル、ケーブルグランド、筆記具、文具、イス、シェル、フレーム、デスクアジャスター、車輪、照明器具等に用いることができる。
本発明の筐体は、ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体を含むものであり、その全部がポリアミド樹脂組成物により成形されたものであっても、また、その一部がポリアミド樹脂組成物により成形され他の部分が他の材料からなるものであってもよい。ポリアミド樹脂組成物の成形体と別の材料を接合する方法としては特に限定されないが、これらを接着剤等で接合する方法や、ポリアミド樹脂組成物を成形する際に、金型内に別の材料を設置して樹脂を流し込むインサート成形法等が挙げられる。
本発明の筐体は、ネジ止め強度を高めるためにボス穴部分に真鍮やアルミニウム等の金属を含有させてもよい。ポリアミド樹脂組成物の成形体とボス穴部分の金属の接合方法としては特に限定されないが、ポリアミド樹脂組成物を成形する際に、金型内に金属のボス穴部分を設置して樹脂を流し込むインサート成形法や、ポリアミド樹脂組成物を成形したあとに金属ボス穴部分を熱圧入する圧入法等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
ポリアミド樹脂組成物の評価は以下の方法によりおこなった。
(1)ポリアミド樹脂組成物中のセルロース繊維の平均繊維径および平均繊維長
十分に乾燥した樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いて射出成形し、ISO規格3167に記載のダンベル試験片(試験部80mm×10mm×4mm)を作製した。ポリアミド樹脂がポリアミド6の場合、射出成形の条件は、樹脂温度250℃、金型温度70℃、射出時間12秒、冷却時間20秒とした。ポリアミド樹脂がポリアミド66の場合、射出成形の条件は、樹脂温度290℃、金型温度80℃、射出時間12秒、冷却時間20秒とした。
凍結ウルトラミクロトームを用いて射出成形片から厚さ100nmの切片を採取し、切片染色を実施後、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM-1230)を用いて観察をおこなった。電子顕微鏡画像からセルロース繊維(単繊維)の長手方向に対する垂直方向の長さおよび長手方向の長さを測定した。このとき、垂直方向の長さのうち最大のものを繊維径、長手方向の長さを繊維長とした。同様にして10本のセルロース繊維(単繊維)の繊維径および繊維長を測定し、10本の平均値を算出したものを平均繊維径および平均繊維長とした。
なお、セルロース繊維の上記平均繊維径の測定で繊維径が1μmを超える大きいものについては、ミクロトームにて厚さ10μmの切片を切り出したものを、実体顕微鏡(OLYMPUS社製 SZ-40)を用いて観察をおこない、得られた画像から上記と同様にして繊維径および繊維長を測定し、平均繊維径および平均繊維長を求めた。
(2)数平均分子量
ポリアミド5mgに10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノール2mLを加えて溶解させて得られた溶解液をフィルターで濾過し、試料溶液を調製した。この試料溶液を、示差屈折率検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィ装置(GPC、東ソー社製)で分析した。溶離液として10mMトリフルオロ酢酸ナトリウム含有ヘキサフルオロイソプロパノールを用いた。分析条件は流速0.4mL/分、温度40℃とした。ポリメチルメタクリレートを標準試料として作成した検量線を用いて、数平均分子量を求めた。
(3)曲げ弾性率
(1)で得られた試験片の曲げ弾性率を、ISO178準拠の3点支持曲げ法(支点間距離:64mm、試験速度:2mm/分、試験雰囲気:23℃、50%RH、絶乾状態)にて測定した。
本発明では、3.0GPa以上の場合、合格とした。
(4)引張弾性率
(1)で得られた試験片の引張弾性率を、ISO527に基づいて測定した。測定条件=支点間距離:115mm、試験速度:5mm/分、試験雰囲気:23℃、50%RH、絶乾状態。
本発明では、2.5GPa以上の場合、合格とした。
(5)線膨張係数
(1)で得られた試験片を射出成形時の樹脂の流動方向(MD方向)が長手方向になるように、10mm×4mm×4mmtに切り出した。そのサンプルのMD方向の線膨張係数をJIS K 7197に基づいて測定し、20~150℃の領域での平均値を算出した。
本発明では、50ppm/℃以下の場合、合格とした。
(6)軽量化率
十分に乾燥した樹脂組成物を、射出成形機(日精樹脂工業社製:NEX110-12E)を用いて射出成形し、箱形成形品(長さ100mm×幅60mm×高さ15mm,肉厚2mm)を作製した。ポリアミド樹脂がポリアミド6の場合、射出成形の条件は、樹脂温度250℃、金型温度70℃とした。ポリアミド樹脂がポリアミド66の場合、射出成形の条件は、樹脂温度290℃、金型温度80℃とした。得られた箱形成形品の質量を電子天秤で測定した。
実施例1、実施例2、実施例3と7~12,実施例4、実施例5,実施例6,実施例13の質量(X)をそれぞれ、比較例3、比較例4,比較例5,比較例6,比較例7、比較例8、比較例9の質量(Y)からの軽量化率[={(Y-X)/Y}×100(%)]として評価した。
本発明では、0%を超えた場合、合格とした。
原料
(1)ポリアミド樹脂モノマー成分
・ε-カプロラクタム:宇部興産社製
・ポリアミド66塩(ヘキサメチレンジアミン-アジピン酸の等モル塩であって、ポリアミドプレポリマー)
(2)セルロース繊維
・KY110N:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY110N、平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの(未変性)。
・KY100G:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100G、平均繊維径が125nmのセルロース繊維が10質量%含有されたもの(未変性)。
・KY100S:ダイセルファインケム社製 セリッシュKY100S、平均繊維径が140nmのセルロース繊維が25質量%含有されたもの(未変性)。
・バクテリアセルロース繊維(未変性):
0.5質量%グルコース、0.5質量%ポリペプトン、0.5質量%酵母エキス、0.1質量%硫酸マグネシウム7水和物からなる組成の培地50mLを、200mL容三角フラスコに分注し、オートクレーブで120℃、20分間蒸気滅菌した。これに試験管斜面寒天培地で生育させたGluconacetobacter xylinus(NBRC 16670)を1白金耳接種し、30℃で7日間静置培養した。7日後、培養液の上層に白色のゲル膜状のバクテリアセルロース繊維が生成した。
得られたバクテリアセルロース繊維をミキサーで破砕後、水で浸漬、洗浄を繰り返すことにより、水置換をおこない、平均繊維径が60nmのバクテリアセルロース繊維が4.1質量%含有された水分散液を調製した。
・屑糸(未変性):
不織布の製造工程において屑糸として出されたセルロース繊維の集合体に、精製水を加えてミキサーで撹拌し、平均繊維径が3240nmの未変性のセルロース繊維が3質量%含有された水分散液を調製した。
・TEMPO触媒酸化セルロース繊維(セルロース由来の水酸基の一部が親水性の置換基で変性されたセルロース繊維):
漂白後の針葉樹由来の未叩解クラフトパルプ(白色度85%)500g(絶乾)を、TEMPO 780mgおよび臭化ナトリウム75.5gを溶解した水溶液500mLに添加し、パルプが均一に分散するまで撹拌した。そこに次亜塩素酸ナトリウム水溶液を6.0mmol/gになるように加えることで酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するため、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応後の混合物をガラスフィルターにより濾過してパルプを分離し、十分に水洗することで酸化されたパルプを得た。上記の工程で得られた酸化パルプを水で1.0%(w/v)に調整し、超高圧ホモジナイザー(20℃、150MPa)で3回処理して、平均繊維径が10nmのTEMPO触媒酸化セルロース繊維が1.0質量%含有された水分散液を調製した。
なお、TEMPO触媒酸化セルロース繊維をH-NMR、13C-NMR、FT-IR、中和滴定で分析したところ、セルロース由来の水酸基の一部がカルボキシル基で置換されていることを確認した。
・エーテル変性セルロース繊維(セルロース由来の水酸基の一部が疎水性の置換基で変性されたセルロース繊維):
針葉樹漂白クラフトパルプ(王子製紙社製、固形分25%)600gに水19.94kg添加し、固形分濃度が0.75質量%の水懸濁液を調製した。得られたスラリーの機械的解繊処理を、ビーズミル(アイメックス社製 NVM-2)を用いておこない、セルロース繊維を得た(ジルコニアビーズ直径1mm、ビーズ充填量70%、回転数2000rpm、処理回数2回)。遠心分離管一本あたりに、得られたセルロース繊維水分散液100gを入れ、遠心分離(7000rpm、20分)をおこない、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。遠心分離管一本あたりに、アセトン100gを加えて、よく撹拌し、アセトン中に分散させ、遠心分離をおこない、上澄み液を除去し、沈殿物を取り出した。上記の操作をさらに二回繰り返し、固形分5質量%のセルロース繊維アセトンスラリーを得た。
撹拌羽根を備えた四つ口1Lフラスコに、得られたセルロース繊維アセトンスラリーをセルロース繊維の固形分が5gになるように投入した。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)を500mL、トルエンを250mL加え、撹拌しながらセルロース繊維をNMP/トルエン中に分散させた。冷却器を取り付け、窒素雰囲気下、分散液を150℃に加熱し、分散液中に含まれるアセトン、水分をトルエンとともに留去した。その後分散液を40℃まで冷却し、ピリジン15mL、ヘキサメチルジシラザン(シリルエーテル化剤)25gを添加して窒素雰囲気下90分反応させ、エーテル変性セルロース繊維のNMP分散液を調製した。
得られたエーテル変性セルロース繊維のNMP分散液を遠心分離機によりセルロース繊維を沈殿させ水置換した。これを3回繰り返し、水で調製し、平均繊維径が100nmのエーテル変性セルロース繊維が1.0質量%含有された水分散液を調製した。
なお、エーテル変性セルロース繊維をH-NMR、13C-NMR、FT-IRで分析したところ、セルロース由来の水酸基の一部が疎水性のシリルエーテル基で置換されていることを確認した。
(3)ガラス繊維
・GF:ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS 03 T-262H、平均繊維径10μm、平均繊維長3mm)。
実施例1
セルロース繊維の水分散液として、セリッシュKY110N(ダイセルファインケム社製:平均繊維径が125nmのセルロース繊維が15質量%含有されたもの)を用いた。このセルロース繊維の水分散液13.3質量部とε-カプロラクタム100質量部とを、均一な分散液となるまでミキサーで攪拌、混合し、ペースト状の混合分散液を得た。この混合分散液を、窒素気流下において、徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、190℃まで温度を上げ、190℃にて12時間静置することにより重合反応をおこなった(低温重合)。このとき撹拌はおこなわなかった。得られた重合反応物を粉砕し、フレーク状の樹脂組成物を得た。得られたフレーク状の樹脂組成物を95℃の熱水で精練した後、乾燥させた。
実施例2~12
セルロース繊維の種類、セルロース繊維の含有量を表1に記載のとおりに変更する以外は、実施例1と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
実施例13
実施例1と同様にして、セルロース繊維の水分散液33.34質量部とポリアミド66塩100質量部とを均一な分散液となるまでミキサーで攪拌、混合し、ペースト状の混合分散液を得た。この混合分散液を、窒素気流下において、徐々に加熱し、加熱の途中において水蒸気を排出しながら、240℃まで温度を上げ、240℃にて12時間静置することにより重合反応をおこなった(低温重合)。このとき撹拌はおこなわなかった。得られた重合反応物を粉砕し、フレーク状の樹脂組成物を得た。得られたフレーク状の樹脂組成物を95℃の熱水で精練した後、乾燥させた。
比較例1
セルロース繊維の水分散液を加えなかった以外は実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。
比較例2
セルロース繊維の水分散液を加えなかった以外は実施例13と同様にしてポリアミド樹脂組成物を得た。
比較例3
二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに比較例1で得られたポリアミド樹脂組成物100質量部を供給し、途中、サイドフィーダーよりガラス繊維2質量部を供給した。260℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
比較例4~8
ガラス繊維の含有量を表2に記載のとおりに変更する以外は、比較例3と同様にして、ポリアミド樹脂組成物を得た。
比較例9
二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS、スクリュー径26mm)の主ホッパーに比較例2で得られたポリアミド樹脂組成物100質量部を供給し、途中、サイドフィーダーよりガラス繊維5質量部を供給した。280℃で十分に溶融混練し、ストランド状に払い出し、切断して、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1~13および比較例1~9で用いたポリアミド樹脂組成物の樹脂組成とその評価、および、前記樹脂組成物を用いて製造した筐体の評価を表1および表2に示す。
Figure 2023013994000001
Figure 2023013994000002
実施例1~13のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性および熱寸法安定性に優れ、さらにガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物よりも軽量性が向上した。
実施例1、実施例2、実施例3と7~12,実施例4、実施例5,実施例6,実施例13ポリアミド樹脂組成物と、それぞれ、比較例3、比較例4,比較例5,比較例6,比較例7、比較例8、比較例9のポリアミド樹脂組成物と対比することにより、強化材としてセルロース繊維を添加することにより、機械的特性や熱寸法安定性が向上し、さらに、軽量性が向上することがわかる。
比較例1、2のポリアミド樹脂組成物は、セルロース繊維を用いなかったため、曲げ弾性率および引張弾性率が低く、線膨張係数が高かった。

Claims (1)

  1. ポリアミド樹脂組成物を成形してなる成形体を含む筐体であって、ポリアミド樹脂100質量部に対して、セルロース繊維0.01~200質量部を含有する筐体。
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