JP2023004667A - 単結晶ダイヤモンドの製造方法および単結晶ダイヤモンド - Google Patents

単結晶ダイヤモンドの製造方法および単結晶ダイヤモンド Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れる単結晶ダイヤモンドを安価で短時間で合成することができる単結晶ダイヤモンドの製造方法および単結晶ダイヤモンドを提供する。【解決手段】単結晶ダイヤモンドの製造方法は高温高圧法を用いており、無定形炭素、および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによって合成する。【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶ダイヤモンドの製造方法および単結晶ダイヤモンドに関する。
工業用に使用されるダイヤモンド粒子は、一般に高温高圧法で合成される。合成の際に用いる原料は、黒鉛(グラファイト)と溶融(触媒、溶媒、溶剤ともいう)金属(またはそれらの合金および炭化物)を用いて行うことが一般的である。例えば特許文献1には、12Cの濃度を高くすることにより不純物濃度を低くし、且つ不可避的不純物にNiを含まない単結晶ダイヤモンドが記載されている。同文献によれば、不純物濃度が低いために高い硬度を示すとともに、不純物中にNiが含まれないことにより硬度の温度依存性が向上する、とされている。この単結晶ダイヤモンドの合成は、溶融金属の存在下においてダイヤモンド粒子が生成する溶融析出理論に基づいて行われている。
一方で、金属触媒を用いずに固体状態でダイヤモンド粒子を合成する手法が検討されている。例えば特許文献2には、デトネーション合成によって得られたナノダイヤモンドの粉末(Detonation Nano Diamond、以下、単に「DND」と称する。)に飽和非環式炭化水素または一塩基性アルコールを含浸させ、得られた組成物を5~8GPaの静圧および1300~1800℃の温度に10~60秒間保持することを含む、ダイヤモンド粒子の製造方法が開示されている。このように、近年では、高温高圧法のダイヤモンド粒子の合成において、必ずしも溶融金属を必要としない手法が掲げられている。
特開2013-202446号公報 国際公開2015/038031号 国際公開2018/101347号
ダイヤモンドは、高純度の炭化水素ガスを熱分解することにより得られた炭素材料を炭素源として高温高圧法によりダイヤモンドを合成し、合成されたダイヤモンドから種結晶を切り出し、切り出した種結晶とNiを含まない金属溶媒を原料として高温高圧法にて単結晶ダイヤモンドを成長させる工程が必要である。しかし、特許文献1に記載の発明では、高温高圧法を2度も行っており、尚且つ良質な種結晶が存在する領域を抽出して切り出す必要があるため、製造されたダイヤモンドの低価格化は難しい。
また、特許文献1には、単結晶ダイヤモンドを合成させるための原料としてFe-Co-Ti合金を金属触媒として用いることが記載されている。しかし、金属溶媒を用いて単結晶ダイヤモンドが製造されると、触媒中の元素が原子レベルでダイヤモンド中に残存することは避けられない。金属触媒中の元素が不純物として単結晶ダイヤモンド粒子内に残存すると結晶格子の配列が不規則になり、また欠陥の原因にもなり得ることから、Niが含まれないとしても単結晶ダイヤモンドの硬度が劣化する。
さらに、研磨材や研削材は長期間の使用に耐えうるように耐久性も要求されている。このため、単結晶ダイヤモンドの硬度が高いとしても、破砕強度が劣る場合には研磨速度が低減しやすく、砥石に用いた場合には耐久性が劣ることになる。
また、特許文献2には、DNDを用いて短時間に結晶性ダイヤモンドが合成されたことが開示されている。この結晶性ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドであるのか、多結晶ダイヤモンドであるのか不明であるが、ダイヤモンド粒子のサイズは30~250nmであることから、おそらく単結晶ダイヤモンド粒子が製造されたことになっていると思われる。しかし、原料としてダイヤモンドが用いられていることから、その表面状態の安定性を鑑みると、短時間で単結晶ダイヤモンド粒子が合成されるとは考え難い。特許文献2に記載の発明で合成されたダイヤモンド粒子が、仮に多結晶ダイヤモンドであった場合には、特許文献1に記載の発明で合成されたダイヤモンド粒子と比較して、さらに耐久性が劣る懸念がある。原料としてDNDが用いられると製造コストがかかる。また、強制的に単結晶ダイヤモンド粒子を製造しようとすると、さらに高圧、高温、長時間での合成条件が必要になると考えられ、量産性に劣ることになる。
本発明の課題は、耐久性に優れる単結晶ダイヤモンドを安価で短時間で合成することができる単結晶ダイヤモンドの製造方法および単結晶ダイヤモンドを提供することである。
本発明者らは、安価で短時間に合成することができる単結晶ダイヤモンドを製造する観点から、まずは、特許文献2に記載の製造方法で製造したダイヤモンド粒子の組織を調べた。その結果、合成後においてもDND間には結晶粒界が残存しており、特許文献2に記載のダイヤモンド粒子は、多結晶ダイヤモンドである知見が得られた。したがって、短時間で単結晶ダイヤモンド粒子を製造するためには、原料としてダイヤモンド粒子を用いないことが必要である。
そこで、本発明者らは、原料として、特許文献1に記載のように金属触媒を用いず、更には特許文献1に記載のようにダイヤモンド粒子も用いずに単結晶ダイヤモンドを合成する手法を検討した。ここで、原料に金属触媒やダイヤモンド粒子が含まれない合成手法として、例えば、特許文献3には、黒鉛のみを原料として多結晶ダイヤモンド粒子を合成した例が開示されている。しかし、特許文献3には、ダイヤモンド粒子の粒径は実施例において10~100nm程度の微小なダイヤモンドしか得られない。このため、砥粒として用いるためには微小なダイヤモンドを焼結しなければならず、多結晶ダイヤモンドを製造するためには製造工程が複雑になり、価格を抑えることができない。また、多結晶ダイヤモンドを焼結したとしても結晶粒界が存在することから耐久性が劣る。
本発明者らは、高温高圧法にてミクロンオーダーの単結晶ダイヤモンドを合成するために鋭意検討を行った。黒鉛が単結晶ダイヤモンドとして成長するためには、高温高圧環境下において黒鉛が単結晶ダイヤモンドに変換する起点になる原料を投入する必要がある。また、原料自体も単結晶ダイヤモンドに組み込まれるようにすれば、結晶格子の歪みや欠陥を十分に回避することができると考えられる。
ここで、従来から用いられる金属触媒は、溶融時に黒鉛に濡れやすく黒鉛の溶解速度を上昇させるため、黒鉛からダイヤモンドへの変換に有効である、と考えられている。しかし、前述のように、金属触媒は単結晶ダイヤモンド粒子内に残存するために破砕強度の向上を阻害する。また、黒鉛は一般に六方晶系の結晶であり、炭素原子を等軸晶系の結晶であるダイヤモンドに配向するためには大きな配向エネルギーが必要になり、短時間でダイヤモンドを製造することは困難である。
本発明者らは、ダイヤモンドの製造に用いる原料が直接ダイヤモンドの成長に寄与するように、原料の再検討を行った。単結晶ダイヤモンドの成長に直接寄与する原料として、高温高圧法では気化による空隙の形成が懸念されていた炭素化合物および無定形炭素を敢えて用いた。その結果、予想外にも、結晶格子の歪みや欠陥が少ないミクロンオーダーの単結晶ダイヤモンドが短時間で合成される知見が得られた。さらには、原料の炭素が結晶化した黒鉛ではなく無定形炭素であり、短時間で単結晶ダイヤモンドを製造することができることから、低価格化の実現が可能になる知見も得られた。
これらに加えて、得られた単結晶ダイヤモンド粒子は、炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥がわずかに残存している知見が得られた。結晶核や結晶欠陥が残存していたとしても、結晶方位は粒子全体で揃っており、合成された粒子は単結晶ダイヤモンドである知見が得られた。また、このようにして合成された単結晶ダイヤモンドは、金属触媒を用いていないために極めて純度が高く、且つ分解した炭素化合物の炭素以外の成分は単結晶ダイヤモンド粒子内に残留せずに外部に放出されるため、結晶内の不純物が極めて少ない知見が得られた。これにともない、高い耐久性を備える知見も得られた。
これらの知見により得られた本発明は次の通りである。
(1)高温高圧法を用いた単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、無定形炭素、および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンドを合成することを特徴とする単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(2)無定形炭素はカーボンブラックである、上記(1)に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(3)熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaであり、温度は1300~1800℃である、上記(1)または上記(2)に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(4)原料が前記熱力学的安定領域に曝される時間は1~300秒である、上記(1)から上記(3)のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(5)炭素化合物は有機化合物である、上記(1)から上記(4)いずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(6)有機化合物は、多価アルコールである、上記(5)に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(7)有機化合物を構成する炭素はsp3混成軌道を有する、上記(5)または上記(6)に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(8)炭素化合物はペンタエリスリトールである、上記(1)または上記(4)に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
(9)炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥を備える単結晶ダイヤモンド。
(10)炭素化合物は有機化合物である、上記(9)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(11)有機化合物は多価アルコールである、上記(10)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(12)有機化合物を構成する炭素はsp3混成軌道を有する、上記(11)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(13)炭素化合物はペンタエリスリトールである、上記(9)に記載の単結晶ダイヤモンド。
(14)平均粒子径が0.25~50μm以下である、上記(9)~上記(13)のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド。
図1は、本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程を示すブロック図である。 図2は、アンビル対向型の高温高圧装置における加圧部の斜視図である。 図3は、単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程に用いる高圧装置の加圧部を示す部分断面斜視図であり、図3(a)はチェチェビツァ型であり、図3(b)はトロイド型である。 図4は、炭素の相平衡図である。 図5は、本発明に係る単結晶ダイヤモンドの写真であり、図5(a)は高温高圧処理後における試料の外観を撮影した写真であり、図5(b)は図5(a)に示す試料中のダイヤモンドのSEM写真である。 図6はラマンスペクトルを示す図であり、図6(a)は黒鉛とカーボンブラックのラマンスペクトルであり、図6(b)はペンタエリスリトールのラマンスペクトルであり、図6(c)は、天然ダイヤモンドと、実施例2の条件で製造した単結晶ダイヤモンドのラマンスペクトルである。 図7は、ダイヤモンド粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像の写真であり、図7(a)および図7(b)は実施例2の単結晶ダイヤモンド粒子であり、図7(c)および図7(d)は比較例8の多結晶ダイヤモンド粒子である。 図8は、実施例で用いたカーボンブラックのTEM写真である。
1.単結晶ダイヤモンドの製造方法の概要
本発明に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法は、高温高圧法を用いた単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、無定形炭素および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンドを合成する。
本発明に係る製造方法は、高温高圧法では不純物として取り扱われているとともに分解成分により空隙の原因であると考えられていた炭素化合物および無定形炭素を、敢えて、単結晶ダイヤモンド粒子を合成するための出発原料に用いた画期的な方法である。ここで、化学気相法を用いたダイヤモンドの合成手法では、1μm以上の単結晶ダイヤモンド粒子を黒鉛、カーボンブラック、無定形炭素などの粉末から製造することは困難である。したがって、これらから単結晶ダイヤモンド粒子を合成するためには、高温高圧法が最適である。以下では、図を用いて詳述する。
図1は、本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程を示すブロック図である。本発明に係る単結晶ダイヤモンドの製造方法は、具体的には、図1に示すように、(1)無定形炭素および炭素化合物からなる出発原料を混合する工程、(2)混合原料を圧力媒体に導入する工程、(3)混合原料を、黒鉛の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域内の圧力および温度に曝す工程である。これらについて以下に詳述する。
(1)無定形炭素および炭素化合物からなる出発原料を混合する工程
本発明に係る製造方法に用いる「無定形炭素」とは、非晶質であって、一定の結晶構造を有さない炭素等で構成されているものをいう。これらの中でも、取扱いが容易である固体のものが好ましく、カーボンブラックが好ましい。また、不可避的不純物を含んでもよい。
なお、本発明では、ダイヤモンドや黒鉛などの一定の結晶構造を有するものは、本発明における「無定形炭素」から除外される。また、後述する「炭素化合物」も「無定形炭素」から除外される。
本発明に係る製造方法では、原料の純度に限定されず単結晶ダイヤモンドを製造することができる。好ましくは、カーボンブラックを含む無定形炭素は、不純物濃度が30ppm未満であり、算術平均粒子径で16~200nmである。より好ましくは16~100nmであり、さらに好ましくは16~70nmである。この範囲であれば、温度プロファイル及び圧力プロファイルを複雑化する必要がない。
本発明で用いる炭素化合物とは、Cを含有する化合物であれば特に限定されず、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、シアン酸塩、チオシアン酸塩を含む無機化合物材料、および有機材料を包含する。しかしながら、無定形炭素および金属塩は含まれない。炭素化合物は特に限定されるものではないが、タイヤ、トナー、毛髪、木材、廃プラスチックなど熱分解可能なもので炭素化する物質あれば、限定されない。このようなリサイクル資源を用いる場合、熱分解により炭素化が容易になるように小さく粉砕すれば原料として使用することができる。また、石炭、コークス、木炭、煤(スス)、ガラス状炭素、のような固体のもの、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油のような液体のもの、および天然ガスのような気体のものも含まれる。
また、炭素化合物は有機化合物が好ましく、室温で液体または固体であることが好ましく、原料として取り扱いやすいように、特に個体であることが好ましい。合成の際にダイヤモンドに寄与しない元素が残存せず合成の際に分解して外部に放出するようにするため、有機化合物は水素原子、酸素原子、炭素原子からなることがより好ましい。
上記の他に、本発明で用いる炭素化合物は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、および脂環式炭化水素を含む。それらは飽和炭化水素または不飽和炭化水素であってもよく、また、モノマー、オリゴマー、ポリマーであってもよい。
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン、エテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)、ブテン(ブチレン)、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどのアルケン、エチン(アセチレン)、プロピン(メチルアセチレン)、ブチン、ペンタイン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニネ、デシンなどのアルキン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどのシクロアルカン、プロパジエン(アレン)、ブタジエン、ペンタジエン(ピペリレン)、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエンなどのアルカジエンアルカンが例示される。これらは水酸基、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基等などの置換基を有していてもよく、これらのオリゴマーであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマーであってもよい。
また、単結晶ダイヤモンドと同様に、ラマンスペクトルにおいて1330~1340cm-1付近にショルダピークが見られることが好ましい。さらに、有機化合物はsp混成軌道の炭素原子を有することが好ましく、炭素数は1~10が好ましく、4~6が好ましく、5が特に好ましい。特に、有機化合物としては多価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては3価~8価のアルコールが好ましく、4価がより好ましい。多価アルコール中の炭素元素はすべてsp混成軌道を有することがさらに好ましい。
ダイヤモンドはsp混成軌道を有する四面体構造であり、炭素化合物中にこの炭素構造が存在すると、合成の際に結晶核としての機能を果たす。このため、ダイヤモンドの成長をより効率的に促進させるためには、炭素化合物がsp混成軌道を有する炭素構造を含むことが好ましく、分岐を備えることが好ましい。更には、これらに加えて、炭素化合物がダイヤモンドの四面体構造に近い構造を有することが好ましい。これらに加えて、5つの炭素原子で四面体構造を成すことが最も好ましい。これらの末端に水酸基を有していてもよく、加熱すると脱離ガスとして放出される観点から、多価アルコールであることが好ましい。
本発明において、上述の好ましい無定形炭素と炭素化合物を用いることにより、耐久性に優れる単結晶ダイヤモンドを、更に、安価で収率が高く短時間で合成することができる理由は、以下のように推察される。
従来の高温高圧法では溶融金属と黒鉛を用いている。溶融金属が高温で溶けることによって黒鉛が溶融金属によって分解されてダイヤモンドが生成する。しかしながら、一定の結晶構造を有さない炭素である無定形炭素は、ランダムな構造を有するため、特定の構造を有するものと比較してダイヤモンドへの構造変換が容易である。このため、従来のように、溶融金属による黒鉛の構造変化に必要な高いエネルギーは必要とされず,核物質としてsp混成軌道を有する有機化合物があれば、炭素からダイヤモンドへの転換の起点となり、ダイヤモンドの生成が容易であると推察される。
また、高温高圧環境下に曝された原料中の水酸基は、無定形炭素と反応し、COやCOとして脱離する。残存したsp混成軌道を有する炭素は、ダイヤモンド結晶の最小構造である結晶核となる。そして、この結晶核が起点になり、無定形炭素がダイヤモンド構造へと転換される。したがって、本発明では、欠陥が少なく耐久性に優れる単結晶ダイヤモンド粒子を安価で且つ高い収率で製造することができると推察される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、キシリトール、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、ペルセイトール、ショ糖等が挙げられる。
これらの中でも、3価のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。4価のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。5価のアルコールとしては、キシリトールなどが挙げられる。6価のアルコールとしては、ソルビトールなどが挙げられる。7価のアルコールとしては、ペルセイトールなどが挙げられる。8価のアルコールとしては、ショ糖などが挙げられる。これらの中で、4価のアルコールが好ましく、ペンタエリスリトールが最も好ましい。
上述した炭素化合物は、1種もしくは2種以上を混合したものであってもよく、
上述した炭素化合物は、不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。
本発明において、無定形炭素と炭素化合物との組み合わせは、好ましくは無定形炭素がカーボンブラックであり、炭素化合物がsp混成軌道および四面体構造を有する多価アルコールであり、最も好ましくはカーボンブラックとペンタエリスリトールの組み合わせである。この組み合わせであれば、原料の総重量に対して95%以上、好ましくは99%以上がダイヤモンドに転換することがある。
無定形炭素と炭素化合物の混合比は、無定形炭素からダイヤモンドへの変換時の体積収縮による圧力減衰の観点から、質量比で、(無定形炭素):(炭素化合物)=7:3~4:6が望ましく、6:4~5:5であることが特に望ましい。無定形炭素と炭素化合物を上記範囲で秤量した後、出発原料を混合する。混合方法は一般的な方法でよい。例えば、上記出発原料を粉体混合機に投入し、大気圧もしくは減圧下で1~30分程度混合すればよい。これによって、100μm以下の混合粉末が得られる。
(2)混合原料を圧力媒体に導入する工程
前述のように混合した混合粉末を、例えばグラファイト製ヒーターを備える圧力媒体に詰め高温高圧装置の加圧部にセットする。
高温高圧法によるダイヤモンド粒子の合成で用いる高温高圧装置は、後述するように1000~1400℃で5~10GPaを1分程度保持できる装置であれば特に限定されない。このような条件で合成を行うためには、アンビルで混合原料に静的な外力を加える必要がある。外力が加わる加圧形態として種々のものを採用することができる。例えば、1軸プレスに代表されるベルト型などのアンビル・シリンダ型、アンビル対向型のトロイダル型やチェチェビツァ型、多軸プレスのテトラヘドラル型、マルチアンビル型などが挙げられる。
図2は、アンビル対向型の高温高圧装置における加圧部1の斜視図である。下側のアンビル10に炭酸カルシウムなどで形成されている圧力媒体20をセットする。圧力媒体20中央部の空洞30には、例えばグラファイト製のチューブに詰められた混合原料が導入されている。その後、圧力媒体20に混合原料がセットされた下側のアンビル10を上側のアンビル40に押し付け、原料を後述する高圧高温状態にして単結晶ダイヤモンド粒子の合成が行われる。
図3は、単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程に用いる高圧装置の加圧部を示す部分断面斜視図であり、図3(a)はチェチェビツァ型であり、図3(b)はトロイド型である。図3(a)に示すように、チェチェビツァ型では、中央部の窪み部分51に原料が導入された圧力媒体50が上下のアンビル60、70に挟まれており、高圧下において圧力媒体が窪み部分内で程よく潰れることにより原料に加わる圧力が低減しないようにすることができる。図3(b)に示すように、トロイド型では、中央部の窪み部分81の周りにさらに環状窪み部分82が設けられている。環状窪み部分82は、図面の上から見たときに環状に形成されており、圧力媒体80が潰れて窪み部分81から漏れ出ようとするが、環状窪み部分82により潰れた圧力媒体の流動を防ぐことができるため、加圧時間が経過しても圧力の低減を抑制することができる。図3(b)では1つの環状窪み部分82が設けられているが、その周りに更に別の環状くぼみ部を設けることが好ましい。
(3)混合原料を、黒鉛の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域内の圧力および温度に曝す
上述のように原料が高圧装置にセットされた後、アンビルで原料を所定の圧力と温度に曝す。図4は、黒鉛の相平衡図である。図4に示すように、黒鉛-ダイヤモンド平衡線より高い領域ではダイヤモンドが熱力学的に安定であり、この領域内で圧力と温度が設定される。また、圧力と温度のプロファイルは特に限定されないが、出発原料の温度および圧力の均一化、黒鉛の再結晶化、核発生、および粒子成長を考慮した上で各種条件を決定して行うことができる。通常、圧力と温度を徐々に上げていくことが望ましいが、ダイヤモンドの合成が終了するまでに時間を費やしてしまう。
このような観点から、熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaであり、温度は1300~1800℃であることが好ましい。圧力が5GPa以上であれば、マイクロサイズのダイヤモンド粒子が得られ、また、カーボンブラックからダイヤモンドへの高い変換率が得られる。温度が1300℃以上であっても、同様である。圧力は6GPa以上が更に好ましく、温度は1400℃以上が更に好ましい。
一方、圧力が10GPa以下であれば加圧装置に過度な負荷がかからず、また、圧力媒体が隙間から漏れ出ることがなく、初期の圧力が時間の経過によらず維持される。また、図4に示すように、加圧力が上記範囲内であれば、熱力学的安定領域内に入るようにすればよく、必要以上に高温にする必要がない。圧力は9.5GPa以下であることがより好ましく、8GPa以下であることが更に好ましく、温度は1700℃以下であることがより好ましく、1600℃以下であることが更に好ましい。本発明では、圧力を上記範囲内にまで上げた後、温度を上記範囲にまで上げることが、ダイヤモンドの収率の観点から好ましい。
原料が熱力学的安定領域に曝される時間は1~300秒であることが好ましい。この時間内であれば、カーボンブラックからダイヤモンドへの高い変換率が得られる。また、300秒以内であれば、潰れた圧力媒体が隙間から漏れ出ることによって生じる圧力の低下を抑制することができる。原料が熱力学的安定領域に曝される時間は、2~70秒であることがより好ましく、3~10秒であることが更に好ましく、4~7秒以内が特に好ましい。なお、この時間範囲は、熱力学的安定領域に曝される時間であり、圧力と温度が上述の範囲内である時の時間であることが好ましい。
圧力プロファイルと温度プロファイルは特に限定されず、装置の仕様の範囲内において、加圧速度と昇温速度を設定すればよく、加圧速度が速い方が好ましく、0.5GPa/秒以上であればよく、3GPa/秒以上であることがより好ましい。昇温速度も速い方が好ましく、300℃/秒以上であればよい。
上記のような条件で出発原料を高温高圧に曝すことによって、カーボンブラックが瞬時に単結晶ダイヤモンドに変換するとともに炭素化合物の炭素が単結晶ダイヤモンドに取り込まれる。このため、本発明に係る単結晶ダイヤモンドの好適な製造方法によれば、数秒~数十秒という短時間で、90%以上、もしくは99%以上という高収率で製造することができる。
2.単結晶ダイヤモンド
(1)単結晶ダイヤモンドの概要
前述の単結晶ダイヤモンドの製造方法にて製造された本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子は、炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥を備える。従来のダイヤモンド粒子であれば、結晶核や結晶欠陥が残存すると、これらを含む面で結晶界面が形成され、多結晶になってしまう。しかし、本発明に係る単結晶ダイヤモンドは、これら及びその周辺を含む全領域において結晶方位が揃っており、合成されたダイヤモンド粒子は単結晶である。
また、本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子は、前述のように金属触媒を用いていないために極めて純度が高く、且つ分解した炭素化合物の炭素以外の成分は単結晶ダイヤモンド粒子内に残留せずに外部に放出されるため、欠陥が極めて少ない。これにより、高い耐久性を備えることができる。
(2)炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥
本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子は、炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥を備える。単結晶ダイヤモンド粒子に外部から応力が加わった場合には、結晶核や結晶欠陥で応力が緩和され単結晶を形成するため、高い耐久性を示す。
本発明における結晶核や結晶欠陥はTEMなどで容易に確認することができる。例えば図7(a)に示すように、縦と横の線が結晶欠陥であり、その中心部が結晶核である。図7(a)の線は欠陥であるが、この欠陥はたまたま試料の表面で観察されたものであり、粒子の奥にまで到達しているものではない。このようなわずかな欠陥が存在したとしても、結晶核およびその周辺を含む全領域において結晶方位が揃っているため、高い耐久性を示すことができる。
本発明における結晶核や結晶欠陥は、前述の製造方法で説明した炭素化合物に由来するものであり、炭素化合物については前述と同様であるため、説明を省略する。本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子が有する結晶核は、生成前の炭素化合物の構造がある程度残ったものであり、その数は1~3個であることが好ましく、1個あれば十分に応力を緩和することができる。
(3)平均粒子径
本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子の平均粒子径は、0.25~50μmであることが好ましい。この範囲であれば粒子が大きすぎないために幅広い用途に使用できる。本発明では、例えば、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機(例えば、Malvern Instruments社製、型式:Mastersizer2000、マイクロトラックベル社製、型式:MicrotracMT3000、MicrotracUPAなど)の体積平均径D50値を平均粒子径とすることができる。
(4)ラマンスペクトル
本発明に係る単結晶ダイヤモンド粒子は、天然の単結晶ダイヤモンドと同様に、1330cm-1付近に鋭いピークを備えることが好ましい。このため、結晶格子の歪みや欠陥が極めて少なく、優れた耐久性が発揮される。
本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
1.ダイヤモンド粒子の作製
まず、無定形炭素として、算術平均粒子径が40nmのカーボンブラック粉末(商品名:東海カーボン株式会社製、TOKABLACK #4500)、算術平均粒子径が20~40nmの木炭を用い、炭素化合物としてペンタエリスリトール(東京化成工業株式会社製、製品コード(P0039))、キシリトール(東京化成工業株式会社製、製品コード(X0018))を用い、表1に示すように秤量し、粉体混合機に投入して混合粉末を得た。DNDを用いる場合には、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機(例えば、マイクロトラックベル社製、型式:MicrotracUPA)で測定した体積平均径D50値が2~100nmであるDND粉末を用い、このDND粉末とペンタエリスリトールとを表1に示すように秤量し、粉体混合機に投入して混合粉末を得た。これらの混合粉末をグラファイト製のチューブに詰め、円盤状のCaCO製圧力媒体の空洞部に導入した。
ダイヤモンドの合成は、「トロイド」型の高圧チャンバーで行った。加圧力は、高温高圧法で一般的に用いられている室温でのBi、Tl、Baの相転移の近似曲線を用いて校正し、油圧計が示す圧力とした。加熱温度は、熱電対を用いて入力電力と温度で校正し、入力電力から求めた温度とした。原料の加熱は、グラファイト製ヒーターに電流を流す直熱加熱式で行った。これらの装置構成を用い、表1に示す条件で粉末原料を高温高圧に曝した。
高温高圧法により合成された試料は、図5(a)に示すように、減圧完了時点で圧力媒体と混じった状態であるため、まずは篩で圧力媒体の粒子を除去し、次に脱イオン水で洗浄する。次に、粉末をブロモホルム(CHBg)の液体に入れて、カーボンブラックとダイヤモンド粒子とを分離する。ダイヤモンド粒子をろ過し、脱イオン水で洗浄し、ダイヤモンド粒子を得た。
得られたダイヤモンド粒子から任意に2粒抽出し、図5(a)に示すように光学顕微鏡(Optical Microscope:OM)で観察し、得られた粒子のモルフォロジーを、図5(b)に示すように、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope;FE-SEM)で観察した。ダイヤモンドの同定は,図6(c)に示すようにラマン分光分析(日本分光株式会社製装置名:レーザラマン分光装置、型番NRS-7500)で行い、図7に示すように透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製 装置名:Transmission Electron Microscope:TEM、型式名:JEM-ARM200F)像で結晶性を調査した。また、本実施例で用いたカーボンブラックに黒鉛が混入していないかどうか、透過型電子顕微鏡像にて観察した。
収率は、得られたダイヤモンド粒子の質量を原料の質量の合計で除した値に100を乗じた値(%)とした。0%でなければ単結晶ミクロンダイヤモンドを製造することができ、収率が90%以上であれば高い収率であると言える。収率が99%以上であれば極めて高い収率であり、早期の実施が期待される。
得られた結晶平均粒子径は、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機(例えば、Malvern Instruments社製、型式:Mastersizer2000)により体積平均粒子径D50を平均粒子径として計測された。
粒径が1μm以上であるとともに単結晶のダイヤモンドを製造することができた場合には評価を「〇」とした。単結晶ミクロンダイヤを製造することができなかった場合には「-」と記載した。多結晶であった場合には、「多結晶」と記載した。
結果を表1に示す。
Figure 2023004667000002
表1から明らかなように、実施例のダイヤモンド粒子はいずれも単結晶であり、結晶核を確認することができた。特に、実施例1、2および4から明らかなように、短時間で単結晶のミクロンダイヤモンド粒子を高い収率を示すことが明らかになった。
一方で、比較例1および比較例2のダイヤモンド粒子は、カーボンブラックまたはペンタエリスリトールを用いなかったため、ダイヤモンド粒子を製造することができなかった。比較例3のダイヤモンド粒子は、原料として黒鉛を用いたため、ペンタエリスリトールを結晶核としてダイヤモンドが成長したものの、結晶界面が存在してしまい、多結晶になることがわかった。比較例4~7のダイヤモンド粒子は、好適な製造条件ではなかったため、単結晶のミクロンダイヤモンド粒子を製造することができなかった。比較例8は、原料としてDNDを用いたため、熱力学的安定領域ではDNDがダイヤモンドとして安定に存在することから、ペンタエリスリトールを結晶核としてDNDが成長したものの、結晶界面が存在してしまい、多結晶になることがわかった。
図6はラマンスペクトルを示す図であり、図6(a)は黒鉛とカーボンブラックのラマンスペクトルであり、図6(b)はペンタエリスリトールのラマンスペクトルであり、図6(c)は、天然ダイヤモンドと、実施例2の条件で製造した単結晶ダイヤモンド粒子のラマンスペクトルである。本実施例で用いた黒鉛とカーボンブラックは、図6(a)に示すように大きく異なるラマンスペクトルを示す。黒鉛では1580cm-1付近の鋭いピークと1330cm-1付近のショルダピークが見られた。一方、カーボンブラックは無定形炭素であるために1580cm-1付近に鋭いピークは見られなかったことから、黒鉛とカーボンブラックは結晶構造が大きく異なるものであることが確認された。
なお、カーボンブラックは無定形炭素であるため、ラマンスペクトルにおいてピークは見られないはずであるが、1330cm-1付近と1580cm-1付近にショルダピークが見られた。ただ、後述するように、図8において、本実施例で用いたカーボンブラックには黒鉛が存在しない。このため、カーボンブラックのラマンスペクトルに見られるショルダピークは、原料に混入した黒鉛ではなく、ラマン分光測定の際にレーザによってカーボンブラックの一部が黒鉛になったものであると考えられる。図6(b)に示すように、ペンタエリスリトールでは、1330~1340cm-1付近に小さいショルダピークが見られることから、ダイヤモンドの成長の起点となる結晶核としては最適であることがわかった。図6(c)に示すように、天然ダイヤモンドと本実施例の両方とも、1332cm-1に単結晶ダイヤモンドに特有の鋭いピークが見られたため、本実施例では単結晶ダイヤモンドを製造することができることがわかった。また、本実施例では、結晶格子の歪みや欠陥が極めて少ないミクロン単結晶ダイヤモンド粒子を製造可能であることもわかった。
図7は、ダイヤモンド粒子のTEM写真であり、図7(a)および図7(b)は実施例2の単結晶ダイヤモンド粒子であり、図7(c)および図7(d)は比較例8の多結晶ダイヤモンド粒子である。図7(a)および図7(b)から明らかなように、実施例2のダイヤモンド粒子では結晶核を確認することができ、また、粒子全体が同じ結晶方位であり単結晶ダイヤモンド粒子であることもわかった。一方、図7(c)および図7(d)から明らかなように、比較例8のダイヤモンド粒子には多数の線を境目としてグレーの濃淡を確認することができるため、多数の結晶界面が存在し、単結晶ではなく多結晶であることがわかった。
図8は、実施例で用いたカーボンブラックのTEM写真である。図8に示すように、本実施例で用いたカーボンブラックは、黒鉛に由来する六員環が一切見られないことから、黒鉛を含有しないことが明らかになった。従来では、原料中に少しでも黒鉛がなければダイヤモンドを合成することができない、とされていた。しかし、本実施例では、原料に黒鉛が一切含まれていない場合であっても、耐久性に優れる単結晶ダイヤモンドを安価で短時間で合成することができることが明らかになった。
1 加圧部、10,40,60,70 アンビル、20,50,80 圧力媒体、30 空洞、51,81 窪み部分、82 環状窪み部分
Figure 2023004667000011
Figure 2023004667000012

Claims (14)

  1. 高温高圧法を用いた単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
    無定形炭素、および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンドを合成することを特徴とする単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  2. 前記無定形炭素はカーボンブラックである、請求項1に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  3. 前記熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaであり、温度は1300~1800℃である、請求項1または2に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  4. 前記原料が前記熱力学的安定領域に曝される時間は1~300秒である、請求項1から3のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  5. 前記炭素化合物は有機化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  6. 前記有機化合物は、多価アルコールである、請求項5に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  7. 前記有機化合物を構成する炭素はsp混成軌道を有する、請求項5または6に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  8. 前記炭素化合物はペンタエリスリトールである、請求項1~4のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンドの製造方法。
  9. 炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥を備える単結晶ダイヤモンド。
  10. 前記炭素化合物は有機化合物である、請求項9に記載の単結晶ダイヤモンド。
  11. 前記有機化合物は多価アルコールである、請求項10に記載の単結晶ダイヤモンド。
  12. 前記有機化合物を構成する炭素はsp混成軌道を有する、請求項11に記載の単結晶ダイヤモンド。
  13. 前記炭素化合物はペンタエリスリトールである、請求項9に記載の単結晶ダイヤモンド。
  14. 平均粒子径が0.25~50μm以下である、請求項9~13のいずれか1項に記載の単結晶ダイヤモンド。
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