JP3452665B2 - ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド - Google Patents

ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド

Info

Publication number
JP3452665B2
JP3452665B2 JP31257294A JP31257294A JP3452665B2 JP 3452665 B2 JP3452665 B2 JP 3452665B2 JP 31257294 A JP31257294 A JP 31257294A JP 31257294 A JP31257294 A JP 31257294A JP 3452665 B2 JP3452665 B2 JP 3452665B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
diamond
single crystal
carbon
temperature
pyrolytic carbon
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP31257294A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08141385A (ja
Inventor
和郎 中村
敏 山下
雅行 蜜石
哲朗 東城
加寿弘 片岡
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyo Tanso Co Ltd
Tokyo Gas Co Ltd
Original Assignee
Toyo Tanso Co Ltd
Tokyo Gas Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyo Tanso Co Ltd, Tokyo Gas Co Ltd filed Critical Toyo Tanso Co Ltd
Priority to JP31257294A priority Critical patent/JP3452665B2/ja
Publication of JPH08141385A publication Critical patent/JPH08141385A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3452665B2 publication Critical patent/JP3452665B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定の炭素源を原料と
し、高温、高圧を使用する温度差法によりダイヤモンド
単結晶を合成する方法に関し、より具体的には特定の熱
分解炭素を炭素源原料とし、ダイヤモンド安定領域内の
高温高圧下、温度差法により種結晶上にダイヤモンドを
成長させるダイヤモンド単結晶の合成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは、立方晶系のダイヤモン
ド型構造でいわゆるダイヤモンド光沢をもち、宝石とし
て重宝されているほか、硬度(モ−ス硬さ10で、既知
物質中最も硬い)、耐摩耗性がずば抜けて高いため、砥
石、研磨材、バイト、ダイス、ボ−リング用ビット、切
削工具用等の工具やコ−ティング工具として用いられ、
また高純度のものは熱伝導率が高いことからヒ−トシン
ク材として電子部品に組み込まれ、さらには高音発生用
スピ−カ−振動板等へも利用されている。
【0003】ダイヤモンドは、天然のものだけではな
く、合成ダイヤモンドも製造され市販されている。この
合成ダイヤモンドの製造方法としては大きく分けて高圧
法と低圧法とがあるが、高圧法には衝撃高圧法(動的高
圧法:爆薬の爆発力等により発生する瞬時の高圧を利
用)や静的高圧法があり、さらにこの静的高圧法には直
接変換法や融剤法がある。このうち直接変換法は黒鉛単
体に高温高圧をかけて直接ダイヤモンドに変換させるも
のであるが、融剤法は、Fe、Co、Ni等の溶融金属
(含:合金)に炭素を溶解させたのち、ダイヤモンドを
析出させる方法であり、この融剤法には膜成長法と温度
差法がある。
【0004】まず、上記膜成長法は、黒鉛とダイヤモン
ドが溶融金属への溶解度を異にすることを利用した方法
であり、高圧下で溶融金属と黒鉛を接触させておくと、
黒鉛が溶解、拡散してゆき、その直後に(溶融金属膜の
後ろに)ダイヤモンドを析出させる方法である。この膜
成長法では直径0.1〜1mm程度の結晶が約10分程
度で成長し、現在人工ダイヤモンドとして販売されてい
るものの大部分がこの方法によるものと云われる。
【0005】一方、温度差法では、温度の違いによりダ
イヤモンドが溶融金属への溶解度を異にすることを利用
した方法であり(温度差:20〜50℃程度)、高圧下
で加熱された溶融金属相に対し、その一方を高温に保持
して原料の炭素を溶解させ、他方をより低温としてダイ
ヤモンドを析出させる方法である。この温度差法は大粒
のダイヤモンド単結晶を育成するのに適した方法であ
り、この方法による大型の単結晶が実用化されている。
【0006】温度差法は、例えば特公昭59−6808
号公報に記載のとおり、炭素状態図のダイヤモンド安定
領域内の高温高圧下(ここでの好適な圧力及び温度範囲
は、それぞれ55〜57kb及び1330〜1430℃
とされている)、金属溶媒の中に温度勾配つけ、その高
温域で炭素源を溶解させるとともに、低温域に置かれた
ダイヤモンド種結晶上に大粒のダイヤモンドを成長させ
るものであるが、この技術においては種結晶の上部に核
形成抑制用遮断層及び隔離用遮断層を配置することによ
り、そこで発生する自発的核の生成を抑制し、また種結
晶の溶解をダイヤモンド成長が発現するまで抑制するよ
うにされている。
【0007】このように温度差法によれば、炭素源から
比較的大粒のダイヤモンド単結晶を得ることができ、特
に上記特公昭59−6808号公報では宝石級のダイヤ
モンド製品を製造する方法及び装置に係るものとして説
明されているが、この技術における炭素源としては黒
鉛、ダイヤモンド又はその混合物が使用される。また特
開平4−108532号公報には、特定の炭素源を使用
することにより、同じく温度差法によって高い同位体純
度を持った熱伝導率の高い単結晶ダイヤモンドを製造す
る技術が提案されているが、ここでのその炭素源として
は好ましくは薄膜法(CVD法)で得られたダイヤモン
ドを使用すると記載されている。
【0008】図5は、この温度差法についてこれまで紹
介された「試料構成」等の一例を示すものである〔「資
源処理技術」Vol.37,No.1(’90−春),
p.23〜28〕。図5中、1は炭素源、2は金属溶
媒、3は白金箔、4は、ダイヤモンド種結晶である。こ
の構成試料をNaCl成形体のカプセルに入れ、このカ
プセルが筒形のヒ−タ−の中に炭素源がヒ−タ−の中央
にくるように詰められるが、筒形のヒ−タ−では中央部
が高温で両端が低温となることから、この温度分布によ
り金属溶媒に温度差がつけられる。
【0009】次いで、それを高圧容器中に詰め、約6万
気圧に加圧した後、約1400℃に加熱して15〜24
時間保持すると、図5中、符号5で示すような2〜3m
mの結晶が得られるが、この場合上記白金箔3は、結晶
育成開始時に種結晶が金属溶媒に溶解して消失しないよ
うに種結晶を保護するためのものと説明されている。な
お、上記文献によれば、この白金箔3(これは前述特公
昭59−6808号公報における隔離用遮断層に相当す
るものと解される)は、時間とともに次第に金属溶媒に
溶け込んでなくなるが、そのときには金属溶媒は炭素で
飽和されているため、ダイヤモンド種結晶4が溶解され
ることはない。
【0010】ところで、ダイヤモンド単結晶を温度差法
によって合成、製造する場合、その炭素源としてはダイ
ヤモンド、黒鉛又は熱分解炭素が使用される。しかし、
このうち特に熱分解炭素の場合には、特別な前処理が必
要不可欠であり、少なくとも温度差法においては、この
前処理を施したものでなければ、この熱分解炭素を炭素
源原料としてダイヤモンドを合成することはできない。
【0011】上記前処理としては、例えば熱分解炭素の
粉末を鋼製ダイを用いて圧搾し、グラファイトのカプセ
ル中に置き、誘導加熱炉を用いて真空中温度1800〜
2000℃に加熱してアニ−リングする〔J.Phy
s.C:Solid State Phys.21、
p.1363〜1376(1988)、Physica
lReview Letters Vol.65、N
o.7、p.891〜894(13 Aug.199
0)〕等の手法が採られるが、何れにせよ、そのような
前処理を経たものでなければ、熱分解炭素から直ちにダ
イヤモンド単結晶を生成させることは不可能であった。
【0012】本発明者は、原料炭素源の種類如何を含め
て、高温高圧下、上述温度差法によりダイヤモンド単結
晶を製造する手法として、以上の諸事実をも前提に各種
方面から実験、研究を続けているうち、全く予想外に
も、その原料炭素源として、熱分解炭素のうちでも特定
の熱分解炭素を用いることにより、これが上記のような
前処理を必要とすることなく、ダイヤモンド単結晶を有
効に合成し得ることを見い出し、本発明に到達するに至
ったものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、本発明は、
ダイヤモンド単結晶を温度差法により合成する方法にお
いて、その原料炭素源としてフレ−ク状熱分解炭素を使
用することにより、従来のように前処理を必要とするこ
となく、また前記のように薄膜法により予め製造するこ
とが必要なダイヤモンド微結晶を経ることなく、ダイヤ
モンドを有効に合成、製造し得るダイヤモンド単結晶の
合成方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、ダイヤモンド
安定領域内の高温高圧の条件下、温度差法により炭素源
から種結晶上にダイヤモンドを成長させるダイヤモンド
単結晶の合成方法において、その炭素源としてフレ−ク
状の熱分解炭素を使用することを特徴とするダイヤモン
ド単結晶の合成方法を提供し、またこの合成方法で得ら
れた単結晶ダイヤモンドを提供するものである。
【0015】ここで本発明において炭素源として使用す
る上記フレ−ク状熱分解炭素は、高濃度のメタン、エタ
ン、プロパン、ベンゼン、アセチレンその他の炭化水素
ガス又は一酸化炭素(キヤリアガスを使用せず、濃度1
00%の炭化水素ガス又は一酸化炭素である場合を含
む)を、熱分解炉中で、例えばメタンの場合分解処理温
度1800〜2000℃、炉内圧力1〜5torrで熱
分解させて黒鉛シ−ト等の基材上に沈積させ、次いでそ
の基材から剥離することにより得られるもので、図1
(a)のとおりフレ−ク状をし、表1に示す特性を有す
るものである。なお表1には、比較のためス−ト状熱分
解炭素の特性についても記載している。
【0016】表1のとおり、フレ−ク状熱分解炭素は、
Columnar状(円柱状、光学顕微鏡による)構造
を有し、密度(かさ密度)1.10g/cm3 、BAF
値(Bacon Anisotropy Facto
r、結晶の異方性係数)3〜20、格子定数6.8〜
7.0A(オングストロ−ム)を有するものであり、本
明細書中フレ−ク状熱分解炭素とは、フレ−ク状でこれ
らの特性を備える熱分解炭素を意味している。
【0017】
【表 1】
【0018】なお、上記「BAF」とは、X線回折手法
を使用して求められ、例えば(002)回折の強度
(I)と試料のC軸方向が沈積面に垂直な方法からずれ
る角度(φ)との関係である配向関数「I(φ)」を求
め、下記式により算出される値である。このBAF値
は、熱分解炭素等の選択配向性の強い材料の結晶異方性
を定量的に表わすのに有効な手段であり、この数値が大
きいほど異方性が大きいことを表わし、通常の黒鉛のB
AF値は2以下である。
【0019】
【数 1】
【0020】これに対して、熱分解炉内圧力を20〜4
0torrとし、前記と同じく原料ガスとしてメタンガ
ス等の炭化水素ガスを使用し、その他の条件を同様にし
ても同じく熱分解炭素は得られるが、これは図1(b)
のとおり同じ基材から剥離してもス−ト状で、Colu
mnar構造を持たず、かさ密度=0.87g/cm
3 、BAF≒1、格子定数6.8〜7.0A(オングス
トロ−ム)を有するものであり、その理由は不明である
が、後述《比較例》のとおり、このス−ト状熱分解炭素
を用いて温度差法を適用してもダイヤモンド単結晶は全
く生成することはできない。
【0021】図2は、上記両熱分解炭素の一例ついてC
uKα線によりX線回折を行った結果を示すものである
〔図中、横軸はX線が回折する角度である2θ(=de
gree)を、縦軸は、X線回折ピ−クの強度をcou
nt数単位で示し、相対的な値である〕。このうち図2
(a)はフレ−ク状熱分解炭素のX線回折図、図2
(b)はス−ト状熱分解炭素のX線回折図であり、比較
対比のため、図2(a)及び(b)中の下部にJCPD
Sカ−ド(米国、1985)による黒鉛相のX線回折デ
−タを掲記している。図2(a)〜(b)から明らかな
とおり、両者は結晶構造上はほぼ同じであるが、双方と
も黒鉛相ではなく(すなわちJCPDSによる黒鉛相デ
−タと比べると、26度付近のメインピ−クの2θの位
置がずれており、その他のピ−クの位置も異なってい
る)、またその結晶性はス−ト状熱分解炭素に比べてフ
レ−ク状熱分解炭素の方が比較的高い。
【0022】また自然界に存在する炭素又は炭素化合物
中には、12Cのほか、13Cが1.1%含まれており、こ
の点天然のダイヤモンドについても同じであるが、例え
ば「Physical Review B」Vol.4
2,No.2,p.1104〜1111(15,Jul
y 1990)によれば、その原料として99.9%12
CH4 を用いて得られた12Cダイヤモンドは、天然の同
位体組成のダイヤモンドの約1.5倍にも及ぶ高い熱伝
導率(thermal conductivity、銅
の約8倍)を有することが報告されている。
【0023】この報告によれば、そのサンプルとしての
12Cダイヤモンド単結晶を、まずCVD法により、9
9.9%に富化された12CH4 を使用してダイヤモンド
シ−トを作り、これを粉砕して粉末とし、次いでこの粉
末を圧力52000atm、温度1200℃で、溶融遷
移金属から小さいダイヤモンド種結晶上に成長させるこ
とにより合成している。この合成法によれば、そのよう
に、まずCVD法により炭素源としてのダイヤモンド粉
末を作る必要があるが、このCVD法による収率は通常
1%以下でしか得られず、このためこれを原料とするに
しても、最終的にダイヤモンド単結晶を合成するには、
別途その粉末を得る工程を必要とするのに加え、その収
率上も大きな問題がある。
【0024】これに対して、本発明の合成方法によれ
ば、12Cと13Cを通常の比率で含む(すなわち天然ダイ
ヤモンドのように13Cを1.1%含む)ダイヤモンド単
結晶のほか、炭素源としてのフレ−ク状熱分解炭素を製
造するその時点において、原料炭化水素ガス中又は原料
一酸化炭素中のその比率、例えばメタン中のその比率を
選ぶことで、すなわち同位体組成を変化させたメタンを
使用することにより、12Cと13Cとを任意の比率で含む
ダイヤモンド単結晶を合成することができる。
【0025】このように、本発明によれば、例えば濃縮
12CH4 を原料として得られたフレ−ク状熱分解炭素を
炭素源とすることにより、前述のような熱伝導率の高い
12Cダイヤモンド単結晶を合成することができ、またフ
レ−ク状熱分解炭素は収率約40%以上で得られるが、
これをそのまま炭素源とすることができるため、その収
率上も格段に向上させることができるものである。
【0026】また本発明の実施に際して適用する圧力及
び温度としては、ダイヤモンド安定領域内の条件であれ
ば特に限定はないが、好ましくは圧力約5〜6.5GP
a、温度約1300〜1500℃で実施することができ
る。また融剤としては、融剤法用として知られている金
属又は合金(含、混合物)であれば何れも使用できる
が、好ましくはFe、Co、Ni、これら金属相互の合
金又はこれら鉄族金属と他の金属(Al等)との合金を
用いることができる。
【0027】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明するが、この実
施例に限定されないことは勿論である。図3及び図4
は、それぞれ、本実施例で使用した試料構成及び超高圧
装置を示すものである。
【0028】図3のとおり、本実施例における試料構成
は図5に示す試料構成とほぼ同様であり、共通する部分
については同一の符号を用いている。1は炭素源、2は
金属溶媒(=融剤)、3は白金箔、4はダイヤモンド種
結晶であり、図示のとおり白金箔3はダイヤモンド種結
晶4と融剤2との間に配置するが、これは合成操作の初
期段階でその種結晶4が溶解してしまうことを防ぐため
である。また、6は黒鉛製のヒ−タ−、7は圧力媒体、
8は、圧力媒体7を封止するためその周辺に設けた鉄製
の封止リングである。本実施例では、融剤2としてコバ
ルトを、また圧力を均一に伝えるための圧力媒体7とし
ては「NaCl+10wt%ZrO2 」を使用した。
【0029】この構成試料をダイヤモンドの安定条件で
かつ融剤が溶解する高温高圧下の条件に保持すると、種
結晶上にダイヤモンド単結晶が成長するが、円筒形のヒ
−タ−を用いる場合、その中央部が比較的高温になり、
その上下周辺部の温度は低くなるので、この性質を利用
して融剤の中央側(高温)と下側(低温)に温度差をつ
くりだすことができる。このため炭素源が中央部すなわ
ち高温部に位置するように配置するが、これにより高温
である上側の原料炭素を融剤に溶解させ、低温である下
側の種結晶上にダイヤモンド単結晶として析出させるも
のである。
【0030】次に、図4は本実施例で用いたいわゆるフ
ラットベルト型の超高圧装置の断面図を示すものであ
る。図示のとおり、この装置は基本的に超硬合金を用い
たシリンダ−(円筒状)及びアンビル(anvil)か
らなり、図4中、9はガスケットである。このガスケッ
ト9はアンビルとシリンダ−の間で圧力を封止するため
のもので、本実施例ではその材質としてパイロフェライ
トを用いている。このシリンダ−及びアンビルで形成さ
れる空間中に図3のとおりの構成試料を配置するが、加
熱は、アンビルからモリブデン製電極10、ステンレス
製の電極11及び上下一対の通電リング(鉄製)12を
通して黒鉛ヒ−タ−6に電流を流すことにより行われ
る。また黒鉛ヒ−タ−6の上下には、断熱のためにジル
コニア板13を使用している。
【0031】《実施例》以上、図3の構成試料及び図4
の超高圧装置を使用して、本発明によるダイヤモンド単
結晶の合成実験を実施した。炭素源としては、キヤリア
ガスを使用することなく(すなわち100%メタン)、
LNGから精留して得られた12Cメタンガス(12CH4
純度:99.9%)を分解処理温度1900℃、炉内圧
力2torrで熱分解させて黒鉛シ−ト基材に沈積さ
せ、剥離することにより得られたものであり、これは光
学顕微鏡によるとColumnar状の構造をしてお
り、かさ密度1.10g/cm3、BAF値=5、BE
T表面積3.1m2/gを有するものである。
【0032】このフレ−ク状熱分解炭素202mgを炭
素源1として使用し、コバルト金属溶媒(融剤)2上に
配置して図3のとおりの試料構成とし、この構成試料を
図4におけるシリンダ−中に配置した後、上下のアンビ
ルにより加圧をして圧力媒体7を6.1GPaに加圧し
た。この加圧後、モリブデン製電極10、ステンレス製
電極11から通電リング12を通して黒鉛ヒ−タ−6に
電流〔AC、2.71V、637A(アンペア)〕を流
して温度1430℃に加熱した。この場合、その操作温
度はPt/Pt13%Rh熱電対により較正した。
【0033】上記操作状態を16時間23分間継続させ
た後、電流を切り、その後加圧状態を解除したところ、
一個の黄色いダイヤモンド単結晶が生成していた。この
生成ダイヤモンドの重量は7.9mgであり、この結晶
の表面のファセットは主に{111}であり、その他
{100}及び{113}が現れた。
【0034】《比較例》前述図3の構成試料及び図4の
超高圧装置を使用し、炭素源1としてス−ト状熱分解炭
素163mgを使用した以外は、《実施例》の場合と同
じ圧力6.1GPa及び温度1430℃(AC、2.7
2V、635A)で操作した。このス−ト状熱分解炭素
としては、キヤリアガスを使用することなく(すなわち
100%メタン)、LNGを精留して得られた12Cメタ
ンガス(12CH4 純度:99.9%)を分解処理温度1
900℃、炉内圧力25torrで熱分解させて黒鉛シ
−ト基材上に沈積させ、その基材から剥離することによ
り得られたものであり、その特性としては、かさ密度
0.87g/cm3 、BAF値=1、BET表面積5
5.6m2/gを有するものである。
【0035】上記その操作状態を18時間33分継続さ
せた後、電流を切り、その後加圧状態を解除したが、ダ
イヤモンド単結晶は全く生成していなかった。また炭素
源1として上記と同じス−ト状熱分解炭素を186mg
を使用した以外は、上記の場合と同じ圧力6.1GPa
及び温度1430℃(AC、2.68V、639A)で
操作し、この操作状態を10時間18分継続させた後、
電流を切り、加圧状態を解除したが、この場合にもダイ
ヤモンド単結晶は全く生成していなかった。
【0036】以上、実施例及び比較例から明らかなとお
り、ス−ト状熱分解炭素を炭素源としたのでは、ダイヤ
モンド安定領域内の高温高圧下、温度差法を適用しても
ダイヤモンド単結晶を合成することは不可能であるのに
対して、本発明によれば、その炭素源としてフレ−ク状
熱分解炭素を使用することにより、ダイヤモンド安定領
域内の高温高圧下、温度差法によりダイヤモンド単結晶
を有効に合成することができるものである。
【0037】《参考例》比較例で用いた炭素源と同じス
−ト状熱分解炭素に対して熱処理(前処理)をし、これ
を使用してダイヤモンドの合成実験を行った。この熱処
理は、そのス−ト状熱分解炭素を真空中(約10-1
a)、温度2000℃で8時間加熱処理をして得たもの
である。ここでも前述図3の構成試料及び図4の超高圧
装置を使用し、炭素源1として上記熱処理ス−ト状熱分
解炭素169mgを使用した以外は《実施例》及び《比
較例》の場合と同じ圧力6.1GPa及び温度1430
℃(AC、2.71V、638A)で操作した。
【0038】この操作状態を19時間25分継続させた
後、電流を切り、その後加圧状態を解除したところ、一
個の黄色いダイヤモンド単結晶が生成していた。この生
成ダイヤモンドの重量は2.7mgであり、この結晶表
面のファセットは{111}のみであった。このよう
に、ス−ト状熱分解炭素を炭素源としてダイヤモンド単
結晶を有効に合成し得るためには、ス−ト状熱分解炭素
に前処理(熱処理)を施すことが必要不可欠である。
【0039】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、ダイヤ
モンド安定領域内の高温高圧下、温度差法により炭素源
原料からダイヤモンド単結晶を合成する方法において、
その炭素原料としてフレ−ク状の熱分解炭素を使用する
ことにより、従来必要不可欠であった前処理を必要とす
ることなく、また前述のように薄膜法等によるダイヤモ
ンド微結晶の作製を経ることなく、ダイヤモンド単結晶
を有効に合成することができる。
【0040】また本発明は、12Cと13Cを通常の比率で
含むダイヤモンド単結晶のほか、炭素源としてのフレ−
ク状熱分解炭素を製造するその時点においてその比率を
選ぶことだけで、12Cと13Cとを任意の比率で含むダイ
ヤモンド単結晶を合成することができ、これにより例え
12Cリッチの熱伝導率の高いダイヤモンド単結晶をも
合成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フレ−ク状熱分解炭素とス−ト状熱分解炭素の
一例を示す顕微鏡写真。
【図2】熱分解炭素についてのX線回折の結果を示す
図。
【図3】本実施例で使用した試料構成図。
【図4】本実施例で使用した超高圧装置を示す図。
【図5】温度差法における試料構成等の一例を示す図。
【符号の説明】
1 炭素源 2 金属溶媒(融剤) 3 白金箔 4 ダイヤモンド種結晶 5 合成ダイヤモンド結晶 6 黒鉛製ヒ−タ− 7 圧力媒体 8 鉄製封止リング 9 ガスケット 10、11 電極 12 一対の通電リング 13 ジルコニア板
フロントページの続き (72)発明者 山下 敏 東京都豊島区東池袋1−48−6 (72)発明者 蜜石 雅行 香川県三豊郡大野原町大字中姫2181−2 東洋炭素株式会社内 (72)発明者 東城 哲朗 香川県三豊郡大野原町大字中姫2181−2 東洋炭素株式会社内 (72)発明者 片岡 加寿弘 埼玉県所沢市山口106−33 (56)参考文献 特開 平6−182183(JP,A) 特開 昭58−161995(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01J 3/00 - 3/06 C01B 31/06 C30B 9/10 C30B 29/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ダイヤモンド安定領域内の高温高圧の条件
    下、温度差法により炭素源から種結晶上にダイヤモンド
    を成長させるダイヤモンド単結晶の合成方法において、
    その炭素源としてフレ−ク状の熱分解炭素を使用するこ
    とを特徴とするダイヤモンド単結晶の合成方法。
  2. 【請求項2】上記フレ−ク状の熱分解炭素が炭化水素又
    は一酸化炭素を熱分解して得られたフレ−ク状熱分解炭
    素である請求項1記載のダイヤモンド単結晶の合成方
    法。
  3. 【請求項3】上記炭化水素又は一酸化炭素が、同位体組
    成を変化させた炭化水素又は一酸化炭素である請求項2
    記載のダイヤモンド単結晶の合成方法。
  4. 【請求項4】上記炭化水素がメタンである請求項2又は
    3記載のダイヤモンド単結晶の合成方法。
  5. 【請求項5】ダイヤモンド安定領域内の高温高圧の条件
    下、温度差法によりフレ−ク状の熱分解炭素からなる炭
    素源から種結晶上に成長させることにより合成された単
    結晶ダイヤモンド。
JP31257294A 1994-11-22 1994-11-22 ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド Expired - Fee Related JP3452665B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31257294A JP3452665B2 (ja) 1994-11-22 1994-11-22 ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31257294A JP3452665B2 (ja) 1994-11-22 1994-11-22 ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08141385A JPH08141385A (ja) 1996-06-04
JP3452665B2 true JP3452665B2 (ja) 2003-09-29

Family

ID=18030834

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31257294A Expired - Fee Related JP3452665B2 (ja) 1994-11-22 1994-11-22 ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3452665B2 (ja)

Families Citing this family (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5070688B2 (ja) * 2005-08-22 2012-11-14 住友電気工業株式会社 高硬度ダイヤモンド多結晶体及びその製造方法
US9227166B2 (en) 2005-07-21 2016-01-05 Sumitomo Electric Industries, Ltd. High-hardness polycrystalline diamond and method of preparing the same
JP5307195B2 (ja) * 2011-06-16 2013-10-02 独立行政法人産業技術総合研究所 同位体比率を制御した炭素材料及び識別マーク
JP5891636B2 (ja) * 2011-07-28 2016-03-23 住友電気工業株式会社 多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
JP5891634B2 (ja) * 2011-07-28 2016-03-23 住友電気工業株式会社 多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
US9850135B2 (en) 2011-07-28 2017-12-26 Sumitomo Electric Industries, Ltd. Polycrystalline diamond and manufacturing method thereof
JP5891635B2 (ja) * 2011-07-28 2016-03-23 住友電気工業株式会社 多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
JP5880200B2 (ja) * 2012-03-27 2016-03-08 住友電気工業株式会社 単結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
WO2013031907A1 (ja) * 2011-09-02 2013-03-07 住友電気工業株式会社 単結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
GB201204533D0 (en) * 2012-03-15 2012-04-25 Element Six Ltd Process for manufacturing synthetic single crystal diamond material
JP5987629B2 (ja) * 2012-10-23 2016-09-07 住友電気工業株式会社 多結晶ダイヤモンドおよびその製造方法
CN113694830A (zh) * 2021-09-07 2021-11-26 南方科技大学 一种氮掺杂金刚石及其合成方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08141385A (ja) 1996-06-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Angus Diamond synthesis by chemical vapor deposition: The early years
Badzian Cubic boron nitride-diamond mixed crystals
JP3452665B2 (ja) ダイヤモンド単結晶の合成方法及び単結晶ダイヤモンド
JPH03232796A (ja) 合成ダイヤモンド製品ならびにその製造法
Sidorov et al. Superconductivity in diamond
JPH04228497A (ja) 基体のないダイヤモンド薄板並びにそれを製造するための方法および装置
JP2007055819A (ja) 高硬度ダイヤモンド多結晶体及びその製造方法
Chandran Synthesis, Characterization, and applications of diamond films
Konyashin et al. A new hard allotropic form of carbon: Dream or reality?
Banhart et al. Self‐compression and diamond formation in carbon onions
EP0894766B1 (en) Boron-doped isotopic diamond and process for producing the same
Kikuchi et al. Characteristics of thin film growth in the synthesis of diamond by chemical vapour deposition and application of the thin film synthesis technology for tools
US20010001385A1 (en) Boron-doped isotopic diamond and process for producing the same
JPH0232229B2 (ja)
JPH03141199A (ja) 単結晶cvdダイヤモンドの製造方法
Gou et al. Investigation of the process of diamond formation from SiC under high pressure and high temperature
Xie et al. The structures, synthesis, properties, and applications of diamond
JP2686970B2 (ja) 膜状ダイヤモンドの製造方法
Toyota et al. Synthesizing Cubic Diamond Crystal Using DC Plasma Jet CVD
JP2614870B2 (ja) 多結晶質ダイヤモンド焼結体の製造法
Sellam et al. Catalytic growth of carbon nanowires on composite diamond/silicon substrates
Ralchenko et al. Chemical vapor deposition of diamond films on diamond compacts
JPH08217429A (ja) 硬質カーボン及びその製造方法
Vokhmyanin Synthesis of Diamond Precursor MW CVD Method for Forming Diamond Films on Tungsten Carbide Materials
Lee Adhesion improvement of chemically vapor deposited diamond thin films on cemented carbides via laser surface modification

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030708

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090718

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090718

Year of fee payment: 6

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 9

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 9

R370 Written measure of declining of transfer procedure

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R370

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313117

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 9

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120718

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130718

Year of fee payment: 10

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees