JP7382692B1 - デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子、およびデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法 - Google Patents

デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子、およびデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐久性に優れるデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子、およびデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法を提供する。【解決手段】デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドは、窒素空孔欠陥を有するデトネーションダイヤモンドを中心部に備える。多結晶ダイヤモンド粒子は、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する。好ましくは、個数平均径が0.5μm以下であり、且つ体積平均径が15μm以上である。また、好ましくは、平滑な結晶面を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子、およびデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法に関する。
工業用に使用されるダイヤモンド粒子は、一般に高温高圧法(以下、「HPHT」と称する。)で合成される。合成の際に用いる原料は、黒鉛(グラファイト)と溶融(触媒、溶媒、溶剤ともいう)金属(またはそれらの合金および炭化物)を用いて行うことが一般的である。
例えば特許文献1には、12Cの濃度を高くすることにより不純物濃度を低くし、且つ不可避的不純物にNiを含まない単結晶ダイヤモンドが記載されている。同文献によれば、不純物濃度が低いために高い硬度を示すとともに、不純物中にNiが含まれないことにより硬度の温度依存性が向上する、とされている。この単結晶ダイヤモンドの合成は、溶融金属の存在下においてダイヤモンド粒子が生成する溶融析出理論に基づいて行われている。ただ、同文献に記載の技術では、溶融金属を用いているため、不純物濃度が低いとはいえ、溶融金属が不純物として残存することは避けられない。
金属触媒を用いずにHPHT下で単結晶ダイヤモンド粒子を得る手法として、例えば特許文献2には、原料としてカーボンブラックとペンタエリスリトールを用いる発明が開示されている。同文献に記載の発明は、カーボンブラックとペンタエリスリトールのみを原料として用い、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すだけで、ダイヤモンドを生成することができる画期的な技術である。
ところで、ダイヤモンドは物質上最高の硬度を持ち、シリコンなどの種々の材料を研磨・研削する砥石、集積回路の切断に用いる砥石など、幅広く利用されている。近年では、単結晶ダイヤモンドを用いた砥石が注目されている。
単結晶ダイヤモンドには、天然ダイヤモンドや合成ダイヤモンドがある。天然ダイヤモンドは、そのほとんどがIa型であり、格子もしくは格子間に窒素を有する。また、天然ダイヤモンドにはIIa型の天然ダイヤモンドが存在するものの、不純物の含有量や結晶組織のばらつきが大きく、品質や性能が安定しない。さらに、天然ダイヤモンドは、採掘量に応じて価格が変動するため、安定供給に課題を残し、高価でもある。一方、合成ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドよりも一定品質のものを安定供給することができる。
ダイヤモンド粒子を用いた砥石は、加工量が大きいことに加えて、長期間使用することができるように、従来から高い耐久性能が要求されている。例えば特許文献3には、高い靭性や耐摩耗性を備えるダイヤモンドを用いた加工方法が開示されている。同文献によれば、ダイヤモンドに電子線などを照射して孤立空孔欠陥を与えることにより、高い靭性や耐摩耗性硬度が向上する、とされている。
また、特許文献4には、光学フィルタリング用途、機械的用途、および宝石用途に適用されるように、高濃度と一様な分布状態の両方を満たした窒素欠陥を有する単結晶CVDダイヤモンド材料が開示されている。
特開2013-202446号公報 国際公開2023/276443号 特許第5554449号 特開2015-505810号公報
特許文献2に記載の発明は、前述のように、単結晶ダイヤモンドを容易に製造することができる画期的な技術である。すなわち、同文献に記載の発明は、天然ダイヤモンドの代替材料として有益な技術ではある。ただ、例えば砥石として使用する場合には、得られた単結晶ダイヤモンドの靱性を制御する必要があり、ダイヤモンドの組織を何等かの手段を用いて制御する必要がある。
特許文献2に記載のダイヤモンド粒子を半導体部材加工砥石として用いる場合には、例えば特許文献3または特許文献4のように、ダイヤモンドに電子線などを照射しアニールを行うことにより靱性を向上させてもよいと思われる。ここで、特許文献3に記載のダイヤモンド材料は靭性に優れる、とされている。このため、長時間加工したとしてもダイヤモンドの形態が維持されると思われる。
しかしながら、ダイヤモンド材料と被加工物との接点である加工点が加工前の鋭利な状態で恒常的に維持されることはない。研磨・研削加工においては、靱性及び/又は耐摩耗性を有したダイヤモンド材料を用いると砥石が目つぶれしてしまい、所望の加工精度が得られなくなる。また、切断加工においては、良質なカットラインが徐々に得られなくなる。
また、特許文献3の段落0020等には、単結晶化学気相堆積法(以下、適宜、「CVD」と称する。)により生成したダイヤモンド板に電子線を照射し、その後に加熱することが記載されている。しかし、単結晶CVDダイヤモンド板を砥粒に用いるためには、数限りないCVD成膜による生成および粉砕の工程が必要であり、現実的ではない。
実際、1回のCVD成膜で得られるCVDダイヤモンドは数g程度であり、砥石向けの粒子を大量に得ることは不可能に近い。また、CVDダイヤモンドの中でも特に単結晶質ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドの微結晶が同じ方位で集合したものであるため、HPHTにより製造された単結晶ダイヤモンド粒子のように砥粒として用いることは不適切である。
特許文献4に記載のCVDダイヤモンドは、前述のように、機械的用途に限らず、光学フィルタリング用途や宝石用途などにも用いられる。このため、研磨・研削加工、切断加工などの、研磨・研削、切断などの機械加工用途に適しているとは言い難い。
また、特許文献4には機械的用途に用いられることが記載されており、CVDダイヤモンドの非一様な耐摩耗性や破壊靭性の低下などの問題点を解決するため、窒素空孔欠陥が一様に分布するダイヤモンドを提供することが記載されている。しかし、特許文献4に記載の発明では、特許文献3と同様にCVDダイヤモンドを用いているため、特許文献3と同様に、砥粒として用いるための課題が残る。
近年では、電子部品の小型化が進む中、半導体部材の小型化や高品質化が要求されており、短時間で高品質な半導体部材の加工が要求されており、このような状況下において、切削加工、切断加工などの加工に用いられる砥粒および砥石の耐久性能は、更なる最適化が必要である。
本発明の課題は、半導体部材の加工面の品質が優れるとともに高い耐久性能を備えるデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子、およびそれらを容易に製造することができるデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法を提供することである。
従来では、半導体部材の加工においては、砥石の高い耐久性能を備える観点から、特許文献3および特許文献4に記載のように、高い靭性を備えるダイヤモンドが要求されていた。しかし、本発明者らは、鋭意検討した結果、半導体加工用砥石に用いられるダイヤモンド粒子が高い靭性を備えると、むしろ砥石の耐久性能が劣ると考えた。
靭性が低いダイヤモンドでは、用いた粒子のへき開によりダイヤモンド粒子が長期間の使用により破砕し、再び砥粒エッジを形成し自生発刃が形成される。破砕後のダイヤモンド粒子には鋭利なエッジが発生するため、長期間使用したとしても高い加工精度が維持される。したがって、ダイヤモンド粒子としては、従来とは逆に、むしろ靭性が低いものを使用する必要がある。また、ダイヤモンド粒子が硬く靱性が低いと優れた加工面が得られる可能性がある。
硬く靱性の低いダイヤモンドとしては窒素の含有量が極めて少ないIIa型の天然ダイヤモンドが挙げられる。しかし、天然ダイヤモンドは、前述のように不純物の含有量や結晶組織のばらつきが大きく、品質や性能が安定しない。さらに、天然ダイヤモンドは、採掘量に応じて価格が変動するため、安定供給に課題を残し、高価でもある。
本発明者らは、安価で短時間に単結晶ダイヤモンドを製造する観点から、特許文献2に記載の製造方法で製造したダイヤモンド粒子を用いて検討を行った。検討の際、本発明者らは、靭性が低いダイヤモンド粒子の方が結晶のへき開及び/又は摩耗によって加工時に粒子の自生発刃性が向上することに着目した。更に、本発明者らは、砥石の耐久性能が低下することなく、加工面の品質も向上することに着目した。
ここで、特許文献3および4には、各々ダイヤモンドを変色させることが記載されているが、色の制御方法については具体的に開示されていない。これは、電子線などの照射前の状態やアニール前の状態など、原料の状態に応じて変化するためである。そして、これらの文献に記載の発明では、電子線などの照射により窒素空孔欠陥などが形成され、一旦靭性を低下させた後、靱性を向上させるためにはアニール温度を一定以上の温度にまで上げている。
しかし、これらの文献に記載の発明では、靱性が高ければよいとされており、また、変色のための具体的な制御手段は開示されていない。このため、靱性が高すぎないように程よく制御するためには、ダイヤモンドの色だけでは制御することができない。
さらに、電子線などの照射やアニールによりダイヤモンドの組織にどのような影響があるのか、再検討が行われた。窒素を含むダイヤモンドはその結晶の炭素と窒素の結合長が炭素と炭素の結合よりも短い。このため、ダイヤモンド結晶は圧縮応力を有していることが考えられる。一方で、ダイヤモンドに電子線などが照射されると、ダイヤモンド結晶中の窒素近傍領域の接合または炭素同士の接合が損傷し、ダイヤモンドの圧縮応力が緩和することが考えられる。そして、損傷した部分がアニールにより再結合して損傷が回復すると推察される。
これらを鑑みると、特許文献3や特許文献4では、高い靱性が要求されることから、アニール温度を高くして窒素空孔欠陥の密度を低減せざるをえなかった。また、これらの文献には、窒素空孔欠陥の密度を制御するために、アニール温度を変更しているものの、窒素空孔欠陥は粒子の全域に同時に形成されるため、窒素空孔欠陥を形成する位置を制御することはできない。
この点、研磨に加えて、切断や切削性をより向上させるためには、加工時に発生する自生発刃において、大きな刃を発刃させた方が好ましい。しかし、粒子の全域に渡り窒素空孔欠陥が存在すると、自制発刃の際に小さな刃が多数形成されてしまう。これらの文献に記載の発明では、CVDダイヤモンド膜に電子線などを照射していたため、窒素空孔欠陥の密度が一様である、とされている。しかしながら、粒子に電子線を照射すると粒子の表面から中央部にかけて密度分布が生じると考えられる。
そこで、本発明者らは、粒子に適するHPHTで製造されたダイヤモンド粒子において大きな刃が発刃されるためには、窒素空孔欠陥の粒子内における位置を制御する必要があることに着目した。これにともない、本発明者らは、粒子が自生発刃する際に大きな刃が発刃されるためには、窒素空孔欠陥がダイヤモンド粒子の結晶内部に、好ましくは略中央部に形成された方がよいことも着目した。更には、加工の際に粒子が破砕しやすくなるようにするため、粒子が多結晶であってもよいことにも着目した。
上述の着目点を鑑み、特に切断加工や切削加工に適したダイヤモンド砥粒を得るため、本発明者らは、特許文献2に記載の発明では比較例の原料であるデトネーションダイヤモンドを、敢えて、用いた。そして、所定量のデトネーションダイヤモンドが特許文献2で検討されたカーボンブラックとペンタエリスリトールとともに原料として用いられた。
この原料をダイヤモンドの熱力学的安定領域でHPHTを行ったところ、生成したダイヤモンドは、デトネーションダイヤモンドから単結晶ダイヤモンドが成長したデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドである知見が得られた。そして、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドは、その成長した単結晶内にデトネーションダイヤモンドが配置されている知見も得られた。更には、ダイヤモンド粒子としては、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドが結合して構成される多結晶ダイヤモンド粒子である知見が得られた。
加えて、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドは、結晶内部に配置されているデトネーションダイヤモンド内に窒素空孔欠陥が形成されている知見も得られた。窒素空孔欠陥を有するデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドは、自生発刃の際に窒素空孔欠陥を起点として破砕される。このため、窒素空孔欠陥が一様に存在する従来のダイヤモンドより大きな刃が発刃する。したがって、特に切削加工や切断加工において、高品質の加工面が得られる。
これらの知見により得られた本発明は次の通りである。
(1) 窒素空孔欠陥を有するデトネーションダイヤモンドを結晶内部に備えることを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド。
(2) 上記(1)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有することを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子。
(3) 個数平均径が0.5μm以下であり、且つ体積平均径が15μm以上である、上記(2)または上記(3)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子。
(4) 平滑な結晶面を備える、上記(2)または上記(3)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子。
(5) 上記(2)~上記(4)のいずれか1項に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子で構成される半導体部材加工砥石。
(6) 高温高圧法を用いたデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法であって、無定形炭素、デトネーションダイヤモンド、および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンドを生成することを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(7) 無定形炭素はカーボンブラックである、上記(6)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(8) 炭素化合物は有機化合物である、上記(6)または上記(7)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(9) 有機化合物は、脂肪族炭化水素、アルコール、および多価アルコールの少なくとも1種である、上記(8)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(10) 脂肪族炭化水素はポリエチレンであり、前記アルコールはメタノールであり、前記多価アルコールはペンタエリスリトールまたはキシリトールである、上記(9)に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(11) 熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaであり、温度は1300~1800℃である、上記(6)~上記(10)のいずれか1項に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(12) 原料が前記熱力学的安定領域に曝される時間は1~10秒である、上記(6)~上記(11)のいずれか1項に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(13) 質量比で前記無定形炭素:前記炭素化合物=7:3~4:6の混合比で混合する、上記(6)~上記(12)のいずれか1項に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
(14) デトネーションダイヤモンドは、前記原料の全質量に対して10質量%以下の範囲で含有される、上記(6)~上記(13)のいずれか1項に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
図1は、本実施形態に係るデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを得るための原料からダイヤモンドが生成されるまでの模式図であり、図1(a)は、カーボンブラックとデトネーションダイヤモンドから、ペンタエリスリトールによる超臨界流体が発生している様子を示す模式図であり、図1(b)は、得られたデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドの断面模式図である。 図2は、本実施形態に係るダイヤモンド粒子の製造工程を示すブロック図である。 図3は、アンビル対向型の高温高圧装置における加圧部の斜視図である。 図4は、単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程に用いる高圧装置の加圧部を示す部分断面斜視図であり、図4(a)はチェチェビツァ型であり、図4(b)はトロイド型である。 図5は、炭素の相平衡図である。 図6は、ダイヤモンド粒子のサイズ分布を表す図であり、図6(a)は個数平均径の分布であり、図6(b)は体積平均径の分布である。 図7は、ダイヤモンド粒子のSEM写真であり、図7(a)および図7(b)が比較例4のダイヤモンド粒子であり、図7(c)および図7(d)が実施例1のダイヤモンド粒子である。 図8は、ダイヤモンド粒子のDRIFTSスペクトルであり、図8の「#C」が比較例4であり、図8の「#CD」が実施例1である。 図9は、ラマンスペクトルであり、図9の「#C」が比較例4であり、図9の「#CD」が実施例1である。 図10は、実施例で用いたカーボンブラックのTEM写真である。
本実施形態を、図面を用いて説明する。本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるわけではない。
1.デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド
図1は、本実施形態に係るデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド(以下、単に、「単結晶質ダイヤモンド」と称する。)を得るための原料からダイヤモンドが生成されるまでの模式図であり、図1(a)は、カーボンブラックとデトネーションダイヤモンド(以下、適宜、「DND」と称する。)から、ペンタエリスリトールによる超臨界流体が発生している様子を示す模式図であり、図1(b)は、得られた単結晶質ダイヤモンドの断面模式図である。図1(a)に示すように、DNDは原料として用いられる時点において窒素空孔欠陥を備える。DNDは、窒素空孔欠陥を維持したままカーボンブラックおよびペンタエリスリトールによりエピタキシャルな関係で結晶成長し、単結晶質ダイヤモンドが生成される。
なお、図1では、一例としてカーボンブラックを記載しており、下記の説明ではペンタエリスリトールを記載しているが、これに限定されることはない。使用可能な原料は、製造方法の説明で詳述する。
本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドは、図1(b)に示すように、DNDと、DNDを結晶内部に含有した単結晶ダイヤモンドで構成されている。本実施形態では、単結晶質ダイヤモンドはDNDを種結晶としてエピタキシャルな関係で成長し生成されている。このため、本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドは、DNDが保存されているとはいえ、結晶方位がDNDに依存することから、その結晶質は「単結晶質」のダイヤモンドである。DNDには、製造時に混入する不可避的不純物を含んでもよい。不可避的不純物を含んでいても、本実施形態における効果が阻害されることはない。また、単結晶質ダイヤモンドを構成するDNDの粒径は、原料として混合したDNDと同等以下であってもよい。DNDが備える窒素空孔欠陥は、単結晶質ダイヤモンドの生成後であっても維持されるため、単結晶質ダイヤモンドが窒素空孔欠陥を備えることになる。
また、図1(b)に示すように、単結晶ダイヤモンド部位は、炭素の代わりに窒素で置換された部分や窒素のペアも点在する。ここで、DNDを含有せず、カーボンブラックとペンタエリスリトールで生成したダイヤモンドでは、生成後の粒子を抽出し電子線などを照射すると窒素空孔欠陥が形成される。このため、ダイヤモンドの全域に渡り窒素空孔欠陥が形成されることから、加工の際に自生発刃により生成した刃は小さい。一方、本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンド部位は、適度な靱性を備えるとともに、自生発刃では結晶内部に存在するDNDに存在する窒素空孔欠陥を起点として大きな刃が生成する。したがって、本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドは、特に切削加工や切断加工に優れる。自生発刃により、より大きな刃が生成されるため、DNDは単結晶質ダイヤモンドの略中央部に位置することが好ましい。
本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンド部位は、炭素化合物に由来する結晶核および/または結晶欠陥を備えてもよい。後述するデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子に外部から応力が加わった場合には、結晶核や結晶欠陥で応力が緩和され単結晶を形成するため、高い耐久性を示す。この多結晶ダイヤモンド粒子は、単結晶ダイヤモンドではなく、DNDが有する窒素空孔欠陥が自生発刃の起点になる。また、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドが構成する多結晶ダイヤモンド粒子の結晶粒界が粒子破砕の起点になることがある。したがって、自生発刃の際により大きな刃を形成することができる。
本実施形態における結晶核や結晶欠陥はTEMなどで容易に確認することができる。単結晶ダイヤモンド部位をTEMで観察すると、縦と横の線を確認することができ、これが結晶成長時の欠陥に相当する。そして、縦と横の線が交わる箇所が結晶核である。単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンド部位にこのようなわずかな欠陥が存在したとしても、結晶核およびその周辺を含む全領域において結晶方位が揃っているため、高い耐久性を示すことができる。
本実施形態における結晶核や結晶欠陥は、後述の製造方法で説明した炭素化合物に由来するものである。本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンド部位が有する結晶核は、生成前の炭素化合物の構造がある程度残ったものであり、その数は1~3個であることが好ましく、1個あれば十分に応力を緩和することができる。
本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンド部位の不純物濃度は、30ppm以下であることが好ましい。製造時に混入する不可避的不純物を含んでもよい。不可避的不純物を含んでいても、本実施形態における効果が阻害されることはない。単結晶ダイヤモンド部位の界面に不純物が介在せず、したがって、後述する多結晶ダイヤモンド自体の不純物濃度も低く抑えられている。
2.デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子
本実施形態に係るデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子(以下、単に、「ダイヤモンド粒子」と称する。)は、前述の単結晶質ダイヤモンドで構成されている。ダイヤモンド粒子は、複数の単結晶質ダイヤモンドを備えるため、多結晶である。本実施形態に係るダイヤモンド粒子は、上述の単結晶質ダイヤモンドを少なくとも2個以上備える。好ましくは5個以上である。上限は特に限定されないが、30個以下であればよい。
また、本実施形態に係るダイヤモンド粒子は、HPHTによりそのまま粒子が生成するため、粉砕などの加工が行われていないas-grown面、所謂、平滑な結晶面を有することが好ましい。従来のように、CVDダイヤモンドを粉砕して得られたダイヤモンド粒子は、粉砕時の応力が粒子の至る所に加えられているため、自生発刃の際には小さな刃しか形成されない。一方、平滑な結晶面を備える本実施形態に係るダイヤモンド粒子は、粉砕等が行われていないため、窒素空孔欠陥を起点として破砕されることから、自生発刃により大きな刃が形成される。これにより、特に切削加工や切断加工において優れた耐久性や高品質の加工面が得られる。
さらに、本実施形態に係るダイヤモンド粒子は、後述のように金属触媒を用いていないために極めて純度が高く、且つ分解した炭素化合物の炭素以外の成分は単結晶ダイヤモンド粒子内に残留せずに外部に放出されるため、欠陥が極めて少ない。これにより、高い耐久性を備えることができる。
本実施形態に係るダイヤモンド粒子は、個数平均径が0.5μm以下であり、且つ体積平均径が15μm以上であることが好ましい。HPHTにより生成した粒子は、0.5μm以下の小さな粒子が多数存在するとともに、15μm以上の少量の粒子の周囲に凝集された形態で回収される。多くの小さい粒子が少数の大きな粒子に凝集されていると、加工の際に大きな粒子が小さな粒子により破砕され易くなり、破砕後には小さな粒子が増加することになる。この結果として、自生発刃が発生する粒子が加工中に増加するため、この粒子を砥粒として用いる場合には、より優れた耐久性を示すことができる。
個数平均径および体積平均径を求めるための粒度分布は,レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機を用いて測定することができる。例えば、Malvern Instruments社製のMalvern Mastersizer 2000 レーザー回折計(LD)に Hydro (LD)と Hydro 2000 モジュールを用いて求めることができる。
本実施形態に係るダイヤモンド粒子における、1332cm-1のラマンピークの半値幅(FWHM1332)は、3.0cm-1以上であることが好ましい。この範囲であれば、ダイヤモンド粒子の結晶品質が、加工時の破砕が発生しやすくなる。好ましくは3.1cm-1以上であり、更に好ましくは3.2cm-1以上である。上限は特に限定されないが、適度な破砕が発生することが好ましく、5.0cm-1以下であればよく、4.0cm-1以下であってもよい。
3.デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子で構成される半導体部材加工砥石
本実施形態に係るデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子で構成される半導体部材加工砥石(以下、単に、「砥石」と称する。)は、例えば半導体加工用などの砥石として好適に用いられる。
砥石は、高品質の加工面を形成することができるため、半導体部材を加工するために用いられる加工砥石であってもよい。本実施形態に係る砥石を備える半導体部材加工工具としては、例えば、切断砥石であるハブブレードが挙げられる。研削・研磨用砥石であるグラインドホイールが挙げられる。また、切削砥石であるバイト砥石が挙げられる。本実施形態としては、自生発刃により従来より大きな刃が形成されることから、特に切断砥石であるハブブレードや切削砥石であるバイトホイールに好適に用いられる。
ハブブレードは、主にダイシング装置で使用されている切断砥石である。アルミニウムやステンレスなどで構成される円盤状のハブである基台の外周に、ダイヤモンド砥粒が分散されたニッケルまたはニッケル合金を電着して構成される。
グラインドホイールは、略長方体の砥石が円盤基台の端部に複数設けられた研削・研磨砥石であり、グラインドホイール砥石が回転しながら基板と接触することにより、基板が研削・研磨される。基板は砥石との接触によって摩擦し、この際の摩擦熱によって砥石が消耗しやすくなる。加工砥石は、タイヤモンド砥粒を樹脂(レジン)、ガラス質(ビトリファイド)などの結合剤で結合させてなる。
バイトホイールは、例えば、ホイール基台と、ホイール基台に装着されたバイトシャンクと、バイトシャンクの下端部に取り付けられた切削刃で構成されている。半導体加工装置の保持テーブルで保持した被加工物の薄化加工を行う砥石である。
4.デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法
本実施形態に係るデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法(以下、単に、「ダイヤモンド粒子の製造方法」と称する。)は、高温高圧法を用いた単結晶ダイヤモンドの製造方法である。原料は、無定形炭素、デトネーションダイヤモンド、および炭素化合物を混合したものである。この原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンド粒子が生成する。
本実施形態に係るダイヤモンド粒子の製造方法は、高温高圧法では不純物として取り扱われているとともに分解成分により空隙の原因であると考えられていた炭素化合物および無定形炭素を用いるとともに、窒素空孔欠陥を有するDNDを用いる。ここで、CVDを用いたダイヤモンドの作製手法では、1μm以上の単結晶ダイヤモンド粒子を黒鉛、カーボンブラック、無定形炭素などの粉末から製造することは困難である。したがって、これらから単結晶ダイヤモンド粒子を得るためには、高温高圧法が最適である。以下では、図2、及び必要に応じて図1を用いて詳述する。
図2は、本実施形態に係るダイヤモンド粒子の製造工程を示すブロック図である。本実施形態に係るダイヤモンド粒子の製造方法は、具体的には、図2に示すように、(1)DND、無定形炭素および炭素化合物からなる出発原料を混合する工程、(2)混合原料を圧力媒体に導入する工程、(3)混合原料を、黒鉛の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域内の圧力および温度に曝す工程である。これらについて以下に詳述する。
(1)DND、無定形炭素および炭素化合物からなる出発原料を混合する工程
本実施形態に係る製造方法に用いるDNDとは、炭素を多く含む原料を爆発させて、瞬間的に高温高圧状態にすることにより製造されたダイヤモンドである。また、不可避的不純物を含んでもよい。DNDの製造方法は、従来と同様の方法で製造されたものでよい。
DNDダイヤモンドは、製造時に窒素空孔欠陥を有する場合には、そのまま原料として用いることができる。窒素空孔欠陥を有さない場合には、電子線などを照射して窒素空孔欠陥を形成してもよい。
DNDに窒素空孔欠陥を発生させる手段としては、DNDに、イオン、電子、陽子、中性子、およびガンマ線の少なくとも1種を照射することが挙げられる。照射の条件は特に限定されず、従来と同程度であればよい。1×1015/cm~1×1019/cmの線量であればよい。照射エネルギは、30keV~12Meの範囲で適宜調整されればよい。
本実施形態に用いるDNDは、算術平均粒子径が2~20nm程度である単結晶ダイヤモンドであればよい。この粒径は、上述した多結晶ダイヤモンド粒子と同様の方法で体積平均径として計測することができる。
本実施形態に係る製造方法に用いる「無定形炭素」とは、非晶質であって、一定の結晶構造を有さない炭素等で構成されているものをいう。これらの中でも、取扱いが容易である固体のものが好ましく、カーボンブラックが好ましい。また、不可避的不純物を含んでもよい。
なお、本実施形態では、ダイヤモンドや黒鉛などの一定の結晶構造を有するものは、本実施形態における「無定形炭素」から除外される。また、後述する「炭素化合物」も「無定形炭素」から除外される。
本実施形態に係る製造方法に用いる原料の純度は特に限定されないが、好ましくは、カーボンブラックを含む無定形炭素は、不純物濃度が30ppm未満であり、例えばDNDと同様に求めた算術平均粒子径で16~200nmである。より好ましくは16~100nmであり、さらに好ましくは16~70nmである。この範囲であれば、温度プロファイル及び圧力プロファイルを複雑化する必要がない。なお、無定形炭素の算術平均径はDNDと同様の方法で求めてもよい。
本実施形態で用いる炭素化合物とは、Cを含有する化合物であれば特に限定されず、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、青酸、シアン酸塩、チオシアン酸塩を含む無機化合物材料、および有機材料を包含する。しかしながら、無定形炭素および金属塩は含まれない。炭素化合物は特に限定されるものではないが、タイヤ、トナー、毛髪、木材、廃プラスチックなど熱分解可能なもので炭素化する物質あれば、限定されない。このようなリサイクル資源を用いる場合、熱分解により炭素化が容易になるように小さく粉砕すれば原料として使用することができる。また、石炭、コークス、木炭、煤(スス)、ガラス状炭素、のような固体のもの、ナフサ(ガソリン)、灯油、軽油、重油のような液体のもの、および天然ガスのような気体のものも含まれる。
また、炭素化合物は有機化合物が好ましく、室温で液体または固体であることが好ましく、原料として取り扱いやすいように、特に個体であることが好ましい。HPHTの際にダイヤモンドに寄与しない元素が残存せずダイヤモンド生成の際に分解して外部に放出するようにするため、有機化合物は水素、酸素、炭素からなることがより好ましく、水素及び/または水酸基並びに炭素を有することが好ましい。
上記の他に、本実施形態で用いる炭素化合物は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、および脂環式炭化水素を含む。それらは飽和炭化水素または不飽和炭化水素であってもよく、また、モノマー、オリゴマー、ポリマーであってもよい。
例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン、エテン(エチレン)、プロペン(プロピレン)、ブテン(ブチレン)、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンなどのアルケン、エチン(アセチレン)、プロピン(メチルアセチレン)、ブチン、ペンン、ヘキシン、ヘプチン、オクチン、ノニ、デシンなどのアルキン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンなどのシクロアルカン、プロパジエン(アレン)、ブタジエン、ペンタジエン(ピペリレン)、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、ノナジエン、デカジエンなどのアルカジエンアルカンが例示される。これらは、メタノール、エタノール、プロパノールなどの水酸基を備えるアルコール、スルホン基、ニトロ基、ニトロソ基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基等などの置換基を有していてもよく、これらのオリゴマーであってもよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリマーであってもよい。
また、単結晶ダイヤモンドと同様に、ラマンスペクトルにおいて1330~1340cm-1付近にショルダピークが見られることが好ましい。さらに、有機化合物はsp混成軌道の炭素原子を有することが好ましく、炭素数は1~10が好ましく、4~6が好ましく、5が特に好ましい。特に、有機化合物としては多価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては3価~8価のアルコールが好ましく、4価がより好ましい。多価アルコール中の炭素元素はすべてsp混成軌道を有することがさらに好ましい。
ダイヤモンドはsp混成軌道を有する四面体構造であり、炭素化合物中にこの炭素構造が存在すると、生成の際に結晶核としての機能を果たす。このため、ダイヤモンドの成長をより効率的に促進させるためには、炭素化合物がsp混成軌道を有する炭素構造を含むことが好ましく、分岐を備えることが好ましい。更には、これらに加えて、炭素化合物がダイヤモンドの四面体構造に近い構造を有することが好ましい。これらに加えて、5つの炭素原子で四面体構造を成すことが最も好ましい。これらの末端に水酸基を有していてもよく、加熱すると脱離ガスとして放出される観点から、多価アルコールであることが好ましい。
本実施形態では、上述の好ましい無定形炭素と炭素化合物を用いることにより、上述の本実施形態に係る単結晶質ダイヤモンドを構成するとともに耐久性に優れる単結晶ダイヤモンドを、更に、安価で極短時間で生成する。この理由は、以下のように推察される。
従来の高温高圧法では溶融金属と黒鉛を用いている。溶融金属が高温で溶けることによって黒鉛が溶融金属によって部分的に分解される。化学的に不安定となった黒鉛構造は高温高圧力でダイヤモンド構造へ変換され、ダイヤモンドが生成される。しかしながら、一定の結晶構造を有さない炭素である無定形炭素は、ランダムな構造を有するため、特定の構造を有するものと比較してダイヤモンドへの構造変換が容易である。このため、従来のように、溶融金属による黒鉛の構造変化に必要な高いエネルギは必要とされず,さらに成長核物質としてダイヤモンド構造の最小構成単位であるsp混成軌道を有する有機化合物が存在することで、炭素源からダイヤモンドの生成の起点となり、ダイヤモンドの生成が容易である。
また、高温高圧環境下に曝された原料中の水酸基は、無定形炭素と反応し、COやCOとして脱離する。残存したsp混成軌道を有する炭素は、ダイヤモンド結晶の最小構造である結晶核となる。そして、この結晶核が起点になり、無定形炭素がダイヤモンド構造へと転換される。したがって、本実施形態では、欠陥が少なく耐久性に優れる単結晶ダイヤモンド部位を短時間で容易に製造することができると推察される。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、キシリトール、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、ペルセイトール、ショ糖等が挙げられる。
これらの中でも、3価のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。4価のアルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどが挙げられる。5価のアルコールとしては、キシリトールなどが挙げられる。6価のアルコールとしては、ソルビトールなどが挙げられる。7価のアルコールとしては、ペルセイトールなどが挙げられる。8価のアルコールとしては、ショ糖などが挙げられる。これらの中で、4価のアルコールが好ましく、ペンタエリスリトールが最も好ましい。
上述した炭素化合物は、1種もしくは2種以上を混合したものであってもよく、
上述した炭素化合物は、不可避的不純物を含有してもよい。不可避的不純物を含有する場合であっても、前述の効果に影響することはない。
本実施形態において、無定形炭素と炭素化合物との組み合わせは、好ましくは無定形炭素がカーボンブラックであり、炭素化合物がsp混成軌道および四面体構造を有する多価アルコールであり、最も好ましくはカーボンブラックとペンタエリスリトールの組み合わせである。この組み合わせであれば、原料の総重量に対して95%以上、好ましくは99%以上がダイヤモンドに転換することがある。
無定形炭素と炭素化合物の混合比は、無定形炭素からダイヤモンドへの変換時の体積収縮による圧力減衰の観点から、質量比で、(無定形炭素):(炭素化合物)=7:3~4:6が望ましく、6:4~5:5であることが特に望ましい。無定形炭素と炭素化合物を上記範囲で秤量するとともにDNDを加えた後、出発原料を混合する。混合方法は一般的な方法でよい。例えば、上記出発原料を粉体混合機に投入し、大気圧もしくは減圧下で1~30分程度混合すればよい。これによって、100μm以下の混合粉末が得られる。
DNDの含有量は、原料の総質量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。下限は特に限定されないが、原料の総質量の1質量%以上であればよい。DNDの含有量が5質量%以下であれば、DNDがそもそも単結晶ダイヤモンドであることから、DNDを含有しない原料と比較して、加熱温度を100~120℃程度低減することができる。
(2)混合原料を圧力媒体に導入する工程
前述のように混合した原料である混合粉末を、例えばグラファイト製ヒーターを備える圧力媒体に詰め高温高圧装置の加圧部にセットする。
高温高圧法によるダイヤモンド粒子の生成で用いる高温高圧装置は、後述するように1000~1800℃で5~10GPaを1分程度保持できる装置であれば特に限定されない。このような条件で生成を行うためには、アンビルで混合原料に静的な外力を加える必要がある。外力が加わる加圧形態として種々のものを採用することができる。例えば、1軸プレスに代表されるベルト型などのアンビル・シリンダ型、アンビル対向型のトロイダル型やチェチェビツァ型、多軸プレスのテトラヘドラル型、マルチアンビル型などが挙げられる。
図3は、アンビル対向型の高温高圧装置における加圧部1の斜視図である。下側のアンビル10に炭酸カルシウムなどで形成されている圧力媒体20をセットする。圧力媒体20中央部の空洞30には、例えばグラファイト製のチューブに詰められた混合原料が導入されている。その後、圧力媒体20に混合原料がセットされた下側のアンビル10を上側のアンビル40に押し付け、原料を後述する高圧高温状態にして単結晶ダイヤモンド粒子の生成が行われる。
図4は、単結晶ダイヤモンド粒子の製造工程に用いる高圧装置の加圧部を示す部分断面斜視図であり、図4(a)はチェチェビツァ型であり、図4(b)はトロイド型である。図4(a)に示すように、チェチェビツァ型では、中央部の窪み部分51に原料が導入された圧力媒体50が上下のアンビル60、70に挟まれており、高圧下において圧力媒体が窪み部分内で程よく潰れることにより原料に加わる圧力が低減しないようにすることができる。図3(b)に示すように、トロイド型では、中央部の窪み部分81の周りにさらに環状窪み部分82が設けられている。環状窪み部分82は、図面の上から見たときに環状に形成されており、圧力媒体80が潰れて窪み部分81から漏れ出ようとするが、環状窪み部分82により潰れた圧力媒体の流動を防ぐことができるため、加圧時間が経過しても圧力の低減を抑制することができる。図4(b)では1つの環状窪み部分82が設けられているが、その周りに更に別の環状くぼみ部を設けることが好ましい。
(3)混合原料を、黒鉛の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域内の圧力および温度に曝す
上述のように原料が高圧装置にセットされた後、アンビルで原料を所定の圧力と温度に曝す。図5は、黒鉛の相平衡図である。図5に示すように、黒鉛-ダイヤモンド平衡線より高い領域ではダイヤモンドが熱力学的に安定であり、この領域内で圧力と温度が設定される。また、圧力と温度のプロファイルは特に限定されないが、出発原料の温度および圧力の均一化、黒鉛の再結晶化、核発生、および粒子成長を考慮した上で各種条件を決定して行うことができる。通常、圧力と温度を徐々に上げていくことが望ましいが、ダイヤモンドの生成が終了するまでに時間を費やしてしまう。
このような観点から、熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaであり、温度は1300~1800℃であることが好ましい。圧力が5GPa以上であれば、マイクロサイズのダイヤモンド粒子が得られ、また、カーボンブラックからダイヤモンドへの高い変換率が得られる。温度が1300℃以上であっても、同様である。圧力は6GPa以上が更に好ましく、温度は1400℃以上が更に好ましい。
一方、圧力が10GPa以下であれば加圧装置に過度な負荷がかからず、また、圧力媒体が隙間から漏れ出ることがなく、初期の圧力が時間の経過によらず維持される。また、図5に示すように、加圧力が上記範囲内であれば、熱力学的安定領域内に入るようにすればよく、必要以上に高温にする必要がない。圧力は9.5GPa以下であることがより好ましく、8GPa以下であることが更に好ましく、温度は1700℃以下であることがより好ましく、1600℃以下であることが更に好ましい。本実施形態では、圧力を上記範囲内にまで上げた後、温度を上記範囲にまで上げることが、ダイヤモンドの収率の観点から好ましい。
原料が熱力学的安定領域に曝される時間は1~10秒であることが好ましい。この時間内であれば、カーボンブラックからダイヤモンドへの高い変換率が得られる。また、10秒以内であれば、潰れた圧力媒体が隙間から漏れ出ることによって生じる圧力の低下を抑制することができる。原料が熱力学的安定領域に曝される時間は、2~8秒であることがより好ましく、3~7秒であることが更に好ましく、3~6秒以内が特に好ましい。なお、この時間範囲は、熱力学的安定領域に曝される時間であり、圧力と温度が上述の範囲内である時の時間であることが好ましい。
圧力プロファイルと温度プロファイルは特に限定されず、装置の仕様の範囲内において、加圧速度と昇温速度を設定すればよく、加圧速度が速い方が好ましく、0.5GPa/秒以上であればよく、3GPa/秒以上であることがより好ましい。昇温速度も速い方が好ましく、300℃/秒以上であればよい。
上記のような条件で出発原料を高温高圧に曝すことによって、図1に示すような生成が行われる。前述の原料をダイヤモンドの熱力学的安定性の条件下に曝すと、まず、ペンタエリスリトールなどの炭素化合物がC-O-Hの超臨界流体を形成し、カーボンブラックなどの無定形炭素に変位を促す。変位した炭素は、結晶化の中心であるDNDとエピタキシャルな関係で成長する。このとき、DNDの欠陥、特に窒素空孔欠陥(図1ではNV)は残るが、DNDの表面の欠陥は消滅する。ペンタエリスリトールなどの炭素化合物を用いたHPHT下におけるダイヤモンド生成では、成長中のダイヤモンドに新たな欠陥が出現する。この結果、DNDは保存され、DNDの周りに単結晶ダイヤモンドが成長し、単結晶質ダイヤモンドを生成することができる。そして、生成した単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンドを生成することができる。
本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
1.ダイヤモンド粒子の作製
まず、無定形炭素として、算術平均粒子径が40nmのカーボンブラック粉末(商品名:東海カーボン株式会社製、TOKABLACK #4500)、または黒鉛を用いた。炭素化合物としてペンタエリスリトール(東京化成工業株式会社製、製品コード(P0039))、キシリトール(東京化成工業株式会社製、製品コード(X0018))、ポリエチレン、またはメタノールを用いた。DNDとしては、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機(例えば、マイクロトラックベル社製、型式:MicrotracUPA)で測定した体積平均径D50値が4~5nmであるものを用いた。また、実施例で用いたDNDは、予め窒素空孔欠陥を有することが確認されたものを用いた。
表1に示すように原料を構成する各成分を秤量し、粉体混合機に投入して混合粉末を得た。これらの混合粉末をグラファイト製のチューブに詰め、円盤状のCaCO製圧力媒体の空洞部に導入した。
ダイヤモンドの生成は、「トロイド」型の高圧チャンバーで行った。加圧力は、高温高圧法で一般的に用いられている室温でのBi、Tl、Baの相転移の近似曲線で校正し、油圧計が示す圧力とした。加熱温度は、熱電対を用いて入力電力と温度で校正し、入力電力から求めた温度とした。原料の加熱は、グラファイト製ヒーターに電流を流す直熱加熱式で行った。これらの装置構成を用い、表1に示す条件で混合粉末である原料を高温高圧に曝した。
高温高圧法により生成した試料は、減圧完了時点で圧力媒体と混じった状態であった。このため、まずは篩で圧力媒体の粒子を除去し、次に脱イオン水で洗浄した。そして、粉末をブロモホルム(CHBr)の液体に入れて、ダイヤモンド粒子を抽出した。最後に、ダイヤモンド粒子をろ過し、脱イオン水で洗浄し、ダイヤモンド粒子を得た。
得られたダイヤモンド粒子から任意に2粒抽出し、光学顕微鏡(Optical Microscope:OM)で観察し、得られた粒子のモルフォロジーを、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope;FE-SEM)で観察した。
ダイヤモンドの同定は,ラマン分光分析(日本分光株式会社製装置名:レーザラマン分光装置、型番NRS-7500)で行い、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製 装置名:Transmission Electron Microscope:TEM、型式名:JEM-ARM200F)像で結晶性を調査した。
平均径は、レーザ回折散乱方式の粒度分布測定機(例えば、Malvern Instruments社製、型式:Mastersizer2000)のレーザ回折計(LD)を用いた。このレーザ回折計に、Hydro(LD)とHydro2000モジュールを用いた。イソプロピルアルコール中の粒子の懸濁液をモジュールに注入し、超音波で連続的に攪拌し、蠕動ポンプで循環させた。体積分布と個数分布は、粒度分布測定器にインストールされているMalvernソフトウェアにより、「通常の感度を持つ汎用モデル」と「複数の狭いモード」を使用して計算された。屈折率は、ダイヤモンドが2.42、イソプロピルアルコールが1.39であった。イソプロピルアルコールの屈折率1.39を計算に使用した。
結果を表1に示す。
Figure 0007382692000002
表1から明らかなように、実施例のダイヤモンド粒子はいずれも単結晶質ダイヤモンドに窒素空孔欠陥を有するとともに、単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子であった。また、単結晶ダイヤモンド内にDNDを確認することができた。したがって、実施例のダイヤモンド粒子は、窒素空孔欠陥を有する単結晶質ダイヤモンドを含有する多結晶ダイヤモンド粒子であることが確認された。
一方で、比較例1および比較例2のダイヤモンド粒子は、カーボンブラックまたはペンタエリスリトールを用いなかったため、ダイヤモンド粒子を製造することができなかった。
比較例3のダイヤモンド粒子は、原料として黒鉛を用いたため、単結晶質ダイヤモンドを有さない多結晶ダイヤモンド粒子であることがわかった。
比較例4は、DNDを含有しない原料を用いたため、窒素空孔欠陥を有さなかった。
比較例5は、DNDの含有量が多すぎる原料を用いたため、ダイヤモンド粒子を製造することができなかった。
比較例6は、温度が低すぎたため、ダイヤモンド粒子を製造することができなかった。
比較例7は、時間が短すぎたため、ダイヤモンド粒子を製造することができなかった。
図6は、ダイヤモンド粒子のサイズ分布を表す図であり、図6(a)は個数径の分布であり、図6(b)は体積平均径の分布である。図6の「#C」は比較例4の結果であり、「#CD」は実施例1の結果である。図6から明らかなように、個数分布と体積分布は、比較例4では約2倍であった。d(0.5)として示される中央値は、個数平均径が13.4μmであり、体積平均径が24.8μmであった。
一方、実施例1の個数分布と体積分布は大きく異なった。体積分布の図によると、実施例1にはd(0.5)=18.4μmの大きな粒子があり、比較例4と同程度のサイズであった。ただし、個数分布の図によると、実施例1では、サイズが0.5μm未満の膨大な数のダイヤモンド粒子が含まれていた。実施例1の個数分布における300nm以下のピークは、装置の測定限界により非対称となった。したがって、実施例1では、2種類の異なる特徴的な平均径を有するダイヤモンド粒子で構成されていることがわかった。実施例1のダイヤモンド粒子は、個数平均径が0.5μm以下であり、且つ体積平均径が15μm以上である
図7は、ダイヤモンド粒子のSEM写真であり、図7(a)および図7(b)が比較例4(#C)のダイヤモンド粒子であり、図7(c)および図7(d)が実施例1(#CD)のダイヤモンド粒子である。このSEM写真は、FEI社製のFE-SEM:Quanta FEG200を用いて撮影された。
図7(a)および図7(b)から明らかなように、比較例4は10~20μm程度の大きさの個々の大きな結晶粒子と、5μm以下の少量の結晶が凝集した粒子を形成していることがわかった。一方、図7(c)および図7(d)から明らかなように、実施例1は、1μm未満の粒子が結晶性に優れる少量の大きな(15~20μm)粒子にまとわりついていることが明らかであった。また、結晶粒が平滑面を有することもわかった。
図8は、ダイヤモンド粒子のDRIFTSスペクトルであり、図8の「#C」が比較例4であり、図の「#CD」が実施例1である。また、表2には、比較例4と実施例1のDRIFTSスペクトルにおける波数とピーク同定結果を示す。このスペクトルは、Pike社製のEASIDIFFTM アタッチメントを組み込んだInfraLum FT-08スペクトロメーターで測定された。
Figure 0007382692000003
図8および表2から明らかなように、比較例4と実施例1のDRIFTSスペクトルとを比較すると、いくつか相違する。両スペクトルとも1130cm-1と1344cm-1にピークを持ち、置換型中性窒素Nに特徴的なピークと、窒素ペア2Nに特徴的なピークが観測された。正電荷を帯びた置換窒素に特徴的な1331cm-1のピークは、実施例1のスペクトルではよく現れているが、比較例4ではほとんど見られない。
2853~2950cm-1にあるピーク群は、ダイヤモンド粒子の表面にある様々な-CH、-CH基の振動と関連している。このような振動は、C-O-H媒体中で、高温高圧下で生成したダイヤモンド粒子に典型的なピーク群である。このため、これらのピーク群は、比較例4および実施例1で同定される。
図9は、ラマンピークで規格化されたフォトルミネッセンススペクトルであり、図9の「#C」が比較例4であり、図9の「#CD」が実施例1である。図9に示すスペクトルは、Jasco NRS-7500ラマン分光器(励起波長532nm、励起レーザ出力4.8mW)で測定された。3000line/mmの回折格子を用いたラマンスペクトルを、各サンプルについて各々10点、室温で記録した。そして、フォトルミネッセンススペクトルを各サンプル5点ずつ独立に測定した。なお、図9では、比較例4のスペクトルと実施例1のスペクトルを明瞭にするため、比較例4のスペクトルを図9の上側にシフトさせた。
そして、ラマンピークの半値幅(FWHM1332)を10回測定し、その平均値を求めた。表3に、比較例4(#C)と実施例1(#CD)の各サンプルについて、10回の測定で求めた1332cm-1のラマンピークの半値幅の平均値(FWHM1332)を示す。
Figure 0007382692000004
図9および表3から明らかなように、実施例1の3.20cm-1は、比較例4の2.58cm-1より大きい。この差は、ダイヤモンドの結晶の質に起因する。そして、図8に示す実施例1のDRIFTSスペクトルでは、1331cm-1でピークが存在する。さらに、図9では窒素空乏欠陥に特徴的なフォトルミネッセンススペクトル(波長638nmのゼロフォノン線(ZPL))が存在する。一方、比較例4では、窒素空乏欠陥に特徴的なスペクトルは存在しないことがわかった。
図8、図9、表2および表3から明らかなように、本実施例のダイヤモンド粒子は、単結晶質ダイヤモンド内に窒素や窒素ペアなどが存在し、窒素空孔欠陥も存在することが明らかになった。
図10は、実施例で用いたカーボンブラックのTEM写真である。図10に示すように、本実施例で用いたカーボンブラックは、黒鉛に由来する六員環構造が明確に見られないことから、無定型炭素であることが明らかになった。従来のHPHTダイヤモンド合成では、原料は黒鉛でなければ単結晶ダイヤモンドを合成することができない、とされていた。しかし、本実施例では、原料に明確な黒鉛構造が含まれていない場合であっても、耐久性に優れる単結晶質ダイヤモンドを構成する単結晶ダイヤモンドを、極短時間で生成することができることが明らかになった。すなわち、単結晶質ダイヤモンド有する多結晶ダイヤモンド粒子をごく短時間で生成することができることが立証された。
1 加圧部、10,40,60,70 アンビル、20,50,80 圧力媒体、30 空洞、51,81 窪み部分、82 環状窪み部分

Claims (8)

  1. 窒素空孔欠陥を有するデトネーションダイヤモンドを結晶内部に備えることを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンド。
  2. 請求項1に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有することを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子。
  3. 個数平均径が0.5μm以下であり、且つ体積平均径が15μm以上である、請求項2に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを備える多結晶ダイヤモンド粒子。
  4. 平滑な結晶面を備える、請求項2または3に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子。
  5. 請求項2または3に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子で構成される半導体部材加工砥石。
  6. 請求項4に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子で構成される半導体部材加工砥石。
  7. 高温高圧法を用いたデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法であって、
    無定形炭素、デトネーションダイヤモンド、および炭素化合物からなる原料を、炭素の相平衡図においてダイヤモンドの熱力学的安定領域の圧力および温度に曝すことによってダイヤモンドを生成し、
    前記無定形炭素はカーボンブラックであり、
    前記デトネーションダイヤモンドは内部に窒素空孔欠陥を有し、前記原料の全質量に対して1~10質量%の範囲で含有され、
    前記炭素化合物は、ポリエチレン、メタノール、ペンタエリスリトールまたはキシリトールであり、
    前記原料を、質量比で前記無定形炭素:前記炭素化合物=7:3~5:5の混合比で混合し、
    前記熱力学的安定領域の温度は1300~1800℃であり、
    前記原料が前記熱力学的安定領域に曝される時間は1~10秒であることを特徴とする、デトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
  8. 前記熱力学的安定領域の圧力は5~10GPaである、請求項7に記載のデトネーションダイヤモンド含有単結晶質ダイヤモンドを有する多結晶ダイヤモンド粒子の製造方法。
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