JP2022139094A - 合成単結晶ダイヤモンド及びその製造方法 - Google Patents

合成単結晶ダイヤモンド及びその製造方法 Download PDF

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三記 寺本
Minori Teramoto
均 角谷
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Abstract

【課題】高い硬度及び優れた耐欠損性を有する合成単結晶ダイヤモンドを提供する。【解決手段】窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む合成単結晶ダイヤモンドであって、前記合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含み、前記合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、{001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上であり、{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である。【選択図】なし

Description

本開示は合成単結晶ダイヤモンド及びその製造方法に関する。
単結晶ダイヤモンドは非常に硬いため、精密切削加工用バイトや木工用カッターなどの切削工具、あるいは研削砥石用ドレッサー、線引用ダイス、スクライブツール、ウォタージェット用オリフィス、ワイヤーガイドなどの耐摩工具の他、幅広い用途で工業的に利用されている。
天然に産出される単結晶ダイヤモンド(以下、「天然ダイヤモンド」とも記す)の多くは、窒素不純物を凝集型不純物として数百~数千ppm程度の濃度で含む(Ia型)。天然ダイヤモンドは、地球内部で生成するときの複雑な熱履歴により、その不純物の分布にはムラが大きく、不均質である。また、天然ダイヤモンドの成長中に受ける応力や熱の多彩な変動により、結晶内部に多くの内部歪や多彩な結晶欠陥が含まれる。このため硬さや強度など工具として重要な機械特性が結晶内でも大きくバラつき、個体差による違いも大きく、品質や工具性能が安定しない。
一部の天然ダイヤモンドは、窒素不純物を数ppm以下の濃度で含む高純度品(IIa型)である。しかし、該天然ダイヤモンドは内部歪や欠陥が多く、工具用途には適さない。
このように、天然ダイヤモンドにはバラエティに富んだ内部ひずみや構造欠陥が含まれており、工業用に使用するには結晶を厳選する必要がある。また、天然ダイヤモンドはコスト変動や供給不安定のリスクも大きい。
一方、高圧高温で人工的に作られる合成単結晶ダイヤモンドは、一定の圧力・温度条件下で合成されるため、同一の品質のものを安定的に供給できる。したがって、工業用途としては品質バラツキが小さい点で天然ダイヤモンドより合成単結晶ダイヤモンドがはるかに優れている。
しかし、通常合成ダイヤモンドに含まれる窒素不純物は、濃度が100ppm前後であるが、孤立置換型(分散型)で含まれる(Ib型)ため、硬度や強度を低下させる。このため、該合成ダイヤモンドを切削工具として使用すると、刃先が損傷しやすい傾向がある。
近年の工具の長寿命化の要求から、高い硬度及び優れた耐欠損性を有する合成単結晶ダイヤモンドが求められている。
そこで、本目的は、高い硬度及び優れた耐欠損性を有する合成単結晶ダイヤモンドを提供することを目的とする。
本開示の合成単結晶ダイヤモンドは、
窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む合成単結晶ダイヤモンドであって、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含み、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、
{001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上であり、
{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である、合成単結晶ダイヤモンドである。
本開示の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法は、
上記合成単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
溶媒金属を用いた温度差法により、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含むダイヤモンド単結晶を合成する第1工程と、
前記ダイヤモンド単結晶に、100MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与える電子線及び粒子線の一方又は両方を照射する第2工程と、
前記第2工程後の前記ダイヤモンド単結晶に対して、真空中で1650℃以上1850℃以下の温度を1分以上3600分以下加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る第3工程と、を備える、合成単結晶ダイヤモンドの製造方法である。
本開示の合成単結晶ダイヤモンドは、高い硬度及び優れた耐欠損性を有する。
図1は、ヌープ圧痕を説明するための図である。 図2は、本開示の一実施形態に係る合成単結晶ダイヤモンドの製造に用いる試料室構成の一例を示す模式的断面図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の合成単結晶ダイヤモンドは、
窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む合成単結晶ダイヤモンドであって、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含み、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、
{001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上であり、
{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である、合成単結晶ダイヤモンドである。
本開示の合成単結晶ダイヤモンドは、高い硬度及び優れた耐欠損性を有する。
(2)前記合成単結晶ダイヤモンドの赤外吸収スペクトルにおいて、波数2161cm-1における吸収強度I(2161)を1とした場合、波数1282cm-1における吸収強度I(1282)は0.50以上5.0以下であり、波数1175cm-1における吸収強度I(1175)は0.28以上2.0以下であることが好ましい。
これによると、合成単結晶ダイヤモンドは、高い硬度及び優れた耐欠損性を有することができる。
(3)本開示の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法は、
上記合成単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
溶媒金属を用いた温度差法により、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含むダイヤモンド単結晶を合成する第1工程と、
前記ダイヤモンド単結晶に、10MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与える電子線及び粒子線の一方又は両方を照射する第2工程と、
前記第2工程後の前記ダイヤモンド単結晶に対して、真空中で1650℃以上1850℃以下の温度を1分以上3600分以下加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る第3工程と、を備える、合成単結晶ダイヤモンドの製造方法である。
これによると、高い硬度及び優れた耐欠損性を有する合成単結晶ダイヤモンドを得ることができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
<ダイヤモンド結晶中の窒素原子の存在形態>
まず、本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドの理解を深めるために、ダイヤモンドの性能を決める主な要因の一つである、結晶中の不純物として存在する窒素原子について説明する。
ダイヤモンド結晶中の窒素原子は、その存在形態により、孤立置換型窒素原子や凝集型窒素原子等に分類することができる。
孤立置換型窒素原子(Cセンター)とは、ダイヤモンド結晶中の炭素原子の位置に、窒素原子が1原子単位で置換して存在しているものである。
本発明者らは、ダイヤモンド結晶中に、孤立置換型窒素原子が含まれると、その周りの結晶格子に局所的な引張応力が生じ、これが塑性変形や破壊の起点となり、硬度が低下し、耐摩耗性や耐欠損性が低下することを新たに知見した。この知見に基づき、本発明者らは、ダイヤモンド結晶中に孤立置換型窒素原子が含まれないことが、耐摩耗性や耐欠損性の向上の観点から好ましいことを見出した。
孤立置換型窒素原子を含む合成単結晶ダイヤモンドは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにおいて、波数1130cm-1付近(すなわち、波数1130±2cm-1)に吸収ピークを示す。
孤立置換型窒素原子を含む合成単結晶ダイヤモンド中には、窒素原子由来の不対電子が存在するため、ESR分析(ESR:Electron Spin Resonance、電子スピン共鳴)で孤立置換型窒素原子の濃度を測定することができる。ESRは、孤立置換型窒素原子以外にも不対電子を有する結晶欠陥などの信号も検出する。この場合は、g値、又は、信号の緩和時間によって、孤立置換型窒素原子を分離して検出することができる。
凝集型窒素原子とは、ダイヤモンド結晶中に2つ以上の窒素原子が凝集して存在しているものである。
凝集型窒素原子は、Aセンター(窒素2原子ペア)、H3センター(窒素2原子凝集)、N3センター(窒素3原子凝集)、Bセンター(窒素4原子凝縮)、B’センター又はプレートレット等の中に存在する。
Aセンター(窒素2原子ペア)とは、2つの窒素原子からなる凝集体であり、該2つの窒素原子は共有結合をし、かつ、それぞれの窒素原子がダイヤモンド結晶を構成する炭素原子と置換している。Aセンター(窒素2原子ペア)を含むダイヤモンドは、IaA型と呼ばれる。Aセンター(窒素2原子ペア)を含む合成単結晶ダイヤモンドは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにおいて、波数1282cm-1付近(例えば、波数1282±2cm-1)に吸収ピークを示す。
H3センター(窒素2原子と空孔凝集)は、1つの空孔と、該空孔に隣接して存在する2つの窒素原子とからなる凝集体であり、それぞれの窒素原子はダイヤモンド結晶を構成する炭素原子と置換している。本明細書中、「空孔に隣接して存在する窒素原子」とは、空孔の位置に炭素原子が存在すると仮定した場合、該炭素原子との原子間距離が最も短い距離に位置する窒素原子(すなわち、最近接原子(nearest neighbor))を意味する。後述のN3センター、Bセンターにおいても同義である。
H3センター(窒素2原子と空孔凝集)含む合成単結晶ダイヤモンドは、たとえば波長488nmのレーザー光を照射して得られる蛍光スペクトルにおいて、波長503nm付近(503nm±2nm)及び/又は波長510nm以上550nm以下の範囲内に発光ピークが存在する。
N3センター(窒素3原子と空孔凝集)は、1つの空孔と、該空孔に隣接して存在する3つの窒素原子とからなる凝集体であり、それぞれの窒素原子はダイヤモンド結晶を構成する炭素原子と置換している。
N3センター(窒素3原子と空孔凝集)含む合成単結晶ダイヤモンドは、およそ410nmより短い励起光、たとえば波長325nmの励起光を照射して得られる蛍光スペクトルにおいて、蛍光波長415nm付近(例えば、蛍光波長415±2nm)及び、蛍光波長420nm以上470nm以下の範囲内の一方又は両方に発光ピークを示す。
Bセンター(窒素4原子と空孔凝集)は、1つの空孔と、該空孔に隣接して存在する4つの窒素原子とからなる凝集体であり、それぞれの窒素原子はダイヤモンド結晶を構成する炭素原子と置換している。
Bセンター(窒素4原子と空孔凝集)を含むダイヤモンドは、IaB型と呼ばれる。窒素4原子凝集を含む合成単結晶ダイヤモンドは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにおいて、波数1175cm-1付近(例えば、波数1175±2cm-1)に吸収ピークを示す。
B’センター(プレートレットとも呼ばれる)は、5つ以上の窒素原子と格子間炭素からなる板状の凝集体で、結晶内に内包物として取り込まれている。
B’センター(プレートレット)を含むダイヤモンドは、IaB’型と呼ばれる。B’センター(プレートレット)を含む合成単結晶ダイヤモンドは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにおいて、波数1358cm-1以上1385cm-1以下に吸収ピークを示す。
上記の凝集体は天然ダイヤモンドに含まれているもので、従来の合成単結晶ダイヤモンドには通常ほとんど含まれていない。
本発明者らは、上記の凝集体のうち、Aセンターが合成単結晶ダイヤモンド結晶中に最も容易に形成でき、結晶歪が少なく、構造が安定していることを新たに見出した。そして、合成単結晶ダイヤモンド中にAセンターを優位に形成することで、合成単結晶ダイヤモンドの硬さや強度、耐摩耗性、耐欠損性などの機械特性を、低コストで向上させることができることを新たに見出し、本開示を完成させた。
本開示の合成単結晶ダイヤモンド及びその製造方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。本開示の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、必ずしも実際の寸法関係を表すものではない。
[実施形態1:合成単結晶ダイヤモンド]
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む合成単結晶ダイヤモンドであって、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含み、
前記合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、
{001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上であり、
{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは高い硬度及び優れた耐欠損性を有することができる。この理由は明らかではないが、下記(i)~(iv)の通りと推察される。
(i)本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む。これによると、合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子同士が凝集しやすい。よって、該合成単結晶ダイヤモンド中には窒素原子を含む凝集体が存在しやすく、該合成単結晶ダイヤモンドの耐摩耗性や耐欠損性が向上する。
(ii)本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含む。すなわち、本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドはAセンターを含む。合成単結晶ダイヤモンド中にAセンターが存在することで、合成単結晶ダイヤモンドの硬さや強度、耐摩耗性、耐欠損性などの機械特性が向上する。
更に、Aセンターは、合成単結晶ダイヤモンドに負荷が加わったときに生じるワレや塑性変形の発生を抑制する。また局所的にこれらのワレや塑性変形が発生しても、その進展がAセンターにより阻止され、該合成単結晶ダイヤモンドは破壊に至らない。このように、Aセンターを含む合成単結晶ダイヤモンドの破壊強度及び弾性変形性が向上し、耐欠損性が向上する。
(iii)本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、{001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上である。該合成単結晶ダイヤモンドは、高い硬度と優れた耐摩耗性を有する。
(iv)本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である。該合成単結晶ダイヤモンドは優れた靭性と耐欠損性を有する。
<窒素原子濃度>
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度(以下、窒素原子の原子数基準の濃度を「窒素原子濃度」とも記す。)で含む。窒素原子濃度が50ppm以上であると、合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子が、窒素原子を含む凝集体を形成しやすい。窒素原子濃度が1000ppm以下であると、合成単結晶ダイヤモンドは高い硬度及び優れた耐欠損性を有することができる。
合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子濃度の下限は、100ppm以上、200ppm以上、300ppm以上とすることができる。合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子濃度の上限は、900ppm以下、800ppm以下とすることができる。合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子濃度は、50ppm以上900ppm以下、50ppm以上800ppm以下、100ppm以上1000ppm以下、100ppm以上900ppm以下、100ppm以上800ppm以下、200ppm以上1000ppm以下、200ppm以上900ppm以下、200ppm以上800ppm以下、300ppm以上1000ppm以下、300ppm以上900ppm以下、300ppm以上800ppm以下とすることができる。
合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によって測定することができる。
<凝集型窒素原子>
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含む。すなわち、本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドはAセンターを含む。合成単結晶ダイヤモンド中にAセンターが存在することで、合成単結晶ダイヤモンドの硬さや強度、耐摩耗性、耐欠損性などの機械特性が向上する。
更に、Aセンターは、合成単結晶ダイヤモンドに負荷が加わったときに生じるワレや塑性変形の発生を抑制する。また局所的にこれらのワレや塑性変形が発生しても、その進展がAセンターにより阻止され、該合成単結晶ダイヤモンドは破壊に至らない。このように、Aセンターを含む合成単結晶ダイヤモンドの破壊強度及び弾性変形性が向上し、耐欠損性が向上する。
合成単結晶ダイヤモンドがAセンターを含むことは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにより確認することができる。具体的には、該赤外吸収スペクトルにおいて、波数1282cm-1付近(例えば、1282±2cm-1)に吸収ピークが存在する場合、該合成単結晶ダイヤモンドはAセンターを含むと判断される。
(その他の凝集型窒素原子)
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、H3センター(窒素2原子と空孔凝集)、N3センター(窒素3原子と空孔凝集)、Bセンター(窒素4原子と空孔凝集)、B’センターを含むことができる。これらに含まれる窒素原子の凝集体は、単結晶ダイヤモンドにおいてクラックの伝播を抑制することができる。したがって、該合成単結晶ダイヤモンドは、優れた耐欠損性を有することができる。
合成単結晶ダイヤモンドがH3センターを含むことは、合成単結晶ダイヤモンドに、たとえば波長488nmのレーザー光を照射して得られる蛍光スペクトルにおいて確認することができる。
合成単結晶ダイヤモンドがN3センターを含むことは、波長325nmの励起光を照射して得られる蛍光スペクトルにより確認することができる。具体的には、該蛍光スペクトルにおいて、蛍光波長415nm付近(例えば、蛍光波長415±2nm)及び、蛍光波長420nm以上470nm以下の範囲内の一方又は両方に発光ピークが存在する場合、該合成単結晶ダイヤモンドはN3センターを含むと判断される。
合成単結晶ダイヤモンドがBセンターを含むことは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにより確認することができる。具体的には、該赤外吸収スペクトルにおいて、波数1175cm-1付近(例えば、1175±2cm-1)に吸収ピークが存在する場合、該合成単結晶ダイヤモンドはBセンターを含むと判断される。
合成単結晶ダイヤモンドがB’センターを含むことは、フーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルにより確認することができる。具体的には、該赤外吸収スペクトルにおいて、波数1358cm-1以上1385cm-1以下に吸収ピークが存在する場合、該合成単結晶ダイヤモンドはB’センターを含むと判断される。
<赤外吸収スペクトル>
ダイヤモンド結晶中にCセンター、Aセンター、Bセンター、B’センター(プレートレット)が存在すると、該ダイヤモンド結晶のフーリエ変換赤外分光法で測定した赤外吸収スペクトルでは、各センターに由来する吸収ピークが観察される。具体的には、Cセンターは波数1130cm-1付近(すなわち、波数1130±2cm-1)に吸収ピークを示す。Aセンターは、波数1282cm-1付近(例えば、波数1282±2cm-1)に吸収ピークを示す。Bセンターは、波数1175cm-1付近(例えば、波数1175±2cm-1)に吸収ピークを示す。B’センターは、波数1358cm-1以上1385cm-1以下に吸収ピークを示す。
各センターの波形は重なっているため、各波数での強度値のみからは、各センターの有無や量を特定することはできない。一方、各波数の強度の相対比較から、各センターのおよその波形を考慮することにより、各センターの有無の決定、および各センターの含有比率の定性的評価が可能である。
本発明者らは、合成単結晶ダイヤモンドの赤外吸収スペクトルと、耐摩耗性及び耐欠損性との関係を鋭意検討したところ、波数2161cm-1における吸収強度I(2161)を1とした場合、波数1282cm-1における吸収強度I(1282)は0.50以上5.0以下であり、波数1175cm-1における吸収強度I(1175)は0.28以上2.0以下である場合に、合成単結晶ダイヤモンドの耐摩耗性及び耐欠損性がバランス良く向上することを新たに見出した。この理由は、窒素の凝集体であるAセンター、もしくは窒素と空孔の凝集体であるH3センターが適度に結晶格子内に分布していることにより、ダイヤモンドの塑性変形や劈開割れを阻止する効果が優勢となり、硬度と強度が同時に向上したためと推察される。
<ヌープ硬度>
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、{001}面における<100>方向のヌープ硬度(以下、「{001}<100>ヌープ硬度」とも記す。)は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度(以下、「{001}<110>ヌープ硬度」とも記す。)は80GPa以上である。該合成単結晶ダイヤモンドは、天然ダイヤモンドよりも硬度が高く、耐摩耗性が優れている。本明細書中において、結晶幾何学的に等価な面方位を含む総称的な面方位を{}で示し、結晶幾何学的に等価な方向を含む総称的な方向を<>で示す。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドの{001}<100>ヌープ硬度の下限は、95GPa以上、100GPa以上、105GP以上、110GPa以上、115GPa以上とすることができる。{001}<100>ヌープ硬度の上限は特に限定されないが、製造上の観点から、例えば150GPa以下とすることができる。合成単結晶ダイヤモンドの{001}<100>ヌープ硬度は90GPa以上150GPa以下、95GPa以上150GPa以下、100GPa以上150GPa以下、105GPa以上150GPa以下、110GPa以上150GPa以下、115GPa以上150GPa以下とすることができる。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドの{001}<110>ヌープ硬度の下限は、85GPa以上、90GPa以上、95GPa以上、100GPa以上、105GP以上、110GPa以上、115GPa以上とすることができる。{001}<110>ヌープ硬度の上限は特に限定されないが、製造上の観点から、例えば150GPa以下とすることができる。合成単結晶ダイヤモンドの{{001}<110>ヌープ硬度は80GPa以上150GPa以下、85GPa以上GPa以上150GPa以下、90GPa以上150GPa以下、95GPa以上150GPa以下、100GPa以上150GPa以下、105GPa以上150GPa以下、110GPa以上150GPa以下、115GPa以上150GPa以下とすることができる。
{001}<100>ヌープ硬度、及び、{001}<110>ヌープ硬度(単位はGPa)の評価方法について説明する。ヌープ硬度の測定は、JIS Z2251:2009で規定されているように工業材料の硬さを表す尺度の一つとして公知であり、所定の温度および所定の荷重(試験荷重)で、ヌープ圧子を被測定材料に押圧してその材料の硬度を求めるものである。
{001}<100>ヌープ硬度は、合成単結晶ダイヤモンドの{001}面内の<100>方向に、荷重4.9Nでヌープ圧子を押圧して圧痕をつけ、該圧痕の長い方の対角線a(μm)を測定し、下記式A-1より{001}<100>ヌープ硬度を算出する。
{001}<100>ヌープ硬度=14229×4.9/a 式A-1
{001}<110>ヌープ硬度は、合成単結晶ダイヤモンドの{001}面内の<110>方向に、荷重4.9Nでヌープ圧子を押圧して圧痕をつけ、該圧痕の長い方の対角線c(μm)を測定し、下記式A-2より{001}<110>ヌープ硬度を算出する。
{001}<110>ヌープ硬度=14229×4.9/c 式A-2
<ヌープ圧痕の対角線の比b/a>
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、{001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である。
ヌープ硬度の測定に用いられるヌープ圧子とは、底面が菱型の四角柱の形状を有するダイヤモンド製の圧子である。そして、その底面の菱型は、対角線の長い方の対角線の長さa’に対する短い方の対角線の長さb’の比b’/a’が0.141と規定されている。また、ヌープ圧痕とは、上記の温度及び試験荷重でヌープ圧子を被測定材料(本実施形態では合成単結晶ダイヤモンド)に押圧させた直後に該ヌープ圧子をリリースさせた箇所に残る痕跡をいう。本実施形態では、合成単結晶ダイヤモンドの{001}面内の<100>方向に、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件で圧痕(ヌープ圧痕)をつける。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、ヌープ圧痕の対角線の比b/aが0.08以下であり、本来のヌープ圧子の比b’/a’(0.141)よりも小さくなることが好ましい。これは被測定材料(すなわち合成単結晶ダイヤモンド)が弾性的に振る舞い、圧痕が弾性的に元に戻ろうとする回復(弾性回復)が生じているからである。
ヌープ圧痕を概念的に示した図1を用いて上記の現象を説明する。例えば、被測定材料が全く弾性回復を示さない場合はヌープ圧子の断面とヌープ圧痕とは等しい形状となる(図1中の「本来のヌープ圧痕」として表示した部分)。一方、本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、図中の矢印の方向に弾性変形が生じやすいため、そのヌープ圧痕は、図中の実線で示した菱型となる。つまり、図中の矢印の方向の戻りが大きくなれば、比b/aの値は小さくなる。比b/aの値が小さいほど弾性変形性が大きいことを示している。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドは、ヌープ圧痕の対角線の比b/aが0.08以下であるため、大きな弾性変形性を有する。弾性変形が大きければ靭性は高くなり、以って強靭な合成単結晶ダイヤモンドとなる。
ヌープ圧痕の対角線の比b/aの上限は、0.075以下、0.07以下、0.065以下、0.06以下とすることができる。ヌープ圧痕の対角線の比b/aは小さいほど弾性変形性が大きくなるため、その下限を限定する必要は特にない。塑性変形や破壊が全く起こらない場合もあり、この場合はb/aは0となり、ヌープ圧痕が長い方の対角線方向の線のみとなる。従って、ヌープ圧痕の対角線の比b/aの下限は0以上とすることができる。ヌープ圧痕の対角線の比b/aは0以上0.08以下、0以上0.075以下、0以上0.07以下、0以上0.065以下、0以上0.06以下とすることができる。
[実施形態2:合成単結晶ダイヤモンドの製造方法]
実施形態1の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法の一例について、以下に説明する。なお、実施形態1の合成単結晶ダイヤモンドは、以下の製造方法により作製されたものに限定されず、他の製造方法によって作製されたものであってもよい。
本実施形態の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法は、実施形態1の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
溶媒金属を用いた温度差法により、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含むダイヤモンド単結晶を合成する第1工程と、
前記ダイヤモンド単結晶に、10MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与える電子線及び粒子線の一方又は両方を照射する第2工程と、
前記第2工程後の前記ダイヤモンド単結晶に対して、真空中で1650℃以上1850℃以下の温度を1分以上3600分以下加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る第3工程と、を備える。
(第1工程)
ダイヤモンド単結晶は、例えば、図2に示される構成を有する試料室を用いて、温度差法で作製することができる。
図2に示されるように、ダイヤモンド単結晶1の製造に用いる試料室10では、黒鉛ヒータ7で囲まれた空間内に絶縁体2、炭素源3、溶媒金属4、種結晶5が配置され、黒鉛ヒータ7の外部には圧力媒体6が配置される。温度差法とは、試料室10の内部で縦方向の温度勾配を設け、高温部(Thigh)に炭素源3、低温部(Tlow)にダイヤモンドの種結晶5を配置し、炭素源3と種結晶5との間に溶媒金属4を配して、この溶媒金属4が溶解する温度以上でダイヤモンドが熱的に安定になる圧力以上の条件に保持して種結晶5上にダイヤモンド単結晶1を成長させる合成方法である。
炭素源3としては、ダイヤモンド粉末を用いることが好ましい。また、グラファイト(黒鉛)や熱分解炭素を用いることもできる。溶媒金属4としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)及びマンガン(Mn)などから選ばれる1種以上の金属またはこれらの金属を含む合金を用いることができる。
炭素源3又は溶媒金属4には、窒素供給源として、例えば、窒化鉄(FeN,FeN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化リン(P)、窒化珪素(Si)等の窒化物や、メラミン、アジ化ナトリウムなどの有機窒素化合物を単体又は混合体として添加することができる。また、窒素供給源として、窒素を多量に含むダイヤモンドやグラファイトを添加してもよい。これにより、合成されるダイヤモンド単結晶中に、窒素原子が含まれる。この時、ダイヤモンド単結晶中の窒素原子は、主に孤立置換型窒素原子として存在している。
炭素源3又は溶媒金属4中の窒素供給源の含有量は、合成されるダイヤモンド単結晶中の窒素原子の濃度が50ppm以上1000ppm以下となるように調整する。例えば、炭素源においては、窒素供給源に由来する窒素原子の含有量を、200ppm以上3000ppm以下とすることができる。また、溶媒金属においては、例えば、溶媒金属が鉄-コバルト-ニッケルからなる合金で、窒素供給源がFeNの場合に、窒素供給源の含有量を、0.01質量%以上0.2質量%以下とすることができる。
溶媒金属4は、さらに、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)からなる群より選ばれる1種以上の元素を含んでいてもよい。
(第2工程)
次に、得られたダイヤモンド単結晶に、10MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与える電子線及び粒子線のいずれか一方又は両方を照射する。これにより、ダイヤモンド単結晶内に格子欠陥が導入され、空孔が形成される。
照射するエネルギー量が10MGy未満であると、格子欠陥の導入が不十分となるおそれがある。一方、エネルギー量が1000MGyを超えると、過剰の空孔が生成し、結晶性が大きく低下するおそれがある。したがって、エネルギー量は10MGy以上1000MGy以下が好適である。
粒子線としては、中性子線や陽子線を用いることができる。照射条件は、ダイヤモンド単結晶に、10MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与えることができれば、特に限定されない。例えば、電子線を用いる場合は、照射エネルギー4.6MeV以上4.8MeV以下、電流2mA以上5mA以下、照射時間30時間以上45時間以下とすることができる。
(第3工程)
次に、第2工程後のダイヤモンド単結晶に対して、真空中で1650℃以上1850℃以下の温度を1分以上3600分以下加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る。これにより、ダイヤモンド単結晶内の孤立置換型窒素原子が、空孔を介して移動して凝集し、凝集型窒素原子となる。本明細書において、真空とは、気圧1Pa以下を意味する。
第3工程の温度が1650℃以上であることにより、ダイヤモンド単結晶中の窒素原子の移動が促進され、2つの置換型窒素原子からなる凝集体(Aセンター)の形成が促進される。第3工程の温度が1650℃未満であると、Aセンターの形成が困難である。第3工程の温度の上限は、ダイヤモンドの黒鉛化を防止する観点から1850℃以下とする。
第2工程及び第3工程は、それぞれ1回ずつ行う場合を1サイクルとして、2サイクル以上繰返して行うことができる。これにより、ダイヤモンド単結晶内の孤立置換型窒素原子の凝集が促進され、Aセンターの形成も促進される。
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
<試料1~試料10>
(第1工程)
図2に示される構成を有する試料室を用いて、溶媒金属を用いた温度差法により、ダイヤモンド単結晶を合成する。
溶媒金属として、鉄-コバルト-ニッケルからなる合金を準備し、これに炭素供給源として窒化鉄(FeN)粉末を添加する。溶媒金属中の窒化鉄の濃度は、表1の「製造条件」の「溶媒金属中窒化鉄濃度(質量%)」欄に示す。例えば、試料1では、溶媒金属中の窒化鉄の濃度は0.02質量%である。
炭素源にはダイヤモンドの粉末、種結晶には約0.5mgのダイヤモンド単結晶を用いる。試料室内の温度を、炭素源の配置された高温部と、種結晶の配置された低温部との間に、数十度の温度差がつくように加熱ヒータで調整する。これに、超高圧発生装置を用いて、圧力5.5GPa、低温部の温度を1370℃±10℃(1360℃~1380℃)の範囲で制御して60時間保持し、種結晶上にダイヤモンド単結晶を合成する。
(第2工程)
次に、試料2~試料10では、得られたダイヤモンド単結晶に電子線を照射する。照射条件は、照射線エネルギー4.6MeV、電流2mA、照射時間30時間とする。これは、ダイヤモンド単結晶に100MGyのエネルギーを与える照射条件である。試料1では、電子線照射を行わない。
(第3工程)
次に、試料2~試料6では、第2工程後のダイヤモンド単結晶に対して、真空中で、表1の「製造条件」の「第3工程(60分)」欄に記載の温度を60分加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る。例えば、試料2では、ダイヤモンド単結晶に対して、真空中で、1721℃の温度を60分加える。試料1では、第3工程を行わない。すなわち、試料1では、第1工程で得られたダイヤモンド単結晶が、合成単結晶ダイヤモンドに該当する。
Figure 2022139094000001
<評価>
試料1~試料10の合成単結晶ダイヤモンドについて、窒素濃度の測定、赤外分光分析、ヌープ硬度の測定、ヌープ圧痕の測定を行う。
(窒素原子濃度の測定)
各試料の合成単結晶ダイヤモンド中の窒素原子濃度をSIMS分析により求める。結果を表1の「合成単結晶ダイヤモンド」の「窒素原子濃度(ppm)」欄に示す。
(赤外分光分析)
各試料の合成単結晶ダイヤモンドを厚み1mm程度の板状に加工し、光を透過させる2面を鏡面に研磨した後、フーリエ変換赤外分光光法により、赤外領域での吸光度測定を行い、赤外吸収スペクトルを作成する。
ダイヤモンドのフォノンによる吸収である波数2161cm-1における吸収強度I(2161)を1としたときの、波数1282cm-1(Aセンター)における吸収強度I(1282)の値、波数1175cm-1(Bセンター)における吸収強度I(1175)の値を算出する。結果を表1の「合成単結晶ダイヤモンド/ダイヤモンド単結晶」の「赤外吸収スペクトル」の「I(1282)」、「I(1175)」欄に示す。
赤外吸収スペクトルにおいて、他のセンターによる吸収を除いて、波数1282±2cm-1に吸収ピークが存在する場合を、Aセンターが「有」とし、波数1282±2cm-1に吸収ピークが存在しない場合を、Aセンターが「無」とする。結果を表1の「合成単結晶ダイヤモンド」の「赤外吸収スペクトル」の「Aセンター」欄に示す。
(ヌープ硬度の測定)
各試料の合成単結晶ダイヤモンドの{001}<100>ヌープ硬度、及び、{001}<110>ヌープ硬度を測定する。具体的な測定方法は実施形態1に記載されているためその説明は繰り返さない。結果を表1の「合成単結晶ダイヤモンド」の「{001}<100>ヌープ硬度」、「{001}<110>ヌープ硬度」欄に示す。
(ヌープ圧痕(b/a)の測定)
上記の{001}<100>ヌープ硬度の測定により得られたヌープ圧痕について、長い方の対角線の長さaと、短い方の対角線の長さbとを測定し、比b/aを算出する。結果を表1の「合成単結晶ダイヤモンド」の「b/a」欄に示す。b/aの値が小さいほど、弾性変形性が大きく、靱性が高く、耐欠損性に優れることを示す。
<考察>
試料2~試料10は実施例に該当する。試料1は比較例に該当する。試料2~試料10(実施例)は、試料1(比較例)に比べて、高い硬度を有し、かつ、耐欠損性に優れていることが確認される。
以上のように本開示の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせたり、様々に変形することも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 ダイヤモンド単結晶
2 絶縁体
3 炭素源
4 溶媒金属
5 種結晶
6 圧力媒体
7 黒鉛ヒータ
10 試料室

Claims (3)

  1. 窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含む合成単結晶ダイヤモンドであって、
    前記合成単結晶ダイヤモンドは、2つの置換型窒素原子からなる凝集体を含み、
    前記合成単結晶ダイヤモンドは、JIS Z 2251:2009に準拠して、温度23℃±5℃、及び、試験荷重4.9Nの条件でヌープ硬度を測定した場合、
    {001}面における<100>方向のヌープ硬度は90GPa以上、かつ、{001}面における<110>方向のヌープ硬度は80GPa以上であり、
    {001}面における<100>方向のヌープ圧痕の長い方の対角線の長さaに対する短い方の対角線の長さbの比b/aが0.08以下である、合成単結晶ダイヤモンド。
  2. 前記合成単結晶ダイヤモンドの赤外吸収スペクトルにおいて、波数2161cm-1における吸収強度I(2161)を1とした場合、波数1282cm-1における吸収強度I(1282)は0.50以上5.0以下であり、波数1175cm-1における吸収強度I(1175)は0.28以上2.0以下である、請求項1に記載の合成単結晶ダイヤモンド。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の合成単結晶ダイヤモンドの製造方法であって、
    溶媒金属を用いた温度差法により、窒素原子を原子数基準で50ppm以上1000ppm以下の濃度で含むダイヤモンド単結晶を合成する第1工程と、
    前記ダイヤモンド単結晶に、10MGy以上1000MGy以下のエネルギーを与える電子線及び粒子線の一方又は両方を照射する第2工程と、
    前記第2工程後の前記ダイヤモンド単結晶に対して、真空中で1650℃以上1850℃以下の温度を1分以上3600分以下加え、合成単結晶ダイヤモンドを得る第3工程と、を備える、合成単結晶ダイヤモンドの製造方法。
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